(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、急加速操作が行われた場合には、急加速操作の開始から所定時間経過したときに、前記ブリード弁の開口面積を、前記特殊開口線上の点から前記標準開口線上の点にシフトさせる、請求項1に記載の油圧システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、操作装置に対して急加速操作(油圧アクチュエータの速度を急激に上昇させる操作)が行われたとき、例えば操作装置が中立状態から瞬時にフル操作状態に操作されたときは、ブリード弁の開口面積も瞬時に変化し、油圧アクチュエータへの作動油の供給量が急激に増加する。このとき、油圧アクチュエータの慣性と作動油の圧縮性により、油圧アクチュエータの挙動にハンチングが生じ易い。
【0006】
このようなハンチングを抑制して油圧アクチュエータの挙動を安定化させるには、ブリード弁の最低開口面積をゼロよりも大きく設定することが考えられる。しかしながら、このようにした場合には、操作装置に対して緩加速操作(油圧アクチュエータの速度をゆっくりと上昇させる操作)が行われたときに、ポンプの吐出圧が目的圧まで上昇しないばかりでなく、ポンプからブリード弁を通じてタンクへ常に作動油が逃されることになり、ポンプの駆動に要したエネルギが無駄に消費されることになる。
【0007】
そこで、本発明は、エネルギの無駄な消費を抑制しつつ、急加速操作時の油圧アクチュエータの挙動を安定化することができる油圧システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の油圧システムは、操作部に対する操作量に応じた操作信号を出力する操作装置と、制御弁を介して油圧アクチュエータへ作動油を供給するポンプと、前記ポンプから吐出された作動油をタンクへ逃すブリード流量を規定するブリード弁と、前記操作装置から出力される操作信号が大きくなるほど前記ブリード弁の開口面積が減少するように前記ブリード弁を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記操作装置に対して急加速操作が行われたか否かを判定し、急加速操作が行われない場合には、前記ブリード弁の開口面積を標準開口線に沿って最大値とゼロとの間で変化させ、急加速操作が行われた場合には、急加速操作の開始から所定時間経過するまでは、前記ブリード弁の開口面積を特殊開口線に沿って前記最大値とゼロよりも大きな最小値との間で変化させる、ことを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、急加速操作時には、急加速操作の開始から所定時間経過するまではブリード弁の開口面積がゼロよりも大きく保たれるので、油圧アクチュエータの挙動を安定化することができる。一方、非急加速操作時には、ブリード弁の開口面積が標準開口線に沿って変化して操作量が大きくなればブリード弁の開口面積がゼロとなるので、エネルギの無駄な消費を抑制することができる。
【0010】
前記制御装置は、急加速操作が行われた場合には、急加速操作の開始から所定時間経過したときに、前記ブリード弁の開口面積を、前記特殊開口線上の点から前記標準開口線上の点にシフトさせてもよい。急加速操作の開始から所定時間経過した後も、ブリード弁の開口面積を特殊開口線上の点に維持することも可能であるが、急加速操作の開始から所定時間経過したときに、ブリード弁の開口面積を標準開口線上の点にシフトさせれば、急加速操作時の所定時間経過後もエネルギの無駄な消費を抑制することができる。
【0011】
例えば、前記ポンプは、可変容量型のポンプであり、上記の油圧システムは、前記ポンプの傾転角を調整するレギュレータをさらに備え、前記制御装置は、前記操作装置から出力される操作信号が大きくなるほど前記ポンプの吐出流量が増加するように、前記レギュレータを制御してもよい。
【0012】
あるいは、前記ポンプは、可変容量型のポンプであり、上記の油圧システムは、前記ポンプと前記油圧アクチュエータとの間に介在する、前記油圧アクチュエータへの供給量を調整する制御弁と、前記制御弁のメータイン絞りの上流側と下流側との差圧が一定となるように前記ポンプの傾転角を調整するレギュレータであって、前記操作装置から出力される操作信号が大きくなるほど前記ポンプの吐出流量を増大させるレギュレータと、をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、エネルギの無駄な消費を抑制しつつ、急加速操作時の油圧アクチュエータの挙動を安定化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に、本発明の一実施形態に係る油圧システム1を示す。油圧システム1は、例えば、油圧ショベルや油圧クレーンのような建設機械、土木機械、農業機械または産業機械に搭載される。
【0016】
具体的に、油圧システム1は、油圧アクチュエータ5と、油圧アクチュエータ5へ制御弁4を介して作動油を供給する主ポンプ21を含む。図例では、油圧アクチュエータ5と制御弁4のセットが1つであるが、油圧アクチュエータ5と制御弁4のセットは複数設けられてもよい。
