特許第6853870号(P6853870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6853870ポリイミド−ポリベンゾオキサゾール前駆体溶液、ポリイミド−ポリベンゾオキサゾールフィルム、及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853870
(24)【登録日】2021年3月16日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】ポリイミド−ポリベンゾオキサゾール前駆体溶液、ポリイミド−ポリベンゾオキサゾールフィルム、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20210322BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   C08G73/10
   C08J5/18CFG
【請求項の数】17
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2019-217232(P2019-217232)
(22)【出願日】2019年11月29日
(62)【分割の表示】特願2017-568154(P2017-568154)の分割
【原出願日】2016年6月29日
(65)【公開番号】特開2020-37709(P2020-37709A)
(43)【公開日】2020年3月12日
【審査請求日】2019年11月29日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0093710
(32)【優先日】2015年6月30日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ドゥ リ
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ハク キ
【審査官】 齋藤 光介
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0263136(US,A1)
【文献】 J.Appl.Polym.Sci.,2009年,Vol.113,p.2301-2312
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C08J
C08K
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアミノフェノール化合物とジカルボニルクロリド化合物との重合物であるポリヒドロキシアミド、及びジアンヒドリド化合物とジアミン化合物との重合物であるポリアミック酸を含む、ポリイミド−ポリベンゾオキサゾール前駆体溶液であって、
このポリイミド−ポリベンゾオキサゾール前駆体溶液は、
ジアミノフェノール化合物とジカルボニルクロリド化合物とを重合反応させてポリヒドロキシアミド溶液を製造する段階(S1)と、
前記S1段階のポリヒドロキシアミド溶液中にジアミン化合物及びジアンヒドリド化合物を添加し、重合反応させてポリアミック酸溶液を製造することにより、ポリイミド−ポリベンゾオキサゾール前駆体溶液を製造する段階(S2)とにより製造されたものである、ポリイミド−ポリベンゾオキサゾール前駆体溶液
【請求項2】
前記ポリヒドロキシアミドは、その含有量がポリヒドロキシアミドとポリアミック酸の総モルに対して20〜80モル%含まれることを特徴とする、請求項1に記載のポリイミド−ポリベンゾオキサゾール前駆体溶液。
【請求項3】
前記ポリヒドロキシアミドは、その含有量がポリヒドロキシアミドとポリアミック酸の総モルに対して40〜60モル%含まれることを特徴とする、請求項1に記載のポリイミド−ポリベンゾオキサゾール前駆体溶液。
【請求項4】
前記ジアミノフェノール化合物は、ビスアミノヒドロキシフェニルヘキサフルオロプロパン(2,2−Bis(3−amino−4−hydroxyphenyl)Hexafluoropropane、6FAP)、ビスアミノヒドロキシフェニルスルホン(Bis(3−amino−4−hydroxyphenyl)Sulfone、BAS)、ジヒドロキシベンジジン(3,3’−Dihydroxybenzidine、HAB)、ビスアミノヒドロキシフェニルプロパン(2,2−Bis(3−amino−4−hydroxyphenyl)propane)、及びビスアミノヒドロキシフェニルフルオレン(9,9−Bis(3−amino−4−hydroxyphenyl)fluorene)よりなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリイミド−ポリベンゾオキサゾール前駆体溶液。
