(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記比較部は、受信した前記彫刻作業データと前記第1の3Dプリンタ用データとを比較する際に、当該彫刻作業データにおける所定の部位の外縁が前記第1の3Dプリンタ用データの外縁よりも内側に所定値以上ずれている場合に、彫り過ぎがあるという比較結果を得ることを特徴とする請求項1記載の彫刻レッスン用サーバ。
前記比較部は、完成状態の前記立体物毎に一または複数の所定の部位を設定し、当該所定の部位毎に彫り過ぎを判断するための基準となる所定値を設定することを特徴とする請求項2記載の彫刻レッスン用サーバ。
前記データ送信部は、前記立体物の所定の部位において彫り不足があるという比較結果が得られた場合、前記利用者端末に対し、当該彫り不足の領域を視認するための補足作業データを送信することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の彫刻レッスン用サーバ。
前記比較部は、前記立体物の所定の部位において彫り過ぎがあるという比較結果が得られ、且つ前記利用者端末に彫り直し不要の入力があった場合に、当該比較結果の代わりに彫り過ぎが無いという比較結果を前記データ送信部に出力することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の彫刻レッスン用サーバ。
前記比較部は、比較を行う前記所定の部位を変更することにより当該所定の部位を彫り過ぎの観点での比較の対象から除外し、または、比較を行う前記所定の部位における所定値を変更することにより当該所定の部位において彫り過ぎが無いという比較結果を得ることを特徴とする請求項6に記載の彫刻レッスン用サーバ。
【背景技術】
【0002】
ネットワークを利用したオンライン・レッスンが知られている。これは、生徒側のコンピュータシステムと先生側のコンピュータシステムとをネットワークを介して接続し、英会話、楽器演奏、彫刻等を遠隔指導するものである。
【0003】
たとえば特許文献1には、自宅に居ながら先生のアドバイスを受けることができる双方向性を持った楽器演奏システムが開示されている。具体的には、先生側および生徒側に、コンピュータとそれに接続された電子楽器により構成されるシステムを設け、ネットワークを介してそれぞれのシステムを接続する。先生側システムは、生徒側システムから送られてくる生徒の演奏データに基づく演奏を再生し、その演奏に対する演奏指導データや模範演奏データを作成して生徒側システムに送信する。生徒側システムは、先生側システムから送られてきた模範演奏データに基づいて演奏を再生するとともに、演奏指導データに基づく指導内容をディスプレイに表示できる。
【0004】
また、特許文献2には、電子楽器が接続された生徒側のパーソナルコンピュータとサーバとをネットワークを介して接続し、サーバに置かれた豊富な教材を用いて生徒が楽器の演奏を練習できるようにした演奏教習システムが開示されている。特許文献2のシステムでは、サーバの指導プログラムによる自動評価が可能であるため、生徒が独習することができる。
【0005】
また、石鹸を使った彫刻である「ソープカービング」のオンライン・レッスン用プログラムが販売されている(非特許文献1参照)。このプログラムは、具体的な彫刻作業を動画で提供することにより、作業内容を繰り返し確認することができる。
【0006】
ところで、現在では3Dプリンタの高性能化、小型化、低価格化が進み、従来の業務用3Dプリンタだけでなく、民生用の3Dプリンタも急速に普及している。このような3Dプリンタを利用できるオンライン・レッスンの形態も検討されている。
【0007】
たとえば、特許文献3には、折り紙の折り方等、軟弱材の手作業加工法を効果的に学習するための教材が開示されている。この教材は、学習のための動画や音声、テキストと併せて、完成品に至る途中の複数個の半成品の3Dプリンタ用データが含まれる。学習者は、インターネット経由で入手した3Dプリンタ用データを3Dプリンタで出力することにより、半成型品の立体物を入手できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
