特許第6853826号(P6853826)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6853826非クロメート腐食防止ポリチオエーテルシーラント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853826
(24)【登録日】2021年3月16日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】非クロメート腐食防止ポリチオエーテルシーラント
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20210322BHJP
   C08K 3/38 20060101ALI20210322BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20210322BHJP
   C08K 3/24 20060101ALI20210322BHJP
   C08G 59/66 20060101ALI20210322BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20210322BHJP
   C08G 75/02 20160101ALN20210322BHJP
【FI】
   C08L63/00 C
   C08K3/38
   C08K3/32
   C08K3/24
   C08G59/66
   C09K3/10 F
   !C08G75/02
【請求項の数】29
【全頁数】59
(21)【出願番号】特願2018-541099(P2018-541099)
(86)(22)【出願日】2016年10月25日
(65)【公表番号】特表2018-532873(P2018-532873A)
(43)【公表日】2018年11月8日
(86)【国際出願番号】US2016058628
(87)【国際公開番号】WO2017074919
(87)【国際公開日】20170504
【審査請求日】2018年6月22日
(31)【優先権主張番号】14/922,316
(32)【優先日】2015年10月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502328466
【氏名又は名称】ピーアールシー−デソト インターナショナル,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーネルソン、ブルース
(72)【発明者】
【氏名】ストット、アダム
(72)【発明者】
【氏名】マニオン、ショーン
(72)【発明者】
【氏名】バーティノ、ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】スリヴァトサン、ナガラジャン
【審査官】 西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特表平11−513747(JP,A)
【文献】 特表2008−530270(JP,A)
【文献】 特表2001−522910(JP,A)
【文献】 特表2004−502826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00− 59/72
C09K 3/10− 3/12
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
C23F 11/00− 11/18
C23F 14/00− 17/00
C23C 22/00− 22/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チオール末端ポリチオエーテルプレポリマー、
ポリエポキシド硬化剤、及び
非クロメート腐食防止剤
を含む、組成物であって、
非クロメート腐食防止剤が、
2重量%〜6重量%のホウ酸亜鉛、
1重量%〜5重量%の2−ベンゾチアゾリルチオブタン二酸、
35重量%〜70重量%のオルトリン酸亜鉛、
20重量%〜50重量%のチタン酸ナトリウム、及び
3重量%〜8重量%のリン酸三カルシウム
を含み、重量%は非クロメート腐食防止剤の総重量に基づく、上記組成物。
【請求項2】
ポリエポキシド硬化剤が、エポキシノボラック樹脂、ビスフェノールA/エピクロロヒドリンエポキシ樹脂、又はそれらの組合せを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の組成物であって、
チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーが、式(1):
−R−[−S−(CH−O−[−R−O−]−(CH−S−R− (1)
[式中、
各Rは、独立して、C2−10n−アルカンジイル基、C3−6分枝状アルカンジイル基、C6−8シクロアルカンジイル基、C6−10アルカンシクロアルカンジイル基、複素環式基、及び−[(−CHR−)−X−]−(CHR−基から選択され、式中、各Rは、水素及びメチルから選択され、
各Rは、独立して、C2−10n−アルカンジイル基、C3−6分枝状アルカンジイル基、C6−8シクロアルカンジイル基、C6−14アルカンシクロアルカンジイル基、複素環式基、及び−[(−CH−)−X−]−(CH−基から選択され、
各Xは、独立して、O、S、−NH−及び−N(−CH)−から選択され、
mは0〜50の範囲であり、
nは1〜60の範囲の整数であり、
pは2〜6の範囲の整数であり、
qは1〜5の範囲の整数であり、及び
rは2〜10の範囲の整数である]
の構造を有する骨格を含む、上記組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の組成物であって、
チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーが、式(2a)のチオール末端ポリチオエーテルプレポリマー、式(2b)のチオール末端ポリチオエーテルプレポリマー、又はそれらの組合せを含み、
HS−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−SH (2a)
{HS−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−S−V’−}B (2b)
[式中、
各Rは、独立して、C2−10アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−14アルカンシクロアルカンジイル、C5−8ヘテロシクロアルカンジイル及び−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−から選択され、式中、
pは2〜6の整数であり、
qは1〜5の整数であり、
rは2〜10の整数であり、
各Rは、独立して水素又はメチルから選択され、及び
各Xは独立して−O−、−S−、−NH−及び−N(−CH)−から選択され、
各Rは、独立して、C1−10アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−14アルカンシクロアルカンジイル及び−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−から選択され、式中、p、q、r、R及びXはRについて定義したとおりであり、
mは0〜50の整数であり、
nは1〜60の整数であり、
Bはz価の多官能化剤B(−V)のコアを表し、式中、
zは3〜6の整数であり、
各Vは、チオール基と反応性である末端基を含む基であり、及び
各−V’−は、−Vとチオールとの反応から誘導される]
である、上記組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の組成物であって、
チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーが、
(a) 式(3)のジチオール:
HS−R−SH (3)
[式中、
はC2−6アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−10アルカンシクロアルカンジイル、C5−8ヘテロシクロアルカンジイル及び−[−(CHR−X−]−(CHR−から選択され、式中、
各Rは、独立して、水素及びメチルから選択され、
各Xは、独立して、−O−、−S−、−NH−及び−N(−CH)−から選択され、
pは2〜6の整数であり、
qは1〜5の整数であり、及び
rは2〜10の整数である]
と、
(b) 式(4)のジビニルエーテル:
CH=CH−O−[−R−O−]−CH=CH (4)
[式中、
各Rは、独立して、C1−10アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−14アルカンシクロアルカンジイル、及び−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−から選択され、式中、p、q、r、R及びXは、Rについて定義したとおりであり、
mは0〜50の整数である]
とを含む反応物の反応生成物を含む、
上記組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の組成物であって、
反応物が、
(c)多官能性化合物B(−V)
[式中、
Bは、z価の多官能化剤B(−V)のコアを表し、
zは3〜6の整数であり、及び
各−Vは、チオール基と反応性である末端基を含む部分である]
をさらに含む、上記組成物。
【請求項7】
組成物が、
30重量%〜65重量%のチオール末端ポリチオエーテルプレポリマー、
3重量%〜10重量%のポリエポキシド硬化剤、及び
1重量%〜12重量%の非クロメート腐食防止剤
を含み、
重量%は組成物の総重量に基づく、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
チオール末端ポリチオエーテルプレポリマー、
ポリエポキシド硬化剤、及び
非クロメート腐食防止剤
を含む、組成物であって、
非クロメート腐食防止剤が、
0.05重量%〜0.5重量%のホウ酸亜鉛、
0.05重量%〜0.4重量%の2−ベンゾチアゾリルチオブタン二酸、
1重量%〜6重量%のオルトリン酸亜鉛、
0.5重量%〜5重量%のチタン酸ナトリウム、及び
0.05重量%〜0.7重量%のリン酸三カルシウム
を含み、
重量%は組成物の総重量に基づく、上記組成物。
【請求項9】
アミン触媒を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
アミン触媒が、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、イミダゾール、又は上記のいずれかの組合せを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
組成物がシーラントとして配合される、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の組成物から調製された硬化シーラント。
【請求項13】
部品をシールする方法であって、
請求項11に記載の組成物を提供する工程、
請求項11に記載の組成物を部品の少なくとも一部に適用する工程、及び
前記適用された組成物を硬化させてシールされた部分を提供する工程
を含む、上記方法。
【請求項14】
チオール末端ポリチオエーテルプレポリマー、及び
非クロメート腐食防止剤の第1の部分
を含む第1のパート、並びに
ポリエポキシド、及び
非クロメート腐食防止剤の第2の部分
を含む第2のパート
を含む、シーラント系であって、
第1の部分が、
1重量%〜7重量%のオルトリン酸亜鉛、
0.5重量%〜5重量%のチタン酸ナトリウム、及び
0.1重量%〜0.7重量%のリン酸三カルシウム
を含み、重量%は第1のパートの総重量に基づき、
第2の部分が、
0.5重量%〜3.5重量%のホウ酸亜鉛、及び
0.5重量%〜3重量%の2−ベンゾチアゾリルチオブタン二酸、
を含み、重量%は第2のパートの総重量に基づく、
シーラント系であり、
第1のパートが、40重量%〜80重量%のチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーを含み、重量%は第1のパートの総重量に基づき、
第2のパートが、30重量%〜60重量%のポリエポキシドを含み、重量%は第2のパートの総重量に基づく、
上記シーラント系。
【請求項15】
請求項14に記載のシーラント系の第1のパート及び第2のパートを組み合わせることによって形成された硬化性シーラント組成物。
【請求項16】
2重量%〜6重量%のホウ酸亜鉛、
1重量%〜5重量%の2−ベンゾチアゾリルチオブタン二酸、
35重量%〜70重量%のオルトリン酸亜鉛、
20重量%〜50重量%のチタン酸ナトリウム、及び
3重量%〜8重量%のリン酸三カルシウム
を含み、
重量%は非クロメート腐食防止剤の総重量に基づく、非クロメート腐食防止剤。
【請求項17】
請求項15に記載の組成物から調製された硬化シーラント。
【請求項18】
請求項17に記載の硬化シーラントを含む部品。
【請求項19】
請求項17に記載の硬化シーラントを含む航空宇宙機。
【請求項20】
請求項16に記載の非クロメート腐食防止剤を含む組成物。
【請求項21】
請求項20に記載の組成物から調製された硬化組成物。
【請求項22】
請求項21に記載の硬化組成物を含む部品。
【請求項23】
請求項21に記載の硬化組成物を含む航空宇宙機。
【請求項24】
請求項1に記載の組成物から調製された硬化シーラント。
【請求項25】
請求項24に記載の硬化シーラントを含む部品。
【請求項26】
請求項24に記載の硬化シーラントを含む航空宇宙機。
【請求項27】
請求項8に記載の組成物から調製された硬化シーラント。
【請求項28】
請求項27に記載の硬化シーラントを含む部品。
【請求項29】
請求項27に記載の硬化シーラントを含む航空宇宙機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非クロメート腐食防止ポリチオエーテルシーラントに関する。シーラント組成物は、チオール−エポキシ、アミン−硬化化学(amine−cured chemistry)に基づいており、非クロメート腐食防止剤を含有する。この組成物は、航空宇宙シーラント用途に有用である。
【背景技術】
【0002】
航空宇宙シーラントは、厳しい機械的、化学的、及び環境的要件を満たさなければならない。航空宇宙シーラントは、金属表面、プライマーコーティング、中間コーティング、仕上げコーティング、及び経年コーティングを含む様々な表面に適用することができる。許容可能な耐燃料性、耐熱性、及び航空宇宙用途のための柔軟性を示す硫黄含有プレポリマーを含むシーラントは、例えば米国特許第6,172,179号明細書に記載されている。シーラント、例えば米国特許出願公開第2006/0270796号明細書、米国特許出願公開第2007/0287810号明細書、及び米国特許出願公開第2009/0326167号明細書に記載されているようなシーラントにおいて、硫黄含有プレポリマー、例えばチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーを、ポリエポキシド硬化剤と、アミン触媒の存在下で反応させて、硬化生成物を得ることができる。これらの系は、シーラントとして有用であり、航空宇宙産業の厳しい性能要件を満たすことができる。
【0003】
耐腐食性を付与するために、六価クロム(クロム(VI))化合物又はストロンチウムクロメート(SrCrO)などのクロメートをシーラント組成物に添加することができる。クロメートはアルミニウム表面に優れた耐腐食性を与えることができるが、重金属には毒性がある。したがって、航空宇宙シーラント用途に使用するための代替の非クロメート腐食防止剤を開発することが非常に望ましい。
【0004】
腐食防止シーラントは、以下の機能を提供すべきである:(1)迅速なポリマー退出(exit)及び短期間の金属不動態化;(2)金属表面の吸着及び二重層空間電荷の変更による不動態化;(3)中性、アルカリ性、及び酸性の環境において不溶性を持続する又は不溶性のままである水不溶性不動態化層を形成すること;(4)金属/電解質界面でのpHの制御又は酸の中和による不動態化;及び(5)湿った状態であるが液体浸漬されていない環境において、隣接する露出した裸の金属領域へのポリマーマトリックスからの輸送。
【0005】
非クロメート腐食防止剤の例は、米国特許第5,951,747号明細書及び米国特許第6,059,867号明細書に開示されており、それら各々はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0006】
米国特許第5,917,747号明細書は、ホスフェート、ホスホシリケート及びシリケートから選択される少なくとも1つの防止剤、並びにチタネート及び亜鉛塩から選択される少なくとも1つの防止剤を含むエポキシ/ポリチオエーテル系シーラント組成物の非クロメート腐食防止剤を開示している。より具体的には、非クロメート腐食防止剤は、ホウ酸などのボレート、(2−ベンゾチアゾリルチオ)コハク酸又はそのアミン塩などの硫黄含有スクシネート、リン酸二水素カルシウムなどのホスフェート、カルシウム、ストロンチウム亜鉛ホスホシリケートなどのホスホシリケート、酸化チタンナトリウムなどのチタネート、並びにリン酸亜鉛及び/又はシアナミド亜鉛などの亜鉛塩、を含むことができる。米国特許第5,917,747号明細書は、密着性、引張強度、伸び及び耐燃料性(fuel resistance)などの航空宇宙シーラント用途に重要な硬化シーラントの特性を開示していない。
【0007】
米国特許第6,059,867号明細書は、ホウ酸及びホウ酸塩、リン酸一水素二カリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、ピロリン酸ナトリウム、カルシウムストロンチウムホスホシリケート、カルシウム、ストロンチウム亜鉛ホスホシリケート及びテトラナトリウムオルトシリケートから選択される少なくとも1つの化合物;並びに(b)酸化チタンナトリウム、ホウ酸亜鉛などの無機亜鉛化合物、及び有機亜鉛化合物から選択される少なくとも1つの化合物を含む非クロメート腐食防止剤を開示している。評価された特定の防止剤の組合せには、ホウ酸、リン酸二水素カルシウム、リン酸一水素二カリウム、ピロリン酸ナトリウム、カルシウム、ストロンチウムホスホシリケート又はカルシウムストロンチウム亜鉛ホスホシリケート、テトラナトリウムオルトシリケート、(2−ベンゾチアゾリルチオ)コハク酸、酸化チタンナトリウム、リン酸亜鉛、及びシアナミド亜鉛の1つ以上が含まれる。配合物は、ガルバニック電流、電気化学インピーダンス、糸状試験、塩水噴霧試験、及びpH範囲浸漬試験についてのみ評価された。
【0008】
