【課題を解決するための手段】
【0008】
苦味を有する原薬を含む顆粒剤、散剤やシロップ用剤(ドライシロップ剤ともいう)は、苦味抑制のために顆粒をコーティング剤で被覆する方法を用いることが一般的であるが、コーティングした顆粒の溶出性低下、水に懸濁した後の懸濁安定性、及び水分が高い環境で保存した際の顆粒同士の凝集が懸念される。本発明者らは、これらの問題を解決すべく鋭意検討した結果、カルボキシル基を持つ腸溶性ポリマーをメマンチンまたはその薬学上許容される塩の医薬組成物に配合すること、具体的には粉末状の医薬組成物中に両成分を配合するか、顆粒内に両成分を配合することで、顆粒のコーティング工程を必要とせずにメマンチンまたはその薬学上許容される塩の苦味が低減でき、溶出性、懸濁安定性及び懸濁後の液中の主薬含量の均一性が良好であり、かつ水分が高い環境で保存した際の粉末や顆粒同士の凝集が抑制できることを見出した。そして、従来のメマンチン塩酸塩の錠剤と同様の溶出特性(速溶性)を持ち、製剤学的に安定な、顆粒剤、散剤やドライシロップ剤などの医薬組成物とすることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(21)に関する。
(1)メマンチンまたはその薬学上許容される塩および腸溶性ポリマーを含み、剤形が顆粒剤、散剤またはシロップ用剤である医薬組成物。
(2)剤形が顆粒剤または顆粒状のシロップ用剤であって、顆粒内にメマンチンまたはその薬学上許容される塩と腸溶性ポリマーが混在している(1)に記載の医薬組成物。
(3)メマンチンまたはその薬学上許容される塩と腸溶性ポリマーが実質的に均質に混在している(1)または(2)に記載の医薬組成物。
(4)メマンチンまたはその薬学上許容される塩が、メマンチン塩酸塩である(1)〜(3)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(5)腸溶性ポリマーが、乾燥メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーLおよびメタクリル酸コポリマーSからなる群から選ばれる1種または2種以上である(1)〜(4)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(6)腸溶性ポリマーが、乾燥メタクリル酸コポリマーLDである(1)〜(4)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(7)腸溶性ポリマーの配合量が、メマンチンまたはその薬学上許容される塩1重量部に対して0.5〜15重量部である(1)〜(6)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(8)腸溶性ポリマーの配合量が、メマンチンまたはその薬学上許容される塩1重量部に対して2〜10重量部である(1)〜(6)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(9)さらに、アスパルテーム、サッカリンナトリウム水和物、グリセリン、バニリン、デキストリンおよびスクラロースからなる群から選ばれる1種または2種以上の矯味剤が配合されている(1)〜(8)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(10)矯味剤がアスパルテームである(9)に記載の医薬組成物。
(11)矯味剤の配合量が、腸溶性ポリマー1重量部に対して0.05〜5重量部である(9)または(10)に記載の医薬組成物。
(12)矯味剤の配合量が、メマンチンまたはその薬学上許容される塩1重量部に対して1〜3重量部である(9)または(10)に記載の医薬組成物。
(13)さらに、糖アルコール、崩壊剤、結合剤および流動化剤から選ばれる1種以上の添加剤を含有する(1)〜(12)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(14)糖アルコールが、D−マンニトールである(13)に記載の医薬組成物。
(15)崩壊剤が、クロスポビドン、カルメロースカルシウム、カルメロース、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプンおよびデンプングリコール酸ナトリウムからなる群から選ばれる1種または2種以上である(13)または(14)に記載の医薬組成物。
(16)結合剤が、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルピロリドンからなる群から選ばれる1種または2種以上である(13)〜(15)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(17)流動化剤が、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、酸化チタン、ステアリン酸およびタルクからなる群から選ばれる1種または2種以上である(13)〜(16)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(18)日本薬局方の溶出試験パドル法(試験液:水、パドル回転数:50rpm、試験液量:900mL)において、メマンチンまたはその薬学上許容される塩の溶出率が15分で85%以上である(1)〜(17)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(19)下記の試験において、30分後の試験液上層に含まれる主薬であるメマンチンまたはその薬学上許容される塩の含量が理論含量の80%以上である(1)〜(18)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
