特許第6853787号(P6853787)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6853787スクロース資化性を有するPHA生産微生物、及び該微生物を用いたPHAの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853787
(24)【登録日】2021年3月16日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】スクロース資化性を有するPHA生産微生物、及び該微生物を用いたPHAの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/21 20060101AFI20210322BHJP
   C12P 7/62 20060101ALI20210322BHJP
   C12N 15/54 20060101ALN20210322BHJP
   C12N 15/55 20060101ALN20210322BHJP
   C12N 9/10 20060101ALN20210322BHJP
   C12N 9/26 20060101ALN20210322BHJP
【FI】
   C12N1/21ZNA
   C12P7/62
   !C12N15/54
   !C12N15/55
   !C12N9/10
   !C12N9/26 Z
【請求項の数】7
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-556109(P2017-556109)
(86)(22)【出願日】2016年12月14日
(86)【国際出願番号】JP2016087292
(87)【国際公開番号】WO2017104722
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2019年11月7日
(31)【優先権主張番号】特願2015-245214(P2015-245214)
(32)【優先日】2015年12月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有川 尚志
(72)【発明者】
【氏名】藤木 哲也
【審査官】 宮岡 真衣
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/052923(WO,A2)
【文献】 国際公開第2014/065253(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/025286(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/021604(WO,A1)
【文献】 PARK S.J. et al,Biotechnology and Bioengineering,Vol.112, No.3 (2015.03),pp.638-643
【文献】 ARIFIN Y. et al.,Metabolic engineering of sucrose utilizing Escherichia coli for polyhydroxybutyrate production.,Journal of Biotechnology,150S (2010),pp.S72-S73 I.11
【文献】 FRIEHS K. et al.,Journal of Biotechnology,1989年,10 (1989),p.285-292
【文献】 SABRI S. et al.,Applied and Environmental Microbiology,2013年,79(2) (2013),p.478-487
【文献】 INSOMPHUN C. et al.,Metabolic Engineering,27 (2014.10.30),p.38-45
【文献】 ORITA I. et al.,Journal of Bioscience and Bioengineering,113(1) (2012),p.63-69
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 7/62
C12N 1/21
C12N 9/10−9/46
C12N 15/09−15/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PHA合成酵素遺伝子と、下記(1)及び(2)の異種生物由来遺伝子とを有し、
カプリアビダス・ネカトールを宿主とする形質転換体である、PHA生産微生物。
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするスクロース加水分解酵素遺伝子、又は該アミノ酸配列に対して90%以上の配列同一性を有し、スクロース加水分解酵素活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子
(2)配列番号2に記載のアミノ酸配列をコードするスクロース透過酵素遺伝子、又は該アミノ酸配列に対して90%以上の配列同一性を有し、スクロース透過酵素活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子
【請求項2】
グルコース資化性が付与又は強化されている、請求項に記載の微生物。
【請求項3】
前記PHA合成酵素遺伝子が、P(3HB−co−3HH)を合成可能なPHA合成酵素遺伝子である、請求項1又は2に記載の微生物。
【請求項4】
さらにクロトニル−CoA還元酵素遺伝子およびエチルマロニル−CoA脱炭酸酵素遺伝子を有する、請求項いずれか1項に記載の微生物。
【請求項5】
アセトアセチルCoA還元酵素遺伝子が欠失した、またはその発現量が抑制されている、請求項に記載の微生物。
【請求項6】
請求項1〜いずれか1項に記載の微生物を、スクロースを炭素源として含む培地で培養する工程を含む、PHAの製造方法。
【請求項7】
PHAがP(3HB−co−3HH)である請求項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクロース資化性を有するPHA生産微生物と、該微生物を用いたPHAの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリヒドロキシアルカン酸(以下、PHAと記すこともある)は、広範な微生物によって生成されるポリエステル型有機ポリマーである。PHAは生分解性を有する熱可塑性高分子であり、再生可能資源を原料として産生することができる。これらのことから、PHAを環境調和型素材または生体適合型素材として工業的に生産し、多様な産業へ利用する試みが行われている。
【0003】
このPHAを構成するモノマー単位の一般名は、ヒドロキシアルカン酸である。ヒドロキシアルカン酸には、具体的には3−ヒドロキシ酪酸(以下、3HBと記すこともある)、3−ヒドロキシ吉草酸(以下、3HVと記すこともある)、3−ヒドロキシヘキサン酸(以下、3HHと記すこともある)、3−ヒドロキシオクタン酸、よりアルキル鎖の長い3−ヒドロキシアルカン酸や、4−ヒドロキシ酪酸などが例示され、これらが単独重合または共重合することにより、ポリマー分子であるPHAが形成される。
【0004】
PHAの具体例として、3HBのホモポリマーであるポリ−3−ヒドロキシ酪酸(以下、P(3HB)と記すこともある)が挙げられる。また、3HBと3HVの共重合体であるP(3HB−co−3HV)、3HBと3HHの共重合体であるP(3HB−co−3HH)(以下、PHBHと記すこともある)や、3HBと4HBの共重合体であるP(3HB−co−4HB)なども挙げられる。この中でも特にPHBHは、3HH組成比を変えることで、硬質ポリマーから軟質ポリマーまで応用可能な幅広い物性を持たせることができる。そのため、PHBHは、低3HH組成比のPHBHを用いたテレビの筐体等のように硬さを要求されるものから、高3HH組成比のPHBHを用いたフィルム等のように柔軟性を要求されるものまで、幅広い分野への応用が期待できる。
【0005】
PHAのようなバルクケミカルの発酵生産において、生産コストにおける炭素源コストの占める割合は大きい。したがって、安価な炭素源を効率よく発酵に用いることが重要となる。
【0006】
微生物発酵による化学物質生産では、グルコースを主炭素源として行われる場合が多くみられるが、グルコースは比較的高価格の炭素源である。従って、グルコースを主炭素源とすると、原油を主原料物質とした化学合成法による生産価格よりも高価となる場合があり、価格競争力の面で商業化には困難がある。
【0007】
一方で、グルコースよりも安価な糖原料としてスクロースが知られている。スクロースは、グルコースとフルクトースで形成された二糖類の一つであり、光合成能を有する全ての植物から生産され、自然界に非常に豊富に存在する炭素源である。さらにスクロースは廃糖蜜の主成分であり、廃糖蜜は食料と競合しない再生可能資源という点でも魅力的な炭素源である。
【0008】
特許文献1によれば、微生物がスクロースを資化するメカニズムは、スクロースPTS(Phosphoenolpyruvate: Carbohydrate Phosphotransferase System)とスクロース非PTSの2つに大別される。スクロース非PTSを経由する場合、微生物はスクロースをそのままの形で取り込み、その後にグルコースとフルクトースに分解する。一方、スクロースPTSを経由する場合では、微生物はスクロースを取り込む際にスクロースをリン酸化し、スクロース−6−リン酸へと変換する。そして微生物細胞内部でグルコース−6−リン酸とフルクトースに分解する。あるいは、微生物細胞外でスクロースが分解され、生じたグルコースとフルクトースが資化される場合もある。
