(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表面に活物質を有する帯状の電極シートと、絶縁素材からなる帯状のセパレータシートとをそれぞれ所定の供給機構から回転可能な巻芯に供給するとともに、前記巻芯が回転することにより前記電極シート及び前記セパレータシートを重ねつつ巻回する巻回装置であって、
前記巻芯は、その回転軸方向に延びるとともに、前記回転軸と直交する方向に並んだ状態で設けられる所定の固定芯片及び所定の可動芯片を備えており、
前記電極シートの厚さを計測する厚さ計測手段と、
前記可動芯片を移動させ、前記固定芯片及び前記可動芯片間の距離を変更することで、前記巻芯のうち前記電極シート及び前記セパレータシートが巻回される部分の前記巻芯の回転方向に沿った長さを変更可能な周長変更手段と、
前記周長変更手段の動作を制御する制御手段とを備え、
前記周長変更手段は、
前記固定芯片の内部において、前記可動芯片の長手方向ほぼ全域に対応した状態で前記可動芯片と平行に設けられ、かつ、回転軸から外周面までの距離が一定ではないカム部を有してなる回転可能なカム軸と、
前記カム部の外周面に対し、前記固定芯片及び前記可動芯片間の距離が変更する方向に沿って前記可動芯片における少なくとも先端側及び基端側の部位を押付けた状態とする押圧手段と、
電力が供給されることで、前記カム軸を回転させるアクチュエータとを有し、
前記制御手段は、前記厚さ計測手段による計測結果に基づき、前記アクチュエータの動作を制御することを特徴とする巻回装置。
前記アクチュエータは、電力供給により回転する軸部を備えるとともに、電力の非供給時に前記軸部の回転を規制可能なブレーキ付きモータであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の巻回装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記特許文献1に記載の技術において、可動芯片は、周長変更手段の存在する巻芯の基端側のみで支持された状態となっている。従って、電極シート及びセパレータシートの巻回に伴い可動芯片に対し巻き締め力が加わったときに、可動芯片に変形(撓みや捻りなど)が生じてしまい、巻芯の周長を一定に保つことができないおそれがある。
【0009】
また、上記特許文献2に記載の技術において、可動芯片の往復移動量(ストローク量)を十分に確保するためには、ピエゾアクチュエータに増幅機構を設ける必要がある。しかしながら、増幅機構を設けることとすれば、ピエゾアクチュエータは大型化してしまう。そのため、巻芯を比較的大型なものとせざるを得ず、巻芯の小型化が難しい。
【0010】
さらに、ピエゾアクチュエータは、時間経過に伴い少なからず放電するため、巻芯の周長をそのまま維持したい場合であっても、ピエゾアクチュエータに対し電力を随時供給する必要がある。そのため、生産性の低下を招いてしまうおそれがある。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、巻き締め力による巻芯の意図しない周長変化をより確実に防止することができるとともに、巻芯の小型化などを図ることができる巻回装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0013】
手段1.表面に活物質を有する帯状の電極シートと、絶縁素材からなる帯状のセパレータシートとをそれぞれ所定の供給機構から回転可能な巻芯に供給するとともに、前記巻芯が回転することにより前記電極シート及び前記セパレータシートを重ねつつ巻回する巻回装置であって、
前記巻芯は、その回転軸方向に延びるとともに、前記回転軸と直交する方向に並んだ状態で設けられる所定の固定芯片及び所定の可動芯片を備えており、
前記電極シートの厚さを計測する厚さ計測手段と、
前記可動芯片を移動させ、前記固定芯片及び前記可動芯片間の距離を変更することで、前記巻芯のうち前記電極シート及び前記セパレータ
シートが巻回される部分の前記
巻芯の回転方向に沿った長さを変更可能な周長変更手段と、
前記周長変更手段の動作を制御する制御手段とを備え、
前記周長変更手段は、
前記固定芯片の内部において、前記可動芯片の長手方向ほぼ全域に対応した状態で前記可動芯片と平行に設けられ、かつ、回転軸から外周面までの距離が一定ではないカム部を有してなる回転可能なカム軸と、
前記カム部の外周面に対し、前記固定芯片及び前記可動芯片間の距離が変更する方向に沿って前記可動芯片における少なくとも先端側及び基端側の部位を押付けた状態とする押圧手段と、
電力が供給されることで、前記カム軸を回転させるアクチュエータとを有し、
前記制御手段は、前記厚さ計測手段による計測結果に基づき、前記アクチュエータの動作を制御することを特徴とする巻回装置。
【0014】
上記手段1によれば、カム軸は、回転軸から外周面までの距離が一定ではないカム部を有しており、当該カム部の外周面に対し、固定芯片及び可動芯片間の距離が変更する方向に沿って可動芯片が押付けられた状態とされている。そして、制御手段によって、計測された電極シートの厚さに基づきアクチュエータの動作が制御され、カム軸を回転させることにより、可動芯片は、両芯片間の距離が変更する方向に沿って移動する。これにより、巻芯のうち電極シート等が巻回される部分の回転方向に沿った長さ(以下、「巻芯の周長」と称す)を変更することができる。このように電極シートの厚さに基づき巻芯の周長を変更することで、例えば、巻回素子の周方向に沿った目標の配置範囲にタブをより確実に配置することが可能となる。
【0015】
さらに、上記手段1によれば、カム軸は、可動芯片の長手方向ほぼ全域に対応した状態で可動芯片と平行に設けられており、可動芯片における少なくとも先端側及び基端側の部位は、カム軸(カム部)に対し押し付けられた状態とされている。従って、カム軸によって、可動芯片を非常に安定した状態で支持することができ、電極シート等の巻回に伴い巻芯に対し巻き締め力が加わったときに、可動芯片に変形(撓みや捻りなど)が生じてしまうことをより確実に防止できる。これにより、巻芯の周長をより確実に一定に保つことができる。
【0016】
また、上記手段1によれば、固定芯片は、カム軸を内部に収容可能な程度の大きさのものであればよい。従って、巻芯の周長変更機能を実現しつつ、巻芯の小型化を図ることができる。
【0017】
さらに、カム軸(カム部)に対し可動芯片が押し付けられる構造であるため、カム軸が回転しない限り、巻芯の周長が変化することはない。すなわち、上記手段1によれば、時間経過に伴い巻芯の周長が変化するといった事態は生じない。そのため、アクチュエータに対し電力を随時供給する等、巻芯の周長を一定に維持するための工程を特段行う必要がなくなり、生産性の向上を図ることができる。
【0018】
加えて、増幅機構などを設けることなく、可動芯片の移動量(ストローク量)を十分に確保することが可能となる。そのため、巻芯の周長をより広い範囲で変更することができる。
【0019】
手段2.前記巻芯は、前記電極シート及び前記セパレータシートのうちの少なくとも一方が配置されるスリットを備え、
前記固定芯片及び前記可動芯片間の距離が増減しても、前記スリットの大きさが一定に保たれるように構成されていることを特徴とする手段1に記載の巻回装置。
【0020】
上記手段2によれば、巻芯の周長を増減させても、スリットの大きさは、変わることなく一定に保たれる。従って、スリットに対する電極シートやセパレータシートの配置に支障が生じてしまうことをより確実に防止でき、装置の動作安定性をより高めることができる。
【0021】
手段3.前記可動芯片をスライド移動可能な状態で支持するガイドを備え、
前記ガイドは、前記巻芯の回転軸方向に沿って、前記可動芯片のうち前記電極シート及び前記セパレータシートが巻回される部位から外れた位置に設けられることを特徴とする手段1又は2に記載の巻回装置。
【0022】
可動芯片のうち電極シート等が巻回される部位は、可動芯片のうち特に剛性を確保すべき部位であり、剛性を確保するために例えば厚肉とされる。従って、このような部位に対応してガイドを設けると、巻芯の大型化(大径化)を招いてしまうおそれがある。
【0023】
この点、上記手段3によれば、ガイドは、可動芯片における電極シート等が巻回される部位から外れた位置に設けられている。従って、巻芯の大型化(大径化)を抑えることができ、巻芯の小型化をより確実に図ることができる。
【0024】
手段4.前記可動芯片をスライド移動可能な状態で支持するガイドを備え、
前記ガイドは、少なくとも前記可動芯片の先端部及び基端部に対応して設けられ、
前記ガイドにより、前記電極シート及び前記セパレータシートの巻回に伴い前記可動芯片に加わる巻き締め力に抗して前記可動芯片が支持されるように構成されていることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の巻回装置。
【0025】
尚、上記手段3及び上記手段4におけるガイドは同じものを指し、上記手段3に従属する上記手段4において、ガイドが複数存在することを意図したものではない。
【0026】
上記手段4によれば、ガイドによって、巻き締め力に抗して可動芯片が支持される。従って、巻き締め力による可動芯片の変形(撓みや捻りなど)を一層確実に防止することができ、巻芯の周長をより確実に一定に維持することができる。
【0027】
手段5.前記ガイドは、
前記
可動芯片のスライド移動方向に延びるとともに、直交する2つの平面で形成された溝を有するガイドロッドと、
回転軸が交互に直交する状態で並べられた複数のローラを有するスライドロッドとを備え、