図1〜
図4を参照して、実施形態に係る彫刻レッスン用サーバSについて説明する。
【0017】
==彫刻レッスンシステム==
図1に示すように、彫刻レッスンシステム1は、複数の利用者端末M、及び彫刻レッスン用サーバSを備える。各利用者端末と彫刻レッスン用サーバSとは、ネットワークNを介して通信可能に接続されている。ネットワークNは、たとえば公衆電話回線網やインターネット回線等の伝送路である。
【0018】
本実施形態における彫刻レッスンは、彫刻レッスン用サーバSから提供されるレッスンプログラムに沿って、利用者(以下、「生徒」)が初期状態の立体物に対して段階的に彫刻作業を行い、完成状態の立体物を作成するオンライン方式のレッスンである。
【0019】
==利用者端末==
利用者端末Mは、彫刻レッスンを受ける生徒が所有する機器である。利用者端末Mは、コンピュータm1、3Dプリンタm2、及び3Dスキャナm3を含む。
【0020】
コンピュータm1は、家庭用のパーソナルコンピュータ等である。コンピュータm1は、画像や文字を表示するためのディスプレイが付属されている。また、コンピュータm1は、3Dプリンタm2や3Dスキャナm3を制御するためのソフトウェア、3Dプリンタ用データが示す立体物の画像や彫刻レッスン用サーバSから送信される各種情報を表示するためのソフトウェア等がインストールされている。
【0021】
3Dプリンタm2は、3Dプリンタ用データに基づいて、立体物を造形する装置である。造形方式は、FDM方式や光造形方式等、様々な方式を用いることができる。なお、3Dプリンタm2に用いるフィラメント(立体物の素材)は、立体物の外観に適しているだけでなく、彫刻作業に適した材質であることが望ましい。たとえば、樹脂材料に対して木や竹の粉末を添加したフィラメントを用いることができる。
【0022】
3Dスキャナm3は、生徒がレッスンプログラムに沿って実際に彫刻した立体物をスキャンし、当該立体物を示す3Dデータを作成する装置である。
【0023】
生徒は、コンピュータm1を使用して、ネットワークN経由で彫刻レッスン用サーバSが提供するレッスンサイトにアクセスする。生徒は、ユーザー登録を行った後、希望するレッスンを選択し、レッスンに関する詳細情報(1回あたりの作業時間、レッスンを希望する曜日等)を入力する。最後に、生徒は、オンラインで料金支払いを行うことでレッスンプログラムの提供を受けることが可能となる。
【0024】
一のレッスンは、複数回のレッスンプログラムにより構成されている。一のレッスンプログラムは、立体物の一部を彫刻するための内容が含まれており、全てのレッスンプログラムを行うことで、立体物を完成することができる。
【0025】
初回のレッスンプログラムには、彫刻を開始する前の初期状態の立体物を示す3Dプリンタ用データ(第2の3Dプリンタ用データ。詳細は後述)が含まれている。コンピュータm1は、生徒からの指示入力に応じて当該データを3Dプリンタm2に入力する。3Dプリンタm2は、当該データに基づいて初期状態の立体物を造形する。生徒は、初回のレッスンプログラムに沿って、初期状態の立体物に対して彫刻を行う。一回のレッスンが終了した後、生徒は、3Dスキャナm3に彫刻の途中状態の立体物をスキャンさせる。3Dスキャナm3は、彫刻の途中状態の立体物を示す3Dデータ(彫刻作業データ。詳細は後述)を作成する。利用者端末Mは、作成した3Dデータを彫刻レッスン用サーバSに送信する。生徒は、レッスンプログラムに沿った彫刻、彫刻した立体物の3Dデータ作成、及び当該3Dデータの送信を繰り返し行うことで、徐々に立体物を完成させる。
【0026】
==彫刻レッスン用サーバ==
彫刻レッスン用サーバSは、ネットワークNを介して立体物の彫刻を指導するために用いられるコンピュータである。
