(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853851
(24)【登録日】2021年3月16日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】フライバックコンバータの制御方法及び装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20210322BHJP
【FI】
H02M3/28 R
H02M3/28 H
【請求項の数】20
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-106119(P2019-106119)
(22)【出願日】2019年6月6日
(65)【公開番号】特開2020-10591(P2020-10591A)
(43)【公開日】2020年1月16日
【審査請求日】2019年6月6日
(31)【優先権主張番号】201810718910.1
(32)【優先日】2018年7月3日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】511268432
【氏名又は名称】台達電子企業管理(上海)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】宋海斌
(72)【発明者】
【氏名】許道飛
(72)【発明者】
【氏名】章進法
【審査官】
山崎 雄司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2017−017846(JP,A)
【文献】
実開平06−036392(JP,U)
【文献】
特開2017−005988(JP,A)
【文献】
中国実用新案第201430532(CN,Y)
【文献】
中国特許出願公開第107896062(CN,A)
【文献】
米国特許出願公開第2017/0264206(US,A1)
【文献】
ZHANG, Junming, et al.,A High Efficiency Flyback Converter With New Active Clamp Technique,IEEE TRANSACTIONS ON POWER ELECTRONICS,米国,IEEE,2010年 7月,VOL.25 NO.7,P.1775-1785
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00−3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインスイッチング素子、変圧器及び補助スイッチング素子を備えるフライバックコンバータの制御方法であって、
前記フライバックコンバータの入力電圧を表す第1電圧信号及び前記フライバックコンバータの出力電圧を表す第2電圧信号をリアルタイムで取得するステップ1と、
前記第1電圧信号及び前記第2電圧信号に基づいて前記補助スイッチング素子の導通時間を取得し、前記導通時間に基づいて第1制御信号を出力して前記補助スイッチング素子をオフにするステップ2と、
前記第1制御信号及びデッドタイムに基づいて第2制御信号を出力して前記メインスイッチング素子を開通
するステップ3と
、を含み、
前記ステップ2において、以下の式に基づいて前記導通時間を取得し、
【数1】
そのうち、tonは、前記導通時間であり、Vbusは、前記第1電圧信号の電圧であり、Voは、前記第2電圧信号の電圧であり、Ceqは、前記メインスイッチング素子の第1端子のアースに対する寄生容量の容量値であり、Lmは、前記変圧器の励磁インダクタンスのインダクタンス値であり、nは、前記変圧器の巻数比であり、且つ、
前記デッドタイムは、前記補助スイッチング素子がオフになってから、前記変圧器の前記励磁インダクタンスと前記メインスイッチング素子の前記寄生容量が共振されることによって、前記メインスイッチング素子のドレイン電圧が0になるまでの時間であることを特徴とする、フライバックコンバータの制御方法。
【請求項2】
前記補助スイッチング素子は、前記変圧器の一次巻線に接続されるアクティブクランプ素子である、請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記フライバックコンバータの前記変圧器は、前記補助スイッチング素子に直列接続される補助巻線をさらに備える、請求項1に記載の制御方法。
【請求項4】
前記ステップ1において、前記フライバックコンバータの入力端子及び出力端子の電圧を採集することで前記第1電圧信号及び前記第2電圧信号をそれぞれ取得する、請求項1に記載の制御方法。
【請求項5】
前記ステップ1において、前記変圧器の前記補助巻線の負電圧を採集して前記第1電圧信号を取得し、前記補助巻線の正電圧を採集して前記第2電圧信号を取得する、請求項3に記載の制御方法。