前記溝に対し前記ローラが配置されてなるクロスローラガイドであり、
前記ガイドロッド及び前記スライドロッドは、前記巻芯の回転軸方向に沿って並んだ状態で設けられていることを特徴とする手段3又は4に記載の巻回装置。
【0028】
上記手段5によれば、ガイドとして、ガイドロッド及びスライドロッドが巻芯の回転軸方向に沿って並ぶようにして配置されたクロスローラガイドが利用される。そのため、巻芯の回転軸と直交する方向、すなわち、巻芯の径方向に沿ったガイドの厚さをより小さなものとすることができる。これにより、巻芯の小型化をより効果的に図ることができる。
【0029】
手段6.前記アクチュエータは、電力供給により回転する軸部を備えたモータであり、
前記軸部から前記カム軸に対する動力の伝達機構は、前記軸部の回転に伴い回転するウォームと、これに噛合された平歯車とを備えていることを特徴とする手段1乃至5のいずれかに記載の巻回装置。
【0030】
上記手段6によれば、軸部を回転させたときには、ウォームから平歯車へと動力を伝達することができ、軸部からカム軸へと動力を安定的に伝達することができる。その一方、何らかの理由によりカム軸に対しその回転方向の力が加わったとしても、ウォーム及び平歯車(つまりウォームギア)によるセルフロックによって、平歯車の回転を規制することができ、ひいてはカム軸をロックした状態で維持することができる。これにより、カム軸の意図しない回転を効果的に抑制することができ、ひいては巻芯の周長の意図しない変化をより確実に防止することができる。
【0031】
また、上記手段6によれば、ウォームから平歯車に対し、回転数を減じつつ動力を伝達するように構成することで、平歯車の回転角度ひいてはカム軸の回転角度を微調整することができる。これにより、固定芯片及び可動芯片間の距離を微調整することができ、巻芯の周長のより細かな変更が可能となる。
【0032】
手段7.前記アクチュエータは、電力供給により回転する軸部を備えるとともに、電力の非供給時に前記軸部の回転を規制可能なブレーキ付きモータであることを特徴とする手段1乃至6のいずれかに記載の巻回装置。
【0033】
上記手段7によれば、アクチュエータとしてブレーキ付きモータを用いているため、電力の非供給時、すなわち、電力の供給により巻芯の周長を変更するとき以外における軸部の回転を規制することができる。従って、巻回時の振動などにより軸部が回転してしまうことをより確実に防止でき、巻芯の周長が意図せず変化することをより確実に防止できる。
【0034】
尚、「ブレーキ付きモータ」は、無励磁作動型のものであり、例えば、所定のブレーキライニングと、所定のバネによって前記ブレーキライニング側に向けて付勢されたアーマチュアと、通電に伴い、バネによる付勢力に抗してアーマチュアをブレーキライニングから遠ざけるように移動させるコイルとを備えたものを挙げることができる。この「ブレーキ付きモータ」においては、モータに対する電力の供給時に、通電したコイルによりアーマチュアが引かれ、アーマチュア及びブレーキライニング間にギャップが形成されることにより、軸部が回転可能な状態となる。一方、モータに対する電力の非供給時には、バネによってブレーキライニングに対しアーマチュアが押付けられることで、軸部の回転が規制された状態となる。
【0035】
手段8.前記アクチュエータに対する電力供給は、前記巻芯の停止時のみに行われるように構成されていることを特徴とする手段1乃至7のいずれかに記載の巻回装置。
【0036】
上記手段8によれば、アクチュエータに対する電力供給、すなわち、巻芯の周長変更は、巻芯の停止時のみに行われる。従って、巻芯の回転時にアクチュエータへと電力を供給するための複雑な装置(例えば、スリップリング等)を設ける必要がない。これにより、装置の簡素化を図ることができ、装置の製造等に係るコストの低減を図ることができる。
【0037】
手段9.前記巻芯に対し接近及び離間可能に構成された電力供給用の通電端子と、
前記巻芯の基端側に設けられた接点部とを備え、
前記接点部に対し前記通電端子が接触することで、前記アクチュエータに対し電力が供給されるように構成されていることを特徴とする手段8に記載の巻回装置。
【0038】
上記手段9によれば、アクチュエータに対する電力の供給機構を、非常に簡素な構成により実現することができる。これにより、装置の製造等に係るコストの低減をより効果的に図ることができる。
【0039】
手段10.前記巻芯の先端部には、前記巻芯の回転時に、所定の受け部によって支持される被支持部が設けられており、
前記被支持部は、前記固定芯片の先端部に設けられていることを特徴とする手段1乃至9のいずれかに記載の巻回装置。
【0040】
上記手段10によれば、被支持部は固定芯片の先端部に設けられているため、巻芯の周長を変更させるべく、可動芯片を移動させたときに、可動芯片の移動に合わせて被支持部が移動してしまうといった事態は生じない。従って、受け部によって被支持部を安定した状態で支持することができる。また、被支持部の位置変化に合わせて、受け部の位置を調節したり、受け部を交換したりするといったことは不要となる。そのため、装置の簡素化をより図ることができる。また、メンテナンス等をより容易に行うことが可能となる。
【0041】
手段11.前記アクチュエータは、前記巻芯の基端側にのみ設けられていることを特徴とする手段1乃至10のいずれかに記載の巻回装置。
【0042】
上記手段11によれば、アクチュエータは巻芯の基端側にのみ設けられている。これにより、巻芯の小型化やコストの低減をより効果的に図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。まず、巻回装置によって得られる巻回素子としてのリチウムイオン電池素子の構成について説明する。
【0045】
図1に示すように、リチウムイオン電池素子1(以下、単に「電池素子1」という)は、2枚のセパレータシート2,3を介して、正電極シート4及び負電極シート5が重ね合わされた状態で巻回されることにより製造される。尚、2枚のセパレータシート2,3に代えて、折返された1枚のセパレータシートを用いてもよい。また、以下においては、説明の便宜上、セパレータシート2,3及び電極シート4,5を「各種シート2〜5」と称することがある。
【0046】
セパレータシート2,3は、それぞれ同一の幅を有する帯状をなしており、異なる電極シート4,5同士が互いに接触して短絡を起こしてしまうのを防止すべく、ポリプロピレン(PP)等の絶縁体により構成されている。
【0047】
電極シート4,5は、薄板状の金属シートからなり、セパレータシート2,3と略同一の幅を有している。また、電極シート4,5の表裏両面には活物質が塗布されている。正電極シート4には例えばアルミニウム箔シートが用いられ、その表裏両面に所定間隔で正極活物質(例えば、マンガン酸リチウム粒子等)が塗布されている。負電極シート5には例えば銅箔シートが用いられ、その表裏両面に所定間隔で負極活物質(例えば、活性炭等)が塗布されている。そして、活物質を介して、正電極シート4及び負電極シート5間におけるイオン交換ができるようになっている。より詳しくは、充電時には、正電極シート4側から負電極シート5側へとイオンが移動し、放電時には、負電極シート5側から正電極シート4側へとイオンが移動する。
【0048】
加えて、本実施形態では、電池素子1ひとつを構成する両電極シート4,5の長さはそれぞれ予め設定された一定の所定値とされている。本実施形態において、一素子分の負電極シート5の長さは、負電極シート5で正電極シート4をより確実に覆うべく、一素子分の正電極シート4の長さよりも若干大きなものとされている。
【0049】
また、
図2に示すように、正電極シート4における活物質不塗布部4b(
図2及び
図3では、活物質の塗布部に散点模様を付している)には、正電極タブ4aが溶接されるとともに、当該正電極タブ4aを保護するための保護テープ7が貼付されている。さらに、
図3に示すように、負電極シート5における活物質不塗布部5bには、負電極タブ5aが溶接されるとともに、当該負電極タブ5aを保護するための保護テープ7が貼付されている。そして、正電極シート4の幅方向一端縁からは複数の前記正電極タブ4aが延出するとともに、負電極シート5の幅方向他端縁からは複数の前記負電極タブ5aが延出している。
【0050】
また、理想状態において、電池素子1の一端部において正電極タブ4aが1列で並ぶとともに、電池素子1の他端部において負電極タブ5aが1列で並ぶように構成されている(
図1参照)。
【0051】
リチウムイオン電池を得るに際しては、巻回された電池素子1が金属製で筒状をなす図示しない電池容器(ケース)内に配設されるとともに、正電極タブ4a及び負電極タブ5aがそれぞれまとめられる。そして、まとめられた正電極タブ4aを正極端子部品(図示せず)に接続するとともに、同じくまとめられた負電極タブ5aを負極端子部品(図示せず)に接続し、両端子部品が前記電池容器の両端開口に塞ぐように設けられることで、リチウムイオン電池を得ることができる。
【0052】
次に、電池素子1を製造するための巻回装置10について説明する。
図4に示すように、巻回装置10は、各種シート2〜5を巻回するための巻回部11と、正電極シート4を巻回部11へ供給するための正電極シート供給機構31と、負電極シート5を巻回部11へ供給するための負電極シート供給機構41と、セパレータシート2,3をそれぞれ巻回部11へ供給するためのセパレータ供給機構51,61と、制御手段としての制御装置91とを備えている。尚、上記巻回部11や各供給機構31,41,51,61など、巻回装置10内の各種機構は、制御装置91により動作制御される構成となっている。
