(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の前記石膏ボード片は、留め金具を用いて互いに固定されることにより積層した状態で接合一体化されて、筒状に形成されている請求項1〜4のいずれか1項記載の貫通部用耐火被覆材。
複数の前記石膏ボード片の各々は、円環形状の石膏ボード片となっており、積層した状態で接合一体化されて、円筒形状に形成されている請求項1〜5のいずれか1項記載の貫通部用耐火被覆材。
【背景技術】
【0002】
木造建築物には、内部で火災が発生したときに、火災を一定の範囲内に留めて、他に拡大しないようにするために、防火区画が設けられていることが好ましい。防火区画は、耐火構造の床、壁、天井、防火戸などで建築物をいくつかの部分に区画したものであり、周囲に配される耐火構造の床、壁、天井、防火戸等の壁体(以下、「防火区画体」と称する。)によって囲まれることにより形成されるようになっている。またこれらの周囲の防火区画体には、配管や配線等を通すための貫通部を設ける必要を生じる場合があり、防火区画体に貫通部を形成するための構造として、例えば
図6(a)、(b)示すようなものが一般に用いられている。
【0003】
図6(a)、(b)に示す防火区画体に貫通部を形成するための構造では、壁や床の貫通部を設けたい箇所に、予め木枠50を組んで、木枠50の内周を石膏ボード等の耐火被覆材51で被覆すると共に、貫通部の周囲の壁や床の表面に、石膏ボード等の耐火被覆材52を取り付け、木枠50の内側に、塩化ビニ−ルや鋼等からなる管部材53を、好ましくは受け材54で支持させた状態で通すことにより、管部材53による貫通部を形成するようになっている。
【0004】
また、例えば日本の木造建築物では、伝統的に木製の梁や柱を現した真壁造となっているように、構造材である木製の梁や柱の木の表面を、室内に露出させて現したデザインが好まれている。これらの木製の梁や柱の木の表面を室内に露出させて現したデザインは、燃え代設計を行うことにより、所望の耐火性を得られるようにすることが可能であるが、このような燃え代設計された梁や柱に貫通部を形成する場合、貫通部の部分で耐火性が失われて、貫通部から周囲に火災が燃え広がることにより、燃え代設計された梁や柱の荷重支持層による支持力に影響を及ぼすことになり易い。このため、貫通部から周囲に火災が燃え広がらないようにした、耐火性を有する木製の構造部材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1の木製の構造部材では、梁を貫通する貫通部の内周面を覆って、例えばモルタルで形成された管部材を、燃え止まり部として貫通部に挿通して設置すると共に、貫通部の内周面と管部材の外周面との間の隙間に、モルタル等の耐火性を有する材料による充填材を充填するようになっている。また、特許文献1には、燃え止まり部を形成することが可能な熱を吸収できる熱容量の大きな材料として、モルタルの他、石膏や、珪酸カルシウム等を使用できることが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の貫通部から周囲に火災が燃え広がらないようにした貫通部の耐火被覆構造では、貫通部に設置される管部材は、燃え止まる材料として例えばモルタル、石膏、珪酸カルシウム等を、筒状の型に流し込んで固めることにより形成されるものであるため、寸法精度が十分ではなく、特に木造建築物の耐火構造材を貫通する貫通部を耐火被覆する際に、貫通部にぴったりと嵌め込むようにして取り付けることが困難になる場合がある。
【0008】
また、貫通部の形状に合せて、成形用の筒状の型を、その都度形成する必要があることから、製作コストが高くなる。
【0009】