しかし、ポリエポキシドで硬化したチオール末端ポリチオエーテルシーラントと共に使用するための非クロメート腐食防止剤パッケージは、開発されておらず、航空宇宙シーラントとして有効であることも実証されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
非クロメート腐食防止、ポリエポキシド硬化ポリチオエーテル航空宇宙シーラントを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、組成物は、チオール末端ポリチオエーテルプレポリマー、ポリエポキシド硬化剤、及び非クロメート腐食防止剤を含むことができる。
【0011】
本発明によれば、チオール末端ポリチオエーテルプレポリマー、ポリエポキシド硬化剤、及び非クロメート腐食防止剤を含むことができる本発明の組成物から調製される硬化シーラントが提供される。
【0012】
本発明によれば、部品(part)をシールする方法は、チオール末端ポリチオエーテルプレポリマー、ポリエポキシド硬化剤、及び非クロメート腐食防止剤を含む組成物を提供する工程;組成物を部品の表面の少なくとも一部に適用(塗付)する工程;及び適用(塗付)された組成物を硬化させてシールされた部品を提供する工程、を含むことができる。
【0013】
本発明によれば、シーラント系(sealant system)は、チオール末端ポリチオエーテルプレポリマー及び非クロメート腐食防止剤の第1の部分(portion)を含む第1のパート;並びにポリエポキシド及び非クロメート腐食防止剤の第2の部分を含む第2のパートを含むことができる。
【0014】
本発明によれば、本開示のシーラント系の第1パート及び第2パートを組み合わせることによって形成された硬化性シーラント組成物が提供される。
【0015】
本発明によれば、非クロメート腐食防止剤は、2重量%〜6重量%のホウ酸亜鉛;1重量%〜5重量%の2−ベンゾチアゾリルチオブタン二酸;35重量%〜70重量%のオルトリン酸亜鉛;20重量%〜50重量%のチタン酸ナトリウム;及び3重量%〜8重量%のリン酸三カルシウムを含むことができ、ここで重量%は非クロメート腐食防止剤の総重量に基づく。
【0016】
ここで、本発明の特定の組成物、シーラント、及び方法について言及する。開示された組成物、シーラント、及び方法は、特許請求の範囲を限定するものではない。反対に、特許請求の範囲は、すべての代替、変更及び均等物を包含することが意図されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の説明の趣旨上、本開示によって提供される実施形態は、明示的に反対に指定されている場合を除いて、様々な代替の変形及び工程順序を想定し得ることが理解されるべきである。さらに、実施例及び他の指示がある場合を除き、例えば明細書及び特許請求の範囲で使用される成分の量を表すすべての数字は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対のことが示されていない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、得られるべき所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは、報告された有効数字の数に照らして及び通常の丸め技術を適用することによって少なくとも解釈されるべきである。
【0018】
本発明の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に示される数値は可能な限り正確に報告される。しかし、いずれの数値も、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含む。
【0019】
また、本明細書に列挙された任意の数値範囲は、そこに包含されるすべての下位範囲を含むことが意図されることが理解されるべきである。例えば、「1〜10」の範囲は、約1の記載された最小値と、約10の記載された最大値との間の(及びそれらを含む)すべての部分範囲を含むように意図されており、すなわち、約1以上の最小値及び約10以下の最大値を有する。また、本出願において、「又は」の使用は、「及び/又は」が特定の場合に明示的に使用され得るとしても、特に断らない限り「及び/又は」を意味する。
【0020】
2つの文字又は記号の間にないダッシュ(「−」)は、置換基又は2つの原子間の結合点を示すために使用される。例えば、化学基−CONHは、炭素原子を介して別の化学部分に結合している。
【0021】
「アルカンジイル」は、例えば1〜18個の炭素原子(C1−18)、1〜14個の炭素原子(C1−14)、1〜6個の炭素原子(C1−6)、1〜4個の炭素原子(C1−4)又は1〜3個の炭化水素原子(C1−3)を有する飽和、分枝状又は直鎖の非環式炭化水素基のジラジカルを指す。分枝状アルカンジイルは、最小で3個の炭素原子を有することが理解される。アルカンジイルは、C2−14アルカンジイル、C2−10アルカンジイル、C2−8アルカンジイル、C2−6アルカンジイル、C2−4アルカンジイル又はC2−3アルカンジイルであることができる。アルカンジイル基の例としては、メタン−ジイル(−CH−)、エタン−1,2−ジイル(−CHCH−)、プロパン−1,3−ジイル及びイソ−プロパン−1,2−ジイル(例えば、−CHCHCH−及び−CH(CH)CH−)、ブタン−1,4−ジイル(−CHCHCHCH−)、ペンタン−1,5−ジイル(−CHCHCHCHCH−)、ヘキサン−1,6−ジイル(−CHCHCHCHCHCH−)、ヘプタン1,7−ジイル、オクタン−1,8−ジイル、ノナン−1,9−ジイル、デカン−1,10−ジイル、ドデカン−1,12−ジイルなどが挙げられる。
【0022】
「アルカンシクロアルカン」とは、1つ以上のシクロアルキル及び/又はシクロアルカンジイル基及び1つ以上のアルキル及び/又はアルカンジイル基を有する飽和炭化水素基を指し、ここでシクロアルキル、シクロアルカンジイル、アルキル及びアルカンジイルが本明細書に定義される。各シクロアルキル及び/又はシクロアルカンジイル基は、C3−6、C5−6、シクロヘキシル又はシクロヘキサンジイルであることができる。各アルキル及び/又はアルカンジイル基は、C1−6、C1−4、C1−3、メチル、メタンジイル、エチル又はエタン−1,2−ジイルであることができる。アルカンシクロアルカン基は、C4−18アルカンシクロアルカン、C4−16アルカンシクロアルカン、C4−12アルカンシクロアルカン、C4−8アルカンシクロアルカン、C6−12アルカンシクロアルカン、C6−10アルカンシクロアルカン又はC6−9アルカンシクロアルカンであることができる。アルカンシクロアルカン基の例としては、1,1,3,3−テトラメチルシクロヘキサン及びシクロヘキシルメタンが挙げられる。
【0023】
「アルカンシクロアルカンジイル」は、アルカンシクロアルカン基のジラジカルを指す。アルカンシクロアルカンジイル基は、C4−18アルカンシクロアルカンジイル、C4−16アルカンシクロアルカンジイル、C4−12アルカンシクロアルカンジイル、C4−8アルカンシクロアルカンジイル、C6−12アルカンシクロアルカンジイル、C6−10アルカンシクロアルカンジイル、又はC6−9アルカンシクロアルカンジイルであることができる。アルカンシクロアルカンジイル基の例としては、1,1,3,3−テトラメチルシクロヘキサン−1,5−ジイル及びシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイルが挙げられる。
【0024】
「アルカンアレーン」は、1つ以上のアリール及び/又はアレーンジイル基及び1つ以上のアルキル及び/又はアルカンジイル基を有する炭化水素基を指し、ここでアリール、アレーンジイル、アルキル及びアルカンジイルは本明細書において定義される。各アリール及び/又はアレーンジイル基は、C6−12、C6−10、フェニル又はベンゼンジイルであることができる。各アルキル及び/又はアルカンジイル基は、C1−6、C1−4、C1−3、メチル、メタンジイル、エチル又はエタン−1,2−ジイルであることができる。アルカンアレーン基は、C4−18アルカンアレーン、C4−16アルカンアレーン、C4−12アルカンアレーン、C4−8アルカンアレーン、C6−12アルカンアレーン、C6−10アルカンアレーン、又はC6−9アルカンアレーンであることができる。アルカンアレーン基の例としては、ジフェニルメタンが挙げられる。
【0025】
「アルカンアレーンジイル」はアルカンアレーン基のジラジカルを指す。アルカンアレーンジイル基は、C4−18アルカンアレーンジイル、C4−16アルカンアレーンジイル、C4−12アルカンアレーンジイル、C4−8アルカンアレーンジイル、C6−12アルカンアレーンジイル、C6−10アルカンアレーンジイル又はC6−9アルカンアレーンジイルである。アルカンアレーンジイル基の例としては、ジフェニルメタン−4,4’−ジイルが挙げられる。
【0026】
「アルケニル」基は、基(R)C=C(R)を指す。「アルケニル」基は、構造−C(R)=C(R)を有し、ここでアルケニル基は末端基であり、より大きな分子に結合する。そのような実施形態では、各Rは、例えば、水素及びC1−3アルキルから選択され得る。各Rは水素であることができ、アルケニル基は構造−CH=CHを有することができる。
【0027】
「アルコキシ」は−OR基を指し、式中のRは本明細書で定義されるようなアルキルである。アルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ及びn−ブトキシが挙げられる。アルコキシ基は、C1−8アルコキシ、C1−6アルコキシ、C1−4アルコキシ又はC1−3アルコキシであることができる。
【0028】
「アルキル」は、例えば、1〜20個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、1〜4個の炭素原子又は1〜3個の炭素原子を有する飽和、分枝状又は直鎖の非環式炭化水素基のモノラジカルを指す。分枝状アルキルは、最小で3個の炭素原子を有することが理解される。アルキル基は、C2−6アルキル、C2−4アルキル又はC2−3アルキルであることができる。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ヘキシル、n−デシル及びテトラデシルが挙げられる。アルキル基は、C2−6アルキル、C2−4アルキル又はC2−3アルキルであることができる。分枝状アルキルは、少なくとも3個の炭素原子を有することが理解される。
【0029】
「アレーンジイル」は、ジラジカル単環式又は多環式芳香族基を指す。アレーンジイル基の例としては、ベンゼン−ジイル及びナフタレン−ジイルが挙げられる。アレーンジイル基は、C6−12アレーンジイル、C6−10アレーンジイル、C6−9アレーンジイル、又はベンゼン−ジイルであることができる。
【0030】
「硬化性組成物」は、反応して硬化組成物を形成することができる少なくとも2つの反応物を含む組成物を指す。例えば、硬化性組成物は、反応して硬化したポリマーネットワークを形成できるチオール末端ポリチオエーテルプレポリマー及びポリエポキシドを含むことができる。硬化性組成物は、硬化反応のための触媒及び他の成分、例えば充填剤、顔料及び接着促進剤を含んでいてもよい。硬化性組成物は、室温及び湿度のような周囲条件で硬化可能であってもよく、又は硬化反応を開始及び/又は促進するために高温、水分又は他の条件に曝される必要があり得る。硬化性組成物は、最初に、ベース成分と促進剤成分とを含む2パート型組成物として提供されてもよい。ベース組成物は、チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーのような硬化反応に関与する反応物の1つを含有でき、促進剤組成物はポリエポキシドのような他の反応物を含有できる。2つの組成物は、使用直前に混合して、硬化性組成物を提供することができる。硬化性組成物は、特定の適用方法に適した粘度を示すことができる。例えば、ブラシオン用途に適したクラスAシーラント組成物は、1ポイズ〜500ポイズの粘度によって特徴付けることができる。フィレットシール用途に適したクラスBシーラント組成物は、4,500ポイズ〜20,000ポイズの粘度によって特徴付けることができる。フェイシール用途に適したクラスCシーラント組成物は、500ポイズ〜4,500ポイズの粘度によって特徴付けることができる。シーラント系の2つの成分を合わせて混合した後、硬化反応が進行し、硬化性組成物の粘度が上昇し得、ある時点ではもはや作用しなくなる。2つの成分が混合されて硬化性組成物を形成するときから、硬化性組成物が意図された目的のために表面にもはや合理的に又は実際に適用できなくなるときまでの間の期間を、作用時間と呼ぶことができる。理解されるように、作用時間は、例えば、硬化化学、適用方法、及び温度を含む多くの要因に依存し得る。作用時間は、ポットライフとも称され得る。一旦硬化性組成物が表面に適用されると(及び適用中に)、硬化反応は硬化組成物が提供されるように進行できる。硬化した組成物は、不粘着性表面を生じ、ある期間にわたって完全に硬化する。硬化性組成物は表面が不粘着性である場合に硬化したとみなすことができ、又は、例えば表面のショアA硬度がクラスCシーラントについては25Aであり、クラスBシーラントについて30Aである場合に、硬化したとみなすことができる。
【0031】
「シクロアルカンジイル」は、ジラジカル飽和単環式又は多環式炭化水素基を指す。シクロアルカンジイル基は、C3−12シクロアルカンジイル、C3−8シクロアルカンジイル、C3−6シクロアルカンジイル又はC5−6シクロアルカンジイルであることができる。シクロアルカンジイル基の例としては、シクロヘキサン−1,4−ジイル、シクロヘキサン−1,3−ジイル、及びシクロヘキサン−1,2−ジイルが挙げられる。
【0032】
「シクロアルキル」は、飽和単環式又は多環式炭化水素モノラジカル基を指す。シクロアルキル基は、C3−12シクロアルキル、C3−8シクロアルキル、C3−6シクロアルキル又はC5−6シクロアルキルであることができる。
【0033】
「ヘテロアルカンジイル」は、炭素原子の1つ以上がヘテロ原子、例えばN、O、S又はPで置き換えられたアルカンジイル基を指す。ヘテロアルカンジイルにおいて、1つ以上のヘテロ原子はN及びOから選択できる。
【0034】
「ヘテロシクロアルカンジイル」は、炭素原子の1つ以上がヘテロ原子、例えばN、O、S又はPで置き換えられたアルカンジイル基を指す。ヘテロシクロアルカンジイルにおいて、1つ以上のヘテロ原子はN及びOから選択できる。
【0035】
「ヘテロシクロアレーンジイル」は、炭素原子の1つ以上がヘテロ原子、例えばN、O、S又はPで置き換えられたアルカンジイル基を指す。ヘテロシクロアレーンジイルにおいて、1つ以上のヘテロ原子はN及びOから選択できる。
【0036】
「ヘテロシクロアルカンジイル」は、炭素原子の1つ以上がヘテロ原子、例えばN、O、S又はPで置き換えられたアルカンジイル基を指す。ヘテロシクロアルカンジイルにおいて、1つ以上のヘテロ原子はN及びOから選択できる。
【0037】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」は、オリゴマー、ホモポリマー及びコポリマーを指す。特に断らない限り、分子量は、例えば当該技術分野で認識されている様式でポリスチレン標準を用いたゲル浸透クロマトグラフィによって決定される場合に「Mn」として示されるポリマー材料の数平均分子量である。ポリマーは、プレポリマーも含む。本開示によって提供されるチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーなどのプレポリマーは、硬化剤と組み合わされて硬化性組成物を提供することができ、これが硬化して硬化ポリマーネットワークを提供することができる。
【0038】
「置換された」とは、1つ以上の水素原子がそれぞれ独立して同一又は異なる置換基で置き換えられている基を指す。置換基は、ハロゲン、−S(O)OH、−S(O)、−SH、−SRから選択でき、式中RはC1−6アルキル、−COOH、−NO、−NRであり、式中、各Rは、独立して、水素及びC1−3アルキル、−CN、=O、C1−6アルキル、−CF、−OH、フェニル、C2−6ヘテロアルキル、C5−6ヘテロアリール、C1−6アルコキシ、及び−CORから選択され、式中、RはC1−6アルキルである。置換基は、−OH、−NH及びC1−3アルキルから選択できる。
<組成物>
【0039】
本開示によって提供される組成物は、非クロメート腐食防止剤、チオール末端ポリチオエーテルプレポリマー、及びポリエポキシド硬化剤を含むことができる。
【0040】
航空宇宙シーラント用途では、非クロメート腐食防止シーラントが、周囲環境及び航空宇宙の溶媒及び流体への曝露後に下にある基材表面の腐食を防止又は低減することが望ましい。例えば、航空宇宙シーラント用途では、高温で航空宇宙溶媒に曝露された後、広範囲の基材に対して良好な接着性を提供するシーラントが必要となり得る。例えば、航空宇宙基材には、Alodine(登録商標)アルミニウム(MIL−C−5541)、陽極酸化アルミニウム(AMS2471)、カドミウムメッキ鋼(QQ−P−416(AMS4130))、チタン(AMS4911)、マグネシウム(AMS4376)、エポキシプライマー(MIL−PRF−23377)、グラファイトエポキシ(AS4/3501−6)が含まれる。基材表面を識別する仕様書は、軍用仕様書(MIL−C)、軍事性能仕様書(MIL−PRF)、又は自動車技術者協会(SAE)航空宇宙材料規格(AMS)を指す。関連航空宇宙溶媒の例としては、ジェット基準液(JRF)タイプI(AMS2629)、塩(3%NaCl)水、航空機作動液(MIL−PRF−83282)及び航空機潤滑油(MIL−PRF−7808及びMIL−PRF−23699)が挙げられる。試験仕様は、一般に、140°F(60℃)の温度で2日間(48時間)溶媒中に、適用された硬化シーラントを有する基材を浸漬した後に、シーラントが少なくとも20pliの剥離強度(peel strength)及び100%の凝集破壊(cohesive failure)を示すことを必要とする。
【0041】
耐腐食性を提供するためのシーラントの能力は、例えば高温での溶媒浸漬を含む様々な加速試験条件への曝露後に、硬化シーラントと基材との間の接着を測定することによって決定することができる。接着は、適切な試験片を用いて剥離強度及びパーセント(%)凝集を測定することによって決定することができる。加速試験条件に曝された後に少なくとも20psiの剥離強度及び100%凝集破壊を示す航空宇宙基材上に適用されたシーラントは、航空宇宙用途に適しているとみなすことができる。
<非クロメート腐食防止剤>
【0042】