【請求項6】
前記ステップ2は、さらに、
前記第2電圧信号に基づき、比例定数に従って電流信号を出力するステップ21と、
第3制御信号を利用して第1キャパシタを充電状態にし、かつ前記電流信号を利用して前記第1キャパシタを充電するステップ22と、
前記第1電圧信号の電圧と前記第1キャパシタの電圧をリアルタイムで比較し、前記第1電圧信号の電圧と前記第1キャパシタの電圧が同じであるとき、前記導通時間を取得するステップ23と、
前記導通時間に基づいて前記第1制御信号を出力することで、前記補助スイッチング素子をオフにするステップ24と、を備える、請求項1に記載の制御方法。
【請求項7】
前記第3制御信号は、前記補助スイッチング素子の開通信号である、請求項6に記載の制御方法。
【請求項8】
前記ステップ3において、前記第1制御信号を出力した後、前記デッドタイムを遅延させて前記第2制御信号を出力することで前記メインスイッチング素子を開通する、請求項1に記載の制御方法。
【請求項9】
前記メインスイッチング素子の第1端子が前記変圧器の励磁インダクタンスに電気的に接続され、第2端子が接地され、
前記ステップ21において、以下の式に基づいて前記比例定数を取得し、
【数2】
そのうち、Cは、前記第1キャパシタの容量値であり、Kは、前記比例定数であり、C
eqは、前記メインスイッチング素子の第1端子のアースに対する寄生容量の容量値であり、L
mは、前記励磁インダクタンスのインダクタンス値であり、nは、前記変圧器の巻数比である、請求項6に記載の制御方法。
【請求項10】
前記ステップ3において、以下の式に基づいて前記デッドタイムを取得し、
【数3】
そのうち、t
delayは、前記デッドタイムであり、C
eqは、前記メインスイッチング素子の第1端子のアースに対する寄生容量の容量値であり、L
mは、前記励磁インダクタンスのインダクタンス値である、請求項
1に記載の制御方法。
【請求項11】
メインスイッチング素子、変圧器及び補助スイッチング素子を備えるフライバックコンバータの制御装置であって、
前記フライバックコンバータの入力電圧を表す第1電圧信号、及び前記フライバックコンバータの出力電圧を表す第2電圧信号をリアルタイムで取得し、かつ前記第1電圧信号及び前記第2電圧信号に基づいて前記補助スイッチング素子の導通時間を取得し、前記導通時間に基づいて第1制御信号を出力することで前記補助スイッチング素子をオフにするクランプ素子導通時間制御部と、
前記第1制御信号及びデッドタイムに基づいて第2制御信号を出力することで前記メインスイッチング素子を開通するデッドタイム制御部と、を備え
、
前記クランプ素子導通時間制御部は、以下の式に基づいて前記導通時間を取得し、
【数4】
そのうち、tonは、前記導通時間であり、Vbusは、前記第1電圧信号の電圧であり、Voは、前記第2電圧信号の電圧であり、Ceqは、前記メインスイッチング素子の第1端子のアースに対する寄生容量の容量値であり、Lmは、前記変圧器の励磁インダクタンスのインダクタンス値であり、nは、前記変圧器の巻数比であり、且つ、
前記デッドタイムは、前記補助スイッチング素子がオフになってから、前記変圧器の前記励磁インダクタンスと前記メインスイッチング素子の前記寄生容量が共振されることによって、前記メインスイッチング素子のドレイン電圧が0になるまでの時間であることを特徴とする、フライバックコンバータの制御装置。
【請求項12】
前記補助スイッチング素子は、前記変圧器の一次巻線に接続されるアクティブクランプ素子である、請求項11に記載の制御装置。
【請求項13】
前記フライバックコンバータの前記変圧器は、前記補助スイッチング素子に直列接続される補助巻線をさらに備える、請求項11に記載の制御装置。
【請求項14】
前記クランプ素子導通時間制御部は、前記フライバックコンバータの入力端子及び出力端子の電圧を採集することで前記第1電圧信号及び前記第2電圧信号をそれぞれ取得する、請求項11に記載の制御装置。
【請求項15】
前記クランプ素子導通時間制御部は、前記変圧器の前記補助巻線の負電圧を採集して前記第1電圧信号を取得し、前記補助巻線の正電圧を採集して前記第2電圧信号を取得する、請求項13に記載の制御装置。
【請求項16】
前記クランプ素子導通時間制御部は、
前記第2電圧信号に基づき、比例定数に従って電流信号を出力する電流信号出力モジュールと、
第1端子が前記電流信号出力モジュールに電気的に接続され、第2端子が接地される第1キャパシタと、
前記第1キャパシタに並列接続され、第3制御信号に基づいてオフとなりかつオフになったとき、前記電流信号を利用して前記第1キャパシタへの充電を開始する第1制御スイッチと、
第1入力端子が前記第1キャパシタの第1端子及び前記電流信号出力モジュールに電気的に接続され、第2入力端子が前記第1電圧信号を受信し、前記第1電圧信号の電圧と前記第1キャパシタの電圧をリアルタイムで比較する比較モジュールと、
