特許第6853778号(P6853778)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6853778ポリオレフィン添加剤、耐垂下性ポリオレフィン、及びその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853778
(24)【登録日】2021年3月16日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】ポリオレフィン添加剤、耐垂下性ポリオレフィン、及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20210322BHJP
   C08L 51/00 20060101ALI20210322BHJP
   C08F 255/00 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   C08L23/00
   C08L51/00
   C08F255/00
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-526512(P2017-526512)
(86)(22)【出願日】2015年11月29日
(65)【公表番号】特表2017-536453(P2017-536453A)
(43)【公表日】2017年12月7日
(86)【国際出願番号】US2015062863
(87)【国際公開番号】WO2016094092
(87)【国際公開日】20160616
【審査請求日】2018年10月9日
(31)【優先権主張番号】62/088,734
(32)【優先日】2014年12月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カルロス・エイ・クルース
(72)【発明者】
【氏名】モーリス・シー・ウィルス
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−207055(JP,A)
【文献】 特開平08−302098(JP,A)
【文献】 特開平07−188607(JP,A)
【文献】 特開平09−143422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/00−23/36
C08F 255/00−255/10
C08L 51/00−51/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種または複数のポリオレフィンと、1〜5重量%の、(メタ)アクリル酸アルキルでグラフト化した塩素化ポリオレフィンと、を含むポリオレフィン組成物であって、前記アルキルが10個よりも多い炭素原子を含み、前記(メタ)アクリル酸アルキルの前記アルキルが、ステアリル、ラウリル、及びそれらの組合せからなる群から選択され、前記1種または複数のポリオレフィンが、前記塩素化ポリオレフィンではない、ポリオレフィン組成物。
【請求項2】
ポリプロピレンホモポリマー、高密度ポリエチレン及び直鎖低密度ポリエチレンからなる群から選択される1種または複数のポリオレフィンと、1〜5重量%の(メタ)アクリル酸アルキルでグラフト化した塩素化ポリオレフィンと、を含むポリオレフィン組成物であって、前記アルキルが10個よりも多い炭素原子を含み、前記(メタ)アクリル酸アルキルの前記アルキルが、ステアリル、ラウリル、及びそれらの組合せからなる群から選択される、ポリオレフィン組成物。
【請求項3】
前記塩素化ポリオレフィンが塩素化ポリエチレンである、請求項1又は2記載のポリオレフィン組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル酸アルキルでグラフト化した塩素化ポリオレフィンが、メタクリル酸ラウリルグラフト化塩素化ポリエチレン、メタクリル酸ステアリルグラフト化塩素化ポリエチレン、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1又は2記載のポリオレフィン組成物。
【請求項5】
1種または複数のポリオレフィンに、(メタ)アクリル酸アルキルでグラフト化した塩素化ポリオレフィンを1〜5重量%添加することであって、前記(メタ)アクリル酸アルキルの前記アルキルが、ステアリル、ラウリル、及びそれらの組合せからなる群から選択される、添加すること
を含む、オレフィン系ポリマーの耐垂下性を改良する方法。
【請求項6】
1種または複数のポリオレフィン;及び
1〜5重量%の、(メタ)アクリル酸アルキルでグラフト化した塩素化ポリオレフィンであって、前記アルキルが10個よりも多い炭素原子を含む塩素化ポリオレフィン
を含み、前記1種または複数のポリオレフィンが、前記塩素化ポリオレフィンではない、耐垂下性ポリオレフィン組成物。