本発明は、木造建築物の貫通部に設置されて燃え止まり層として機能する耐火被覆材を、精度良く且つ安価に形成できるようにして、貫通部を簡易に且つ低コストで耐火被覆することを可能にする貫通部用耐火被覆材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、木造建築物に耐火被覆された貫通部を設ける際に用いる貫通部用耐火被覆材であって、複数の石膏ボード片を、厚さ方向に積層した状態で接合一体化することにより筒状に形成されている貫通部用耐火被覆材を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0011】
そして、本発明の貫通部用耐火被覆材は、複数の前記石膏ボード片が、環状の石膏ボード片となっていることが好ましい。
【0012】
また、本発明の貫通部用耐火被覆材は、複数の前記石膏ボード片の各々が、厚さが9.5mm〜25.5mmの石膏ボードから切り出されたものとなっていることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の貫通部用耐火被覆材は、複数の前記石膏ボード片の各々が、表裏の面に紙が取り付けられた状態のまま、積層した状態で接合一体化されていることが好ましい。
【0014】
さらにまた、本発明の貫通部用耐火被覆材は、複数の前記石膏ボード片が、留め金具を用いて互いに固定されることにより積層した状態で接合一体化されて、筒状に形成されていることが好ましい。
【0015】
また、本発明の貫通部用耐火被覆材は、複数の前記石膏ボード片の各々が、円環形状の石膏ボード片となっており、積層した状態で接合一体化されて、円筒形状に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の貫通部用耐火被覆材によれば、木造建築物の貫通部に設置されて燃え止まり層として機能する耐火被覆材を、精度良く且つ安価に形成できるようにして、貫通部を簡易に且つ低コストで耐火被覆することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好ましい一実施形態に係る貫通部用耐火被覆材10は、
図1及び
図2に示すように、例えば木造建築物の耐火構造材である耐火梁20に、例えば配管や配線を通すための貫通部11を形成する際に、貫通部11の内周面を耐火被覆することにより、貫通部11の部分で耐火梁20の耐火性が失われて、耐火梁20の荷重支持層による支持力に影響を及ぼすことになるのを、効果的に回避できるようにするために用いられる。本実施形態の貫通部用耐火被覆材10は、好ましくは市販の石膏ボードを用いて、簡易に且つ精度良く、安価に形成できるようにすると共に、貫通部11を簡易に且つ低コストで耐火被覆できるようにする機能を備えている。
【0019】
そして、本実施形態の貫通部用耐火被覆材10は、例えば
図1及び
図2に示すように、木造建築物を構成する耐火構造材である耐火梁20に、耐火被覆された貫通部11を設ける際に用いる耐火被覆材であって、
図3(a)、(b)に示すように、複数の石膏ボード片13aとして、好ましくは環状石膏ボード片を、厚さ方向に積層した状態で接合一体化することにより筒状に形成されている。
【0020】
また、本実施形態では、好ましくは複数の環状石膏ボード片13aの各々は、円環形状の石膏ボード片となっており、厚さが9.5mm〜25.5mmの市販の石膏ボード13から切り出されたものとなっている。複数の円環形状の環状石膏ボード片13aは、留め金具として好ましくはステープル14(
図3(b)参照)を用いて互いに固定されることにより、積層した状態で接合一体化されて、円筒形状の貫通部用耐火被覆材10を形成している。
【0021】
本実施形態では、耐火梁20は、
図1及び
図2に示すように、荷重支持層となる構造用部材21と、構造用部材21の両側の側面を覆って配置されて燃え代層又は燃え止まり層となる一対の被覆部材22とを含んで構成されており、貫通部11は、構造用部材21と被覆部材22との2箇所の境目部23と好ましくは垂直又は略垂直に交差して、貫通形成されている。環状石膏ボード片13aを積層した状態で形成されている貫通部用耐火被覆材10は、積層方向に隣接する環状石膏ボード片13aの接合部15を、耐火梁20の構造用部材21と被覆部材22との2箇所の境目部23、又は境目部23と近接する部分に各々配置した状態で、貫通部11に挿通されて取り付けられている。ここで、被覆部材22の燃え代層としての機能は、燃え代層としての機能の他、燃え止まる層としての機能も含むものであり、燃え代層となる木製の被覆部材22によって覆われた構造用部材21は、燃え止まる木製の被覆部材22で被覆した構造用部材21と解することができる。
