特許第6853783号(P6853783)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6853783-シリビンを含有する薬物組成物 図000009
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853783
(24)【登録日】2021年3月16日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】シリビンを含有する薬物組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/82 20060101AFI20210322BHJP
   A61K 31/357 20060101ALI20210322BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20210322BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20210322BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20210322BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20210322BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20210322BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   A61K36/82
   A61K31/357
   A61K47/24
   A61K9/16
   A61K9/48
   A61K9/20
   A61P1/16
   A61P3/06
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-548883(P2017-548883)
(86)(22)【出願日】2016年3月22日
(65)【公表番号】特表2018-509428(P2018-509428A)
(43)【公表日】2018年4月5日
(86)【国際出願番号】CN2016077034
(87)【国際公開番号】WO2016150375
(87)【国際公開日】20160929
【審査請求日】2019年3月6日
(31)【優先権主張番号】201510128638.8
(32)【優先日】2015年3月23日
(33)【優先権主張国】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511237874
【氏名又は名称】タスリー・ファーマシューティカル・グループ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TASLY PHARMACEUTICAL GROUP CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(72)【発明者】
【氏名】呉 迺峰
(72)【発明者】
【氏名】閻 希軍
(72)【発明者】
【氏名】孫 鶴
(72)【発明者】
【氏名】閻 凱境
(72)【発明者】
【氏名】朱 永宏
(72)【発明者】
【氏名】章 順楠
(72)【発明者】
【氏名】白 暁林
(72)【発明者】
【氏名】何 毅
(72)【発明者】
【氏名】馬 暁慧
(72)【発明者】
【氏名】李 テイ
(72)【発明者】
【氏名】李 磊
【審査官】 春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第1961874(CN,A)
【文献】 特開昭62−022781(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/147119(WO,A1)
【文献】 Grattagliano I et al.,A Silybin-Phospholipids Complex Counteracts Rat Fatty Liver Degeneration and Mitochondrial Oxidative Changes,World Journal of Gastroenterology,2013年 5月28日,Vol.19, No.20,p.3007-3017,DOI: 10.3748/wjg.v19.i20.3007
【文献】 Haddad Y et al.,Antioxidant and Hepatoprotective Effects of Silibinin in a Rat Model of Nonalcoholic Steatohepatitis,Evidence-based Complementary and Alternative Medicine,2011年 1月12日,Vol.2011,Article ID 647903,DOI: 10.1093/ecam/nep164
【文献】 Hou Y et al.,Protecive effects of Pu-erh tea on nonalcoholic fatty liver in rats,Chinese Journal of Public Health,2009年12月,Vol.25, No.12,p.1445-1447
【文献】 Shimamura Y et al.,Pu-erh Tea Suppresses Diet-Induced Body Fat Accumulation in C57BL/6J Mice by Down-Regulating SREBP-1c and Related Molecules,Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry,2013年,Vol.77, No.7,p.1455-1460
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00−36/9068
A61K 31/00−31/80