【0009】
しかしながら、すべての微生物がスクロースを資化できるわけではない。例えば、PHA生産微生物として知られるカプリアビダス・ネカトールH16株は、フルクトースは資化できるがグルコースとスクロースは資化することができない。
【0010】
これまでにスクロース非資化性の微生物に対して、遺伝子工学的手法によりスクロース資化性を付加するいくつかの研究が行われている。例えば、非特許文献1では、元来スクロース非資化性であるエシェリキア・コリK−12株に対して、エシェリキア・コリW株に由来するスクロース資化関連遺伝子(スクロース透過酵素遺伝子およびスクロース加水分解酵素遺伝子)を導入することによって、スクロース資化が可能となったことが示されている。この場合、遺伝子の由来生物と導入する宿主が同種の生物であるため、遺伝子組み換えによって導入された遺伝子がうまく機能する蓋然性は高いと考えられる。また、特許文献2では、スクロースPTS遺伝子群を導入することでスクロース非資化性のエシェリキア属細菌にスクロース資化性を付与した例が開示されている。さらに、特許文献1では、スクロースホスホトランスフェラーゼ遺伝子およびスクロース加水分解酵素遺伝子を導入することでスクロース資化性を付与した例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2011−505869号公報
【特許文献2】特開2001−346578号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Appl. Environ .Microbiol. ,vol.79,478(2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、スクロースを資化することができるPHA生産微生物、及び、スクロースを炭素源として該微生物を培養することによるPHAの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、PHAを産生する能力を有する微生物に、スクロース加水分解酵素(CscA)をコードする異種生物由来遺伝子とスクロース透過酵素(CscB)をコードする異種生物由来遺伝子の両方を導入することによって、当該微生物にスクロース分解能力及び細胞内へのスクロース取り込み能力が付加され、スクロースを炭素源としたPHA生産が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、PHA合成酵素遺伝子と、下記(1)及び(2)の異種生物由来遺伝子とを有するPHA生産微生物に関する。
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするスクロース加水分解酵素遺伝子、又は該アミノ酸配列に対して90%以上の配列同一性を有し、スクロース加水分解酵素活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子
(2)配列番号2に記載のアミノ酸配列をコードするスクロース透過酵素遺伝子、又は該アミノ酸配列に対して90%以上の配列同一性を有し、スクロース透過酵素活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子
好ましくは、前記微生物が、カプリアビダス属に属する微生物を宿主とする形質転換体であり、より好ましくは、前記カプリアビダス属に属する微生物が、カプリアビダス・ネカトールである。好ましくは、前記微生物はグルコース資化性が付与又は強化されている。好ましくは、前記PHA合成酵素遺伝子が、P(3HB−co−3HH)を合成可能なPHA合成酵素遺伝子である。好ましくは、前記微生物は、さらにクロトニル−CoA還元酵素遺伝子およびエチルマロニル−CoA脱炭酸酵素遺伝子を有する。好ましくは、前記微生物は、アセトアセチルCoA還元酵素遺伝子が欠失した、またはその発現量が抑制されている。
【0016】
また、本発明は、前記微生物を、スクロースを炭素源として含む培地で培養する工程を含む、PHAの製造方法に関し、好ましくはPHAがP(3HB−co−3HH)である前記製造方法に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、スクロースを資化することができるPHA生産微生物を提供することができる。また、炭素源としてスクロースを用いて該微生物を培養することでPHAを発酵生産することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】比較例1に関し、KNK005ΔphaZ1,2,6株のスクロース含有培地における増殖および培地中の糖濃度変化を示すグラフである(●を含む実線:OD600;△を含む実線:スクロース濃度;■を含む実線:グルコース濃度;×を含む実線:フルクトース濃度)
図2】比較例2に関し、KNK005ΔphaZ1,2,6/nagEG793C,dR株のスクロース含有培地における増殖および培地中の糖濃度変化を示すグラフである(●を含む実線:OD600;△を含む実線:スクロース濃度;■を含む実線:グルコース濃度;×を含む実線:フルクトース濃度)
図3】比較例3に関し、pCUP2−lacUV5−cscA in KNK005ΔphaZ1,2,6株のスクロース含有培地における増殖および培地中の糖濃度変化を示すグラフである(●を含む実線:OD600;△を含む実線:スクロース濃度;■を含む実線:グルコース濃度;×を含む実線:フルクトース濃度)
図4】比較例4に関し、pCUP2−lacUV5−cscB in KNK005ΔphaZ1,2,6株のスクロース含有培地における増殖および培地中の糖濃度変化を示すグラフである(●を含む実線:OD600;△を含む実線:スクロース濃度;■を含む実線:グルコース濃度;×を含む実線:フルクトース濃度)
図5】実施例1に関し、pCUP2−lacUV5−cscAB in KNK005ΔphaZ1,2,6株のスクロース含有培地における増殖および培地中の糖濃度変化を示すグラフである(●を含む実線:OD600;△を含む実線:スクロース濃度;■を含む実線:グルコース濃度;×を含む実線:フルクトース濃度)
図6】実施例2に関し、pCUP2−lacUV5−cscAB in KNK005ΔphaZ1,2,6/nagEG793C,dR株のスクロース含有培地における増殖および培地中の糖濃度変化を示すグラフである(●を含む実線:OD600;△を含む実線:スクロース濃度;■を含む実線:グルコース濃度;×を含む実線:フルクトース濃度)
図7】実施例2に関し、pCUP2−lacUV5−cscAB in KNK005ΔphaZ1,2,6/nagEG793C,dR株のスクロース含有培地、グルコース含有培地、又はフルクトース含有培地における増殖および乾燥菌体重量、PHA生産量の変化を示すグラフである。(△を含む実線:スクロース含有培地における変化;■を含む実線:グルコース含有培地における変化;×を含む実線:フルクトース含有培地における変化)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。
【0020】
(1)スクロース資化性が付与または強化されたPHA生産微生物
本発明では、PHA合成酵素遺伝子を有する微生物に対し、異種生物由来のスクロース加水分解酵素遺伝子と異種生物由来のスクロース透過酵素遺伝子の両方を導入することによって、スクロース資化性が付与または強化され、スクロースを炭素源としてPHAを生産する微生物を提供する。
【0021】
本明細書で使用する「スクロース加水分解酵素遺伝子」は、スクロースを加水分解し、グルコースとフルクトースを生じさせる酵素であるスクロース加水分解酵素(CscA)をコードする遺伝子である。また、本明細書で使用する「スクロース透過酵素遺伝子」は、スクロースを細胞内に取り込む働きを持つスクロース透過酵素(CscB)をコードする遺伝子である。
【0022】
本発明において、スクロース加水分解酵素遺伝子とスクロース透過酵素遺伝子が導入される元株(宿主)となる微生物は、PHA合成酵素遺伝子を有し、PHAを生産できる微生物である限り特に限定されないが、本来はスクロース資化性を持たない、又はスクロース資化性の低いPHA生産微生物が好ましい。このようなPHA生産微生物としては、PHA合成酵素遺伝子を本来的に有する野生株だけではなく、そのような野生株を人工的に突然変異処理して得られる変異株や、PHA合成酵素遺伝子を本来的に有しない微生物に対して遺伝子工学的手法により外来のPHA合成酵素遺伝子が導入された組み換え菌株であってもよい。
【0023】
そのような微生物として、具体的には、細菌、酵母、糸状菌などが例示され、好ましくは、細菌である。当該細菌としては、例えば、ラルストニア(Ralstonia)属、カプリアビダス(Cupriavidus)属、ワウテルシア(Wautersia)属、アエロモナス(Aeromonas)属、エシェリキア(Escherichia)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、シュードモナス(Pseudomonas)属等に属する細菌類が好ましい例として挙げられる。安全性及び生産性の観点から、より好ましくはラルストニア属、カプリアビダス属、アエロモナス属、ワウテルシア属に属する細菌であり、さらに好ましくはカプリアビダス属又はアエロモナス属に属する細菌であり、さらにより好ましくはカプリアビダス属に属する微生物であり、特に好ましくはカプリアビダス・ネカトール(Cupriavidus necator)である。
【0024】