【0017】
主ポンプ21は、傾転角が変更可能な、可変容量型のポンプである。主ポンプ21は、斜板ポンプであってもよいし、斜軸ポンプであってもよい。主ポンプ21の傾転角は、レギュレータ22により調整される。
【0018】
主ポンプ21は、供給ライン31により制御弁4と接続されている。主ポンプ21の吐出圧は、図略のリリーフ弁によってリリーフ圧以下に保たれる。
【0019】
本実施形態では、油圧アクチュエータ5が複動シリンダであり、制御弁4が一対の給排ライン41により油圧アクチュエータ5と接続されている。ただし、油圧アクチュエータ5が単動シリンダであり、制御弁4が1本の給排ライン41により油圧アクチュエータ5と接続されてもよい。あるいは、油圧アクチュエータ5は、油圧モータであってもよい。
【0020】
制御弁4は、主ポンプ21と油圧アクチュエータ5との間に介在し、油圧アクチュエータ5への供給量を調整する。制御弁4は、操作装置6が操作されることによって、中立位置から第1位置(油圧アクチュエータ5を一方向に作動させる位置)または第2位置(油圧アクチュエータ5を逆方向に作動させる位置)に切り換えられる。本実施形態では、制御弁4が油圧パイロット式であり、一対のパイロットポートを有する。ただし、制御弁4は、電磁パイロット式であってもよい。第1位置または第2位置において、制御弁4における供給ライン21と一方の給排ライン41とを連通させる開口はメータイン絞りとして機能する。
【0021】
操作装置6は、操作部61を有し、操作部61に対する操作量に応じた操作信号を出力する。つまり、操作装置6から出力される操作信号は、操作量が大きくなるほど大きくなる。操作部61は、例えば操作レバーであるが、フットペダルなどであってもよい。
【0022】
本実施形態では、操作装置6が、操作信号としてパイロット圧を出力するパイロット操作弁である。このため、操作装置6が一対のパイロットライン42により制御弁4のパイロットポートと接続されている。そして、
図2(a)に示すように、操作装置6から出力されるパイロット圧(操作信号)が大きくなるほど、制御弁4が、油圧アクチュエータ5への作動油供給用のメータイン開口および油圧アクチュエータ5からの作動油排出用のメータアウト開口の開口面積を増大させる。
【0023】
ただし、操作装置6は、操作信号として電気信号を出力する電気ジョイスティックであってもよい。この場合、制御弁4の各パイロットポートは、電磁比例弁の二次圧ポートと接続される。
【0024】
上述したレギュレータ22は、本実施形態では、電気信号により作動する。例えば、レギュレータ22は、主ポンプ21が斜板ポンプである場合、主ポンプ21の斜板と連結されたサーボピストンに作用する油圧を電気的に変更するものであってもよいし、主ポンプ21の斜板と連結された電動アクチュエータであってもよい。
【0025】
レギュレータ22は、制御装置7により制御される。例えば、制御装置7は、ROMやRAMなどのメモリとCPUを有し、ROMに格納されたプログラムがCPUにより実行される。
【0026】
制御装置7は、上述した一対のパイロットライン42のそれぞれに設けられた圧力センサ8と電気的に接続されている。ただし、
図1では、図面の簡略化のために一部の信号線のみを描いている。
【0027】
圧力センサ8は、操作装置6から出力されるパイロット圧を検出する。そして、制御装置7は、圧力センサ8で検出されるパイロット圧(操作信号)が大きくなるほど主ポンプ21の吐出流量が増加するように、レギュレータ22を制御する。
【0028】
上述した供給ライン31からはブリードライン32が分岐している。ブリードライン32には、ブリード弁33が設けられている。ブリード弁33は、主ポンプ21から吐出された作動油をタンクへ逃すブリード流量を規定する。図例では、ブリード弁33が制御弁4の上流側に配置されているが、ブリード弁33は、
図5に示すように制御弁4が複数在り、供給ライン31が主流路31aおよび主流路31aと各制御弁4のポンプポートとを接続する並列路31bを有する場合は、ブリードライン31が全ての並列路31bの下流側で主流路31aから分岐してもよい。
【0029】
本実施形態では、ブリード弁33がパイロットポートを有し、パイロット圧が高くなるほどブリード弁33の開口面積が全開状態から全閉状態に向かって減少する。ただし、ブリード弁33は、必ずしもパイロット圧により作動する必要はなく、電気信号により作動してもよい。
【0030】
ブリード弁33は、電磁比例弁35を介して制御装置7により制御される。具体的に、ブリード弁33のパイロットポートは、二次圧ライン34により電磁比例弁35の二次圧ポートと接続されている。電磁比例弁35の一次圧ポートは、一次圧ライン36により副ポンプ23と接続されている。副ポンプ23の吐出圧は、図略のリリーフ弁によって設定圧に維持される。
【0031】
