(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、例えばサービスエリア又はサービステーションなどに、充電済みのバッテリを用意しておき、電動車両のユーザが航続距離を延ばしたい場合に、用意されたバッテリを電動車両に積み増すことのできるサービス形態について検討している。
【0006】
このようなサービス形態では、積み増しされるバッテリと、元々電動車両に備わるバッテリとで、電気容量などの仕様と、充電率及び劣化度等の電池状態とが、積み増しの都度に異なることが想定される。このようなバッテリが積み増しされる場合、上記従来の複数のバッテリを有する電力供給装置と同様の制御を行っていたのでは、元々備わるバッテリの電力と積み増したバッテリの電力とを有効に利用することは難しい。
【0007】
本発明は、元々備わるバッテリと積み増しするバッテリとで仕様又は電池状態に大きな差があっても、両方のバッテリの電力を有効に利用できる電動車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、
走行用の電力を供給するバッテリと、
走行用の電力を供給する積み増しバッテリを着脱可能に搭載可能な搭載部と、
前記搭載部に搭載された積み増しバッテリと前記バッテリとを直列接続と並列接続とに切り替えるスイッチ部と、
前記バッテリの状態情報と前記搭載部に搭載された積み増しバッテリの状態情報とに基づいて前記スイッチ部を制御するスイッチ制御部と、
前記バッテリの電流又は前記搭載部に搭載された積み増しバッテリの電流を流す部品の温度を検出する温度センサと、
を備え
、
さらに、前記スイッチ制御部は、
前記バッテリの端子間電圧と前記搭載部に搭載された積み増しバッテリの端子間電圧との差電圧の値を取得し、
前記バッテリと前記搭載部に搭載された積み増しバッテリとが並列接続されたときに前記バッテリ又は前記積み増しバッテリに流れる電流が制限電流を超えない前記差電圧の閾値を計算し、
前記部品の温度に基づいて前記制限電流を補正し、かつ、
前記差電圧と前記閾値との比較に基づいて前記スイッチ部を並列接続に切り替えることを特徴とする電動車両である。
【0013】
請求項2記載の発明は、走行用の電力を供給するバッテリと、
走行用の電力を供給する積み増しバッテリを着脱可能に搭載可能な搭載部と、
前記搭載部に搭載された積み増しバッテリと前記バッテリとを直列接続と並列接続とに切り替えるスイッチ部と、
前記バッテリの状態情報と前記搭載部に搭載された積み増しバッテリの状態情報とに基づいて前記スイッチ部を制御するスイッチ制御部と、
走行路の変化予測に基づいて回生走行の発生、又は、予め定められた第1負荷よりも負荷の大きい高負荷走行の発生を予測する走行予測部と、
を備え、
前記スイッチ制御部は、
前記バッテリの端子間電圧と前記積み増しバッテリの端子間電圧との差電圧の値を取得し、
前記回生走行及び前記高負荷走行でない場合に、前記バッテリと前記積み増しバッテリとが並列接続されたときに前記バッテリ又は前記積み増しバッテリに流れる電流が制限電流を超えない前記差電圧の閾値を計算し、
前記走行予測部により予測された前記回生走行又は予測された前記高負荷走行の期間を避け、かつ、前記差電圧
が前記閾値
よりも大きくなった場合に、前記スイッチ部を並列接続に切替えることを特徴とする。
【0014】
請求項
3記載の発明は、請求項1
又は請求項2に記載の電動車両において、
前記バッテリの前記状態情報には前記バッテリの充電率と劣化度の情報が含まれ、
前記搭載部に搭載される積み増しバッテリの前記状態情報には前記積み増しバッテリの充電率と劣化度の情報が含まれることを特徴とする。
【0015】
請求項
4記載の発明は、請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の電動車両において、
前記搭載部は、前記搭載部に積み増しバッテリが搭載されたときに前記積み増しバッテリの電極と接続される接続電極を有し、
前記スイッチ部は、前記バッテリの電極と前記接続電極との間の電気的な接続を切り替える複数のリレーを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、元々備わるバッテリと積み増しバッテリとで仕様又は電池状態に大きな差があっても、両方の電力を有効に利用できるという効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電動車両の要部を示すブロック図である。
【0019】