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
PubMed
医中誌WEB
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記重量比の成分から作製される非アルコール性脂肪肝の治療用の薬物組成物、及び薬学的に許容される担体を含み、前記薬学的に許容される担体が、重量で製剤の総重量の0.1〜99.9%である製剤の調製方法であって、
シリビン 8.75〜60部
リン脂質 15〜65部
プーアル茶抽出物 25〜200部
a)処方量の原料を用意するステップ、
b)処方量のシリビン、リン脂質を秤量して無水エタノールに溶解させ、加熱、還流して溶液を清澄にした後、一定時間加熱し続けてから、清澄溶液を一定の体積になるまで減圧濃縮して、シリビン複合液を得るシリビン複合液の調製ステップ、
c)処方量のプーアル茶抽出物を秤量して基材とし、b)で調製したシリビン複合液を液体材料とし、流動床の流動化液体噴射方式によって顆粒を作製し、液状複合物が全部噴射注入された後、乾燥して、顆粒、即ち薬物組成物を得る造粒ステップ、
d)前記c)の顆粒と薬学的に許容される担体とから通常の製剤を作製する薬剤作製ステップを含み、
前記リン脂質は、大豆リン脂質又はレシチンであり、
前記プーアル茶抽出物は、
プーアル茶葉を水に入れて煎じて2〜4回抽出し、抽出は、毎回0.5〜2時間行い、6〜12倍の体積の水を入れて行い、抽出液を濾過し、70℃以下の条件で、濾液を茶葉の重量:濃縮液の体積=1:2〜1:3になるまで減圧濃縮し、
遠心分離機を用いて前記濃縮液に対して遠心分離を行い、遠心分離液を45〜65℃で比重1.1〜1.25になるまで減圧濃縮し、スプレー乾燥またはマイクロ波乾燥を行って得られたプーアルの粉末茶であることを特徴とする調製方法。
【請求項2】
前記薬物組成物が、下記重量比の成分から作製されることを特徴とする請求項1に記載の調製方法
シリビン 25〜40部
リン脂質 30〜50部
プーアル茶抽出物 80〜120部
【請求項3】
前記薬物組成物が、下記重量比の成分から作製されることを特徴とする請求項1に記載の調製方法
シリビン 35部
リン脂質 42部
プーアル茶抽出物 100部
【請求項4】
前記担体は、マンニット、ソルビトール、ソルビン酸またはソルビン酸カリウム塩、二亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、システイン塩酸塩、チオグリコール酸、メチオニン、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンD、アゾン、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウム、一価のアルカリ金属の炭酸塩、酢酸塩、リン酸塩またはそれらの水溶液、塩酸、酢酸、硫酸、リン酸、アミノ酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、乳酸ナトリウム、キシリトール、マルトース、グルコース、フルクトース、デキストラン、グリシン、澱粉、蔗糖、乳糖、マンニトール、シリコン誘導体、セルロース及びその誘導体、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、グリセロール、プロピレングリコール、エタノール、ツイーン60〜80、スパン−80、ミツロウ、ラノリン、流動パラフィン、1−ヘキサデカノール、没食子酸エステル類、寒天、トリエタノールアミン、塩基性アミノ酸、尿素、アラントイン、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、界面活性剤、ポリエチレングリコール、シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、リン脂質類、カオリン、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、微結晶セルロースの中の1種または1種以上を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の調製方法
【請求項5】
前記製剤は、錠剤、コーティング錠剤、フィルムコーティング錠剤、腸溶性コーティング錠剤、カプセル剤、ハードカプセル剤、ソフトカプセル剤、経口液剤、舐剤、顆粒剤、丸剤、散剤、膏剤、丹剤、懸濁剤、液剤、注射剤、坐剤、軟膏剤、硬膏剤、クリーム剤、スプレー剤、貼付剤の中のいずれか1種であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の調製方法
【請求項6】
ステップb)における加熱時間は0.5〜1.5時間であり、濃縮された体積は元の体積の5%〜20%であり、減圧濃縮温度は60〜80℃であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項7】
ステップc)における流動床のパラメータは、材料温度が40〜65℃であり、造粒過程において通風機の回転数、給気温度、及び液体噴射頻度などのパラメータを調節して、材料の良好な流動化状態を保持し、造粒完了後、10〜60分間乾燥し、乾燥温度は55〜65℃である請求項1乃至5のいずれか一項に記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬分野、特に肝疾患を治療するシリビン含有薬物組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
20世紀60〜80年代末、H.wagnerを代表とする西ドイツの薬学者は、キク科のオオアザミ属植物のオオアザミ(Silybummarianum)の果実からその有効成分を抽出かつ分離して、シリマリンと称した。これはC−9置換基を有する一種の新規のフラボン類化合物であり、すなわち、フラバノノールとフェニルプロパノイド類誘導体とが縮合してなるフラボノリグナン類である。シリビン(Silybin、silibinin)は、オオアザミの主な成分の一つである。薬理学と毒性学の研究によって、肝細胞膜を保護しかつ安定させ、肝細胞の回復を促進し、肝機能を改良する顕著な作用を有することが明らかになった。四塩化炭素、チオアセトアミド、ムスカリン、ファロイジン、レトロシンなどのような各種の毒物による肝損傷に対して、いずれも異なる程度の保護、治療作用を有する。急性および慢性肝炎、初期肝硬変、脂肪肝、中毒性または薬剤性肝疾患に対して利用可能である。