【請求項7】
ポリプロピレンホモポリマー、高密度ポリエチレン及び直鎖低密度ポリエチレンからなる群から選択される1種または複数のポリオレフィン;並びに
1〜5重量%の、(メタ)アクリル酸アルキルでグラフト化した塩素化ポリオレフィンであって、前記アルキルが10個よりも多い炭素原子を含む塩素化ポリオレフィン
を含む、耐垂下性ポリオレフィン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はポリオレフィン添加剤、耐垂下性ポリオレフィン、及びその調製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン)は結晶融点より高い温度で溶融加工される。ポリオレフィンの溶融強度が低すぎる場合は、熱形成及び吹込み成形などの溶融加工プロセスにおいて問題が生じることがある。低い溶融強度は、垂下または垂れ落ちとして示される。
【0003】
垂下は溶融弾性及び溶融強度の両方に関する代わりの尺度である。良好な耐垂下性は、プラスチックの熱成形性の向上に寄与する(J.L. Throne, Technology of Thermoforming, Hanser−Gardner Publications, Inc., Cincinnati OH, 1996)。何年にもわたり、溶融強度を得るためのいくつかのアプローチが開発されている。ポリプロピレンに放射線照射して長鎖の分岐を導入し、結果として高溶融強度を得ることが商業化されている。この方法は放射線照射プロセスを注意深く制御することを含み、望まれないゲルの生成を招くことがある。LLDPEを有機過酸化物で処理することは、高溶融強度を有するポリオレフィンを得る別の手段であるが、照射の場合のように、そのプロセスは、所望の効果を得るためには厳密に制御する必要がある化学反応を含む。
【0004】
あるいは、三菱レイヨンのA−3000などの添加剤を使用して溶融強度を改良している。A−3000はアクリルポリマー及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をベースとする商品である。DuPontのBOOSTERの場合のように、化学修飾LLDPEは、ポリオレフィンの溶融強度を向上させる、添加剤アプローチの別例である。溶融強度を増加させる添加剤として長鎖アクリルモノマーが使用されてきたが、このような添加剤を得る合成経路は扱いにくいものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示はポリオレフィン添加剤、耐垂下性ポリオレフィン、及びその調製方法のためのものである。
【0006】
一実施形態においては、(メタ)アクリル酸アルキルでグラフト化した塩素化ポリオレフィンを含むポリオレフィン添加剤を提供し、そのアルキルは10個よりも多い炭素原子を有する。本開示は、オレフィン系ポリマーの耐垂下性を改良する方法、及び耐垂下性ポリオレフィンをさらに提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示はポリオレフィン添加剤、耐垂下性ポリオレフィン、及びその調製方法を提供するものである。
【0008】
第1の態様においては、(メタ)アクリル酸アルキルでグラフト化した塩素化ポリオレフィンを含むポリオレフィン添加剤を提供し、そのアルキルは10個よりも多い炭素原子を有する。
【0009】
第2の態様においては、本開示は、オレフィン系ポリマーの耐垂下性を改良する方法を提供するものであり、この方法は、1種または複数のポリオレフィンに、(メタ)アクリル酸アルキルでグラフト化した塩素化ポリオレフィン(CPO−g−MA)を1〜5重量%添加することを含む。
【0010】
第3の態様においては、本開示は耐垂下性ポリオレフィン組成物を提供するものであり、この組成物は、本明細書において開示する任意の実施形態に従って、1種または複数のポリオレフィンと、1〜5重量%の、(メタ)アクリル酸アルキルでグラフト化した塩素化ポリオレフィンと、を含む。
【0011】
本明細書において使用する場合、「塩素化ポリオレフィン」という用語は、1種もしくは複数の塩素含有コモノマーを含むオレフィン系ポリマー;及び/または塩素化反応に付したオレフィン系ポリマーを指す。塩素化反応は、例えば米国特許第7,763,692号、同第5,446,064号、同第4,767,823号、及び国際公開第2008/002952号パンフレットに記載されている塩素化反応を参照のこと。
【0012】
ポリオレフィンまたはオレフィン系ポリマーは、1種または複数のオレフィン系モノマーに由来するユニットを50重量%よりも多く有するポリマーを意味する。
【0013】
ポリエチレンまたはエチレン系ポリマーは、エチレンモノマーに由来するユニットを50重量%よりも多く有するポリマーを意味する。
【0014】