図2は彫刻レッスン用サーバSの構成例を示す図である。彫刻レッスン用サーバSは、記憶部10、通信部20及び制御部30を備える。
【0027】
[記憶部]
記憶部10は、各種レッスンプログラムや、レッスンプログラムで用いられる各種のデータ等を記憶する大容量の記憶装置である。本実施形態に係る記憶部10は、レッスン用データ記憶部10a及び作業データ記憶部10bを含んで構成されている。
【0028】
(レッスン用データ記憶部)
レッスン用データ記憶部10aは、第1の3Dプリンタ用データ、第2の3Dプリンタ用データ、及び指導メッセージを記憶する。
【0029】
第1の3Dプリンタ用データは、完成状態の立体物を示すデータである。以下では、完成状態の立体物として
図3に示す仏像Xを用いて説明を行う。仏像Xは複数の部位から構成されている。具体的に、仏像Xは、頭部X1、胴体前部X2、胴体後部X3、右手X4、左手X5、右足X6、左足X7、台座上部X8、及び台座下部X9の9つの部位で構成されている。
【0030】
第2の3Dプリンタ用データは、完成状態の立体物を内包し、彫刻を開始する前の初期状態の立体物を示すデータである。初期状態の形状は、完成状態の立体物を内包する形状であれば特に限定されない。たとえば、直方体や円柱状であってもよいし、初心者が彫刻しやすいよう、完成状態の外形を模った形状(仏像Xのポージングを模った形状等)や、全体のバランス(仏像Xの上半身に相当する部位は下半身の部位及び台座に比べて小さめに構成されている等)が反映された形状でもよい。また、初期状態の立体物は、一の完成状態の立体物に対して様々なものを準備しておき、生徒の習熟度に合わせて適当なものが選択されることでもよい。
【0031】
なお、第1の3Dプリンタ用データ及び第2の3Dプリンタ用データには、彫刻作業データと重ね合わせる際(詳細は後述)の基準位置が予め設定されている。本実施形態における彫刻レッスンでは、彫刻作業と3Dスキャンと3Dプリント出力が繰り返されるため、基準位置は、立体物と3Dプリンタ用データとの間で必ず引き継がれるように設定される。より具体的には、初期状態の台座下部X9に相当する位置の一部に彫刻作業不要の完成状態の領域を設け、これを基準点としてもよい。
【0032】
指導メッセージは、立体物の彫刻を行う生徒に対する指導内容やアドバイスを示すデータである。指導メッセージは、彫刻する立体物の構造や、レッスンの進捗等に応じた複数のパターンが存在する。たとえば、指導メッセージは、各部位に応じた9つの指導内容を示すデータとして記憶される。具体例として、頭部X1の指導メッセージは、「頭部X1を彫刻しましょう。道具は●●と●●を準備してください。この部位のポイントは●●です。焦らず丁寧に作業しましょう!」といったように、彫刻を行う部位、使用する道具、作業の注意点等を示す内容で構成される。指導メッセージには、彫刻すべき場所を示す画像データが含まれていてもよい。
【0033】
(作業データ記憶部)
作業データ記憶部10bは、彫刻作業データを記憶する。彫刻作業データは、利用者端末Mから送信された、3Dスキャナm3によりスキャンされた彫刻の途中状態の立体物を示すデータである。
【0034】
彫刻の途中状態とは、最終的な完成状態に至るまでの未完成状態であり、一回のレッスンプログラムに沿った彫刻が終了した状態である。本実施形態における彫刻レッスンでは、生徒は初期状態の立体物から徐々に全体にわたって彫刻し全体のバランスを考慮しながら完成度を上げていくよう指導される。なお、各部位毎に完成させていくレッスンにおいては、たとえば、
図3に示した仏像Xを完成状態とした場合、彫刻の途中状態とは、頭部X1の彫刻が終了した状態、胴体前部X2の彫刻が終了した状態、・・・・・、台座下部X9の彫刻が終了した状態に相当する。
【0035】
