(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853776
(24)【登録日】2021年3月16日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】貫通部の耐火被覆構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20210322BHJP
【FI】
E04B1/94 F
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-245528(P2017-245528)
(22)【出願日】2017年12月21日
(65)【公開番号】特開2019-112795(P2019-112795A)
(43)【公開日】2019年7月11日
【審査請求日】2020年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183428
【氏名又は名称】住友林業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000160359
【氏名又は名称】吉野石膏株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茶谷 友希子
(72)【発明者】
【氏名】関 真理子
(72)【発明者】
【氏名】蛇石 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】黒田 瑛一
(72)【発明者】
【氏名】大内 渉
(72)【発明者】
【氏名】山下 琢治
(72)【発明者】
【氏名】山片 浩司
【審査官】
新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2017−075458(JP,A)
【文献】
特開2016−065431(JP,A)
【文献】
特許第4533006(JP,B2)
【文献】
特開2016−186164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/94
F16L 5/04
E06B 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木造建築物の防火区画体に形成された貫通部、又は木造建築物の耐火構造材に形成された貫通部を耐火被覆する貫通部の耐火被覆構造であって、
前記貫通部の内周面を覆って、筒状耐火被覆材が前記貫通部に取り付けられており、前記筒状耐火被覆材は、複数の石膏ボード片を、厚さ方向に積層した状態で接合一体化することにより筒状に形成されている貫通部の耐火被覆構造。
【請求項2】
複数の前記石膏ボード片は、環状の石膏ボード片となっている請求項1記載の貫通部の耐火被覆構造。
【請求項3】
複数の前記石膏ボード片の各々は、厚さが9.5mm〜25.5mmの石膏ボードから切り出されたものとなっている請求項1又は2記載の貫通部の耐火被覆構造。
【請求項4】
複数の前記石膏ボード片は、留め金具を用いて互いに固定されることにより積層した状態で接合一体化されて、前記筒状耐火被覆材を形成している請求項1〜3のいずれか1項記載の貫通部の耐火被覆構造。
【請求項5】
前記石膏ボード片は、円環形状の石膏ボード片となっており、前記筒状耐火被覆材は、円筒形状の耐火被覆材となっている請求項1〜4のいずれか1項記載の貫通部の耐火被覆構造。
【請求項6】
前記耐火構造材は、荷重支持層となる構造用部材と、該構造用部材の表面を覆って配置されて燃え代層となる被覆部材とを含んで構成されており、前記貫通部は、前記構造用部材と前記被覆部材との境目部と交差して貫通形成されており、前記石膏ボード片を積層して形成されている前記筒状耐火被覆材は、積層方向に隣接する前記石膏ボード片の接合部を、前記構造用部材と前記被覆部材との境目部、又は該境目部と近接する部分に配置した状態で、前記貫通部に挿通されて取り付けられている請求項1〜5のいずれか1項記載の貫通部の耐火被覆構造。
【請求項7】