PHA合成酵素遺伝子を有する微生物が、遺伝子工学的手法により外来のPHA合成酵素遺伝子が導入された組み換え菌株である場合、前記外来のPHA合成酵素遺伝子としては、例えば、カプリアビダス・ネカトールH16株(C.necator H16株)が保有する配列番号3に記載するアミノ酸配列をコードするPHA合成酵素遺伝子、又は、該アミノ酸配列に対して85%以上の配列同一性を有し、且つ、PHA合成活性を有するポリペプチドをコードするPHA合成酵素遺伝子や、アエロモナス・キャビエ(Aeromonas caviae)が保有するPHA合成酵素遺伝子、又は、該アミノ酸配列に対して85%以上の配列同一性を有し、且つ、PHA合成活性を有するポリペプチドをコードするPHA合成酵素遺伝子などが挙げられるがこれらに限定されず、その他のPHA合成酵素遺伝子も好適に利用出来る。なお、上記配列同一性は好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上である。これらの中でも、PHAとしてPHBHを合成可能なPHA合成酵素遺伝子が好ましく、例えば配列番号4に記載するアミノ酸配列を有するPHA合成酵素をコードするPHA合成酵素遺伝子がより好ましい。
【0025】
本発明においてスクロース加水分解酵素遺伝子とスクロース透過酵素遺伝子を導入される元株となる微生物としては、PHBHを合成可能なPHA合成酵素遺伝子を有する微生物が好ましく、その具体例としては、カプリアビダス・ネカトールに、アエロモナス・キャビエ由来のPHA合成酵素遺伝子が導入された形質転換体が最も好適である。
【0026】
本発明では、上記微生物に、当該微生物とは異種の生物に由来するスクロース加水分解酵素遺伝子とスクロース透過酵素遺伝子を導入する。ここで、スクロース加水分解酵素遺伝子としては、エシェリキア・コリ由来の配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする遺伝子、又は該アミノ酸配列に対して90%以上の配列同一性を有し、且つスクロース加水分解酵素活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子であれば特に限定されないが、一例として、配列番号5に記載の塩基配列を有する遺伝子が挙げられる。スクロース透過酵素遺伝子については、エシェリキア・コリ由来の配列番号2で示されるアミノ酸配列をコードする遺伝子、又は該アミノ酸配列に対して90%以上の配列同一性を有し、且つスクロース透過酵素活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子であれば特に限定されないが、一例として、配列番号6に記載の塩基配列を有する遺伝子が挙げられる。なお、上記配列相同性としては好ましくは95%以上であり、より好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上である。
【0027】
本発明のPHA生産微生物において、PHA合成酵素遺伝子や、スクロース加水分解酵素遺伝子及びスクロース透過酵素遺伝子は、宿主となる微生物が保有する染色体、プラスミド、メガプラスミドなどのDNA上に存在しても良いし、プラスミドベクター上や人工染色体上など人為的に微生物内に組み込まれたDNA上に存在しても良い。しかし、導入されたDNAの保持という観点から、微生物が保有する染色体あるいはメガプラスミド上に存在するのが好ましく、微生物が保有する染色体上に存在するのがより好ましい。
【0028】
微生物が保有するDNA上に任意のDNAを部位特異的に置換又は挿入する方法は当業者に周知であり、本発明の微生物を製造する際に使用できる。特に限定されないが、代表的な方法としては、トランスポゾンと相同組換えの機構を利用した方法(Ohman等, J.Bacteriol., vol.162:p1068(1985))、相同組換えの機構によって起こる部位特異的な組み込みと第二段階の相同組換えによる脱落を原理とした方法(Noti等, Methods Enzymol., vol.154, p197(1987))、Bacillus subtilis由来のsacB遺伝子を共存させて、第二段階の相同組換えによって遺伝子が脱落した微生物株をシュークロース添加培地耐性株として容易に単離する方法(Schweizer, Mol.Microbiol., vol.6, p1195 (1992)、 Lenz等, J.Bacteriol., vol.176, p4385(1994))等が挙げられる。また、細胞へのベクターの導入方法としても特に限定されないが、例えば、塩化カルシウム法、エレクトロポレーション法、ポリエチレングリコール法、スフェロプラスト法等が挙げられる。
【0029】
なお、遺伝子クローニングや遺伝子組み換え技術については、Sambrook, J.et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989又は2001)などに記載される技術を利用することができる。
【0030】
上記スクロース加水分解酵素遺伝子、及びスクロース透過酵素遺伝子を発現させるためのプロモーターは特に限定されない。例えば、カプリアビダス・ネカトールのphaC1遺伝子のプロモーター、phaP1遺伝子のプロモーター、大腸菌に由来するlacプロモーター、lacUV5プロモーター、trcプロモーター、ticプロモーター、tacプロモーターなどが使用可能である。また、各遺伝子に対し同じプロモーターを使用してもよく、異なるプロモーターを使用してもよい。特に、配列番号7に示されるlacUV5プロモーターを両遺伝子に対し使用するのが好ましい。
【0031】
上記によりスクロース資化性が付与または強化された微生物のグルコース資化性が低い、または資化性を持たない場合、遺伝子変異や破壊、遺伝子発現の強化、外来遺伝子の導入などの方法によって、前記微生物にグルコース資化性を付与または強化することが好ましい。これによって、前記微生物のスクロース資化性をさらに強化し、スクロースを炭素源として用いた場合にPHA生産量を向上させることができる。例えば、C.necator H16株はグルコース取り込み系の遺伝子を持たないため、グルコースを資化することができない。C.necator H16株にグルコース資化性を付与する方法は特に限定されないが、一例として、N−アセチルグルコサミンの取り込み遺伝子であるnagEの793番目の塩基であるGをCに置換し、さらに転写制御因子をコードする遺伝子であるnagRを破壊することで、グルコース資化性を付与する方法(Journal of Bioscience and Bioengineering,vol.113,63(2012))が挙げられる。また、グルコーストランスポーターをコードする外来遺伝子を導入することで、グルコース資化性を付与する方法(特開2009−225662号公報)も挙げられる。さらに、グルコースリン酸化酵素遺伝子を導入する方法が有効な場合もある。
【0032】
従来の研究から、3HHモノマーを取り込み可能なPHA合成酵素遺伝子を導入したカプリアビダス・ネカトールに、クロトニル−CoA還元酵素遺伝子(ccr)およびエチルマロニル−CoA脱炭酸酵素遺伝子(emd)を導入することで、あるいは(R)−特異的エノイル−CoAヒドラターゼをコードする遺伝子(phaJ)をさらに導入することで、フルクトースを炭素源としてPHBHを生産できることが知られている(metabolic engineering,vol.27,38(2015))。本発明のPHA生産微生物において、前記スクロース加水分解酵素遺伝子及びスクロース透過酵素遺伝子に加えて、ccr及び/又はemdが導入されていても良い。ccr及び/又はemdの導入により、糖質を炭素源とする場合において、炭素数6の(R)−3−ヒドロキシアシル−CoAの合成経路が強化又は効率化され、生産されるPHBHにおける3HH組成比率を向上させることができる。
【0033】
本発明において使用されるクロトニル−CoA還元酵素とは、脂肪酸β−酸化経路の中間体である炭素数4のクロトニル−CoAを還元し、ブチリル−CoAを生成する酵素である。ブチリル−CoAがβ−ケトチオラーゼ(BktB)の作用によりもう1分子のアセチル−CoAと縮合し、さらに変換されることにより、炭素数6の(R)−3HHx−CoAが供給され、これが、広基質特異性を示すポリエステル重合酵素により(R)−3HB−CoAと共重合される。本発明において使用され得るccrは、翻訳後の該還元酵素が上記のクロトニル−CoA還元酵素活性を有する限り特に限定されないが、例えば、放線菌S.cinnamonensis由来のクロトニル−CoA還元酵素をコードする遺伝子(GenBank Accession No.AF178673)や、メタノール資化性菌M.extorquens由来のクロトニル−CoA還元酵素をコードする遺伝子(NCBI−GeneID:7990208)等が挙げられる。好ましくは配列番号40に記載のアミノ酸配列を有するクロトニル−CoA還元酵素をコードする遺伝子、又は該アミノ酸配列に対して90%以上の配列同一性を有し、且つクロトニル−CoA還元酵素活性を示すポリペプチドをコードする遺伝子である。
【0034】
本発明に使用されるエチルマロニル−CoA脱炭酸酵素とは、クロトニル−CoA還元酵素やプロピオニル−CoAカルボキシラーゼなどによる副反応で生じたエチルマロニル−CoAのブチリル−CoAへの脱炭酸反応を触媒する酵素を意味する。この活性を有する限りにおいては、エチルマロニル−CoA脱炭酸酵素の由来は特に限定されないが、例えば配列番号41に記載のアミノ酸配列を有するマウス由来のエチルマロニル−CoA脱炭酸酵素が挙げられる。該アミノ酸配列をコードし、カプリアビダス・ネカトールにおいて使用可能な遺伝子塩基配列としては、例えば、配列番号42に記載の塩基配列が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0035】
