(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は、優れた機械物性や成形加工性を有することから、電気・電子材料分野、自動車分野、各種工業材料分野などの幅広い分野で用いられているエンジニアリングプラスチックである。特に、近年では、屋内および車室内での過酷な環境においてもポリアセタール樹脂が使用される要求が高まる中、ホルムアルデヒド発生量の少ないポリアセタール樹脂材料が求められている。
【0003】
通常、ポリアセタール樹脂は、ペレット等の所望の形状に加工される際に、各種添加剤と溶融混練される。そして、使用する添加剤に関して、ホルムアルデヒド発生量を効果的に減らし得る成分の追求が、これまでなされてきた。しかしながら、添加剤によっては、ホルムアルデヒド発生量を低減することができたとしても、モールドデポジットの発生など、その他の性質の悪化を招く場合もあった。このような状況の下、添加剤によりホルムアルデヒド発生量を低減するという発想を転換して、ポリアセタール樹脂自体が、ホルムアルデヒドの発生が抑制されているという性質を有していることが望まれている。
【0004】
ところで、ポリアセタール樹脂の製造方法として、トリオキサンと環状エーテルおよび/または環状ホルマールとを重合させて、ポリアセタール樹脂の一種であるポリアセタールコポリマーを製造する方法が、数多く提案されている。
例えば、特許文献1,2では、上述したポリアセタールコポリマーを、三フッ化ホウ素またはその配位化合物を重合触媒として用いて製造する方法や、ヘテロポリ酸やイソポリ酸またはその酸製塩を重合触媒として用いて製造する方法が提案されている。また、例えば、特許文献3では、上述したポリアセタールコポリマーを、パーフルオロアルキルスルホン酸やその誘導体を重合触媒として用いて製造する方法が提案されている。
【0005】
さらに、特許文献4は、トリオキサンと環状エーテルまたは環状ホルマールとの共重合によりポリアセタールコポリマーを得るにあたり、強い重合触媒作用を有する特定の二種以上の触媒を併用することにより、高収率化を達成することができることを開示している。なお、目的物の高収率化は、工業生産する上で重要な課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献4の技術のように、強い重合触媒作用を有する触媒を多量にあるいは複数種用いれば、ある程度のポリアセタールコポリマー収率の向上は見られるものの、当該技術には、添加剤等を配合しない場合には、触媒残渣により、ポリアセタールコポリマー自体のホルムアルデヒド発生量が増加するという問題があった。また、重合収率を上げるために重合触媒を多量に用いた場合には、重合開始点の増加による低分子量化が顕著となり、特に機械物性に優れる高分子量ポリアセタールコポリマーの製造が困難であった。
【0008】
そこで、本発明は、ホルムアルデヒド発生量が少なく、かつ分子量の高いポリアセタールコポリマーを、高い重合収率で安定的に得ることが可能な、ポリアセタールコポリマーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討を行なった結果、特定のカチオン重合触媒と、単独では重合触媒作用を有さない特定の触媒助剤とを併用することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の通りである。
〔1〕
トリオキサンと環状エーテルおよび/または環状ホルマールとの重合を行う工程を含む、ポリアセタールコポリマーの製造方法であって、
前記重合は、カチオン重合触媒および触媒助剤の存在下で行われ、
前記カチオン重合触媒が、周期表の第3周期から第6周期、かつ、第3族から第16族の金属元素を有する金属ハロゲン化物であり、
前記触媒助剤が、ハロゲン化水素である、
ことを特徴とする、ポリアセタールコポリマーの製造方法。
〔2〕
前記カチオン重合触媒が金属塩化物である、項目〔1〕に記載のポリアセタールコポリマーの製造方法。
〔3〕
前記カチオン重合触媒の添加量が、トリオキサン1molに対して、1×10
−8〜1×10
−5molの範囲である、項目〔1〕または〔2〕に記載のポリアセタールコポリマーの製造方法。
〔4〕
前記カチオン重合触媒が、三塩化鉄または三塩化ガリウムである、項目〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載のポリアセタールコポリマーの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリアセタールコポリマーの製造方法によれば、ホルムアルデヒド発生量が少なく、かつ分子量の高いポリアセタールコポリマーを、高い重合収率で安定的に得ることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という。)について、以下詳細に説明する。本発明は、以下の本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0013】