本開示によって提供される組成物は、非クロメート腐食防止剤(non−chromate corrosion inhibitor)を含有することができる。
【0043】
本開示によって提供される非クロメート腐食防止剤は、ホウ酸亜鉛、2−ベンゾチアゾリルチオブタン二酸、オルトリン酸亜鉛、チタン酸ナトリウム、及びリン酸三カルシウムを含むことができる。
【0044】
本開示によって提供される非クロメート腐食防止剤は、2重量%〜6重量%のホウ酸亜鉛;1重量%〜5重量%の2−ベンゾチアゾリルチオブタン二酸;35重量%〜70重量%のオルトリン酸亜鉛;20重量%〜50重量%のチタン酸ナトリウム;及び3重量%〜8重量%のリン酸三カルシウムを含むことができ、ここで重量%は非クロメート腐食防止剤の総重量に基づく。
【0045】
本開示によって提供される非クロメート腐食防止剤は、3重量%〜5重量%のホウ酸亜鉛;2重量%〜4重量%の2−ベンゾチアゾリルチオブタン二酸;40重量%〜60重量%のオルトリン酸亜鉛;25重量%〜45重量%のチタン酸ナトリウム;及び4重量%〜7重量%のリン酸三カルシウムを含むことができ、ここで重量%は非クロメート腐食防止剤の総重量に基づく。
【0046】
本開示によって提供される硬化性組成物は、1重量%〜12重量%の非クロメート腐食防止剤、3重量%〜9重量%、又は5重量%〜7重量%の非クロメート腐食防止剤を含むことができ、ここで重量%は、硬化性組成物の総重量に基づく。
【0047】
本開示によって提供される硬化性組成物は、0.05重量%〜0.5重量%のホウ酸亜鉛;0.05重量%〜0.4重量%の2−ベンゾチアゾリルチオブタン二酸;1重量%〜6重量%のオルトリン酸亜鉛;0.5重量%〜5重量%のチタン酸ナトリウム;及び0.05重量%〜0.7重量%のリン酸三カルシウムを含むことができ、ここで重量%は硬化性組成物の総重量に基づく。
【0048】
本開示によって提供される硬化性組成物は、0.15重量%〜0.35重量%のホウ酸亜鉛;0.1重量%〜0.3重量%の(2−ベンゾチアゾリルチオブタン二酸;2.5重量%〜4.5重量%のオルトリン酸亜鉛;1重量%〜3重量%のチタン酸ナトリウム;及び0.25重量%〜0.45重量%のリン酸三カルシウムを含むことができ、ここで重量%は硬化性組成物の総重量に基づく。
【0049】
本開示により提供される硬化性組成物を用いて調製された硬化シーラントには、ホウ酸亜鉛、2−ベンゾチアゾリルチオブタン二酸、オルトリン酸亜鉛、チタン酸ナトリウム、及びリン酸三カルシウムの同じ又は類似の重量%含有量が存在できる。
【0050】
本開示によって提供される組成物は、ベース組成物及び促進剤(accelerator)組成物を含む2パート型組成物として提供されることができる。ベース組成物は、チオール末端ポリチオエーテルプレポリマー、アミン触媒、充填剤、接着促進剤、及び非クロメート腐食防止剤の一部、例えばオルトリン酸亜鉛、チタン酸ナトリウム及びリン酸三カルシウムを含むことができる。促進剤組成物は、ポリエポキシド硬化剤、充填剤、接着促進剤、及び非クロメート腐食防止剤の一部、例えばホウ酸亜鉛及び2−ベンゾチアゾリルチオブタン二酸を含むことができる。
【0051】
ベース組成物は、40重量%〜80重量%のチオール末端ポリチオエーテルプレポリマー;1重量%〜7重量%のオルトリン酸亜鉛;0.5重量%〜5重量%のチタン酸ナトリウム;及び0.1重量%〜0.7重量%のリン酸三カルシウムを含むことができ、ここで重量%はベース組成物の総重量に基づく。
【0052】
ベース組成物は、50重量%〜70重量%のチオール末端ポリチオエーテルプレポリマー;2重量%〜6重量%のオルトリン酸亜鉛;2重量%〜3重量%のチタン酸ナトリウム;及び0.3重量%〜0.5重量%のリン酸三カルシウムを含むことができ、ここで重量%はベース組成物の総重量に基づく。
【0053】
促進剤組成物は、30重量%〜60重量%のポリエポキシド;及び0.5重量%〜3.5重量%のホウ酸亜鉛;0.5重量%〜3重量%の2−ベンゾチアゾリルチオブタン二酸を含むことができ、ここで重量%はベース組成物の総重量に基づく。
【0054】
促進剤組成物は、40重量%〜50重量%のポリエポキシド;及び1重量%〜2重量%のホウ酸亜鉛;1重量%〜2重量%の2−ベンゾチアゾリルチオブタン二酸を含むことができ、ここで重量%はベース組成物の総重量に基づく。
【0055】
ベース組成物と促進剤組成物とを組み合わせて混合して、硬化性組成物を提供することができる。例えば、10部〜30部の促進剤組成物を、80部〜120部のベース組成物と組み合わせることができ;又は15部〜25部の促進剤組成物を90部〜110部のベース組成物と組み合わせて、本開示の硬化性組成物を提供することができ、ここで、部は重量%に基づく。
<チオール末端ポリチオエーテルプレポリマー>
【0056】
本開示によって提供される硬化性組成物を含む組成物は、チオール末端(thiol−terminated)ポリチオエーテルプレポリマーを含むことができる。
【0057】
チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーは、異なるチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーの混合物を含んでいてもよく、ここで異なるチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーが同一又は異なる官能価を有し得る。チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーは、2〜6、2〜4、2〜3又は2.05〜2.8の平均官能価を有することができる。例えば、チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーは、二官能性チオール末端ポリチオエーテルプレポリマー、三官能チオール末端ポリチオエーテルプレポリマー、及びそれらの組合せを含むことができる。
【0058】
適切なチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーの例は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,172,179号に開示されている。チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーは、PRC−DeSoto International Inc.,Sylmar,CAから入手可能なPermapol(登録商標)P3.1Eを含む。チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーは、室温で液体であることができ、ガラス転移温度Tgが、例えば、AMS3267(4.5.4.7)(航空宇宙材料仕様書)、MIL−S−8802E(3.3.12)(軍用仕様書)、MIL−S−29574、又はASTM D522−88(米国材料試験協会)を用いて決定される場合に、−50℃未満、−55℃未満、又は−60℃未満である。チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーは、500ダルトン〜20,000ダルトン、2,000ダルトン〜5,000ダルトン、又は3,000ダルトン〜4,000ダルトンの範囲の数平均分子量を示す。
【0059】
チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーは、式(1)の構造を含む骨格を有するポリチオエーテルプレポリマーを含むことができる:
−R−[−S−(CH−O−[−R−O−]−(CH−S−R− (1)
式中、
各Rは、独立して、C2−10n−アルカンジイル基、C3−6分枝状アルカンジイル基、C6−8シクロアルカンジイル基、C6−10アルカンシクロアルカンジイル基、複素環式基、−[(−CHR−)−X−]−(CHR−基から選択され、式中、各Rは、水素及びメチルから選択され;
各Rは、独立して、C2−10n−アルカンジイル基、C3−6分枝状アルカンジイル基、C6−8シクロアルカンジイル基、C6−14アルカンシクロアルカンジイル基、複素環式基、及び−[(−CH−)−X−]−(CH−基から選択され;
各Xは、独立して、O、S、−NH−及び−N(−CH)−から選択され;
mは0〜50の整数であり;
nは1〜60の整数であり;
pは2〜6の整数であり;
qは1〜5の整数であり;及び
rは2〜10の整数である。
【0060】
チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーは、式(2a)のチオール末端ポリチオエーテルプレポリマー、式(2b)のチオール末端ポリチオエーテルプレポリマー、又はそれらの組合せから選択されるチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーを含むことができる:
HS−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−SH (2a)
{HS−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−S−V’−}B (2b)
式中:
各Rは、独立して、C2−10アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−14アルカンシクロアルカンジイル、C5−8ヘテロシクロアルカンジイル及び−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−から選択され、式中:
pは2〜6の整数であり;
qは1〜5の整数であり;
rは2〜10の整数であり;
各Rは、独立して水素又はメチルから選択され;及び
各Xは独立して−O−、−S−又は−NR−から選択され、式中Rは水素及びメチルから選択され;
各Rは、独立して、C1−10アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−14アルカンシクロアルカンジイル及び−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−から選択され、式中、p、q、r、R及びXはRについて定義したとおりであり;
mは0〜50の整数であり;
nは1〜60の整数であり;
Bはz価の多官能化剤B(−V)のコアを表し、式中:
zは3〜6の整数であり;
各Vは、チオール基と反応性の末端基を含む基であり;及び
各−V’−は、−Vとチオールとの反応から誘導される。
【0061】
式(1)、式(2a)及び式(2b)のプレポリマーにおいて、Rは、−[(−CH−)−X−]−(CH−であることができ、式中、pは2であることができ、Xは−O−であることができ、qは2であることができ、rは2であることができ、Rはエタンジイルであることができ、mは2であることができ、nは9であることができる。
【0062】
式(1)、式(2a)及び式(2b)のプレポリマーにおいて、Rは、C2−6アルカンジイル及び−[−(CHR−X−]−(CHR−から選択することができる。
【0063】
式(1)、式(2a)及び式(2b)のプレポリマーにおいて、Rは−[−(CHR−X−]−(CHRであることができ、式中Xは−O−であることができ、又はXは−S−であることができる。
【0064】
式(1)、式(2a)及び式(2b)のプレポリマーにおいて、Rは−[−(CHRsp−X−]−(CHR−であることができ、pは2であることができ、rは2であることができ、qは1であることができ、Xは−S−であることができ;又はpは2であることができ、qは2であることができ、rは2であることができ、Xは−O−であることができ;又はpは2であることができ、rは2であることができ、qは1であることができ、Xは−O−であることができる。
【0065】
式(1)、式(2a)、及び式(2b)のプレポリマーにおいて、Rは−[−(CHR−X−]−(CHR−であることができる場合、各Rは水素であることができる場合、又は少なくとも1つのRはメチルであることができる。
【0066】
式(1)、式(2a)及び式(2b)のプレポリマーにおいて、各Rは同じであることができ、又は少なくとも1つのRは異なることができる。
【0067】
このようなポリチオエーテルプレポリマーを調製するために、様々な方法を使用することができる。適切なチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーの例及びそれらの製造方法は、例えば、米国特許第6,172,179号明細書に記載されている。そのようなチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーは、二官能性、すなわち2つのチオール末端基を有する線状プレポリマー、又は多官能性、すなわち3つ以上のチオール末端基を有する分枝状プレポリマーであってもよい。チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーはまた、二官能性及び多官能性チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーの組合せを含んでいてもよい。適切なチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーは、例えばPRC−DeSoto International Inc.,Sylmar,CAからのPermapol(登録商標)P3.1Eとして市販されている。
【0068】
適切なチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーは、ジビニルエーテル又はジビニルエーテルの混合物を過剰のジチオール又はジチオールの混合物と反応させることによって製造されてもよい。例えば、チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーの調製に用いるのに適したジチオールには、式(3)のもの、本明細書に開示される他のジチオール、又は本明細書に開示されるジチオールのいずれかの組合せが含まれる。
【0069】
ジチオールは、式(3)の構造を有することができる:
HS−R−SH (3)
式中:
は、C2−6アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−10アルカンシクロアルカンジイル、C5−8ヘテロシクロアルカンジイル及び−[−(CHR−X−]−(CHR−から選択され;
式中:
各Rは、独立して、水素及びメチルから選択され;
各Xは、独立して、−O−、−S−、−NH−及び−N(−CH)−から選択され;
pは2〜6の整数であり;
qは1〜5の整数であり;及び
rは2〜10の整数である。
【0070】
式(3)のジチオールにおいて、Rは、−[−(CHR−X−]−(CHR−であることができる。
【0071】
式(3)のジチオールにおいて、Xは−O−及び−S−から選択することができ、故に式(3)の−[−(CHR−X−]−(CHR−は−[(−CHR−)−O−]−(CHR−)−又は−[(−CHR−)−S−]−(CHR−であることができる。p及びrは両方とも2であることができる場合などのように、p及びrは等しくてもよい。
【0072】
式(3)のジチオールにおいて、Rは、C2−6アルカンジイル及び−[−(CHR−X−]−(CHR−から選択することができる。
【0073】
式(3)のジチオールにおいて、Rは、−[−(CHR−X−]−(CHR−であることができ、Xは、−O−であることができ、Xは−S−であることができる。
【0074】
式(3)のジチオールにおいて、Rは−[−(CHR−X−]−(CHR−であることができ、pは2であることができ、rは2であることができ、qは1であることができ、Xは−S−であることができ;又はpは2であることができ、qは2であることができ、rは2であることができ、Xは−O−であることができ;又はpは2であることができ、rは2であることができ、qは1であることができ、Xは−O−であることができる。
【0075】
式(3)のジチオールにおいて、Rは−[−(CHR−X−]−(CHR−であることができ、各Rは水素であることができ、又は少なくとも1つのRはメチルであることができる。
【0076】
適切なジチオールの例としては、1,2−エタンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,3−ブタンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,3−ペンタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,3−ジメルカプト−3−メチルブタン、ジペンテンジメルカプタン、エチルシクロヘキシルジチオール(ECHDT)、ジメルカプトジエチルスルフィド、メチル置換ジメルカプトジエチルスルフィド、ジメチル置換ジメルカプトジエチルスルフィド、ジメルカプトジオキサオクタン、1,5−ジメルカプト−3−オキサペンタン、及び上記のいずれかの組合せが挙げられる。ジチオールは、低級(例えば、C1−6)アルキル基、低級アルコキシ基及びヒドロキシ基から選択される1つ以上のペンダント基を有していてもよい。適切なアルキルペンダント基には、例えば、C1−6直鎖アルキル、C3−6分枝状アルキル、シクロペンチル及びシクロヘキシルが含まれる。
【0077】
適切なジチオールの他の例としては、ジメルカプトジエチルスルフィド(DMDS)(式(3)中、Rは−[(−CH−)−X−]−(CH−(式中、pは2であり、rは2であり、qは1であり、Xは−S−である));ジメルカプトジオキサオクタン(DMDO)(式(3)中、Rは−[(−CH−)−X−]−(CH−(式中、pは2であり、qは2であり、rは2であり、Xは−O−である));及び1,5−ジメルカプト−3−オキサペンタン(式(3)中、Rは−[(−CH−)−X−]−(CH−(式中pは2であり、rは2であり、qは1であり、Xは−O−である))が挙げられる。また、炭素骨格にヘテロ原子とメチル基などのペンダントアルキル基との両方を含むジチオールを使用することも可能である。このような化合物には、例えばメチル置換DMDS、例えばHS−CHCH(CH)−S−CHCH−SH、HS−CH(CH)CH−S−CHCH−SH及びジメチル置換DMDS、例えばHS−CHCH(CH)−S−CHCHCH−SH及びHS−CH(CH)CH−S−CHCH(CH)−SHが含まれる。
【0078】
チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーを調製するのに適したジビニルエーテルには、式(4)のジビニルエーテルが含まれる:
CH=CH−O−(−R−O−)−CH=CH (4)