本発明の実施形態に係る電動車両1は、例えばEV等であり、走行モータ11、インバータ12、固定バッテリ13、車両制御部14、バッテリ管理部15及びナビゲーションシステム16を備える。さらに、電動車両1は、バッテリ搭載部20、スイッチ部30及びスイッチ制御部40を備える。固定バッテリ13は、本発明に係るバッテリの一例に相当する。バッテリ搭載部20は、本発明に係る搭載部の一例に相当する。
【0020】
走行モータ11は、力行時、走行用の動力を発生し、図示しない電動車両1の駆動輪を駆動する。力行時、インバータ12は、直流電力を交流電力に変換して走行モータ11へ出力し、走行モータ11を駆動する。一方、回生時、走行モータ11は、電動車両1の駆動輪を制動し、制動エネルギーを回生電力に変換する。回生時、インバータ12は、走行モータ11から受けた回生電力を直流電力に変換して上流へ戻す。車両制御部14は、図示しない操作部(操舵ハンドル、アクセルペダル、ブレーキペダル及びシフトレバー等)の操作に基づいてインバータ12を制御し、これにより運転者の操作に応じた走行が実現される。
【0021】
固定バッテリ13は、例えばリチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池などであり、走行用の電力を蓄積する。固定バッテリ13は、高電圧バッテリと呼んでもよい。固定バッテリ13には、電池温度、端子間電圧、電流等を検出する状態センサ13aが付加されている。検出される端子間電圧には、開放端電圧(開放時測定電圧とも言う)、放電電圧(放電時測定電圧とも言う)又はこれら両方が含まれる。固定バッテリ13は、当初から電動車両1に組み付けられているバッテリである。固定バッテリ13には、メーカ工場又はディーラー工場でオプションとして増設される増設バッテリが含まれていてもよい。
【0022】
バッテリ搭載部20は、積み増しバッテリ23が着脱可能に搭載可能なユニットである。バッテリ搭載部20には、積み増しバッテリ23が搭載されたときに、積み増しバッテリ23の電極(陽極と陰極)及び状態センサ23aの出力端子がそれぞれ接続される接続電極21a、21b、22が設けられている。
【0023】
積み増しバッテリ23は、例えばリチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池などであり、走行用の電力を蓄積する。積み増しバッテリ23は、積み増し用の高電圧バッテリと呼んでもよい。積み増しバッテリ23には、電池温度、端子間電圧、電流等を検出する状態センサ23aが付加されている。検出される端子間電圧には、開放端電圧、放電電圧又はこれら両方が含まれる。積み増しバッテリ23は、例えばユーザ、サービスエリアのサービス員又はサービスステーションのサービス員が、電動車両1のバッテリ搭載部20に着脱可能なバッテリである。積み増しバッテリ23は、例えば、充電された状態で、高速道路のサービスエリア又はサービスステーション等に用意され、電動車両1のユーザの要求に基づき、バッテリ搭載部20に積み増しされる。
【0024】
スイッチ部30は、積み増しバッテリ23が搭載された場合に、固定バッテリ13と積み増しバッテリ23との接続を、直列接続と並列接続とに切替え可能である。スイッチ部30は、固定バッテリ13の電極(陽極と陰極)と、バッテリ搭載部20の接続電極21a、21bとの電気的な接続を切り替える複数のリレーA1〜A3を備える。リレーA1〜A3は、次のように切り替えられる。例えば、積み増しバッテリ23が非搭載の場合、リレーA1は閉にされて固定バッテリ13とインバータ12との間で電力伝送が可能となる。積み増しバッテリ23が搭載された場合、リレーA1、A2が閉でリレーA3が開にされることで、固定バッテリ13と積み増しバッテリ23とが並列接続され、これらとインバータ12との間で電力伝送が可能となる。さらに、リレーA1、A2が開でリレーA3が閉にされることで、固定バッテリ13と積み増しバッテリ23とが直列接続され、これらとインバータ12との間で電力伝送が可能となる。以下、上記の並列接続の状態と直列接続の状態とを、スイッチ部30の接続モードと呼ぶ。
【0025】
バッテリ管理部15は、固定バッテリ13の状態センサ13aから、固定バッテリ13の電池温度、端子間電圧、電流等の検出信号を受ける。さらに、積み増しバッテリ23が搭載される場合、バッテリ管理部15は、バッテリ搭載部20の接続電極22を介して、積み増しバッテリ23の状態センサ23aから、積み増しバッテリ23の電池温度、端子間電圧、電流等の検出信号を受ける。バッテリ管理部15は、これらの検出信号に基づいて、固定バッテリ13の電池状態及び搭載された積み増しバッテリ23の電池状態を計算し、管理する。各々の電池状態には、電池温度、端子間電圧、充電率を示すSOC(State of Charge)、放電可能電力、充電可能電力、劣化度(内部抵抗等)などが含まれる。