(メタ)アクリル酸は、アクリル酸、メタクリル酸、またはアクリル酸とメタクリル酸の組合せを意味する。例えば(メタ)アクリル酸メチルという用語は、単独のメタクリル酸メチル、単独のアクリル酸メチル、またはメタクリル酸メチルとアクリル酸メチルの組合せを意味してもよい。
【0015】
一実施形態においては、塩素化ポリオレフィンは、ポリマーの重量の15〜40重量%の塩素含有量を有する。15〜40重量%の塩素含有量の全ての個々の値、及び全ての部分的な範囲が本明細書に包含され、開示される。例えば塩素含有量は、15、25、または35重量%の下限から、20、40、または40重量%の上限までの範囲にわたることができる。例えば塩素含有量は15〜40重量%、または代替として15〜31重量%、または代替として30〜40重量%、または代替として25〜40重量%、または代替として35〜40重量%の範囲にわたることができる。塩素化ポリオレフィンの生成に使用するオレフィン系ポリマーの例としては、ポリプロピレンホモポリマー、プロピレン−エチレンインターポリマー、プロピレン−アルファ−オレフィンインターポリマー、プロピレン−エチレンコポリマー、及びプロピレン−アルファ−オレフィンコポリマーなどのポリプロピレン系ポリマー;ならびにポリエチレンホモポリマー、エチレン−アルファ−オレフィンインターポリマー、及びエチレン−アルファ−オレフィンコポリマーなどのエチレン系ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
プロピレン−α−オレフィンコポリマーにおけるアルファ−オレフィンの例としては、エチレンまたはC−C20アルファ−オレフィンが挙げられ、例えばエチレン、1‐ブテン、1‐ペンテン、1‐ヘキセン、1‐ヘプテン、1‐オクテン、1‐デセン、1‐ドデセン、1‐ヘキサデセン、4‐メチル‐1‐ペンテンなどであり、特にエチレンが好ましい。
【0017】
エチレン−アルファ−オレフィンコポリマーにおけるアルファ−オレフィンの例としては、C−C20α−オレフィンが挙げられ、例えばプロピレン、1‐ブテン、1‐ペンテン、1‐ヘキセン、1‐ヘプテン、1‐オクテン、1‐デセン、1‐ドデセン、1‐ヘキサデセン、及び4‐メチル‐1‐ペンテンなどである。アルファ−オレフィンはC−Cアルファ−オレフィンであることが好ましい。
【0018】
一実施形態においては、塩素化オレフィン系ポリマーは、25,000〜125,000g/モルの重量平均分子量Mwを有する。25,000〜125,000の全ての個々の値、及び全ての部分的な範囲が本明細書に包含され、開示される。例えばMwは、25,000、50,000、75,000、または100,000g/モルの下限から、50,000、75,000、100,000、または125,000の上限までとすることができる。例えばMwは25,000〜125,000、または代替として25,000〜75,000、または代替として75,000〜125,000、または代替として50,000〜10,0000とすることができる。
【0019】
塩素化ポリオレフィンは(メタ)アクリル酸アルキルでグラフト化し、そのアルキルは10個以上の炭素原子を有する。(メタ)アクリル酸アルキルは、1種または複数の(メタ)アクリル酸アルキルとしてもよく、アルキルはそれぞれ10個以上の炭素原子を有する。塩素化ポリオレフィンにグラフトしてもよい(メタ)アクリル酸アルキルの例としては、メタクリル酸ラウリル(ドデシルとも呼ばれる)、メタクリル酸ステアリル(オクタデシルとも呼ばれる)、メタクリル酸ヘキサデシル、アクリル酸ラウリル、及びアクリル酸ステアリルが挙げられるがこれらに限定されない。
【0020】
塩素化ポリオレフィンに(メタ)アクリル酸アルキルをグラフトする方法は、当技術分野で公知であり、例えば米国特許第5,338,803号において開示されている方法であり、当該開示はその全体が本明細書に援用される。本開示の実施形態に有用なアルキルグラフト化塩素化ポリオレフィンは、任意のプロセスに従って作製してもよい。
【0021】
本開示は、本明細書において開示する任意の実施形態によるポリオレフィン添加剤、耐垂下性ポリオレフィン、及びその作製方法をさらに提供するものであるが、ただし(メタ)アクリル酸アルキルは、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0022】
本開示は、本明細書において開示する任意の実施形態によるポリオレフィン添加剤、耐垂下性ポリオレフィン、及びその作製方法をさらに提供するものであるが、ただし(メタ)アクリル酸アルキルでグラフト化した塩素化ポリオレフィンは、メタクリル酸ラウリルグラフト化塩素化ポリエチレン(CPE−g−LMA)、及びメタクリル酸ステアリルグラフト化塩素化ポリエチレン(CPE−g−SMA)からなる群から選択される1つまたは複数である。
【0023】