【0022】
また、本実施形態では、耐火梁20は、好ましくは45分準耐火構造以上の耐火性能を備える梁として、燃え代設計された耐火梁となっている。すなわち、耐火梁20は、例えば高さ560mm、幅105mm程度の縦長矩形の断面形状を有する、構造梁材として機能する構造用部材21と、構造梁材21の側面部を覆って各々配置される、構造用部材21と同様の例えば高さ560mm、幅105mm程度の縦長矩形の断面形状を有する、燃え代用添え梁材として機能する一対の被覆部材22と、構造用部材21の下面部及び両側の被覆部材22の下面部を、連続して覆い隠すようにして取り付けられた、耐火被覆材24とを含んで構成されている。耐火被覆材24は、覆い隠した部分の木材を火災時に45分間以上、燃焼により損壊させない機能及び熱劣化させない機能を備える、例えば石膏ボード等を用いて三層構造で形成されている。また、耐火被覆材24の、構造用部材21及び被覆部材22を覆い隠す面以外の外周面を覆って、化粧用木板材25が取り付けられている。
【0023】
ここで、耐火梁20を構成する構造用部材21と一対の被覆部材22とは、接着剤や、くぎ、ビス等を用いて、一体として接合することもできるが、本実施形態では、好ましくは一体として接合されていない状態で設けられている。このため、構造用部材21と一対の被覆部材22とは、乾燥収縮や荷重を支持する際の挙動の相違によって、これらの境目部23と交差して貫通形成された貫通部11の内周面における当該境目部23に、段差が生じやすくなっている。本実施形態では、貫通部用耐火被覆材10が、複数の環状石膏ボード片13aを、留め金具として好ましくはステープル14を用いて固定することにより、積層した状態で接合一体化して形成されているので、後述するように、境目部23に生じた段差による影響を、接合部15の部分で吸収できるようになっている。
【0024】
本実施形態では、耐火梁20の貫通部11に挿通されて取り付けられる貫通部用耐火被覆材10は、
図3(a)、(b)に示すように、好ましくは厚さが9.5mm〜25.5mmの石膏ボード13からなる複数の円環形状の環状石膏ボード片13aを、厚さ方向に積層した状態で接合一体化することにより円筒形状となるように形成されている。石膏ボード13は、石膏を主成分とした素材を板状にして、石膏ボード用原紙で包んで得られる建築材料であり、断熱性及び遮音性が高い材料として知られている。石膏ボード13は、安価な板状部材として市販され、容易に入手可能であり、市販されている石膏ボードであればいずれのものでも使用できるが、石膏ボード13には、例えばJISA6901−2014に規定される9.5mm、12.5mm、15mm、16mm、18mm、21mm、25mmの厚さを有する、「せっこうボード」、「強化せっこうボード」及び「普通硬質せっこうボード」等が含まれ、同じ厚さの場合、石膏ボード13としては、より耐火性能を高めた強化せっこうボードを好適に使用できる。尚、JISA6901−2014においては、石膏ボードの厚さの許容差は0mm〜0.5mmであり、例えば25mmの厚さを有する石膏ボードとしては、25mm〜25.5mmの厚さを有する石膏ボードが許容される。さらに、石膏ボード13は、例えばルーター等の公知の切断工具を使用して、所望の形状となるように精度良く容易に切り出すことが可能である。
【0025】