式中、式(4)中のRは、C2−6n−アルカンジイル基、C3−6分枝状アルカンジイル基、C6−8シクロアルカンジイル基、C6−10アルカンシクロアルカンジイル基及び−[(−CH−)−O−]−(−CH−)−から選択され、式中、pは2〜6の範囲の整数であり、qは1〜5の整数であり、rは2〜10の整数である。式(4)のジビニルエーテルにおいて、Rは、C2−6n−アルカンジイル基、C3−6分枝状アルカンジイル基、C6−8シクロアルカンジイル基、C6−10アルカンシクロアルカンジイル基、又は−[(−CH−)−O−]−(−CH−)−である。
【0079】
適切なジビニルエーテルには、例えば、1〜4個のオキシアルカンジイル基などの少なくとも1つのオキシアルカンジイル基を有する化合物、すなわち式(4)のmが1〜4の整数である化合物が含まれる。式(4)中のmは2〜4の整数であることができる。1分子あたりのオキシアルカンジイル単位数の非整数平均値を特徴とする市販のジビニルエーテル混合物を使用することも可能である。したがって、式(4)のmは、0〜10.0、例えば1.0〜10.0、1.0〜4.0、又は2.0〜4.0の範囲の有理数値をとることもできる。
【0080】
適切なジビニルエーテルの例としては、ジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル(EG−DVE)(式(4)中のRがエタンジイルであり、mが1である)、ブタンジオールジビニルエーテル(BD−DVE)(式(4)中のRはブタンジイルであり、mは1である)、ヘキサンジオールジビニルエーテル(HD−DVE)(式(4)中のRはヘキサンジイルであり、mは1である)、ジエチレングリコールジビニルエーテル(DEG−DVE)(式(4)中のRはエタンジイルであり、mは2である)、トリエチレングリコールジビニルエーテル(式(4)中のRはエタンジイルであり、mは3である)、テトラエチレングリコールジビニルエーテル(TEG−DVE)(式(4)中のRはエタンジイルであり、mは4である)、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ポリテトラヒドロフリルジビニルエーテル;トリビニルエーテルモノマー、例えばトリメチロールプロパントリビニルエーテル;四官能性エーテルモノマー、例えばペンタエリスリトールテトラビニルエーテル;及びこのようなジビニルエーテルモノマーの2つ以上の組合せが挙げられる。ジビニルエーテルは、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基及びアミン基から選択される1つ以上のペンダント基を有していてもよい。
【0081】
式(4)のRがC3−6分枝状アルカンジイルであるジビニルエーテルは、ポリヒドロキシ化合物をアセチレンと反応させることによって調製されてもよい。このタイプのジビニルエーテルの例としては、式(4)中のRがアルキル置換メタンジイル基、例えば−CH(CH)−(例えばPluriol(登録商標)ブレンド、例えばPluriol(登録商標)E−200ジビニルエーテル(BASF Corp.,Parsippany,NJ)、式(4)のRがエタンジイルであり、mが3.8である)又はアルキル置換エタンジイル(例えば、−CHCH(CH)−、例えばDPE−2及びDPE−3を含むDPEポリマーブレンド、International Specialty Products,Wayne,NJ)である化合物が挙げられる。
【0082】
他の有用なジビニルエーテルには、式(4)中のRがポリテトラヒドロフリル(ポリ−THF)又はポリオキシアルカンジイルである化合物、例えば平均約3個のモノマー単位を有するものが含まれる。
【0083】
式(4)のジビニルエーテルモノマーは、2タイプ以上を用いてもよい。したがって、式(3)の2つのジチオール及び式(4)の1つのジビニルエーテルモノマー、式(3)の1つのジチオール及び式(4)の2つのジビニルエーテルモノマー、式(3)の2つのジチオール及び式(4)の2つのジビニルエーテルモノマー、並びに式(3)及び式(4)の一方又は両方のジチオール又はジビニルエーテルを3つ以上使用して、種々のチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーを製造してもよい。
【0084】
ジビニルエーテルモノマーは、チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーを調製するために使用される反応物の20モル%〜50モル%未満、又は30モル%〜50モル%未満を構成できる。
【0085】
ジチオール及びジビニルエーテルの相対量は、末端チオール基を有するポリチオエーテルを生じるように選択できる。したがって、式(3)のジチオール又は式(3)の少なくとも2つの異なるジチオールの混合物を、式(4)のジビニルエーテル又は式(4)の少なくとも2つの異なるジビニルエーテルの混合物と、チオール基とビニル基とのモル比が1:1より大きく、例えば1.1:1.0〜2.0:1.0になるような相対量で反応させることができる。
【0086】
ジチオールとジビニルエーテルとの化合物間の反応は、フリーラジカル触媒によって触媒され得る。適切なフリーラジカル触媒には、例えば、アゾ化合物、アゾビスニトリル、例えばアゾ(ビス)イソブチロニトリル(AIBN);有機過酸化物、例えば過酸化ベンゾイル及び過酸化t−ブチル;無機過酸化物、例えば過酸化水素が含まれる。触媒は、例えばフリーラジカル触媒、イオン触媒、又は紫外線であってもよい。触媒は、酸性又は塩基性化合物を含まなくてもよく、分解時に酸性又は塩基性化合物を生成しない場合がある。フリーラジカル触媒の例としては、アゾタイプの触媒、例えばVazo(登録商標)−57(Du Pont)、Vazo(登録商標)−64(Du Pont)、Vazo(登録商標)−67(Du Pont)、V−70(登録商標)(Wako Specialty Chemicals)、及びV−65B(登録商標)(Wako Specialty Chemicals)が挙げられる。他のフリーラジカル触媒の例としては、アルキルペルオキシド、例えばt−ブチルペルオキシドが挙げられる。この反応はまた、カチオン性光開始部分の有無にかかわらず、紫外線の照射によって行われてもよい。
【0087】
本開示によって提供されるチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーは、式(3)の少なくとも1つのジチオール及び式(4)の少なくとも1つのジビニルエーテルを組み合わせた後、適切な触媒を添加し、30℃〜120℃、例えば70℃〜90℃の温度で2時間〜24時間、例えば2時間〜6時間の間反応を行うことによって調製されてもよい。
【0088】
チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーは、2.0を超える平均官能価を有する多官能性ポリチオエーテルプレポリマーを含んでいてもよい。適切な多官能性チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーには、例えば、式(5)の構造を有するものが含まれる:
B(−A−SH) (5)
式中:(i)−A−は例えば式(1)の構造を含み、(ii)Bは多官能化剤のz価残基を示し;(iii)zは2.0より大きい平均値、2〜3の値、2〜4の値、3〜6の値を有し、又は3〜6の整数であることができる。
【0089】
多官能化剤は、構造B(−V)を有することができ、式中、Bはz価の多官能化剤のコアを表し、zは3〜6の整数であり;各Vは、チオール基と反応性の末端基を含む基である。チオール基と反応性の基は、アルケニル基又はエポキシ基であることができる。
【0090】
多官能性チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーを調製するのに適した多官能化剤は、三官能化剤、すなわちzが3である化合物を含むことができる。適切な三官能化剤には、例えば、米国特許出願公開第2010/0010133号明細書に開示されているような、トリアリルシアヌレート(TAC)、1,2,3−プロパントリチオール、イソシアヌレート含有トリチオール、及びそれらの組合せが含まれる。他の有用な多官能化剤には、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、及び米国特許第4,366,307号明細書、米国特許第4,609,762号明細書及び米国特許第5,225,472号明細書に記載されているポリチオールが含まれる。多官能化剤の混合物も使用されてもよい。
【0091】
結果として、本開示によって提供される組成物における使用に適したチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーは、広範囲の平均官能価を有していてもよい。例えば三官能化剤は、2.05〜3.0、例えば2.1〜2.6の平均官能価を与えてもよい。より広範囲の平均官能価は、四官能性剤又はより高い官能価の多官能化剤を使用することによって達成されてもよい。官能価はまた、当業者によって理解されるように、化学量論などの因子によって影響され得る。
【0092】
2.0を超える官能価を有するチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーは、米国特許出願公開第2010/0010133号明細書に記載されている二官能性チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーと同様の方法で調製されてもよい。ポリチオエーテルプレポリマーは、例えば、(i)本明細書に記載の1つ以上のジチオールと、(ii)本明細書に記載の1つ以上のジビニルエーテル、及び(iii)1つ以上の多官能化剤とを組み合わせることによって調製されてもよい。次いで、混合物を、場合により適切な触媒の存在下、反応させて、2.0を超える、例えば2.1〜2.9の官能価を有するチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーを得てもよい。
【0093】
したがって、チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーは、以下を含む反応物の反応生成物を含むことができる:
(a)式(3)のジチオール:
HS−R−SH (3)
式中:
はC2−6アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−10アルカンシクロアルカンジイル、C5−8ヘテロシクロアルカンジイル及び−[−(CHR−X−]−(CHR−から選択され;式中:
各Rは、独立して、水素及びメチルから選択され;
各Xは、独立して、−O−、−S−、−NH−及び−N(−CH)−から選択され;
pは2〜6の整数であり;
qは1〜5の整数であり;及び
rは2〜10の整数である;並びに
(b)式(4)のジビニルエーテル:
CH=CH−O−[−R−O−]−CH=CH (4)
式中:
各Rは、独立して、C1−10アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−14アルカンシクロアルカンジイル、及び−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−から選択され、式中、p、q、r、R及びXは、上記で定義したとおりであり;
pは0〜50の整数であり;
nは1〜60の整数であり;及び
pは2〜6の整数である。
また、反応物は、(c)多官能性化合物、例えば多官能性化合物B(−V)をさらに含むことができ、ここで、B、−V及びzは本明細書で定義されたとおりである。
【0094】
本開示によって提供されるチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーは、分子量分布を有するチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーを表す。適切なチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーは、500ダルトン〜20,000ダルトン、2,000ダルトン〜5,000ダルトン、又は3,000ダルトン〜4,000ダルトンの範囲の数平均分子量を示すことができる。適切なチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーは、1〜20、又は1〜5の範囲の多分散性(Mw/Mn;重量平均分子量/数平均分子量)を示すことができる。チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーの分子量分布は、ゲル浸透クロマトグラフィによって特徴付けられてもよい。本開示によって提供されるチオール末端ポリチオエーテルは、室温で液体であることができ、充填剤、接着促進剤、顔料、硬化剤及び/又は非クロメート腐食防止剤などの添加剤と組み合わせて混合して、本開示によって提供される組成物、硬化性組成物、又はシーラントを提供できる。
【0095】
本開示によって提供される組成物は、30重量%〜65重量%、35重量%〜60重量%、40重量%〜55重量%、又は45重量%〜55重量%のチオール末端ポリチオエーテルプレポリマー又はチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーの組合せを含むことができ、ここで重量%は組成物の総重量に基づく。
<ポリエポキシド>
【0096】
本開示によって提供される硬化性組成物を含む組成物は、ポリエポキシド硬化剤(curing agent)を含むことができる。
【0097】
本開示によって提供される組成物に有用な硬化剤には、チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーのチオール末端基と反応性であるものが含まれる。
【0098】
硬化剤は、ポリエポキシド硬化剤、例えば、2つ以上の反応性エポキシ基を有するエポキシドを含む。適切なポリエポキシドの例としては、ポリエポキシド樹脂、例えばヒダントインジエポキシド、ビスフェノール−Aのジグリシジルエーテル、ビスフェノール−Fのジグリシジルエーテル、Novolac(登録商標)タイプのエポキシド、例えばDEN(商標)438又はDEN(商標)431(Dow Chemical)、特定のエポキシド化不飽和樹脂、及び上記のいずれかの組合せが挙げられる。
【0099】
ポリエポキシドは、例えばEPON(登録商標)828、DEN(登録商標)431、又はそれらの組合せなどのジエポキシドを含むことができる。EPON(登録商標)樹脂828(Momentive)は、二官能性ビスフェノールA/エピクロロヒドリン誘導液状エポキシ樹脂として記載されている。DEN(登録商標)431は、平均エポキシ官能価2.8を有する、エピクロロヒドリンとフェノール−ホルムアルデヒドノボラックとの反応生成物を含むエポキシノボラック樹脂として記載されている。適切なポリエポキシド樹脂の他の例としては、ビスフェノールAエポキシド樹脂、ビスフェノールFエポキシド樹脂、ビスフェノールSエポキシド樹脂、ノボラックエポキシド樹脂、グリシジルエポキシド樹脂を含む脂肪族エポキシド樹脂が挙げられる。
【0100】
ポリエポキシドは、参照により組み込まれる米国特許第8,710,159号明細書に開示されているような多官能性硫黄含有エポキシドを含むことができる。
【0101】
本開示によって提供される硬化性組成物は、3重量%〜10重量%、4重量%〜9重量%、5重量%〜8重量%、又は6重量%〜7重量%のポリエポキシド又はポリエポキシドの組合せを含むことができ、ここで重量%は硬化性組成物の総重量に基づく。
【0102】
ポリエポキシ硬化剤は、エポキシ官能性プレポリマーを含むことができる。適切なエポキシ末端プレポリマーの例としては、米国特許第7,671,145号明細書及び米国特許第8,541,513号明細書に開示されているエポキシ末端ポリチオエーテルプレポリマーが挙げられ、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。一般に、硬化剤として使用される場合、エポキシ末端プレポリマーは、約2,000ダルトン未満、約1,500ダルトン未満、約1,000ダルトン未満、又は約500ダルトン未満の数平均分子量を有する。例えば、エポキシ末端ポリチオエーテルプレポリマーは、500ダルトン〜2,000ダルトン又は500ダルトン〜1,000ダルトンの数平均分子量を有することができる。エポキシ末端プレポリマーは、本開示によって提供されるチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーを、エポキシ基(−CH(−O−CH−))及びチオール基と反応性の基を有する化合物、例えば式(6)のモノエポキシと反応させることによって調製されてもよい:
−R−CH(−O−CH−) (6)
式中、Rは、チオール基と反応性であるエポキシ基以外の基を含む。Rは、アルケニル基、又は電子求引基と共役するオレフィン、例えばアクリレート、メタクリレート、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルから誘導することができる。Rは、C2−10アルカンジイル基及びC2−10アルキレンオキシ基から選択することができる。
【0103】
ポリエポキシドはまた、多塩基酸系のポリエポキシド樹脂を含むことができる。多塩基酸系ポリエポキシド樹脂は、疎水性骨格を含む。骨格の疎水性は、多塩基酸系エポキシを含む硬化した組成物に高められた接着性及び耐腐食性を付与することができる。増大した疎水性は、硬化したシーラントを通る気体及び/又は水分の透過を減少させることができ、シーラントとシーラントが適用される表面との間の界面におけるイオンの移動度を減少させることができる。両方の特性は、耐腐食性を向上させることができる。したがって、適切な多塩基酸系エポキシは、疎水性骨格を含むことができる。疎水性骨格を特徴とするオリゴマーの例としては、例えば、脂肪酸、脂質、ポリアクリレート、アルキレン、アルキル置換エチレンイミン、アルキルアクリルアミド、スチレン、ビニルエーテル、ビニルエステル、及び/又はハロゲン化ビニルが挙げられる。本開示の組成物は、多塩基酸系のエポキシを含むことができる。多塩基酸は、一般に、飽和及び/又は不飽和脂肪酸のオリゴマー化によって製造される粘性液体である。構成脂肪酸鎖の炭素原子は、環式、単環式、二環式及び芳香族多塩基酸のような異なる構造タイプを製造するために様々な方法で共に連結することができる。さらに、各タイプ内には多くの構造異性体が存在し得る。構造タイプ及び異性体の配分は、例えば、出発脂肪酸モノマーの飽和度及びオリゴマー化のために使用されるプロセス条件に依存し得る。飽和脂肪酸の例としては、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、テトラコサン酸などが挙げられる。モノ不飽和脂肪酸の例としては、ヘキサンジエン酸、オクタデセン酸、及びシス−テトラコセン酸などが挙げられる。多価不飽和脂肪酸の例としては、ヘキサンデカジエン酸、オクタデカジエン酸などが挙げられる。脂肪酸モノマーは、例えば、任意の飽和度を有することができるC4−60脂肪酸であることができる。本開示の多塩基酸系のエポキシはC18脂肪酸から誘導できる。