水に懸濁した後の試験液中の主薬含量の均一性試験:
直径3cmの50mLの自立型遠沈管を用いて、医薬組成物4gを37mLの水に加えて1分間振とうして懸濁させた後、静置させる。規定時間経過後の試験液上層20mLを採取して主薬の含量を測定する。懸濁直後の均一な試験液上層20mL中に含まれる主薬の理論含量を100%とする。
(20)(1)〜(19)のいずれか1項に記載の医薬組成物の製造方法であって、メマンチンまたはその薬学上許容される塩を腸溶性ポリマーと均質に混合する工程を含む、方法。
(21)(1)〜(19)のいずれか1項に記載の医薬組成物の製造方法であって、剤形が顆粒剤または顆粒状のシロップ用剤であり、以下の工程1〜3の工程を含む方法:
工程1:メマンチンまたはその薬学上許容される塩、腸溶性ポリマー、および所望により矯味剤および/または他の添加剤を均質に混合する工程;
工程2:得られた混合物を造粒する工程;および、
工程3:得られた造粒物に所望により矯味剤および/または他の添加剤を混合する工程。
【0010】
また、本発明は以下の(1a)〜(20a)に関する。
(1a)メマンチン塩酸塩および乾燥メタクリル酸コポリマーLDを含有する医薬組成物。
(2a)メマンチン塩酸塩および乾燥メタクリル酸コポリマーLDを含有する医薬組成物であって、メマンチン塩酸塩が乾燥メタクリル酸コポリマーLDと実質的に均質に混合されている(1a)に記載の医薬組成物。
(3a)メマンチン塩酸塩および乾燥メタクリル酸コポリマーLDを含有する医薬組成物であって、メマンチン塩酸塩と乾燥メタクリル酸コポリマーLDが医薬組成物中に均質に存在する(1a)または(2a)に記載の医薬組成物。
(4a)乾燥メタクリル酸コポリマーLDの配合量が、メマンチン塩酸塩1重量部に対して0.5〜15重量部である(1a)〜(3a)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(5a)乾燥メタクリル酸コポリマーLDの配合量が、メマンチン塩酸塩1重量部に対して2〜10重量部である(1a)〜(3a)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(6a)さらに、アスパルテーム、サッカリンナトリウム水和物、グリセリン、バニリン、デキストリンおよびスクラロースからなる群から選ばれる1種または2種以上の矯味剤が配合されている(1a)〜(5a)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(7a)矯味剤がアスパルテームである(6a)に記載の医薬組成物。
(8a)矯味剤の配合量が、乾燥メタクリル酸コポリマーLD1重量部に対して0.05〜5重量部(好ましくは、0.1〜1.5重量部)である(6a)または(7a)に記載の医薬組成物。
(9a)さらに、糖アルコール、崩壊剤、結合剤および流動化剤から選ばれる1種以上を含有する(1a)〜(8a)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(10a)糖アルコールが、D−マンニトールである(9a)に記載の医薬組成物。
(11a)崩壊剤が、クロスポビドン、カルメロースカルシウム、カルメロース、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプンおよびデンプングリコール酸ナトリウムからなる群から選ばれる1種または2種以上である(9a)または(10a)に記載の医薬組成物。
(12a)結合剤が、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルピロリドンからなる群から選ばれる1種または2種以上である(9a)〜(11a)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(13a)流動化剤が、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、酸化チタン、ステアリン酸およびタルクからなる群から選ばれる1種または2種以上である(9a)〜(12a)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(14a)医薬組成物が、顆粒剤、散剤またはシロップ用剤である(1a)〜(13a)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(15a)日本薬局方の溶出試験において、水を用いた場合のメマンチン塩酸塩の溶出率が15分で85%以上である(1a)〜(14a)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(16a)(1a)〜(15a)のいずれか1項に記載の医薬組成物の製造方法であって、乾燥メマンチン塩酸塩をメタクリル酸コポリマーLDと均質に混合する工程を含む、方法。
(17a)メマンチン塩酸塩を乾燥メタクリル酸コポリマーLDと均質に混合する工程を含む、メマンチン塩酸塩の苦味の低減方法。
(18a)メマンチン塩酸塩および乾燥メタクリル酸コポリマーLDを含有する顆粒。
(19a)メマンチン塩酸塩および乾燥メタクリル酸コポリマーLDを含有する顆粒であって、メマンチン塩酸塩が乾燥メタクリル酸コポリマーLDと均質に混合されている顆粒。
(20a)メマンチン塩酸塩および乾燥メタクリル酸コポリマーLDを含有する顆粒であって、メマンチン塩酸塩と乾燥メタクリル酸コポリマーLDが顆粒中に均質に存在する顆粒。