本実施の形態のポリアセタールコポリマーの製造方法は、トリオキサンと環状エーテルおよび/または環状ホルマールとの重合を行う工程を含み、前記重合は、カチオン重合触媒および触媒助剤の存在下で行われ、前記カチオン重合触媒が、周期表の第3周期から第6周期、かつ、第3族から第16族の金属元素を有する金属ハロゲン化物であり、前記触媒助剤が、ハロゲン化水素である、ことを特徴とする。本実施の形態では、トリオキサンと環状エーテルおよび/または環状ホルマールとを重合させることにより、ポリアセタールコポリマーを得ることができる。
【0014】
<トリオキサン>
本実施の形態に用いるトリオキサンは、例えば、酸性触媒の存在下でホルムアルデヒドを反応させることにより製造することができる。このようにして得られるトリオキサンは、通常、水、ギ酸などの連鎖移動可能な成分(不純物)を含有している。これら連鎖移動可能な成分が含まれていると、重合により得られるポリアセタールコポリマーのポリマー末端基が熱的に不安定な状態となり、熱安定性の高いポリアセタールコポリマーを得ることが難しくなる。そのため、これら連鎖移動可能な成分(不純物)を、重合開始までに、一定濃度まで精製除去することが好ましい。トリオキサンにおけるこれら連鎖移動可能な成分(不純物)の合計含有量は、トリオキサンに対して100質量ppm以下であることが好ましく、50質量ppm以下であることがより好ましく、30質量ppm以下であることがさらに好ましい。これら連鎖移動可能な成分(不純物)の含有量が前記範囲内にあるトリオキサンを用いれば、熱安定性により優れたポリアセタールコポリマーを製造することができる傾向にある。
【0015】
<環状エーテルおよび/または環状ホルマール>
本実施の形態に用いる環状エーテルおよび/または環状ホルマールは、トリオキサンと共重合可能な成分(コモノマー成分)である。具体的に、環状エーテルおよび/または環状ホルマールとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、スチレンオキサイド、オキセタン、1,3−ジオキソラン、エチレングリコールホルマール、プロピレングリコールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、トリエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,5−ペンタンジオールホルマール、1,6−ヘキサンジオールホルマール等を挙げることができる。これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
重合時における、環状エーテルおよび/または環状ホルマールの添加量は、トリオキサン1molに対して、0.01〜0.2molの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.15molの範囲であり、さらにこの好ましくは0.01〜0.1molの範囲であり、特に好ましくは0.01〜0.05molの範囲である。環状エーテルおよび/または環状ホルマールの添加量が前記範囲内にあれば、重合速度がある程度速く、重合収率も十分高くなり、安定的にポリアセタールコポリマーを製造することができる傾向にある。
【0017】
<カチオン重合触媒>
本実施の形態に用いるカチオン重合触媒は、周期表の第3周期から第6周期、かつ、第3族から第16族の金属元素を有する、金属ハロゲン化物である。
【0018】
金属元素としては、例えば、アルミニウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、テルル、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、タリウム、鉛、ビスマス、ポロニウム等が挙げられる。また、前記金属元素を有する金属ハロゲン化物としては、鉄、亜鉛、ガリウム、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、ハフニウム、インジウム、またはビスマスを有する金属塩化物、金属フッ化物、金属臭化物または金属ヨウ化物であることが好ましい。
これらの金属ハロゲン化物をカチオン重合触媒として用いた場合には、重合反応機内で重合触媒が揮発することなく、一定にカチオン重合触媒をフィードできるため、重合収率のばらつきが少なく、より安定的にポリアセタールコポリマーを製造することができる傾向にある。
【0019】
また、本実施の形態に用いるカチオン重合触媒は、金属塩化物であることが好ましい。金属塩化物としては、例えば、前述した金属元素を有する金属塩化物であることが好ましく、鉄、亜鉛、ガリウム、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、ハフニウム、インジウム、ビスマスを有する金属塩化物であることがより好ましい。さらに好ましくは、三塩化鉄、塩化亜鉛、三塩化ガリウム、四塩化チタン、三塩化アルミニウム、四塩化ジルコニウム、四塩化ハフニウム、三塩化インジウム、三塩化ビスマスであり、特に好ましくは、三塩化鉄、三塩化ガリウムである。これらのカチオン重合触媒を用いることで、ポリマー中に残存するカチオン重合触媒によるポリアセタールコポリマーの熱分解が少なくなるため、熱的により安定なポリアセタールコポリマーを製造することができるとともに、ポリアセタールコポリマーからのホルムアルデヒド発生量がより低減される傾向にある。