【請求項5】
前記ジカルボニルクロリド化合物は、フタロイルクロリド(Phthaloyl Chloride)、テレフタロイルクロリド(Terephthaloyl Chloride、TPC)、イソフタロイルクロリド(Isophthaloyl chloride、IPC)、ビフェニルジカルボニルクロリド(4,4’−Biphenyldicarbonyl Chloride、DPDOC)、オキシビスベンゾイルクロリド(4,4’−Oxybis(benzoyl Chloride)、OBBOC)、及びナフタレンジカルボニルジクロリド(Naphthalene−2,3−dicarbonyl dichloride)よりなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリイミド−ポリベンゾオキサゾール前駆体溶液。
【請求項6】
前記ジアンヒドリド化合物は、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物(TDA)、ピロメリット酸二無水物(1,2,4,5−benzene tetracarboxylic dianhydride、pyromellictic acid dianhydride、PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(3,3,4,4−Benzophenone tetracarboxylic dianhydride、BTDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3,4,4−Biphenyltetracarboxylic dianhydride、BPDA)、オキシジフタル酸二無水物(4,4−Oxydiphthalic dianhydride、ODPA)、ビスカルボキシフェニルジメチルシラン二無水物(Bis(3,4−dicarboxyphenyl)dimethyl−silane dianhydride、SiDA)、ビスジカルボキシフェノキシジフェニルスルフィド二無水物(4,4−bis(3,4−dicarboxyphenoxy)diphenyl sulfide dianhydride、BDSDA)、スルホニルジフタル酸無水物(Sulfonyldiphthalic anhydride、SO2DPA)、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(Cyclobutane−1,2,3,4−tetracarboxylic dianhydride、CBDA)、及びイソプロピリデンジフェノキシビスフタル酸無水物(4,4’−(4,4’−Isopropylidenediphenoxy)bis(phthalic anhydride)、6HBDA)よりなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリイミド−ポリベンゾオキサゾール前駆体溶液。
【請求項7】
前記ジアミン化合物は、オキシジアニリン(4,4’−Oxydianiline、ODA)、p−フェニレンジアミン(para−phenylene diamine、pPDA)、m−フェニレンジアミン(meta −phenylene diamine、mPDA)、p−メチレンジアニリン(para−Methylene Dianiline、pMDA)、m−メチレンジアニリン(meta−Methylene Dianiline、mMDA)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(1,3−bis(3−aminophenoxy)benzene、133APB)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(1,3−bis(4−aminophenoxy)benzene、134APB)、ビスアミノフェノキシフェニルヘキサフルオロプロパン(2,2’−bis[4(4−aminophenoxy)phenyl]hexafluoropropane、4BDAF)、ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(2,2’−bis(3−aminophenyl)hexafluoropropane、33−6F)、ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(2,2’−bis(4−aminophenyl)hexafluoropropane、44−6F)、ビス(4−アミノフェニル)スルホン(bis(4−aminophenyl)sulfone、4DDS)、ビス(3−アミノフェニル)スルホン(bis(3−aminophenyl)sulfone、3DDS)、ビストリフルオロメチルベンジジン(2,2’−bis(trifluoromethyl)benzidine、TFDB)、1,3−シクロヘキサンジアミン(1,3−Cyclohexanediamine、13CHD)、1,4−シクロヘキサンジアミン(1,4−Cyclohexanediamine、14CHD)、ビスアミノフェノキシフェニルプロパン(2,2−Bis[4−(4−aminophenoxy)−phenyl]propane、6HMDA)、ビスアミノヒドロキシフェニルヘキサフルオロプロパン(2,2−Bis(3−amino−4−hydroxy−phenyl)−hexafluoropropane、DBOH)、及びビスアミノフェノキシジフェニルスルホン(4,4’−Bis(3−amino phenoxy)diphenyl sulfone、DBSDA)よりなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリイミド−ポリベンゾオキサゾール前駆体溶液。
【請求項8】
ジアミノフェノール化合物とジカルボニルクロリド化合物との重合物が脱水閉環された第1繰り返し単位、及びジアンヒドリド化合物とジアミン化合物との重合物が脱水閉環された第2繰り返し単位を含み、
複屈折が0.010以下である、ポリイミド−ポリベンゾオキサゾールフィルム。
【請求項9】
前記第1繰り返し単位は、前記第1繰り返し単位と第2繰り返し単位の総モルに対して20〜80モル%含まれることを特徴とする、請求項8に記載のポリイミド−ポリベンゾオキサゾールフィルム。
【請求項10】
前記第1繰り返し単位は、前記第1繰り返し単位と第2繰り返し単位の総モルに対して40〜60モル%含まれることを特徴とする、請求項8に記載のポリイミド−ポリベンゾオキサゾールフィルム。
【請求項11】
前記ポリイミド−ポリベンゾオキサゾールフィルムは、線形熱膨張係数(CTE)が55ppm/℃以下であることを特徴とする、請求項8に記載のポリイミド−ポリベンゾオキサゾールフィルム。
【請求項12】
前記ポリイミド−ポリベンゾオキサゾールフィルムは、透過度が88%以上であり、黄色度が10以下であることを特徴とする、請求項8に記載のポリイミド−ポリベンゾオキサゾールフィルム。
【請求項13】
ジアミノフェノール化合物とジカルボニルクロリド化合物とを重合反応させてポリヒドロキシアミド溶液を製造する段階(S1)と、
前記S1段階のポリヒドロキシアミド溶液中にジアミン化合物及びジアンヒドリド化合物を添加し、重合反応させてポリアミック酸溶液を製造することにより、ポリイミド−ポリベンゾオキサゾール前駆体溶液を製造する段階(S2)と含んでなる、ポリイミド−ポリベンゾオキサゾール前駆体溶液の製造方法。
【請求項14】
前記S1段階における重合反応は0℃〜20℃で1〜2時間行われることを特徴とする、請求項13に記載のポリイミド−ポリベンゾオキサゾール前駆体溶液の製造方法。
【請求項15】
前記S2段階における重合反応は25℃〜45℃で2〜5時間行われることを特徴とする、請求項13に記載のポリイミド−ポリベンゾオキサゾール前駆体溶液の製造方法。
【請求項16】
前記S1段階におけるジアミノフェノール化合物とジカルボニルクロリド化合物の当量比は1:0.8〜1.2であり、前記S2段階におけるジアミン化合物とジアンヒドリド化合物の当量比は1:0.8〜1.2であることを特徴とする、請求項13に記載のポリイミド−ポリベンゾオキサゾール前駆体溶液の製造方法。
【請求項17】
前記S1段階のポリヒドロキシアミド溶液と、前記S2段階のポリアミック酸溶液との当量比は、0.2〜0.8:0.8〜0.2であることを特徴とする、請求項13に記載のポリイミド−ポリベンゾオキサゾール前駆体溶液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド−ポリベンゾオキサゾール前駆体溶液、ポリイミド−ポリベンゾ
オキサゾールフィルム、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリイミド(PI)フィルムは、ポリイミド樹脂をフィルム化したものであり
、ポリイミド樹脂とは、芳香族ジアンヒドリドと、芳香族ジアミンまたは芳香族ジイソシ
アネートとを溶液重合してポリアミック酸誘導体を製造した後、高温で閉環脱水させてイ
ミド化することにより製造される高耐熱樹脂をいう。
【0003】
このようなポリイミドフィルムは、優れた機械的特性、耐熱性及び電気絶縁性を持って
おり、半導体の絶縁膜、TFT−LCDの電極保護膜フレキシブルプリント配線回路用基
板などの電子材料に幅広い分野で用いられている。
【0004】
ところが、ポリイミド樹脂は、高い芳香族環密度により、褐色及び黄色に着色されるこ