【0053】
正電極シート供給機構31は、正電極シート4がロール状に巻回されてなる正電極シート原反32を備えている。正電極シート原反32は、自由回転可能に支持されており、ここから適宜、正電極シート4が引き出されることとなる。
【0054】
尚、正電極シート原反32を構成する正電極シート4の厚さは、活物質の塗布厚みが異なる等の理由により、正電極シート原反32のロットごとに異なる場合がある。また、1の正電極シート原反32を構成する正電極シート4の各部位で厚みが異なることがある。これらの点は、負電極シート5においても同様である。
【0055】
正電極シート供給機構31は、シート挿入機構71と、シート切断カッタ72と、テンション付与機構73と、バッファ機構75と、厚さ計測手段としての厚さ計測機構77とを備えている。
【0056】
シート挿入機構71は、正電極シート4を巻回部11へ供給するものであり、正電極シート4の搬送経路に沿って、巻回部11に接近する接近位置と、巻回部11から離間する離間位置とに移動可能に構成されている。シート挿入機構71は、正電極シート4を把持可能な一対のチャック71a,71bを備えている。チャック71a,71bは、図示しない駆動手段により開閉動作可能に構成されている。そして、正電極シート4を巻回部11へ供給する際には、チャック71a,71bにより正電極シート4を把持した上で、シート挿入機構71が巻回部11に対し接近するようになっている。
【0057】
シート切断カッタ72は、正電極シート4を切断するためのものであり、正電極シート4の表裏両側にそれぞれ位置する一対の刃部72a,72bを備えている。シート切断カッタ72は、その一対の刃部72a,72bが正電極シート4を挟むように位置するシート切断位置と、正電極シート4の搬送経路外へ退避する退避位置との間を移動可能に構成されている。
【0058】
尚、正電極シート4の切断は、前記チャック71a,71bにより正電極シート4が把持された状態で行われるようになっている。また、巻回部11へと正電極シート4を供給すべく、シート挿入機構71が巻回部11側へ接近移動する際には、一対の刃部72a,72bがそれぞれ正電極シート4の搬送経路から離間することで、シート挿入機構71の移動を阻害しないようになっている。
【0059】
テンション付与機構73は、一対のローラ73a,73bと、両ローラ73a,73b間において揺動自在に設けられたダンサローラ73cとを有している。ダンサローラ73cは、トルク制御された所定のサーボモータ(図示せず)により動作し、制御装置91により前記サーボモータが制御されることで、正電極シート4に付与される張力を変更可能に構成されている。また、ダンサローラ73cは、正電極シート4に張力を付与することで、正電極シート4の弛みを防止する役割も果たす。尚、本実施形態では、テンション付与機構73によって、正電極シート4に対し常に一定の張力が付与されるようになっている。
【0060】
バッファ機構75は、一対の従動ローラ75a,75bと、両ローラ75a,75b間において上下方向に変位可能に設けられた昇降ローラ75cとを有している。バッファ機構75を設けることにより、シート切断カッタ72から厚さ計測機構77までの間において、少なくとも電池素子1ひとつ分を構成する長さの正電極シート4が貯留可能となっている。
【0061】
厚さ計測機構77は、一対のローラ77a,77bと、第一測長ローラ77cと、第二測長ローラ77dとを備えている。第一測長ローラ77cの外周には、両ローラ77a,77b間に位置する正電極シート4が折り返して曲げられた状態で架けられている。第二測長ローラ77dは、第一測長ローラ77cとの間で正電極シート4の折り返し部分を挟み込むようにして配置されている。
【0062】
また、両測長ローラ77c,77dは、互いに同径で、かつ、それぞれ自由回転可能な従動ローラであり、正電極シート4の搬送に伴い回転する。そして、両測長ローラ77c,77dの回転量は、図示しないエンコーダにより把握可能となっており、当該エンコーダから両測長ローラ77c,77dの回転量に関する情報が制御装置91へと入力されるようになっている。
【0063】
尚、両測長ローラ77c,77d及び正電極シート4の位置関係が上述のように設定されているため、正電極シート4が両測長ローラ77c,77d間を通過しているときに、正電極シート4の内周面(屈曲内側面)に接触する第一測長ローラ77cの回転量と、正電極シート4の外周面(屈曲外側面)に接触する第二測長ローラ77dの回転量とに差が生じることとなる。この回転量の差は、正電極シート4が厚いほど大きく、正電極シート4が薄いほど小さくなる。
【0064】
負電極シート供給機構41は、その最上流側において、負電極シート5がロール状に巻回されてなる負電極シート原反42を備えている。負電極シート原反42は、回転可能に支持されており、ここから適宜、負電極シート5が引き出されることとなる。
【0065】
また、負電極シート原反42から巻回部11にかけての負電極シート5の搬送路の途中には、正電極シート4の搬送路と同様に、シート挿入機構71、シート切断カッタ72、テンション付与機構73、バッファ機構75及び厚さ計測機構77などが設けられている。これらは、負電極シート5を対象として機能する点を除き、正電極シート4の搬送路に設けられたものと同様である。従って、これらについての詳細な説明は省略する。
【0066】
一方、セパレータ供給機構51,61は、それぞれセパレータシート2,3がロール状に巻回されてなるセパレータ原反52,62を備えている。セパレータ原反52,62は、自由回転可能に支持されており、ここから適宜、セパレータシート2,3が引き出されることとなる。
【0067】
さらに、セパレータ供給機構51,61は、電極シート供給機構31,41と同様に、テンション付与機構73を備えている。これは、セパレータシート2,3を対象として機能する点を除き、正電極シート供給機構31に設けられたものと同様である。従って、これについての詳細な説明は省略する。
【0068】
また、各種シート2〜5の供給経路の途中には、各種シート2〜5をひとまとめにする一対のガイドローラ78a,78bなど、各種シート2〜5を案内するための各種ガイドローラ(符号略)が設けられている。
【0069】
次に、巻回部11の構成について説明する。
図5に示すように、巻回部11は、図示しない駆動機構により回転可能に設けられた相対向する2枚の円盤状のテーブルからなるターレット12と、当該ターレット12の回転方向に180°間隔で設けられた2つの巻芯13,14と、当該巻芯13,14に対しそれぞれターレット12の回転方向にほぼ90°ずつずれた位置に設けられた2つの支持ローラ15a,15bと、セパレータカッタ16と、巻回終了直前の各種シート2〜5を押さえるための押えローラ17と、所定の固定用テープを貼付するためのテープ貼付機構18と、通電端子19とを備えている。
【0070】
巻芯13,14は、それぞれ自身の外周側において各種シート2〜5を巻取るためのものであり、図示しない駆動機構により自身の中心軸を回転軸として回転可能に構成されている。巻芯13,14の回転量は、図示しないエンコーダにより把握可能となっており、当該エンコーダから回転量に関する情報が制御装置91へと入力されるようになっている。
【0071】
また、巻芯13,14は、ターレット12の軸線方向(
図5の紙面奥行方向)に沿って、ターレット12を構成する一方のテーブルに対し出没可能に設けられている。尚、巻芯13,14は、前記一方のテーブルから突出した状態となったときに、その先端部が他方のテーブルに形成された受け用の穴に挿通され、両テーブルによって回転可能な状態で支持されるようになっている。本実施形態では、他方のテーブルにおける前記受け用の穴を形成する部位が、後述する被支持部85を支持するための受け部に相当する。
【0072】
さらに、巻芯13,14は、ターレット12が回転することにより、巻回ポジションP1と、取外しポジションP2との間を旋回移動可能に構成されている。
【0073】
巻回ポジションP1は、巻芯13,14に対し各種シート2〜5を巻回するポジションであり、当該巻回ポジションP1に対し上記各供給機構31,41,51,61から各種シート2〜5が供給されることとなる。
【0074】
取外しポジションP2は、巻回後の各種シート2〜5、すなわち電池素子1の取外しを行うためのポジションである。取外しポジションP2の周辺部には、巻芯13,14から電池素子1の取外しを行うための取外装置(不図示)等が設けられている。
【0075】
支持ローラ15a,15bは、取外しポジションP2へ移動した巻芯13,14と上記供給機構31,41,51,61との間で各種シート2〜5を引っ掛け、支持するためのものである。
【0076】
セパレータカッタ16は、巻回ポジションP1の近傍に配置されており、ターレット12に接近しセパレータシート2,3を切断する切断位置と、ターレット12から離間し巻芯13,14の移動を妨げない退避位置との間で移動可能である。
【0077】
押えローラ17は、取外しポジションP2の近傍に配置されており、ターレット12に接近し各種シート2〜5を押さえる近接位置と、ターレット12から離間し巻芯13,14の移動を妨げない退避位置との間で移動可能に構成されている。
【0078】
テープ貼付機構18は、取外しポジションP2の近傍に配置されており、巻回終了時に、ターレット12に接近し、セパレータシート2,3の終端部に所定の固定用テープを貼付する機能を備えている。尚、前記固定用テープには、その貼付対象となる電池素子1の通し番号が印刷等により予め付されている。