本実施形態では、例えばルーターを使用して、市販の石膏ボード13から、例えば内径が115mm、外径が195mm程度の大きさの、円環形状(ドーナツ形状)の平面形状を備えるように切り出して、複数の環状石膏ボード片13aを形成する。切り出した円環形状の環状石膏ボード片13aは、好ましくは表裏の両側の面に石膏ボード用原紙(図示せず)が付着している状態のまま、厚さ方向に複数枚(本実施形態では、12枚)、積み重ねて積層した状態で接合一体化されて、円筒形状の貫通部用耐火被覆材10を形成する。
【0026】
ここで、環状石膏ボード片13aが、表裏の両側の面に紙が付着している状態のまま積層されることにより、環状石膏ボード片13aの表裏の両側の面が平滑となり、環状石膏ボード片13a同士の積層面が平滑となるので、環状石膏ボード片13a同士を隙間なく接着することが可能になる。また、環状石膏ボード片13a同士をステープル等で隙間なく接着することにより、紙が付着している状態のまま環状石膏ボード片13aを積層しても、筒状耐火被覆材12の耐火性能を確保することが可能になる。環状石膏ボード片13aは、表裏の両側の面から紙を取り外した状態で積層して接合一体化することもできる。
【0027】
複数の円環状石膏ボード片13aは、公知の各種の接着剤を用いて、積み重ねて積層した状態で接合一体化することもできるが、本実施形態では、上述のように、留め金具として、好ましくはステープル14(
図3(b)参照)を用いて互いに固定されて、積層した状態で接合一体化される。ステープルは、石膏ボードを固定する際の留め金具として公知の、コの字形状に折り曲げられた針部材である。ステープルは、建築用ホチキスとして公知の工具であるタッカー(ステープルガン)を用いて、石膏ボードを貫通して打ち込まれることで、石膏ボードを、他の石膏ボードや支持部材等に容易に固定することができる。一本のステープル14を、例えば2〜3枚以上の石膏ボードに同時に貫通させると、石膏ボードが割れる可能性があるため、本実施形態では、ステープル14は、その打ち込み長さが石膏ボードの厚みの1.5〜2倍程度の長さとなっており、好ましくは積み重ねられた隣接する各々の2枚毎の円環状石膏ボード片13aに対して、ステープル14を順次打ち込んでゆくことで、12枚の円環状石膏ボード片13aを互いに固定して、接合一体化するようになっている。また、12枚の円環形状の環状石膏ボード片13aを接合一体化して形成された円筒形状の貫通部用耐火被覆材10の、各隣接する環状石膏ボード片13aの接合部15の部分の外周面には、接着剤として、例えば無機系接着剤のトラボンド(吉野石膏(株)製、登録商標)等を塗布して、接合強度や耐火性能を高めるようにすることが好ましい。
【0028】
なお、複数の石膏ボード片13aを互いに固定するための留め金具14として、ステープル14の他、例えば釘、ピン、ねじ等の、留め金具として公知の種々の金物を用いることができる。
【0029】
本実施形態では、12枚の円環形状の環状石膏ボード片13aを接合一体化して形成された円筒形状の貫通部用耐火被覆材10は、例えば耐火梁20を貫通して形成された貫通部11の長さとして、315mmよりも若干短い、300〜310mm程度の長さを有するように形成されると共に、例えば200mmの内径を有する貫通部11の内径よりも若干小さい、195mmの外径を有するように形成される。
【0030】
ここで、貫通部用耐火被覆材10は、例えば9.5mm、12.5mm、15mm、16mm、18mm、21mm、25mmの厚さを有する市販の石膏ボード13から切り出した、複数の円環状石膏ボード片13aを積み重ねて形成されるので、複数の異なる厚さの石膏ボード13から、各々の円環状石膏ボード片13aが切り出される石膏ボード13を適宜選択して、切り出された複数の円環状石膏ボード片13aの厚さの組み合わせを換えながら積層することで、貫通部用耐火被覆材10の長さが所定の長さとなるように、容易に調整することが可能になる。また、複数の異なる厚さの石膏ボード13から、各々の円環状石膏ボード片13aが切り出される石膏ボード13を適宜選択して、切り出された複数の円環状石膏ボード片13aの厚さの組み合わせを換えながら積層することで、貫通部用耐火被覆材10を耐火梁20の貫通部11に挿通して取り付けた際に、各隣接する環状石膏ボード片13aの接合部15のうちの2箇所の接合部15が、耐火梁20の構造用部材21と被覆部材22との2箇所の境目部23、又は境目部23と近接する部分に各々配置されるように、貫通部用耐火被覆材10における接合部15の位置を、適宜調整することが可能になる。