前記耐火構造材は、耐火梁となっており、該耐火梁は、荷重支持層となる構造用部材と、該構造用部材の両側の側面を覆って配置されて燃え代層となる一対の被覆部材とを含んで構成されており、前記貫通部は、前記構造用部材と前記被覆部材との2箇所の境目部と交差して貫通形成されており、前記石膏ボード片を積層して形成されている前記筒状耐火被覆材は、積層方向に隣接する前記石膏ボード片の2箇所の接合部を、2箇所の前記構造用部材と前記被覆部材との境目部、又は該境目部と近接する部分に各々配置した状態で、前記貫通部に挿通されて取り付けられている請求項6記載の貫通部の耐火被覆構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通部の耐火被覆構造に関し、特に、木造建築物の防火区画体に形成された貫通部、又は木造建築物の耐火構造材に形成された貫通部を耐火被覆する貫通部の耐火被覆構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築物の防火区画は、建築物の内部で火災が発生したときに、火災を一定の範囲内に留めて、他に拡大しないようにするために、耐火構造の床、壁、天井、防火戸などで建築物をいくつかの部分に区画する場合の区画の周囲に配される、床、壁、天井、防火戸等の壁体(以下、「防火区画体」と称する。)である。これらの防火区画体には、配管や配線等を通すための貫通部を形成する必要を生じる場合があり、防火区画体に貫通部を形成するための構造として、例えば
図7(a)、(b)示すようなものが一般に用いられている。
【0003】
図7(a)、(b)に示す防火区画体に貫通部を形成するための構造では、壁や床の貫通部を設けたい箇所に、予め木枠50を組んで、木枠50の内周を石膏ボード等の耐火被覆材51で被覆すると共に、貫通部の周囲の壁や床の表面に、石膏ボード等の耐火被覆材52を取り付け、木枠50の内側に、塩化ビニールや鋼等からなる配管53を、好ましくは受け材54で支持させた状態で通すことにより、配管53による貫通部を形成するようになっている。
【0004】
また、例えば日本の木造建築物では、伝統的に木製の梁や柱を現した真壁造となっているように、構造材である木製の梁や柱の木の表面を、室内に露出させて現したデザインが好まれている。これらの木製の梁や柱の木の表面を室内に露出させて現したデザインは、燃え代設計を行うことにより、所望の耐火性を得られるようにすることが可能であるが、このような燃え代設計された梁や柱に貫通部を形成する場合、貫通部の部分で耐火性が失われて、貫通部から周囲に火災が燃え広がることで、燃え代設計された梁や柱の荷重支持層による支持力に影響を及ぼすことになり易い。
【0005】
このため、
図8(a)、(b)示すように、例えば燃え代設計された梁58に配管57を通す場合、耐火性を備える天井被覆55の上方の天井空間において、梁58に貫通部56を設けて配管57を通したり(
図8(a)参照)、梁58に貫通部を設けることなく、梁58の外周面に沿わせて配管57を通したり(
図8(b)参照)する方法が採用されていたが、天井被覆55の上方の天井空間に貫通部56を設ける方法では、梁58の現し部分が小さくなり、また梁58の外周面に沿わせて配管57を通す方法では、見た目が悪くなって、いずれも、現し梁としての意匠性を損なうことになる。
【0006】
これに対して、貫通部から周囲に火災が燃え広がらないようにした、耐火性を有する木製の構造部材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の木製の構造部材では、梁を貫通する貫通部の内周面を覆って、例えばモルタルで形成された管部材を、燃え止まり部として貫通部に挿通して設置すると共に、貫通部の内周面と管部材の外周面との間の隙間に、モルタル等の耐火性を有する材料による充填材を充填するようになっている。また、特許文献1には、燃え止まり部を形成することが可能な熱を吸収できる熱容量の大きな材料として、モルタルの他、石膏や、珪酸カルシウム等を使用できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6014320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の貫通部から周囲に火災が燃え広がらないようにした貫通部の耐火被覆構造では、貫通部に設置される管部材は、燃え止まる材料として例えばモルタル、石膏、珪酸カルシウム等を、筒状の型に流し込んで固めることにより形成されるものであるため、寸法精度が十分ではなく、特に木造建築物の耐火構造材を貫通する貫通部を耐火被覆する際に、貫通部にぴったりと嵌め込むようにして取り付けることが困難になる場合がある。