【0104】
多塩基酸系のポリエポキシド樹脂は、米国特許出願公開第2009/03261676号明細書に開示されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。多塩基酸をポリエポキシと反応させることにより、多塩基酸系エポキシ樹脂を調製することができる。ポリエポキシドは、2つ以上のエポキシ基を組み込む。任意の適切なポリエポキシドを使用することができる。多塩基酸系のポリエポキシドは、2つのエポキシ基、3つのエポキシ基、又は3つを超えるエポキシ基を有することができる。多塩基酸系のポリエポキシドは、単一タイプのポリエポキシド又はポリエポキシドの混合物を含むことができる。ポリエポキシドは、エポキシドが式(7)の構造を有する飽和3員環式エーテルを含有するエポキシの亜属を指すジエポキシドのようなポリエポキシドを含むことができる:
−CH−CH(−O−CH−) (7)
【0105】
多塩基酸系ポリエポキシドを調製するのに有用なジエポキシドの例としては、ヒダントインジエポキシド、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、例えばEPON(登録商標)828(Resolution Performance Products,LLCから市販)、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ノボラックタイプエポキシド、例えばDEN(登録商標)431(Dow Plasticsから市販)、及びエポキシ化不飽和フェノール樹脂、アクリルポリオールエステル、メタクリルポリオールエステル及びトリアリルシアヌレートが挙げられる。多塩基酸の酸基とエポキシのエポキシ基の化学量論は、ポリチオエーテルプレポリマーの末端チオール基と反応することができる末端エポキシ基を有する多塩基酸系のエポキシを製造するように選択することができる。例えば、式(2a)のポリチオエーテルプレポリマー1モルをジエポキシド2モルと反応させることができ、式(2b)の三官能性ポリチオエーテルプレポリマー1モルをジエポキシド6モルと反応させることができる。任意の適切な反応方法を用いて多塩基酸系のエポキシドを形成することができ、例えば多塩基酸系エポキシは、多塩基酸とポリエポキシドとをフェニルホスフィン触媒の存在下、110℃〜120℃の温度で反応させることによって製造できる。市販の多塩基酸系ポリエポキシドの例としては、Hypox(登録商標)DA323(Specialty Chemicals,Inc.)、Epotuf(登録商標)(Reichhold)及びHeloxy(登録商標)(Resolution Performance Products)が挙げられる。
<アミン触媒>
【0106】
本開示によって提供される硬化性組成物を含む組成物は、アミン触媒を含むことができる。例えば、本開示によって提供される組成物は、第三級アミン触媒を含むことができる。適切な第三級アミン触媒の例としては、N,N−ジメチルエタノールアミン(DMEA)、トリエチレンジアミン(TEDA)、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル(BDMEE)、N−エチルモルホリン、N’,N’−ジメチルピペラジン、N,N,N’,N’,N’−ペンタメチル−ジエチレン−トリアミン(PMDETA)、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン(DMCHA)、N,N−ジメチルベンジルアミン(DMBA)、N,N−ジメチルセチルアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチル−ジプロピレン−トリアミン(PMDPTA)、トリエチルアミン、1−(2−ヒドロキシプロピル)イミダゾール、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン重炭酸塩(DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO(登録商標))、例えば(DABCO(登録商標))33−LV(Air Products and Chemicals)が挙げられる。
【0107】
本開示によって提供される組成物に使用するのに適切な第三級アミン触媒には、例えば、ジメチルアミノメチルフェノール、2,4,6−トリ(ジチルアミノメチル)フェノール、2−エチルヘキサン酸塩、イミダゾール、イミダゾール系及び上記のいずれかの組合せを含むエポキシド系に特に適したものが含まれる。
【0108】
本開示によって提供される組成物は、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2,4,6−トリ(ジチルアミノメチル)フェノール、イミダゾール、又は上記のいずれかの組合せを含むことができる。
【0109】
本開示によって提供される組成物は、0.01重量%〜0.2重量%、例えば0.03重量%〜0.13重量%の第三級アミン触媒又は第三級アミン触媒の組合せを含むことができ、ここで、重量%は、硬化性組成物の総重量に基づく。本開示によって提供される組成物は、0.05重量%〜1.5重量%、例えば0.05重量%〜1重量%又は0.05重量%〜0.5重量%の第三級アミン触媒又は第三級アミン触媒の組合せ、例えば1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO(登録商標)、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−30)又はイミダゾールを含むことができ、ここで重量%は硬化性組成物の総重量に基づく。
<シーラント配合物>
【0110】
本開示によって提供される未硬化(uncured)シーラントは、使用時に別々に調製し、貯蔵し、組み合わせ、混合することができる、ベース成分と促進剤(accelerator)成分とを含む2パート系として提供することができる。
【0111】
ベース成分又は組成物は、チオール末端ポリチオエーテルプレポリマー、触媒、及び非クロメート腐食防止剤の第1部分(portion)を含むことができる。促進剤成分又は組成物は、ポリエポキシド硬化剤及び非クロメート腐食防止剤の第2部分を含むことができる。第1及び第2の部分は、非クロメート腐食防止剤の異なる成分を含むことができる。
【0112】
ベース成分及び促進剤成分は、ベース及び促進剤成分の構成要素を混ぜ合わせ、均質に分散されて基材への適用のためのシーラント組成物を提供することができるように組み合わせた場合に相溶性になるように配合することができる。ベース成分と促進剤成分との相溶性(compatibility)に影響を及ぼす要因には、例えば、粘度、pH、密度及び温度が含まれる。
【0113】
本開示によって提供される硬化性組成物は、シーラントとして、特に、低温の柔軟性(flexibility)及び耐燃料性(resistance to fuel)が望ましい特性であるシーラントとして有利に使用することができる。例えば、硬化性組成物は、航空及び航空宇宙シーラントとして使用することができる。シーラントは、硬化したときに、水分及び温度のような大気条件に抵抗する能力を有し、水、水蒸気、燃料、溶媒及び/又は液体及び気体などの材料の透過を少なくとも部分的に遮断する硬化性組成物を指す。
【0114】
本開示によって提供される未硬化シーラント組成物は、特定の航空宇宙シーラント用途に適したものとして配合することができる。例えば、シーラント組成物は、クラスA、クラスB、又はクラスCの耐燃料性(fuel resistant)航空宇宙シーラントとして配合することができる。
【0115】
クラスAシーラントは、−65°F(−54℃)〜250°F(121℃)の使用温度で、断続的に275°F(135°F)までの偏位で使用するために配合できる。クラスAシーラントは、ブラッシングによって適用されることが意図されており、例えば、燃料タンク内のブラシシーリングファスナー及び他の航空機胴体シーリング用途に使用することができる。クラスAシーラントは、1ポイズ〜500ポイズの初期粘度を有することができる。
【0116】
クラスBシーラントは、−65°F〜250°F(−54℃〜121℃)の使用温度で使用するために配合することができ、フィレットシーリング及びその他の航空機胴体シーリング用途を対象とする。クラスBシーラントは、4,500ポイズ〜20,000ポイズの初期粘度を有することができる。クラスBシーラントは、押出、射出ガン、又はスパチュラで適用できる。
【0117】
クラスCシーラントは、−65°F〜250°F(−54℃〜121℃)の使用温度で使用するために配合することができ、燃料タンクのブラシ及びフェイシーリング並びに他の航空機胴体シーリング用途を対象とする。クラスCシーラントは、500ポイズ〜4,500ポイズの初期粘度を有することができる。クラスCシーラントは、ブラシ、ローラ、スパチュラ、又は押出によって適用できる。
<配合物(formulations)>
【0118】
本開示によって提供される組成物は、シーラントとして配合され得る。配合されるとは、硬化ポリマーネットワークを形成する反応種に加えて、組成物に追加の材料を添加して、未硬化シーラント及び/又は硬化シーラントに所望の特性を付与することができることを意味する。未硬化シーラントの場合、これらの特性は、粘度、pH、及び/又はレオロジーを含むことができる。硬化シーラントの場合、これらの特性には、重量、接着性、耐腐食性、色、ガラス転移温度、導電性、凝集、及び/又は物理的特性、例えば引張強度、伸び及び硬度が含まれることができる。本開示によって提供される組成物は、航空宇宙シーラントにおける使用に適した1つ以上の追加の成分を含んでいてもよく、使用条件下で硬化シーラントの所望の性能特性に少なくとも部分的に依存する。
【0119】
本開示によって提供される組成物は、1つ以上の接着促進剤を含むことができる。組成物は、組成物の総乾燥重量に基づいて、0.1重量%〜15重量%の接着促進剤、5重量%未満、2重量%未満、又は1重量%の接着促進剤を含有してもよい。接着促進剤の例としては、フェノール類、例えばMethylon(登録商標)フェノール樹脂、及びオルガノシラン、例えばエポキシ、メルカプト又はアミノ官能性シラン(例えばSilquest(登録商標)A−187及びSilquest(登録商標)A−1100を含む)が挙げられる。他の有用な接着促進剤は当該技術分野において既知である。
【0120】
適切な接着促進剤としては、硫黄含有接着促進剤、例えば米国特許第8,513,339号明細書、米国特許第8,952,124号明細書及び米国特許第9,056,949号明細書に開示されているような硫黄含有接着促進剤;及び米国特許出願公開第2014/0051789号明細書に開示されているようなものが挙げられる、これらの各々が参照により組み込まれる。
【0121】
本開示によって提供される組成物は、1つ以上の異なるタイプの充填剤を含んでいてもよい。適切な充填剤は当該技術分野において一般に既知のものを含み、これらには無機充填剤、例えばカーボンブラック及び炭酸カルシウム(CaCO)、シリカ、ポリマー粉末、及び軽量充填剤が含まれる。非導電性充填剤の例としては、材料、例えば炭酸カルシウム、マイカ、ポリアミド、ヒュームドシリカ、モレキュラーシーブ粉末、マイクロスフェア、二酸化チタン、チョーク、アルカリブラック、セルロース、硫化亜鉛、重晶石、アルカリ土類酸化物、アルカリ土類水酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。組成物は、組成物の総乾燥重量に基づいて、5重量%〜60重量%の充填剤又は充填剤の組合せ、10重量%〜50重量%、又は20重量%〜40重量%を含むことができる。本開示によって提供される組成物は、1つ以上の着色剤、チキソトロープ剤、促進剤、難燃剤、接着促進剤、溶媒、マスキング剤、又は上記のいずれかの組合せをさらに含んでいてもよい。理解され得るように、組成物に使用される充填剤及び添加剤は、互いに適合し、並びにポリマー成分、硬化剤及び/又は触媒と適合するように選択されてもよい。
【0122】
本開示によって提供される組成物は、低密度充填剤粒子を含むことができる。低密度粒子は、0.7以下、0.25以下、又は0.1以下の比重を有する粒子を指す。適切な軽量充填剤粒子は、しばしばミクロスフェア及びアモルファス粒子の2つのカテゴリーに分類される。ミクロスフェアの比重は、0.1〜0.7の範囲であってよく、例えばポリスチレンフォーム、ポリアクリレート及びポリオレフィンのミクロスフェア、及び5ミクロン〜100ミクロンの範囲の粒径及び0.25の比重を有するシリカミクロスフェア(Eccospheres(登録商標))を含む。他の例としては、5〜300ミクロンの範囲の粒径及び0.7の比重を有するアルミナ/シリカミクロスフェア(Fillite(登録商標))、約0.45〜約0.7の比重を有するケイ酸アルミニウムミクロスフェア(Z−Light(登録商標)、比重0.13を有する炭酸カルシウムコーティングされたポリビニリデンコポリマーミクロスフェア(Dualite(登録商標)6001AE)、及び平均粒径約40μm及び密度0.135g/ccを有する炭酸カルシウムコーティングされたアクリロニトリルコポリマーミクロスフェア、例えばDualite(登録商標)E135(Henkel)が挙げられる。組成物の比重を減少させるのに適した充填剤には、中空ミクロスフェア、例えばExpancel(登録商標)ミクロスフェア(AkzoNobelから入手可能)又はDualite(登録商標)低密度ポリマーミクロスフェア(Henkelから入手可能)が含まれる。本開示によって提供される組成物は、米国特許出願公開第2010/0041839号明細書に記載されているような薄いコーティングでコーティングされた外面を含む軽量充填剤粒子を含むことができ、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。適切な軽量充填剤はまた、米国特許第6,525,168号明細書に開示されている。
【0123】
組成物は、組成物の2重量%未満、1.5重量%未満、1.0重量%未満、0.8重量%未満、0.75重量%未満、0.7重量%未満、又は0.5重量%未満の軽量粒子を含むことができ、ここで重量%は組成物の総乾燥固形分重量に基づく。
【0124】
本開示によって提供される組成物は、組成物の比重を低下させる軽量充填剤を含むことができる。例えば、組成物は、0.8〜1、0.7〜0.9、0.75〜0.85、0.9〜1.2、1.0〜1.2又は約0.8又は約1.1の比重を有することができる。組成物は、1.02〜1.22、1.04〜1.20、1.06〜1.18、1.08〜1.16、1.10〜1.14、又は1.11〜1.13の比重を有することができる。組成物の比重は、約1.2未満、約1.1未満、約1.0未満、0.9未満、約0.8未満、約0.75未満、約0.7未満、約0.65未満、約0.6未満、又は約0.55未満であることができる。
【0125】
本開示によって提供される組成物は、導電性充填剤を含むことができる。伝導性材料をポリマー内に組み込むことによって、導電性及びEMI/RFI遮蔽の有効性を組成物に付与することができる。伝導性要素は、例えば、金属又は金属メッキされた粒子、布地、メッシュ、繊維、及びそれらの組合せを含むことができる。金属は、例えば、フィラメント、粒子、フレーク、又は球体の形態であることができる。適切な金属の例としては、銅、ニッケル、銀、アルミニウム、スズ、及び鋼が挙げられる。ポリマー組成物にEMI/RFI遮蔽効果を付与するために使用することができる他の伝導性材料には、カーボン又はグラファイトを含む伝導性粒子又は繊維が含まれる。また、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリ(p−フェニレン)ビニレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレン、及びポリアセチレンなどの伝導性ポリマーを使用できる。
【0126】
導電性充填剤にはまた、硫化亜鉛及び無機バリウム化合物などの高バンドギャップ材料が含まれる。
【0127】
導電性及びEMI/RFI遮蔽効果をポリマー組成物に付与するために使用される充填剤は、当該技術分野において周知である。導電性充填剤の例としてはさらに、導電性貴金属系充填剤、例えば純粋な銀;貴金属メッキされた貴金属、例えば銀メッキされた金;貴金属メッキされた非貴金属、例えば銀メッキされた銅、ニッケル又はアルミニウム、例えば銀メッキされたアルミニウムコア粒子又は白金メッキされた銅粒子;貴金属メッキされたガラス、プラスチック又はセラミック、例えば銀メッキされたガラスミクロスフェア、貴金属メッキされたアルミニウム又は貴金属メッキされたプラスチックミクロスフェア;貴金属メッキされた雲母;及び他のこうした貴金属伝導性充填剤が挙げられる。非貴金属系材料も使用することができ、それらには、例えば非貴金属メッキされた非貴金属、例えば銅コーティング鉄粒子又はニッケルメッキ銅;非貴金属、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト;非金属メッキされた非金属、例えばニッケルメッキされたグラファイト、及び非金属材料、例えばカーボンブラック及びグラファイトが含まれることができる。所望の伝導率、EMI/RFI遮蔽効果、硬度、及び特定の用途に適した他の特性を満たすために、導電性充填剤の組合せを使用することもできる。
【0128】
本開示の組成物に使用される導電性充填剤の形状及びサイズは、硬化した組成物にEMI/RFI遮蔽効果を付与するための任意の適切な形状及びサイズであることができる。例えば、充填剤は、球状、フレーク、小板、粒子、粉末、不規則、繊維などを含む、導電性充填剤の製造に一般的に使用される任意の形状のものであることができる。本開示の特定のシーラント組成物において、ベース組成物は、粒子、粉末又はフレークとしてのNiコーティングされたグラファイトを含むことができる。ベース組成物中のNiコーティングされたグラファイトの量は、ベース組成物の総重量に基づいて、40重量%〜80重量%の範囲であることができ、又は50重量%〜70重量%の範囲であることができる。導電性充填剤はNi繊維を含むことができる。Ni繊維は、10μm〜50μmの範囲の直径を有することができ、250μm〜750μmの範囲の長さを有することができる。ベース組成物は、例えば、ベース組成物の総重量に基づいて、2重量%〜10重量%、又は4重量%〜8重量%の範囲のNi繊維の量を含むことができる。
【0129】