【0003】
シリビンは水及び一般的な有機溶剤に難溶であるため、経口投与の吸収が劣り、その生物利用度が低く、その臨床効果に影響を与えている。その生物利用度を改善するために、国内外の薬学従事者は多くの研究を行った。難溶性薬物の吸収を改善する対策は通常、超微細粉砕、塩化、溶解補助剤の添加などがある。近年、シクロデキストリン包接化合物の作製、固体分散体、リン脂質複合物の合成、異なる剤形に作製するなどの方法を採用しており、研究によると、溶解性及び生物利用性が大幅に向上されている。
【0004】
固体製剤の見地からは、リン脂質複合物は特殊な固体分散体であり、固定の融点を有し、化学的性質が安定的で、薬物とリン脂質の分子化合物(錯体)とは異なっている。この種の化合物は、リン脂質の種類及び薬物とリン脂質の比率の違いによって異なり、1つのリン脂質分子は異なる数の薬物分子と結合されてもよい。複合物の分光特性から、薬物とリン脂質の極性基の部分が強い相互作用を発生して、分子における一本鎖の自由回転を抑える一方、リン脂質の2つの長鎖脂肪酸鎖は複合化反応に参与せず、自由に移動可能であり、リン脂質の極性部分を覆って1つの脂肪親和性表面を形成して、複合物が強い脂溶性を表すようにすると推測される。これは薬物の物理化学的性質を変化させて、薬物の脂溶性を増加させ、水溶性を減少させる。薬物分子と細胞膜との結合を促進して吸収を促進し、薬物の生物利用度を向上させる。プーアル茶は雲南特有の地方名茶である。産地の気候が穏やかで、雨量が十分であり、雲霧が纏われている。プーアル茶は、雲南原産地の大葉種乾燥緑茶からなり、その再加工によって、直接再加工して完成品にする生プーアル茶と、人工の急速発酵を経てから再加工してなる熟プーアル茶との2つのシリーズがある。また形に関し散茶と緊圧茶との2種類があり、完成品になった後も自然熟化過程が進行し続け、熟化すればするほど味が濃くなる独特な品質を有している。
【0005】
プーアル茶は唯一の後発酵型のお茶であり、そのテオフィリン、ポリフェノールなどの人体に有害な物質は、長期間の発酵過程において分化されているため、品性が穏やかで、人体にとって刺激ではなく、また新陳代謝を促進して、身体内の脂肪、毒素の解消と代謝を加速させることも可能である。現在、都市で生活している人々を悩ませている肥満、高血圧症、高血糖症、高脂血症などの問題に対し、プーアル茶は、例えば、デトックス、胃の保養、消炎、コレステロールの減少、セルライトの解消と脂質の除去、美容とダイエットのような、優れた緩和作用を発揮できる。現代技術によると、プーアル茶は、インスリン抵抗性を改善し、血中の脂質およびレプチンのレベルを調節するなどの作用を有し、生体のインスリン抵抗性による肝臓実質細胞の脂肪の蓄積をある程度遮断するなどの作用を有することが明らかになった。
【0006】
非アルコール性脂肪性肝疾患(non−alcoholic fatty liver disease、NAFLD)は、インスリン抵抗性及び遺伝的素質と緊密に関連する代謝ストレス性の肝臓損傷であり、その病理学的変化はアルコール性脂肪肝疾患と似ている。病変本体が肝小葉にあり、肝細胞の脂肪変性と脂肪の蓄積を病理的特徴とするが、過度の飲酒歴のない臨床病理症候群である。NAFLDは、何の炎症もない単純脂肪肝から、顕著な線維化ひいては肝硬変の深刻な炎症反応までの異なる程度の肝臓病変を表し、主に、単純脂肪肝、脂肪性肝炎、脂肪性肝硬変の3つの種類を含む。
【0007】
非アルコール性脂肪肝疾患の治療方法
1.原発性疾患または関連する危険要素を予防及び治療する。
2.基礎治療:合理的なエネルギー摂取を決め、飲食物の構成を調整し、適度な有酸素運動をし、不良な生活習慣と行為を是正する。
3.肝臓損害の悪化の回避:体重の急激減少、薬物の濫用、及びその他の肝疾患の悪化を誘発する可能性のある要素を防止する。
4.ダイエット:体重過重、内臓脂肪型肥満、及び短期間内に体重が迅速に増加するNAFLD患者は、いずれも生活方式を変えることによって体重をコントロールし、ウエストを減少させる必要がある。基礎治療の6カ月で、毎月の体重減少<0.45kg、または体重指数(BMI)>27kg/m且つ血中脂質、血糖、血圧などの2項以上の指標の異常が併発する人は、シブトラミンまたはオルリスタットなどのダイエット薬物を追加で服用することを考量してもよく、毎週の体重減少は、1.2Kg(児童の場合、毎週0.5Kgを超えない)を超えないほうが好ましく、BMI>40kg/mまたはBMI>35kg/m且つ睡眠時無呼吸症候群が併発するなどの肥満関連疾病患者は、胃バイパス手術ダイエット(II−1、II−2、II−3、III)を考慮してもよい。
5.インスリン増感剤:2型糖尿病、耐糖性障害、空腹時血糖増加、及び内臓脂肪型肥満が併発する人は、インスリン抵抗の改善と血糖(II−1、II−2、II−3)のコントロールを実現するように、メトホルミンとチアゾリジンジオン類の薬物の応用を考慮してもよい。
6.脂質降下薬:血中脂質の異常が、3〜6カ月以上の基礎治療及び(または)ダイエット抗糖尿病薬物の服用をしても、相変わらず混合性高脂血症を呈し、または高脂血症の2つ以上の危険要素が併発する人は、フィブラート系、スタチン系、またはプロブコールなどの脂質降下薬物(II−1、II−2、II−3)を追加で服用することを考量する必要がある。
7.肝疾患治療薬:NAFLDと伴う肝機能異常、代謝症候群、基礎治療を3〜6カ月受けても効果がなく、及び肝生検でNASHと実証され、かつ疾患経過が慢性進行性経過を呈する人は、肝疾患治療薬を用いて治療を補助して、酸化防止、抗炎、抗線維化を図ってもよく、薬物性能及び疾患活動度と病期に基づいて、ポリエンホスファチジルコリン、ビタミンE、シリマリン、及びウルソデオキシコール酸などの関連する薬物(II−1、II−2、II−3、III)を合理的に選択して服用してもよいが、同時に複数種類の薬物を服用すべきではない。