【0026】
バッテリ管理部15は、車両制御部14と通信を行って、インバータ12が伝送する力行時又は回生時の電力が最大出力電力又は最大入力電力を超えないよう、調整を行う。
【0027】
ナビゲーションシステム16は、測位装置、交通情報受信装置、ユーザの操作を入力する入力装置及び表示装置を備える。ナビゲーションシステム16は、ユーザが入力した行先情報に基づいて走行ルートを求め、表示装置を介してユーザに走行ルート情報を提供する。
【0028】
スイッチ制御部40は、スイッチ部30の接続モードを並列接続と直列接続とに切り替える制御処理を行う。スイッチ制御部40は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行する制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、信号を入出力するI/Oとを備えた、ECU(Electronic Control Unit)である。スイッチ制御部40においては、CPUが制御プログラムを実行することで各種の機能モジュールが実現される。制御モジュールには、リレー駆動制御部41、制限電流計算部42、閾値計算部43及び走行予測部44が含まれる。
【0029】
スイッチ制御部40は、バッテリ管理部15から、スイッチ部30の切替え制御に使用される固定バッテリ13の状態情報と積み増しバッテリ23の状態情報とを受ける。固定バッテリ13の状態情報及び積み増しバッテリ23の状態情報には、各々の端子間電圧(開放端電圧、放電電圧又はこれら両方)、SOC、内部抵抗及び電池温度などが含まれる。なお、これらの状態情報は、バッテリ管理部15を介さずに、固定バッテリ13の状態センサ13a、及び、積み増しバッテリ23の状態センサ23aから、スイッチ制御部40へ直接に送られてもよい。この場合、状態センサ13a、23aが、SOCと、内部抵抗などの劣化度の情報と、を計算する構成としてもよい。
【0030】
スイッチ制御部40は、さらに、1個又は複数の温度センサ35から、固定バッテリ13及び積み増しバッテリ23の電流が流れる回路の1個又は複数の発熱部品の温度を示す信号を受ける。例えばスイッチ部30の電力線及びリレーA1〜A3などが発熱部品に相当する。
【0031】
スイッチ制御部40は、さらに、ナビゲーションシステム16から、走行ルート情報及び現在位置情報を受信する。
【0032】
スイッチ制御部40は、固定バッテリ13の状態情報と、バッテリ搭載部20に搭載された積み増しバッテリ23の状態情報とに基づいて、スイッチ部30の切替え制御を行う。より具体的には、スイッチ制御部40は、固定バッテリ13の端子間電圧と積み増しバッテリ23の端子間電圧との差である差電圧と、上記の状態情報から計算される閾値との比較に基づいて、スイッチ部30の切替え制御を行う。
【0033】
詳細は後述するが、スイッチ制御部40は、次のような原理に基づいて切替え制御を行う。ここでは、固定バッテリ13と積み増しバッテリ23とを、それぞれ単に「バッテリ」と呼ぶ。
【0034】
一般に、SOCが低下するとバッテリの端子間電圧は低下する。2つのバッテリの電気容量が異なる場合、あるいは当初のSOCが異なる場合、2つのバッテリが直列接続されて電力の消費が進むと、2つのバッテリのSOCの変化に伴い、2つのバッテリの端子間電圧の差が大きくなる。端子間電圧に差がある状態で、接続モードを並列接続に切り替えると、端子間電圧の高いバッテリから低いバッテリへ電流が流れ、両方のバッテリのSOCが均衡する。端子間電圧の差が小さいと、この電流は小さく、端子間電圧の差が大きいと、この電流は大きくなる。以下、2つのバッテリの端子間電圧の差を「差電圧」と呼ぶ。
【0035】
仮に、差電圧が小さいときに、接続モードを並列接続に切り替え、SOCが均衡したら接続モードを直列接続に切り替える制御を適用した場合、直列接続に切替えてから短時間に差電圧が並列接続に切り替える大きさに達してしまう。このため、接続モードの切り替え回数が増大し、リレーA1〜A3の劣化が早まるという課題が生じる。一方、切替え回数を削減するために、差電圧を考慮せずに、接続モードの直列接続と並列接続とを切り替えた場合、差電圧が非常に大きいときに、接続モードが並列接続に切り替わるような状況が生じてしまう。このような場合、並列接続への切り替わり時に2つのバッテリ間に流れる電流が大きくなって、一方又は両方のバッテリの出力電流又は入力電流が、制限電流を超える恐れが生じる。
