【実施例】
【0022】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
本例は、シフトロック機能を備える車両用のシフトレバーユニット1に関する例である。この内容について、
図1〜
図14を用いて説明する。
図1〜
図3に例示するシフトレバーユニット1は、操作部をなすシフトノブ11が先端に取り付けられた棒状のシフトレバー10を操作可能な操作ユニットである。なお、
図1では、ベースブラケット3の図示を省略し、
図2及び
図3では、シフトノブ11の図示を省略している。
【0023】
このシフトレバーユニット1は、ディテントピン(突出部)180とロックリンク(ロック部材)21との組み合わせを含むシフトロック機構を備えている。ディテントピン180は、規制部材の一例をなすディテントブロック18の一部である。このディテントピン180は、シフト操作を規制する規制位置に付勢されている一方、運転者の操作に応じてシフト操作を許容する解除位置に変位する。ロックリンク21は、このディテントピン180の解除位置への変位を規制する。
【0024】
シフトレバーユニット1では、ディテントピン180を含むディテントブロック18がシフトレバー10により保持されている。シフトレバー10によるディテントブロック18の保持構造は、ロックリンク21からディテントピン180に反力が作用したとき、この反力に応じたディテントブロック18の回転方向のモーメントを打ち消す逆向きのモーメントを発生させるように構成されている。
以下、このシフトレバーユニット1の内容を詳しく説明する。
【0025】
図1及び
図2のシフトレバーユニット1は、図示しない車両の前後方向に当たるシフト方向にシフトレバー10を操作可能なストレート式の操作ユニットである。このシフトレバーユニット1は、運転者がシフトレバー10を操作しやすいよう、運転席と助手席との間のセンターコンソールや、運転者に対面するダッシュパネル等に設置される。シフトレバー10の先端には、運転者の持ち手をなすシフトノブ11が取り付けられている。
【0026】
図示は省略するが、このシフトレバーユニット1によれば、車両の進行方向前側からシフト方向に沿って配列されたパーキングレンジ(Pレンジ)、リバースレンジ(Rレンジ)、ニュートラルレンジ(Nレンジ)、ドライブレンジ(Dレンジ)、セカンドレンジおよびローレンジのうちの何れかをシフト位置として選択できる。シフトロック機構は、初期シフト位置であるPレンジにシフト位置をロック(シフトロック)し、Pレンジから他のレンジへの特定のシフト操作を規制する。
【0027】
シフトレバーユニット1は、
図2及び
図3のごとく、ベースブラケット3により回動可能に軸支されたシフトレバー10が、図示しないシフトパネルを介して車室側に突き出すように車両に取り付けられる。シフトパネルには、シフトロックを強制解除するための図示しない鍵穴が設けられている。メンテナンス作業等では、この鍵穴に車両キーを差し込む強制解除操作によりシフトロックを解除できる。通常は、図示しないブレーキペダルの踏み込み操作によってシフトロックが解除される。
【0028】
シフトレバー10の回動動作のガイド面をなすベースブラケット3の側壁30には、シフト軸150を支持する軸孔300が穿設されていると共に、シフトレバー10の外周側に突き出すディテントピン180を貫通させるディテント窓32及び経路溝321が穿設されている。さらに、ベースブラケット3の側壁30には、解除位置へのディテントピン180の変位を規制するロックリンク21、及びこのロックリンク21を回動駆動する電磁ソレノイド24が取り付けられている。
【0029】
ディテント窓32は、軸孔300回りの周方向に延在する貫通窓であり、Pレンジから他のレンジへシフト操作する際、ディテントピン180が回動変位する空間である。経路溝321は、軸孔300を中心として径方向に延在する貫通溝であり、Pレンジに対応して形成されている。Pレンジのとき、ディテントピン180が経路溝321に貫通配置された状態となる。
【0030】
