(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本技術の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(第1絶縁層の厚みよりも小さな厚みの第2絶縁層が設けられた表示装置)
2.変形例(半導体膜よりも上層にソース・ドレイン電極が配置されている例)
3.表示装置の機能構成例
4.撮像装置の例
5.電子機器の例
【0012】
<実施の形態>
[構成]
図1は、本技術の一実施の形態に係る表示装置(表示装置1)の断面構成を模式的に表したものである。表示装置1は、例えば有機電界発光(EL:Electro-Luminescence)装置であり、半導体装置10上に表示素子層20を備えたものである。
【0013】
図2は、半導体装置10および表示素子層20の要部の具体的な断面構成を模式的に表したものである。
【0014】
半導体装置10は、基板11上に、薄膜トランジスタ(トランジスタTr)および保持容量(保持容量Cs)を有している。トランジスタTrは、トップゲート型の薄膜トランジスタであり、基板11側から順に、半導体膜16、ゲート絶縁膜17および第1ゲート電極18を有している。このトランジスタTrは、更に、半導体膜16を間にして第1ゲート電極18に対向する第2ゲート電極12と、半導体膜16に電気的に接続されたソース・ドレイン電極12A,12Bとを有している。第2ゲート電極12と半導体膜16との間には、有機絶縁膜13および無機絶縁膜15が設けられている。第1ゲート電極18は、保護膜19Aおよび平坦化膜19Bに覆われている。保持容量Csは、基板11側から順に、下部電極14および上部電極16Cを有している。下部電極14と上部電極16Cとの間には、無機絶縁膜15が設けられている。
【0015】
表示素子層20は、例えば、半導体装置10側から順に、第1電極21、素子分離膜22、有機層23および第2電極24を有している。
【0016】
基板11は、例えば可撓性基板(可撓性を有する基板)である。この基板11の構成材料としては、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート),PI(ポリイミド),PC(ポリカーボネート)またはPEN(ポリエチレンナフタレート)などの樹脂材料が挙げられる。この他にも、例えばポリアミド、SOG(スピンオングラス:spin-on-glass)、ポリエーテルサルフォン(PES)等が挙げられる。また、樹脂材料に限らず、ステンレス鋼(SUS)などの金属膜に絶縁材料を成膜したものが用いられてもよい。あるいは、基板11は、例えばガラスなどのリジッドな材料から構成されていても構わない。
【0017】
(トランジスタTr)
基板11上の選択的な領域に設けられた第2ゲート電極12は、例えば第1ゲート電極18の平面(
図2のXY平面)形状と略同じ平面形状を有しており、第2ゲート電極12の端面は第1ゲート電極18の端面と略重なる位置に配置されている。即ち、第2ゲート電極12は、第1ゲート電極18と平面視で重なる位置に配置されている。第2ゲート電極12は、平面視で、第1ゲート電極18よりも広い領域にわたって設けられていてもよい。この第2ゲート電極12は、例えば、固定電位に保持されており、第2ゲート電極12の電位は一定に維持されている。具体的には、第2ゲート電極12は、グランド(GND)電位(例えば0V)に保持される。このような第2ゲート電極12を設けることにより、トランジスタTrの特性の変動が抑えられる。例えば、第2ゲート電極12を設けることにより、ドレイン電圧Vd−ドレイン電流Id特性の飽和電流の変動が抑えられる。
【0018】
第2ゲート電極12の構成材料としては、例えば、チタン(Ti),タングステン(W),タンタル(Ta),アルミニウム(Al),モリブデン(Mo),金(Au),銀(Ag),ネオジウム(Nd)および銅(Cu)のうちの1種を含む単体および合金が挙げられる。第2ゲート電極12は、透明導電膜により構成するようにしてもよい。透明導電膜としては、例えば、インジウム,ガリウム,亜鉛,スズ,チタンおよびニオブ等のうちの少なくとも1種の元素の酸化物を主成分として含む酸化物半導体が挙げられる。第2ゲート電極12は、単層膜であってもよいし、積層膜であってもよい。第2ゲート電極12の厚みは、例えば10nm以上1000nm以下である。
【0019】
