(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853799
(24)【登録日】2021年3月16日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】常温で自己退色性を有する塗料組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20210322BHJP
C09D 5/16 20060101ALI20210322BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20210322BHJP
C09D 183/02 20060101ALI20210322BHJP
C09D 185/00 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/16
C09D7/63
C09D183/02
C09D185/00
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-67197(P2018-67197)
(22)【出願日】2018年3月30日
(65)【公開番号】特開2019-178204(P2019-178204A)
(43)【公開日】2019年10月17日
【審査請求日】2019年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】391056066
【氏名又は名称】ロックペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086346
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 武信
(72)【発明者】
【氏名】向井 智哉
(72)【発明者】
【氏名】山根 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】白井 佑
(72)【発明者】
【氏名】池田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】松澤 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】板倉 有佑
【審査官】
菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2017/217474(WO,A1)
【文献】
特開2008−279736(JP,A)
【文献】
特開平11−192454(JP,A)
【文献】
特開2015−057282(JP,A)
【文献】
特開2012−086153(JP,A)
【文献】
特開2014−091804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 201/00
C09D 5/16
C09D 7/63
C09D 183/02
C09D 185/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリケート化合物の(部分)加水分解物を含み、親水性及び耐汚染性を有する塗膜を形成する塗料組成物において、
(A)下記式(1)で表されるシリケート化合物の(部分)加水分解物30〜80部、
(式中、
R1、R2、R3及びR4は炭素数1〜8の有機基を示し、これらは互いに同一のものでも異なるものであってもよい。また、nは1〜50の整数を示す。)
(B)金属キレート化合物10〜60部、
(C)バインダー成分5〜40部、
を含有するものであり、
(ここで、「部」は上記(A)(B)(C)それぞれの「固形分の重量部」を表す。)
前記(B)金属キレート化合物は、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート及びジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネートからから選択された少なくとも一種であり、
塗装時においては発色によって視認性を示す一方、塗膜形成時においては、常温での乾燥の過程で、自己作用によって前記視認性が低下した塗膜を形成することを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
前記(A)(B)(C)の3成分の固形分重量中、前記(B)金属キレート化合物は、41.2重量%以上配合されたことを特徴とする請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
請求項1又2記載の塗料組成物によって形成される、親水性及び耐汚染性に優れ且つ自己作用によって前記視認性が低下した塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリケート化合物の(部分)加水分解物、金属キレート化合物、バインダー成分を含有する塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリケート化合物の加水分解物を用いた親水性及び耐汚染性に優れる塗膜を形成する塗料組成物が知られている。例えば、特許文献1では、親水処理用表面改質剤を含有する水性エマルション塗料によって形成された塗膜上に、(a)シリケート化合物の加水分解体、(b)HLB値が10〜15であるアルキレンオキサイドユニットを有するノニオン系界面活性剤、(c)水及び(d)親水性有機溶剤を含有する親水化処理剤を塗布してなる親水性塗膜の形成方法が開示されている。