【0036】
そこで、スイッチ制御部40は、バッテリの電流が制限電流を超えない差電圧の閾値を計算し、差電圧と閾値とを比較してスイッチ部30の接続モードを切り替える。これにより、並列接続への切替え時に、バッテリの電流が制限電流を超えることを抑制しつつ、スイッチ部30の切り替え回数の増大を抑制することができる。上記の制限電流及び差電圧の閾値は、次のように求められる。
【0037】
一般に、バッテリは、超過できない上限電圧と下限電圧とを有する。バッテリから電流が出力されると、この電流が内部抵抗を通ることで電圧降下が生じ、バッテリの端子間電圧が低下する。同様に、バッテリに電流が入力されると、この電流が内部抵抗を通ることで電圧降下が生じ、バッテリの端子間電圧が上昇する。このため、スイッチ制御部40は、これらの端子間電圧が、上限電圧と下限電圧とを超えないように、バッテリの開放端電圧と内部抵抗とに基づいて制限電流を計算できる。
【0038】
さらに、2つのバッテリを並列接続への切り替える際、負荷との間で流れる電流がゼロである場合、2つのバッテリの内部抵抗と2つのバッテリの差電圧とから、2つのバッテリの間で流れる電流が決まる。負荷との間で流れる電流があれば、この電流を加味することで2つのバッテリに流れる電流を求めることができる。このため、スイッチ制御部40は、これらの電流が制限電流となる差電圧を求め、これに余裕分αを差し引いて、上記の閾値を計算する。
【0039】
さらに、バッテリには、上記の制限電流とは別に、安全に流すことのできる許容電流が予め定められている。また、バッテリに流れる電流は、リレー及び電力線などの電気部品を介して流れ、電気部品を発熱させるため、電気部品の温度が制限温度に近いときには、電流を制限する必要がある。このため、スイッチ制御部40は、バッテリの許容電流と、電気部品の温度に応じて、上記のように計算された制限電流を修正又は補正する処理を行う。
【0040】
なお、接続モードを直列接続から並列接続に切り替える際、バッテリに流れる電流は、2つのバッテリ間に流れる電流に加えて、負荷(インバータ12)へ供給される力行電流又は、負荷から戻される回生電流を含む。そして、これらの電流が大きく変動するときには、バッテリに流れる電流を予測しにくい。したがって、スイッチ制御部40は、力行電流又は回生電流が大きくなる走行を予測し、このような走行が行われる場合を避けて接続モードを並列接続に切り替える制御を行う。
【0041】
続いて、このような接続モードの切り替えを実現するパラメータ計算処理とスイッチ制御処理の一例について詳細に説明する。
【0042】
<パラメータ計算処理>
図2は、スイッチ制御部が実行するパラメータ計算処理の手順を示すフローチャートである。パラメータ計算処理は、積み増しバッテリ23が搭載された電動車両1の走行中、例えば所定期間ごとに繰り返し実行される。パラメータ計算処理は、主に、制限電流計算部42と閾値計算部43により実行される
【0043】
パラメータ計算処理が開始されると、先ず、制限電流計算部42は、現在の電池温度に応じた、固定バッテリ13及び積み増しバッテリ23の上限電圧Vmaxと下限電圧Vminとを取得する(ステップS1)。例えば、制限電流計算部42は、電池温度ごとの上限電圧及び下限電圧が示されたデータテーブルを予め記憶し、バッテリ管理部15から送られた各電池温度の情報に基づき、データテーブルを参照して、電池温度に対応する上限電圧と下限電圧とを取得する。
【0044】
次に、制限電流計算部42は、固定バッテリ13と積み増しバッテリ23の各々について、現在の端子間電圧Voと、内部抵抗Riとから、下限電圧Vminを下回る制限放電電流Iout_limitを計算する(ステップS2)。端子間電圧Vo及び内部抵抗Riの情報は、バッテリ管理部15から送られる。ここで、制限電流計算部42は、例えば、端子間電圧Voから、制限放電電流Iout_limitと内部抵抗Riとによる降下電圧を差し引いた電圧が、下限電圧Vminとなる電流を、制限放電電流Iout_limitとして求めればよい。
【0045】