上述の通り、一回のレッスンが終了した後、3Dスキャナm3は、彫刻の途中状態の立体物を示す彫刻作業データを作成する。利用者端末Mは、その彫刻作業データに対して生徒を識別するためのIDや作業日時を示す情報を関連付けて、彫刻レッスン用サーバSに送信する。彫刻レッスン用サーバSは、受信した彫刻作業データと第1の3Dプリンタ用データとを比較し、彫り過ぎが無いと判断された彫刻作業データを作業データ記憶部10bに記憶させる(詳細は後述)。本実施形態では、生徒が、初期状態から完成状態までの彫刻作業に通常18時間を要するとされるレッスンを選択し、1回あたりの作業時間を2時間と入力したので、彫刻作業データは9つ(彫刻作業データN1〜N9)得られる。そして9回目の彫刻作業データにおいて彫り過ぎや彫り不足が無いと判断されれば彫刻作業が終了する。
【0036】
なお、作業データ記憶部10bは、レッスンプログラムの進捗に応じて順次送信される彫刻作業データを時系列に記憶することでもよいし、常に最新の彫刻作業データのみを記憶することでもよい。たとえば、作業データ記憶部10bは、彫刻作業データN1〜N9全てを記憶しておくことができる。一方、彫刻作業データN1が記憶されている状態で、新たな彫刻作業データN2を記憶させる場合に、彫刻レッスン用サーバSは、作業データ記憶部10bから彫刻作業データN1を消去し、新たに彫刻作業データN2を記憶させることも可能である。このように最新の彫刻データのみを記憶させることにより、作業データ記憶部10bの記憶領域を節約することができる。
【0037】
[通信部]
通信部20は、彫刻レッスン用サーバSと利用者端末Mとを接続するためのインターフェースを提供する。
【0038】
[制御部]
制御部30は、彫刻レッスン用サーバSにおける各種の制御を行う。制御部30はCPUおよびメモリ(いずれも図示無し)を備える。CPUは、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより各種の機能を実現する。本実施形態においては、CPUがメモリに記憶されるプログラムを実行することにより、制御部30は、比較部30a及びデータ送信部30bとして機能する。
【0039】
(比較部)
比較部30aは、受信した彫刻作業データと、少なくとも第1の3Dプリンタ用データとを比較する。
【0040】
比較部30aは、たとえば、彫刻作業データと第1の3Dプリンタ用データとを重ね合わせた場合のずれ量に基づく比較結果を出力する。データの重ね合わせは、第1の3Dプリンタデータに設定され、第2の3Dプリンタ用データを経て彫刻作業データにも引き継がれている基準位置を元に行う。
【0041】
比較は、「彫り過ぎ」、「彫り不足」の観点で行うことができる。「彫り過ぎ」は、完成状態の立体物に対して、本来彫ってはいけない部分まで彫刻されている状態である。逆に、「彫り不足」は、完成状態の立体物に対して、本来彫るべき部分が彫刻されていない状態である。
【0042】
たとえば、4回目(通常作業時間の合計で8時間)の彫刻が終わった場合、利用者端末Mは、3Dスキャナm3により作成された彫刻の途中状態の立体物を示す彫刻作業データN4を彫刻レッスン用サーバSに送信する。比較部30aは、受信した彫刻作業データN4と、完成状態の仏像Xを示すデータ(第1の3Dプリンタ用データ)との比較を行う。
【0043】
具体的に、比較部30aは、彫刻作業データN4における所定の部位の外縁が第1の3Dプリンタ用データの外縁よりも内側に所定値以上ずれているかどうかを確認する。内側に所定値以上ずれている場合、比較部30aは、彫り過ぎがあると判断する。
【0044】
一方、比較部30aは、彫刻作業データN4における所定の部位の外縁が第1の3Dプリンタ用データの外縁よりも外側に所定値以上ずれている場合かどうかを確認する。外側に所定値以上ずれている場合、比較部30aは、彫り不足があると判断する。
【0045】
比較部30aは、彫り過ぎの有無や彫り不足の有無を比較結果としてデータ送信部30bに出力する。
【0046】