【0079】
通電端子19は、取外しポジションP2の近傍に配置されており、取外しポジションP2に配置された巻芯13(14)に接近する接近位置と、当該巻芯13(14)から離間し巻芯13(14)の移動を妨げない退避位置との間で移動可能である。
【0080】
また、通電端子19は、一対の端子19a,19bによって構成されており(
図7参照)、両端子19a,19bは、通電端子19の移動方向に沿って圧縮変形可能となっている。さらに、一方の端子19aは、所定の電源に接続されており、他方の端子19bはアースに接続されている。前記電源から通電端子19へと供給される電力は、制御装置91によって制御されるようになっている。
【0081】
次いで、本実施形態における巻芯13,14のより詳細な構成について説明する。
【0082】
図6に示すように、巻芯13(14)は、その外周面、つまり、各種シート2〜5が巻回される部位が、自身の中心軸(回転軸)と直交する断面において楕円形状をなすように構成されている。巻芯13(14)は、第一芯片131(141)及び第二芯片132(142)を備えている。尚、
図6では、第一芯片131(141)を特に簡略化した状態で示しており、実際の第一芯片131(141)は、
図15等にて示すように種々の部品を備えている。
【0083】
第一芯片131(141)及び第二芯片132(142)は、巻芯13(14)の回転軸方向に沿って延びており、前記回転軸と直交する方向に並んだ状態で設けられている。また、各芯片131,132(141,142)間には、前記回転軸と直交する方向に延びるスリット133(143)が形成されている。
【0084】
さらに、
図7に示すように、第一芯片131(141)における基端側には、支持部134(144)が直列的に連結されている。支持部134(144)は、第一芯片131(141)を支持する部位であり、本実施形態では、後述する固定芯片81を支持している。支持部134(144)は、機械的強度に優れる金属により形成されており、第一芯片131(141)を強固に支持可能となっている。これにより、巻芯13,14に対し各種シート2〜5を巻回している際などに、巻芯13,14の撓みや傾きをより確実に防止することができるようになっている。尚、本実施形態において、支持部134,144は、断面半楕円形状をなしているが、巻芯13,14を強固に支持可能である限り、その形状は適宜変更可能である。また、図示は省略するが、支持部134,144と同様の部品によって、第二芯片132,142も支持された状態となっている。
【0085】
加えて、支持部134(144)の外表面には、巻芯13(14)の回転軸方向に沿って並んで配置された一対の接点部135(145)が設けられている。接点部135(145)は、導電性材料により形成されており、前記通電端子19の各端子19a,19bとの接触部を構成している。接点部135(145)は、所定の導電線を介して後述するアクチュエータ843と電気的に接続された状態となっている。そして、接点部135(145)に対し通電端子19を接触させることで、アクチュエータ843へと電力を供給し、アクチュエータ843を動作させることができるようになっている。
【0086】
続いて、第一芯片131,141及び第二芯片132,142のより詳細な構成について説明する。まず、第一芯片131,141の構成について説明する。
【0087】
第一芯片131(141)は、
図7〜10に示すように、固定芯片81と、可動芯片82と、ガイド83と、周長変更手段としての周長変更機構84とを備えている。尚、
図8では、可動芯片82の一部を省略しており、
図9では、固定芯片81の一部(特に後述する第一被巻回部812やブッシュ部813)を省略している。また、
図10では、ガイド83の存在などを明確に示すべく、可動芯片82等を固定芯片81から分離させた状態を示している。
【0088】
固定芯片81は、全体として巻芯13,14の回転軸方向に延びる棒状をなしており、ベース部811と、第一被巻回部812と、ブッシュ部813とを備えている。
【0089】
ベース部811は、第一芯片131のベース(土台)となる部位であり、全体として平板状をなしている。ベース部811のうち第二芯片132,142側に位置する平坦面は、第二芯片132,142との間でスリット133,143を形成している。また、ベース部811における第一被巻回部812の連結部分とは反対側には、後述するばね842を支持するための支持突起811aが複数形成されている。
【0090】
第一被巻回部812は、巻芯13,14の外周面を構成する湾曲板状部位であり、各種シート2〜5の巻回される部位である。第一被巻回部812は、ベース部811のその幅方向端縁部に連なっており、第一被巻回部812とベース部811との間には、巻芯13,14の回転軸方向に延びる空間が形成されている。当該空間は、固定芯片81の内部において、ブッシュ部813や後述するカム軸841を配置するための空間である。
【0091】
ブッシュ部813は、円筒状をなし、カム軸841を回転可能な状態で支持するためのものである。ブッシュ部813は、前記空間内において第一被巻回部812に固定されており、巻芯13,14の回動軸方向に沿って間隔をあけて複数設けられている。ブッシュ部813は、例えば、摩擦係数の低い所定の樹脂により形成された樹脂ブッシュで構成されている。尚、巻芯13,14の長さに応じて、ブッシュ部813の数を適宜変更してもよい。
【0092】
可動芯片82は、全体として巻芯13,14の回転軸方向に延びる棒状をなしており、固定芯片81に対し、巻芯13,14の回転軸と直交する方向に並んだ状態で設けられている。可動芯片82は、第二被巻回部821及び加圧接触部822を備えている。
【0093】
第二被巻回部821は、巻芯13,14の外周面を構成する湾曲板状部位であり、第二被巻回部821におけるその両端側部位を除いた部位に対し、各種シート2〜5が巻回されるようになっている。第二被巻回部821は、ベース部811のうち第一被巻回部812で覆われていない部位を覆うようにして設けられている。また、第二被巻回部821のうち特に各種シート2〜5の巻回される部位は、十分な肉厚を有するように構成されている。これにより、第二被巻回部821のうち各種シート2〜5の巻回される部位は、十分な剛性を持つものとなっている。
【0094】
加圧接触部822は、カム軸841に対し押し付けられる部位であり、カム軸841と接触する部位は平坦面状をなすものとされている。加圧接触部822は、第二被巻回部821におけるベース部811側に位置する面に固定されており、巻芯13,14の回転軸方向に沿って間隔をあけて複数設けられている。また、各加圧接触部822は、巻芯13,14の回転軸方向に延びる板状の被押圧部822aを備えている。尚、巻芯13,14の長さに応じて、加圧接触部822の数を適宜変更可能である。
【0095】
ガイド83は、固定芯片81及び可動芯片82間の距離(特に、第一被巻回部812及び第二被巻回部821間の距離)が変更する方向に沿って、可動芯片82をスライド移動可能な状態で支持するものである。ガイド83は、可動芯片82の先端部及び基端部に対応して設けられており、可動芯片82の先端部及び基端部を支持している。尚、必要に応じて、ガイド83を可動芯片82の中間側に設けてもよい。
【0096】
また、ガイド83は、巻芯13,14の回転軸方向に沿って、可動芯片82のうち各種シート2〜5が巻回される部位から外れた位置に設けられている。すなわち、ガイド83は、第二被巻回部821のうち、剛性確保の点を踏まえて特に肉厚が大きくされる部位から外れた位置に設けられている。尚、図示は省略するが、各ガイド83に対応して、可動芯片82におけるスライド移動可能範囲を規定するための規定手段が設けられている。
【0097】
さらに、各ガイド83は、
図11及び
図12に示すように、それぞれ固定芯片81に取付けられるガイドロッド831と、可動芯片82に取付けられるスライドロッド832とを備えている。ガイドロッド831及びスライドロッド832は、巻芯13,14の回転軸方向に沿って並んだ状態で設けられている。
【0098】
ガイドロッド831は、可動芯片82のスライド移動方向に沿って延びる溝831aを有している。溝831aは、直交する2つの平面で形成されている。
【0099】
スライドロッド832は、回転軸が交互に直交する状態で並べられた複数のローラ832aを有している。そして、各ローラ832aが溝831aに対し配置された状態となっており、各ローラ832aが溝831aを形成する前記平面を摺動することで、ガイドロッド831に対しスライドロッド832がスライド移動する。すなわち、ガイド83は、クロスローラガイドである。
【0100】
また、ガイド83によって、各種シート2〜5の巻回に伴いベース部811側に向けた巻き締め力が可動芯片82に対し加わったときに、この巻き締め力に抗して可動芯片82を支持することが可能となっている。
【0101】
図7〜10に戻り、周長変更機構84は、可動芯片82をスライド移動させるための機構である。周長変更機構84は、カム軸841、押圧手段としてのばね842、アクチュエータ843及びウォームギア844を備えている。
【0102】
カム軸841は、上記の通り、固定芯片81の内部において、ブッシュ部813により回転可能な状態で支持されている。カム軸841は、可動芯片82の長手方向ほぼ全域に対応した状態(可動芯片82の先端部から基端部にかけての範囲に対応した状態)で可動芯片82と平行に設けられている。尚、カム軸841の基端側部分は、固定芯片81の外部へと突出した状態となっている。