ソース・ドレイン電極12A,12Bは、例えば、第2ゲート電極12の形成工程と同一工程で形成されており、第2ゲート電極12と同層に設けられている。即ち、ソース・ドレイン電極12A,12Bは、第2ゲート電極12の構成材料と同一の材料により構成され、第2ゲート電極12の厚みと略同一の厚みを有している。第2ゲート電極12およびソース・ドレイン電極12A,12Bと同層に、配線(配線12W)が設けられていてもよい。
【0020】
有機絶縁膜13は、第2ゲート電極12、ソース・ドレイン電極12A,12Bおよび配線12Wを覆うように基板11の全面に設けられている。この有機絶縁膜13は、例えば、第2ゲート電極12が形成された基板11の表面を平坦化する役割を担っている。有機絶縁膜13は、例えば、アクリル系樹脂、ポリイミド(PI)、ノボラック系樹脂またはシロキサン系化合物等の有機絶縁材料により構成されている。有機絶縁膜13の厚みは例えば0.8μm以上20μm以下である。有機絶縁材料は、大きな厚みで成膜しやすいので、有機絶縁膜13を設けることにより、第2ゲート電極12と半導体膜16との間の距離を十分に確保しやすくなる。
【0021】
無機絶縁膜15は、有機絶縁膜13と半導体膜16との間に設けられ、半導体膜16の下面に接している。この無機絶縁膜15は、基板11の全面にわたって設けられている。無機絶縁膜15は、例えば半導体膜16との間で良好な界面を形成する役割を担っている。この無機絶縁膜15は、例えば酸化シリコン(SiO
x),窒化シリコン(SiN),酸窒化シリコン(SiON)およびリン(P)がドープされたSiOのうちの少なくとも1種を含む単層膜または積層膜である。また、酸化アルミニウム(Al
2O
3)が用いられてもよい。無機絶縁膜15の厚みは、例えば30nm以上500nm以下である。
【0022】
ソース・ドレイン電極12A,12Bに対向する位置の有機絶縁膜13および無機絶縁膜15には、ソース・ドレイン電極12A,12Bに達する貫通孔が設けられている。
この貫通孔が、本技術の「接続孔」の一具体例に対応する。
【0023】
半導体膜16は、有機絶縁膜13および無機絶縁膜15を間にして第2ゲート電極12に対向している。換言すれば、半導体膜16と第2ゲート電極12との間には、有機絶縁膜13および無機絶縁膜15が設けられている。ここでは、有機絶縁膜13および無機絶縁膜15が第1絶縁層の一具体例であり、第1絶縁層の厚み(厚みT1)は、有機絶縁膜13の厚みと無機絶縁膜15の厚みとの和である。厚みT1は、例えば0.83μm〜20.5μmである。詳細は後述するが、十分な厚みT1を有する第1絶縁層(有機絶縁膜13および無機絶縁膜15)を設けることにより、第2ゲート電極12と半導体膜16とが近づくことに起因した不具合の発生が抑えられる。
【0024】
半導体膜16は、無機絶縁膜15上の選択的な領域に設けられている。この半導体膜16は、第1ゲート電極18および第2ゲート電極12と対向する領域にチャネル領域16aを有するとともに、チャネル領域16aの両側にチャネル領域16aよりも電気抵抗の低い低抵抗領域16bを有している。この半導体膜16の低抵抗領域16bは、無機絶縁膜15および有機絶縁膜13に設けられた貫通孔を介してソース・ドレイン電極12A,12Bに接続されている。
【0025】
半導体膜16は、例えば、インジウム(In),ガリウム(Ga),亜鉛(Zn),スズ(Sn),チタン(Ti)およびニオブ(Nb)等のうちの少なくとも1種の元素の酸化物を主成分として含む酸化物半導体から構成されている。具体的には、酸化インジウム錫亜鉛(ITZO),酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO: InGaZnO),酸化亜鉛(ZnO),酸化インジウム亜鉛(IZO),酸化インジウムガリウム(IGO),酸化インジウム錫(ITO)および酸化インジウム(InO)等が挙げられる。あるいは、半導体膜16は、低温多結晶シリコン(LTPS)または非結晶シリコン(a−Si)等から構成されていても構わない。
【0026】
半導体膜16と第1ゲート電極18との間にはゲート絶縁膜17が設けられている。このゲート絶縁膜17は、半導体膜16上の選択的な領域に設けられ、半導体膜16のチャネル領域16aに重なる位置に配置されている。ゲート絶縁膜17は、第1ゲート電極18の平面(
図2のXY平面)形状と同一の平面形状を有しており、ゲート絶縁膜17の端面と第1ゲート電極18の端面とは、平面視で重なる位置に配置されている。即ち、トランジスタTrはセルフアライン構造を有している。ゲート絶縁膜17は、例えば酸化シリコン(SiO