【0003】
このようなシリケート化合物の加水分解物を用いた塗膜は、形成された直後から高い親水性を示し、優れた耐汚染性を有する塗膜が得られるという利点がある。また、クリヤー仕上げが可能であるため、素地の美観を活かすことができるという利点がある。しかし、塗装/非塗装箇所の区別が判別しづらく、塗装ムラが生じる場合がある。
【0004】
このような塗装ムラの軽減のために、特許文献2では、光、pH、温度等の外部刺激によって経時的に退色する色素を用いた方法が示されており、さらに、第1族元素、第2族元素、遷移金属元素から選ばれる1種以上の金属元素であって水性媒体中で金属イオンとなるものを併用することによって、退色が早まることが示されている。
【0005】
しかし、このような退色性色素を用いる方法では退色するまでに長時間を有し、金属イオンを併用していても退色には48時間を要する。
【0006】
また、特許文献3では、加熱退色性着色剤を用いた方法について示されている。塗料組成物をスプレー塗装や刷毛塗り塗装等により被塗装物の表面にポストコート塗装する際の塗布の進行過程が目視確認できる。
【0007】
しかし、乾燥には80〜250度の温度を要するため、使用できる基材が限定的である。
【0008】
さらに、特許文献4では、有機色素配合光触媒被膜用コーティング液を用いたコーティング方法が示されている。光触媒被膜の膜厚は通常0.1〜2.0μm程度であり、透明光触媒被膜の場合には造膜の有無の確認が大変難しいが、有機色素による着色があるため、塗装時に塗膜の有無を視認できる。一方、塗膜形成後は、光触媒の機能によって有機色素が分解されて消色するため、透明塗膜が得られる。
【0009】
しかし、このような光触媒機能によって脱色する方法は、太陽光の当たり方によって光量が異なるので、光触媒効果に差異が生じて塗装ムラが生じる場合がある。また、消色を確認できるまでに、塗布後4日を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−51463号公報
【特許文献2】特許第5816736号公報
【特許文献3】特開2007−169354号公報
【特許文献4】特許第3598274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の点に鑑み、シリケート化合物の(部分)加水分解物、金属キレート化合物、バインダー成分を含有する塗料組成物であって、塗装時においては発色によって視認性を示す一方、塗膜形成時においては、常温での乾燥の過程で、自己作用によって前記視認性が低下した塗膜を形成することを特徴とする塗料組成物を提供することを目的とする。また、親水性及び耐汚染性に優れる塗膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらの課題に対して鋭意検討したところ、
(A)下記式(1)で表されるシリケート化合物の(部分)加水分解物30〜80部、
(式中、Rは炭素数1〜8の有機基を示し、これらは互いに同一のものでも異なるものであってもよい。また、nは1〜50の整数を示す。)
(B)金属キレート化合物10〜60部、
(C)バインダー成分5〜40部、
(ここで、「部」は「有効成分の重量部」を表す。)
を含有する塗料組成物に関する発明に想到した。
【0013】
当該塗料組成物は発色性を有しており、塗装者が塗装時において塗装/非塗装箇所を視認できる。そのため、塗装ムラの抑制など、塗装作業の改善等に有利である。一方、塗膜形成時においては、常温での乾燥の過程で、当該塗料組成物の自己作用によって前記視認性が低下した塗膜が形成される。そのため、素地の意匠を活かしたクリヤー仕上げが可能になるなど、目的に応じた塗装を行う点で有利である。また、このようにして得られる塗膜は、親水性及び耐汚染性に優れる。
【0014】
ここで、「自己作用」とは、当該塗料組成物の構成成分同士の相互作用の変化等に伴って生じる作用であって、外的な要因によらずに生じる作用を指す。よって、視認性が低下した塗膜を得るために、特別な手間や時間を要しない。
「視認性が低下」とは、塗膜の透明性の向上等によって、肉眼による観察において乾燥塗膜が塗装直後の塗膜よりも見えにくくなることを指す。
「親水性及び耐汚染性に優れる」とは、本発明の塗料組成物による塗膜が、上記(A)シリケート化合物の(部分)加水分解物を含まない塗料組成物による塗膜と比較して、親水性及び耐汚染性が向上していることを指す。
【発明の効果】
【0015】
本発明の塗料組成物は発色性を有しており、塗装者が塗装時において塗装/非塗装箇所を視認できるため、塗装ムラの抑制が可能である。一方、塗膜形成時においては、常温での乾燥の過程で、当該塗料組成物の自己作用によって前記視認性が低下した塗膜が形成されるため、素地の意匠を活かしたクリヤー仕上げが可能である。また、このようにして得られる塗膜は、親水性及び耐汚染性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(A)下記式(1)で表されるシリケート化合物の(部分)加水分解物
(式中、Rは炭素数1〜8の有機基を示し、これらは互いに同一のものでも異なるものであってもよい。また、nは1〜50の整数を示す。)
【0017】