【0103】
また、カム軸841は、
図13に示すように、複数のカム部841aを備えている。カム部841aは、加圧接触部822と相対する位置に設けられており、本実施形態では、カム軸841の長手方向に沿って等間隔に設けられている。本実施形態において、カム部841aは、カム軸841の軸直交断面において、中心角が90°とされた扇形状部位と、当該扇形状部位の半径を直径とする半円形状部位とが組合わされた断面形状をなしている(
図15,16参照)。すなわち、カム部841aは、カム軸841のうち、回転軸から外周面までの距離が一定ではない部位によって構成されている。
【0104】
図8に戻り、ばね842は、固定芯片81及び可動芯片82間の距離が変更する方向に沿って、すなわち、可動芯片82のスライド移動方向に沿って、カム部841aの外周面に対し加圧接触部822を押付けるためのものである。ばね842は、支持突起811a及び被押圧部822aによって、自然長よりも圧縮した状態で挟み込まれている。これにより、被押圧部822aに対し支持突起811aから遠ざかる方向の力が加わることとなり、その結果、カム部841aに対し可動芯片82(加圧接触部822)が押付けられた状態となっている。
【0105】
アクチュエータ843は、カム軸841を回転させるための駆動手段である。アクチュエータ843は、
図14に示すように、電力供給により回転する軸部843aを備えている。アクチュエータ843は、軸部843aを双方向に回転可能であり、かつ、電力の非供給時に軸部843aの回転を規制可能に構成されたブレーキ付きモータによって構成されている。
【0106】
より詳しくは、アクチュエータ843は、無励磁作動型のブレーキ付きモータであり、例えば、それぞれ図示しない、ブレーキライニングと、所定のばねによって前記ブレーキライニング側に向けて付勢されたアーマチュアと、通電に伴い、前記ばねによる付勢力に抗してアーマチュアをブレーキライニングから遠ざけるように移動させるコイルとを備えている。そして、アクチュエータ843に電力が供給されると、通電した前記コイルにより前記アーマチュアが引かれ、前記アーマチュア及び前記ブレーキライニング間にギャップが形成されることにより、軸部843aが回転可能な状態となり、供給された電力により軸部843aが回転する。一方、アクチュエータ843への電力の非供給時には、前記ばねによって前記ブレーキライニングに対し前記アーマチュアが押付けられた状態となることで、軸部843aの回転が規制された状態となる。
【0107】
また、アクチュエータ843は、第一芯片131(141)の基端側にのみ設けられている(
図7等参照)。すなわち、アクチュエータ843は、巻芯13,14の基端側にのみ設けられている。
【0108】
ウォームギア844は、軸部843aからカム軸841に対する動力の伝達機構を構成するものである。ウォームギア844は、軸部843aに取付けられ、軸部843aの回転に伴い回転するウォーム844aと、カム軸841に取付けられ、ウォーム844aに噛合された平歯車844bとを備えている。本実施形態では、カム軸841の回転数が軸部843aの回転数の1/20〜1/50程度となるように、平歯車844bの歯数などが設定されている。
【0109】
加えて、第一芯片131(141)の先端部には、ターレット12の前記受け用の穴に配置されることで、ターレット12における前記受け用の穴を形成する部位によって支持される被支持部85が設けられている(
図7等参照)。被支持部85は、固定芯片81の先端部に取付けられることで、固定芯片81の先端部に設けられた状態となっている。
【0110】
上記のように構成された第一芯片131(141)では、通電端子19が接点部135(145)へと接触し、アクチュエータ843へと電力が供給されることで、軸部843aの回転規制が解除された上で、軸部843aが回転する。これにより、軸部843aからウォームギア844を介してカム軸841へと動力が伝達され、カム軸841が回転する。その結果、
図15及び
図16に示すように、カム部841aに押付けられた状態となっている可動芯片82は、固定芯片81及び可動芯片82間の距離Lを変更するようにして移動する。そして、距離Lの変更に伴い、巻芯13(14)のうち各種シート2〜5が巻回される部分の巻芯13(14)の回転方向に沿った長さ(以下、「巻芯13(14)の周長」と称す)が変更されることになる。
【0111】
また、巻芯13(14)の周長を変更するにあたって、可動芯片82は、巻芯13(14)の回転軸と直交する断面におけるスリット133(143)の延びる方向と平行な方向に沿ってスライド移動する。従って、固定芯片81及び可動芯片82間の距離Lを増減させることで、巻芯13(14)の周長を変更しても、スリット133(143)の大きさは一定に保たれることになる。
【0112】
図6に戻り、第二芯片132(142)は、固定部材132a(142a)と、チャック機構132b(142b)とを備えている。
【0113】
固定部材132a(142a)は、巻芯13(14)の回転軸方向に延びるとともに、断面半楕円形状をなしており、その円弧状の外周面に対し各種シート2〜5が巻回されるようになっている。
【0114】
チャック機構132b(142b)は、固定部材132a(142a)におけるスリット133(143)に対応する部位に設けられている。チャック機構132b(142b)は、内部が中空状とされており、図示しないエア供給排出機構と接続されている。そして、このエア供給排出機構によって、チャック機構132b(142b)の内部空間に対するエアの供給、及び、チャック機構132b(142b)の内部空間からのエアの排出が可能となっている。
【0115】
チャック機構132b(142b)は、その内部空間に対するエアの供給により膨張することで、その一部が固定部材132a(142a)におけるスリット133(143)側の面から突出した状態となる。一方、チャック機構132b(142b)は、その内部空間からのエアの排出により収縮することで、その全体が固定部材132a(142a)におけるスリット133(143)側の面から突出しない状態となる。かかる構成によって、スリット133(143)に挿通されたセパレータシート2,3を、チャック機構132b(142b)及び第一芯片131(141)によって挟持することが可能となっている。
【0116】
続いて、制御装置91の構成について説明する。制御装置91は、演算手段としてのCPUや、各種プログラムを記憶するROM、演算データや入出力データなどの各種データを一時的に記憶するRAM、演算データ等を長期記憶するハードディスクなどを備えており、上述の通り、巻回部11や各供給機構31,41,51,61の動作を制御する。
【0117】
制御装置91によって、巻回部11に対する電極シート4,5の供給開始・供給停止タイミング、巻芯13,14の回転、通電端子19の動作、及び、通電端子19から接点部135(145)に対する供給電力などが制御される。例えば、制御装置91は、図示しないエンコーダから電極シート4,5の繰出量に関する情報が入力されるようになっており、電極シート4,5の繰出量がそれぞれ所定値となったときに、電極シート4,5の繰出し(供給)を停止する。
【0118】
ところで、巻回される電極シート4,5の厚さが基準値に対して大きい又は小さい場合、得られた電池素子1において、タブ4a,5aの位置にずれが生じてしまうおそれがある。そこで、制御装置91は、タブ4a,5aの位置ずれを抑制すべく、電極シート4,5の厚さに基づき、通電端子19からアクチュエータ843へと供給する電力を調節し、可動芯片82の移動量及び移動方向を制御することで、巻芯13,14の周長を変更する。
【0119】
詳述すると、制御装置91は、入力された両測長ローラ77c,77dの回転量に関する情報に基づき、電極シート4,5の繰出し開始から繰出し停止までの間、両測長ローラ77c,77d間を通過する一素子分の電極シート4,5におけるその長手方向に沿った全域の厚さを計測する。この両測長ローラ77c,77d間を通過する一素子分の電極シート4,5は、次回巻回時に巻き取られるものである。尚、制御装置91には、両測長ローラ77c,77dにおける回転量の差と電極シート4,5の厚さとの対応関係を示すテーブルが予め記憶されており、当該テーブルを参酌することで、両測長ローラ77c,77d間を通過している電極シート4,5の厚さが得られるようになっている。
【0120】
さらに、制御装置91は、予め記憶された目標周長算出式に基づき、計測された電極シート4,5の厚さ(本実施形態では、各電極シート4,5の厚さの平均値)に応じた、巻芯13(14)の目標周長を算出する。目標周長は、タブ4a,5aの位置ずれを抑制する上で最適と考えられる巻芯13(14)の周長であり、厚さを計測した電極シート4,5の巻回に用いられる巻芯13(14)に対し適用される。計測された電極シート4,5の厚さが比較的大きい場合、目標周長は、比較的小さなものとされる。一方、計測された電極シート4,5の厚さが比較的小さい場合、目標周長は、比較的大きなものとされる。目標周長は、電池素子1を特定するための通し番号とともに前記ハードディスクに記憶される。
【0121】
その後、制御装置91は、算出した目標周長と現在の巻芯13(14)の周長との差分に基づき、補正値aを算出する。補正値aの分だけ、固定芯片81及び可動芯片82間の距離Lが変更されることで、巻芯13(14)の周長を目標周長とすることができる。
【0122】