8.肝移植:主に、NASH関連の末期肝疾患と一部の特発性の肝硬変や肝機能障害患者の治療に用いられるが、肝移植前に代謝状況(III)を検査すべきである。BMI>40kg/mは肝移植の禁忌症(III)である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記治療方法は、例えば、血糖降下と肝疾患薬物を併用、または脂質降下と肝疾患薬物を併用する方法のような、複数種類の治療方法を混合して使用する方法がまだない。よって、複数種類の健康改善機能を有することができる薬物を探し出すことが当面の急務となっている。
【0009】
本発明は薬物組成物を提供する。非アルコール性脂肪肝によい治療効果を有し、三者を組み合わせるとさらに非アルコール性脂肪肝を治療する効果を向上させる相乗効果を有することを見出した。
【0010】
本発明は、該薬物組成物の調製方法を提供する。
【0011】
本発明は、さらに薬物組成物の用途を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下の技術によって実現される。
【0013】
本発明の薬物組成物は、下記重量比の生薬から作製される。
シリビン 8.75〜60部
リン脂質 15〜65部
プーアル茶抽出物 25〜200部
【0014】
前記は、下記重量比の生薬から作製されることが好ましい。
シリビン 8.75〜60部
リン脂質 15〜65部
プーアル茶抽出物 25〜150部
【0015】
前記は、下記重量比の生薬から作製されることが好ましい。
シリビン 25〜40部
リン脂質 30〜50部
プーアル茶抽出物 80〜120部
【0016】
前記は、下記重量比の生薬から作製されることが最も好ましい。
シリビン 35部
リン脂質 42部
プーアル茶抽出物 100部
【0017】
本発明に記載のリン脂質は、ホスファチジルコリンを主とする大豆リン脂質またはレシチンであり、大豆リン脂質が好ましい。
【0018】
前記シリビン、リン脂質はいずれも従来技術で得られるか市販のものである。本発明の治療効果をよりよく発揮するために、本発明のシリビンは以下のような方法によって調製することが好ましい。すなわち、シリマリンをそれぞれ80%エタノールに溶解させ、濾過し、沈澱物を95%エタノールを用いて3回溶解させて、残った沈澱物を収集する。沈澱物を、無水エタノールを用いて溶解し、濾過し、濾液に一定量の水を入れて沈澱物を析出させて、濾過し、沈澱物を収集し、減圧、乾燥、粉砕して、混合すればよい。
【0019】
リン脂質の本発明における作用は、薬物の溶解と吸収を促進することである。シリビンは、難溶解性、低い膜透過性薬物に属するが、リン脂質はシリビンと結合してリン脂質複合物を形成した後、シリビン溶解性を向上させることができ、薬物の生物利用性を向上させる。
【0020】
前記プーアル茶抽出物は市販のものであり、Deepureのプーアルの粉末茶が好ましい。従来技術に従って調製してもよいが、本発明の治療効果をよりよく発揮するためには、プーアル粉末茶またはプーアル茶の抽出物は、特許公開番号CN101961061A、CN101961061B、CN101961425A、CN101961425B、CN101961060A、CN101961059A、CN101961059Bに従って、調製することが好ましい。
【0021】
プーアルの粉末茶の調製方法を例示する。
ステップ1:プーアル茶葉を水に入れて煎じて2〜4回抽出する。抽出は、毎回0.5〜2時間行い、6〜12倍の体積の水を入れて行い、抽出液を濾過し、≦70℃の条件で、濾液を茶葉の重量:濃縮液の体積=1:2〜1:3になるまで減圧濃縮する。
ステップ2:遠心分離機を用いて濃縮液に対して遠心分離を行い、遠心分離液を45〜65℃で比重1.1〜1.25になるまで減圧濃縮し、スプレー乾燥またはマイクロ波乾燥を行って濃縮クリームを得る。
【0022】
好ましいステップは以下の通りである。
ステップ1:プーアル茶葉を水に入れて、激しく沸騰させ、煎じて3回抽出する。抽出は、毎回0.5〜2時間行い、6〜12倍の体積の水を入れて行い、抽出液を濾過し、≦70℃の条件で、濾液を茶葉の重量:濃縮液の体積=1:2〜1:3になるまで減圧濃縮する。
ステップ2:三脚式遠心分離機を用いて濃縮液を遠心分離し、得られた分離液をチューブ式遠心分離機を用いてさらに遠心分離を行い、遠心分離液を45〜65℃で比重1.1〜1.25になるまで減圧濃縮し、スプレー乾燥またはマイクロ波乾燥を行って濃縮クリームを得る。
ここで、チューブ式遠心分離の条件は、遠心分離機の回転数:15,000〜19,000回転/minで、スプレー乾燥条件は、送風温度:140〜190℃で、風排出温度:75〜95℃である。
【0023】
最も好ましいステップは以下の通りである。
プーアル茶葉を水に入れて、激しく沸騰させ、煎じて3回抽出する。1回目は1.5時間煎じ、10倍体積の水を入れ、2回目は1.5時間煎じ、8倍体積の水を入れ、3回目は1時間煎じ、8倍体積の水を入れる。抽出液を濾過し、≦70℃の条件で、濾液を茶葉の重量:濃縮液の体積=1:2〜1:3になるまで減圧濃縮する。三脚式遠心分離機を用いて濃縮液を遠心分離し、遠心分離液をチューブ式遠心分離機を用いてさらに遠心分離を行い、遠心分離液を45〜65℃で比重1.1〜1.25になるまで減圧濃縮し、スプレー乾燥またはマイクロ波乾燥を行って濃縮クリームを得る。
ここで、チューブ式遠心分離の条件は、遠心分離機の回転数:15,000〜19,000回転/minで、スプレー乾燥条件は、給気温度:140〜190℃で、風排出温度:75〜95℃である。
【0024】
以上の組成は重量に基づいて配合しており、生産する際には、対応する比率に応じて増大または減少させてもよく、大規模の生産の場合はkgを単位とし、またはt(トン)を単位とし、小規模の薬剤調製の場合はgを単位としてもよい。重量は増大または減少させてもよいが、各組成の間の生薬材料の重量比の比率は変わらない。
【0025】
以上の重量比の比率は科学的な選択によって得たものであり、重症または軽症、肥満または痩せている病人のような特殊な病人に対しては、対応する組成の量比を調整してもよく、増加または減少が10%を超えない場合は、薬物の効果は基本的に変わらない。