本発明によるPHBH生産微生物においては、上記ccrおよびemdの導入に加えて、上記(R)−特異的エノイル−CoAヒドラターゼをコードする遺伝子(phaJ)をさらに導入してもよい。これにより、(R)−3HHx−CoAの生合成能力を強化することができる。ここで、本発明に使用される(R)−特異的エノイル−CoAヒドラターゼとは、脂肪酸β−酸化系中間体である2−エノイル−CoAを、PHAモノマーである(R)−3−ヒドロキシアシル−CoAに変換する酵素を意味する。この活性を有する限りにおいては、phaJの由来は特に限定されないが、好ましくは、カプリアビダス・ネカトール又はアエロモナス・キャビエ由来である。本発明に使用されるphaJとして、例えば、カプリアビダス・ネカトール由来のphaJ4a(H16 A1070,NCBI−GeneID:4248689)やphaJ4b(H16 B0397,NCBI−GeneID:4454986)、アエロモナス・キャビエ由来のphaJ(GenBank Accession No.BAA21816)等が挙げられる。
【0036】
本発明のPHBH生産微生物においては、上記ccrおよびemdの導入に加えて、アセトアセチル−CoA還元酵素をコードする遺伝子を欠失させるか、その発現を抑制することで、より高い3HH組成比率のPHBHを生産することが可能となる。欠失させるかまたは発現を抑制するアセトアセチル−CoA還元酵素をコードする遺伝子としては、アセトアセチル−CoAを基質として(R)−3HB−CoAを生成する触媒機能を有する酵素をコードする遺伝子であればよい。特に限定されないが、例えば、phaB1やphaB3(NCBI−GeneID:4249784、NCBI−GeneID:4250155)が挙げられる。
【0037】
本明細書において欠失とは、遺伝子操作や突然変異によって、対象とする遺伝子の一部又は全部が存在しなくなった、あるいは塩基配列の追加や置換によって終止コドンが出現したりコードするアミノ配列が変化したなどの結果として、該遺伝子によってコードされたタンパク質の活性の一部又は全部が失われることを意図する。遺伝子発現を抑制する方法としては、遺伝子上流のプロモーター領域やリボソーム結合配列における塩基配列の改変などが挙げられるが、これに限定されない。
【0038】
本発明のPHA生産微生物において、ccr、emd、及びphaJは、宿主となる微生物が保有する染色体、プラスミド、メガプラスミドなどのDNA上に存在しても良いし、プラスミドベクター上や人工染色体上など人為的に微生物内に組み込まれたDNA上に存在しても良い。しかし、導入されたDNAの保持という観点から、微生物が保有する染色体あるいはメガプラスミド上に存在するのが好ましく、微生物が保有する染色体上に存在するのがより好ましい。また、宿主となる微生物がこれらの遺伝子を元々保有している場合には、元々保有する遺伝子の上流の塩基配列を置換、欠失または付加することなどにより、遺伝子の発現量を増加させてもよい。
【0039】
上記ccr、emd、及びphaJを発現させるためのプロモーターは特に限定されない。例えば、カプリアビダス・ネカトールのphaC1遺伝子のプロモーター、phaP1遺伝子のプロモーター、大腸菌に由来するlacプロモーター、lacUV5プロモーター、trcプロモーター、ticプロモーター、tacプロモーターなどが使用可能である。また、各遺伝子に対し同じプロモーターを使用してもよく、異なるプロモーターを使用してもよい。特に、trcプロモーターを各遺伝子に対し使用するのが好ましい。
【0040】
(2)PHAの製造方法
本発明の微生物を、炭素源としてスクロースを含む培地で培養することで、PHAを生産させ、得られたPHAを回収することでPHAを製造することができる。
【0041】
本発明によるPHAの生産においては、炭素源、炭素源以外の栄養源である窒素源、無機塩類、そのほかの有機栄養源を含む培地において、前記微生物を培養することが好ましい。
【0042】
炭素源としてはスクロースを含有していれば良く、スクロースを含有する炭素源として、スクロースを豊富に含む糖蜜、または廃糖蜜が挙げられる。また、スクロースを含有していれば他の炭素源が含まれていてもよく、スクロースと他の炭素源を併用してもよい。他の炭素源としては、本発明の微生物が資化可能であればどんな炭素源でも使用可能であるが、好ましくは、グルコース、フルクトースなどの糖類、パーム油、パーム核油、コーン油、やし油、オリーブ油、大豆油、菜種油、ヤトロファ油などの油脂やその分画油類、ラウリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリンスチン酸などの脂肪酸やそれらの誘導体等が挙げられる。
【0043】
窒素源としては、例えば、アンモニア;塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等のアンモニウム塩;ペプトン、肉エキス、酵母エキス等が挙げられる。無機塩類としては、例えば、リン酸2水素カリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。そのほかの有機栄養源としては、例えば、グリシン、アラニン、セリン、スレオニン、プロリン等のアミノ酸、ビタミンB1、ビタミンB12、ビタミンC等のビタミン等が挙げられる。
【0044】
本発明の微生物を培養する際の、培養温度、培養時間、培養時pH、培地等の条件は、使用する微生物、例えばラルストニア属、カプリアビダス属、ワウテルシア属、アエロモナス属、エシェリキア属、アルカリゲネス属、シュードモナス属等の細菌類の培養で通常使用されるような条件でよい。
【0045】
本発明において生産されるPHAの種類としては、微生物が生産することのできるPHAであれば特に限定されないが、好ましくは、炭素数4〜16のヒドロキシアルカン酸から選択される1種以上のモノマーを重合して得られるPHAが好ましい。例えば、3HBのホモポリマーであるP(3HB)、3HBと3HVの共重合体P(3HB−co−3HV)、3HBと3HHの共重合体PHBH、3HBと4HBの共重合体P(3HB−co−4HB)などが挙げられるが、これらに限定されない。この中でも、ポリマーとしての応用範囲が広いという観点から、PHBHが好ましい。なお、生産されるPHAの種類は、その目的に応じて、使用する微生物の保有するあるいは別途導入されたPHA合成酵素遺伝子の種類や、その合成に関与する代謝系の遺伝子の種類、培養条件などによって適宜選択しうる。
【0046】
本発明において、微生物を培養した後、菌体からのPHAの回収は、特に限定されないが、例えば次のような方法により行うことができる。培養終了後、培養液から遠心分離機等で菌体を分離し、その菌体を蒸留水およびメタノール等により洗浄し、乾燥させる。この乾燥菌体から、クロロホルム等の有機溶剤を用いてPHAを抽出する。このPHAを含んだ有機溶剤溶液から、濾過等によって菌体成分を除去し、そのろ液にメタノールやヘキサン等の貧溶媒を加えてPHAを沈殿させる。さらに、濾過や遠心分離によって上澄み液を除去し、乾燥させてPHAを回収する。
【0047】
得られたPHAの重量平均分子量(Mw)や3HH等のモノマー組成(mol%)の分析は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィーやガスクロマトグラフ法、核磁気共鳴法等により行うことができる。
【実施例】
【0048】
以下に実施例で本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら制限されるものではない。なお全体的な遺伝子操作は、Molecular Cloning(Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989))に記載されているように行うことができる。また、遺伝子操作に使用する酵素、クローニング宿主等は、市場の供給者から購入し、その説明に従い使用することができる。なお、酵素としては、遺伝子操作に使用できるものであれば特に限定されない。
【0049】
また、以下の製造例、実施例、及び比較例で使用されるKNK005ΔphaZ1,2,6株は、C.necator H16株の染色体上のphaZ1,2,6遺伝子が欠失し、アエロモナス・キャビエ由来のPHA合成酵素遺伝子(配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するPHA合成酵素をコードする遺伝子)が導入された形質転換体であり、国際公開第2014/065253号の方法に準じて作製することが出来る。
【0050】
(製造例1)KNK005ΔphaZ1,2,6/nagEG793C,dR株の作製
まず、染色体置換用プラスミドの作製を行った。作製は以下のように行った。
【0051】
C.necator H16株の染色体DNAをテンプレートとして配列番号8及び配列番号9で示されるプライマーを用いて、PCRを行った。PCRは初めに98℃で2分の処理を行った後、98℃で15秒、60℃で30秒、68℃で2分の一連の反応を25サイクル繰り返し、ポリメラーゼはKOD−plus−(東洋紡社製)を用いた。また同様に、配列番号10及び配列番号11で示されるプライマーを用いて、PCRを行った。さらに、上記PCRで得られた2種類のDNA断片をテンプレートとして、配列番号8及び11で示されるプライマーを用いて同様の条件でPCRを行い、得られたDNA断片を制限酵素SwaIで消化した。このDNA断片を、SwaI消化した特開2007−259708号公報に記載のベクターpNS2X−sacBと、DNAリガーゼ(Ligation High(東洋紡社製))にて連結し、nagE構造遺伝子の793番目の塩基より上流および下流の塩基配列を有し、且つnagE構造遺伝子の793番目の塩基がGからCに置換された塩基配列を含む染色体置換用プラスミドベクターpNS2X−sacB+nagEG793Cを作製した。