さらに、制御装置91は、算出された補正値aに基づき、通電端子19から接点部135(145)に対する供給電力を決定する。例えば、制御装置91は、通電端子19から接点部135(145)へと印加される電圧の大小や正負、印加時間などを決定する。本実施形態において、制御装置91は、予め記憶された補正値aと供給電力との対応関係を示すテーブルに基づき、供給電力を決定する。決定した供給電力に関する情報は、電池素子1を特定するための通し番号とともに前記ハードディスクに記憶される。
【0123】
そして、制御装置91は、各種シート2〜5の巻回前であって、巻芯13(14)が停止しているときに、通電端子19を接点部135(145)に接触させた上で、アクチュエータ843に電力を供給し、距離Lを補正値aの分だけ増減させる。これにより、巻芯13(14)の周長は、算出された目標周長に対応するものとされる。尚、制御装置91は、変更後における巻芯13(14)の周長を、現在の巻芯13(14)の周長として前記ハードディスクに記憶する。次に巻芯13(14)の周長を変更する際には、この記憶された巻芯13(14)の周長に基づき、補正値aなどが算出される。
【0124】
次に、上述の巻回装置10を用いた電池素子1の製造工程について説明する。電池素子1の製造工程は、一素子分の電極シート4,5の厚さに基づき、これら一素子分の電極シート4,5が巻回される際に用いられる補正値aとアクチュエータ843に対する供給電力とを決定する工程(補正値・供給電力決定工程)、及び、前記一素子分の電極シート4,5が巻回される工程(巻回工程)を含む。尚、これら両工程は、同時期に実施されるが、本実施形態では、説明の便宜上、これら両工程を分けて説明する。
【0125】
まず、補正値・供給電力決定工程について、
図17のフローチャートに従って説明する。尚、両電極シート4,5はシート挿入機構71によって把持されるとともに、セパレータシート2,3は電極シート4,5の供給対象である一方の巻芯13(14)に対し所定量巻き取られた状態となっている。
【0126】
補正値・供給電力決定工程では、まず、ステップS11において、負電極シート供給機構41のシート挿入機構71により一方の巻芯13(14)側に対し負電極シート5が供給される。具体的には、負電極シート5を把持するシート挿入機構71が巻回部11側に接近し、セパレータシート2,3間に負電極シート5が挿入されることで、負電極シート5が供給される。尚、挿入後、シート挿入機構71による負電極シート5の把持が解除されるとともに、シート挿入機構71が元の位置に戻る。
【0127】
負電極シート5の供給に伴い、負電極シート5が両測長ローラ77c,77d間を動き始めることとなり、ステップS12において、厚さ計測機構77による負電極シート5の厚さ計測が開始される。
【0128】
次いで、ステップS13において、負電極シート5の供給後、一方の巻芯13(14)が所定数回転(例えば、1回転)した段階で、正電極シート供給機構31のシート挿入機構71により一方の巻芯13(14)側に対し、正電極シート4が供給される。具体的には、正電極シート4を把持するシート挿入機構71が巻回部11側に接近し、セパレータシート2,3間に正電極シート4が挿入されることで、正電極シート4が供給される。尚、挿入後、シート挿入機構71による正電極シート4の把持が解除されるとともに、シート挿入機構71が元の位置に戻る。
【0129】
正電極シート4の供給に伴い、正電極シート4が両測長ローラ77c,77d間を動き始めることとなり、ステップS14にて、厚さ計測機構77による正電極シート4の厚さ計測が開始される。
【0130】
そして、両電極シート4,5が供給されると、一方の巻芯13(14)が回転することで、両電極シート4,5が順次繰出されていく。これにより、電極シート4,5がそれぞれ両測長ローラ77c,77d間を通過していき、電極シート4,5の厚さが連続的に計測されていく。
【0131】
続くステップS15では、供給開始からの正電極シート4の繰出量が所定量に到達したか否かの判定が、当該条件を満たすまで繰り返し行われる。
【0132】
ステップS15で肯定判定された場合、つまり、一素子分の正電極シート4のその長手方向に沿った全域の厚さが計測された場合、ステップS16に移行し、計測された正電極シート4の厚さの平均値が算出される。尚、ステップS15にて肯定判定された時点で、一方の巻芯13(14)に対する正電極シート4の供給は停止されることとなる。
【0133】
さらに続くステップS17では、供給開始からの負電極シート5の繰出量が所定値に到達したか否かの判定が、当該条件を満たすまで繰り返し行われる。
【0134】
ステップS17で肯定判定された場合、つまり、一素子分の負電極シート5のその長手方向に沿った全域の厚さが計測された場合、ステップS18に移行し、計測された負電極シート5の厚さの平均値が算出される。尚、ステップS17において肯定判定された時点で、一方の巻芯13(14)に対する負電極シート5の供給は停止される。
【0135】
次いで、ステップS19において、上述した目標周長算出式と他方(次に各種シート2〜5が巻回される予定)の巻芯14(13)における現在の周長とに基づき、得られた各電極シート4,5の厚さの平均値に応じた補正値aを算出する。
【0136】
続くステップS20では、上述した補正値aと供給電力との対応関係を示すテーブルを用いて、算出した補正値aに基づき供給電力を決定する。その後、決定された供給電力と目標周長とを電池素子1の通し番号とともにハードディスクに保存し、補正値・供給電力決定工程を終了する。
【0137】
次いで、巻回工程について、
図18のフローチャートを参照して説明する。
【0138】
巻回工程では、まず、ステップS31において、巻芯13(14)の周長を変更する必要性の有無が判定される。巻芯13(14)の周長を変更する必要がある場合、すなわち、目標周長と現在の巻芯13(14)の周長とが所定値以上異なる場合、ステップS32に移行する。一方、巻芯13(14)の周長を変更する必要がない場合、ステップS32をスキップしてステップS33へと移行する。
【0139】
ステップS32では、通電端子19が、取外しポジションP2に位置する、一方の巻芯13(14)の接点部135(145)に対し接近移動する(
図19参照)。この一方の巻芯13(14)は、電池素子1が取外され、停止状態とされている。そして、通電端子19が接点部135(145)に接触した上で、接点部135(145)を介して、アクチュエータ843に対し予め決定された供給電力が供給される。この供給電力は、この一方の巻芯13(14)に巻回される予定の電極シート4,5の厚さに基づき決定されたものである。
【0140】
これにより、前記距離Lは補正値aの分だけ増減させられる。その結果、一方の巻芯13(14)の周長は、一方の巻芯13(14)に対し巻回される予定の電極シート4,5の厚さに適したものに設定される。
【0141】
その後、通電端子19を接点部135(145)から離間させて、前記退避位置へと移動させる。一方の巻芯13(14)における前記距離Lは、増減後の大きさで維持される。結果的に、一方の巻芯13(14)の周長も、増減後の大きさで維持される。
【0142】
次いで、ステップS33において、ターレット12における一方のテーブルに対し一方の巻芯13(14)が没するとともに、チャック機構132b(142b)が収縮した状態で、ターレット12を回転させる。これにより、取外しポジションP2にあった一方の巻芯13(14)が巻回ポジションP1側へと移動していく。
【0143】
そして、一方の巻芯13(14)が巻回ポジションP1へと配置されると、当該一方の巻芯13(14)のスリット133(143)と、ガイドローラ78a,78b及び支持ローラ15a(15b)に架け渡されたセパレータシート2,3の延びる方向とが正面視重なった状態で、一方の巻芯13(14)が、ターレット12における一方のテーブルから突出する。これにより、一方の巻芯13(14)のスリット133(143)に対しセパレータシート2,3が配置された状態となる(
図20参照)。また、巻芯13(14)の先端部に設けられた被支持部85がターレット12における他方のテーブルで支持された状態となる。尚、巻芯13(14)の周長を変更しても、スリット133(143)の大きさは変化しないため、スリット133(143)に対しセパレータシート2,3をより確実に配置することが可能である。
【0144】
次いで、ステップS34において、チャック機構132b(142b)を膨張させ、第一芯片131(141)とチャック機構132b(142b)とでセパレータシート2,3を挟み込んだ状態とする。その上で、一方の巻芯13(14)を所定数だけ回転させる。これにより、一方の巻芯13(14)に対しセパレータシート2,3が所定量だけ巻き取られた状態となる。
【0145】
その上で、続くステップS35において、一方の巻芯13(14)に対し電極シート4,5が供給される。具体的には、上記の通り、負電極シート供給機構41のシート挿入機構71により一方の巻芯13(14)側に対し負電極シート5が供給され、その後、一方の巻芯13(14)が所定数回転(例えば、1回転)した段階で、正電極シート供給機構31のシート挿入機構71により一方の巻芯13(14)側に対し正電極シート4が供給される。
【0146】
両電極シート4,5の供給後、一方の巻芯13(14)の回転に伴い、一方の巻芯13(14)に対し各種シート2〜5が巻回されていく。
【0147】