【0009】
また、貫通部の形状に合せて、成形用の筒状の型を、その都度形成する必要があることから、製作コストが高くなる。
【0010】
さらに、木造建築物の耐火構造材が、例えば荷重支持層となる構造用部材と、構造用部材の表面を覆って配置されて燃え代層となる被覆部材とを含んで構成されており、貫通部が、構造用部材と被覆部材との境目部と交差して形成されている場合に、例えば構造用部材と被覆部材とが乾燥収縮する際の挙動の相違や荷重を支持する際の挙動の相違によって、これらの境目部に段差が生じると、この段差の部分において、モルタル、石膏、珪酸カルシウム等を用いて形成された管部材である筒状耐火被覆材にひび割れが生じて、燃え止まり層としての機能が損なわれ易くなる。
【0011】
本発明は、貫通部に設置されて燃え止まり層として機能する筒状耐火被覆材を、精度良く且つ安価に形成することを可能にして、簡易に且つ低コストで設けることのできる貫通部の耐火被覆構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、木造建築物の防火区画体に形成された貫通部、又は木造建築物の耐火構造材に形成された貫通部を耐火被覆する貫通部の耐火被覆構造であって、前記貫通部の内周面を覆って、筒状耐火被覆材が前記貫通部に取り付けられており、前記筒状耐火被覆材は、複数の石膏ボード片を、厚さ方向に積層した状態で接合一体化することにより筒状に形成されている貫通部の耐火被覆構造を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0013】
そして、本発明の貫通部の耐火被覆構造は、複数の前記石膏ボード片が、環状の石膏ボード片となっていることが好ましい。
【0014】
また、本発明の貫通部の耐火被覆構造は、複数の前記石膏ボード片の各々が、厚さが9.5mm〜25.5mmの石膏ボードから切り出されたものとなっていることが好ましい。
【0015】
さらに、本発明の貫通部の耐火被覆構造は、複数の前記石膏ボード片が、留め金具を用いて互いに固定されることにより積層した状態で接合一体化されて、前記筒状耐火被覆材を形成していることが好ましい。
【0016】
さらにまた、本発明の貫通部の耐火被覆構造は、前記石膏ボード片が、円環形状の石膏ボード片となっており、前記筒状耐火被覆材は、円筒形状の耐火被覆材となっていることが好ましい。
【0017】
また、本発明の貫通部の耐火被覆構造は、前記耐火構造材が、荷重支持層となる構造用部材と、該構造用部材の表面を覆って配置されて燃え代層となる被覆部材とを含んで構成されており、前記貫通部は、前記構造用部材と前記被覆部材との境目部と交差して貫通形成されており、前記石膏ボード片を積層して形成されている前記筒状耐火被覆材は、積層方向に隣接する前記石膏ボード片の接合部を、前記構造用部材と前記被覆部材との境目部、又は該境目部と近接する部分に配置した状態で、前記貫通部に挿通されて取り付けられていることが好ましい。
【0018】
さらに、本発明の貫通部の耐火被覆構造は、前記耐火構造材が、耐火梁となっており、該耐火梁は、荷重支持層となる構造用部材と、該構造用部材の両側の側面を覆って配置されて燃え代層となる一対の被覆部材とを含んで構成されており、前記貫通部は、前記構造用部材と前記被覆部材との2箇所の境目部と交差して貫通形成されており、前記石膏ボード片を積層して形成されている前記筒状耐火被覆材は、積層方向に隣接する前記石膏ボード片の2箇所の接合部を、2箇所の前記構造用部材と前記被覆部材との境目部、又は該境目部と近接する部分に各々配置した状態で、前記貫通部に挿通されて取り付けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の貫通部の耐火被覆構造によれば、貫通部に設置されて燃え止まり層として機能する筒状耐火被覆材を、精度良く且つ安価に形成することを可能にして、簡易に且つ低コストで設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の好ましい一実施形態に係る貫通部の耐火被覆構造によって貫通部が耐火被覆された、耐火構造材である耐火梁の略示斜視図である。
【