所定値は、彫り過ぎまたは彫り不足を判断するための基準となる値である。所定値は、立体物毎に共通の値を用いてもよいし、一の立体物において部位ごとに異なる値を設定してもよい。たとえば、仏像Xの頭部X1のように複雑な部分は、ずれ量の厳密な判断を要することから所定値として「3mm」を設定する。一方、胴体前部X2のように簡単な部分は、ある程度のずれが許容されるため、所定値として「5mm」を設定してもよい。
【0047】
所定の部位は、ずれ量の比較を行う具体的な場所である。所定の部位は、完成状態の立体物毎に予め設定されていてもよいし、利用者端末Mを介して生徒が指定することも可能である。所定の部位は、立体物の全体でもよいし、一部であってもよい。たとえば、仏像Xの場合、仏像Xの見た目に大きく影響する可能性が高い、頭部X1、胴体前部X2、右手X4、左手X5、右足X6、及び左足X7を所定の部位として設定することができる。
【0048】
また、彫り過ぎの場合と彫り不足の場合で比較対象となる所定の部位を異ならせることも可能である。たとえば、彫り過ぎを判断する場合には、彫り過ぎが生じやすい部位を所定の部位として設定し、彫り不足を判断する場合には、彫り不足が生じやすい部位を所定の部位として設定する。
【0049】
なお、彫り不足の観点での比較は必須の処理ではない。本実施形態における彫刻レッスンの様に、初期状態の立体物から徐々に全体にわたって彫刻し全体のバランスを考慮しながら完成度を上げていくよう指導される場合には、彫刻作業がある程度進むまでは彫り不足の観点での比較を行わない方が望ましい。たとえば、比較部30aは、彫刻作業データN1〜N7までは、彫り過ぎの観点での比較のみを行い、彫刻作業データN8及びN9に対して、彫り過ぎ及び彫り不足両方の観点での比較を行うことが可能である。
【0050】
また、彫り不足を判断する場合に、比較部30aは、彫刻作業データと第2の3Dプリンタ用データ(初期状態の立体物を示すデータ)とを重ね合わせ、一致した領域がある場合に彫り不足(彫り忘れ)があるという比較結果を得ることもできる。
【0051】
(データ送信部)
データ送信部30bは、立体物の所定の部位において彫り過ぎがあるという比較結果が得られた場合、比較した彫刻作業データを受信する前に記憶されている彫刻作業データまたは第2の3Dプリンタ用データを読み出して利用者端末Mに送信する。
【0052】
上記例において、彫刻作業データN4が示す立体物の所定の部位において彫り過ぎがあるという比較結果が比較部30aから入力された場合、データ送信部30bは、彫刻作業データN4を受信する前に記憶されている直近の彫刻作業データN3を読み出して利用者端末Mに送信する。
【0053】
利用者端末Mの3Dプリンタm2は、受信した彫刻作業データN3を読み込んで、立体物を作成することができる。従って、生徒は、彫刻作業データN4が示す立体物を彫刻する前の状態から改めて作業を行うことができる。
【0054】
ここで、上記例においてデータ送信部30bが読み出す彫刻作業データは、彫刻作業データN4よりも前に記憶されているものであれば、彫刻作業データN3に限られない(たとえば、彫刻作業データN2でもよい)。但し、生徒の彫刻作業のやり直しを少なくする観点からは、彫り過ぎがあるという比較結果となった彫刻作業データN4の直前に記憶された彫刻作業データN3を読み出すことが好ましい。
【0055】
なお、初回のレッスンプログラムに沿って彫刻した立体物について彫り過ぎがあるという比較結果が入力された場合、作業データ記憶部10bには、それ以前の彫刻作業データが存在しない。この場合、データ送信部30bは、初期状態の立体物を示す第2の3Dプリンタ用データを読み出して利用者端末Mに送信する。
【0056】
一方、立体物の所定の部位において彫り不足があるという比較結果が比較部30aから入力された場合、データ送信部30bは、利用者端末Mに対し、当該彫り不足の領域を視認するための補足作業データを送信する。
【0057】