x)、窒化シリコン(SiN
x)、酸窒化シリコン(SiON)および酸化アルミニウム(AlO
x)等のうちの1種よりなる単層膜、またはそれらのうちの2種以上よりなる積層膜から構成されている。
【0027】
第1ゲート電極18は、ゲート絶縁膜17を間にして半導体膜16のチャネル領域16aに対向して設けられている。この第1ゲート電極18は、印加されるゲート電圧(Vg)によって半導体膜16中のキャリア密度を制御すると共に、電位を供給する配線としての機能を有するものである。この第1ゲート電極18の構成材料は、例えば、チタン(Ti),タングステン(W),タンタル(Ta),アルミニウム(Al),モリブデン(Mo),銀(Ag),ネオジウム(Nd)および銅(Cu)のうちの1種を含む単体および合金が挙げられる。あるいは、それらのうちの少なくとも1種を含む化合物および2種以上を含む積層膜であってもよい。また、例えばITO等の透明導電膜が用いられても構わない。
【0028】
保護膜19Aは、例えば基板11の全面に設けられ、第1ゲート電極18を覆って、半導体膜16の低抵抗領域16bに接している。この保護膜19Aとしては、例えば、酸化アルミニウム(Al
2O
3)膜を用いることができる。このような低抵抗領域16bに接する保護膜19Aを設けることにより、低抵抗領域16bの電気抵抗を安定して維持することができる。
【0029】
保護膜19Aを間にして第1ゲート電極18を覆う平坦化膜19Bは、基板11の全面に設けられている。この平坦化膜19Bは、トランジスタTrおよび保持容量Csが設けられた基板11の表面を平坦化するためのものである。平坦化膜19Bは、例えば、アクリル系樹脂、ポリイミド(PI)、エポキシ系樹脂、ノボラック系樹脂等の有機絶縁材料により構成されている。あるいは平坦化膜19Bに、例えばシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜および酸化アルミニウム等の無機材料が用いられてもよい。
【0030】
(保持容量Cs)
保持容量Csは、トランジスタTrが設けられた領域と異なる領域に配置されている。換言すれば、下部電極14および上部電極16Cは、半導体膜16と平面視で重ならない領域に配置されている。
【0031】
下部電極14は、有機絶縁膜13上の選択的な領域に設けられている。この下部電極14の構成材料としては、例えばチタン(Ti),タングステン(W),タンタル(Ta),アルミニウム(Al),モリブデン(Mo),金(Au),銀(Ag),ネオジウム(Nd)および銅(Cu)のうちの1種を含む単体および合金が挙げられる。下部電極14は、透明導電膜により構成するようにしてもよい。下部電極14の厚みは、例えば10nm〜1000nmである。
【0032】
上部電極16Cは、無機絶縁膜15を間にして下部電極14に対向している。換言すれば、上部電極16Cと下部電極14との間には、無機絶縁膜15が設けられている。ここでは、無機絶縁膜15が第2絶縁層の一具体例であり、第2絶縁層の厚み(厚みT2)は、無機絶縁膜15の厚みである。厚みT2は、例えば30nm〜500nmである。本実施の形態では、このように、上部電極16Cと下部電極14との間には、無機絶縁膜15のみが設けられている。一方、上述のように、第2ゲート電極12と半導体膜16との間には、有機絶縁膜13および無機絶縁膜15が設けられている。詳細は後述するが、上部電極16Cと下部電極14との間の第2絶縁層(無機絶縁膜15)の厚みT2を、第1絶縁層(有機絶縁膜13および無機絶縁膜15)の厚みT1よりも小さくすることにより、保持容量Csの容量を大きくすることができる。
【0033】
上部電極16Cは、例えば、半導体膜16の構成材料と同一の材料により構成されている。例えば、上部電極16Cは、低抵抗化された半導体材料により構成されている。半導体材料は、酸化物半導体材料であってもよく、低温多結晶シリコン(LTPS)または非結晶シリコン(a−Si)等であってもよい。この上部電極16Cは、例えば、半導体膜16の形成工程と同一工程で形成されており、半導体膜16と同層に設けられている。上部電極16Cの厚みは、半導体膜16の低抵抗領域16bの厚みと略同じである。上部電極16Cは、保護膜19Aおよび平坦化膜19Bに覆われている。
【0034】
(表示素子層20)