【0026】
薬物の製剤を作製する場合、薬用可能ないずれかの剤形に作製可能であり、剤形は、錠剤、コーティング錠剤、フィルムコーティング錠剤、腸溶性錠剤、カプセル剤、ハードカプセル剤、ソフトカプセル剤、経口液剤、舐剤、顆粒剤、丸剤、散剤、膏剤、丹剤、懸濁剤、液剤、注射剤、坐剤、軟膏剤、硬膏剤、クリーム剤、スプレー剤、貼付剤の中から選ばれる。経口投与の剤形が好ましく、錠剤、カプセル剤、顆粒剤が最も好ましい。
【0027】
本発明の薬物組成物は、必要に応じて、幾つかの薬物に許容される担体を加えてもよく、薬物活性物質と薬物に許容される担体とを混合するような製剤学の従来技術を採用して該薬物製剤を調製してもよい。前記薬物に許容される担体は、マンニット、ソルビトール、ソルビン酸またはソルビン酸カリウム塩、二亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、システイン塩酸塩、チオグリコール酸、メチオニン、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンD、アゾン、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウム、一価のアルカリ金属の炭酸塩、酢酸塩、リン酸塩またはそれらの水溶液、塩酸、酢酸、硫酸、リン酸、アミノ酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、乳酸ナトリウム、キシリトール、マルトース、グルコース、フルクトース、デキストラン、グリシン、澱粉、蔗糖、乳糖、マンニトール、シリコン誘導体、セルロース及びその誘導体、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、グリセロール、プロピレングリコール、エタノール、ツイーン60〜80、スパン−80、ミツロウ、ラノリン、流動パラフィン、1−ヘキサデカノール、没食子酸エステル類、寒天、トリエタノールアミン、塩基性アミノ酸、尿素、アラントイン、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、界面活性剤、ポリエチレングリコール、シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、リン脂質類、カオリン、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムなどから選ばれる。前記担体は、微結晶セルロース、乳糖、澱粉、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、タルクの中の1種または1種以上である。
【0028】
本発明の薬物組成物は、薬剤として作製する場合、単位投薬量の薬剤は本発明の薬物活性物質を0.1〜1000mg含有し、残りは薬学的に許容される担体であってもよい。薬学的に許容される担体は、重量で、製剤の総重量の0.1〜99.9%であってもよい。好ましくは、前記薬学的に許容される担体は、重量で、製剤の総重量の40〜70%であってもよい。
【0029】
本発明の薬物組成物または製剤は、使用する際に、病人の状況に応じて用法、用量を決めることができる。
【0030】
本発明に記載の薬物組成物製剤は、スラリー法で、回転数が100rpmで、温度が37℃の溶出条件で、溶解用媒体はpH1.2の塩酸溶液1000mlを使い、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤などの形態で作製され、投薬量は、1粒のカプセル/1錠/1袋の顆粒である。その体外における溶解率は、2時間の累積溶解率が60%以上であり、30分の場合の溶解率が15%以上である。
【0031】
本発明は、本発明の薬物組成物の調製方法を提供し、以下のようなステップを含む。
a)処方量の原料を用意するステップ、
b)処方量のシリビン、リン脂質を秤量して無水エタノールに溶解させ、溶液を適当の体積になるまでエタノールを濃縮回収するシリビン複合液の調製ステップ、
c)処方量のプーアル茶抽出物を秤量して基材とし、b)で調製したシリビン複合液を液体材料とし、流動床の流動化液体噴射方式によって顆粒を作製し、本発明の薬物組成物を得る造粒ステップ、
本発明はさらに薬剤作製ステップd)を含み、前記ステップc)で得た薬物組成物と薬学的に許容される担体を、通常の調製プロセスに従って、薬学的に許容される担体に作製する。
【0032】
本発明の薬物組成物の調製方法が以下のようなステップを含むことが好ましい。
a)処方量の原料を用意するステップ、
b)処方量のシリビン、リン脂質を秤量して無水エタノールに溶解させて、加熱、還流して、溶液を清澄にした後、一定時間加熱し続けてから、清澄溶液を一定の体積になるまで減圧濃縮して、シリビン複合液を得るシリビン複合液の調製ステップ、
c)処方量のプーアル茶抽出物を秤量して基材とし、b)で調製したシリビン複合液を液体材料とし、流動床の流動化液体噴射方式によって顆粒を作製し、液状複合物が全部噴射注入された後、乾燥して、顆粒、即ち薬物組成物を得る造粒ステップ、
d)前記c)の顆粒と薬学的に許容される担体とから通常の製剤を作製する薬剤作製ステップ。
ここで、ステップb)に記載の加熱時間は0.5〜1.5時間で、前記濃縮された体積は元の体積の5%〜20%で、減圧濃縮温度は60〜80℃である。
ここで、ステップc)における流動床のパラメータは、材料の温度が40〜65℃であり、造粒過程において通風機の回転数、給気温度、及び液体噴射頻度などのパラメータを調節して、材料の良好な流動化状態を保持する。造粒完了後、10〜60分間乾燥し、乾燥温度は55〜65℃である。
【0033】
プーアル茶の、インスリン抵抗の改善、血中脂質とレプチンレベルの調節が可能であるなどの作用は、生体のインスリン抵抗による肝臓実質細胞脂肪の蓄積をある程度遮断可能であると同時に、シリビンのラジカル基の除去及び酸化ストレス防止の強い能力と協同し、両者は良好な抗NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)効果を有する。