上記式(1)において、Rが示す炭素数1〜8の有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−アミル基、イソアミル基、ネオアミル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基等の直鎖状又は分岐状のものが挙げられる。加水分解性の観点から、炭素数が8を上回るものは好ましくない。これらの中でも、炭素数が1〜4であるメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基が好ましく、炭素数が1〜2であるメチル基又はエチル基がさらに好ましい。
【0018】
上記式(1)で表されるシリケート化合物は、炭素数1〜8のアルコキシ基を有するテトラアルコキシシランを縮合して得るか、市販品を用いてもよい。炭素数1〜8のアルコキシ基を有するテトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラヘキシルオキシシラン、テトラオクチルオキシシランが挙げられる。縮合に用いるテトラアルコキシシランは同一の種類に限らず、複数の異なる種類を用いてもよい。反応性の観点から、炭素数1〜4のものが好ましく、炭素数1〜2のものがさらに好ましい。また、縮合物の市販品としては、例えば、「メチルシリケート51」、「エチルシリケート40」、「エチルシリケート48」、「EMS−485」(いずれも商品名、コルコート社製)が挙げられる。また、反応性やハンドリング性の観点から、nは1〜50の整数が好ましく、4〜10の整数がさらに好ましい。
【0019】
上記式(1)で表されるシリケート化合物の加水分解は、当該シリケート化合物が有するアルコキシシリル基と当量以上の水を用いて進行させる。反応は常温で進行するが、必要に応じて触媒の添加や加熱をしてもよい。
【0020】
上記式(1)で表されるシリケート化合物の加水分解に用いる触媒としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、フタル酸、マレイン酸、安息香酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、有機アミン等の塩基触媒;有機金属;金属アルコキシド、例えばジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズジアセテート等の有機スズ化合物、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等の有機アルミニウム化合物、チタンテトライソポロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド、チタンテトラ−2−エチルヘキソキシド、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)等の有機チタン化合物、ジルコニウムテトラノルマルブトキシド、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート等の有機ジルコニウム化合物、ホウ素ブトキシド、ホウ酸等のホウ素化合物等が挙げられる。上記触媒の量は特に限定されない。
【0021】
また、上記式(1)で表されるシリケート化合物は、水に対する溶解性が十分でないため、親水性有機溶剤を加えて、系を均一化させて加水分解を進行させることが好ましい。このような親水性有機溶剤としては、水に自由に混和するものが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコール誘導体が挙げられる。
【0022】
上記式(1)で表されるシリケート化合物の(部分)加水分解物は、シリケート化合物中のアルコキシシリル基がシラノール基に変化した構造であり、塗布直後から親水性の発現に寄与していると考えられるが、必ずしも全てのアルコキシシリル基が加水分解されてシラノール基に変換されていなくてもよい。
【0023】
塗膜の親水性及び耐無機汚れ性の発現しやすさの観点から、上記式(1)で表されるシリケート化合物の(部分)加水分解物の含有量は30〜80部が好ましく、40〜60部がさらに好ましい。添加量が30部より少ない場合には十分な塗膜の親水性や耐汚染性が得られない。また、添加量が80部より多い場合には、塗膜に割れが生じやすくなる。ここで、「部」は「有効成分の重量部」を表す。
【0024】
(B)金属キレート化合物
金属キレート化合物は、塗料中においては、上記(A)シリケート化合物の(部分)加水分解物と相互作用し、塗料の発色に寄与していると考えられる。一方、塗膜形成時においては、溶剤の揮発に従って、当該加水分解物が有するシラノールの縮合が進行して上記相互作用が解消され、発色性が低下すると解される。また、上記相互作用が解消された金属キレート化合物は、シラノールの縮合反応の触媒として働くとともに、塗膜構成成分にもなると解される。
【0025】
このような金属キレート化合物としては、例えば、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等のアルミニウムキレート化合物、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)等のチタンキレート化合物、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート等のジルコニウムキレート化合物が挙げられる。発色性の観点から、チタンキレート化合物が好ましい。