【0020】
重合時における、カチオン重合触媒の添加量は、トリオキサン1molに対して、1×10
−8〜1×10
−5molの範囲が好ましく、より好ましくは5×10
−8〜5×10
−6molの範囲であり、さらに好ましくは1×10
−7〜1×10
−6molの範囲である。カチオン重合触媒の添加量が前記範囲内にあれば、ポリアセタールコポリマーの熱分解を十分に抑えることができ、熱的により安定なポリアセタールコポリマーを製造することができるとともに、ポリアセタールコポリマーからのホルムアルデヒド発生量が一層低減される傾向にある。
【0021】
なお、本実施の形態に用いるカチオン重合触媒は、重合反応に悪影響のない不活性な希釈溶媒で希釈して用いることが望ましい。カチオン重合触媒を希釈して用いることで、重合反応をより均一に行うことができ、物性のばらつきがより少ないポリアセタールコポリマーを製造することができる傾向にある。
【0022】
重合触媒を希釈するための希釈溶媒としては、水酸基を有さない炭化水素化合物であることが望ましい。炭化水素化合物の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素化合物;n−ヘキサン、n−へプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素化合物;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、1,4−ジオキサンなどのエーテル化合物;等が挙げられ、用いるカチオン重合触媒の溶解性に応じて適宜選択することができる。上記水酸基を有さない炭化水素化合物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。このような水酸基を有さない炭化水素化合物を希釈溶媒として用いることで、ポリアセタールコポリマーの分子量を容易にコントロールすることができる。
【0023】
重合時における、カチオン重合触媒用の希釈溶媒の添加量は、トリオキサン1molに対して、0.1×10
−3〜0.2molの範囲が好ましく、より好ましくは0.2×10
−3〜0.1molの範囲であり、さらに好ましくは0.5×10
−3〜0.05molの範囲である。カチオン重合触媒用の希釈溶媒の添加量が前記範囲内であれば、重合反応を阻害することなく、より高収率でポリアセタールコポリマーを得ることができる傾向にある。
【0024】
<触媒助剤>
本実施の形態に用いる触媒助剤は、ハロゲン化水素である。また、本実施の形態に用いる触媒助剤は、通常、それ単独では重合触媒作用を有さないものである。本発明者らは、驚くべきことに、ハロゲン化水素である触媒助剤を、上述した特定のカチオン重合触媒と併用して重合を行うことで、得られるポリアセタールコポリマーの高分子量化およびホルムアルデヒド発生量の低減、ならびに、高い重合収率、および製造時の安定化を、同時に達成することができることを見出した。
さらに、本実施の形態では、上述した併用により、ポリアセタールコポリマーの高重合収率化を短時間で達成できる、という効果を得ることもできる。
【0025】
ハロゲン化水素としては、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素が挙げられ、特に、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素を用いることが好ましい。これらのハロゲン化水素は、重合触媒等と作用しやすく、より短い重合時間で高い収率のポリマーを得ることができる。
【0026】
なお、本実施の形態に用いる触媒助剤は、カチオン重合触媒と同様に、重合反応に悪影響のない不活性な希釈溶媒で希釈して用いることが望ましい。触媒助剤を希釈して用いることで、重合反応をより均一に行うことができ、物性のばらつきがより少ないポリアセタールコポリマーを製造することができる。
【0027】
触媒助剤を希釈するための希釈溶媒としては、前記重合触媒を希釈するための希釈溶媒と同様のものを使用することができ、その溶解性に応じて適宜選択することができる。特に、触媒助剤を希釈するための希釈溶媒は、併用される重合触媒を希釈するための希釈溶媒と同種のものであることが好ましい。
【0028】
<分子量調整剤>
本実施の形態においては、分子量調整剤として、低分子量アセタール化合物を使用してもよい。低分子量アセタール化合物は、トリオキサンと環状エーテルおよび/または環状ホルマールとの重合時に連鎖移動剤として機能するものであり、分子量が200以下、好ましくは60〜170のアセタール化合物である。具体的に、分子量調整剤としては、メチラール、メトキシメチラール、ジメトキシメチラール、トリメトキシメチラールを好適に挙げることができる。これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、重合時における低分子量アセタール化合物の添加量は、ポリアセタールコポリマーの分子量を好適な範囲に制御する観点から、トリオキサン1molに対して0.1×10
−4〜0.6×10
−2molの範囲内であることが好ましい。
【0029】
<ポリアセタールコポリマー>