次に、制限電流計算部42は、現在の端子間電圧Voと、内部抵抗Riとから、上限電圧Vmaxを上回る制限充電電流Iin_limitを計算する(ステップS3)。端子間電圧Vo及び内部抵抗Riの情報は、バッテリ管理部15から送られる。ここで、制限電流計算部42は、例えば、端子間電圧Voに、制限充電電流Iin_limitと内部抵抗Riとによる降下電圧を加えた電圧が、上限電圧Vmaxとなる電流を、制限充電電流Iin_limitとして求めればよい。制限電流計算部42は、これらの計算を、固定バッテリ13と積み増しバッテリ23の各々について行う。
【0046】
次に、制限電流計算部42は、計算された制限放電電流Iout_limitと予め定められた許容電流Imaxとを比較する(ステップS4)。許容電流Imaxは、例えばバッテリの仕様に定められた瞬時の最大許容電流であり、短い時間に安全に流すことができる電流を表わす。許容電流Imaxが電池温度により変化する場合、制限電流計算部42は、予め記憶したデータテーブルを用いて電池温度に対応する許容電流Imaxを取得すればよい。比較の結果、制限放電電流Iout_limitが許容電流Imaxを上回っていれば、制限電流計算部42は、制限放電電流Iout_limitの値を、許容電流Imaxの値に修正する(ステップS5)。
【0047】
ステップS4の判別の結果がNOの場合、あるいは、この結果がYESでステップS5の修正を行ったら、続いて、制限電流計測部42は、計算された制限充電電流Iin_limitと予め定められた許容電流Imaxとを比較する(ステップS6)。比較の結果、制限充電電流Iin_limitが許容電流Imaxを上回っていれば、制限電流計算部42は、制限充電電流Iin_limitの値を、許容電流Imaxの値に修正する(ステップS7)。制限電流計算部42は、ステップS4〜S7の比較及び修正の処理を、固定バッテリ13と積み増しバッテリ23の各々について行う。通常では、許容電流Imaxは、ステップS2、S3で計算された制限放電電流Iout_limit及び制限充電電流Iin_limitよりも大きく、ステップS4、S6の比較結果はNOとなる。
【0048】
続いて、制限電流計算部42は、温度センサ35により検出された部品温度に基づき、制限放電電流Iout_limitの値と制限充電電流Iin_limitの値とを補正する(ステップS8)。具体的には、部品温度が所定の閾値よりも高い場合、これら部品に流せる電流が制限される。この場合、制限電流計算部42は、制限放電電流Iout_limitの値と制限充電電流Iin_limitの値を、部品に流せる電流値に対応させて補正前の値よりも低い値に補正する。
【0049】
制限放電電流Iout_limitと制限充電電流Iin_limitとが求められたら、閾値計算部43は、これらに基づいて、接続モードを直列接続から並列接続に切り替える際の差電圧の閾値ΔVthを計算する(ステップS9)。差電圧とは、前述のように、固定バッテリ13の端子間電圧と、積み増しバッテリ23の端子間電圧との差を意味する。ステップS9では、閾値計算部43は、例えば、現在の差電圧から、接続モードを並列接続した場合に流れる電流の向きを求める。さらに、閾値計算部43は、固定バッテリ13と積み増しバッテリ23の各々について、電流の向きに対応した制限放電電流Iout_limit又は制限充電電流Iin_limitを抽出する。例えば、固定バッテリ13の端子間電圧が、積み増しバッテリ23の端子間電圧よりも小さければ、並列接続に切替えたときに、積み増しバッテリ23から固定バッテリ13に電流が流れる。この場合、閾値計算部43は、この電流の向きに対応した、積み増しバッテリ23の制限放電電流Iout_limitと、固定バッテリ13の制限充電電流Iin_limitとを抽出する。さらに、閾値計算部43は、抽出した制限放電電流Iout_limitと制限充電電流Iin_limitとのうち、値の小さい方を、総合的な制限電流I_limitとする。そして、閾値計算部43は、接続モードを並列接続に切替えたときに制限電流I_limitが流れる差電圧ΔV_limitに余裕分αを減じた値ΔV_limit−αを、差電圧の閾値ΔVthとして計算する。接続モードを並列接続に切り替える際、所定量以下の力行電流又は回生電流を許容する場合には、これら許容された力行電流又は回生電流が加わっても、制限電流I_limitを超えないように、余裕分αの値が採用されて、閾値ΔVthが計算される。
【0050】
<スイッチ制御処理>
図3は、スイッチ制御部が実行するスイッチ制御処理の手順を示すフローチャートである。スイッチ制御処理は、積み増しバッテリ23が搭載された電動車両1の走行中に継続的に実行される。スイッチ制御処理は、主に、リレー駆動制御部41及び走行予測部44により実行される。