【0034】
以下、実験データによって本発明が有する有益な効果を説明する。
【0035】
試験例1 体外における溶出試験
【0036】
以下の条件で、実施例16〜20で作製されたシリビン−リン脂質−プーアル茶組成物の溶解率を測定した。溶出方法の選択は、組成物における主な成分のシリビンの性質に基づいて決めており、シリビンは生物薬剤学の分類システム(BCS)における第4類に属し、難溶解性、低い膜透過性の薬物であり、溶解溶出、吸収はいずれも速度制限ステップである。しかし、薬物の吸収は溶解溶出に依存するため、シリビンの溶解段階は、主に胃の中で行われ、吸収段階は、主に小腸の中で行われており、薬物の体外における溶解率の検出は、体内における吸収程度を判断して、更に薬物の効果を評価することに寄与する。よって、以下の溶出方法を選択して、組成物の溶解評価を行う。スラリー法で、回転数は100rpmで、温度は37℃で、溶解用媒体はpH1.2の塩酸溶液1000mlで、投薬量は1粒のカプセル/1錠/1袋の顆粒である。サンプリング時点はそれぞれ、15、30、45、60、90、120分である。その累積溶解度を測定する。結果は下記表1に示す通りである。
【0037】
【表1】
【0038】
比較製剤(商品名:シリマリン、タスリー・ファーマシューティカル・グループ・カンパニー・リミテッドの製品)について溶解の測定を行い、実施例16〜20で調製したシリビン−リン脂質−プーアル茶組成物と比較し、結果は図1に示す。
【0039】
表1のデータ及び図1のグラフから下記のことが分かる。
【0040】
本発明の調製方法を採用して作製したシリビン−リン脂質−プーアル茶組成物は、その体外放出のいずれも比較製剤のシリマリン、即ちシリビン−リン脂質複合物より顕著に優れており、意外なことに、組成物のpH1.2の塩酸溶液における2時間の累積溶解度は80%に達し、ほぼ完全に溶解しており、比較製剤の溶解度に比べて、倍は上昇しており、シリビンが従来抱いていた溶解度が低く、生物利用性が低い問題を解決し、後続のシリビン組成物の投薬量の設定、及び体内の安全性と有効性の研究のための基礎を提供する。
【0041】
体外における溶出試験と体内効能の研究のデータをまとめると、本発明はシリビンとリン脂質の複合化をして、薬物と生体膜の親和性を改善することにより、薬物の吸収を向上させ、さらにシリビン−リン脂質複合物とプーアル茶を組み合わせて、薬物の溶解を向上させることによって、溶解と吸収向上の両方から主成分のシリビンの生物利用性を向上させる。
【0042】
試験例2 体内効能評価
【0043】
1 実験動物
SPFレベルの6週齢の雄性のC57 BL/6Jレプチン欠失マウス(ob/ob)80匹と、SPFレベルの6週齢の雄性のC57 BL/6J(ob/m)マウス10匹を、北京華阜康生物科学技術株式有限会社から提供され、天士力研究院薬理学毒性学研究センターのバリア動物部屋で飼育し、温度は20℃〜25℃で、相対湿度は60%であり、各籠に5匹ずつ入れ、照明時間は12時間で、決まった時間に決まった量で飼料を添加し、ob/obマウスは高脂肪飼料で飼養し(HFD、D12492)、C57 BL/6Jマウスは普通の飼料で飼養し、いずれも北京華阜康生物科学技術株式有限会社から提供されており、自由に水を飲用させ、毎日敷料を交換する。
【0044】
2 試験物
シリビンリン脂質複合物はタスリー・ファーマシューティカル・グループ・カンパニー・リミテッドから提供され、ロット番号は500902031であり(本発明の実施例1のステップa)に従って調製する)、プーアルの抽出物は茶褐色の粉末であり、タスリー・ファーマシューティカル・グループ・カンパニー・リミテッドから提供され、ロット番号はZ001 PE(2014)C06(H)であり、薬理学研究所で提供される試料室のサンプル棚内に置き、光を避けて室温で保存する。
【0045】
3 実験方法
【0046】
3.1 実験量の設計及びパケット
シリビンリン脂質複合物は、人の一日の用量の3g(シリビン420mg、大豆リン脂質504mgを含有)に基づいて該実験動物の投薬量を計算し、プーアル茶抽出物は、人の一日の用量の1.2gに基づいて該実験動物の投薬量を計算し、5種類の異なる組成物の配合比率、及び実験の投薬量の設計は表2に示されており、実験動物の投薬量はいずれも対応する試験物の臨床的に同等効果の投薬量にし、計算公式は以下の通りである。
動物実験の投薬量=推奨されるヒト用投薬量/60kg*12.3
【0047】
【表2】
【0048】
3.2 試験物の投与
適応性に1週間飼養した後、80匹の6週齢のob/obマウスをランダムに8組に分け、それぞれモデル組、シリビンリン脂質複合物組、プーアル茶抽出物組、実施例8組、実施例9組、実施例10組、実施例13組、実施例14組とし、各組は10匹である。なお、10匹の6週齢のC57BL/6Jマウスは正常組である。正常組のマウスは普通の飼料で飼養し、モデル組と投薬組はいずれも高脂肪飼料で飼養する(HFD、D12492)。なお、異なる薬物で干渉する組のマウスに対しては、対応する投薬量の薬物を胃内投与し、5種類の組成物の投薬量は表1に示されており、正常組とモデル組はいずれも等量の蒸留水を投与し、6週間連続に胃内投与する。
【0049】
マウスは実験期間内に自由に飼料を食べさせ、水を飲ませて、毎週に1回体重を計量し、体重に基づいて投薬量を調整する。最終回の投薬後には12時間給水のみで断食させ、体重を秤量し、眼球を摘出して血液を採取してから、頸椎脱臼によってマウスを殺し、迅速に解剖して肝臓を摘出し、生理食塩水で洗浄し、濾紙で水分を吸収して計量してから、−20℃の冷蔵庫に保存する。
【0050】
3.3 検出指標及び方法
【0051】
3.3.1 通常状況の観察
実験期間に、毎週1回各組のマウスの体重を計量する。
【0052】
3.3.2 肝臓指数を計算し、かつ肝臓の全般的な形態を観察する
実験終了後、肝臓を計量し、肝臓指数を計算し、肝臓指数(%)=肝臓湿重量/体重*100%である。
【0053】
3.3.3 血清生化学的指標の検出