図3】(a)、(b)は、筒状耐火被覆材を形成する工程を説明する略示斜視図である。
【
図4】(a)〜(d)は、筒状耐火被覆材の形態を例示する略示斜視図である。
【
図5】防火区画体である壁部に、耐火被覆された貫通部を設けた状態を例示する略示斜視図である。
【
図6】防火区画体である天井部に、耐火被覆された貫通部を設けた状態を例示する略示断面図である。
【
図7】防火区画体に貫通部を形成するための従来の構造を例示する、(a)は(b)のC−Cに沿った略示断面図、(b)は(a)のB−Bに沿った略示断面図である。
【
図8】(a)、(b)は、燃え代設計された耐火梁に配管を通すための従来の構造を例示する略示斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の好ましい一実施形態に係る貫通部の耐火被覆構造10は、
図1及び
図2に示すように、例えば木造建築物の耐火構造材である耐火梁20に、例えば配管や配線を通すための貫通部11を形成する際に、貫通部11の内周面を耐火被覆することにより、貫通部11の部分で耐火梁20の耐火性が失われて、燃え代設計された耐火梁20の荷重支持層による支持力に影響を及ぼすことになるのを、効果的に回避できるようにするものである。本実施形態の耐火被覆構造10は、貫通部11に設置される筒状耐火被覆材12を、好ましくは市販の石膏ボードを用いて、簡易に且つ精度良く、安価に形成できるようにすると共に、設置された貫通部11の内部で、筒状耐火被覆材12にひび割れ等が発生するのを効果的に防止して、安定した状態で貫通部11に耐火性を付与できるようにする機能を備えている。
【0022】
そして、本実施形態の貫通部の耐火被覆構造10は、
図1及び
図2に示すように、木造建築物の耐火構造材である耐火梁20に形成された貫通部11を耐火被覆する耐火被覆構造であって、貫通部11の内周面を覆って、筒状耐火被覆材12が、貫通部11に取り付けられている。筒状耐火被覆材12は、
図3(a)、(b)に示すように、複数の石膏ボード片13aとして、好ましくは環状石膏ボード片を、厚さ方向に積層した状態で接合一体化することにより筒状に形成されている。
【0023】
また、本実施形態では、好ましくは複数の環状石膏ボード片13aの各々は、円環形状の石膏ボード片となっており、厚さが9.5mm〜25.5mmの市販の石膏ボード13から切り出されたものとなっている。複数の円環形状の環状石膏ボード片13aは、留め金具として好ましくはステープル14(
図3(b)参照)を用いて互いに固定されることにより、積層した状態で接合一体化されて、円筒形状の筒状耐火被覆材12を形成している。
【0024】
さらに、本実施形態では、耐火梁20は、
図1及び
図2に示すように、荷重支持層となる構造用部材21と、構造用部材21の両側の側面を覆って配置されて燃え代層となる一対の被覆部材22とを含んで構成されており、貫通部11は、構造用部材21と被覆部材22との2箇所の境目部23と好ましくは垂直又は略垂直に交差して、貫通形成されている。環状石膏ボード片13aを積層した状態で形成されている筒状耐火被覆材12は、積層方向に隣接する環状石膏ボード片13aの接合部15を、耐火梁20の構造用部材21と被覆部材22との2箇所の境目部23、又は境目部23と近接する部分に各々配置した状態で、貫通部11に挿通されて取り付けられている。ここで、被覆部材22の燃え代層としての機能は、燃え代層としての機能の他、燃え止まる層としての機能も含むものであり、燃え代層となる木製の被覆部材22によって覆われた構造用部材21は、燃え止まる木製の被覆部材22で被覆した構造用部材22と解することができる。
【0025】
本実施形態では、耐火梁20は、好ましくは45分準耐火構造以上の耐火性能を備える梁として、燃え代設計された耐火梁となっている。すなわち、耐火梁20は、例えば高さ560mm、幅105mm程度の縦長矩形の断面形状を有する、構造梁材として機能する構造用部材21と、構造梁材21の側面部を覆って各々配置される、構造用部材21と同様の例えば高さ560mm、幅105mm程度の縦長矩形の断面形状を有する、燃え代用添え梁材として機能する一対の被覆部材22と、構造用部材21の下面部及び両側の被覆部材22の下面部を、連続して覆い隠すようにして取り付けられた、耐火被覆材24とを含んで構成されている。耐火被覆材24は、覆い隠した部分の木材を火災時に45分間以上、燃焼により損壊させない機能及び熱劣化させない機能を備える、例えば石膏ボード等を用いて三層構造で形成されている。また、耐火被覆材24の、構造用部材21及び被覆部材22を覆い隠す面以外の外周面を覆って、化粧用木板材25が取り付けられている。