とで可視光線領域における透過度が低く、黄色系の色を示すことで光透過率が低く、また
、大きな複屈折率を持つこととなるので、光学部材として使用するには困難な点があった
【0005】
かかる難点を解決するために、透明性の高いポリイミドを得るために、脂環式単量体を
使用する或いはフルオレン構造を含むポリイミドを重合する方法が試みられた。
【0006】
日本特開2010−180349号及び国際公開WO 2008/010494号には、
脂環式単量体及びフルオレン構造を含有するポリイミド重合についての内容が記載されて
おり、これは優れた透明性を有するが、熱的及び機械的特性の低下をもたらす結果を示し
た。
【0007】
また、米国特許第4595548号、同第4603061号、同第4645824号、
同第4895972号、同第5218083号、同第5093453号、同第52180
77号、同第5367046号、同第5338826号、同第5986036号、同第6
232428号、及び韓国特許公開公報第2003−0009437号には、−O−、−
SO−、CH−などの連結基、p位ではなくm位に連結された屈曲構造、または−C
などの置換基を有する芳香族ジアンヒドリドと芳香族ジアミンの単量体を用いること
で、熱的特性が大きく低下しない限度内で、透過度及び色の透明度を向上させた新規構造
のポリイミドが開示されているのであるが、機械的特性、耐熱性、複屈折の面で、OLE
D、TFT−LCD、フレキシブルディスプレイなどの表示素子の素材として使用するに
は不十分な結果を示した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、従来のポリイミド膜が持っている特性を維持しつつ、ポリベンゾオ
キサゾール及びその前駆体を導入することにより、耐熱性及び複屈折を改善したポリアミ
ック酸−ポリヒドロキシアミド、ポリイミド−ポリベンゾオキサゾール膜を得ることを目
的とする。
【0009】
すなわち、ポリベンゾオキサゾールを導入することにより、無色透明なポリイミド樹脂
の特徴の中の、耐熱性及び複屈折を改善して、より優れたポリイミドフィルムを提供する
ことにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明の好適な第1実施形態は、ジアミノフェノール化合物
とジカルボニルクロリド化合物との重合物であるポリヒドロキシアミド、及び、ジアンヒ
ドリド化合物とジアミン化合物との重合物であるポリアミック酸を含む、ポリイミド−ポ
リベンゾオキサゾール前駆体溶液である。
【0011】
前記第1実施形態に係るポリヒドロキシアミドは、その含有量がポリヒドロキシアミド
とポリアミック酸の総モルに対して20〜80モル%であってもよい。
【0012】
前記第1実施形態に係るポリヒドロキシアミドは、その含有量がポリヒドロキシアミド
とポリアミック酸の総モルに対して40〜60モル%であってもよい。
【0013】
前記第1実施形態に係るジアミノフェノール化合物は、ビスアミノヒドロキシフェニル
ヘキサフルオロプロパン(2,2−Bis(3−amino−4−hydroxyphe
nyl)Hexafluoropropane、6FAP)、ビスアミノヒドロキシフェ
ニルスルホン(Bis(3−amino−4−hydroxyphenyl)Sulfo
ne、BAS)、ジヒドロキシベンジジン(3,3’−Dihydroxybenzid
ine、HAB)、ビスアミノヒドロキシフェニルプロパン(2,2−Bis(3−am
ino−4−hydroxyphenyl)propane)、及びビスアミノヒドロキ
シフェニルフルオレン(9,9−Bis(3−amino−4−hydroxyphen
yl)fluorene)よりなる群から選ばれる1種以上であってもよい。
【0014】
前記第1実施形態に係るジカルボニルクロリド化合物は、フタロイルクロリド(Pht
haloyl Chloride)、テレフタロイルクロリド(Terephthalo
yl Chloride、TPC)、イソフタロイルクロリド(Isophthaloy
l chloride、IPC)、ビフェニルジカルボニルクロリド(4,4’−Bip
henyldicarbonyl Chloride、DPDOC)、オキシビスベンゾ
イルクロリド(4,4’−Oxybis(benzoyl Chloride)、OBB
OC)、及びナフタレンジカルボニルジクロリド(Naphthalene−2,3−d
icarbonyl dichloride)よりなる群から選ばれる1種以上であって
もよい。
【0015】
前記第1実施形態に係る前記ジアンヒドリド化合物は、2,2−ビス(3,4−ジカル
ボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、4−(2,5−ジオキ
ソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2
−ジカルボン酸無水物(TDA)、ピロメリット酸二無水物(1,2,4,5−benz
ene tetracarboxylic dianhydride、pyromell
icticacid dianhydride、PMDA)、ベンゾフェノンテトラカル
ボン酸二無水物(3,3,4,4−Benzophenone tetracarbox
ylic dianhydride、BTDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
(3,3,4,4−Biphenyltetracarboxylic dianhyd
ride、BPDA)、オキシジフタル酸二無水物(4,4−Oxydiphthali
c dianhydride、ODPA)、ビスカルボキシフェニルジメチルシラン二無
水物(Bis(3,4−dicarboxyphenyl)dimethyl−sila
ne dianhydride、SiDA)、ビスジカルボキシフェノキシジフェニルス
ルフィド二無水物(4,4−bis(3,4−dicarboxyphenoxy)di
phenyl sulfide dianhydride、BDSDA)、スルホニルジ
フタル酸無水物(Sulfonyldiphthalic anhydride、SO2
DPA)、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(Cyclobutane−1,2,
3,4−tetracarboxylic dianhydride、CBDA)、及び
イソプロピリデンジフェノキシビスフタル酸無水物(4,4’−(4,4’−Isopr
opylidenediphenoxy)bis(phthalicanhydride
)、6HBDA)よりなる群から選ばれる1種以上であってもよい。
【0016】
前記第1実施形態に係るジアミン化合物は、オキシジアニリン(4,4’−Oxydi
aniline、ODA)、p−フェニレンジアミン(para−phenylene
diamine、pPDA)、m−フェニレンジアミン(meta−phenylene
diamine、mPDA)、p−メチレンジアニリン(para−Methylene Dianil
ine、pMDA)、m−メチレンジアニリン(meta−Methylene Dianiline、mMDA
)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(1,3−bis(3−amino
phenoxy)benzene、133APB)、1,3−ビス(4−アミノフェノキ
シ)ベンゼン(1,3−bis(4−aminophenoxy)benzene、13
4APB)、ビスアミノフェノキシフェニルヘキサフルオロプロパン(2,2’−bis
[4(4−aminophenoxy)phenyl]hexafluoropropa
ne、4BDAF)、2,2’−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(
2,2’−bis(3−aminophenyl)hexafluoropropane
、33−6F)、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(2,
2’−bis(4−aminophenyl)hexafluoropropane、4
4−6F)、ビスアミノフェニルスルホン(bis(4−aminophenyl)su
lfone、4DDS)、ビスアミノフェニルスルホン(bis(3−aminophe
nyl)sulfone、3DDS)、ビストリフルオロメチルベンジジン(2,2’−
bis(trifluoromethyl)benzidine、TFDB)、1,3−
シクロヘキサンジアミン(1,3−Cyclohexanediamine、13CHD
)、1,4−シクロヘキサンジアミン(1,4−Cyclohexanediamine
、14CHD)、ビスアミノフェノキシフェニルプロパン(2,2−Bis[4−(4−
aminophenoxy)−phenyl]propane、6HMDA)、ビスアミ
ノヒドロキシフェニルヘキサフルオロプロパン(2,2−Bis(3−amino−4−
hydroxy−phenyl)−hexafluoropropane、DBOH)、
及びビスアミノフェノキシジフェニルスルホン(4,4’−Bis(3−amino p
henoxy)diphenyl sulfone、DBSDA)よりなる群から選ばれ
る1種以上であってもよい。
【0017】
また、本発明の好適な第2実施形態は、ジアミノフェノール化合物とジカルボニルクロ