経路溝321は、軸孔300側の端部においてディテント窓32に連通している。Pレンジから他のレンジへのシフト操作が規制されるディテントピン180の規制位置、及びこのシフト操作が許容されるディテントピン180の解除位置は、この経路溝321において溝方向に離間する2箇所に位置している。
【0031】
解除位置は、経路溝321のうちのディテント窓32に連通する箇所、すなわち軸孔300に近い端部側に位置している。規制位置は、軸孔300とは反対側の経路溝321の端部側に位置している(
図2、
図3で示す位置)。解除位置にディテントピン180が位置する場合、ディテント窓32に進入するディテントピン180の回動変位が可能となり、シフト操作が許容される。一方、規制位置にディテントピン180が位置する場合には、軸孔300を中心とした径方向に延在する経路溝321の内側壁によりディテントピン180の回動変位が規制され、これによりシフト操作が規制される。
【0032】
ロックリンク21は、ベースブラケット3の側壁30に立設された回動軸(図示略)により側壁30に沿って回動可能に軸支されている。電磁ソレノイド24が非通電のときのロックリンク21は、規制位置から解除位置に向かう経路をなす経路溝321に沿って位置するよう、図示しないトーションスプリングによって回動方向に付勢されている(
図2参照。)。ロックリンク21は、図示しないブレーキペダルの踏み込み操作に応じて通電される電磁ソレノイド24により回動駆動される。電磁ソレノイド24により回動駆動されると、ロックリンク21が経路溝321から外れてディテントピン180が解除位置へ変位できるようになる(
図3参照。)。
【0033】
シフトレバー10は、
図1〜
図3のごとく、先端にシフトノブ11が取り付けられるレバー本体(本体)15を中心として構成されている。
シフトノブ11は、
図1及び
図4のごとく、シフト操作を行う運転者の持ち手をなす操作ノブである。車両の進行方向前側に当たる側面には、シフトノブ11を把持する手の人差し指などで操作されるシフトボタン110が設けられている(
図1参照。)。シフトノブ11の内部では、貫通孔112が穿孔された隔壁113が設けられている(
図4参照。)。この貫通孔112は、後述するディテントロッド12の端部を貫通配置するための孔であり長方形状を呈している。
【0034】
レバー本体15は、
図4のごとく、先端側にシフトノブ11のノブ取付部153を有し、反対側の基部15Fには、ベースブラケット3によるシフトレバー10の回動動作の軸支構造を構成するシフト軸150を備えている。レバー本体15は、ノブ取付部153側の端部が開口する筒状であって、シフト軸150が設けられた端部である基部15F側が有底である有底筒状の中空構造を呈している。
【0035】
レバー本体15には、
図4及び
図5のごとく、ディテントピン180を含むディテントブロック18、このディテントブロック18を軸方向に駆動するディテントロッド12、ディテントブロック18を軸方向反対側(シフトノブ11側)に付勢するコイルスプリング(
図9中の符号130)、等が内挿配置されている。シフトノブ11に設けられたシフトボタン110(
図1参照。)の押込み操作は、ディテントロッド12を介してディテントブロック18に伝達される。以下、(1)ディテントロッド12及び(2)ディテントブロック18を説明した後、これらを保持する(3)レバー本体15の構成を説明する。
【0036】
(1)ディテントロッド
ディテントロッド12は、
図4及び
図5のごとく、シフトノブ11が受け付けた運転者の操作(シフトボタン110(
図1)の押込み操作)を伝達するための軸状の伝達部材である。樹脂製のディテントロッド12は、剛性を確保しながら重量を抑制するために断面十字形状をなすように形成された中間軸部128を有し、その両端にはノブ係合部122及びブロック連結部123が軸方向に延設されている。
【0037】
ノブ係合部122は、シフトノブ11が係合する端部であり、断面円形状の両側を平面に削り落とした扁平形状の断面を呈している。ブロック連結部123は、ディテントブロック18を連結するための連結構造をなす端部である。
【0038】