本開示は、本明細書において開示する任意の実施形態によるポリオレフィン添加剤、耐垂下性ポリオレフィン、及びその作製方法をさらに提供するものであるが、ただし(メタ)アクリル酸アルキルでグラフト化した塩素化ポリエチレンは、20〜60重量%の塩素化ポリオレフィンと、40〜80重量%の(メタ)アクリル酸アルキルと、を含む。20〜60重量%の塩素化ポリオレフィンの全ての個々の値、及び全ての部分的な範囲が本明細書に包含され、開示される。例えば塩素化ポリオレフィンの量は、20、30、40、45、50、または55重量%の下限から、25、29、33、38、43、48、51、54、57、または60重量%の上限までの範囲にわたることができる。例えば塩素化ポリオレフィンの量は、20〜60重量%、または代替として20〜45重量%、または代替として50〜60重量%、または代替として35〜55重量%とすることができる。同様に(メタ)アクリル酸アルキルでグラフト化した塩素化ポリオレフィンにおける、40〜80重量%の(メタ)アクリル酸アルキルの全ての個々の値、及び全ての部分的な範囲が本明細書に包含され、開示される。例えば(メタ)アクリル酸アルキルの量は、40、45、50、55、60、65、0、または75重量%の下限から、43、48、51、54、57、60、65、75、または80重量%の上限までの範囲にわたることができる。例えば(メタ)アクリル酸アルキルの量は、40〜80重量%、または代替として40〜60重量%、または代替として50〜80重量%、または代替として45〜75重量%の範囲にわたることができる。
【0024】
本開示の方法においては、1種または複数のポリオレフィンに、(メタ)アクリル酸アルキルでグラフト化した塩素化ポリオレフィンを1〜5重量%添加する。1〜5重量%の全ての個々の値、及び全ての部分的な範囲が本明細書に包含され、開示される。例えば(メタ)アクリル酸アルキルでグラフト化した塩素化ポリオレフィンの量は、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、または4.5重量%の下限から、1.25、1.75、2.25、2.75、3.25、3.75、4.25、4.75、または5重量%の上限までの範囲にわたることができる。例えば1種または複数のポリオレフィンに添加する(メタ)アクリル酸アルキルでグラフト化した塩素化ポリオレフィンの量は、1〜5重量%、または代替として1〜3重量%、または代替として3〜5重量%、または代替として2〜4重量%、または代替として1.25〜3.75重量%の範囲にわたることができる。
【0025】
本開示は、本明細書において開示する任意の実施形態によるポリオレフィン添加剤、耐垂下性ポリオレフィン、及びその作製方法をさらに提供するものであるが、ただしCPO−g−MAを添加する1種または複数のポリオレフィンは、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、及び直鎖低密度ポリエチレンからなる群から選択される。
【0026】
本明細書において使用する場合、直鎖低密度ポリエチレン(HDPE)は、0.95g/cc以下の密度を有し、実質的に直鎖の分岐が無いエチレン/アルファ−オレフィンコポリマーを意味する。
【0027】
本明細書において使用する場合、高密度ポリエチレンは、0.93g/ccよりも大きい密度を有し、分岐を示さないエチレンホモポリマーを意味する。
【0028】
本明細書において使用する場合、ポリプロピレンは、プロピレンに由来するユニットを50重量%よりも多く含む任意のポリマーを意味し、プロピレンホモポリマー及びプロピレンコポリマーを含める。
【実施例】
【0029】
以下の実施例は、本発明を説明するものであるが、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書において使用する略語を以下に挙げる。
ALMA メタクリル酸アリル
BOP 全ポリマーに基づく
LLDPE 直鎖低密度ポリエチレン
LMA メタクリル酸ラウリル
SMA メタクリル酸ステアリル
t‐BPO 過オクタン酸t‐ブチル、フリーラジカル開始剤
【0030】
メタクリル酸ステアリルでグラフト化した塩素化ポリエチレン、本発明のCPE−g−SMA実施例1の生成
表1には、本発明の実施例1であるメタクリル酸ステアリルでグラフト化した塩素化ポリエチレン(CPE−g−SMA)の生成に使用した成分と量を示している。脱イオン水、The Dow Chemical Company (Midland, MI, USA)から市販されている塩素化ポリエチレンであるTYRIN 7100、Sigma−Aldrich Corporation (St. Louis, MO, USA)から市販されているメタクリル酸ステアリル(SMA)、Sigma−Aldrichから市販されているグラフト結合モノマーであるメタクリル酸アリル(ALMA)、及びAkzo Nobel Chemicals (Pasadena, TX, USA)から市販されているペルオキシ‐2‐エチルヘキサン酸tert−ブチルフリーラジカル開始剤であるTRIGONOX 21Sを、25℃にて10分間にわたって混合しながら一緒にし、さらに10分間そのまま混合した。次に混合物を85℃に加熱してグラフト重合を開始し、その温度で2時間維持した。次に混合物を95℃に加熱し、その温度で1時間維持した。次に得られたスラリーをろ過し、水で洗浄した。その後、ろ過した固体を乾燥した。