続くステップS36では、供給開始からの正電極シート4の繰出量が所定量に到達したか否かの判定が、当該条件を満たすまで繰り返し行われる。ステップS36で肯定判定された場合、つまり、現在巻回されている一素子分の正電極シート4の終端部がシート切断カッタ72に到達した場合、一方の巻芯13(14)の回転動作が一時停止され、正電極シート4の供給が停止される。
【0148】
さらに、続くステップS37において、シート挿入機構71により正電極シート4が把持された上で、シート切断カッタ72により正電極シート4が切断される。その後、一方の巻芯13(14)の巻回動作が再開される。
【0149】
次いで、ステップS38において、供給開始からの負電極シート5の繰出量が所定値に到達したか否かの判定が、当該条件を満たすまで繰り返し行われる。ステップS38で肯定判定された場合、すなわち、現在巻回されている一素子分の負電極シート5の終端部がシート切断カッタ72に到達した場合には、一方の巻芯13(14)の回転動作が一時停止され、負電極シート5の供給が停止される。
【0150】
そして、続くステップS39において、シート挿入機構71により負電極シート5が把持された上で、シート切断カッタ72により負電極シート5が切断される。
【0151】
次いで、ステップS40において、一方の巻芯13(14)の回転を再開させることにより、電極シート4,5の終端部分(巻き残し部分)が巻き取られる。
【0152】
続くステップS41では、セパレータシート2,3が切断されることなく、ターレット12が回転させられる。これにより、巻回ポジションP1にあった一方の巻芯13(14)がセパレータ供給機構51,61からセパレータシート2,3を引き出しつつ、取外しポジションP2側へと移動していく。一方、取外しポジションP2にあった他方の巻芯14(13)が、ターレット12の一方のテーブルに没した状態で、巻回ポジションP1側へと移動していく。尚、ターレット12の回転前に、他方の巻芯14(13)の周長は、次に巻回される電極シート4,5の厚さに対応したものに予め調節されている。
【0153】
続いて、ステップS42において、ターレット12の回転に併せて、各種シート2〜5の巻回されている一方の巻芯13(14)が自身の中心軸を回転軸として回転させられる。
【0154】
そして、次のステップS43において、巻終わり処理を実行する。巻終わり処理では、まず、一方の巻芯13(14)の回転数が所定数に到達した時点で、一方の巻芯13(14)の回転が停止される。尚、一方の巻芯13(14)の回転が停止する前、停止と同時、又は、停止した後に、ターレット12の回転が停止されることとなる。
【0155】
一方の巻芯13(14)及びターレット12の回転が停止されると、巻回ポジションP1にあった一方の巻芯13(14)が取外しポジションP2に位置し、取外しポジションP2にあった他方の巻芯14(13)が巻回ポジションP1に位置した状態となる(
図21参照)。さらに、このときには、一方の巻芯13(14)とガイドローラ78a,78b間において、セパレータシート2,3が一方の支持ローラ15a(15b)に架けられた状態となっている。
【0156】
この状態で、押えローラ17を一方の巻芯13(14)に接近させ、押えローラ17により各種シート2〜5を押えた上で、セパレータカッタ16がセパレータシート2,3に接近することにより、セパレータシート2,3が切断される。
【0157】
尚、セパレータシート2,3の切断に先立って、他方の巻芯14(13)がターレット12の一方のテーブルから突出することで、他方の巻芯14(13)のスリット143(133)にセパレータシート2,3が挿通される。さらに、チャック機構142b(132b)等によりセパレータシート2,3を挟持した上で、他方の巻芯14(13)が所定量だけ回転することにより、他方の巻芯14(13)の外周にセパレータシート2,3が所定量だけ巻き付けられる。
【0158】
セパレータシート2,3の切断後、押えローラ17により各種シート2〜5を押えた状態のまま、一方の巻芯13(14)を回転させる。これにより、セパレータシート2,3及び電極シート4,5の終端部分がばらけることなく完全に巻取られる。その後、テープ貼付機構18により、セパレータシート2,3の終端部が前記固定用テープにより巻止めされ、巻終わり処理が終了される。
【0159】
そして最後に、ステップS44において、チャック機構132b(142b)が収縮し、セパレータシート2,3の把持が解除された上で、前記取外装置によって、一方の巻芯13(14)から電池素子1が取外されることにより、巻回工程が終了される。
【0160】
尚、ステップS44に先立って、通電端子19を一方の巻芯13(14)の接点部135(145)と接触させ、アクチュエータ843へと所定の電力を供給することで、一方の巻芯13(14)の周長を減少させてもよい(
図22参照)。この場合には、一方の巻芯13(14)からその外周に位置する電池素子1(各種シート2〜5)へと加わる応力が減少するため、電池素子1の取外しが容易になる。尚、通電端子19を接点部135(145)へと接触させた状態のままで、電池素子1の取外後に、この通電端子19に対し、巻芯13(14)の周長を変更するための電力を供給してもよい。
【0161】
以上詳述したように、本実施形態によれば、カム部841aの外周面に対し、両芯片81,82間の距離Lが変更する方向に沿って可動芯片82が押付けられた状態とされている。そして、制御装置91によって、計測された電極シート4,5の厚さに基づきアクチュエータ843の動作が制御され、カム軸841を回転させることにより、可動芯片82は、距離Lが変更する方向に沿って移動する。これにより、巻芯13(14)の周長を変更することができる。このように電極シート4,5の厚さに基づき巻芯13(14)の周長を変更することで、例えば、電池素子1の周方向に沿った目標の配置範囲にタブ4a,5aをより確実に配置することが可能となる。
【0162】
より具体的に説明すると、計測された電極シート4,5の厚さが比較的大きい場合、つまり、
図23に示すように、各種シート2〜5の巻回が進むにつれて、電極シート4,5のタブ4a,5aが通常配置されるべき位置(
図23の点線上の位置)よりも徐々に巻芯13(14)の回転方向前方側(以下、単に「前方側」と称す)にずれていくこととなる場合、巻芯13(14)の周長は比較的小さなものとされる。これにより、巻回当初において、電極シート4,5における各部位は通常配置されるべき位置よりも巻芯13(14)の回転方向後方側(以下、単に「後方側」と称す)に配置されることとなる。そして、このように後方側へと配置位置がずれている分だけ、巻回が進むことに伴いタブ4a,5aが徐々に前方側へとずれていっても、そのずれが吸収されることとなる。その結果、タブ4a,5aが通常配置されるべき位置よりも前方側に大きくずれて配置されてしまうといった事態をより生じにくくすることができる。
【0163】
一方、計測された電極シート4,5の厚さが比較的小さい場合、つまり、
図24に示すように、巻回が進むにつれて、電極シート4,5のタブ4a,5aが通常配置されるべき位置(
図24の点線上の位置)よりも徐々に後方側に配置されていくこととなる場合、巻芯13(14)の周長が比較的大きなものとされる。これにより、巻回当初において、電極シート4,5における前記各部位は通常配置されるべき位置よりも前方側に配置されることとなる。そして、このように前方側へと配置位置がずれている分だけ、巻回が進むことに伴いタブ4a,5aが徐々に後方側へとずれていっても、そのずれが吸収されることとなる。その結果、タブ4a,5aが通常配置されるべき位置よりも後方側に大きくずれて配置されてしまうといった事態をより生じにくくすることができる。
【0164】
さらに、巻芯13(14)の周長を増減させても、スリット133(143)の大きさは、変わることなく一定に保たれる。従って、スリット133(143)に対するセパレータシート2,3の配置に支障が生じてしまうことをより確実に防止でき、装置の動作安定性をより高めることができる。
【0165】
加えて、ガイド83は、可動芯片82における電極シート4,5等が巻回される部位から外れた位置に設けられている。従って、巻芯13(14)の大型化(大径化)を抑えることができ、巻芯13(14)の小型化をより確実に図ることができる。
【0166】
また、ガイド83によって、巻き締め力に抗して可動芯片82が支持される。従って、巻き締め力による可動芯片82の変形(撓みや捻りなど)を一層確実に防止することができ、巻芯13(14)の周長をより確実に一定に維持することができる。
【0167】
さらに、ガイド83として、ガイドロッド831及びスライドロッド832が巻芯13,14の回転軸方向に沿って並ぶようにして配置されたクロスローラガイドが利用される。そのため、巻芯13(14)の回転軸と直交する方向、すなわち、巻芯13(14)の径方向に沿ったガイド83の厚さをより小さなものとすることができる。これにより、巻芯13,14の小型化をより効果的に図ることができる。
【0168】
加えて、何らかの理由によりカム軸841に対しその回転方向の力が加わったとしても、ウォーム844a及び平歯車844b(つまりウォームギア844)によるセルフロックによって、平歯車844bの回転を規制することができ、ひいてはカム軸841をロックした状態で維持することができる。これにより、カム軸841の意図しない回転を効果的に抑制することができ、ひいては巻芯13(14)の周長の意図しない変化をより確実に防止することができる。
【0169】
また、ウォーム844aから平歯車844bに対し、回転数を減じつつ動力を伝達するため、平歯車844bの回転角度ひいてはカム軸841の回転角度を微調整することができる。これにより、固定芯片81及び可動芯片82間の距離Lを微調整することができ、巻芯13(14)の周長のより細かな変更が可能となる。