前記比較モジュールに電気的に接続され、前記第1キャパシタの電圧と前記第1電圧信号の電圧が同じであるとき前記導通時間を取得し、かつ前記導通時間に基づいて前記第1制御信号を出力して前記補助スイッチング素子をオフにする第1制御信号出力モジュールと、を備える、請求項11に記載の制御装置。
【請求項17】
前記第3制御信号は、前記補助スイッチング素子の開通信号である、請求項16に記載の制御装置。
【請求項18】
前記デッドタイム制御部は、
前記デッドタイムを取得するデッドタイム取得モジュールと、
前記デッドタイム取得モジュールに電気的に接続され、前記第1制御信号出力モジュールが前記第1制御信号を出力すると、前記デッドタイムを遅延させて前記第2制御信号を出力することで前記メインスイッチング素子を開通する第2制御信号出力モジュールと、
を備える、請求項16に記載の制御装置。
【請求項19】
前記メインスイッチング素子の第1端子が前記変圧器の励磁インダクタンスに電気的に接続され、前記メインスイッチング素子の第2端子が接地され、かつ以下の式に基づいて前記比例定数を取得し、
【数5】
そのうち、Cは、前記第1キャパシタの容量値であり、Kは、前記比例定数であり、C
eqは、前記メインスイッチング素子の第1端子のアースに対する寄生容量の容量値であり、L
mは、励磁インダクタンスのインダクタンス値であり、nは、前記変圧器の巻数比である、請求項
16に記載の制御装置。
【請求項20】
前記デッドタイム制御部は、以下の式に基づいて前記デッドタイムを取得し、
【数6】
そのうち、t
delayは、前記デッドタイムであり、C
eqは、前記メインスイッチング素子の第1端子のアースに対する寄生容量の容量値であり、L
mは、前記励磁インダクタンスのインダクタンス値である、請求項
11に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライバックコンバータの制御方法及び装置に関し、特に、出力電圧が変化する場合に適用するフライバックコンバータの制御方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フライバックコンバータは、回路構成が簡単であるため将来において電源アダプターの高周波化、小型化を実現するのに最適なトポロジー構造であるが、メインスイッチング素子のスイッチング損失が原因となってそのスイッチング周波数の向上が困難である。従来、フライバックコンバータのメインスイッチング素子のゼロ電圧スイッチング(ZVS)によりメインスイッチング素子のスイッチング損失を除去することができる。ゼロ電圧スイッチング(ZVS)は、メインスイッチング素子の導通に先立って補助スイッチング素子を一定時間かけて開通することで実現でき、そのうち該補助スイッチング素子は、アクティブクランプのクランプ素子であっても良く、補助巻線に直列接続されるスイッチであっても良い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の制御方法によると、補助スイッチング素子の開通時間、及び補助スイッチング素子とメインスイッチング素子のデッドタイムはいずれも固定時間の制御方式を採用するが、このような手法は出力電圧が変化する場合に適せず、将来のUSB PDの応用を満たすことができない。したがって、最適設計の効率化を図る目的で補助スイッチング素子の開通時間及びデッドタイムを入力電圧、出力電圧の変化に伴って変化せざるを得ず、制御が特に煩雑になってしまう。一方、設計周波数の上昇に伴ってデッドタイムが次第に短くなり、コントローラの伝達遅延及び許容差に起因してデッドタイムの制御が特に難しくなることがある。こういった課題を解決するため、効率化と制御方法の簡略化を両立させることのできるライバックコンバータの制御方法及び装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記従来技術の問題を解決するため、本発明は、ライバックコンバータの制御方法を提供することを目的とし、前記ライバックコンバータは、メインスイッチング素子、変圧器及び補助スイッチング素子を有し、前記制御方法は、前記フライバックコンバータの入力電圧を表す第1電圧信号及び前記フライバックコンバータの出力電圧を表す第2電圧信号をリアルタイムで取得するステップ1と、前記第1電圧信号及び前記第2電圧信号に基づいて補助スイッチング素子の導通時間を取得し、かつ導通時間に基づいて第1制御信号を出力することで前記補助スイッチング素子をオフにするステップ2と、第1制御信号及びデッドタイムに基づいて第2制御信号を出力することでメインスイッチング素子を開通し、前記デッドタイムが固定時間であるステップ3とを備える。
【0005】