【0026】
ここで、耐火梁20を構成する構造用部材21と一対の被覆部材22とは、接着剤や、くぎ、ビス等を用いて、一体として接合することもできるが、本実施形態では、好ましくは一体として接合されていない状態で設けられている。このため、構造用部材21と一対の被覆部材22とは、乾燥収縮や荷重を支持する際の挙動の相違によって、これらの境目部23と交差して貫通形成された貫通部11の内周面における当該境目部23に、段差が生じやすくなっている。本実施形態では、筒状耐火被覆材12が、複数の環状石膏ボード片13aを、留め金具として好ましくはステープル14を用いて固定することにより、積層した状態で接合一体化して形成されているので、後述するように、境目部23に生じた段差による影響を、接合部15の部分で吸収できるようになっている。
【0027】
本実施形態では、耐火梁20の貫通部11に挿通されて取り付けられる筒状耐火被覆材12は、
図3(a)、(b)に示すように、好ましくは厚さが9.5mm〜25.5mmの石膏ボード13からなる複数の円環形状の環状石膏ボード片13aを、厚さ方向に積層した状態で接合一体化することにより円筒形状となるように形成されている。石膏ボード13は、石膏を主成分とした素材を板状にして、石膏ボード用原紙で包んで得られる建築材料であり、断熱性及び遮音性が高い材料として知られている。石膏ボード13は、安価な板状部材として市販され、容易に入手可能であり、市販されている石膏ボードであればいずれのものでも使用できるが、石膏ボード13には、例えばJISA6901−2014に規定される9.5mm、12.5mm、15mm、16mm、18mm、21mm、25mmの厚さを有する、「せっこうボード」、「強化せっこうボード」及び「普通硬質せっこうボード」等が含まれ、同じ厚さの場合、石膏ボード13としては、より耐火性能を高めた強化せっこうボードを好適に使用できる。尚、JISA6901−2014においては、石膏ボードの厚さの許容差は0mm〜0.5mmであり、例えば25mmの厚さを有する石膏ボードとしては、25mm〜25.5mmの厚さを有する石膏ボードが許容される。さらに、石膏ボード13は、例えばルーター等の公知の切断工具を使用して、所望の形状となるように精度良く容易に切り出すことが可能である。
【0028】
本実施形態では、例えばルーターを使用して、市販の石膏ボード13から、例えば内径が115mm、外径が195mm程度の大きさの、円環形状(ドーナツ形状)の平面形状を備えるように切り出して、複数の環状石膏ボード片13aを形成する。切り出した円環形状の環状石膏ボード片13aは、好ましくは表裏の両側の面に石膏ボード用原紙(図示せず)が付着している状態のまま、厚さ方向に複数枚(本実施形態では、12枚)、積み重ねて積層した状態で接合一体化されて、円筒形状の筒状耐火被覆材12を形成する。
【0029】
ここで、環状石膏ボード片13aが、表裏の両側の面に紙が付着している状態のまま積層されることにより、環状石膏ボード片13aの表裏の両側の面が平滑となり、環状石膏ボード片13a同士の積層面が平滑となるので、環状石膏ボード片13a同士を隙間なく接着することが可能になる。また、環状石膏ボード片13a同士をステープル等で隙間なく接着することにより、紙が付着している状態のまま環状石膏ボード片13aを積層しても、筒状耐火被覆材12の耐火性能を確保することが可能になる。環状石膏ボード片13aは、表裏の両側の面から紙を取り外した状態で積層して接合一体化することもできる。
【0030】
複数の円環状石膏ボード片13aは、公知の各種の接着剤を用いて、積み重ねて積層した状態で接合一体化することもできるが、本実施形態では、上述のように、留め金具として、好ましくはステープル14(