本実施形態では、電磁比例弁35が、当該電磁比例弁35に送給される指令電流と当該電磁比例弁35が出力する二次圧とが正の相関を示す正比例型である。ただし、電磁比例弁35は、当該電磁比例弁35に送給される指令電流と当該電磁比例弁35が出力する二次圧とが負の相関を示す逆比例型であってもよい。
【0032】
制御装置7は、操作装置6から出力されるパイロット圧(操作信号)が大きくなるほどブリード弁33の開口面積が減少するように、ブリード弁33を制御する。さらに、本実施形態では、制御装置7が操作装置6に対して急加速操作(油圧アクチュエータ5の速度を急激に上昇させる操作)が行われたか否かを判定し、その結果によって、ブリード弁33の制御を異ならせる。
【0033】
具体的に、制御装置7は、圧力センサ8で検出されるパイロット圧の時間変化率が閾値よりも大きいか否かを判定する。パイロット圧の時間変化率が閾値よりも大きい場合が急加速操作が行われた場合であり、パイロット圧の時間変化率が閾値よりも小さい場合が急加速操作が行われない場合である。急加速操作が行われない場合とは、例えば、緩加速操作が行われた場合、操作量が維持された場合、減速操作(油圧アクチュエータ5の速度を低下させる操作)が行われた場合である。
【0034】
急加速操作が行われない場合には、制御装置7は、
図2(b)に示すように、ブリード弁33の開口面積を標準開口線Lnに沿って最大値αとゼロとの間で変化させる。本実施形態では、標準開口線Lnが、初期の比較的に狭い範囲でブリード弁33の開口面積が最大値αから大きく減少し、その後の比較的に広い範囲でブリード弁33の開口面積がゼロまでゆっくりと減少するように、傾きの絶対値の大きな第1直線部と傾きの絶対値の小さな第2直線部とで構成されている。
【0035】
例えば、
図4(a)に示すように操作装置が中立状態からフル操作状態に操作されるように緩加速操作が行われた場合には、ブリード弁33の開口面積は
図4(b)に示すように最大値からゼロまで徐々に減少する。
【0036】
一方、急加速操作が行われた場合には、制御装置7は、急加速操作の開始から所定時間T経過するまでは、ブリード弁33の開口面積を特殊開口線Lsに沿って最大値αとゼロよりも大きな最小値βとの間で変化させる。本実施形態では、特殊開口線Lsが、初期の比較的に狭い範囲でブリード弁33の開口面積が最大値αから大きく減少し、その後の比較的に広い範囲でブリード弁33の開口面積が最小値βまでゆっくりと減少するように、傾きの絶対値の大きな第1直線部と傾きの絶対値の小さな第2直線部とで構成されている。
【0037】
本実施形態では、特殊開口線Lsの第1直線部は、標準開口線Lnの第1直線部よりも短く、標準開口線Lnの第1直線部と重なり合っている。また、特殊開口線Lsの第2直線部は、標準開口線Lnの第2直線部と平行である。
【0038】
さらに、制御装置7は、急加速操作が行われた場合には、急加速操作の開始から所定時間T経過したときに、ブリード弁33の開口面積を、特殊開口線Ls上の点から、この点と同一のパイロット圧(操作信号)に対応する標準開口線Ln上の点にシフトさせる。
【0039】
例えば、
図3(a)に示すように操作装置が中立状態からフル操作状態に操作されるように急加速操作が行われた場合には、ブリード弁33の開口面積は
図3(b)に示すように最大値αから最小値βまで徐々に減少する。その後、ブリード弁33の開口面積は、急加速操作の開始から所定時間T経過するまで最小値βに維持され、所定時間経過後にゼロとなる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の油圧システム1では、急加速操作時には、急加速操作の開始から所定時間T経過するまではブリード弁33の開口面積がゼロよりも大きく保たれるので、油圧アクチュエータ5の挙動を安定化することができる。一方、非急加速操作時には、ブリード弁33の開口面積が標準開口線Lnに沿って変化して操作量が大きくなればブリード弁33の開口面積がゼロとなるので、エネルギの無駄な消費を抑制することができる。
【0041】
ところで、急加速操作の開始から所定時間T経過した後も、ブリード弁33の開口面積を特殊開口線Ls上の点に維持することも可能である。しかし、本実施形態のように、急加速操作の開始から所定時間T経過したときに、ブリード弁33の開口面積を標準開口線Ln上の点にシフトさせれば、急加速操作時の所定時間T経過後もエネルギの無駄な消費を抑制することができる。
【0042】
(変形例)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0043】
例えば、レギュレータ22は、必ずしも電気信号により作動する必要はなく、パイロット圧により作動してもよい。この場合、主ポンプ21の吐出流量は、例えば、ロードセンシング方式により制御されてもよい。
【0044】
主ポンプ21の吐出流量がロードセンシング方式により制御される場合、レギュレータ22には、主ポンプ21の吐出圧と油圧アクチュエータ5の供給側圧力(負荷圧)とが導かれる。レギュレータ22は、制御弁4のメータイン絞りの上流側と下流側との差圧が一定となるように主ポンプ21の傾転角を調整し、操作装置6から出力される操作信号が大きくなるほど主ポンプ21の吐出流量を増大させる。