リド化合物との重合物が脱水閉環された第1繰り返し単位;及びジアンヒドリド化合物と
ジアミン化合物との重合物が脱水閉環された第2繰り返し単位を含む、ポリイミド−ポリ
ベンゾオキサゾールフィルムである。
【0018】
前記第2実施形態に係る第1繰り返し単位は、前記第1繰り返し単位と第2繰り返し単
位の総モルに対して20〜80モル%含まれてもよい。
【0019】
前記第2実施形態に係る第1繰り返し単位は、前記第1繰り返し単位と第2繰り返し単
位の総モルに対して40〜60モル%含まれてもよい。
【0020】
前記第2実施形態に係るポリイミド−ポリベンゾオキサゾールフィルムは、複屈折が0
.010以下であってもよい。
【0021】
前記第2実施形態に係るポリイミド−ポリベンゾオキサゾールフィルムは、線形熱膨張
係数(CTE)が55ppm/℃以下であってもよい。
【0022】
前記第2実施形態に係るポリイミド−ポリベンゾオキサゾールフィルムは、透過度が8
8%以上であり、黄色度が10以下であってもよい。
【0023】
また、本発明の好適な第3実施形態は、ジアミノフェノール化合物とジカルボニルクロ
リド化合物とを重合反応させてポリヒドロキシアミド溶液を製造する段階(S1)、
【0024】
前記S1段階のポリヒドロキシアミド溶液中に、ジアミン化合物及びジアンヒドリド化
合物を添加し、重合反応させてポリアミック酸溶液を製造することにより、ポリイミド−
ポリベンゾオキサゾール前駆体溶液を製造する段階(S2)と、
【0025】
前記ポリイミド−ポリベンゾオキサゾール前駆体溶液を支持体にキャスティングし、熱
処理して脱水閉環する段階(S3)とを含む、ポリイミド−ポリベンゾオキサゾールフィ
ルムの製造方法である。
【0026】
前記第3実施形態に係るS1段階で、重合反応は0℃〜20℃で1〜2時間行われても
よい。
【0027】
前記第3実施形態に係るS2段階で、重合反応は25℃〜45℃で2〜5時間行われて
もよい。
【0028】
前記第3実施形態に係るS3段階で、熱処理は、80℃〜300℃の温度範囲で昇温さ
せながら60分〜180分の間、行われてもよい。
【0029】
前記第3実施形態に係るS1段階で、ジアミノフェノール化合物とジカルボニルクロリ
ド化合物の当量比は1:0.8〜1.2であり、前記S2段階でジアミン化合物とジアン
ヒドリド化合物の当量比は1:0.8〜1.2であってもよい。
【0030】
前記第3実施形態に係るS1段階のポリヒドロキシアミド溶液とS2段階のポリアミッ
ク酸溶液の当量比は0.2〜0.8:0.8〜0.2であってもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、ジアミノフェノール、ジカルボニルクロリド、ジアミン及びジアンヒ
ドリドを共重合した前駆体を用いて、脱水閉環してフィルムを形成すると、ポリベンゾオ
キサゾール単位構造及びポリイミド単位構造を含むフィルムが完成される。前記フィルム
は、ポリベンゾオキサゾール単位構造のモル分率を調節することにより、耐熱性及び複屈
折に優れるとともに、光学特性に優れるポリイミド−ポリベンゾオキサゾール膜を提供す
ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
上記の目的を達成するために、本発明は、ジアミノフェノール化合物とジカルボニルク
ロリド化合物との重合物であるポリヒドロキシアミド;及びジアンヒドリド化合物とジア
ミン化合物との重合物であるポリアミック酸を含む、ポリイミド−ポリベンゾオキサゾー
ル前駆体溶液を製造し、これを脱水閉環してフィルムを製造することを特徴とする。
【0033】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0034】
本発明の第1実施形態として、ジアミノフェノール化合物とジカルボニルクロリド化合
物との重合物であるポリヒドロキシアミド、及びジアンヒドリド化合物とジアミン化合物
との重合物であるポリアミック酸を含む、ポリイミド−ポリベンゾオキサゾール前駆体溶
液を提供する。
【0035】
本発明は、ポリベンゾオキサゾールの単位構造を、ジアミノフェノール及びジカルボニ
ルクロリドを重合して製造した後、ポリイミドフィルムに導入することにより、構造的に
共役二重結合の増加により分子間の電荷移動錯体の形成度が増加した特性を獲得すること
ができ、前記特性によって、最終製品形態であるフィルムに完成されるとき、吸収する波
長帯の変化により黄色度及び透過度が低下するおそれがあるものの、耐熱性を改善した利
点を得る。
【0036】
前記ポリヒドロキシアミドは、その含有量がポリヒドロキシアミドとポリアミック酸の
総モルに対して20〜80モル%であることが好ましい。前記ポリヒドロキシアミドが2