表示素子層20は、複数の画素を含むと共に、トランジスタTrが複数配置されたバックプレーンにより表示駆動される表示素子を含んでいる。表示素子としては、例えば有機EL素子などが挙げられる。有機EL素子は、半導体装置10側から順に、例えば第1電極21、発光層を含む有機層23および第2電極24を有している。隣り合う有機EL素子は、素子分離膜22により分離されている。素子分離膜22は、第1電極21上に設けられており、第1電極21の中央部を露出させる開口を有している。この素子分離膜22から露出された第1電極21上に有機層23が設けられている。各々の第1電極21は、例えば、対応するトランジスタTrに電気的に接続されている(図示せず)。第2電極24には、例えば後述の配線WL2などを通じて、各画素に共通のカソード電位が供給されるようになっている。第2電極24は、例えば複数の画素に共通に設けられている。
【0035】
基板11の裏面(表示素子層20との対向面と反対の面)には、金属薄膜が貼り合わされていてもよい(図示せず)。この金属薄膜は、例えば基板11が可撓性基板(有機材料からなる基板)である場合等に、基板11の保護および補強等を目的として基板11の裏面側に貼り合わせられるものである。基板11が金属膜を用いて構成される場合やガラスなどから構成される場合には、金属薄膜が設けられていなくともよい。
【0036】
図3は、表示装置1の配線構成(バックプレーンの構成)を説明するための平面模式図である。
【0037】
基板11上の表示領域110Aには、Y方向に沿って配線WL1が、X方向に沿って配線WL2がそれぞれ配置されている。表示領域110Aの周辺領域110Bには、配線WL1,WL2に電位を供給するための端子部120,121が配置されている。
【0038】
配線WL1,WL2は、例えば信号線、走査線、電源線および共通電位線などのうちのいずれかとして機能するものであり、これらの配線WL1,WL2の交わる点が1つの画素PXLに相当する。配線WL1,WL2は、表示領域110Aから周辺領域110Bまで延設されており、周辺領域110Bにおいて、端子部120,121に接続されている。配線WL2は、例えば共通電位線(カソード線)を含み、周辺領域110Bにおいて、端子部120に接続されている。配線WL1は例えば電源線または信号線として機能する。
【0039】
端子部120,121は、配線WL1,WL2に電位を供給するためのものであり、図示しない電源に接続される。これらのうち、端子部120は、例えばカソード電位等の固定電位を供給する端子部を含んでいる。ここでは、端子部120,121が、矩形状の基板11の2辺に設けられている構成を例示しているが、端子部120,121は、基板11の1辺にのみ設けられていてもよいし、3辺または4辺に設けられていても構わない。
【0040】
図3にはトランジスタTrを図示していないが、ここでは、1つの画素PXLに1つのトランジスタTrが配置された場合を想定している。但し、トランジスタTrの数は限定されず、1つの画素PXLに、2以上のトランジスタTrが配置されていてもよい。
【0041】
[製造方法]
上記のような表示装置1は、例えば次のようにして製造することができる。
図4A〜
図5Cは、表示装置1の製造プロセスを工程順に表したものである。
【0042】
まず、
図4Aに示したように、例えば可撓性基板よりなる基板11の裏面に、ガラスなどよりなる支持基板210を貼り合わせた後、基板11上に、例えばチタン等の金属材料よりなる導電膜12Mを成膜する。成膜手法としては、例えばスパッタ法が挙げられる。
【0043】
次に、
図4Bに示したように、この導電膜12Mをパターニングすることにより、第2ゲート電極12、ソース・ドレイン電極12A,12Bおよび配線12Wを互いに同一工程で形成する。導電膜12Mのパターニングは、例えばフォトリソグラフィおよびエッチングを用いて行う。
【0044】
続いて、
図5Aに示したように、有機絶縁膜13および下部電極14をこの順に形成する。具体的には、以下のように有機絶縁膜13および下部電極14を形成する。まず、第2ゲート電極12、ソース・ドレイン電極12A,12Bおよび配線12Wを覆うように、例えばスピンコート法により有機絶縁材料を塗布して有機絶縁膜13を形成する。続いて、有機絶縁膜13上に、例えば、スパッタリング法を用いて金属膜を成膜した後、この金属膜をフォトリソグラフィおよびエッチングによりパターニングする。これにより下部電極14が形成される。
【0045】
続いて、
図5Bに示したように、下部電極14を覆うように基板11の全面に無機絶縁膜15を形成する。形成手法としては、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition;化学気相成長)法が挙げられる。無機絶縁膜15を形成した後、無機絶縁膜15および有機絶縁膜13に、ソース・ドレイン電極12A,12Bに達する貫通孔を形成する。