シーラント組成物に導電性を付与するために、炭素繊維、特に黒鉛化炭素繊維も使用することができる。気相熱分解法により形成され、熱処理によって黒鉛化され、0.1ミクロンから数ミクロンの範囲の繊維直径を有する中空又は中実の炭素繊維は、高い導電性を有する。米国特許第6,184,280号明細書に開示されているように、0.1μm未満から数十ナノメートルの外径を有するカーボンマイクロファイバ、ナノチューブ又はカーボンフィブリルを導電性充填剤として使用することができる。本開示の伝導性組成物に適した黒鉛化炭素繊維の例としては、0.00055Ω−cmの電気抵抗率を有する直径0.921μmの円形繊維であるPanex(登録商標)3OMF(Zoltek Companies,Inc.,St.Louis,MO)が挙げられる。
【0130】
導電性充填剤の平均粒径は、ポリマー系組成物に導電性を付与するのに有用な範囲内にあることができる。例えば、1つ以上の充填剤の粒径は、0.25μm〜250μm、0.25μm〜75μm又は0.25μm〜60μmの範囲であることができる。本開示の組成物は、Ketjenblack(登録商標)EC−600 JD(Akzo Nobel,Inc.,Chicago,IL)、1000mg/g〜11,500mg/g(J0/84−5試験法)のヨウ素吸収、及び480cm/100g〜510cm/100g(DBP吸収、KTM81−3504)の細孔容積を特徴とする導電性カーボンブラックを含むことができる。導電性カーボンブラック充填剤は、Black Pearls(登録商標)2000(Cabot Corporation,Boston,MA)を含むことができる。
【0131】
本開示のシーラント組成物の導電性を付与する、又は導電性を変更するために、導電性ポリマーを使用することができる。ポリフェニレンスルフィド及びポリチオフェンのような、芳香族基に又は二重結合に隣接して組み込まれた硫黄原子を有するポリマーは、導電性であることが知られている。他の導電性ポリマーには、例えば、ポリピロール、ポリアニリン、ポリ(p−フェニレン)ビニレン、及びポリアセチレンが含まれる。さらに、チオール末端プレポリマーは、導電性を高めるために、チオール末端プレポリマーの骨格に組み込まれたビニルシクロヘキセン−ジメルカプトジオキサオクタン基などの共役二重結合に隣接する芳香族硫黄基及び硫黄原子を含むことができる。
【0132】
本開示の組成物は、2つ以上の導電性充填剤を含むことができ、2つ以上の導電性充填剤は、同じ又は異なる材料及び/又は形状を有することができる。例えば、シーラント組成物は、導電性Ni繊維、及び粉末、粒子及び/又はフレークの形態の導電性Niコーティングされたグラファイトを含むことができる。導電性充填剤の量及びタイプは、硬化したときに0.50Ω/cm未満のシート抵抗(4点抵抗)又は0.15Ω/cm未満のシート抵抗を示すシーラント組成物を製造するように選択することができる。充填剤の量及びタイプはまた、1MHz〜18GHzの周波数範囲で効果的なEMI/RFI遮蔽を提供するように選択できる。
【0133】
本開示の異種金属表面及び伝導性組成物のガルバニック腐食は、腐食防止剤を組成物に添加することによって、及び/又は適切な伝導性充填剤を選択することによって、最小化又は防止することができる。本開示によって提供される非クロメート腐食防止剤は、導電性充填剤を含むシーラントの耐腐食性を高めることができる。米国特許第5,284,888号明細書及び米国特許第5,270,364号明細書は、アルミニウム及び鋼表面の腐食を防止するための芳香族トリアゾールの使用を開示しており、これはまた本開示によって提供されるシーラント組成物に含まれることができる。腐食防止剤としては、Znなどの犠牲酸素捕捉剤を使用できる。腐食防止剤は、導電性組成物の総重量の10重量%未満を構成することができる。腐食防止剤は、導電性組成物の総重量の2重量%〜8重量%の範囲の量を含むことができる。異種金属表面間の腐食はまた、組成物を含む導電性充填剤の種類、量及び特性の選択によって最小化又は防止することができる。
【0134】
導電性充填剤は、2パート型シーラント組成物のベース成分又は促進剤成分に添加することができる。導電性ベース組成物は、ベース組成物の総重量に基づいて2重量%〜10重量%の量の非導電性充填剤を含むことができ、又は3重量%〜7重量%の範囲であることができる。促進剤組成物は、促進剤組成物の総重量に基づいて、6重量%未満又は0.5重量%〜4重量%の量の非導電性充填剤を含むことができる。
【0135】
シーラント組成物は、約50重量%〜約90重量%のチオール末端ポリチオエーテルプレポリマー、約60重量%〜約90重量%、約70重量%〜約90重量%、又は約80重量%〜約90重量%のチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーを含むことができ、ここで重量%はシーラント組成物の総乾燥固形分重量に基づく。
【0136】
シーラント組成物はまた、可塑剤、顔料、界面活性剤、接着促進剤、チキソトロピー剤、難燃剤、マスキング剤、促進剤(例えば1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、DABCO(登録商標)を含むアミン)及び上記のいずれかの組合せのような添加剤を含んでいてもよい。使用される場合、添加剤は、組成物中に、例えば約0重量%〜約60重量%の範囲の量で存在してもよい。添加剤は、約25重量%〜60重量%の範囲の量で組成物中に存在してもよい。
<使用>
【0137】
本開示によって提供される組成物は、例えば、シーラント、コーティング、封入剤、及びポッティング組成物において使用されてもよい。シーラントは、水分及び温度などの動作条件に抵抗する能力を有し、水、燃料並びに他の液体及び気体などの材料の透過を少なくとも部分的に遮断するフィルムを製造することができる組成物を含む。コーティング組成物は、例えば外観、接着性、濡れ性、耐腐食性、耐摩耗性、耐燃料性及び/又は耐摩耗性などの基材の特性を改善するために基材の表面に適用される被覆を含む。ポッティング組成物は、衝撃及び振動に対する耐性を提供し、水分及び腐食剤を排除するために電子アセンブリに有用な材料を含む。特に、本開示によって提供されるシーラント組成物は、航空宇宙シーラントとして有用であり、例えば、燃料タンクのためのライニングに使用することができる。
【0138】
シーラントなどの組成物は、1つのパートが1つ以上のチオール末端ポリチオエーテルプレポリマーを含み、第2のパートが1つ以上のポリエポキシドを含む、2パート組成物などのマルチパート組成物として提供され得る。添加剤及び/又は他の材料は、所望により又は必要に応じていずれかのパートに添加されてもよい。2つのパートは、使用する前に組み合わせて混合されてもよい。混合シーラント組成物の作用時間は、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも48時間、又は48時間超であることができる。ここで、作用時間は、混合組成物が展性のままである期間、例えば、混合後の表面への適用のために十分に低い粘度を有する。
【0139】
組成物がもはや作用しなくなった後、約25℃以上の温度で約24時間〜約72時間以内に不粘着性硬化物に硬化する。本開示によって提供される水分硬化性組成物を使用して存続可能なシールを形成する時間は、当業者によって理解でき、適用可能な規格及び仕様書の要件によって定義されるように、いくつかの要因に依存し得る。一般に、本開示によって提供される硬化性組成物は、表面への適用後約3日〜約7日以内に接着強度を生じることができる。一般に、本開示によって提供される硬化組成物の完全な接着強度並びに他の特性は、硬化性組成物の混合及び表面への適用後7日以内に完全に生じることができる。
【0140】
本開示によって提供される組成物は、約12時間を超える作用時間を有することができ、約150時間〜約250時間で25AのショアA硬度まで硬化することができる。
【0141】
本開示によって提供されるシーラントを含む組成物は、様々な基材のいずれかに適用されてもよい。組成物が適用され得る基材の例としては、金属、例えばチタン、ステンレス鋼、鋼アロイ、アルミニウム、及びアルミニウム合金(そのいずれもが陽極酸化され、下塗りされ、有機コーティング又はクロメートコーティングされてもよい);エポキシ;ウレタン;グラファイト;ガラス繊維複合材;Kevlar(登録商標);アクリル;ポリカーボネートが挙げられる。本開示によって提供される組成物は、アルミニウム及びアルミニウム合金などの基材に適用されてもよい。
【0142】
本開示によって提供されるシーラント組成物は、クラスA、クラスB、又はクラスCシーラントとして配合され得る。クラスAシーラントは、約1ポイズ〜約500ポイズの粘度を有するブラッシャブルシーラントを指し、ブラシ適用のために設計される。クラスBシーラントは、4,500ポイズ〜20,000ポイズの粘度を有する押出可能なシーラントを指し、空気圧ガンを介する押出による適用のために設計されている。クラスBのシーラントは、低スランプ/スラグが必要とされる垂直面又はエッジにフィレット及びシーリングを形成してシールするために使用できる。クラスCシーラントは、500ポイズから4500ポイズの粘度を有し、ローラ又は櫛形歯スプレッダによる適用のために設計されている。クラスCシーラントは、フェイ表面シーリングに使用できる。
【0143】
本開示によって提供される組成物は、当業者に既知のいずれかの適切なコーティングプロセスによって、基材の表面上又は下地層上に直接適用されてもよい。
【0144】
さらに、本開示によって提供される組成物を用いてアパーチャをシールするための方法が提供される。これらの方法は、例えば、本開示の硬化性組成物を提供する工程;硬化性組成物を部品の少なくとも1つの表面に適用する工程;適用された組成物を硬化させてシールされた部品を提供する工程を含む。
【0145】
本開示によって提供される組成物は、周囲条件下で硬化されてもよく、ここで周囲条件は20℃〜25℃の温度及び大気湿度を指す。組成物は、0℃〜100℃の温度及び0%の相対湿度から100%の相対湿度の湿度を包含する条件下で硬化させてもよい。組成物は、少なくとも30℃、少なくとも40℃、又は少なくとも50℃などのより高い温度で硬化させてもよい。組成物は室温、例えば25℃で硬化させてもよい。組成物は、紫外線のような化学線への曝露時に硬化されてもよい。また、理解されるように、本方法は、航空機及び航空宇宙機を含む航空宇宙機のアパーチャをシールするために使用されてもよい。
【0146】
本開示の硬化性組成物を使用して存続可能なシールを形成する時間は、当業者によって理解でき、適用可能な規格及び仕様書の要件によって定義されるように、いくつかの要因に依存し得る。一般に、本開示の硬化性組成物は、混合及び表面への適用後約3日〜約7日以内に接着強度を生じる。一般に、本開示の硬化組成物の完全な接着強度並びに他の特性は、硬化性組成物の混合及び表面への適用後7日以内に完全に生じる。
【0147】
硬化シーラントのような本開示の硬化組成物は、航空宇宙シーラント用途における使用に許容される特性を示す。一般に、航空及び航空宇宙用途に使用されるシーラントは、以下の特性を示すことが望ましい:JRFに7日間浸漬した後及びAMS3265B試験仕様書に従って3%NaClの溶液に浸漬した後、乾燥条件下で決定された航空宇宙材料仕様書(AMS)3265B基材上のリニアインチあたり(pli)20ポンドを超える剥離強度;平方インチあたり(psi)300ポンド〜400psiの引張強度;リニアインチあたり(pli)50ポンドを超える引裂強度;250%〜300%の伸び;及び40デュロメータAを超える硬度。航空及び航空宇宙用途に適したこれら及びその他の硬化シーラント特性は、AMS 3265Bに開示されており、その全体が参照により組み込まれる。硬化された場合、航空及び航空宇宙用途に使用される本開示の組成物は、JRFタイプ1において60℃(140°F)及び周囲圧力で1週間浸漬した後に25%以下の体積膨潤%を示すことも望ましい。他の特性、範囲、及び/又は閾値は、他のシーラント用途に適切であり得る。
【0148】
本開示によって提供される硬化組成物は、耐燃料性であることができる。「耐燃料性」(“fuel resistant”)という用語は、組成物が基材に適用され、硬化される場合、ASTM D792(米国材料試験協会)又はAMS3269(航空宇宙材料仕様書)に記載されている方法と同様の方法に従って、140°F(60℃)及び周囲圧力で1週間、ジェット基準液(JRF)タイプIに浸漬した後に、40%以下、場合によっては25%以下、場合によっては20%以下、さらに他の場合では10%以下のパーセント体積膨潤を示すシーラントなどの硬化生成物を提供することができる。JRFタイプIは、耐燃料性の測定に使用されるように、以下の組成を有する:トルエン:28±1体積%;シクロヘキサン(テクニカル):34±1体積%;イソオクタン:38±1体積%;及び三級ジブチルジスルフィド:1±0.005体積%(AMS2629、1989年7月1日発行、§3.1.1など、SAE(自動車技術協会)から入手可能)を参照のこと)。
【0149】
本開示によって提供される組成物は、AMS3279、§3.3.17.1、試験手順AS5127/1、§7.7に記載の手順に従って測定した場合、少なくとも200%の引張伸び及び少なくとも200psiの引張強度を示すシーラントなどの硬化生成物を提供する。一般に、クラスAシーラントの場合、引張及び伸びの要件はない。クラスBのシーラントについては、一般的要件として、引張強度は200psi以上であり、伸びは200%以上である。許容される伸び及び引張強度は、用途によって異なることがある。
【0150】
組成物は、シーラントなどの硬化生成物を提供し、これは、SAE AS5127/1パラグラフ7.8に記載されている手順に従って測定される場合、200psiを超える、例えば少なくとも220psi、少なくとも250psi、及び場合によっては少なくとも400psiの重ね剪断強度を示す。
【0151】
本開示によって提供される組成物から調製される硬化シーラントは、AMS3277に示されるような航空宇宙シーラントの要件を満たす又は超える。
【0152】
本開示によって提供される組成物でシールされたアパーチャ、表面、ジョイント、フィレット、フェイ表面(航空宇宙機のアパーチャ、表面、フィレット、ジョイント及びフェイ表面を含む)も開示される。
【0153】
本開示によって提供される導電性シーラント組成物は、500°Fで24時間の曝露後に室温で測定した以下の特性を示すことができる:1オーム/平方未満の表面抵抗率、200psiより大きい引張強度、100%を超える伸び、MIL−C−27725に従って測定された100%の凝集破壊。
【実施例】
【0154】
本開示によって提供される実施形態は、以下の実施例を参照することによってさらに例示され、これらが、特定のチオール末端プレポリマー、ポリエポキシド、及び非クロメート腐食防止剤の合成、特性、及び使用;並びにチオール末端プレポリマー、ポリエポキシド、及び非クロメート腐食防止剤を含む組成物を記載する。本開示の範囲から逸脱することなく、材料及び方法の両方に対する多くの変更が実施され得ることは、当業者には明らかである。
[実施例1]
<クラスAシーラント>
【0155】
実施例1のシーラントは、ブラシオン(brush−on)用途での使用に適したクラスAシーラントである。実施例1のシーラントは、促進剤(パートAと呼ばれる)とベース(パートBと呼ばれる)の2つのパートからなる。促進剤の配合物を表1Aに示す。
【表1】
【0156】
パートAの調製を以下に記載する。Epon(登録商標)828、DEN(登録商標)431、及びHB−40(登録商標)を、1.25ガロンのFlackTek Hauschildカップに入れる。Hauschild FlackTek Speedmixer DAC3000 HPを用いて、材料を1,000rpmで1分間混合した。次いで、カーボンブラック、ホウ酸亜鉛及び沈降炭酸カルシウムを添加した。組成物を200rpm、400rpm、600rpm、800rpm及び1,000rpmの速度でそれぞれ2分間混合して合計10分間混合した。次いで、コーティングされた炭酸カルシウム及び2−ベンゾチアゾリチオブタン二酸を添加した。組成物を200rpm、400rpm、600rpm、800rpm及び1,000rpmでそれぞれ2分間混合して合計10分間混合した。T−1601を添加し、組成物を800rpmで1分間混合した。T−5143を添加し、組成物を800rpmで1分間混合した。最後に、パートAの容器を140°Fのオーブンに7日間置いた。
【0157】
ベース配合物(パートB)の成分を表1Bに示す。
【表2】
【0158】
パートBの調製を以下に記載する。ポリチオエーテルプレポリマー、T−3920、T−3921及びMethylon(登録商標)75108を300 XL FlackTek Hauschildカップに添加した。Hauschildスピードミキサー1100.1 VAC−P(すべての混合工程用)を用いて、成分を真空下、1,500rpmで3分間混合した。
【0159】
次いで、水和アルミナ、コーティングされていない炭酸カルシウム、オルトリン酸亜鉛及びコーティングされた炭酸カルシウムを添加し、組成物を1,500rpmで1分間混合し、続いて真空下、1,000rpmで2分間混合した。スパチュラを用いて、残存する混合されていない乾燥材料をカップの両側から取り出し、混ぜた。混合手順を繰り返した。
【0160】
チタン酸ナトリウム、HB−40(登録商標)及びリン酸三カルシウムを混合組成物に添加した。組成物を真空下、1,200rpmで2分間混合した。次いで材料を室温に冷却した。次いで、Expancel(登録商標)920 DET 40 d25を添加し、組成物を1,000rpmで1分間混合し、続いて1,200rpmで2分間混合した。テトラn−ブチルチタネートを添加し、組成物をすぐにスパチュラで完全に手動で混合し、次いで1,200rpmで1分間混合した。DABCO(登録商標)33−LVを組成物に添加し、直ちにスパチュラで完全に手動で混合し、次いで1,200rpmで1分間混合した。3−アミノプロピルトリエトキシシランを組成物に添加し、組成物を1,200rpmで1分間混合した。酢酸エチルを添加し、1,200rpmで1分間手動で混合した。
【0161】
シーラントは、17.25重量部のパートAと100重量部のパートBとを合わせることによって調製した。カップの側面及び底面に黄色又は黒色の材料が観察されなくなるまで、組成物をスパチュラで完全に手動で混合した。次いで、組成物をFlackTek Hauschild Speedmixer 1100.1 VAC−Pを用いて100%真空下、1,200rpmで2分間混合した。混合後、試験試料を調製し、MIL−PRF−81733Dに従って試験した。結果を表1C及び表1Dに示す。
【表3】