【0052】
次に、染色体置換用プラスミドベクターpNS2X−sacB+nagEG793Cを用いて、以下のようにして染色体置換株KNK005ΔphaZ1,2,6/nagEG793C株の作製を行った。
【0053】
染色体置換用プラスミドベクターpNS2X−sacB+nagEG793Cで大腸菌S17−1株(ATCC47055)を形質転換し、KNK005ΔphaZ1,2,6株とNutrient Agar培地(Difco社製)上で混合培養して接合伝達を行った。
【0054】
得られた培養液を、250mg/Lのカナマイシンを含むシモンズ寒天培地(クエン酸ナトリウム2g/L、塩化ナトリウム5g/L、硫酸マグネシウム・7水塩0.2g/L、りん酸二水素アンモニウム1g/L、りん酸水素二カリウム1g/L、寒天15g/L、pH6.8)に播種し、当該寒天培地上で生育してきた菌株を選択して、前記プラスミドがKNK005ΔphaZ1,2,6株の染色体上に組み込まれた株を取得した。この株をNutrient Broth培地(Difco社製)で2世代培養した後、15%のシュークロースを含むNutrient Agar培地上に希釈して塗布し、生育してきた菌株をプラスミドが脱落した株として取得した。さらにDNAシーケンサーによる解析により、染色体上のnagE構造遺伝子の793番目の塩基であるGがCに置換された菌株1株を単離した。この変異導入株をKNK005ΔphaZ1,2,6/nagEG793C株と命名した。得られたKNK005ΔphaZ1,2,6/nagEG793C株はC.necator H16株の染色体上のphaZ6遺伝子及びphaZ1遺伝子の開始コドンから終止コドンまでを欠失し、さらにphaZ2遺伝子の16番目のコドンから終止コドンまでを欠失し、染色体上に配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するPHA合成酵素をコードする遺伝子が導入され、さらにnagE構造遺伝子の793番目の塩基であるGがCに置換された株である。
【0055】
さらに、遺伝子破壊用プラスミドの作製を行った。作製は以下のように行った。
【0056】
C.necator H16株の染色体DNAをテンプレートとして配列番号12及び配列番号13で示されるプライマーを用いて、PCRを行った。PCRは上記と同様の反応条件で行い、ポリメラーゼはKOD−plus−(東洋紡社製)を用いた。また同様に、配列番号14及び配列番号15で示されるプライマーを用いて、PCRを行った。さらに、上記PCRで得られた2種類のDNA断片をテンプレートとして、配列番号12及び15で示されるプライマーを用いて同様の条件でPCRを行い、得られたDNA断片を制限酵素SwaIで消化した。このDNA断片を、SwaI消化した特開2007−259708号公報に記載のベクターpNS2X−sacBと、DNAリガーゼ(Ligation High(東洋紡社製))にて連結し、nagR構造遺伝子より上流および下流の塩基配列を有する遺伝子破壊用プラスミドベクターpNS2X−sacB+nagRUDを作製した。
【0057】
次に、遺伝子破壊用プラスミドベクターpNS2X−sacB+nagRUDを用いて、以下のようにして遺伝子破壊株KNK005ΔphaZ1,2,6/nagEG793C,dR株の作製を行った。
【0058】
遺伝子破壊用プラスミドベクターpNS2X−sacB+nagRUDで大腸菌S17−1株(ATCC47055)を形質転換し、上記で得られたKNK005ΔphaZ1,2,6/nagEG793C株とNutrient Agar培地(Difco社製)上で混合培養して接合伝達を行った。
【0059】
得られた培養液を、250mg/Lのカナマイシンを含むシモンズ寒天培地(クエン酸ナトリウム2g/L、塩化ナトリウム5g/L、硫酸マグネシウム・7水塩0.2g/L、りん酸二水素アンモニウム1g/L、りん酸水素二カリウム1g/L、寒天15g/L、pH6.8)に播種し、当該寒天培地上で生育してきた菌株を選択して、前記プラスミドがKNK005ΔphaZ1,2,6/nagEG793C株の染色体上に組み込まれた株を取得した。この株をNutrient Broth培地(Difco社製)で2世代培養した後、15%のシュークロースを含むNutrient Agar培地上に希釈して塗布し、生育してきた菌株をプラスミドが脱落した株として取得した。さらにDNAシーケンサーによる解析により、染色体上のnagR遺伝子の開始コドンから終止コドンまでを欠失した菌株1株を単離した。この遺伝子破壊株をKNK005ΔphaZ1,2,6/nagEG793C,dR株と命名した。KNK005ΔphaZ1,2,6/nagEG793C,dR株は、C.necator H16株の染色体上のphaZ6遺伝子及びphaZ1遺伝子の開始コドンから終止コドンまでを欠失し、さらにphaZ2遺伝子の16番目のコドンから終止コドンまでを欠失し、染色体上に配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するPHA合成酵素をコードする遺伝子が導入され、nagE構造遺伝子の793番目の塩基であるGがCに置換され、さらにnagR遺伝子の開始コドンから終止コドンまでを欠失した株である。
【0060】
(製造例2)pCUP2−lacUV5−cscAB in KNK005ΔphaZ1,2,6株の作製
まず、cscAおよびcscB遺伝子発現用プラスミドの作製を行った。作製は以下のように行った。
【0061】
人工遺伝子合成により、cscAおよびcscB遺伝子を含む、配列番号16で示される塩基配列が導入されたプラスミドを得た。このプラスミドを制限酵素MunIおよびSpeIで消化し、得られたcscAおよびcscB遺伝子を含むDNA断片を、国際公開第2007/049716号に記載のプラスミドベクターpCUP2をMunIおよびSpeIで切断したものと連結し、プラスミドベクターpCUP2−cscABを得た。
【0062】
さらに、E.coli HB101株のゲノムDNAをテンプレートとして配列番号17および配列番号18で示されるプライマーを用いて製造例1と同様の条件でPCRを行った。PCRで得られたlacUV5プロモーター配列を含むDNA断片をMunIで消化した。このDNA断片を、上記のプラスミドベクターpCUP2−cscABをMunIで切断したものと連結した。得られたプラスミドの中から、lacUV5プロモーターの下流にcscAおよびcscBが位置する向きに、lacUV5プロモーター配列を含むDNA断片が挿入されたものをPCRによって選別し、プラスミドベクターpCUP2−lacUV5−cscABを得た。
【0063】
次に、プラスミドベクターpCUP2−lacUV5−cscABをKNK005ΔphaZ1,2,6株へ導入し、形質転換体pCUP2−lacUV5−cscAB in KNK005ΔphaZ1,2,6株を得た。
【0064】
プラスミドベクターの細胞への導入は以下のように電気導入によって行った。遺伝子導入装置はBiorad社製のジーンパルサーを用い、キュベットは同じくBiorad社製のgap0.2cmを用いた。キュベットに、コンピテント細胞400μlと発現ベクター20μlを注入してパルス装置にセットし、静電容量25μF、電圧1.5kV、抵抗値800Ωの条件で電気パルスをかけた。パルス後、キュベット内の菌液をNutrientBroth培地(DIFCO社製)で30℃、3時間振とう培養し、選択プレート(NutrientAgar培地(DIFCO社製)、カナマイシン100mg/L)で、30℃にて2日間培養して、生育してきた形質転換体pCUP2−lacUV5−cscAB in KNK005ΔphaZ1,2,6株を取得した。
【0065】
(製造例3)pCUP2−lacUV5−cscAB in KNK005ΔphaZ1,2,6/nagEG793C,dR株の作製
製造例2で作製したプラスミドベクターpCUP2−lacUV5−cscABを、製造例2と同様の方法で、製造例1で作製したKNK005ΔphaZ1,2,6/nagEG793C,dR株へ導入し、形質転換体pCUP2−lacUV5−cscAB in KNK005ΔphaZ1,2,6/nagEG793C,dR株を得た。
【0066】
(製造例4)pCUP2−lacUV5−cscA in KNK005ΔphaZ1,2,6株の作製
まず、cscA遺伝子発現用プラスミドの作製を行った。作製は以下のように行った。
【0067】
製造例2に記載のプラスミドベクターpCUP2−lacUV5−cscABをテンプレートとして配列番号19及び配列番号20で示されるプライマーを用いて製造例1と同様の条件でPCRを行った。PCRで得られたcscA遺伝子配列を含むDNA断片を制限酵素MunIおよびSpeIで消化し、国際公開第2007/049716号に記載のプラスミドベクターpCUP2をMunIおよびSpeIで切断したものと連結し、プラスミドベクターpCUP2−cscAを得た。さらに、E.coli HB101株のゲノムDNAをテンプレートとして配列番号17および配列番号18で示されるプライマーを用いて製造例1と同様の条件でPCRを行った。PCRで得られたlacUV5プロモーター配列を含むDNA断片をMunIで消化した。このDNA断片を、上記のプラスミドベクターpCUP2−cscAをMunIで切断したものと連結した。得られたプラスミドの中から、lacUV5プロモーターの下流にcscAが位置する向きに、lacUV5プロモーター配列を含むDNA断片が挿入されたものをPCRによって選別し、プラスミドベクターpCUP2−lacUV5−cscAを得た。