図3(b)参照)を用いて互いに固定されて、積層した状態で接合一体化される。ステープルは、石膏ボードを固定する際の留め金具として公知の、コの字形状に折り曲げられた針部材である。ステープルは、建築用ホチキスとして公知の工具であるタッカー(ステープルガン)を用いて、石膏ボードを貫通して打ち込まれることで、石膏ボードを、他の石膏ボードや支持部材等に容易に固定することができる。一本のステープル14を、例えば2〜3枚以上の石膏ボードに同時に貫通させると、石膏ボードが割れる可能性があるため、本実施形態では、ステープル14は、その打ち込み長さが石膏ボードの厚みの1.5〜2倍程度の長さとなっており、好ましくは積み重ねられた隣接する各々の2枚毎の円環状石膏ボード片13aに対して、ステープル14を順次打ち込んでゆくことで、12枚の円環状石膏ボード片13aを互いに固定して、接合一体化するようになっている。また、12枚の円環形状の環状石膏ボード片13aを接合一体化して形成された円筒形状の筒状耐火被覆材12の、各隣接する環状石膏ボード片13aの接合部15の部分の外周面には、接着剤として、例えば無機系接着剤のトラボンド(吉野石膏(株)製、登録商標)等を塗布して、接合強度や耐火性能を高めるようにすることが好ましい。
【0031】
なお、複数の石膏ボード片13aを互いに固定するための留め金具14として、ステープル14の他、例えば釘、ピン、ねじ等の、留め金具として公知の種々の金物を用いることができる。
【0032】
本実施形態では、12枚の円環形状の環状石膏ボード片13aを接合一体化して形成された円筒形状の筒状耐火被覆材12は、例えば耐火梁20を貫通して形成された貫通部11の長さとして、315mmよりも若干短い、300〜310mm程度の長さを有するように形成されると共に、例えば200mmの内径を有する貫通部11の内径よりも若干小さい、195mmの外径を有するように形成される。
【0033】
ここで、筒状耐火被覆材12は、例えば9.5mm、12.5mm、15mm、16mm、18mm、21mm、25mmの厚さを有する市販の石膏ボード13から切り出した、複数の円環状石膏ボード片13aを積み重ねて形成されるので、複数の異なる厚さの石膏ボード13から、各々の円環状石膏ボード片13aを切り出す石膏ボード13を適宜選択して、切り出された複数の石膏ボード13を組み合わせて積層することで、筒状耐火被覆材12の長さが所定の長さとなるように、容易に調整することが可能になる。また、複数の異なる厚さの石膏ボード13から、各々の円環状石膏ボード片13aを切り出す石膏ボード13を適宜選択して、切り出された複数の石膏ボード13を組み合わせて積層することで、筒状耐火被覆材12を耐火梁20の貫通部11に挿通して取り付けた際に、各隣接する環状石膏ボード片13aの接合部15のうちの2箇所の接合部15が、耐火梁20の構造用部材21と被覆部材22との2箇所の境目部23、又は境目部23と近接する部分に各々配置されるように、筒状耐火被覆材12のおける接合部15の位置を適宜調整することが可能になる。
【0034】
なお、筒状耐火被覆材12を形成する環状石膏ボード片13aは、
図4(a)に示すように、市販の石膏ボード13から、円環形状の平面形状となるように切り出して積層する必要は必ずしも無く、
図4(b)に示すように、例えば円環形状を2分割した平面形状となるように切り出した石膏ボード片13a’を積層して、分割耐火被覆材12’を形成してから、形成した複数の分割耐火被覆材12’を円周方向に接合一体化することによって、石膏ボード13からなる複数の環状石膏ボード片13aが、厚さ方向に積層した状態で接合一体化して筒状に形成された筒状耐火被覆材12(
図4(a)参照)とすることもできる。
図4(c)に示すように、例えば円環形状を3分割した平面形状となるように切り出した石膏ボード片13a”を積層して、分割耐火被覆材12”を形成してから、形成した複数の分割耐火被覆材12”を円周方向に接合一体化することによって、石膏ボード13からなる複数の環状石膏ボード片13aが、厚さ方向に積層した状態で接合一体化して筒状に形成された筒状耐火被覆材12(
図4(a)参照)とすることもできる。
【0035】
また、
図4(d)に示すように、例えば円環形状を2分割した平面形状となるように切り出した複数の石膏ボード片13a’を、上下に隣接する石膏ボード片13a’の位置を周方向に交互にずらして積層した状態で、複数の分割耐火被覆材12’を形成し、これらを円周方向に接合一体化することによって、石膏ボード13からなる複数の環状石膏ボード片13aが、厚さ方向に積層した状態で接合一体化して筒状に形成された筒状耐火被覆材12(