【表4-1】

【表4-2】

[実施例2]
<クラスAシーラント>
【0162】
実施例2のシーラントは、ブラシオン用途での使用に適したクラスAシーラントである。実施例2のシーラントは、促進剤(パートAと呼ばれる)及びベース(パートBと呼ばれる)の2つのパートからなる。促進剤の配合物を表2Aに示す。
【表5】
【0163】
パートAを実施例1に記載したように調製した。
【0164】
ベース配合物(パートB)の成分を表2Bに示す。
【表6】
【0165】
パートBを実施例1に記載したように調製した。
【0166】
実施例2のシーラントは、パートAの17.25重量部とパートBの100重量部とを合わせることによって調製した。カップの側面及び底面に黄色又は黒色材料が観察されなくなるまで、組成物をスパチュラで手動で混合した。次いで、組成物を、FlackTek Hauschild Speedmixer 1100.1 VAC−P上で、真空下、1,200rpmで2分間混合した。混合後、試験試料を調製し、MIL−PRF−81733Dに従って試験した。結果を表2C及び表2Dに示す。
【表7】

【表8-1】

【表8-2】

[実施例3]
<クラスBシーラント>
【0167】
実施例3のシーラントは、フィレットをシールするのに適したクラスBシーラントである。実施例3のシーラントは、促進剤(パートAと呼ばれる)及びベース(パートBと呼ばれる)の2つのパートからなっていた。促進剤の配合物を表3Aに示す。
【表9】
【0168】
促進剤の配合物は、実施例1に記載したように調製した。
【0169】
ベース配合物(パートB)を表3Bに示す。
【表10】
【0170】
パートBは以下の方法で調製した。300 XL FlackTek Hauschildカップに、ポリチオエーテルプレポリマー、T−3920、T−3921、及びMethylon(登録商標)75108を添加した。Hauschildスピードミキサー1100.1VAC−P(すべての混合工程用)を用いて、組成物を100%真空下、1,500rpmで3分間混合した。沈降シリカ及びヒュームドシリカを添加し、組成物を1,500rpmで1分間混合し、続いて100%真空下、1,000rpmで2分間混合した。カップの側面を削り取り、組成物に添加した。次いで、水和アルミナ、二酸化チタン、オルトリン酸亜鉛、及びコーティングされた炭酸カルシウムを添加し、組成物を1,500rpmで1分間混合し、続いて100%真空下、1,000rpmで2分間混合した。スパチュラを用いて、カップの側面から材料を削り取り、組成物に添加し、再び混合した。チタン酸ナトリウム、HB−40(登録商標)、及びリン酸三カルシウムを添加し、組成物を100%真空下、1,200rpmで2分間混合した。材料を室温に冷却した。
【0171】
Expancel(登録商標)を冷却した組成物に添加し、1,000rpmで1分間、続いて1,200rpmで2分間混合した。テトラn−ブチルチタネートを添加し、直ちにスパチュラで完全に手動で混合し、次いで1,200rpmで1分間混合した。DABCO(登録商標)33−LVを添加し、直ちにスパチュラで完全に手動で混合し、次いで1,200rpmで1分間混合した。桐油を添加し、組成物を1,200rpmで1分間混合した。最後に、3−アミノプロピルトリエトキシシランを添加し、組成物を1,200rpmで1分間混合した。
【0172】
シーラントは、18.6重量部のパートAと100重量部のパートBを組み合わせて調製した。カップの側面及び底面に黄色又は黒色の材料が残らなくなるまで、シーラントをスパチュラで完全に手動で混合した。次いで、シーラントをFlackTek Hauschild Speedmixer 1100.1 VAC−Pを用いて100%真空下、1,200rpmで2分間混合した。混合後、試験試料を調製し、MIL−PRF−81733に従って試験した。結果を表3C及び3Dに示す。実施例3のクラスBシーラントの剥離強度要件は、20pli/100%凝集破壊であった。
【表11-1】

【表11-2】

【表12】
【0173】
耐腐食性は、ガルバニック電池法T−23、MIL−PRF−81733D及びMM−1076に従って決定した。ガルバニック電池浸漬試験のための浸漬媒体として、3%塩化ナトリウム水溶液を使用した。使用したパネル基材は、裸アルミニウム(AMS−4045)、ステンレス鋼(AMS−5516)、チタン組成物C(AMS−4911)及びカドミウムメッキ鋼(QQ−P−416)であった。すべての試験パネルは、MM−1076(8.1.2)による標準条件にて温度及び湿度を制御した部屋中、MM−1076(8.1.6)による14日間で硬化させた。
【0174】
摩耗していない裸アルミニウムパネルを、TURCO(L−628)浸漬ガーゼスポンジで洗浄し、追加の接着促進剤を適用しなかった。各AMS−4045裸アルミニウムパネルは、1/2’’3M2307マスキングテープを交互の裸表面/テープパターンで0.025’’の深さにテープを貼った。各パネルを適切なシーラントパターンにテープを貼った後、シーラントを各パネルに適用し、マスキングテープの高さに合わせた。試料は、室温又は温度及び湿度を制御した室内で2週間硬化させた。標準硬化の2週間後、パネルを異種金属(ステンレス鋼、チタン又はカドミウム)と対にし、塩化ナトリウム水溶液(3%)に2週間導入した。通常の脱イオン水を電池に添加して、元の水位まで1週間試験した。
【0175】
ガルバニック電池が2週間のコンディショニングを完了した後、異種金属が除去された。試料を熱水の下ですすぎ、残留塩堆積物を除去した。試料を乾燥ガーゼスポンジで拭き取り、完全に空気乾燥させた。各パネルの特定のシーラント領域をフラットエッジカミソリを用いて削り取り、接着損失(1〜5点、スコア5は接着損失がないことを示す)にランク付けした。最後に、各試料を分析し、パネルのシーラント領域及び不動態化領域の両方において腐食/孔食(スコア1〜5、スコア5は腐食/孔食がないことを示す)をランク付けした。試料をBausch and Lomb顕微鏡(1〜7倍の倍率)下で評価した。
【0176】
シーラント領域におけるガルバニック電池接着/腐食分析の結果を表3E〜3Fに示し、不動態化領域におけるガルバニック電池腐食分析の結果を表3G〜3Iに示す。実施例3のシーラント及びPPG Aerospaceから入手可能なクラスB腐食防止シーラントであるP/S−870B2の接着及び腐食を比較する。P/S−870B@シーラントは、4重量%の可溶性クロメートを含む2パート型二酸化マンガン硬化ポリスルフィド配合物である。
【表13】