前記制御方法において、前記補助スイッチング素子は、前記変圧器の一次巻線に接続される前記ライバックコンバータのアクティブクランプ素子である。
【0006】
前記制御方法において、前記ライバックコンバータの変圧器は、前記補助スイッチング素子に直列接続される補助巻線をさらに備える。
【0007】
前記制御方法において、前記ステップ1において前記ライバックコンバータの入力端子及び出力端子の電圧を採集することで、前記第1電圧信号及び前記第2電圧信号をそれぞれ取得する。
【0008】
前記制御方法において、前記ステップ1において前記変圧器の前記補助巻線の負電圧を採集することで前記第1電圧信号を取得し、前記補助巻線の正電圧を採集することで前記第2電圧信号を取得する。
【0009】
前記制御方法において、前記ステップ2は、前記第2電圧信号に基づき、比例定数に従って電流信号を出力するステップ21と、第3制御信号を利用して第1キャパシタを充電状態にし、かつ前記電流信号を利用して前記第1キャパシタを充電するステップ22と、前記第1電圧信号の電圧と前記第1キャパシタの電圧をリアルタイムで比較し、前記第1電圧信号の電圧と前記第1キャパシタの電圧が同じであるとき前記導通時間を取得するステップ23と、前記導通時間に基づいて前記第1制御信号を出力することで前記補助スイッチング素子をオフにするステップ24と、を備える。
【0010】
前記制御方法において、前記第3制御信号は、前記補助スイッチング素子の開通信号である。
【0011】
前記制御方法において、前記ステップ3において前記第1制御信号を出力した後、前記デッドタイムを遅延させて前記第2制御信号を出力することで前記メインスイッチング素子を開通する。
【0012】
前記制御方法において、前記メインスイッチング素子の第1端子が前記変圧器の励磁インダクタンスに電気的に接続され、前記メインスイッチング素子の第2端子が接地され、かつ前記ステップ21において以下の式に基づいて前記比例定数を取得し、
【0013】
【数1】
【0014】
そのうち、Cは、前記第1キャパシタの容量値であり、Kは、前記比例定数であり、C
eqは、前記メインスイッチング素子の第1端子のアースに対する寄生容量の容量値であり、L
mは、励磁インダクタンスのインダクタンス値であり、nは、前記変圧器の巻数比である。
【0015】
前記制御方法において、前記ステップ2において以下の式に基づいて前記導通時間を取得し、
【0016】
【数2】
【0017】
そのうち、t
onは、前記導通時間であり、V
busは、前記第1電圧信号の電圧であり、V
oは、前記第2電圧信号の電圧であり、C
eqは、前記メインスイッチング素子の第1端子のアースに対する寄生容量の容量値であり、L
mは、前記変圧器の励磁インダクタンスのインダクタンス値であり、nは、前記変圧器の巻数比である。
【0018】
前記制御方法において、前記ステップ3は以下の式に基づいて前記デッドタイムを取得し、
【0019】
【数3】
【0020】
そのうち、t
delayは、前記デッドタイムであり、C
eqは、前記メインスイッチング素子の第1端子のアースに対する寄生容量の容量値であり、L
mは、前記励磁インダクタンスのインダクタンス値である。
【0021】
本発明は、メインスイッチング素子、変圧器及び補助スイッチング素子を備えるフライバックコンバータの制御装置を提供し、前記制御装置は、フライバックコンバータの入力電圧を表す第1電圧信号及びフライバックコンバータの出力電圧を表す第2電圧信号をリアルタイムで取得し、かつ前記第1電圧信号及び前記第2電圧信号に基づいて前記補助スイッチング素子の導通時間を取得し、前記導通時間に基づいて第1制御信号を出力して前記補助スイッチング素子をオフにするクランプ素子導通時間制御部と、前記第1制御信号及びデッドタイムに基づいて第2制御信号を出力して前記メインスイッチング素子を開通し、前記デッドタイムが固定時間であるデッドタイム制御部と、を備える。
【0022】
前記制御装置において、前記補助スイッチング素子は、前記変圧器の一次巻線に並列接続される前記フライバックコンバータのアクティブクランプ素子である。
【0023】
前記制御装置において、前記フライバックコンバータの変圧器は、前記補助スイッチング素子に直列接続される補助巻線をさらに備える。
【0024】
前記制御装置において、前記クランプ素子導通時間制御部は、前記フライバックコンバータの入力端子及び出力端子の電圧を採集することで前記第1電圧信号及び前記第2電圧信号をそれぞれ取得する。
【0025】
前記制御装置において、前記クランプ素子導通時間制御部は、前記変圧器の前記補助巻線の負電圧を採集して前記第1電圧信号を取得し、前記補助巻線の正電圧を採集して前記第2電圧信号を取得する。
【0026】