図4(a)参照)とすることもできる。
【0036】
本実施形態では、貫通部の耐火被覆構造10は、上述のようにして複数の環状石膏ボード片13aを接合一体化して形成された筒状耐火被覆材12を、耐火梁20に設けられた貫通部11の内周面を覆うようにして、貫通部11に挿通して取り付けることによって形成される。すなわち、
図1及び
図2に示すように、上述のようにして形成された筒状耐火被覆材12を、耐火梁20を貫通して、例えば内径が200mm程度の大きさの円形の中空断面を有するように形成された貫通部11に、各隣接する環状石膏ボード片13aの11カ所の接合部15のうちの、4番目と8番目の接合部15が、耐火梁20の構造用部材21と被覆部材22との2箇所の境目部23、又は境目部23と近接する部分に各々配設されるようにして、挿通配置する。また、挿入された筒状耐火被覆材12の外周面と、貫通部11の内周面との間の隙間に、例えば耐火パテ等を充填して固化させることにより、筒状耐火被覆材12を貫通部11に固定する。しかる後に、好ましくは貫通部11に固定された筒状耐火被覆材12の小口面の隙間を耐火パテ等を用いて埋めることによって、本実施形態の貫通部の耐火被覆構造10が形成される。
【0037】
なお、本実施形態では、耐火梁20の上面部分には、耐火梁20の上面を覆い隠すようにして、所定の耐火性能を備える公知の床部材(図示せず)が取り付けられることで、火災加熱時に火災加熱による影響が、上面側からは構造用部材21に及ばないようになっている。これによって、耐火梁20の上面部分には、耐火被覆材を設けなくても、構造用部材21が燃焼により損壊したり熱劣化したりするのを、効果的に防止できるようになっている。
【0038】
そして、上述の構成を備える本実施形態の貫通部の耐火被覆構造10によれば、貫通部11に設置されて燃え止まり層として機能する筒状耐火被覆材12を、精度良く且つ安価に形成することを可能にして、簡易に且つ低コストで設けることが可能になる。
【0039】
すなわち、本実施形態によれば、貫通部の耐火被覆構造10は、耐火梁20に形成された貫通部11の内周面を覆って当該貫通部11に挿通配置された筒状耐火被覆材12が、複数の環状石膏ボード片13aを、厚さ方向に積層した状態で接合一体化することにより筒状に形成されているので、好ましくは市販される安価な厚さが9.5mm〜25.5mmの石膏ボード13から、複数の環状石膏ボード片13aを精度良く切り出して積層することで、成形用の筒状の型をその都度形成することなく、筒状耐火被覆材12を、精度良く且つ安価に形成することが可能になると共に、形成された筒状耐火被覆材12を貫通部11に設置して固定するだけの、簡単な作業によって、簡易に且つ低コストで設けることが可能になる。
【0040】
また、本実施形態では、筒状耐火被覆材12は、好ましくは複数の環状石膏ボード片13aを、ステープル留めすることにより積層した状態で接合一体化することで形成されており、積層方向に隣接する環状石膏ボード片13aの2箇所の接合部15を、耐火梁20における2箇所の構造用部材21と被覆部材22との境目部23、又は境目部23と近接する部分に各々配置した状態で、貫通部11に取り付けられている。これによって、例えば構造用部材21と被覆部材22とが乾燥収縮する際の挙動の相違や荷重を支持する際の挙動の相違によって、これらの境目部23において貫通部11に段差が生じても、生じた段差を、境目部23又は境目部23と近接する部分に配置された接合部15の両側で、隣接する環状石膏ボード片13aがずれることにより吸収して、筒状耐火被覆材12にひび割れが生じて、燃え止まり層としての機能が損なわれ易くなるのを、効果的に回避することが可能になる。
【0041】
図5は、本発明の好ましい他の実施形態に係る貫通部の耐火被覆構造30を例示するものである。本他の実施形態の耐火被覆構造30では、木造建築物の防火区画体として、耐火構造の壁に形成された貫通部31を耐火被覆するための構造として設けられたものである。すなわち、本他の実施形態の耐火被覆構造30では、石膏ボード片として、好ましくは厚さが9.5mm〜25.5mmの石膏ボードからなる円環形状の複数の環状石膏ボード片33aを、厚さ方向に積層した状態で接合一体化することにより形成された、好ましくは円筒形状の筒状耐火被覆材32を、耐火構造の壁を構成する柱や間柱34に支持させて取り付けた、受け台35の上に載置して固定することによって、当該円筒形状の筒状耐火被覆材32による貫通部31が、耐火構造の壁を貫通して設けられるようになっている。またこれによって、貫通部31の内周面を覆って、筒状耐火被覆材32が、当該筒状耐火被覆材32による貫通部31に取り付けられることになる。