【0046】
次に、
図5Cに示したように、半導体膜16、上部電極16C、ゲート絶縁膜17および第1ゲート電極18を形成する。具体的には、これらを以下のようにして形成する。
【0047】
まず、無機絶縁膜15上に、例えば酸化物半導体材料をスパッタリング法等により成膜した後、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、所定の形状にパターニングして半導体膜16および上部電極16Cを同一工程で形成する。続いて、半導体膜16を覆うように、例えばCVD法等を用いて無機絶縁材料を成膜する。この後、無機絶縁材料上に、例えばスパッタリング法を用いて導電材料を成膜する。この導電材料をフォトリソグラフィおよびエッチングによりパターニングすることにより第1ゲート電極18を形成する。次に、この第1ゲート電極18をマスクとして無機絶縁材料をエッチングすることにより、ゲート絶縁膜17を形成する。例えば、このエッチングの工程で、ゲート絶縁膜17から露出された半導体膜16および上部電極16Cが低抵抗化される。
【0048】
ゲート絶縁膜17および第1ゲート電極18を形成した後、基板11の全面に、例えばスパッタリング法を用いて厚み20nm程度の酸化アルミニウム(Al
2O
3)膜を成膜する。これにより、保護膜19Aが形成される。次いで、基板11の全面に感光性を有する有機絶縁材料を成膜し、平坦化膜19Bを形成する。
【0049】
この平坦化膜19B上に、第1電極21、素子分離膜22、有機層23および第2電極24をこの順に形成して表示素子層20を形成する。この後、例えば、支持基板210の裏面側からレーザ光Lを照射して支持基板210を基板11から剥離する。所謂LLO(Laser Lift Off)の工程である。支持基板210を基板11から剥離した後、基板11の裏面に金属薄膜を貼り合わせるようにしてもよい。このようにして、
図1に示した表示装置1を完成させる。ガラス等からなる基板11を用いる際には、支持基板210を用いずに、表示装置1を製造するようにしてもよい。
【0050】
[作用、効果]
本実施の形態の表示装置1では、外部から入力される映像信号に基づいて、表示素子層20の各画素が表示駆動され、映像表示がなされる。このとき、半導体装置10では、例えば画素毎にトランジスタTrが電圧駆動される。具体的には、ある画素のトランジスタTrの第1ゲート電極18に閾値電圧以上の電圧が供給されると、半導体膜16のチャネル領域16aが活性化され(チャネルを形成し)、これにより、一対のソース・ドレイン電極12A,12B間に電流が流れる。
【0051】
本実施の形態の半導体装置10では、第2ゲート電極12と半導体膜16との間の第1絶縁層(有機絶縁膜13および無機絶縁膜15)の厚みT1よりも、下部電極14と上部電極16Cとの間の第2絶縁層(無機絶縁膜15)の厚みT2が小さくなっているので、第2絶縁層の厚みT2を小さくしても、トランジスタTrでは第2ゲート電極12と半導体膜16とが近づくことに起因した不具合の発生が抑えられる。以下、これについて比較例を用いて説明する。
【0052】
図6は、比較例にかかる半導体装置(半導体装置100)の断面構成を表したものである。この半導体装置100は、トランジスタ(トランジスタ30Tr)および保持容量(保持容量100Cs)を有している。
【0053】
トランジスタ30Trでは、半導体膜16よりも上層にソース・ドレイン電極(ソース・ドレイン電極32A,32B)が設けられている。半導体装置100は、保護膜19Aと平坦化膜19Bとの間に層間絶縁膜19Cを有している。層間絶縁膜19Cは、基板11の全面に設けられている。この層間絶縁膜19C上にソース・ドレイン電極32A,32Bが配置されており、平坦化膜19Bがソース・ドレイン電極32A,32Bを覆っている。ソース・ドレイン電極32A,32Bは、層間絶縁膜19Cおよび保護膜19Aの貫通孔を介して、半導体膜16の低抵抗領域16bに接続されている。
【0054】
保持容量100Csの下部電極(下部電極112)は、トランジスタ30Trの第2ゲート電極12と同層に配置されている。即ち、下部電極112は、有機絶縁膜13で覆われており、有機絶縁膜13および無機絶縁膜15を間にして上部電極16Cに対向している。この保持容量100Csでは、下部電極112と上部電極16Cとの間の絶縁層の厚み(厚みT100)は、有機絶縁膜13の厚みと無機絶縁膜15の厚みとの和である。つまり、厚みT100は、第2ゲート電極12と半導体膜16との間の絶縁層の厚みT1と同じである。