すべてのマウスに対して、眼球を摘出して血液を採取して、3000r/minで15分間遠心分離し、血清を分離してEP管に収集して、−20℃の冷蔵庫に保存する。7020生化学自動分析装置を用いて、血清におけるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニン アミノトランスフェラーゼ(ALT)、総コレステロール(TC)、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)の含有量を検出する。
【0054】
3.3.4 インスリン抵抗指数
Elisaキットを用いて、血清FINSを検出し、かつ式によってインスリン抵抗指数を計算する。
【0055】
【数1】
【0056】
3.3.5 肝臓組織の病理学的検出
冷凍された肝臓組織を取って凍結スライスを調製し、オイルレッドO染色を用いて、肝臓脂肪の変性程度を観察する。オイルレッドO染色の操作ステップは、凍結スライス→蒸留水で十分に洗浄する→オイルレッドO希釈液で光を避けて10〜15分間染色する→オイルレッドO飽和液6mlを取り出して、蒸留水4mlを添加し、5〜10分間静置した後、濾過してから使用する→60%エタノールで、顕微鏡下で間の物質が明瞭になるまで差別化する→水洗する→核をヘマトキシリン・エオシン染色する→水洗→中性ゴムでスライスを密封する→顕微鏡で観察する、ことである。
【0057】
3.4 データ処理
統計学的方法は、SPSS 15.0統計学ソフトウェアを用いて分析を行い、データは平均値±標準差で示し、t検定を採用し、各組の治療前後、及び組同士の各項目を分析、比較して指標の差異の有無を観察し、P<0.05を差異とし、統計学的に意義があるものとした。
【0058】
4 実験結果
【0059】
4.1 各試験物の体重に対する影響
実験期間に、毎週に1回各組のマウスの体重を計量し、各組の薬物の非アルコール性脂肪肝のマウスの体重に対する影響を観察する。表3に示すように、正常組のマウスの体重の増加は緩慢で、モデル組のマウスの体重の増加は速い。6週間投薬した後、シリビンリン脂質複合物組以外、他の各投薬組はいずれも異なる程度でマウスの体重増加を抑えることができ(P<0.01)、各組の間には顕著な差異がない。
【0060】
【表3】
【0061】
4.2 各試験物の肝臓指数に対する影響
表4に示すように、正常組と比べ、モデル組のマウスの体重、肝臓湿重量、及び肝臓指数はいずれも明らかに増大しており(P<0.01)、各試験物はいずれも明らかにマウスの肝臓湿重量及び肝臓指数を低下させることができる(P<0.01)。
【0062】
【表4】
【0063】
4.3 各試験物の血中脂質、肝機能、及びインスリン抵抗指数に対する影響
表5に示すように、正常組と比べ、非アルコール性脂肪肝モデルのマウスの血清TC、LDL、ALT、AST、インスリン抵抗指数は、いずれも明らかに上昇しており(P<0.05)、シリビンリン脂質複合物は異常に上昇した各指標に対していずれも明らかな改善がなく(P>0.05)、各実施例の組成物はいずれも異なる程度で血中脂質、肝機能、及びインスリン抵抗指数の異常上昇を改善でき、かつ効果は両者を単独に使用する場合より優れている。そのうち、実施例18〜20は血清TC、LDL、ALT、AST、及びインスリン抵抗指数を顕著に低下させることができ(P<0.05)、実施例16は血清TC、及びインスリン抵抗指数を低下させることができるが(P<0.05)、血清LDL、ALT、ASTに対しては明らかな改善がなく(P>0.05)、実施例17は血清TC、ALT及びインスリン抵抗指数を低下させることができるが(P<0.05)、LDL、ASTに対しては明らかな改善がない(P>0.05)。
【0064】
【表5】
【0065】
4.4 各試験物のマウスの肝臓病理に対する影響
オイルレッドO染色は、肝臓の凍結組織のオイルレッドO染色の光学顕微鏡下での肝細胞内の赤色顆粒の大きさと数によって、軽度、中度、重度の3つに分けられる。軽度、即ち、光学顕微鏡下での単位面積あたりに1/3〜2/3の赤色顆粒が見られると1点と評し、中度、即ち、2/3以上の肝細胞内に赤色顆粒が含まれていると2点と評し、重度、即ち、ほぼすべての肝細胞内にいずれも赤色顆粒があると3点と評し、脂肪変性が見られないものは0点と評する。
【0066】
表6に示すように、モデル組の肝臓組織には、ほぼすべての肝細胞にいずれも脂肪変性が発生しており、病理評価点数は正常組に比べ、明らかに上昇し(P<0.01)、シリビンリン脂質複合物またはプーアル茶抽出物を単独に使用する場合、肝臓の病理評価点数に明らかな改善が見られず(P>0.05)、両者を配合して使用する場合、異なる程度で肝臓の脂肪変性を改善し、かつ効果は両者を単独に使用する場合より優れている。そのうち、実施例16、18、19、20は病理評価点数を顕著に低下させることができ(P<0.05)、組合17は病理評価点数を低下させる傾向がある(P>0.05)。
【0067】
【表6】
【0068】
5 実験結論
以上の実験結果から分かるように、ブランク組と比べ、非アルコール性脂肪肝モデル組のマウスの体重、肝臓指数、血中脂質、ALT、AST、インスリン抵抗指数はいずれも明らかに上昇し、肝臓組織は重度に脂肪変性している。プーアル茶は、インスリン抵抗を改善し、血中脂質を調節することが可能であると同時に、ラジカル基の除去と酸化ストレス防止の強い能力を有するシリビンと協同し、両者を配合して使用する場合、肝臓の脂肪変性に明らかな改善があり、かつ効果は両者を単独に使用する場合より優れていて、相乗効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】体外放出グラフであり、ここで、各サンプルは、比較製剤シリマリン、プーアル茶のないシリマリン、実施例16〜20で調製したシリビン―リン脂質―プーアル茶組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