【表14】

【表15】

【表16】

【表17】

【表18】
【0177】
表3E〜3Iに示される結果は、本開示によって提供される非クロメート腐食防止パッケージが、クロメート含有腐食防止パッケージと少なくとも同等かそれ以上の腐食保護を提供することを実証する。
[実施例4]
<クラスCシーラント>
【0178】
実施例4のシーラントは、フェイ表面シール用途での使用に適したクラスCシーラントである。実施例4のシーラントは、促進剤(パートAと呼ばれる)とベース(パートBと呼ばれる)の2つのパートからなる。促進剤の配合物を表4Aに示す。
【表19】
【0179】
実施例1に記載の方法を用いてパートAを調製した。
【0180】
ベース配合物(パートB)を表4Bに示す。
【表20】

【0181】
パートBは以下のプロセスを用いて調製した。300 XL FlackTek Hauschildカップに、ポリチオエーテルプレポリマー、T−3920、T−3921、及びMethylon(登録商標)75108を添加した。Hauschildスピードミキサー1100.1VAC−P(すべての混合工程用)を用いて、組成物を真空下、1,500rpmで3分間混合した。沈降炭酸カルシウム及びコーティングされた炭酸カルシウムを添加し、組成物を1,500rpmで1分間混合し、続いて真空下、1,000rpmで2分間混合した。次いで、水和アルミナ及びオルトリン酸亜鉛を添加し、1,500rpmで1分間混合し、続いて真空下、1,000rpmで2分間混合した。スパチュラを用いて、カップの側面を削り取り、混合していない乾燥材料を組成物に添加し、混合プロセスを繰り返した。次いで、チタン酸ナトリウム、HB−40(登録商標)及びリン酸三カルシウムを添加し、組成物を真空下、1,200rpmで2分間混合した。材料を室温に冷却した。
【0182】
テトラn−ブチルチタネートを冷却した材料に添加し、すぐにスパチュラで完全に手動で混合し、次いで1,500rpmで1分間混合した。2,4,6−トリ(ジメチルアミノメチル)フェノールを添加し、組成物を1,200rpmで1分間混合した。最後に、3−アミノプロピルトリエトキシシランを添加し、組成物を1,200rpmで1分間混合した。
【0183】
シーラントは、19.7重量部のパートA材料と100重量部のパートB材料とを合わせることによって調製した。300 XL FlackTek Hauschildカップにおいて、カップの側面及び底面に黄色又は黒色の材料が残らなくなるまで、材料をスパチュラで完全に手動で混合した。次いで、シーラントをFlackTek Hauschild Speedmixer 1100.1 VAC−Pを用いて真空下、1,200rpmで2分間混合した。混合後、試験試料を調製し、MIL−PRF−81733に従って試験した。結果を表4C〜4Hに示す。実施例4のクラスBシーラントの剥離強度要件は、20pli/100%凝集破壊であった。実施例4のシーラントの重ね剪断強度要件は、200pli/100%凝集破壊であった。
【表21】

【表22】

【表23】

【表24】

【表25】

【表26】

[実施例5]
<クラスCシーラント>
【0184】
実施例5のシーラントは、フェイ表面用途に使用するのに適したクラスCシーラントである。実施例5のシーラントは、促進剤(パートAと呼ばれる)とベース(パートBと呼ばれる)の2つのパートからなる。促進剤の配合物を表5Aに示す。
【表27】
【0185】
パートAを、実施例1に記載の手順に従って調製した。
【0186】
ベース配合物(パートB)を表5Bに示す。
【表28】
【0187】
パートBは以下の手順を用いて調製した。ポリチオエーテルプレポリマー、T−3920、T−3921及びMethylon(登録商標)75108を300 XL FlackTek Hauschildカップに添加した。Hauschildスピードミキサー1100.1VAC−P(すべての混合工程用)を用いて、組成物を真空下、1,500rpmで3分間混合した。沈降炭酸カルシウム及びコーティングされた炭酸カルシウムを添加し、組成物を1,500rpmで1分間混合し、続いて真空下、1,000rpmで2分間混合した。水和アルミナ及びオルトリン酸亜鉛を添加し、組成物を1,500rpmで1分間混合し、続いて真空下、1,000rpmで2分間混合した。スパチュラを用いて、カップの側面を削り取り、材料を組成物に添加し、混合プロセスを繰り返した。チタン酸ナトリウム、HB−40(登録商標)、及びリン酸三カルシウムを添加し、組成物を真空下、1,200rpmで2分間混合した。材料を室温に冷却した。
【0188】
モレキュラーシーブを冷却した組成物に添加し、1,500rpmで1分間、続いて真空下、1,000rpmで2分間混合した。テトラn−ブチルチタネートを添加し、直ちにスパチュラで完全に手動で混合し、次いで1,500rpmで1分間混合した。イミダゾールを添加し、組成物を1,200rpmで1分間混合した。最後に、3−アミノプロピルトリエトキシシランを添加し、組成物を1,200rpmで1分間混合した。
【0189】
シーラントは、300 XL FlackTek Hauschildカップにおいて、19.7重量部のパートA材料と100重量部のパートB材料とを合わせることによって調製した。カップの側面及び底面に黄色又は黒色の材料が残らなくなるまで、シーラントをスパチュラで完全に手動で混合した。次いで、シーラントをFlackTek Hauschildスピードミキサー1100.1 VAC−Pで1,200rpmで100%真空で2分間混合した。混合後、試験試料を調製し、MIL−PRF−81733に従って試験したが、これはその全体を参照により本明細書に組み込む。結果を表5Cに示す。実施例5のクラスCシーラントの剥離強度要件は、20pli/100%凝集破壊であった。
【表29】

【表30】

【表31】

【表32】
【0190】
最後に、本明細書に開示された実施形態を実施する代替の方法があることに留意すべきである。したがって、本実施形態は例示的なものであり、限定的なものではないと考えられるべきである。さらに、特許請求の範囲は、本明細書に与えられた詳細に限定されるものではなく、その完全な範囲及びその均等物について認められる。
本願の出願当初の特許請求の範囲に係る発明の内容は、以下の通りである。
[1] チオール末端ポリチオエーテルプレポリマー、
ポリエポキシド硬化剤、及び
非クロメート腐食防止剤
を含む、組成物。
[2] ポリエポキシド硬化剤が、エポキシノボラック樹脂、ビスフェノールA/エピクロロヒドリンエポキシ樹脂、又はそれらの組合せを含む、[1]に記載の組成物。
[3] 非クロメート腐食防止剤が、ホウ酸亜鉛、2−ベンゾチアゾリルチオブタン二酸、オルトリン酸亜鉛、チタン酸ナトリウム、リン酸三カルシウム、又は上記のいずれかの組合せを含む、[1]に記載の組成物。
[4] 非クロメート腐食防止剤が、ホウ酸亜鉛、2−ベンゾチアゾリルチオブタン二酸、オルトリン酸亜鉛、チタン酸ナトリウム、リン酸三カルシウムを含む、[1]に記載の組成物。
[5] 非クロメート腐食防止剤が、
2重量%〜6重量%のホウ酸亜鉛、
1重量%〜5重量%の2−ベンゾチアゾリルチオブタン二酸、
35重量%〜70重量%のオルトリン酸亜鉛、
20重量%〜50重量%のチタン酸ナトリウム、及び
3重量%〜8重量%のリン酸三カルシウム
を含み、
重量%は非クロメート腐食防止剤の総重量に基づく、[1]に記載の組成物。
[6] [1]に記載の組成物であって、
チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーが、式(1):
−R−[−S−(CH−O−[−R−O−]−(CH−S−R− (1)
[式中、
各Rは、独立して、C2−10n−アルカンジイル基、C3−6分枝状アルカンジイル基、C6−8シクロアルカンジイル基、C6−10アルカンシクロアルカンジイル基、複素環式基、−[(−CHR−)−X−]−(CHR−基から選択され、式中、各Rは、水素及びメチルから選択され、
各Rは、独立して、C2−10n−アルカンジイル基、C3−6分枝状アルカンジイル基、C6−8シクロアルカンジイル基、C6−14アルカンシクロアルカンジイル基、複素環式基、及び−[(−CH−)−X−]−(CH−基から選択され、
各Xは、独立して、O、S、−NH−及び−N(−CH)−から選択され、
mは0〜50の範囲であり、
nは1〜60の範囲の整数であり、
pは2〜6の範囲の整数であり、
qは1〜5の範囲の整数であり、及び
rは2〜10の範囲の整数である]
の構造を有する骨格を含む、上記組成物。
[7] [1]に記載の組成物であって、
チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーが、式(2a)のチオール末端ポリチオエーテルプレポリマー、式(2b)のチオール末端ポリチオエーテルプレポリマー、又はそれらの組合せを含み、
HS−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−SH (2)
{HS−R−[−S−(CH−O−(R−O)−(CH−S−R−]−S−V’−}B (2a)
[式中、
各Rは、独立して、C2−10アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−14アルカンシクロアルカンジイル、C5−8ヘテロシクロアルカンジイル及び−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−から選択され、式中、
pは2〜6の整数であり、
qは1〜5の整数であり、
rは2〜10の整数であり、
各Rは、独立して水素又はメチルから選択され、及び
各Xは独立して−O−、−S−、−NH−及び−N(−CH)−から選択され、
各Rは、独立して、C1−10アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−14アルカンシクロアルカンジイル及び−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−から選択され、式中、p、q、r、R及びXはRについて定義したとおりであり、
mは0〜50の整数であり、
nは1〜60の整数であり、
Bはz価のビニル末端多官能化剤B(−V)のコアを表し、式中、
zは3〜6の整数であり、
各Vは、末端ビニル基を含む基であり、及び
各−V’−は、−Vとチオールとの反応から誘導される]
である、上記組成物。
[8] [1]に記載の組成物であって、
チオール末端ポリチオエーテルプレポリマーが、
(a) 式(3)のジチオール:
HS−R−SH (3)
[式中、
はC2−6アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−10アルカンシクロアルカンジイル、C5−8ヘテロシクロアルカンジイル及び−[−(CHR−X−]−(CHR−から選択され、式中、
各Rは、独立して、水素及びメチルから選択され、
各Xは、独立して、−O−、−S−、−NH−及び−N(−CH)−から選択され、
pは2〜6の整数であり、
qは1〜5の整数であり、及び
rは2〜10の整数である]
と、
(b) 式(4)のジビニルエーテル:
CH=CH−O−[−R−O−]−CH=CH (4)
[式中、
各Rは、独立して、C1−10アルカンジイル、C6−8シクロアルカンジイル、C6−14アルカンシクロアルカンジイル、及び−[(−CHR−)−X−]−(−CHR−)−から選択され、式中、p、q、r、R及びXは、Rについて定義したとおりであり、
mは0〜50の整数であり、及び
nは1〜60の整数である]
とを含む反応物の反応生成物を含む、
上記組成物。
[9] [8]に記載の組成物であって、
反応物が、
(c)多官能性化合物B(−V)
[式中、
Bは、z価のビニル末端多官能化剤B(−V)のコアを表し、
zは3〜6の整数であり、及び
各−Vは、チオール基と反応性である末端基を含む部分である]
である、上記組成物。
[10] 組成物が、
30重量%〜65重量%のチオール末端ポリチオエーテルプレポリマー、
3重量%〜10重量%のポリエポキシド硬化剤、及び
重量%〜12重量%の非クロメート腐食防止剤
を含み、
重量%は組成物の総重量に基づく、[1]に記載の組成物。
[11] 非クロメート腐食防止剤が、
0.05重量%〜0.5重量%のホウ酸亜鉛、
0.05重量%〜0.4重量%の2−ベンゾチアゾリルチオブタン二酸、
1重量%〜6重量%のオルトリン酸亜鉛、
0.5重量%〜5重量%のチタン酸ナトリウム、及び
0.05重量%〜0.7重量%のリン酸三カルシウム
を含み、
重量%は組成物の総重量に基づく、[1]に記載の組成物。
[12] アミン触媒を含む、[1]に記載の組成物。
[13] アミン触媒が、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2,4,6−トリ(ジメチルアミノメトール)フェノール、イミダゾール、又は上記のいずれかの組合せを含む、[12]に記載の組成物。
[14] 組成物がシーラントとして配合される、[1]に記載の組成物。
[15] [14]に記載の組成物から調製された硬化シーラント。
[16] 部品をシールする方法であって、
[14]に記載の組成物を提供する工程、
[14]に記載の組成物を部品の少なくとも一部に適用する工程、及び
前記適用された組成物を硬化させてシールされた部分を提供する工程
を含む、上記方法。
[17] シーラント系であって、
チオール末端ポリチオエーテルプレポリマー、及び
非クロメート腐食防止剤の第1の部分
を含む第1のパート、並びに
ポリエポキシド、及び
非クロメート腐食防止剤の第2の部分
を含む第2のパート
を含む、シーラント系。
[18] 第1のパートが、
40重量%〜80重量%のチオール末端ポリチオエーテルプレポリマー、
1重量%〜7重量%のオルトリン酸亜鉛、
0.5重量%〜5重量%のチタン酸ナトリウム、及び
0.1重量%〜0.7重量%のリン酸三カルシウム
を含み、重量%は第1のパートの総重量に基づき、非クロメート腐食防止剤の第1の部分は、オルトリン酸亜鉛、チタン酸ナトリウム、及びリン酸三カルシウムを含み、並びに
第2のパートが、
30重量%〜60重量%のポリエポキシド、
0.5重量%〜3.5重量%のホウ酸亜鉛、及び
0.5重量%〜3重量%の2−ベンゾチアゾリルチオブタン二酸
を含み、重量%は第2のパートの総重量に基づき、非クロメート腐食防止剤の第2のパートは、ホウ酸亜鉛及び2−ベンゾチアゾリルチオブタン二酸を含む、
[17]に記載のシーラント組成物。
[19] [18]に記載のシーラント系の第1のパート及び第2のパートを組み合わせることによって形成された硬化性シーラント組成物。
[20] 非クロメート腐食防止剤であって、
2重量%〜6重量%のホウ酸亜鉛、
1重量%〜5重量%の2−ベンゾチアゾリルチオブタン二酸、
35重量%〜70重量%のオルトリン酸亜鉛、
20重量%〜50重量%のチタン酸ナトリウム、及び
3重量%〜8重量%のリン酸三カルシウム
を含み、
重量%は非クロメート腐食防止剤の総重量に基づく、非クロメート腐食防止剤。