ブロック連結部123は、中間軸部128よりも大径の円板状のフランジ124と、フランジ124から軸方向に延設された連結軸部125と、を含んで構成されている。フランジ124よりも小径の断面円形状の連結軸部125の先端には、径方向外周側に張り出す2箇所の連結凸部126が対向配置されている。なお、この連結凸部126が対向する方向は、ノブ係合部122の扁平断面形状の長手方向と一致している。
【0039】
ノブ係合部122は、シフトノブ11の上記の長方形状の開口形状を呈する貫通孔112に貫通配置される。扁平断面形状のノブ係合部122と、開口形状が長方形状の貫通孔112との組み合わせによれば、確実性高くディテントロッド12を回り止めできる。シフトレバー10において、貫通孔112に挿入されたノブ係合部122は、隔壁113から突出してシフトボタン110に干渉する状態となる。シフトボタン110の押込み操作に応じてノブ係合部122が軸方向に押し込まれ、ディテントロッド12が軸方向に変位するように構成されている。
【0040】
(2)ディテントブロック
ディテントブロック18は、
図4〜
図6のごとく、ドミノゲームに使用されるドミノ牌のような略矩形板状をなす部品である。なお、以下の説明では、ディテントロッド12を連結する側を上側あるいは上端面185Aといい、反対側を下側あるいは下端面185Bという。ディテントピン180が突出する側の側端面を表端面185C、反対側の側端面を背端面185Dという。また、上端面185A及び下端面185Bに対する鉛直方向を上下方向という。この上下方向は、シフトレバー10の軸方向に一致している。
【0041】
ディテントブロック18の表端面185Cには、断面矩形状のディテントピン180が立設されている。このディテントピン180は、ディテントブロック18の上端面185Aと面一をなすよう、表端面185Cの上側に設けられている。このディテントピン18の先端側には、ロックリンク21側に折れ曲がる方向に延設されたカギ形状(構造)180Kが設けられている(
図9参照。)。なお、
図4、
図5及び
図7等では、このカギ形状180Kの図示を省略している。
【0042】
ディテントブロック18の上端面185Aでは、背端面185Dと面一をなすように上側に張り出す張出部181が設けられている。ディテントブロック18の下端面185Bには、円筒状のコイルスプリング(
図9中の符号130)を外挿保持する断面十字形状のコイル保持部182が立設されている。
【0043】
略矩形板状を呈するディテントブロック18の表裏をなす両側面では、外側に突出して張り出す凸部185が2箇所ずつ、前記上下方向に沿って配置されている。各凸部185は、突出方向に対する直交断面が矩形状を呈し、この矩形断面形状の長手方向が上下方向に沿うように立設されている。上側の凸部185Uは、上記の張出部181の側面に設けられ、下側の凸部185Lは、ディテントブロック18の下端面185Bと面一をなすように設けられている。
【0044】
張出部181には、
図5〜
図7のごとく、上記の通り両側面に凸部185Uが立設されているほか、棒状のディテントロッド12を連結するための連結構造が設けられている。この連結構造は、張出部181の上端面に開口する連結孔186、及び張出部181の両側面にそれぞれ開口する転回孔187を含んで構成されている。連結孔186は、外側に突出するように対向配置された両側面の凸部185の間隙に当たる位置に穿孔されている。
【0045】
連結孔186は、連結軸部125(ディテントロッド12)の先端の連結凸部126を含む断面形状とほぼ同様の断面形状を呈し(
図6参照。)、連結軸部125を挿入可能な孔である。この連結孔186は、貫通して転回孔187に連通している。張出部181の両側面にそれぞれ開口する転回孔187は、
図5及び
図7のごとく、いずれも、連結孔186に連通する矩形状の開口形状を呈する孔である。
【0046】