0モル%未満で含まれると、熱的特性及び複屈折の改善の程度が足りないおそれがあり、
前記ポリヒドロキシアミドが80モル%を超えて含まれると、フィルムの黄色度が10以
上であるおそれがある。前記ポリヒドロキシアミドが40〜60モル%で含まれることが
、熱的特性、複屈折及び黄色度を満足する観点からさらに好ましい。
【0037】
本発明で使用されるジカルボニルクロリド成分は、フタロイルクロリド(Phthal
oyl Chloride)、テレフタロイルクロリド(Terephthaloyl
Chloride、TPC)、イソフタロイルクロリド(Isophthaloyl c
hloride)、ビフェニルジカルボニルクロリド(4,4’−Biphenyldi
carbonyl Chloride)、オキシビスベンゾイルクロリド(4,4’−O
xybis(benzoyl Chloride))、ナフタレンジカルボニルジクロリ
ド(Naphthalene−2,3−dicarbonyl dichloride)
などでありうるのであり、ジカルボニルクロリドは、単独であるいは2種以上を組み合わ
せて使用することができる。好ましくは、イソフタロイルクロリド(Isophthal
oyl chloride、IPC)、ビフェニルジカルボニルクロリド(4,4’−B
iphenyldicarbonyl Chloride、DPDOC)、またはオキシ
ビスベンゾイルクロリド(4,4’−Oxybis(benzoyl Chloride
)、OBBO)が使用されることが、耐熱性を改善するための観点から良い。
【0038】
本発明で使用されるジアミノフェノールは、ビスアミノヒドロキシフェニルヘキサフル
オロプロパン(2,2−Bis(3−amino−4−hydroxyphenyl)H
exafluoropropane、6FAP)、ビスアミノヒドロキシフェニルスルホ
ン(Bis(3−amino−4−hydroxyphenyl)Sulfone、BA
S)、ジヒドロキシベンジジン(3,3’−Dihydroxybenzidine、H
AB)、ビスアミノヒドロキシフェニルプロパン(2,2−Bis(3−amino−4
−hydroxyphenyl)propane)、ビスアミノヒドロキシフェニルフル
オレン(9,9−Bis(3−amino−4−hydroxyphenyl)fluo
rene)などであり、ジアミノフェノールは、単独で或いは2種以上を組み合わせて使
用することができる。これらの種類に限定されるものではないが、6FAP、BASまた
はHABを使用することが好ましく、最も好ましくはビスアミノヒドロキシフェニルスル
ホン(Bis(3−amino−4−hydroxyphenyl)Sulfone、B
AS)を使用することが、耐熱性を改善するための観点から好ましい。
【0039】
本発明で使用されるジアミンは、オキシジアニリン(4,4’−Oxydianili
ne、ODA)、p−フェニレンジアミン(para−phenylene diami
ne、pPDA)、m−フェニレンジアミン(meta−phenylene diam
ine、mPDA)、p−メチレンジアニリン(para−Methylene Dianiline、pM
DA)、m−メチレンジアニリン(meta−Methylene Dianiline、mMDA)、1,
3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(1,3−bis(3−aminophen
oxy)benzene、133APB)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベン
ゼン(1,3−bis(4−aminophenoxy)benzene、134APB
)、ビスアミノフェノキシフェニルヘキサフルオロプロパン(2,2’−bis[4(4
−aminophenoxy)phenyl]hexafluoropropane、4
BDAF)、ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(2,2’−bis(3−am
inophenyl)hexafluoropropane、33−6F)、ビスアミノ
フェニルヘキサフルオロプロパン(2,2’−bis(4−aminophenyl)h
exafluoropropane、44−6F)、ビスアミノフェニルスルホン(bi
s(4−aminophenyl)sulfone、4DDS)、ビスアミノフェニルス
ルホン(bis(3−aminophenyl)sulfone、3DDS)、ビストリ
フルオロメチルベンジジン(2,2’−bis(trifluoromethyl)be
nzidine、TFDB)、1,3−シクロヘキサンジアミン(1,3−Cycloh