前記制御装置において、前記クランプ素子導通時間制御部は、前記第2電圧信号に基づき、比例定数に従って電流信号を出力する電流信号出力モジュールと、第1端子が前記電流信号出力モジュールに電気的に接続され、第2端子が接地される第1キャパシタと、前記第1キャパシタに並列接続され、かつ第3制御信号に基づいてオフとなり、オフになるとき前記電流信号を利用して前記第1キャパシタへの充電を開始する第1制御スイッチと、第1入力端子が前記第1キャパシタの第1端子及び前記電流信号出力モジュールに電気的に接続され、第2入力端子が前記第1電圧信号を受信し、前記第1電圧信号の電圧と前記第1キャパシタの電圧を比較する比較モジュールと、前記比較モジュールに電気的に接続され、前記第1キャパシタの電圧と前記第1電圧信号の電圧が同じであるとき、前記導通時間を取得し、かつ前記導通時間に基づいて前記第1制御信号を出力して前記補助スイッチング素子をオフにする第1制御信号出力モジュールと、を備える。
【0027】
前記制御装置において、前記第3制御信号は、前記補助スイッチング素子の開通信号である。
【0028】
前記制御装置において、前記デッドタイム制御部は、前記デッドタイムを取得するデッドタイム取得モジュールと、前記デッドタイム取得モジュールに電気的に接続され、第1制御信号出力モジュールが前記第1制御信号を出力すると、前記デッドタイムを遅延させて前記第2制御信号を出力することで前記メインスイッチング素子を開通する第2制御信号出力モジュールと、を備える。
【0029】
前記制御装置において、前記メインスイッチング素子の第1端子が前記変圧器の励磁インダクタンスに電気的に接続され、第2端子が接地され、以下の式に基づいて前記比例定数を取得し、
【0030】
【数4】
【0031】
そのうち、Cは、前記第1キャパシタの容量値であり、Kは、前記比例定数であり、C
eqは、前記メインスイッチング素子の第1端子のアースに対する寄生容量の容量値であり、L
mは、励磁インダクタンスのインダクタンス値であり、nは、前記変圧器の巻数比である。
【0032】
前記制御装置において、前記クランプ素子導通時間制御部は、以下の式に基づいて前記導通時間を取得し、
【0033】
【数5】
【0034】
そのうち、t
onは、前記導通時間であり、V
busは、前記第1電圧信号の電圧であり、V
oは、前記第2電圧信号の電圧であり、C
eqは、前記メインスイッチング素子の第1端子のアースに対する寄生容量の容量値であり、L
mは、前記変圧器の励磁インダクタンスのインダクタンス値であり、nは、前記変圧器の巻数比である。
【0035】
前記制御装置において、前記デッドタイム制御部は、以下の式に基づいて前記デッドタイムを取得し、
【0036】
【数6】
【0037】
そのうち、t
delayは、前記デッドタイムであり、C
eqは、前記メインスイッチング素子の第1端子のアースに対する寄生容量の容量値であり、L
mは、前記励磁インダクタンスのインダクタンス値である。
【発明の効果】
【0038】
本発明によると、従来に比べ、補助スイッチング素子の導通時間を設定することによりフライバックコンバータの固定様式のデッドタイムを設定することができ、また、入力電圧の全範囲内(例えば、90〜246Vac)、かつ異なる出力電圧の全負荷範囲内におけるメインスイッチング素子のゼロ電圧スイッチング(ZVS)及び最適設計の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明のフライバックコンバータの第1実施形態の回路の構造模式図である。
【
図2】本発明のフライバックコンバータに用いられる補助スイッチング素子の制御方法のフローチャートである。
【
図3】
図2のそれぞれのステップのフローチャートである。
【
図4】本発明のフライバックコンバータの制御装置の構造模式図である。
【
図5】
図4における補助スイッチング素子導通時間制御部の構造模式図である。
【
図6】
図4におけるデッドタイム制御部の構造模式図である。
【
図7】本発明のフライバックコンバータの1つの実施形態の波形図である。
【
図8】本発明の制御方法により、異なる負荷でのフライバックコンバータのゼロ電圧スイッチングの共振状態軌跡図である。
【
図9】本発明の制御方法により、異なる負荷でのフライバックコンバータのゼロ電圧スイッチングの共振状態軌跡図である。
【
図10】本発明のフライバックコンバータの第2実施形態の回路の構造模式図である。
【
図11】本発明のフライバックコンバータの第3実施形態の回路の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照しながら、具体的な実施形態を用いて本発明をさらに詳しく説明する。本実施形態は、本発明の技術案を前提として行い、実施形態及び操作プロセスが与えられるが、本発明の特許請求の範囲は、以下の実施形態に限られない。
【0041】
以下、
図1〜3を参照する。