【0031】
【表1】
【0032】
本発明のCPE−g−LMA実施例2は、表2に示した成分及び量、ならびに本発明のCPE−g−SMA実施例1に関して用いたものと同じ条件を用いて生成した。
【0033】
【表2】
【0034】
LMAは、The Dow Chemical Companyから市販されているROCRYL 320とした。ALMAはSigma−Aldrich Corp.から市販されている。
【0035】
本発明の耐垂下性ポリオレフィン実施例1は、全ポリマー重量の2.5重量%の本発明のCPE−g−SMA実施例1を、The Dow Chemical Companyから市販されている直鎖低密度ポリマーであるELITE 5400Gに添加して、ポリマーブレンドを形成させることによって作製した。次にこのポリマーブレンドを練り、成形して、耐垂下性試験用の0.5×5×0.04インチの試験細片に切断した。耐垂下性試験細片へと切断したシートの調製用の練り条件及び成形条件は以下のとおりであった。ポリエチレンペレットを改質剤(合計150グラム)とブレンドし、電気2本ロールミル(COLLIN Mill 型番WW 150 p)で溶融加工した。前面ロールミル速度26RPM、及び背面ロールミル速度21RPMを用い、練り温度は150℃に設定した。ポリマーブレンドは、合計時間5分間、溶融加工した。次に試料を1mm(0.04インチ)×8.5インチ×10インチの型に入れ、RELIABLEプレスにおいて150℃で3分間、15トンで押圧し、次に45トンで2分間押圧した。45トン下でさらに3〜4分おいて冷却を行った。試料を、寸法1mm(0.04インチ)×0.5インチ×5インチの試験細片に切断した。
【0036】
本発明の耐垂下性ポリオレフィン実施例2−4は、それぞれ全ポリマー重量の2.5重量%、5重量%、及び10重量%の本発明のCPE−g−LMA実施例2をELITE 5400Gと混合し、上述のように試験試料細片を形成させることによって作製した。
【0037】
ポリオレフィン比較例1は、ELITE 5400Gそのままとした。ELITE 5400Gは、密度0.916g/cc、及び1.0g/10分のIを有するポリエチレン樹脂であり、The Dow Chemical Company (Midland, MI, USA)から市販されている。
【0038】
ポリオレフィン比較例2、3、及び4は、それぞれ2.5重量%、5.0重量%、及び10重量%のLMA−1と混合したELITE 5400Gとした。LMA−1は、スプレー乾燥したメタクリル酸ラウリルエマルションポリマーである。LMA−1は、以下の手順に従って作製する。
【0039】
コア層としてのLMA、及びスチレン、及びMMAシェルを有する従来のエマルションポリマーは、開始剤として過硫酸ナトリウム、及び陰イオン性界面活性剤としてDISPONIL FES−32を用いて調製する。DISPONIL FES−32は、脂肪アルコールポリグリコールエーテル硫酸塩、Na塩であり、BASF (Freeport, TX)から市販されている。シェルに対するLMAの比は、典型的にはモノマー重量で70/30である。最終ラテックス固体は典型的には約48%であり、平均粒径は約200nmである。LMA層は約0.05%のALMAを含有し、ALMAは、約750,000〜100万ダルトンの重量平均分子量を有する、分岐であるが非架橋のポリマー構造をもたらす。スプレー乾燥により、ラテックスを単離して粉末にする。
【0040】
本発明の耐垂下性ポリオレフィン実施例1−4は、ポリオレフィン比較例1の未修飾LLDPE、及びポリオレフィン比較例2の、同じ添加量のメタクリル酸添加剤を有するLLDPEの両方よりも少ない垂下を示した。ポリオレフィン比較例3及び4はそれぞれ、実質的により多い添加量のメタクリル酸添加剤を有したが、本発明の耐垂下性ポリオレフィン実施例1と同等の垂下を示した。同等の添加剤濃度では、本発明の耐垂下性ポリオレフィン実施例3及び4は、その添加剤濃度のポリオレフィン比較例3及び4と同等の垂下を示す。
【0041】