【0026】
塗料の発色性及び成膜性の観点から、(B)金属キレート化合物の添加量は、10〜60部が好ましく、30〜45部がさらに好ましい。添加量が10部より少ない場合には発色性が弱い。また、添加量が60部より多い場合には塗膜外観が悪化しやすい。ここで、「部」は「有効成分の重量部」を表す。
【0027】
(C)バインダー成分
上記(A)シリケート化合物の(部分)加水分解物、及び(B)金属キレート化合物のみの構成では、シラノールの縮合による硬化収縮によって塗膜に割れが生じやすい。しかし、バインダー成分を併用することで、塗膜の割れを抑制できる。
【0028】
このようなバインダー成分としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、アクリル樹脂、セルロース誘導体のような水溶性樹脂;エマルション樹脂等が挙げられる。これらは単独でも複数種類を併用してもよい。これらの中でも特に、PVAやPVPを用いると上記目的を達成しやすく、例えば、ゴーセネックスT−330H、ゴーセノールN−300、ゴーセノールGH17−R、ゴーセノールKH−17(いずれも日本合成化学社製)、DF−20(日本酢ビ・ポバール社製)等のPVA;ピッツコールV−7154(第一工業製薬社製)等のPVAとPVPの複合物が挙げられる。(C)バインダー成分の添加量は5〜40部が好ましく、8〜20部がさらに好ましい。添加量が5部より少ない場合には、十分な塗膜の割れ抑制効果が得られない。また、添加量が40部より多い場合には、他の成分との相溶性が悪くなり、塗膜外観が悪化しやすい。ここで、「部」は「有効成分の重量部」を表す。
【0029】
(D)その他の成分
上記(A)〜(C)の各成分に加えて、親水性や耐汚染性の底上げのための成分として、コロイダルシリカやオルガノシリカゾル、微粒子金属ゾルを加えることができる。コロイダルシリカとしては、例えば、スノーテックスシリーズ(日産化学工業社製)が挙げられる。Na安定型、NH
4+安定型、酸性ゾル等の様々な安定化形態がある。また、それぞれの安定化形態において、多様な形状や粒子径が選択できるため、上記(A)〜(C)の各成分の特性を考慮して、適切なものを選択するとよい。また、同社では、溶剤分散タイプであるオルガノシリカゾルも扱っている。アルコール系、ケトン系、エーテル系等の種類があるため、上記(A)〜(C)の各成分との相溶性を考慮して、適切なものを選択するとよい。これらの成分は添加量が多くなるにつれて塗膜の親水性や耐汚染性への寄与が大きくなるが、有効成分換算で全成分の40重量%以内とするのが好ましい。添加量が40重量%より多いと、塗膜に割れが生じやすくなる。
【0030】
また、上記に挙げた以外にも塗膜の物性を損なわない範囲で、必要に応じて、顔料、レベリング剤、消泡剤、表面調整剤等の添加剤を加えることができる。
【0031】
本発明の塗料組成物の塗装方法としては、スプレーコート、ディップコート、スピンコート等を好的に用いることができる。また、刷毛やローラーによる仕上げが可能である。
【0032】
本発明の塗料組成物を適用可能な基材としては、例えば、ガラス、磁器タイル、スレート、モルタル、コンクリート、サイディングボード、押出成形板、プラスチック、金属が挙げられる。また、既設塗膜の表面処理として用いることも可能である。得られる塗膜が親水性及び耐汚染性に優れるため、ガラス、サイディングボード、既設塗膜のように主に屋外で利用される基材に対して塗装することが望ましい。
【実施例】
【0033】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施のみに限定されるものではない。また、実施例中の「部」は特に断りがない限り「重量部」を表し、「%」は特に断りがない限り「重量%」を表す。
【0034】
[製造例1]
2L3つ口フラスコに、エチルシリケート40(コルコート社製)50.0部、エタノール400.0部を加え、撹拌しながら0.1%塩酸700.0部を加え、50〜60度で4時間加熱した。常温まで冷却した後、水で固形分を3%に調整したシリケート化合物の(部分)加水分解物A−1を得た。
【0035】
[製造例2]
2L3つ口フラスコに、エチルシリケート40(コルコート社製)50.0部、エタノール400.0部を加え、撹拌しながら1%ホウ酸水溶液700.0部を加えた。70〜80度で7時間加熱した。常温まで冷却した後、アンモニア水でpHを10程度に、固形分を3%に調整したシリケート化合物の(部分)加水分解物A−2を得た。
【0036】
[製造例3]
2L3つ口フラスコに、エチルシリケート48(コルコート社製)50.0部、エタノール400.0部を加え、撹拌しながら1%ホウ酸水溶液700.0部を加えた。70〜80度で7時間加熱した。常温まで冷却した後、アンモニア水でpHを10程度に、固形分を3%に調整したシリケート化合物の(部分)加水分解物A−3を得た。
【実施例1】
【0037】
シリケート化合物の(部分)加水分解物A−1(固形分3%、50.8部)、チタンキレート化合物B−1のイソプロピルアルコール溶液(固形分10%、15.4部)、バインダー成分C−1の水希釈液(固形分2%、16.9部)、オルガノシリカゾルD−1の水希釈液(固形分5%、16.9部)を混合し、オレンジ〜黄色の塗料組成物1を得た。
【実施例2】
【0038】