以下、本発明の長所と特徴をより明確に記述するように、実施例及び試験例と合わせて本発明の具体的な実施形態をさらに説明する。しかし、このような実施例は例示に過ぎず、本発明の範囲に対して何の制限もしない。当業者は、本発明の趣旨と範囲を逸脱しない前提下で、本発明の詳細と形式に対して修正または代替を行うことが可能であるが、このような修正と代替はいずれも本発明の保護範囲内に入ることを理解すべきである。以下、具体的実施例によって、本発明をさらに説明するが、本発明を制限するものではない。
【0071】
実施例1
シリビン26.25g、大豆リン脂質45g、プーアル茶抽出物75gを用意する。
a) シリビン複合液の調製:処方量のシリビン、大豆リン脂質を秤量して無水エタノールに溶解させ、加熱、還流して溶液を清澄させてから、1時間加熱し続け、回収エタノールを元の体積の15%になるまで減圧濃縮する。
b) 造粒:処方量のプーアル茶抽出物を秤量して基材とし、a)で調製したシリビン複合液を液体材料とし、流動化床の流動化液体噴射方式によって造粒し、材料の温度は40℃に制御し、液状複合物がすべて噴射注入された後、60℃の乾燥温度で20分乾燥させ、袋に入れ、1000袋の顆粒を作製する。
【0072】
実施例2
シリビン180g、大豆リン脂質195g、プーアル茶抽出物450gを用意する。
a) シリビン複合液の調製:処方量のシリビン、大豆リン脂質を秤量して無水エタノールに溶解させ、加熱、還流して溶液を清澄させてから、1.5時間加熱し続け、回収エタノールを元の体積の20%になるまで減圧濃縮する。
b) 造粒:処方量のプーアル茶抽出物を秤量して基材とし、a)で調製したシリビン複合液を液体材料とし、流動床の流動化液体噴射方式によって造粒し、材料の温度は65℃に制御し、液状複合物がすべて噴射注入された後、65℃の乾燥温度で60分乾燥させ、袋に入れ、1000袋の顆粒を作製する。
【0073】
実施例3
シリビン26.25g、リン脂質195g、プーアル茶抽出物450gを用意する。
a) シリビン複合液の調製:処方量のシリビン、大豆リン脂質を秤量して無水エタノールに溶解させ、加熱、還流して溶液を清澄させてから、0.5時間加熱し続け、回収エタノールを元の体積の5%になるまで減圧濃縮する。
b) 造粒:処方量のプーアル茶抽出物を秤量して基材とし、a)で調製したシリビン複合液を液体材料とし、流動床の流動化液体噴射方式によって造粒し、材料の温度は50℃に制御し、液状複合物がすべて噴射注入された後、55℃の乾燥温度で10分乾燥させ、袋に入れ、1000袋の顆粒を作製する。
【0074】
実施例4
シリビン26.25g、リン脂質195g、プーアル茶抽出物75gを用意して、実施例1の方法に従って調製して、1000袋の顆粒を作製する。
【0075】
実施例5
シリビン180g、大豆リン脂質45g、プーアル茶抽出物75gを用意して、実施例1の方法に従って調製して、1000袋の顆粒を作製する。
【0076】
実施例6
シリビン180g、リン脂質45g、プーアル茶抽出物450gを用意して、実施例1の方法に従って調製して、1000袋の顆粒を作製する。
【0077】
実施例7
シリビン180g、リン脂質195g、プーアル茶抽出物75gを用意して、実施例1の方法に従って調製して、1000袋の顆粒を作製する。
【0078】
実施例8
シリビン26.25g、リン脂質48.75g、プーアル茶抽出物75gを用意して、実施例1の方法に従って調製して、1000袋の顆粒を作製する。
【0079】
実施例9
シリビン26.25g、リン脂質48.75g、プーアル茶抽出物300gを用意して、実施例1の方法に従って調製して、1000袋の顆粒を作製する。
【0080】
実施例10
シリビン52.5g、リン脂質97.5g、プーアル茶抽出物300gを用意して、実施例1の方法に従って調製して、1000袋の顆粒を作製する。
【0081】
実施例11
シリビン75g、リン脂質90g、プーアル茶抽出物240gを用意して、実施例1の方法に従って調製して、1000袋の顆粒を作製する。
【0082】
実施例12
シリビン90g、大豆リン脂質108g、プーアル茶抽出物270gを用意して、実施例1の方法に従って調製して、1000袋の顆粒を作製する。
【0083】
実施例13
シリビン105g、リン脂質126g、プーアル茶抽出物300gを用意して、実施例1の方法に従って調製して、1000袋の顆粒を作製する。
【0084】
実施例14
シリビン105g、リン脂質195g、プーアル茶抽出物300gを用意して、実施例1の方法に従って調製して、1000袋の顆粒を作製する。
【0085】
実施例15
シリビン120g、大豆リン脂質150g、プーアル茶抽出物360gを用意して、実施例1の方法に従って調製して、1000袋の顆粒を作製する。
【0086】
実施例16
実施例8の顆粒を用意して、微結晶セルロース494g、デンプングリコール酸ナトリウム56gを入れて、均一に混合して、0番カプセルに入れて、1000粒作製する。
【0087】
実施例17
実施例9の顆粒を用意して、微結晶セルロース269g、デンプングリコール酸ナトリウム56gを入れて、均一に混合して、0番カプセルに入れて、1000粒作製する。
【0088】
実施例18
実施例10の顆粒を用意して、微結晶セルロース194g、デンプングリコール酸ナトリウム56gを入れて、均一に混合して、0番カプセルに入れて、1000粒作製する。
【0089】
実施例19
実施例13の顆粒を用意して、微結晶セルロース169gを入れて、均一に混合して、カプセルに入れて、1000粒作製する。
【0090】
実施例20
実施例14の顆粒を用意して、微結晶セルロース44g、デンプングリコール酸ナトリウム56gを入れて、均一に混合して、0番カプセルに入れて、1000粒作製する。
【0091】
実施例21
実施例8の顆粒を用意して、乳糖400g、澱粉94g、デンプングリコール酸ナトリウム56gを入れて、均一に混合して、0番カプセルに入れて、1000粒作製する。
【0092】
実施例22
実施例13の組成物を用意して、乳糖80g、タルク10g、低置換ヒドロキシプロピルセルロース79gを入れて、均一に混合して、0番カプセルに入れて、1000粒作製する。
【0093】
実施例23
実施例13の組成物を用意して、微結晶セルロース169gを入れて、均一に混合し、錠にプレスして、1000錠作製する。
図1