連結孔186の開口部から転回孔187の底面までの長さは、ディテントロッド12の連結軸部125の軸方向長さよりも若干深くなっている。したがって、連結孔186に連結軸部125を挿入するとき、張出部181の上端面にフランジ124が押し当たる位置まで挿入可能である。また、連結孔186の貫通長さは、ディテントロッド12の連結軸部125の首部分の軸方向の寸法、すなわちフランジ124と連結凸部126との間隙の寸法に一致している。したがって、連結孔186に連結軸部125を挿入したときには、連結凸部126が転回孔187の中で回動可能になる。
【0047】
フランジ124が張出部181に当接するまで連結軸部125を挿入すると、先端の連結凸部126が連結孔186を通過して転回孔187に位置し、ディテントロッド12を軸回りに回転可能な状態となる。転回孔187は、ディテントロッド12の軸回りの回転範囲を制限するための規制面として、
図7のD−D断面図に示すように、連結凸部126の回動範囲を規制する内周面187G、187Sを備えている。
【0048】
内周面187Gは、連結孔186に連結軸部125を挿入したときの連結凸部126の回動位置(D−D断面図中の点線の回動位置、以下、基準位置という。)を基準として、連結凸部126のD−D断面図中、反時計回りの回動を規制する規制面となっている。内周面187Sは、基準位置を基準として、同図中、連結凸部126の90度を超える時計回りの回動を規制する規制面となっている。連結孔186に連結軸部125を挿入したディテントロッド12の軸回りの回転範囲は、内周面187Gと内周面187Sとにより同図中、時計回りの0〜90度に制限されている。
【0049】
また、転回孔187の内周面のうち、連結孔186側の天井に当たる内周面には、連結凸部126に干渉する突起188が設けられている(
図7、C部拡大図参照。)。張出部181の上端面から突起188の先端までの寸法は、フランジ124と連結凸部126との間隙の寸法よりも若干大きくなっている。
【0050】
突起188は、上記の基準位置を基準として、連結凸部126が
図7のD−D断面図中、時計回りに90度回動したときに、連結凸部126による乗り越えが完了するように配置されている。この突起188は、上記の基準位置から連結凸部126がD−D断面図中の時計回りに回動する際、弾性変形を伴って連結凸部126を通過させ、連結凸部126が90度回動し切ったときに元の形状に弾性復帰する。突起188は、連結凸部126の時計回りの回動角が90度に達したときに作業者にクリック感を与えると共に、連結凸部126の逆回りの回動を規制する。
【0051】
ディテントロッド12は、軸回りの回転により上記のように連結凸部126が時計回りに90度回動したときにディテントブロック18に連結できる。この連結状態では、転回孔187に開口する連結孔186の縁に連結凸部126が係合してディテントロッド12が抜け止めされると共に、連結凸部126の回動が突起188により規制されてディテントロッド12が軸回りに回り止めされる。
【0052】
なお、ディテントロッド12を上記のように90度回転させたとき、反対側の端部をなすノブ係合部122の扁平断面形状の長手方向が、シフトノブ11の長方形状の貫通孔112の長手方向に一致し、貫通孔112にノブ係合部122を挿入可能な状態となる(
図4参照。)。貫通孔112の長方形状と、ノブ係合部122の扁平断面形状と、の組み合わせによれば、シフトレバー10における組み付け状態のディテントロッド12の軸回りの回転を確実性高く規制できる。
【0053】
(3)レバー本体
レバー本体15では、
図8及び
図9のごとく、筒状の内部に中空部152が形成されている。シフト軸150が立設された一方の側面をなす外周面には、中空部152に連通する横孔の一例である進退溝155が軸方向に沿って開口している。この進退溝155が未形成のノブ取付部153側の中空部152の断面形状(同図中E−E断面図)は、外側に張り出すように対向する2箇所の溝157Aを丸孔の円形状に組み合わせた形状を呈している。
【0054】
進退溝155が穿設された範囲では、
図8中のE−E断面に対して進退溝155を組み合わせた断面形状が形成されている(F−F断面図、G−G断面図)。進退溝155の溝幅Wは、ディテントブロック18の厚さTよりもわずかに幅広になっている。また、進退溝155の穿設深さD1、D2は、