【0051】
スイッチ制御処理が開始されると、先ず、リレー駆動制御部41は、現在の固定バッテリ13の端子間電圧と、現在の積み増しバッテリ23の端子間電圧とから、これらの差電圧を取得する(ステップS11)。これらの端子間電圧は、バッテリ管理部15から送られる。
【0052】
次に、リレー駆動制御部41は、現在のスイッチ部30の接続モードを確認し(ステップS12)、並列接続であれば、処理をステップS13へ進める一方、直列接続であれば、処理をステップS15へ分岐させる。
【0053】
その結果、並列接続であれば、リレー駆動制御部41は、差電圧の絶対値がほぼゼロになったか判別する(ステップS13)。
図3のステップS13において「ε」は小さい値を示す。判別の結果、YESであれば、リレー駆動制御部41は、スイッチ部30のリレーA1〜A3に駆動信号を出力し、接続モードを直列接続に切り替える(ステップS14)。一方、NOであれば、そのまま、処理がステップS11に戻される。
【0054】
ステップS12の分岐処理で直列接続と判別されると、リレー駆動制御部41は、差電圧が、パラメータ計算処理のステップS9で計算された閾値ΔVthよりも大きいか判別する(ステップS15)。その結果、大きければ、リレー駆動制御部41は、走行予測部44の予測結果に基づき、現在から所定期間に、高負荷走行又は回生走行の予測があるか否かを判別する(ステップS16)。高負荷走行とは、予め定められた第1負荷よりも負荷の大きい走行を示す。例えば、走行予測部44は、ナビゲーションシステム16の情報に基づき、例えば急な登り坂の走行、一般道路から高速道路への進入などが予測される場合、これらを高負荷走行と予測し、予測結果をリレー駆動制御部41へ伝える。また、走行予測部44は、ナビゲーションシステム16の情報に基づき、例えば急な下り坂の走行、高速道路から一般道路へ下りる走行などが予測される場合、これらを回生走行と予測し、予測結果をリレー駆動制御部41へ伝える。リレー駆動制御部41は、これらの予測結果に基づきステップS16の判別処理を実行する。ステップS16の作用については、後に
図8(A)及び
図8(B)を参照して詳述する。
【0055】
ステップS16の判別処理でNOと判別されると、リレー駆動制御部41は、スイッチ部30のリレーA1〜A3に駆動信号を出力し、接続モードを並列接続に切り替える(ステップS18)。一方、ステップS15の判別結果がNO、あるいは、ステップS16の判別結果がYESであれば、処理がステップS11に戻される。そして、リレー駆動制御部41は、ステップS11からの処理を繰り返す。
【0056】
<スイッチ制御によるSOC及び電池電流の変化例>
図4は、実施形態のスイッチ制御を説明する第1グラフ(A)及び第2グラフ(B)である。第1グラフ及び第2グラフは、同一の走行中における同一のスイッチ制御の例を示す。第1グラフは走行距離に対する固定バッテリ13と積み増しバッテリ23のSOCの変化を示し、第2グラフは固定バッテリ13と積み増しバッテリ23の電池電流の変化を示す。
【0057】
上述したパラメータ計算処理及びスイッチ制御処理に従うと、
図4(A)及び
図4(B)に示すように、主に、固定バッテリ13と積み増しバッテリ23とが直列接続されてインバータ12へ電力が供給される。直列接続されることで、インバータ12への出力電圧が上昇し、同じ電力を出力する場合でも出力電流を小さくできる。出力電流が小さくなることで、電流が流れる電力線及び閉状態のリレーにおける損失が小さくなり、電力伝送の効率が向上する。
【0058】
接続モードが直列接続にされ、走行距離が延びると、それに伴い、固定バッテリ13と積み増しバッテリ23とのSOCの差が広がり、両者の差電圧が大きくなる。そして、この差電圧が閾値に達すると、接続モードが並列接続に切替えられる(タイミングt1〜t5)。
図4(B)に示すように、差電圧が有る状態で並列接続に切替えられると、固定バッテリ13と積み増しバッテリ23との間に電流が流れる。しかし、差電圧の閾値ΔVthが適切に計算されているため、並列接続への切替え時に、固定バッテリ13の電流及び積み増しバッテリ23の電流が制限電流を超えてしまうことが抑制される。
【0059】
そして、接続モードが並列接続に切替えられてSOCの均衡が図られると、再び、接続モードが直列接続に切替えられて、高効率な電力供給が実現される。
【0060】
これにより、固定バッテリ13に蓄積された電力と積み増しバッテリ23に蓄積された電力とが有効にかつ効率的に利用され、電動車両1の航続距離を延ばすことができる。