ポリアセタールコポリマーは、トリオキサンと環状エーテルおよび/または環状ホルマールとを重合させて得ることができる。ポリアセタールコポリマーは、例えば、塊状法でのカチオン重合により重合されるものである。また、使用する重合反応機の形状(構造)としては、特に限定するものではないが、一般的には、ジャケットに熱媒を通すことのできる2軸のパドル式やスクリュー式の撹拌混合型重合反応機を好適に使用することができる。
【0030】
重合の方法としては、例えば、トリオキサン、環状エーテルおよび/または環状ホルマール、触媒助剤、カチオン重合触媒、ならびに任意の分子量調整剤を重合反応機に供給し、重合させる方法が挙げられる。あるいは、重合前に、環状エーテルおよび/または環状ホルマールと、触媒助剤と、重合触媒と、任意の分子量調整剤とをあらかじめ混合して、プレ混合液を得た後、このプレ混合液をトリオキサンとともに重合反応機へ供給し、重合させる方法も挙げられる。
【0031】
重合反応温度は、63〜135℃の範囲に保つことが好ましい。また、重合反応温度は、より好ましくは70〜120℃の範囲であり、さらに好ましくは70〜100℃の範囲である。
重合反応機内の滞留(反応)時間は、好ましくは0.1〜30分であり、より好ましくは0.1〜25分であり、さらに好ましくは0.1〜20分である。
重合反応温度および重合反応機内の滞留時間をそれぞれ上記の範囲に調整することにより、ポリアセタールコポリマーの熱分解をより効果的に抑えることができ、熱的により安定なポリアセタールコポリマーを製造することができる傾向にある。
【0032】
そして、重合後には、例えば、得られたポリアセタールコポリマーから重合触媒を洗浄除去することができる。重合触媒の洗浄除去方法としては、従来から提案されている方法を用いることができ、例えば、水のみ、あるいは、アンモニア、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン等のアミン類、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、無機塩類、有機酸塩等の少なくとも1種以上の失活剤を含む水溶液に、重合反応機から排出されたポリアセタールコポリマーを投入し、スラリー状態で数分〜数時間、室温〜100℃以下の範囲で連続撹拌しながら重合触媒を洗浄除去することができる。ポリアセタールコポリマーが大きな塊状の場合には、重合触媒の洗浄除去効率を高める観点から、ポリアセタールコポリマーを粉砕し、微細化することにより、洗浄除去し易くすることが好ましい。重合触媒の洗浄除去後、遠心分離機等でろ過し、窒素環境下などで乾燥することにより、目的とするポリアセタールコポリマーを得ることができる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例および比較例にて、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0034】
実施例および比較例においてした各種測定または評価の方法を、以下に示す。
【0035】
<重合速度の測定>
ガラス試験管に対し、撹拌子を入れ、また、各例における重合反応機へのフィード組成に従うようにして、トリオキサン10mLと、環状エーテルおよび/または環状ホルマールとしての1,3−ジオキソラン0.4mLと、触媒助剤の希釈液(比較例1〜9では不使用)とを添加した後、重合触媒の希釈液を添加して、重合を開始した。そして、重合触媒を添加してから反応液が白濁するまでの時間(秒)を測定した。測定値が小さいほど、より短時間で高い重合収率のポリアセタールコポリマーが得られることを示す。なお、60秒以上経過しても反応液が白濁しなかった場合は、「−(測定値なし)」と評価した。
【0036】
<重合収率の測定>
重合を行う際に、重合触媒の希釈液および触媒助剤の希釈液のフィード開始から1時間慣らし運転を行った後、重合反応機から排出されたポリアセタールコポリマーの1時間当たりの排出量を計量した。そして、この計量値を、重合反応機にフィードした全モノマー成分の1時間当たりの量で割り返して、重合収率(質量%)を求めた。
【0037】
<安定運転性の評価>
重合を行う際に、トリオキサンや重合触媒等のフィード口の詰まり等による重合停止が起こらず、50時間連続で運転できた場合を「○」、50時間連続で運転できず、途中で重合停止が発生した場合を「×」とし、また、重合が開始すらしなかった場合を「−」として評価した。
【0038】
<熱安定性の評価>
ポリアセタールコポリマー乾燥パウダーに関して、熱重量分析計(株式会社リガク製、TG/DTA)を用い、窒素雰囲気下で30℃/minで200℃まで昇温した後、90分ホールドした。そして、そのときの重量減少率(質量%)を測定した。測定値が小さいほど、熱安定性に優れるとともに、ホルムアルデヒドの発生量が少ないことを示す。なお、ポリアセタールコポリマーが重合反応機より全く又は極めて少量だけしか排出されなかった場合には、「−(測定値なし)」と評価した。
【0039】
<分子量の測定>