【0055】
例えば高精細化に向け、保持容量100Csの容量をより大きくするためには、厚みT100を小さくすることが必要となる。例えば、半導体装置100では、リーク電流の抑制および可動イオンの低減等を考慮し、有機絶縁膜13を設けないようにしてもよい。このとき、下部電極112と上部電極16Cとの間および、第2ゲート電極12と半導体膜16との間には、無機絶縁膜15のみが配置される。半導体装置100では、このように厚みT100を小さくすると、厚みT1も小さくなるので、第2ゲート電極12と半導体膜16とが近づくことに起因した不具合が発生しやすくなる。
【0056】
例えば、第2ゲート電極12と半導体膜16とが近づくと、第1ゲート電極18の感度が下がり、トランジスタ30Trの移動度が低下する。また、第2ゲート電極12と半導体膜16との間で短絡が発生しやすくなるので、歩留まりに影響を及ぼすおそれがある。一方、第2ゲート電極12を設けない場合には、ドレイン電圧Vd−ドレイン電流Id特性の飽和電流が変動しやすくなる。
【0057】
これに対し、半導体装置10では、保持容量Csの下部電極14が、トランジスタTrの第2ゲート電極12と異なる層に設けられている。したがって、下部電極14と上部電極16Cとの間の第2絶縁層の厚みT2を、第2ゲート電極12と半導体膜16との間の第1絶縁層の厚みT1よりも小さくすることができる。よって、半導体装置10では、厚みT2を小さくしても、第2ゲート電極12と半導体膜16との間の距離が適当な大きさに維持される。したがって、半導体装置10では、トランジスタTrの移動度の低下および、第2ゲート電極12と半導体膜16との間の短絡の発生を抑えることができる。
【0058】
また、トランジスタTrでは、ソース・ドレイン電極12A,12Bが、第2ゲート電極12と同層に設けられているので、ソース・ドレイン電極12A,12Bを第2ゲート電極12と同一工程で形成することができる。よって、下部電極14を第2ゲート電極12と別工程で形成しても、これに伴うコストの増加が抑えられる。
【0059】
このように、本実施の形態の半導体装置10では、下部電極14が第2ゲート電極12とは異なる層に設けられているので、保持容量Csでは、その容量を大きくしつつ、トランジスタTrでは、移動度の低下および、第2ゲート電極12と半導体膜16との短絡の発生を抑えることができる。したがって、保持容量Csの容量を大きくするとともに、トランジスタTrに第2ゲート電極12を設けることができる。また、ソース・ドレイン電極12A,12Bを、第2ゲート電極12と同層に設けるようにしたので、コストの増加が抑えられる。
【0060】
以上説明したように本実施の形態では、第1絶縁層の厚みT1よりも第2絶縁層の厚みT2を小さくするようにしたので、保持容量Csの容量を大きくしつつ、トランジスタTrに第2ゲート電極12を設けることができる。よって、トランジスタTrの特性変動を抑えるとともに、保持容量Csの容量を大きくすることが可能となる。大きな容量の保持容量Csが設けられた半導体装置10は高精細な表示装置1に好適である。また、短絡等の不具合が発生しにくい半導体装置10では、歩留まりを向上させることができる。更に、トランジスタTrの移動度の低下が抑えられるので、トランジスタTrのサイズを縮小化することができる。したがって、表示装置1を高精細化および狭額縁化することが可能となる。
【0061】
また、ソース・ドレイン電極12A,12Bを、第2ゲート電極12と同層に設けることにより、コストの増加が抑えられる。
【0062】
以下、本実施の形態の変形例について説明するが、以降の説明において上記実施の形態と同一構成部分については同一符号を付してその説明は適宜省略する。
【0063】
<変形例>
図7は、上記実施の形態の変形例に係る半導体装置(半導体装置30)の断面構成を表したものである。この半導体装置30のトランジスタ(トランジスタ30Tr)では、ソース・ドレイン電極(ソース・ドレイン電極32A,32B)が、第2ゲート電極12と異なる層に設けられている。この点を除き、半導体装置30は上記実施の形態の半導体装置10と同様の構成を有し、その作用および効果も同様である。
【0064】