補足作業データは、生徒が利用者端末M上で彫り不足の領域を視認し、追加で彫刻すべき部位を把握するためデータである。補足作業データは、たとえば、彫刻作業データ及び第1の3Dプリンタ用データに基づいて作成することができる。彫刻レッスン用サーバSは、第1の3Dプリンタ用データ及び彫刻作業データを重ね合わせた場合にずれがある領域を特定し、当該領域に対して他の領域(ずれが無い領域)と異なる表示色を設定することにより、補足作業データを作成する。
【0058】
上記例において、彫刻作業データN8が示す立体物の所定の部位において彫り不足があるという比較結果が入力された場合、データ送信部30bは、第1の3Dプリンタデータ及び彫刻作業データN8に基づいて補足作業データを作成し、利用者端末Mに送信する。
【0059】
なお、彫り過ぎが無いという比較結果が比較部30aから入力された場合、データ送信部30bは、利用者端末Mから受信した彫刻作業データを作業データ記憶部10bに記憶させる。
【0060】
また、データ送信部30bは、比較結果に応じた指導メッセージをレッスン用データ記憶部10aから読み出して、利用者端末Mに送信する。
【0061】
上記例において、彫刻作業データN4が示す立体物の所定の部位、たとえば右手X4において彫り過ぎがあるという比較結果が比較部30aから入力された場合、データ送信部30bは、彫刻作業データN3を読み出して利用者端末Mに送信する際に、「右手X4を彫刻する際に彫り過ぎがありました。もう一度、右手X4の彫刻に挑戦しましょう!」のように、次に行うべき作業内容を示すメッセージを送信することができる。
【0062】
或いは、最後まで彫刻が完了した際に得られた彫刻作業データN9について、彫り過ぎも彫り不足も無いという比較結果が得られた場合、データ送信部30bは、「仏像Xの完成です。お疲れ様でした!」という完了のメッセージを利用者端末Mに送信してもよい。なお、彫刻作業データN9について彫り不足があるという比較結果が得られた場合には、上述の彫刻作業データN8までと同様の処理を行うとともに、彫刻作業データN9を記憶することが望ましい。これは、生徒が彫り不足を解消しようとして彫り過ぎる可能性があるからである。ただし9回目の彫刻作業のやり直しで彫り不足が続いた場合でも、彫刻作業データN9として上書きすればよく、作業データ記憶部10bに記憶する彫刻作業データの数は変わらない。
【0063】
==彫刻レッスン用サーバの動作について==
次に、
図4を参照して本実施形態における彫刻レッスン用サーバSの動作の具体例について述べる。
図4は、彫刻レッスン用サーバSにおける処理を示すフローチャートである。以下では、一の彫刻作業データに対し、彫り過ぎ及び彫り不足両方の観点で比較を行う例について述べる。
【0064】
彫刻レッスン用サーバSは、利用者端末Mから彫刻作業データを受信する(彫刻作業データの受信。ステップ10)。
【0065】
比較部30aは、レッスン用データ記憶部10aから第1の3Dプリンタ用データを読み出し、ステップ10で受信した彫刻作業データとの比較を行う(彫刻作業データと第1の3Dプリンタ用データとを比較。ステップ11)。
【0066】
立体物の所定の部位において彫り過ぎがあるという比較結果が得られた場合(ステップ12でYの場合)、データ送信部30bは、比較した彫刻作業データを受信する前に記憶されている彫刻作業データまたは第2の3Dプリンタ用データを読み出して利用者端末Mに送信する(受信する前に記憶されているデータの送信。ステップ13)。生徒は、当該データに基づいて3Dプリンタm2で立体物を作成し、彫刻作業を再度行う。作業者端末Mは、再度の作業により彫刻された立体物を3Dスキャナm3でスキャンし、得られた彫刻作業データを送信する。
【0067】
また、立体物の所定の部位において彫り不足があるという比較結果が得られた場合(ステップ14でYの場合)、データ送信部30bは、利用者端末Mに対し、当該彫り不足の領域を視認するための補足作業データを送信する(補足作業データの送信。ステップ15)。生徒は、コンピュータm1のディスプレイで、補足作業データに基づく画像を参照することで、彫り不足の領域を把握できる。