シリケート化合物の(部分)加水分解物A−1(固形分3%、37.5部)、チタンキレート化合物B−1のイソプロピルアルコール溶液(固形分10%、18.8部)、バインダー成分C−2の水希釈液(固形分2%、18.7部)、コロイダルシリカD−2の水希釈液(固形分5%、25.0部)を混合し、オレンジ〜黄色の塗料組成物2を得た。
【実施例3】
【0039】
シリケート化合物の(部分)加水分解物A−2(固形分3%、64.8部)、チタンキレート化合物B−2のイソプロピルアルコール溶液(固形分10%、7.4部)、バインダー成分C−1の水希釈液(固形分2%、18.5部)、オルガノシリカゾルD−1の水希釈液(固形分5%、9.3部)を混合し、黄色の塗料組成物3を得た。
【実施例4】
【0040】
シリケート化合物の(部分)加水分解物A−2(固形分3%、60.0部)、チタンキレート化合物B−1のイソプロピルアルコール溶液(固形分10%、20.0部)、バインダー成分C−2の水希釈液(固形分2%、20.0部)を混合し、オレンジ〜黄色の塗料組成物4を得た。
【実施例5】
【0041】
シリケート化合物の(部分)加水分解物A−2(固形分3%、60.0部)、ジルコニウムキレート化合物B−3のイソプロピルアルコール溶液(固形分10%、16.0部)、バインダー成分C−1の水希釈液(固形分2%、24.0部)を混合し、淡黄色の塗料組成物5を得た。
【実施例6】
【0042】
シリケート化合物の(部分)加水分解物A−3(固形分3%、64.3部)、チタンキレート化合物B−1のイソプロピルアルコール溶液(固形分10%、21.4部)、バインダー成分C−2の水希釈液(固形分2%、14.3部)を混合し、オレンジ〜黄色の塗料組成物6を得た。
【実施例7】
【0043】
シリケート化合物の(部分)加水分解物A−3(固形分3%、31.2部)、チタンキレート化合物B−1のイソプロピルアルコール溶液(固形分10%、6.2部)、バインダー成分C−1の水希釈液(固形分2%、43.8部)、オルガノシリカゾルD−1の水希釈液(固形分5%、18.8部)を混合し、黄色の塗料組成物7を得た。
[比較例1]
【0044】
チタンキレート化合物B−1のイソプロピルアルコール溶液(固形分10%、50.0部)、バインダー成分C−2の水希釈液(固形分2%、50.0部)を混合し、オレンジ色の比較塗料組成物1を得た。
[比較例2]
【0045】
シリケート化合物の(部分)加水分解物A−2(固形分3%、83.3部)、バインダー成分C−2の水希釈液(固形分2%、16.7部)を混合し、無色の比較塗料組成物2を得た。
[比較例3]
【0046】
シリケート化合物の(部分)加水分解物A−1(固形分3%、71.4部)、チタンキレート化合物B−1のイソプロピルアルコール溶液(固形分10%、28.6部)を混合し、オレンジ〜黄色の比較塗料組成物3を得た。
【0047】
[評価方法]
塗料組成物1〜7及び比較塗料組成物1〜3を刷毛で一様にガラス基材に塗装し、常温で3時間乾燥させた。
【0048】
(1)塗装時の発色性
塗装時の発色性を目視で評価した。
<評価基準>
○:塗装時に視認できる程度の発色がある。
△:塗料の発色が弱く、塗装時の視認が困難である。
×:塗料の発色がない。
【0049】
(2)発色性の変化
塗膜を3時間乾燥させた後における発色性の有無を目視で評価した。
<評価基準>
○:発色性が低下し、塗装直後の発色性が認められない。
×:塗装直後の発色性と比較して、ほとんど変化がない。
【0050】
(3)塗膜外観
塗膜乾燥後に目視で外観評価し、異常の有無を評価した。
<評価基準>
○:異常なし。
△:塗膜の一部に割れ、ハジキ等の異常がある。
×:塗膜全面に割れ、ハジキ等の異常がある。
【0051】
(4)親水性
水接触角の測定によって評価した。測定には、自動接触角計(KRUSS社製、型番DSA30S)を用いた。一般に、接触角が10度以下のものは超親水性を示すとされる。ここでは、ガラス基材の接触角と比較して、以下のように評価した。
<評価基準>
○:接触角が10度未満である。
○△:接触角が10度以上25度未満である。
△:接触角が25度以上40度未満である。
×:接触角が基材同等(40度)以上である。
【0052】
(5)耐汚染性
乾燥塗膜に5%カーボン水懸濁液を一様に塗布し、常温で4時間乾燥させた後、水で洗い流して汚れの残り方を比較した。
<評価基準>
○:汚れが残らなかった。
△:汚れが部分的に残った。
×:汚れがほとんど洗い流されなかった。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
表1において、表1(I)は前述の実施例1〜7と比較例1〜3の配合比率を示したもので、表1(II)は前述の(A)(B)(C)の3成分について、表1(I)の配合比率から前述の記載に基づき換算した固形分の100分率の配合重量比率を示したものである。
表2は前述の実施例1〜7と比較例1〜3の塗膜物性の結果の評価を示したものである。
表2に示す塗膜物性の結果より、(A)〜(C)の3つの成分を必須成分とする塗料組成物は、塗装時の視認性に優れ、親水性及び耐汚染性に優れる塗膜を形成した。特に、(A)成分は、塗膜の親水性及び耐汚染性への寄与が大きい。また、(B)成分は、塗装時の視認性への寄与が大きく、(C)成分は塗膜外観への寄与が大きい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の塗料組成物は、種々の基材に対して親水性及び耐汚染性を付与することが可能である。特に、屋外用途に用いることで、基材表面の汚染を防ぎ、正常な塗膜表面を長期にわたって保持することが可能である。