半導体装置30は、保護膜19Aと平坦化膜19Bとの間に層間絶縁膜19Cを有している。層間絶縁膜19Cは、基板11の全面に設けられている。この層間絶縁膜19C上にソース・ドレイン電極32A,32Bが配置されており、平坦化膜19Bがソース・ドレイン電極32A,32Bを覆っている。ソース・ドレイン電極32A,32Bは、層間絶縁膜19Cおよび保護膜19Aの貫通孔を介して半導体膜16の低抵抗領域16bに接続されている。
【0065】
このように、ソース・ドレイン電極32A,32Bを第2ゲート電極12とは異なる層に設けるようにしてもよい。この場合にも、上記実施の形態の半導体装置10と同様に、保持容量Csの容量を大きくするとともに、トランジスタ30Trでは、移動度の低下および、第2ゲート電極12と半導体膜16との短絡の発生を抑えることができる。
【0066】
<機能構成例>
図8は、上記実施の形態等において説明した表示装置1の機能ブロック構成を表すものである。
【0067】
表示装置1は、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、映像として表示するものであり、上述した有機ELディスプレイの他にも、例えば液晶ディスプレイなどにも適用される。表示装置1は、例えばタイミング制御部51と、信号処理部52と、駆動部53と、表示画素部54とを備えている。
【0068】
タイミング制御部51は、各種のタイミング信号(制御信号)を生成するタイミングジェネレータを有しており、これらの各種のタイミング信号を基に、信号処理部52等の駆動制御を行うものである。信号処理部52は、例えば、外部から入力されたデジタルの映像信号に対して所定の補正を行い、それにより得られた映像信号を駆動部53に出力するものである。駆動部53は、例えば走査線駆動回路および信号線駆動回路などを含んで構成され、各種制御線を介して表示画素部54の各画素を駆動するものである。表示画素部54は、例えば有機EL素子または液晶表示素子等の表示素子(上述の表示素子層20)と、表示素子を画素毎に駆動するための画素回路とを含んで構成されている。これらのうち、例えば、駆動部53または表示画素部54の一部を構成する各種回路に、上述の半導体装置10,30が用いられる。
【0069】
<表示装置以外の適用例>
上記実施の形態等では、半導体装置10,30の適用例として表示装置1を例に挙げて説明したが、半導体装置10,30は、表示装置1の他にも、
図9に示したような撮像装置(撮像装置2)に用いられてもよい。
【0070】
撮像装置2は、例えば画像を電気信号として取得する固体撮像装置であり、例えばCCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどから構成されている。撮像装置2は、例えばタイミング制御部55と、駆動部56と、撮像画素部57と、信号処理部58とを備えている。
【0071】
タイミング制御部55は、各種のタイミング信号(制御信号)を生成するタイミングジェネレータを有しており、これらの各種のタイミング信号を基に、駆動部56の駆動制御を行うものである。駆動部56は、例えば行選択回路、AD変換回路および水平転送走査回路などを含んで構成され、各種制御線を介して撮像画素部57の各画素から信号を読み出す駆動を行うものである。撮像画素部57は、例えばフォトダイオードなどの撮像素子(光電変換素子)と、信号読み出しのための画素回路とを含んで構成されている。信号処理部58は、撮像画素部57から得られた信号に対して様々な信号処理を施すものである。これらのうち、例えば、駆動部56または撮像画素部57の一部を構成する各種回路に、上述の半導体装置10,30が用いられる。
【0072】
<電子機器の例>
上記実施の形態等において説明した表示装置1(または撮像装置2)は、様々なタイプの電子機器に用いることができる。
図10に、電子機器3の機能ブロック構成を示す。電子機器3としては、例えばテレビジョン装置、パーソナルコンピュータ(PC)、スマートフォン、タブレット型PC、携帯電話機、デジタルスチルカメラおよびデジタルビデオカメラ等が挙げられる。
【0073】
電子機器3は、例えば上述の表示装置1(または撮像装置2)と、インターフェース部60とを有している。インターフェース部60は、外部から各種の信号および電源等が入力される入力部である。このインターフェース部60は、また、例えばタッチパネル、キーボードまたは操作ボタン等のユーザインターフェースを含んでいてもよい。
【0074】