【0068】
次に、プラスミドベクターpCUP2−lacUV5−cscAを、製造例2と同様の方法でKNK005ΔphaZ1,2,6株へ導入し、形質転換体pCUP2−lacUV5−cscA in KNK005ΔphaZ1,2,6株を得た。
【0069】
(製造例5)pCUP2−lacUV5−cscB in KNK005ΔphaZ1,2,6株の作製
まず、cscB遺伝子発現用プラスミドの作製を行った。作製は以下のように行った。
【0070】
製造例2に記載のプラスミドベクターpCUP2−lacUV5−cscABをテンプレートとして配列番号21及び配列番号22で示されるプライマーを用いて製造例1と同様の条件でPCRを行った。PCRで得られたcscB遺伝子配列を含むDNA断片を制限酵素MunIおよびSpeIで消化し、国際公開第2007/049716号に記載のプラスミドベクターpCUP2をMunIおよびSpeIで切断したものと連結し、プラスミドベクターpCUP2−cscBを得た。さらに、E.coli HB101株のゲノムDNAをテンプレートとして配列番号17および配列番号18で示されるプライマーを用いて製造例1と同様の条件でPCRを行った。PCRで得られたlacUV5プロモーター配列を含むDNA断片をMunIで消化した。このDNA断片を、上記のプラスミドベクターpCUP2−cscBをMunIで切断したものと連結した。得られたプラスミドの中から、lacUV5プロモーターの下流にcscBが位置する向きに、lacUV5プロモーター配列を含むDNA断片が挿入されたものをPCRによって選別し、プラスミドベクターpCUP2−lacUV5−cscBを得た。
【0071】
次に、プラスミドベクターpCUP2−lacUV5−cscBを、製造例2と同様の方法でKNK005ΔphaZ1,2,6株へ導入し、形質転換体pCUP2−lacUV5−cscB in KNK005ΔphaZ1,2,6株を得た。
【0072】
(製造例6)pCUP2−lacUV5−cscAB in KNK144S株の作製
まず、特開2013−9627号公報に記載のプラスミドbAO/pBlu/SacB−Kmを用いて、以下のようにしてプロモーターおよびリボソーム結合配列挿入株ACP−bktB/ΔphaZ1,2,6/nagEG793C,dR株の作製を行った。
【0073】
プラスミドbAO/pBlu/SacB−Kmで大腸菌S17−1株(ATCC47055)を形質転換し、製造例1で得られたKNK005ΔphaZ1,2,6/nagEG793C,dR株とNutrient Agar培地(Difco社製)上で混合培養して接合伝達を行った。
【0074】
得られた培養液を、250mg/Lのカナマイシンを含むシモンズ寒天培地(クエン酸ナトリウム2g/L、塩化ナトリウム5g/L、硫酸マグネシウム・7水塩0.2g/L、りん酸二水素アンモニウム1g/L、りん酸水素二カリウム1g/L、寒天15g/L、pH6.8)に播種し、当該寒天培地上で生育してきた菌株を選択して、前記プラスミドがKNK005ΔphaZ1,2,6/nagEG793C,dR株の染色体上に組み込まれた株を取得した。この株をNutrient Broth培地(Difco社製)で2世代培養した後、15%のシュークロースを含むNutrient Agar培地上に希釈して塗布し、生育してきた菌株をプラスミドが脱落した株として取得した。さらにDNAシーケンサーによる解析により、染色体上のbktB遺伝子の開始コドン直前にA. caviaeのphaC遺伝子のプロモーターおよびリボソーム結合配列を含む塩基配列からなるDNAが挿入された菌株1株を単離した。この遺伝子挿入株をACP−bktB/ΔphaZ1,2,6/nagEG793C,dR株と命名した。ACP−bktB/ΔphaZ1,2,6/nagEG793C,dR株は、C.necator H16株の染色体上のphaZ6遺伝子及びphaZ1遺伝子の開始コドンから終止コドンまでを欠失し、さらにphaZ2遺伝子の16番目のコドンから終止コドンまでを欠失し、染色体上に配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するPHA合成酵素をコードする遺伝子が導入され、nagE構造遺伝子の793番目の塩基であるGがCに置換され、nagR遺伝子の開始コドンから終止コドンまでを欠失し、さらにbktB(βケトチオラーゼ)遺伝子の開始コドン直前にA. caviaeのphaC遺伝子のプロモーターおよびリボソーム結合配列を含む塩基配列からなるDNAが挿入された株である。
【0075】
さらに、以下のようにしてプロモーターおよびリボソーム結合配列挿入株ACP−bktB/ΔphaZ1,2,6/nagEG793C,dR/trc−J4b株の作製を行った。
【0076】
まず、プロモーターおよびリボソーム結合配列挿入用プラスミドの作製を行った。作製は以下のように行った。
【0077】
C.necator H16株の染色体DNAをテンプレートとして配列番号23及び配列番号24で示されるプライマーを用いて、製造例1と同様の条件でPCRを行った。また同様に、配列番号25及び配列番号26で示されるプライマーを用いて、同様の条件でPCRを行った。さらに、プラスミドpKK388−1(CLONTECH社製)をテンプレートとして配列番号27および配列番号28で示されるプライマーを用いて同様の条件でPCRを行った。上記PCRで得られた3種類のDNA断片をテンプレートとして、配列番号23及び配列番号26で示されるプライマーを用いて同様の条件でPCRを行い、得られたDNA断片を制限酵素SwaIで消化した。このDNA断片を、SwaI消化した特開2007−259708号公報に記載のベクターpNS2X−sacBと、DNAリガーゼ(Ligation High(東洋紡社製))にて連結し、phaJ4b構造遺伝子より上流の塩基配列、trcプロモーター、リボソーム結合配列、及びphaJ4b構造遺伝子配列を有するプロモーターおよびリボソーム結合配列挿入用プラスミドベクターpNS2X−sacB+phaJ4bU−trc−phaJ4bを作製した。
【0078】
次に、プロモーターおよびリボソーム結合配列挿入用プラスミドベクターpNS2X−sacB+phaJ4bU−trc−phaJ4bを用いて、ACP−bktB/ΔphaZ1,2,6/nagEG793C,dR株を親株として、上記のプロモーターおよびリボソーム結合配列挿入株の作製方法と同様に、接合伝達、シモンズ寒天培地での選択、及び、15%のシュークロースを含むNutrient Agar培地での選択を行い、ACP−bktB/ΔphaZ1,2,6/nagEG793C,dR/trc−J4b株を作製した。ACP−bktB/ΔphaZ1,2,6/nagEG793C,dR/trc−J4b株は、C.necator H16株の染色体上のphaZ6遺伝子及びphaZ1遺伝子の開始コドンから終止コドンまでを欠失し、さらにphaZ2遺伝子の16番目のコドンから終止コドンまでを欠失し、染色体上に配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するPHA合成酵素をコードする遺伝子が導入され、nagE構造遺伝子の793番目の塩基であるGがCに置換され、nagR遺伝子の開始コドンから終止コドンまでを欠失し、bktB遺伝子の開始コドン直前にA. caviaeのphaC遺伝子のプロモーターおよびリボソーム結合配列を含む塩基配列からなるDNAが挿入され、さらにphaJ4b遺伝子の開始コドン直前にtrcプロモーターおよびリボソーム結合配列を含む塩基配列からなるDNAが挿入された株である。
【0079】
さらに、以下のようにして染色体置換株KNK144S株の作製を行った。
【0080】
特開2008−29218号公報に記載の染色体置換用ベクターpBlueASRUを用いて、ACP−bktB/ΔphaZ1,2,6/nagEG793C,dR/trc−J4b株を親株として、製造例1に記載の染色体置換株の作製と同様に、接合伝達、シモンズ寒天培地での選択、及び、15%のシュークロースを含むNutrient Agar培地での選択を行い、KNK144S株を作製した。KNK144S株はC.necator H16株の染色体上のphaZ6遺伝子及びphaZ1遺伝子の開始コドンから終止コドンまでを欠失し、さらにphaZ2遺伝子の16番目のコドンから終止コドンまでを欠失し、染色体上に配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するPHA合成酵素をコードする遺伝子が導入され、nagE構造遺伝子の793番目の塩基であるGがCに置換され、nagR遺伝子の開始コドンから終止コドンまでを欠失し、bktB遺伝子の開始コドン直前にA. caviaeのphaC遺伝子のプロモーターおよびリボソーム結合配列を含む塩基配列からなるDNAが挿入され、phaJ4b遺伝子の開始コドン直前にtrcプロモーターおよびリボソーム結合配列を含む塩基配列からなるDNAが挿入され、さらにphaA構造遺伝子配列中に終止コドンと制限酵素NheI切断部位が生成した株である。
【0081】
次に、製造例2に記載のプラスミドベクターpCUP2−lacUV5−cscABを、製造例2と同様の方法でKNK144S株へ導入し、形質転換体pCUP2−lacUV5−cscAB in KNK144S株を得た。
【0082】
(製造例7)pCUP2−lacUV5−cscAB in KNK143S株の作製
まず、プロモーター、リボソーム結合配列及び遺伝子挿入用プラスミドの作製を行った。作製は以下のように行った。
【0083】