【0061】
<スイッチ制御の比較例1>
図5は、比較例1のスイッチ制御を説明するグラフである。比較例1は、固定バッテリ13と積み増しバッテリ23とを直列接続のみとした例である。比較例1のスイッチ制御では、例えば、固定バッテリ13と積み増しバッテリ23の電気容量に違いがあると、当初のSOCが等しい場合でも、走行距離が延びるのに従って、固定バッテリ13と積み増しバッテリ23のSOCの差が広がる。そして、一方(例えば積み増しバッテリ23)の電力が先に尽きてしまう。この場合、他方(例えば固定バッテリ13)が蓄積している電力が残った状態で、走行モータ11を駆動できなくなる。すなわち、蓄積した電力を有効に使えず、航続距離が短くなる。
【0062】
<スイッチ制御の比較例2>
図6は、比較例2のスイッチ制御を説明するグラフである。比較例2は、例えば固定バッテリ13と積み増しバッテリ23とのSOCの差が所定値を超えたときのみ、接続モードを並列接続に切り替える制御例である。比較例2のスイッチ制御では、固定バッテリ13の電力と積み増しバッテリ23の電力とを使い切ることができる。しかし、スイッチ部30の切替え回数が増大し、リレーA1〜A3の劣化を早め、リレーA1〜A3が短い期間で寿命に至ってしまう。
【0063】
<スイッチ制御の比較例3>
図7は、比較例3のスイッチ制御を説明する第1グラフ(A)及び第2グラフ(B)である。比較例3は、固定バッテリ13と積み増しバッテリ23の電力を使い切れるように、かつ、スイッチ部30の切替え回数が最小になるように制御した例である。比較例3のスイッチ制御では、固定バッテリ13と積み増しバッテリ23の電力の使い切りが可能であり、しかもリレーA1〜A3の劣化を抑制できる。しかし、接続モードを直列接続から並列接続に切り替える際に、固定バッテリ13と積み増しバッテリ23との差電圧が非常に大きい状況が生じえる。このような場合、参照部C1に示すように、固定バッテリ13、積み増しバッテリ23又はこれら両方に、制限電流を超えた電流が流れてしまう。
【0064】
本実施形態のスイッチ制御によれば、比較例1〜比較例3に示した問題を抑制しつつ、航続距離の増大と電力効率の向上とを図ることができる。
【0065】
<高負荷走行時又は回生走行時のスイッチ制御>
図8は、直列接続から並列接続へ切り替える際の電池電流を説明する図であり、
図8(A)は力行時を示す図、
図8(B)は回生時を示す図である。ここでは、
図3のステップS16の作用について説明する。
【0066】
固定バッテリ13と積み増しバッテリ23とが並列接続されているとき、各部の電流I1、I2、I3は、固定バッテリ13の開放端電圧E1及び内部抵抗Ri1、積み増しバッテリ23の開放端電圧E2及び内部抵抗Ri2、並びに、負荷R0に応じて決定される。
【0067】
一方、負荷R0に流れる電流I3が小さければ、固定バッテリ13の電流I1と積み増しバッテリ23の電流I2とは、開放端電圧E1、E2と内部抵抗Ri1、Ri2とから予測できる。そして、この法則を利用することで、スイッチ制御部40の閾値計算部43は、電流I1、I2が制限電流を超えない差電圧の閾値ΔVthを計算している。
【0068】
このため、
図8(A)のように高負荷走行時に負荷R0に流れる電流I3が大きくなったり、
図8(B)のように回生走行時に負荷R0に比較的に大きな回生電流I3が流れたりすると、電流I3の影響により、電流I1、I2が予測値から大きく逸脱する。例えば、固定バッテリ13の電圧E1が積み増しバッテリ23の電圧E2より大きいとき、高負荷走行時には固定バッテリ13の放電電流I1が大きくなり、回生走行時には積み増しバッテリ23の充電電流I2が大きくなる。
【0069】
このような理由から、本実施形態のスイッチ制御部40は、走行予測部44が走行予測を行い、
図3のステップS16の判別処理により、高負荷走行又は回生走行の予測がある場合には、この期間を避けて、並列接続への切替えを行っている。このような制御により、接続モードを並列接続へ切り替える際、固定バッテリ13又は積み増しバッテリ23に予期しない大きな電流が流れることが抑制される。
【0070】
なお、固定バッテリ13及び積み増しバッテリ23の電力を、例えば空調装置などの他の装置に使用している構成を想定できる。このような構成では、他の装置に大きな電力が出力されていると、上述した高負荷走行時と同様に、接続モードを並列接続に切り替えた際に、電流I1又は電流I2が大きくなる場合がある。したがって、このような構成では、接続モードを並列接続へ切り替える際に、空調装置を停止するなど他の装置への電力供給を停止する制御を併用し、電流I1又は電流I2が制限電流を超えることを抑制してもよい。