【0031】
なお、貫通部用耐火被覆材10を形成する環状石膏ボード片13aは、
図4(a)に示すように、市販の石膏ボード13から、円環形状の平面形状となるように切り出して積層する必要は必ずしも無く、
図4(b)に示すように、例えば円環形状を2分割した平面形状となるように切り出した石膏ボード片13a’を積層して、分割耐火被覆材12’を形成してから、形成した複数の分割耐火被覆材12’を円周方向に接合一体化することによって、石膏ボード13からなる複数の環状石膏ボード片13aが、厚さ方向に積層した状態で接合一体化して筒状に形成された貫通部用耐火被覆材10(
図4(a)参照)とすることもできる。
図4(c)に示すように、例えば円環形状を3分割した平面形状となるように切り出した石膏ボード片13a”を積層して、分割耐火被覆材12”を形成してから、形成した複数の分割耐火被覆材12”を円周方向に接合一体化することによって、石膏ボード13からなる複数の環状石膏ボード片13aが、厚さ方向に積層した状態で接合一体化して筒状に形成された貫通部用耐火被覆材10(
図4(a)参照)とすることもできる。
【0032】
また、
図4(d)に示すように、例えば円環形状を2分割した平面形状となるように切り出した複数の石膏ボード片13a’を、上下に隣接する石膏ボード片13a’の位置を周方向に交互にずらして積層した状態で、複数の分割耐火被覆材12’を形成し、これらを円周方向に接合一体化することによって、石膏ボード13からなる複数の環状石膏ボード片13aが、厚さ方向に積層した状態で接合一体化して筒状に形成された貫通部用耐火被覆材10(
図4(a)参照)とすることもできる。
【0033】
本実施形態では、上述のようにして複数の環状石膏ボード片13aを接合一体化して形成された貫通部用耐火被覆材10を、耐火梁20に設けられた貫通部11の内周面を覆うようにして、貫通部11に挿通して取り付けることによって、貫通部11を耐火被覆する。すなわち、
図1及び
図2に示すように、上述のようにして形成された貫通部用耐火被覆材10を、耐火梁20を貫通して、例えば内径が200mm程度の大きさの円形の中空断面を有するように形成された貫通部11に、好ましくは各隣接する環状石膏ボード片13aの11カ所の接合部15のうちの、4番目と8番目の接合部15が、耐火梁20の構造用部材21と被覆部材22との2箇所の境目部23、又は境目部23と近接する部分に各々配設されるようにして、挿通配置する。また、挿入された貫通部用耐火被覆材10の外周面と、貫通部11の内周面との間の隙間に、例えば耐火パテ等を充填して固化させることにより、貫通部用耐火被覆材10を貫通部11に固定する。しかる後に、好ましくは貫通部11に固定された貫通部用耐火被覆材10の小口面の隙間を、耐火パテ等を用いて埋めることによって小口面を仕上げる。
【0034】
なお、本実施形態では、耐火梁20の上面部分には、耐火梁20の上面を覆い隠すようにして、所定の耐火性能を備える公知の床部材(図示せず)が取り付けられることで、火災加熱時に火災加熱による影響が、上面側からは構造用部材21に及ばないようになっている。これによって、耐火梁20の上面部分には、耐火被覆材を設けなくても、構造用部材21が燃焼により損壊したり熱劣化したりするのを、効果的に回避できるようになっている。
【0035】
そして、上述の構成を備える本実施形態の貫通部用耐火被覆材10によれば、木造建築物の貫通部11に設置されて燃え止まり層として機能する耐火被覆材を、精度良く且つ安価に形成できるようにして、貫通部11を簡易に且つ低コストで耐火被覆することが可能になる。
【0036】