【0170】
さらに、アクチュエータ843はブレーキ付きモータであるため、電力の非供給時、すなわち、電力の供給により巻芯の周長を変更するとき以外における軸部843aの回転を規制することができる。従って、巻回時の振動などにより軸部843aが回転してしまうことをより確実に防止でき、巻芯13(14)の周長が意図せず変化することをより確実に防止できる。
【0171】
また、アクチュエータ843に対する電力供給、すなわち、巻芯13(14)の周長変更は、巻芯13(14)の停止時のみに行われる。従って、巻芯13(14)の回転時にアクチュエータ843へと電力を供給するための複雑な装置(例えば、スリップリング等)を設ける必要がない。これにより、巻回装置10の簡素化を図ることができ、装置の製造等に係るコストの低減を図ることができる。
【0172】
加えて、通電端子19及び接点部135,145により、アクチュエータ843へと電力を供給する機構であるため、アクチュエータ843に対する電力の供給機構を、非常に簡素な構成により実現することができる。これにより、巻回装置10の製造等に係るコストの低減をより効果的に図ることができる。
【0173】
また、被支持部85は固定芯片81の先端部に設けられているため、巻芯13(14)の周長を変更させるべく、可動芯片82を移動させたときに、可動芯片82の移動に合わせて被支持部85が移動してしまうといった事態は生じない。従って、受け部によって被支持部85を安定した状態で支持することができる。また、被支持部85の位置変化に合わせて、受け部の位置を調節したり、受け部を交換したりするといったことは不要となる。そのため、巻回装置10の簡素化をより図ることができる。さらに、メンテナンス等をより容易に行うことが可能となる。
【0174】
加えて、アクチュエータ843は巻芯13(14)の基端側にのみ設けられている。これにより、巻芯13(14)の小型化やコストの低減をより効果的に図ることができる。
【0175】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0176】
(a)上記実施形態における巻芯13,14の構成は一例であって、巻芯13,14の構成は適宜変更可能である。従って、例えば、
図25に示すように、固定芯片86に対し、可動芯片87が、巻芯13(14)の軸直交断面におけるスリット133(143)の延びる方向と交差する方向(例えば、
図25の黒塗り矢印方向)に沿って移動するように巻芯13(14)を構成してもよい。
【0177】
また、巻芯の形状に関しても適宜変更可能であり、例えば、巻芯の回転軸と直交する断面において、巻芯の外形線が円形状や長円形状、扁平状などをなすように構成してもよい。
【0178】
(b)上記実施形態において、カム部841aは、カム軸841の軸方向に沿って間隔をあけて設けられているが、カム部841aをカム軸841の軸方向に沿って連続的に設けてもよい。例えば、カム軸841の大部分にカム部841aを設けてもよい。また、可動芯片82のより広範囲をカム部841aに対し押付けるようにしてもよい。
【0179】
(c)上記実施形態において、カム部841aは、カム軸841における断面円形状の部位(カム部841a以外の部位)よりも細いものとされているが、カム部841aを前記部位よりも太いものとしてもよい。この場合、可動芯片82からの負荷などによるカム軸841の変形をより確実に防止することができ、巻芯13(14)の周長を一定に保つことが一層確実に可能となる。
【0180】
(d)上記実施形態では、押圧手段としてばね842を用いているが、押圧手段は、カム部841aの外周面に対し可動芯片82を押付けるものであればよい。従って、例えば、磁石などによって押圧手段を構成してもよい。
【0181】
(e)上記実施形態では、軸部843aに取付けられたウォーム844aが、カム軸841に取付けられた平歯車844bに噛合されるように構成されている。すなわち、軸部843aからカム軸841に対する動力の伝達機構は、ウォーム844a及び平歯車844bからなるウォームギア844のみによって構成されている。これに対し、軸部843aからカム軸841に対する動力の伝達機構に、ウォームギア以外の機構(例えば、歯車など)を設けてもよい。勿論、動力の伝達機構に、ウォームギアを設けなくてもよい。
【0182】
(f)上記実施形態において、チャック機構132b,142bはエアにより膨張・収縮することで動作するように構成されているが、チャック機構の構成は適宜変更可能である。また、チャック機構を設けないように構成してもよい。
【0183】
(g)上記実施形態では、第一芯片131(141)のみが巻芯13(14)の周長を変更するための機能を備えたものとされている。これに対し、例えば、チャック機構を設けない場合などでは、第一芯片131(141)及び第二芯片132(142)の双方が、巻芯13(14)の周長を変更するための機能を備えていてもよい。
【0184】
(h)上記実施形態では、巻芯13(14)の周長を調節することで、タブ4a,5aの位置ずれ抑制が図られているが、巻芯13(14)の周長とともに、巻回時に各種シート2〜5に付与される張力を調節することで、タブ4a,5aの位置ずれをより確実に抑制するように構成してもよい。
【0185】
(i)上記実施形態におけるタブ4a,5aは、理想状態において、それぞれ1列に並ぶように構成されているが、理想状態におけるタブ4a,5aの配設位置は、適宜変更可能である。例えば、理想状態において、タブ4a,5aが2列に並ぶように構成してもよい。
【0186】
(j)上記実施形態では、巻回前の電極シート4,5の厚さに基づき、補正値aやアクチュエータ843への供給電力が決定されているが、巻回後の電極シート4,5の厚さ(得られた電池素子1における電極シート4,5の厚さ)に基づき、次回以降の巻回時にて使用される補正値aや供給電力を決定するように構成してもよい。すなわち、得られた電池素子1における電極シート4,5の厚さに基づき、次回以降の巻回時に使用される補正値aや供給電力がフィードバック制御されるように構成してもよい。尚、巻回後の電極シート4,5の厚さは、電池素子1の端面の撮像画像などを解析すること等により得ることができる。
【0187】
また、例えば、シート原反32,42を構成する電極シート4,5の厚さを予め計測しておき、その予め計測した厚さに基づいて補正値aなどを決定してもよい。
【0188】
(k)上記実施形態において、巻芯13(14)は、取外しポジションP2に配置されているときに周長が調節されるように構成されているが、巻芯13(14)が巻回ポジションP1へと配置された段階で、巻芯13(14)の周長を調節するように構成してもよい。尚、この場合には、巻回ポジションP1に対応して通電端子19を設けることが好ましい。
【0189】
(l)補正値aやアクチュエータ843への供給電力は、電極シート4,5の厚さに基づき決定されるものであればよく、これらの算出手法は特に限定されるものではない。従って、例えば、一定時間又は一定の搬送量ごとに計測された電極シート4,5の厚さに基づき、補正値a等を決定してもよい。また、補正値a等を、各電極シート4,5の個々の厚さに基づいて決定してもよいし、各電極シート4,5の厚さの合計値に基づいて決定してもよい。
【0190】
(m)上記実施形態において、タブ4a,5aは、電極シート4,5に対し溶接により接合されたもの(いわゆる溶接タブ)であるが、タブの構成はこれに限定されるものではない。従って、タブは、例えば、電極シートの幅方向端部に切込みを間欠的に設けることにより電極シートにおける前記切込み間に形成されたもの(いわゆる切込みタブ)であってもよい。
【0191】
(n)上記実施形態では、セパレータシート2,3をある程度巻回した後に、シート挿入機構71によって、巻芯13(14)に対し両電極シート4,5が供給されるように構成されている。これに対し、チャック機構132b(142b)によってセパレータシート2,3とともに両電極シート4,5を把持した上で巻回を開始することにより、巻芯13(14)に対する電極シート4,5の供給工程が不要となるように構成してもよい。この場合、スリット133(143)には、各種シート2〜5が配置されることになる。
【0192】
(o)上記実施形態において、巻回部11は、2つの巻芯13,14を備えた構成となっているが、巻芯の数はこれに限定されるものではなく、1つ又は3つ以上の巻芯を備えた構成であってもよい。
【0193】
(p)上記実施形態では、巻回装置10によって、リチウムイオン電池の電池素子1が製造されているが、巻回装置10によって製造される巻回素子はこれに限定されるものではなく、例えば、電解コンデンサの巻回素子等を製造することとしてもよい。
【0194】
(q)セパレータシート2,3や電極シート4,5の材質は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、セパレータシート2,3をPPにより形成することとしているが、他の絶縁性材料によってセパレータシート2,3を形成することとしてもよい。また、例えば、電極シート4,5に塗布される活物質を適宜変更してもよい。
【0195】
(r)上記実施形態において、巻芯13(14)の周長変更は、タブ4a,5aの位置合わせを目的として行われているが、その他の目的で行ってもよい。例えば、電池素子1のサイズ変更に対応したり、電池素子1の外径を一定としたりすること等を目的として、巻芯13(14)の周長変更を行うこととしてもよい。