以上、実施の形態等を挙げて説明したが、本技術は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態等に記載した各層の材料および厚みは列挙したものに限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよい。
【0075】
また、上記実施の形態等では、第2ゲート電極12と半導体膜16との間の第1絶縁層を有機絶縁膜13および無機絶縁膜15により構成し、下部電極14と上部電極16Cとの間の第2絶縁層を無機絶縁膜15により構成する場合について説明したが、第1絶縁層および第2絶縁層の構成は、これに限定されない。例えば、第1絶縁層および第2絶縁層をともに、無機絶縁膜により構成し、第1絶縁層と第2絶縁層との間で無機絶縁膜の厚みを異ならせるようにしてもよい。あるいは、第1絶縁層を3つ以上の膜の積層構造により構成するようにしてもよい。また、第2絶縁層が積層構造を有していてもよい。
【0076】
また、上記実施の形態等では、第1ゲート電極18によりトランジスタTrのゲート電位をスイッチさせる場合について説明したが、第2ゲート電極12によりトランジスタTrのゲート電位をスイッチさせるようにしてもよい。このとき、第1ゲート電極18は、平面視で第2ゲート電極12と略同じ大きさを有し、あるいは、平面視で第2ゲート電極12よりも広い領域にわたって設けられる。
【0077】
上記実施の形態等において説明した効果は一例であり、本開示の効果は、他の効果であってもよいし、更に他の効果を含んでいてもよい。
【0078】
尚、本技術は以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
基板と、
前記基板上に、半導体膜、ゲート絶縁膜および第1ゲート電極をこの順に有するとともに、前記半導体膜を間にして前記第1ゲート電極に対向する第2ゲート電極を有するトランジスタと、
前記基板上に、下部電極と、前記下部電極に対向するとともに前記半導体膜の構成材料と同じ材料を含む上部電極とをこの順に有する保持容量と、
前記第2ゲート電極と前記半導体膜との間に設けられた第1絶縁層と、
前記下部電極と前記上部電極との間に設けられ、前記第1絶縁層の厚みよりも小さな厚みを有する第2絶縁層と
を備えた半導体装置。
(2)
前記第1絶縁層は有機絶縁膜および無機絶縁膜を含み、
前記第2絶縁層は前記無機絶縁膜を含む
前記(1)に記載の半導体装置。
(3)
前記第1絶縁層の厚みは、前記有機絶縁膜の厚みと前記無機絶縁膜の厚みの和であり、
前記第2絶縁層の厚みは、前記無機絶縁膜の厚みと同じである
前記(2)に記載の半導体装置。
(4)
前記トランジスタは、更に、前記第1絶縁層に設けられた接続孔を介して前記半導体膜に電気的に接続されたソース・ドレイン電極を有する
前記(1)ないし(3)のうちいずれか1つに記載の半導体装置。
(5)
前記ソース・ドレイン電極は、前記第2ゲート電極の構成材料と同じ材料を含んでいる
前記(4)に記載の半導体装置。
(6)
前記第2ゲート電極は固定電位に保持されている
前記(1)ないし(5)のうちいずれか1つに記載の半導体装置。
(7)
前記半導体膜は酸化物半導体材料を含む
前記(1)ないし(6)のうちいずれか1つに記載の半導体装置。
(8)
前記第1ゲート電極の端面は、前記ゲート絶縁膜の端面と重なる位置に設けられている
前記(1)ないし(7)のうちいずれか1つに記載の半導体装置。
(9)
前記第2ゲート電極は、前記第1ゲート電極の平面形状と同一の平面形状を有している
前記(1)ないし(8)のうちいずれか1つに記載の半導体装置。
(10)
半導体装置および前記半導体装置により駆動される表示素子層を備え、
前記半導体装置は、
基板と、
前記基板上に、半導体膜、ゲート絶縁膜および第1ゲート電極をこの順に有するとともに、前記半導体膜を間にして前記第1ゲート電極に対向する第2ゲート電極を有するトランジスタと、
前記基板上に、下部電極と、前記下部電極に対向するとともに前記半導体膜の構成材料と同じ材料を含む上部電極とをこの順に有する保持容量と、
前記第2ゲート電極と前記半導体膜との間に設けられた第1絶縁層と、
前記下部電極と前記上部電極との間に設けられ、前記第1絶縁層の厚みよりも小さな厚みを有する第2絶縁層とを含む
表示装置。
(11)
基板と、
前記基板上に、ソース・ドレイン電極、前記ソース・ドレイン電極に電気的に接続された半導体膜、ゲート絶縁膜および第1ゲート電極をこの順に有するトランジスタと、
前記基板上に、下部電極と、前記下部電極に対向するとともに前記半導体膜の構成材料と同じ材料を含む上部電極とをこの順に有する保持容量と
を備えた半導体装置。