【0042】
なお、
図5に示す他の実施形態では、筒状耐火被覆材32を取り付けられた後に、柱や間柱34に支持させて壁の表裏の面に、所定の耐火性能を備える公知の壁用面材が取り付けられることにより、筒状耐火被覆材32による貫通部31が設けられた、耐火構造の壁に形成されることになる。
【0043】
本他の実施形態の貫通部の耐火被覆構造30によっても、貫通部31を形成する筒状耐火被覆材32が、厚さが9.5mm〜25.5mmの石膏ボードからなる複数の環状石膏ボード片33aを、厚さ方向に積層した状態で接合一体化することにより筒状に形成されているので、上記の実施形態の貫通部の耐火被覆構造10と、同様の作用効果が奏される。
【0044】
図6は、本発明の好ましい更に他の実施形態に係る貫通部の耐火被覆構造40を例示するものである。
図6示す耐火被覆構造40では、木造建築物の防火区画体として、耐火構造の天井(又は床)に形成された、上下階に亘って配管44を通す貫通部41を耐火被覆するための構造として設けられたものである。すなわち、本他の実施形態の耐火被覆構造40では、石膏ボード片として、好ましくは厚さが9.5mm〜25.5mmの石膏ボードからなる円環形状の複数の環状石膏ボード片43aを、厚さ方向に積層した状態で接合一体化することにより形成された、好ましくは円筒形状の筒状耐火被覆材42を、耐火性能を備える下階の天井部材45と耐火性能を備える上階の床部材46との間の天井懐部47に、天井部材45と床部材46との間に亘って取り付けることによって、当該円筒形状の筒状耐火被覆材42による貫通部41が、下階の天井部材45と上階の床部材46との間を貫通して設けられるようになっている。またこれによって、貫通部41の内周面を覆って、筒状耐火被覆材42が、当該筒状耐火被覆材32による貫通部41に取り付けられることになる。
【0045】
図6に示す貫通部の耐火被覆構造40によっても、貫通部41を形成する筒状耐火被覆材42が、厚さが9.5mm〜25.5mmの石膏ボードからなる複数の環状石膏ボード片43aを、厚さ方向に積層した状態で接合一体化することにより筒状に形成されているので、上記の実施形態の貫通部の耐火被覆構造10と、同様の作用効果が奏される。
【0046】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、石膏ボード片は、円環形状の環状石膏ボード片である必要は必ずしも無く、その他の形状の環状に形成された石膏ボード片や、環状となるように連接可能な石膏ボード片であっても良い。筒状耐火被覆材は、円筒形状の耐火被覆材である必要は必ず無く、角筒形状等のその他の形状の筒状に形成された耐火被覆材であっても良い。貫通部が形成される耐火構造材は、荷重支持層となる構造用部材と、燃え代層となる一対の被覆部材とを含んで構成される耐火梁である必要は必ずしも無く、荷重支持層となる構造用部材と、構造用部材の表面を覆って配置されて燃え代層、又は燃え止まり層、若しくはその両方となる被覆部材とを含んで構成され、構造用部材と前記被覆部材との境目部と交差して貫通部が貫通形成されている、その他の種々の構造用部材であっても良い。この場合に、好ましくは環状石膏ボード片を積層して形成されている筒状耐火被覆材は、積層方向に隣接する環状石膏ボード片の接合部を、構造用部材と被覆部材との境目部、又は該境目部と近接する部分に配置した状態で、貫通部に挿通して取り付けることができる。
【符号の説明】
【0047】
10,30,40 耐火被覆構造
11,31,41 貫通部
12,32,42 筒状耐火被覆材
12’,12” 分割耐火被覆材
13 石膏ボード
13a,33a,43a 環状石膏ボード片(石膏ボード片)
13a’,13a” 石膏ボード片
14 ステープル(留め金具)
15 接合部
20 耐火梁
21 構造用部材
22 被覆部材
23 境目部
24 耐火被覆材
25 化粧用木板材
34 柱や間柱
35 受け台
44 配管
45 天井部材
46 床部材
47 天井懐部