図1は、本発明のフライバックコンバータの第1実施形態の回路の構造模式図であり、
図2は、本発明のフライバックコンバータに用いられる補助スイッチング素子の制御方法のフローチャートであり、
図3は、
図2のそれぞれのステップのフローチャートである。
図1〜3に示すように、フライバックコンバータは、メインスイッチング素子S1、変圧器T及び補助スイッチング素子S2を備える。本発明のフライバックコンバータの制御方法は、フライバックコンバータの入力電圧を表す第1電圧信号及びフライバックコンバータの出力電圧を表す第2電圧信号をリアルタイムで取得するステップS1と、第1電圧信号及び第2電圧信号に基づいて補助スイッチング素子の導通時間を取得し、導通時間に基づいて第1制御信号を出力して前記補助スイッチング素子を切るステップS2と、第1制御信号及びデッドタイムに基づいて第2制御信号を出力してメインスイッチング素子を開通し、デッドタイムが固定の時間であるステップS3とを備える。
【0042】
なお、本実施形態において、補助スイッチング素子は、前記変圧器の一次巻線に接続されるフライバックコンバータのアクティブクランプ素子である。
【0043】
本実施形態において、ステップ1において、ライバックコンバータの入力端子及び出力端子の電圧を採集して前記第1電圧信号及び前記第2電圧信号をそれぞれ取得するが、本発明は、これに限らず、他の実施形態において、第1電圧信号及び第2電圧信号を間接に取得することができる。例えば、ステップ1において、変圧器Tの補助巻線の負電圧を採集して第1電圧信号を取得し、補助巻線の正電圧を採集して第2電圧信号を取得し、本発明では、第1電圧信号及び第2電圧信号をどのように取得するかは、当業者が実際のニーズに従って自由に設計すれば良い。
【0044】
また、ステップ2において、前記第2電圧信号に基づいて比例定数で電流信号を出力するステップ21と、第3制御信号を利用して第1キャパシタを充電状態に始めさせ、前記電流信号を利用して前記第1キャパシタを充電するステップ22と、前記第1電圧信号の電圧と前記第1キャパシタの電圧をリアルタイムで比較し、前記第1電圧信号の電圧と前記第1キャパシタの電圧が同じである場合、前記導通時間を取得するステップ23と、前記導通時間に基づいて前記第1制御信号を出力して前記補助スイッチング素子を切るステップ24とを備える。
【0045】
また、ステップ3において、前記第1制御信号が出力されると、デッドタイムを遅延させて第2制御信号を出力することにより、メインスイッチング素子S1を開通する。
【0046】
また、メインスイッチング素子S1は、第1端子が変圧器Tの励磁インダクタンスL1に電気的に接続され、第2端子が接地される。ステップ21において、以下の式で比例定数を取得する。
【0048】
Cは、第1キャパシタの容量値であり、Kは、比例定数であり、C
eqは、メインスイッチング素子の第1端子が接地される寄生容量の容量値であり、L
mは、励磁インダクタンスのインダクタンス値であり、nは、変圧器の巻数比である。
ステップ23において、以下の式で導通時間を取得する。
【0050】
なお、t
onは、前記導通時間であり、V
busは、前記第1電圧信号の電圧であり、V
oは、前記第2電圧信号の電圧であり、C
eqは、前記メインスイッチング素子の第1端子が接地される寄生容量の容量値であり、L
mは、前記変圧器の励磁インダクタンスのインダクタンス値であり、nは、前記変圧器の巻数比である。
ステップ3において、以下の式でデッドタイムを取得する。
【0052】
なお、t
delayは、前記デッドタイムであり、C
eqは、前記メインスイッチング素子の第1端子が接地される寄生容量の容量値であり、L
mは、前記励磁インダクタンスのインダクタンス値である。
【0053】
図1及び
図4〜6を参照し、
図4は、本発明のフライバックコンバータの制御装置の構造模式図であり、
図5は、
図4における補助スイッチング素子導通時間制御部の構造模式図であり、
図6は、
図4におけるデッドタイム制御部の構造模式図である。
図1及び
図4〜6に示すように、本発明のフライバックコンバータの制御装置は、補助スイッチング素子導通時間制御部31及びデッドタイム制御部32を備え、補助スイッチング素子導通時間制御部31は、第1電圧信号及び第2電圧信号をリアルタイムで取得し、第1電圧信号及び第2電圧信号に基づいて補助スイッチング素子S2の導通時間t
onを取得し、導通時間t
onに基づいて第1制御信号SI1を出力して補助スイッチング素子S2をオフにする。第1電圧信号は、フライバックコンバータの入力電圧を表し、第2電圧信号は、フライバックコンバータの出力電圧を表す。デッドタイム制御部32は、第1制御信号SI1及びデッドタイムt
delayに基づいて第2制御信号SI2を出力してメインスイッチング素子S1を開通し、デッドタイムt
delayは、一定の時間である。
【0054】