すなわち、本実施形態によれば、貫通部用耐火被覆材10は、複数の環状石膏ボード片13aを、厚さ方向に積層した状態で接合一体化することにより筒状に形成されているので、好ましくは市販されている安価な厚さが9.5mm〜25.5mmの石膏ボード13から、複数の環状石膏ボード片13aを精度良く切り出して積層することで、成形用の筒状の型をその都度形成することなく、精度良く且つ安価に形成することが可能になると共に、形成された貫通部用耐火被覆材10を貫通部11に設置して固定するだけの、簡単な作業によって、簡易に且つ低コストで貫通部11を耐火被覆することが可能になる。
【0037】
また、本実施形態では、貫通部用耐火被覆材10は、好ましくは複数の環状石膏ボード片13aを、固定することにより積層した状態で接合一体化して形成されており、積層方向に隣接する環状石膏ボード片13aの2箇所の接合部15を、耐火梁20における2箇所の構造用部材21と被覆部材22との境目部23、又は境目部23と近接する部分に各々配置した状態で、貫通部11に取り付けられている。これによって、例えば構造用部材21と被覆部材22とが乾燥収縮する際の挙動の相違や荷重を支持する際の挙動の相違によって、これらの境目部23において貫通部11に段差が生じても、生じた段差を、境目部23又は境目部23と近接する部分に配置された接合部15の両側で、隣接する環状石膏ボード片13aがずれることにより吸収して、貫通部用耐火被覆材10にひび割れが生じて、燃え止まり層としての機能が損なわれ易くなるのを、効果的に回避することが可能になる。
【0038】
図5は、上述と同様の構成を備える貫通部用耐火被覆材30を、木造建築物の防火区画を形成する防火区画体として、例えば耐火壁に、耐火被覆された貫通部31を設ける際に用いる形態を例示するものである。すなわち、
図5に示す耐火壁に貫通部31を設ける形態では、石膏ボード片として、好ましくは厚さが9.5mm〜25.5mmの石膏ボードからなる円環形状の複数の環状石膏ボード片33aを、厚さ方向に積層した状態で接合一体化することにより形成された、好ましくは円筒形状の貫通部用耐火被覆材30を、耐火壁を構成する柱や間柱34に支持させて取り付けた、受け台35の上に載置して固定することによって、当該貫通部用耐火被覆材30による貫通部31が、耐火壁を貫通して設けられるようになっている。またこれによって、貫通部31の内周面を覆って、貫通部用耐火被覆材30が、当該貫通部用耐火被覆材30による貫通部31に取り付けられることになる。
【0039】
なお、
図5に示す耐火壁に貫通部31を設ける形態では、貫通部用耐火被覆材30が取り付けられた後に、柱や間柱34に支持させて、耐火壁の表裏の面に、所定の耐火性能を備える公知の壁用面材が取り付けられる。これによって、貫通部用耐火被覆材30による貫通部31が設けられた耐火壁に形成されることになる。
【0040】
図5に示す耐火壁に貫通部31を設ける形態によっても、貫通部31を形成する貫通部用耐火被覆材30が、厚さが9.5mm〜25.5mmの石膏ボードからなる複数の環状石膏ボード片33aを、厚さ方向に積層した状態で接合一体化することにより筒状に形成されているので、上記の実施形態の貫通部の耐火被覆構造10と、同様の作用効果が奏される。
【0041】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、石膏ボード片は、円環形状の環状石膏ボード片である必要は必ずしも無く、その他の形状の環状に形成された石膏ボード片や、環状となるように連接可能な石膏ボード片であっても良い。貫通部用耐火被覆材は、円筒形状の耐火被覆材である必要は必ずしも無く、角筒形状等のその他の形状の筒状に形成された耐火被覆材であっても良い。貫通部が形成される耐火構造材は、荷重支持層となる構造用部材と、燃え代層となる一対の被覆部材とを含んで構成される耐火梁である必要は必ずしも無く、荷重支持層となる構造用部材と、構造用部材の表面を覆って配置されて燃え代層、又は燃え止まり層、若しくはその両方となる被覆部材とを含んで構成される耐火梁、耐火柱等の、その他の種々の木造建築物を構成する耐火構造材であっても良い。