ポリアセタールコポリマー乾燥パウダーを1mg/mLの濃度でヘキサフルオロイソプロパノール中に溶解させ、溶液を得た。得られた溶液を用い、ゲル濾過クロマトグラフィー(装置:東ソー株式会社製HLC−8120、検出器:示差屈折計(RI)、カラム:東ソー株式会社製PLgel10μmミニミックスB)により、分子量分布の測定を行った。なお、キャリア溶媒としては、ヘキサフルオロイソプロパノールを用いた。この測定により得られたチャートに関して、分子量既知のポリメチルメタクリレートを標準物質とした検量線を用いて分子量換算し、最大ピークのピークトップの値を読み取り、ピークトップ分子量M
Pとして比較に用いた。なお、ポリアセタールコポリマーが重合反応機より全く又は極めて少量だけしか排出されなかった場合には、「−(測定値なし)」と評価した。
【0040】
[実施例1]
重合反応機として、80℃に設定した同方向回転の2軸型パドル式連続重合反応機(株式会社栗本鐵工所社製、径2B、L/D=14.8)を用いた。なお、酸素混入を防止するため、重合反応機のフィード口付近から、1時間当たり60Lの窒素を流した。そして、重合反応機に、トリオキサン(水分濃度:4ppm、ギ酸濃度:5ppm、表中では「TOX」とも示す。)を4000g/hrでフィードした。また、トリオキサン1molに対して0.045mol(148.0g/hr)の環状エーテルおよび/または環状ホルマールとしての1,3−ジオキソランを、重合反応機にフィードした。さらに、触媒助剤としての塩化水素を、希釈溶媒としての1,4−ジオキサンを用いて希釈し(触媒助剤:希釈溶媒=1.0×10
−4:0.01(モル比)となるような割合で)、得られた触媒助剤の希釈液を、触媒助剤の添加量が表1に示す量となるように重合反応機にフィードした。その後、重合触媒としての三塩化鉄を希釈溶媒としての1,4−ジオキサンを用いて適切な割合で希釈し、得られた重合触媒の希釈液を、重合触媒の添加量および希釈溶媒の添加量が表1に示す量となるように重合反応機にフィードした。この重合触媒の希釈液のフィードにより、重合を開始した。そして、この重合の際に、重合収率の測定および安定運転性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
なお、トリオキサン、1,3−ジオキソラン、触媒助剤の希釈液、および重合触媒の希釈液は、重合反応機に設置したパドル部に達するまで互いに接触することができないように別々のラインで供給した。
【0041】
その後、重合反応機より排出されたポリアセタールコポリマーを水中に投入し、室温で1時間撹拌することで重合触媒の洗浄除去を行った。次いで、重合触媒を洗浄除去したポリアセタールコポリマーを遠心分離機でろ過した後、ポリアセタールコポリマー100質量部に対して、トリエチルアミンを含有する水溶液1質量部を添加して、均一に混合した後、120℃で3時間乾燥させることで、ポリアセタールコポリマー乾燥パウダーを得た。得られたポリアセタールコポリマー乾燥パウダーを用いて、熱安定性の評価および分子量の測定を行った。評価結果を表1に示す。
【0042】
[実施例2−7]
重合触媒の種類、重合触媒の添加量および触媒助剤の種類の少なくともいずれかを表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様にして、各成分を重合反応機にフィードし、各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0043】
[比較例1−9]
触媒助剤およびその希釈溶媒を用いなかったこと、ならびに、重合触媒の種類、重合触媒の添加量および重合触媒用の希釈溶媒の種類の少なくともいずれかを表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様にして、各成分を重合反応機にフィードし、各種測定・評価を行った。なお、比較例5では、2種類の重合触媒の希釈液を重合反応機にフィードした。結果を表1に示す。
【0044】
[比較例10]
重合触媒およびその希釈溶媒を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、各成分を重合反応機にフィードし、各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0045】
[比較例11]
触媒助剤として、塩化水素に代えて臭化水素を用いたこと以外は、比較例10と同様にして、各成分を重合反応機にフィードし、各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0046】
[比較例12,13]
重合触媒の種類、重合触媒の添加量および重合触媒用の希釈溶媒の種類の少なくともいずれかを表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様にして、各成分を重合反応機にフィードし、各種測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
表1より、実施例1〜7では、得られたポリアセタールコポリマーの分子量が高く、ホルムアルデヒド発生量も少ない上、高い重合収率および製造時の安定化を同時に達成することができていることが分かる。さらに、実施例1〜7では、より短時間で高い重合収率が得られていることも分かる。
これに対し、比較例1〜13では、ポリアセタールコポリマーの高分子量化、ホルムアルデヒド発生量の低減、高い重合収率、および製造時の安定化の少なくともいずれかが達成できていないことが分かる。