【0068】
一方、立体物の所定の部位において彫り過ぎ及び彫り不足がないという比較結果が得られた場合、または彫り不足があるという比較結果が得られてステップ15の処理を行った場合、比較部30aは、ステップ10で受信した彫刻作業データを作業データ記憶部10bに記憶する(彫刻作業データの記憶。ステップ16)。
【0069】
彫刻レッスン用サーバSは、立体物が完成する(ステップ17でYの場合)まで、ステップ10から16までの処理を繰り返し行う。
【0070】
なお、上記のステップ12とステップ14の処理は順番が逆であってもよい。また、上記例では、彫り過ぎ又は彫り不足のいずれか一方のみが生じる場合について述べたが、ある彫刻作業データについて、彫り過ぎ及び彫り不足の両方があるという比較結果が得られる場合もある。この場合、データ送信部30bは、比較した彫刻作業データを受信する前に記憶されている彫刻作業データ(または第2の3Dプリンタ用データ)を読み出して利用者端末Mに送信するだけでなく、彫り不足の領域を視認するための補足作業データを作成し、利用者端末Mに送信する。生徒は、利用者端末Mで受信した補足作業データを参照しつつ、受信したデータに基づいて造形された立体物の彫刻を改めて行うことができる。
【0071】
このように本実施形態に係る彫刻レッスン用サーバSは、3Dプリンタm2及び3Dスキャナm3を含む利用者端末Mと通信可能に接続され、ネットワークNを介して立体物の彫刻を指導するために用いられるサーバである。彫刻レッスン用サーバSは、完成状態の立体物を示す第1の3Dプリンタ用データ、完成状態の立体物を内包し、彫刻を開始する前の初期状態の立体物を示す第2の3Dプリンタ用データ、及び利用者端末Mから送信された、3Dスキャナm3によりスキャンされた彫刻の途中状態の立体物を示す彫刻作業データを記憶する記憶部10と、受信した彫刻作業データと、少なくとも第1の3Dプリンタ用データとを比較する比較部30aと、立体物の所定の部位において彫り過ぎがあるという比較結果が得られた場合、比較した彫刻作業データを受信する前に記憶されている彫刻作業データまたは第2の3Dプリンタ用データを読み出して利用者端末Mに送信するデータ送信部30bと、を有する。
【0072】
彫刻レッスン用サーバSによれば、立体物の所定の部位において彫り過ぎがある場合には、前に彫刻作業を行った際に得られた彫刻作業データ(または初期状態の立体物を示すデータ)を利用者端末Mに送信できる。従って、生徒は、直近のレッスンの状態から改めて彫刻を行うことができるため、はじめから彫り直す作業を行う必要が無い。たとえば、従来のレッスンでは、立体物を彫り過ぎてしまった場合には初期状態から再度彫り直しを行う必要があった。一方、彫刻レッスン用サーバSによれば、彫刻作業データN4が彫り過ぎである場合であっても、一回前のレッスンで彫刻して得られた彫刻作業データN3を利用者端末Mに送信することで、生徒は彫刻作業データN3の状態から彫刻を再開できる。すなわち、本実施形態に係る彫刻レッスン用サーバSによれば、生徒が大きなミスをした場合でも作業のやり直しを少なくすることができる。
【0073】
また、本実施形態に係る比較部30aは、受信した彫刻作業データと第1の3Dプリンタ用データとを比較する際に、当該彫刻作業データにおける所定の部位の外縁が第1の3Dプリンタ用データの外縁よりも内側に所定値以上ずれている場合に、彫り過ぎがあるという比較結果を得ることができる。このように外縁同士の比較を行うことにより、彫り過ぎの有無についてより緻密な判断が可能となる。
【0074】
また、本実施形態に係る比較部30aは、完成状態の立体物毎に一または複数の所定の部位を設定し、当該所定の部位毎に彫り過ぎを判断するための基準となる所定値を設定することができる。このように所定の部位を任意に設定することにより、彫り過ぎの判断を行う対象となる部位に自由度を持たせることができる。