また、本実施形態において、変圧器Tは、一次巻線T1及び二次巻線T2を含み、補助スイッチング素子S2は、変圧器Tの一次巻線に並列接続するフライバックコンバータのアクティブクランプ素子である。
【0055】
なお、本実施形態において、補助スイッチング素子導通時間制御部31は、フライバックコンバータの入力端子及び出力端子の電圧を採集して第1電圧信号及び第2電圧信号をそれぞれ取得するが、本発明は、これに限らない。本実施形態において、補助スイッチング素子導通時間制御部31は、第1電圧信号及び第2電圧信号を間接に取得することができ、例えば、変圧器Tの補助巻線T3(
図10〜11参照)の負電圧は、第1電圧信号を取得し、変圧器Tの補助巻線T3(
図10〜11参照)の正の電圧は、第2電圧信号を取得する。本発明では、第1電圧信号及び第2電圧信号を取得するプロセスが制限されず、当業者は、実際のニーズに従って自由に設計すれば良い。
【0056】
補助スイッチング素子導通時間制御部31は、電流信号出力モジュール311、第1キャパシタC1、第1制御スイッチK1、比較モジュール312及び第1制御信号出力モジュール313を備える。電流信号出力モジュール311は、第2電圧信号V
0に基づいて比例定数で電流信号を出力する。第1キャパシタC1は、第1端子が電流信号出力モジュール311に電気的に接続され、第2端子が接地される。第1制御スイッチK1は、第1キャパシタC1に並列接続され、第3制御信号SI3に基づいてオフとなり、前記第1制御スイッチK1がオフになったとき、電流信号を利用して第1キャパシタC1が充電される。比較モジュール312は、第1端子が第1キャパシタC1の第1端子及び電流信号出力モジュール311に電気的に接続され、第2端子が第1電圧信号を受信し、第1電圧信号の電圧と第1キャパシタC1の電圧をリアルタイムで比較する。第1制御信号出力モジュール313は、比較モジュール312に電気的に接続され、第1キャパシタC1の電圧と第1電圧信号の電圧が同じであるとき、導通時間t
onが取得され、導通時間t
onに基づいて第1制御信号SI1を出力することで補助スイッチング素子S2をオフにするが、本発明は、これに限らない。
【0057】
なお、メインスイッチング素子S1は、第1端子が変圧器Tの励磁インダクタンスL1に電気的に接続され、第2端子が接地され、以下の式に基づいて比例定数を取得する。
【0059】
Cは、前記第1キャパシタの容量値であり、Kは、前記比例定数であり、C
eqは、前記メインスイッチング素子の第1端子のアースに対する寄生容量の容量値であり、L
mは、励磁インダクタンスのインダクタンス値であり、nは、前記変圧器の巻数比である。以下の式に基づいて導通時間を取得する。
【0061】
t
onは、前記導通時間であり、V
busは、前記第1電圧信号の電圧であり、V
oは、前記第2電圧信号の電圧であり、C
eqは、前記メインスイッチング素子の第1端子が接地される寄生容量の容量値であり、L
mは、前記変圧器の励磁インダクタンスのインダクタンス値であり、nは、前記変圧器の巻数比である。
【0062】
デッドタイム制御部32は、デッドタイムt
delayを取得し、第2制御信号出力モジュール322に電気的に接続するデッドタイム取得モジュール321と、第2制御信号出力モジュール322とを備える。第1制御信号出力モジュール313は、第1制御信号SI1を出力すると、第2制御信号出力モジュール322は、デッドタイムt
delayだけを遅延した後にメインスイッチング素子S1を開通する。なお、本実施形態において、デッドタイム取得モジュール321は、クロノトロンであるが、本発明は、これに限らない。デッドタイム取得モジュール321は、以下の式に基づいてデッドタイムを取得する。
【0064】
t
delayは、前記デッドタイムであり、C
eqは、前記メインスイッチング素子の第1端子が接地される寄生容量の容量値であり、L
mは、前記励磁インダクタンスのインダクタンス値である。
【0065】
図7は、本発明のフライバックコンバータの1つの実施形態の波形図である。
図8〜9は、本発明の制御方法により、異なる負荷でのフライバックコンバータのゼロ電圧スイッチングの共振状態軌跡図である。
図1及び
図7〜9を用いて本発明のフライバックコンバータの補助スイッチング素子の制御方法及び装置の動作原理を詳しく説明する。フライバックコンバータについては、メインスイッチのゼロ電圧を開通するために、メインスイッチを開通する前に、補助スイッチング素子を暫く開通することで負方向の励磁電流を生成する。生成した励磁電流では、丁度V
DSの電圧が0に低下することを実現するために、補助スイッチング素子S2の導通時間及び相応するデッドタイムは、それぞれ以下の式を満たす必要がある。
【0067】
なお、θは、位相角であり、Vbus≧nVoである場合、
【0069】