C.necator H16株の染色体DNAをテンプレートとして配列番号29及び配列番号30で示されるプライマーを用いて、PCRを行った。PCRは上記と同様の反応条件で行い、ポリメラーゼはKOD−plus−(東洋紡社製)を用いた。また同様に、配列番号31及び配列番号32で示されるプライマーを用いて、PCRを行った。さらに、上記PCRで得られた2種類のDNA断片をテンプレートとして、配列番号29及び32で示されるプライマーを用いて同様の条件でPCRを行い、得られたDNA断片を制限酵素SwaIで消化した。このDNA断片を、SwaI消化した特開2007−259708号公報に記載のベクターpNS2X−sacBと、DNAリガーゼ(Ligation High(東洋紡社製))にて連結し、phaZ2構造遺伝子より上流および下流の塩基配列を有するプラスミドベクターpNS2X−sacB+phaZ2MunISpeIを作製した。
【0084】
次に、人工遺伝子合成により、リボソーム結合配列、ccrおよびemdを含む、配列番号33で示される塩基配列が導入されたプラスミドを得た。このプラスミドを制限酵素MunIおよびSpeIで消化し、得られたリボソーム結合配列、ccrおよびemd遺伝子を含むDNA断片を、プラスミドベクターpNS2X−sacB+Z2UDMunISpeIをMunIおよびSpeIで切断したものと連結し、プラスミドベクターpNS2X−sacB+Z2U−ccr−emd−Z2Dを得た。
【0085】
次に、プラスミドpKK388−1(CLONTECH社製)をテンプレートとして配列番号34および配列番号35で示されるプライマーを用いて同様の条件でPCRを行った。PCRで得られたtrcプロモーター配列を含むDNA断片をMunIで消化した。このDNA断片を、上記のプラスミドベクターpNS2X−sacB+Z2U−ccr−emd−Z2DをMunIで切断したものと連結した。得られたプラスミドの中から、trcプロモーターの下流にccrおよびemdが位置する向きに、trcプロモーター配列を含むDNA断片が挿入されたものをPCRによって選別し、プロモーター、リボソーム結合配列及び遺伝子挿入用プラスミドベクターpNS2X−sacB+Z2U−trc−ccr−emd−Z2Dを得た。
【0086】
次に、プロモーター、リボソーム結合配列及び遺伝子挿入用プラスミドベクターpNS2X−sacB+Z2U−trc−ccr−emd−Z2Dを用いて、KNK144S株を親株として、製造例6に記載のプロモーターおよびリボソーム結合配列挿入株の作製方法と同様に、接合伝達、シモンズ寒天培地での選択、及び、15%のシュークロースを含むNutrient Agar培地での選択を行い、KNK143S株を作製した。KNK143S株は、C.necator H16株の染色体上のphaZ6遺伝子及びphaZ1遺伝子の開始コドンから終止コドンまでを欠失し、さらにphaZ2遺伝子の16番目のコドンから終止コドンまでを欠失し、染色体上に配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するPHA合成酵素をコードする遺伝子が導入され、nagE構造遺伝子の793番目の塩基であるGがCに置換され、nagR遺伝子の開始コドンから終止コドンまでを欠失し、bktB遺伝子の開始コドン直前にA. caviaeのphaC遺伝子のプロモーターおよびリボソーム結合配列を含む塩基配列からなるDNAが挿入され、phaJ4b遺伝子の開始コドン直前にtrcプロモーターおよびリボソーム結合配列を含む塩基配列からなるDNAが挿入され、phaA構造遺伝子配列中に終止コドンと制限酵素NheI切断部位が生成し、さらに元々はphaZ2遺伝子があった位置にtrcプロモーター、リボソーム結合配列、ccr遺伝子及びemd遺伝子が挿入された株である。
【0087】
次に、製造例2に記載のプラスミドベクターpCUP2−lacUV5−cscABを、製造例2に記載の方法でKNK143S株へ導入し、形質転換体pCUP2−lacUV5−cscAB in KNK143S株を得た。
【0088】
(製造例8)pCUP2−lacUV5−cscAB in KNK140S株の作製
まず、遺伝子破壊用プラスミドの作製を行った。作製は以下のように行った。
【0089】
KNK005ΔphaZ1,2,6株の染色体DNAをテンプレートとして配列番号36及び配列番号37で示されるプライマーを用いて、製造例1と同様の条件でPCRを行った。また同様に、配列番号38及び配列番号39で示されるプライマーを用いて、同様の条件でPCRを行った。上記PCRで得られた2種類のDNA断片をテンプレートとして、配列番号36及び配列番号39で示されるプライマーを用いて同様の条件でPCRを行い、得られたDNA断片を制限酵素SwaIで消化した。このDNA断片を、SwaI消化した特開2007−259708号公報に記載のベクターpNS2X−sacBと、DNAリガーゼ(Ligation High(東洋紡社製))にて連結し、phaA構造遺伝子より上流の塩基配列、及びphaB1(アセトアセチルCoAレダクターゼ)構造遺伝子より下流の塩基配列を有する遺伝子破壊用プラスミドベクターpNS2X−sacB+phaAB1UDを作製した。
【0090】
次に、遺伝子破壊用プラスミドベクターpNS2X−sacB+phaAB1UDを用いて、KNK−144S株を親株として、製造例1に記載の染色体置換株の作製と同様に、接合伝達、シモンズ寒天培地での選択、及び、15%のシュークロースを含むNutrient Agar培地での選択を行い、KNK140S株を作製した。KNK140S株は、C.necator H16株の染色体上のphaZ6遺伝子及びphaZ1遺伝子の開始コドンから終止コドンまでを欠失し、さらにphaZ2遺伝子の16番目のコドンから終止コドンまでを欠失し、染色体上に配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するPHA合成酵素をコードする遺伝子が導入され、nagE構造遺伝子の793番目の塩基であるGがCに置換され、nagR遺伝子の開始コドンから終止コドンまでを欠失し、bktB遺伝子の開始コドン直前にA. caviaeのphaC遺伝子のプロモーターおよびリボソーム結合配列を含む塩基配列からなるDNAが挿入され、phaJ4b遺伝子の開始コドン直前にtrcプロモーターおよびリボソーム結合配列を含む塩基配列からなるDNAが挿入され、さらにphaA遺伝子の開始コドンからphaB1遺伝子の終止コドンまでを欠失した株である。
【0091】
次に、製造例2に記載のプラスミドベクターpCUP2−lacUV5−cscABを、製造例2に記載の方法でKNK140S株へ導入し、形質転換体pCUP2−lacUV5−cscAB in KNK140S株を得た。
【0092】
(製造例9)pCUP2−lacUV5−cscAB in KNK142S株の作製
製造例8に記載の遺伝子破壊用プラスミドベクターpNS2X−sacB+phaAB1UDを用いて、製造例7に記載のKNK−143S株を親株として、製造例1に記載の染色体置換株の作製と同様に、接合伝達、シモンズ寒天培地での選択、及び、15%のシュークロースを含むNutrient Agar培地での選択を行い、KNK142S株を作製した。KNK142S株はC.necator H16株の染色体上のphaZ6遺伝子及びphaZ1遺伝子の開始コドンから終止コドンまでを欠失し、さらにphaZ2遺伝子の16番目のコドンから終止コドンまでを欠失し、染色体上に配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するPHA合成酵素をコードする遺伝子が導入され、nagE構造遺伝子の793番目の塩基であるGがCに置換され、nagR遺伝子の開始コドンから終止コドンまでを欠失し、bktB遺伝子の開始コドン直前にA. caviaeのphaC遺伝子のプロモーターおよびリボソーム結合配列を含む塩基配列からなるDNAが挿入され、phaJ4b遺伝子の開始コドン直前にtrcプロモーターおよびリボソーム結合配列を含む塩基配列からなるDNAが挿入され、元々はphaZ2遺伝子があった位置にtrcプロモーター、リボソーム結合配列、ccr遺伝子及びemd遺伝子が挿入され、さらにphaA遺伝子の開始コドンからphaB1遺伝子の終止コドンまでを欠失した株である。
【0093】
次に、製造例2に記載のプラスミドベクターpCUP2−lacUV5−cscABを、製造例2に記載の方法でKNK142S株へ導入し、形質転換体pCUP2−lacUV5−cscAB in KNK142S株を得た。
【0094】
(比較例1〜4)KNK005ΔphaZ1,2,6株、KNK005ΔphaZ1,2,6/nagEG793C,dR株、pCUP2−lacUV5−cscA in KNK005ΔphaZ1,2,6株およびpCUP2−lacUV5−cscB in KNK005ΔphaZ1,2,6株におけるスクロースの資化性、PHA生産性およびその3HH組成比率
種母培地の組成は1w/v% Meat−extract、1w/v% Bacto−Trypton、0.2w/v% Yeast−extract、0.9w/v% NaHPO・12HO、0.15w/v% KHPOとした。種母培地でプラスミドベクター導入株を培養する場合には、カナマイシンを最終濃度100μg/mlとなるように種母培地に添加した。
【0095】
スクロース資化性試験およびPHA生産に使用した生産培地の組成は1.1w/v% NaHPO・12HO、0.19w/v% KHPO、0.13w/v% (NHSO、0.1w/v% MgSO・7HO、0.1v/v%微量金属塩溶液(0.1N塩酸に1.6w/v% FeCl・6HO、1w/v% CaCl・2HO、0.02w/v% CoCl・6HO、0.016w/v%CuSO・5HO、0.012w/v% NiCl・6HOを溶かしたもの。)とした。炭素源は40w/v%スクロース水溶液を単一炭素源として用い、1.5w/v%となるように培地に添加した。