【0075】
また、本実施形態に係るデータ送信部30bは、立体物の所定の部位において彫り不足があるという比較結果が得られた場合、利用者端末Mに対し、当該彫り不足の領域を視認するための補足作業データを送信することができる。このように、利用者端末Mに対して補足作業データを送信することにより、生徒は利用者端末Mで彫り不足の部分を容易に把握することができる。
【0076】
また、本実施形態に係る記憶部10は、立体物の彫刻を行う利用者に対する複数の指導メッセージを記憶し、データ送信部30bは、比較結果に応じた指導メッセージを記憶部10から読み出して、利用者端末Mに送信することができる。このように、比較結果に応じた指導メッセージを送信することにより、生徒は彫刻作業の評価や次に行うべき作業内容を容易に把握できる。
【0077】
また、本実施形態に係る比較部30aは、受信した彫刻作業データと第2の3Dプリンタ用データとを比較して、当該彫刻作業データにおける所定の部位の外縁が第2の3Dプリンタ用データの外縁と一致している場合に、彫り不足があるという比較結果を得ることができる。このように外縁同士の比較を行うことにより、全く手を付けていない部分(掘り忘れ)の有無について、より緻密な判断が可能となる。
【0078】
また、本実施形態に係る比較部30aは、少なくとも2つ受信の彫刻作業データを受信した後に、彫り不足の観点での比較を行なうことができる。彫刻作業の初期段階のように完成度が低い段階においては意図的であるかどうかに関わらず、完成状態の立体物に対して彫り不足が生じやすい。従って、そのような段階で彫り不足の観点で比較を行うことは余り意味をなさない可能性がある。そこで、ある一定数の彫刻作業データを受信した後に、彫り不足の観点での比較を行なうことにより、比較処理の実効性を高めることができる。
【0079】
<その他>
上記実施形態では、立体物の所定の部位において彫り過ぎがあるという比較結果が得られた場合、データ送信部30bが比較した彫刻作業データを受信する前に記憶されている彫刻作業データまたは第2の3Dプリンタ用データを自動的に送信する。従って、生徒は彫り直しを強制的に行う必要がある。一方、比較部30aは、立体物の所定の部位において彫り過ぎがあるという比較結果が得られ、且つ利用者端末Mに彫り直し不要の入力があった場合に、当該比較結果の代わりに彫り過ぎが無いという比較結果をデータ送信部30bに出力することができる。この場合、生徒自身が彫り直しの作業を行うかどうかを判断することができる。
【0080】
たとえば、上記実施形態の例において、彫刻作業データN4について所定の部位(右手X4)において彫り過ぎがあるという比較結果が得られた場合、比較部30aは、その旨を利用者端末Mに送信する。ここで、当該比較結果を見た生徒が利用者端末Mを介して彫り直し不要という入力を行ったとする。この場合、比較部30aは、当該比較結果の代わりに彫り過ぎが無いという比較結果をデータ送信部30bに出力する。
【0081】
更に、比較部30aは、比較を行う所定の部位の変更、または所定の部位における所定値の変更により、生徒が望まない彫り直しの作業が発生することを防止できる。
【0082】
上記例において、比較部30aは、所定の部位から右手X4を除くよう調整することで、これ以降の彫り過ぎの比較において当該部位を比較の対象から除外できる。或いは、比較部30aは、右手X4のずれ量を判断する際の所定値を実際のずれよりも大きく設定し直すことで、これ以降の彫り過ぎの比較において当該部位について彫り過ぎが無いという比較結果を得ることができる。
【0083】
上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。上記の構成は、適宜組み合わせて実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。