さらなる本発明の耐垂下性ポリオレフィン実施例5−10は、ポリマーにグラフトするSMAの量を変化(全ポリマー重量の20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、及び80重量%)させたCPE−g−SMA実施例を加えることによって調製した。CPE−g−SMAは、全ポリマーの10重量%の濃度でELITE 5230Gに加えた。これらのさらなる実施例を作製する方法は、上記と同じ方法だが、ALMAを使用せずに行う。表3には、これらの本発明の耐垂下性ポリオレフィン実施例5−10で作製した試験細片のインチ単位での垂下を示している。ELITE 5230Gは、密度0.916g/cc、及び4.0g/10分のIを有するLLDPEであり、The Dow Chemical Companyから市販されている。ポリオレフィン比較例5は、10重量%のTYRIN 7100を有するELITE 5230Gとした。ポリオレフィン比較例6は、10重量%のLMA−1を有するELITE 5230Gとした。ポリオレフィン比較例7は、10重量%のCPE−g−SMAを有するELITE 5230Gとした。CPE−g−SMAは、90重量%のCPEと、CPEにグラフトした10重量%SMAと、を含んだ。ポリオレフィン比較例8は、10重量%のSMAを有するELITE 5230Gとした。本明細書において使用する場合、X−CPE−g−Y−SMA(X及びYは数字)という用語は、X重量%のCPEに由来するユニットと、Y重量%のSMAに由来するユニットと、を有するCPE−g−SMAを指す。
【0042】
【表3】
【0043】
本発明の耐垂下性ポリオレフィン実施例11は、10重量%の本発明のCPE−g−SMA実施例2をELITE 5400Gに加えることによって作製した。本発明のCPE−g−SMA実施例2は、上記の手順に従って、ただし開始剤は過酸化ラウロイルとし、SMA含有量は全ポリマー重量の30重量%として作製した。本発明の耐垂下性ポリオレフィン実施例12及び13は、それぞれ10重量%のCPE−g−SMA−12及びCPE−g−SMA−13をELITE 5400Gに加えることによって作製した。CPE−g−SMA−12及びCPE−g−SMA−13はそれぞれ、30重量%のSMAに由来するユニットの含有量を有する。これらのCPE−g−SMA−12及びCPE−g−SMA−13の各々は、塩素含有量25重量%を有する塩素化ポリエチレンを用いて作製した。CPE−g−SMA−12の作製に用いた塩素化ポリエチレンは、CPE−g−SMA−13の作製に用いた塩素化ポリエチレンよりも乱雑な塩素分布を有する。垂下試験の結果を表4に示す。
【0044】
【表4】
【0045】
特定のCPO−g−MAも、添加剤として、全ポリマー重量の10重量%の添加量で、高密度ポリエチレンであるCONTINUUM DGDA 2490NTに添加して試験した。CONTINUUM DGDA 2490NTはThe Dow Chemical Companyから市販されている。10重量%の添加剤添加量以外では、HDPEにおいて効果は見られなかった。表5には、10重量%のCPE−g−SMA(30重量%、50重量%、及び80重量%のSMA)での、修飾した垂下の結果を示している。
【0046】
【表5】
【0047】
特定のCPO−g−MAを、プロピレンホモポリマーL5D45Gでの添加剤としても試験した。L5D45GはThe Dow Chemical Companyから市販されている。添加剤は全ポリマー重量の5重量%で添加した。垂下試験結果を表6に示す。
【0048】
【表6】
【0049】
表6でわかるように、添加剤なしのプロピレンホモポリマーと比べて、CPE−g−SMAでは、30重量%及び50重量%の両方のSMA濃度でより良好な耐垂下性が示された。
【0050】
試験方法
試験方法としては、以下のものが挙げられる。
ポリマー密度は、ASTM D792に準拠して測定する。
メルトインデックスIは、ASTM D1238(190℃/2.16kg)に準拠して測定する。
【0051】
垂下試験
寸法1mm(0.04インチ)×0.5インチ×5インチの試験細片は、試料の最上部0.5インチをバタフライクリップで挟んで鋼棒に掛けることによって、温度140℃(LLPDE用)に設定したBlue M対流式オーブン内に吊した。試験細片に隣接して、試験細片の最下部が定規のゼロインチの印に一致するよう、(下方向が正の方向になるようにして)インチ目盛りの定規を据えた。ストップウォッチを使用して、オーブンのドアののぞき窓から観察することにより試験細片の伸び(垂下)を測定した。記録したデータは、時間に対する伸びとした。HDPEの場合には、試験細片の最下部を挟んで14グラムの重しを付け、オーブンの設定温度は160℃とした。吊す重しは、単純に、14グラムの重量を有するバタフライクリップとし、試験試料の最下部0.5インチに付けた。
【0052】
本発明は、本発明の趣旨及び本質的な特質から逸脱することなく他の形態で実施してもよい。したがって、本発明の範囲を示すものとして、前述の明細書よりも添付の特許請求の範囲に対して参照がなされるべきである。