【0096】
KNK005ΔphaZ1,2,6株(国際公開第2014/065253号参照)、製造例1において作製したKNK005ΔphaZ1,2,6/nagEG793C,dR株、製造例4において作製したpCUP2−lacUV5−cscA in KNK005ΔphaZ1,2,6株および製造例5において作製したpCUP2−lacUV5−cscB in KNK005ΔphaZ1,2,6株の各グリセロールストック(50μL)をそれぞれ種母培地(5mL)に接種して培養温度30℃で24時間振とう培養し、得られた培養液を種母とした。
【0097】
スクロース資化性試験およびPHA生産培養では、200mLの生産培地を入れた坂口フラスコに前記種母を1.0v/v%接種し、培養温度30℃で振とう培養を行った。経時的に培養液をサンプリングし、菌体の増殖(OD600)および培地中の各種糖濃度(スクロース、グルコース、フルクトース)を測定した。糖濃度の測定はF−キット ショ糖/D−グルコース/果糖(株式会社 J.K.インターナショナル)を用いて行った。結果を図1〜4に示した。
【0098】
72時間培養後、遠心分離によって菌体を回収、メタノールで洗浄、凍結乾燥し、乾燥菌体重量を測定した。
【0099】
PHA生産量は以下のように算出した。得られた乾燥菌体1gあたり100mLのクロロホルムを加え、室温で一昼夜攪拌して、菌体内のPHAを抽出した。菌体残渣をろ別後、エバポレーターで総容量が1/3になるまで濃縮後、濃縮液量の3倍量のヘキサンを徐々に加え、ゆっくり攪拌しながら、1時間放置した。析出したPHAをろ別後、50℃で3時間真空乾燥した。乾燥PHAの重量を測定し、PHA生産量を算出した。結果を表1に示した。
【0100】
生産されたPHAの3HH組成比率は以下のようにガスクロマトグラフィーによって測定した。乾燥PHAの約20mgに2mlの硫酸−メタノール混液(15:85)と2mlのクロロホルムを添加して密栓し、100℃で140分間加熱することでPHA分解物のメチルエステルを得た。冷却後、これに1.5gの炭酸水素ナトリウムを少しずつ加えて中和し、炭酸ガスの発生がとまるまで放置した。4mlのジイソプロピルエーテルを添加してよく混合した後、遠心して、上清中のPHA分解物のモノマー単位組成をキャピラリーガスクロマトグラフィーにより分析した。ガスクロマトグラフは島津製作所GC−17A、キャピラリーカラムはGLサイエンス社製NEUTRA BOND−1(カラム長25m、カラム内径0.25mm、液膜厚0.4μm)を用いた。キャリアガスとしてHeを用い、カラム入口圧100kPaとし、サンプルは1μlを注入した。温度条件は、初発温度100〜200℃まで8℃/分の速度で昇温し、さらに200〜290℃まで30℃/分の速度で昇温した。上記条件にて分析した結果、得られたPHAの3HH組成比率を表1に示した。
【0101】
比較例1、2および4のKNK005ΔphaZ1,2,6株、KNK005ΔphaZ1,2,6/nagEG793C,dR株およびpCUP2−lacUV5−cscB in KNK005ΔphaZ1,2,6株は、スクロースを炭素源として増殖することができなかった。比較例3のpCUP2−lacUV5−cscA in KNK005ΔphaZ1,2,6株は、スクロースを炭素源としてわずかに増殖したが、その増殖速度は非常に遅かった。また、比較例3のpCUP2−lacUV5−cscA in KNK005ΔphaZ1,2,6株によって生産されたPHAは3HHモノマー単位を含有せず、3HBのホモポリマーであるPHBであった。
【0102】
(実施例1)pCUP2−lacUV5−cscAB in KNK005ΔphaZ1,2,6株におけるスクロース資化性、PHA生産性およびその3HH組成比率
種母培地の組成は比較例1〜4に記載のものと同様とした。種母培地でプラスミドベクター導入株を培養する場合には、カナマイシンを最終濃度100μg/mlとなるように種母培地に添加した。
【0103】
スクロース資化性試験およびPHA生産に使用した生産培地の組成および炭素源は比較例1〜4に記載のものと同様とした。
【0104】
製造例2において作製したpCUP2−lacUV5−cscAB in KNK005ΔphaZ1,2,6株を比較例1〜4と同様の方法で培養し、経時的に培養液をサンプリングし、菌体の増殖(OD600)および培地中の各種糖濃度(スクロース、グルコース、フルクトース)を測定した。糖濃度の測定は比較例1〜4と同様の方法で行った。結果を図5に示した。
【0105】
72時間培養後、遠心分離によって菌体を回収、メタノールで洗浄、凍結乾燥し、乾燥菌体重量を測定した。
【0106】
PHA生産量および3HH組成比率を比較例1〜4と同様の方法で算出した。得られたPHA生産量および3HH組成比率を表1に示した。
【0107】
pCUP2−lacUV5−cscAB in KNK005ΔphaZ1,2,6株は、スクロースを炭素源として良好に増殖し、PHAを生産した。生産されたPHAはホモポリマーであるPHBであった。
【0108】
(実施例2)pCUP2−lacUV5−cscAB in KNK005ΔphaZ1,2,6/nagEG793C,dR株におけるスクロース、グルコース、フルクトース資化性、PHA生産性およびその3HH組成比率
種母培地の組成は比較例1〜4に記載のものと同様とした。種母培地でプラスミドベクター導入株を培養する場合には、カナマイシンを最終濃度100μg/mlとなるように種母培地に添加した。
【0109】
スクロース資化性試験およびPHA生産に使用した生産培地の組成は比較例1〜4に記載のものと同様とした。炭素源は40w/v%スクロース水溶液を単一炭素源として用い、1.5w/v%となるように培地に添加した。
【0110】
製造例3において作製したpCUP2−lacUV5−cscAB in KNK005ΔphaZ1,2,6/nagEG793C,dR株を比較例1〜4と同様の方法で培養し、経時的に培養液をサンプリングし、菌体の増殖(OD600)および培地中の各種糖濃度(スクロース、グルコース、フルクトース)を測定した。糖濃度の測定は比較例1〜4と同様の方法で行った。結果を図6に示した。
【0111】
72時間培養後、遠心分離によって菌体を回収、メタノールで洗浄、凍結乾燥し、乾燥菌体重量を測定した。
【0112】
PHA生産量および3HH組成比率を比較例1〜4と同様の方法で算出した。結果を表1に示した。
【0113】
また、上記と同様の条件で炭素源をスクロース水溶液から同濃度のグルコース水溶液またはフルクトース水溶液に変更した生産培地において培養を行い、経時的に培養液をサンプリングし、菌体の増殖(OD600)、乾燥菌体重量、及び、PHA生産量を測定した。結果を図7に示した。
【0114】
生産されたPHAの3HH組成比率を比較例1〜4と同様の方法で算出した。得られたPHAの3HH組成比率を表1に示した。
【0115】
pCUP2−lacUV5−cscAB in KNK005ΔphaZ1,2,6/nagEG793C,dR株は、スクロースを炭素源として、特に優れた増殖力およびPHA生産性を示した。スクロースを炭素源とした場合の増殖速度はグルコースを炭素源とした場合を上回り、C.necator H16株が元来資化可能なフルクトースを炭素源とした場合と同等であった。
【0116】
pCUP2−lacUV5−cscAB in KNK005ΔphaZ1,2,6/nagEG793C,dR株によって生産されたPHAは、3HBのホモポリマーであるPHBであった。
【0117】
(実施例3〜6)pCUP2−lacUV5−cscAB in KNK144S株、pCUP2−lacUV5−cscAB in KNK143S株、pCUP2−lacUV5−cscAB in KNK140S株およびpCUP2−lacUV5−cscAB in KNK142S株におけるPHA生産性およびその3HH組成比率
種母培地の組成は比較例1〜4に記載のものと同様とした。種母培地でプラスミドベクター導入株を培養する場合には、カナマイシンを最終濃度100μg/mlとなるように種母培地に添加した。
【0118】
PHA生産に使用した生産培地の組成および炭素源は比較例1〜4に記載のものと同様とした。製造例6〜9において作製したpCUP2−lacUV5−cscAB in KNK144S株、pCUP2−lacUV5−cscAB in KNK143S株、pCUP2−lacUV5−cscAB in KNK140S株およびpCUP2−lacUV5−cscAB in KNK142S株をそれぞれ比較例1〜4と同様の方法で培養し、72時間培養後、遠心分離によって菌体を回収、メタノールで洗浄、凍結乾燥し、乾燥菌体重量を測定した。
【0119】
PHA生産量および3HH組成比率を比較例1〜4と同様の方法で算出した。結果を表1に示した。
【0120】
いずれの株も、スクロースを炭素源として良好に増殖し、PHAを生産した。実施例3のpCUP2−lacUV5−cscAB in KNK144S株および実施例5のpCUP2−lacUV5−cscAB in KNK140S株によって生産されたPHAは3HHモノマーを僅かに含有するPHBHであり、実施例4のpCUP2−lacUV5−cscAB in KNK143S株によって生産されたPHAは、3HH組成比率が2.3%のPHBHであった。実施例6のpCUP2−lacUV5−cscAB in KNK142S株によって生産されたPHAは、3HH組成比率が26.7%と非常に高いPHBHであった。
【0121】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]