であり、Vbus≦nVoである場合、
【0071】
前記式から分かるように、従来技術の補助スイッチング素子S2の導通時間及びデッドタイムは、いずれも入力電圧及び出力電圧に基づいてリアルタイで調整する必要があり、制御が複雑であり、特に高周波数の設計に適しない。一方、本発明の補助スイッチング素子S2の導通時間は、
【0073】
であり、補助スイッチング素子S2の導通時間は、相変わらず入力電圧及び出力電圧に影響されるが、簡単な比例関係になり、回路により補助スイッチング素子S2の導通時間t
onの設定を容易に実現することができる。補助スイッチング素子S2の導通時間t
onから、相応的に、t
delayのデッドゾーンの式は、
【0075】
図7に示すように、t0−t1は、補助スイッチング素子S2の導通時間であり、t1−t2は、デッドタイムである。本発明の補助スイッチング素子の制御方法及び装置は、t0である場合、補助スイッチング素子S2が導通され、この時の出力電圧に対応する電圧nV
oが変圧器Tの励磁インダクタンスL1に加わるので、励磁電流I
mが生成し、t1である場合、補助スイッチング素子S2がオフになり、励磁インダクタンスL1と寄生容量C
eqが共振し、メインスイッチング素子S1のソース、ドレイン電圧V
DSの降下が始まり、励磁電流I
mの動作により、t2である場合、V
DS電圧が0に低下し、メインスイッチング素子S1が開通され、ゼロ電圧の開通を実現することができる。
【0076】
図8〜
図9のぞれぞれは、V
busがn*V
oより大きく、V
busがn*V
o以下である場合のフライバックコンバータの共振状態軌跡図であり、横軸は、寄生容量C
eqの電圧V
Ceqであり、メインスイッチング素子S1のソース、ドレイン電圧V
DSに同一視され、縦軸は、励磁電流I
mと特性インピーダンスの乗積である。
【0077】
図7及び
図8〜
図9に示すように、t0である場合、補助スイッチング素子S2が導通され、寄生容量C
eqの電圧がV
bus+nV
oであり、励磁電流I
mが0からマイナス方向へ増え、t1である場合、励磁電流I
mと特性インピーダンスの乗積がV
busになり、補助スイッチング素子S2がオフになる。t1から励磁インダクタンスL1と寄生容量C
eqの共振が始まり、t2になると、寄生容量C
eqの電圧がドレイン電圧V
DSと等しく、この時のV
DSが0になる。t1からt2までの状態軌跡図から分かるように、一本の円弧の軌跡であり、この円弧の弧度は、π/2である。
【0079】
図8及び
図9に示すように、図における横軸における3つのドットは、それぞれ横軸方向に沿って軽負荷、中負荷、重負荷を表す。また、前記3つのドットである場合、t1からt2までの時間であるデッドタイムは、四分の一の共振周期であり、即ち、次の通りである。
【0081】
なお、本実施形態において、
図1のアクティブクランプのフライバックコンバータを例として説明し、補助スイッチは、フライバックコンバータのアクティブクランプであるが、実際は、これに限らない。本願の制御方法及び制御装置は、他の構造のフライバックコンバータに用いられても良い。例えば、
図10及び
図11に示すように、フライバックコンバータは、補助巻線T3、補助スイッチング素子S2及び補助キャパシタCauxをさらに備える。補助スイッチング素子S2及び補助キャパシタCauxは、直列接続する。フライバックコンバータの制御方法及び制御装置の原理及び動作方式は、前記実施形態と同じであり、ここでは繰り返して説明しない。
【0082】
前記内容のように、本発明は、補助スイッチング素子の導通時間を設定することにより、フライバックコンバータの一定のデッドタイムを設定することを実現する。また、全ての入力電圧範囲内(例えば、90〜264Vac)かつ異なる出力電圧の全ての負荷範囲内において、メインスイッチング素子のゼロ電圧スイッチング(ZVS)及び効率の最適化を実現することができる。
【0083】
なお、前記実施形態は、本発明を説明するために用いられ、本発明の技術案を制限しない。本明細書では、前記実施形態を用いて本発明を詳しく説明したが、当業者は、本発明を変更したり、等価置換を行ったりすることができる。本発明の精神、技術的範囲内の技術案及びその変更から逸脱しなければ、全ては、本発明の特許請求の範囲に属する。
【符号の説明】
【0084】
S1 メインスイッチング素子、
S2 補助スイッチング素子、
T 変圧器、
T1 一次巻線、
T2 二次巻線、
T3 補助巻線、
L1 励磁インダクタンス、
C
eq 寄生容量、
31 補助スイッチング素子導通時間制御部、
311 電流信号出力モジュール、
C1 第1キャパシタ、
K1 第1制御スイッチ、
312 比較モジュール、
313 第1制御信号出力モジュール、
32 デッドタイム制御部、
321 デッドタイム取得モジュール、
322 第2制御信号出力モジュール。