図8中のE−E断面の丸孔を越える深さD3となっている。
【0055】
進退溝155の形成範囲における中空部152の断面形状(F−F断面図及びG−G断面図)は、対向する溝157と、丸孔の円形状を貫通する進退溝155と、が十字に交わるような形状となっている。中空部152の内周面から凹むように形成された溝157は、ディテントブロック18の凸部185が収容されて進退するレール溝(以下、レール溝157)として機能する。なお、E−E断面図における溝157Aは、レバー本体15の内部にレール溝157を成形する際の離型形状となっている。
【0056】
進退溝155が開口するレバー本体15の側面には、
図8のごとく、進退溝155の両外側に張り出す幅広の凸通過部159が溝方向に離れた2箇所に設けられている。一方の凸通過部159は、進退溝155の溝方向におけるノブ取付部153側の端部に位置している。そして、この凸通過部159と、基部15F側のもう一方の凸通過部159と、の間隔は、ディテントブロック18の凸部185Uと凸部185Lとの間隔と同じになっている。
【0057】
凸通過部159の開口形状は、ディテントブロック18の両側面に設けられた凸部185をディテントピン180側から見込むときの正面形状と略一致している。ディテントブロック18は、凸部185U、Lに対応する2箇所の凸通過部(抜き形状の一例)159、及びディテントブロック18の厚さTとほぼ同じ溝幅Wの横孔である進退溝155を利用して、レバー本体15の径方向外周側から組み付け可能である。
【0058】
レバー本体15の側面からディテントブロック18を組み込むと、ディテントブロック18の前記背端面185Dが進退溝155の溝底面155Bに近接すると共に(
図9参照。)、ディテントブロック18の凸部185がレール溝157に乗り入れ可能となる。そして、シフトレバー10では、ディテントブロック18の両側面に立設された凸部185がレバー本体15のレール溝157に収容される保持構造により、ディテントブロック18が保持される。
【0059】
レール溝157は、規制位置から解除位置に向かうディテントピン180の移動方向に一致するシフトレバー10の軸方向に沿って延設されている。そのため、ディテントブロック18は、凸部185がレール溝157に収容された状態を維持しながら軸方向に進退可能である。
【0060】
なお、組付状態のシフトレバー10における凸部185Uが移動する範囲は、進退溝155の溝方向に離れて位置する2箇所の凸通過部159の位置を含まず、該2箇所の凸通過部159の間隙に包含される範囲となっている。また、凸部185Lが移動する範囲は、2箇所の凸通過部159のうち基部15F(
図8)側の凸通過部159よりもさらに基部15F寄りの範囲となっている。このように、凸通過部159は、組付状態のシフトレバー10において凸部185U、Lが移動する範囲の外側に形成されている。そのため、シフトレバー10の操作中に、凸部185U、185Lが凸通過部159に位置することがなく、ディテントブロック18が抜け落ちることがない。
【0061】
さらに、本例の構成では、シフトレバー10の径方向外周側(ディテントピン180の突出方向に当たる側)へのロックリンク21の変位を規制するためのカギ形状(構造の一例)180Kが、ディテントピン180の先端に設けられている(
図9参照。)。上記の通り、このカギ形状180Kは、ロックリンク21側に折れ曲がる方向に延設されている。カギ形状180Kは、ロックリンク21に引っ掛かることで、ディテントピン180の突出方向へのロックリンク21の変位を確実性高く規制する。仮にディテントピン180の突出方向にロックリンク21が変位すると、ロックリンク21がディテントピン180から外れてしまうおそれが生じる。ロックリンク21の変位を規制するカギ形状180Kによれば、ロックリンク21がディテントピン180から外れてしまう状況を未然に回避できる。
【0062】
以上のように構成されたシフトレバーユニット1では、例えばPレンジが選択されているとき、ディテントピン180がベースブラケット3の経路溝321に位置している(
図2及び