【0071】
以上のように、本実施形態の電動車両1によれば、積み増しバッテリを着脱可能なバッテリ搭載部20を有し、スイッチ部30が固定バッテリ13と積み増しバッテリ23とを直列又は並列に接続できる。したがって、例えば電動車両1の走行中に、ユーザが航続距離を延ばしたい場合に、サービスステーション又はサービスエリアなどで積み増しバッテリ23を積み増しできる。これにより、長時間の充電を要さずに、電動車両1の航続距離を延ばすことができる。
【0072】
さらに、バッテリ搭載部20に積み増しバッテリ23を搭載する場合、搭載の都度、電気容量及びSOCなどが異なることが想定される。しかし、本実施形態の電動車両1によれば、固定バッテリ13の状態情報と積み増しバッテリ23の状態情報とに基づいて、スイッチ制御部40がスイッチ部30の接続モードを並列接続又は直列接続に切り替える。これにより、固定バッテリ13の電池状態及び積み増しバッテリ23の電池状態に応じた接続モードの切り替え制御が可能となる。例えば、接続モードの切り替え時に、固定バッテリ13又は積み増しバッテリ23に過大な電流が流れないように、かつ、スイッチ部30の切替え回数が増大しないような制御が可能となる。
【0073】
さらに、本実施形態の電動車両1によれば、スイッチ制御部40は、固定バッテリ13と積み増しバッテリ23との差電圧を取得し、差電圧に基づいてスイッチ部30の接続モードを切り替える。これにより、接続モードの切り替え時に、固定バッテリ13又は積み増しバッテリ23に過大な電流が流れないように、かつ、スイッチ部30の切替え回数が増大しないような制御を容易に実現できる。
【0074】
さらに、本実施形態の電動車両1によれば、接続モードが並列接続に切り替ったときに、固定バッテリ13と積み増しバッテリ23とに流れる電流が制限電流を超えない差電圧の閾値ΔVthを計算する。そして、リレー駆動制御部41は、固定バッテリ13と積み増しバッテリ23との差電圧と、閾値ΔVthとの比較に基づいて接続モードを並列接続に切り替える。これにより、並列接続への切り替え時に、固定バッテリ13と積み増しバッテリ23との電流が制限電流を超えることが抑制され、かつ、制限電流を超過しない範囲で、スイッチ部30の切替え回数の増大を抑制することができる。
【0075】
さらに、本実施形態の電動車両1によれば、固定バッテリ13又は積み増しバッテリ23の電流を流す部品の温度を検出する温度センサ35を有し、スイッチ制御部40は、温度センサ35が検出した温度を含めた情報に基づいて、スイッチ部30を切り替える。これにより、部品の温度が高く、制限電流を抑える必要がある場合に、これに対応したスイッチ部30の制御が可能となる。
【0076】
具体的には、スイッチ制御部40の制限電流計算部42が、部品の温度に基づいて制限電流を補正し、閾値計算部43が補正された制限電流に基づいて差電圧の閾値ΔVthを計算する。これにより、スイッチ部30の接続モードを並列接続に切り替える際、部品の温度に応じた制限電流を超える電流が流れてしまうことを抑制できる。
【0077】
さらに、本実施形態の電動車両1によれば、スイッチ制御部40の走行予測部44が、高負荷走行又は回生走行の発生を予測し、リレー駆動制御部41が、これらの走行期間を避けて接続モードを並列接続に切り替える。したがって、走行モータ11の力行電流又は回生電流により、並列接続への切り替え時に固定バッテリ13又は積み増しバッテリ23に流れる電流の予測が困難になる場合があっても、この期間を避けて、接続モードが切り替えられる。これにより、接続モードの切り替え時に、制限電流を超える電流が固定バッテリ13又は積み増しバッテリ23に流れてしまうことをより抑制できる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、スイッチ制御部40は、固定バッテリ13の端子間電圧と積み増しバッテリ23の端子間電圧とから差電圧を求めている。しかし、スイッチ制御部40は、例えば固定バッテリ13と積み増しバッテリ23とのSOCの値を端子間電圧に換算し、これらから差電圧を求めてもよいし、固定バッテリ13と積み増しバッテリ23とのSOCの差を差電圧に換算してもよい。その他、実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。