図3)。シフトボタン110が操作されていないときには、コイルスプリング130によりディテントブロック18がシフトノブ11側に付勢されて押し付けられる。そのため、ディテントピン180は、経路溝321のうち、軸孔300とは反対側の端部側の規制位置に位置することになる。
【0063】
このようなPレンジの選択中にブレーキが操作されていない状況では、電磁ソレノイド24が非通電であるので、ディテントピン180が規制位置から解除位置に移動する経路をなす経路溝321に沿ってロックリンク21が位置している(
図2に示す状態。)。この場合、シフトボタン110を操作しても、ロックリンク21との干渉によりディテントピン180が解除位置に変位できない。
【0064】
一方、Pレンジの選択中にブレーキが操作された場合には、電磁ソレノイド24の通電に応じてロックリンク21が回動駆動される。規制位置から解除位置に向かう経路をなす経路溝321から外れた位置にロックリンク21が回動し、これにより、ディテントピン180が解除位置へ変位できる状態になる(
図3に示す状態。)。
【0065】
この状態でシフトボタン110が操作されたときには、ロックリンク21に干渉することなくディテントピン180が解除位置に変位可能である。上記の通り、この解除位置は、周方向に延在するディテント窓32の周方向の端部に位置している。そのため、ディテントピン180が解除位置に変位した状態であれば、このディテントピン180の回動変位を伴うシフト操作が可能になる。
【0066】
ここで、シフトレバーユニット1の技術的特徴のひとつは、ロックリンク21がディテントピン180の変位を規制する際にディテントピン180側に作用する反力を受け止める構造にある。
ロックリンク21からディテントピン180に作用する反力Fvは、
図10のごとく、ディテントピン180の突出方向を同図における時計回りに回動させるように作用する。ディテントピン180を一体的に備えるディテントブロック18に対しては、ディテントピン180の突出方向とシフトレバー10の軸方向とにより規定される平面(
図10の紙面をなす平面)に沿ってディテントブロック18を回転させようとする第1のモーメントM1が作用する。
【0067】
ここで、ディテントブロック18は、第1のモーメントM1の回転方向に交差する内側面により形成されるレール溝157に凸部185が収容された状態でレール本体15に保持されている。第1のモーメントM1がディテントブロック18に作用すると、ディテントブロック18の上側の凸部185Uが背端面185D側のレール溝157の内側面157Sに押し当たると共に、下側の凸部185Lが表端面185C側のレール溝157の内側面157Sに押し当たる。ディテントブロック18には、それぞれの当接箇所において、レール溝157の内側面157Sからの反力(当接荷重)F1、F2が作用する。
【0068】
レール溝157の内側面157Sからディテントブロック18に作用する2つの反力F1、F2は、上記の第1のモーメントM1とは逆向きの第2のモーメントM2を生じさせる。そうすると、この第2のモーメントM2により第1のモーメントM1が打ち消され、ディテントブロック18の回転変位が微小に規制される。
【0069】
つまり、シフトレバーユニット1では、ロックリンク21からディテントピン180に作用する反力Fvに応じてディテントブロック18に回転方向のモーメントM1が発生したとき、ディテントブロック18の保持構造が上記のモーメントM1を打ち消す逆向きのモーメントM2を生じさせる。
【0070】
したがって、シフトレバーユニット1では、ロックリンク21の反力Fvが過大であっても、ディテントブロック18の保持構造によりその回転を確実性高く規制できる。それ故、ディテントブロック18の回転に伴うディテントピン180の突出方向の回動により先端上がりの状態に陥ることがない。
【0071】
次に、ディテントピン180の先端上がりの状態を回避することによる効果について説明する。ここでは、ディテントピンが先端上がりになったときに起こり得る状況を、
図11の従来の構成を引用して説明する。
仮にディテントピン918が先端上がりの状態になると、ロックリンク921に対する当接面が傾斜して、ロックリンク921を外側(ディテントピン918が突出する側)に押し出す力が発生する。この押し出す力は、ディテントピン918が先端上がりに傾斜すればするほど大きくなり、ロックリンク921の弾性変形に応じてディテントピン180の規制が外れるおそれが生じる。従来の構成では、ロックリンク921の支持剛性を高くしたり、ディテントピン180の支持剛性を高める設計を採用することで、このような問題を解消する必要がある。
【0072】
一方、本例のシフトレバーユニット1では、ディテントブロック18の保持構造によりディテントピン180の突出方向の回動を確実に規制できる。そのため、上記のようにロックリンク21を外側に押し出す力が発生するおそれが少ない。それ故、シフトレバーユニット1では、ロックリンク21の支持剛性を確保する必要性が従来の構成と比べて少なくなっているという効果が生じている。
【0073】
また、仮にディテントピン918が先端上がりに回動すると、
図11のごとく、ディテントロッド912の湾曲変形を誘発するおそれがある。ディテントロッド912が湾曲すれば、座屈剛性が低下し、これによりシフトボタンの操作反力が減少して操作感が損なわれる可能性が高い。これに対して、本例のシフトレバーユニット1では、ディテントブロック18の回転変位を確実に抑制できる。そのため、ディテントロッド12の湾曲変形を未然に防止でき、シフトボタン110の良好な操作感を維持できる。
【0074】
以上のように構成されたシフトレバーユニット1では、ディテントブロック18の両側面に立設された凸部185がレバー本体15のレール溝157に収容されているというディテントブロック18の保持構造が実現されている。この保持構造は、ロックリンク21からディテントピン180に反力Fvが作用したとき、この反力Fvに由来してディテントブロック18に作用する回転方向のモーメントM1を打ち消す逆向きのモーメントM2を発生させる。
【0075】
したがって、シフトレバーユニット1では、ロックリンク21からの反力Fvによるディテントブロック18の回転を確実性高く規制でき、ロックリンク21の反力Fvによってディテントピン180の先端側が押し上げられるように回動する状況を未然に回避できる。このようにディテントブロック18の回転を規制する保持構造を有するシフトレバーユニット1であれば、ロックリンク21からの反力Fvを受け止めるためにディテントピン180周辺の剛性や強度を確保する必要性を低減できる。そして、これらの必要性に起因して生じ得るコスト上昇や重量増などを回避できる。
【0076】
このようにシフトレバーユニット1は、ディテントピン180周辺の構造を比較的シンプルに構成できる優れた特性のユニットである。このシフトレバーユニット1では、運転者側の過大な操作力に対応するための部品の大型化や重量増を抑制できる。
【0077】
なお、ロックリンク21からの反力Fvが作用したときにディテントブロック18がシフトレバー10側に押し当たる当接箇所は、離れて位置する少なくとも2箇所であれば良い。例えば、
図12のごとく、ディテントブロック18における凸部185を上下方向に畝状に延在させて一体的にしても良い。この場合には、一体的な凸部185の上端部と下端部に当接箇所が形成される。
図13のごとく、ディテントピン180とは反対側のディテントブロック18の側端面である背端面185Dに対して面一をなすように幅が広い畝状の凸部185であっても良い。
【0078】
さらに例えば、
図7のディテントブロック18を基にして、
図14に例示するように、ディテントブロック18の上側(ディテントロッド12側)の凸部185Uを省略することもできる。この場合には、ディテントピン180とは反対側のディテントブロック18の背側面185Dのうちの前記上端面側の端部が、中空部152をなす進退溝155の溝底面155Bに当接して当接箇所が形成される。
【0079】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形、変更あるいは適宜組み合わせた技術を包含している。