exanediamine、13CHD)、1,4−シクロヘキサンジアミン(1,4−
Cyclohexanediamine、14CHD)、ビスアミノフェノキシフェニル
プロパン(2,2−Bis[4−(4−aminophenoxy)−phenyl]p
ropane、6HMDA)、ビスアミノヒドロキシフェニルヘキサフルオロプロパン(
2,2−Bis(3−amino−4−hydroxy−phenyl)−hexafl
uoropropane、DBOH)、ビスアミノフェノキシジフェニルスルホン(4,
4’−Bis(3−amino phenoxy)diphenyl sulfone、
DBSDA)などであり、これらの種類に限定されるものではない。ジアミンは、単独で
或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
本発明で使用されるジアンヒドリドは、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル
)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(6FDA)、4−(2,5−ジオキソテトラ
ヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカル
ボン酸無水物(TDA)、ピロメリット酸二無水物(1,2,4,5−benzene
tetracarboxylic dianhydride、pyromellicti
c acid dianhydride、PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸
二無水物(3,3,4,4−Benzophenone tetracarboxyli
c dianhydride、BTDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,
3,4,4−Biphenyltetracarboxylic dianhydrid
e、BPDA)、オキシジフタル酸二無水物(4,4−Oxydiphthalic d
ianhydride、ODPA)、ビスカルボキシフェニルジメチルシラン二無水物(
Bis(3,4dicarboxyphenyl)dimethyl−silane d
ianhydride、SiDA)、ビスジカルボキシフェノキシジフェニルスルフィド
二無水物(4,4−bis(3,4−dicarboxyphenoxy)diphen
yl sulfide dianhydride、BDSDA)、スルホニルジフタル酸
無水物(Sulfonyldiphthalic anhydride、SO2DPA)
、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(Cyclobutane−1,2,3,4−
tetracarboxylic dianhydride、CBDA)、イソプロピリ
デンジフェノキシビスフタル酸無水物(4,4’−(4,4’−Isopropylid
enediphenoxy)bis(phthalic anhydride)、6HB
DA)などであり、これらの種類に限定されるものではない。ジアンヒドリドは単独で或
いは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
本発明は、前記前駆体溶液を用いてフィルムを製造する。前記フィルムの製造方法は、
下記の段階を含む:
【0042】
ジアミノフェノール化合物とジカルボニルクロリド化合物とを重合反応させてポリヒド
ロキシアミド溶液を製造する段階(S1)、
【0043】
前記S1段階のポリヒドロキシアミド溶液中にジアミン化合物及びジアンヒドリド化合
物を添加し、重合反応させてポリアミック酸溶液を製造することにより、ポリイミド−ポ
リベンゾオキサゾール前駆体溶液を製造する段階(S2)、及び
【0044】
前記ポリイミド−ポリベンゾオキサゾール前駆体溶液を支持体にキャスティングし、熱
処理して脱水閉環する段階(S3)。
【0045】
前記S1段階は、ポリヒドロキシアミド溶液を製造する段階であって、重合反応は0℃
〜20℃で1〜2時間行われることが好ましい。前記ジアミノフェノール化合物とジカル
ボニルクロリド化合物の当量比は1:0.8〜1.2であることを特徴とする。
【0046】
前記S2段階は、ポリアミック酸溶液を製造する段階であって、重合反応は25℃〜4
5℃で2〜5時間行われることが好ましい。前記ジアミン化合物とジアンヒドリド化合物
の当量比は1:0.8〜1.2であることを特徴とする。
【0047】
S3段階は、前記ポリヒドロキシアミドを脱水閉環してポリベンゾオキサゾール単位構
造を製造し、前記ポリアミック酸を脱水閉環してポリイミド単位構造を製造する段階であ
る。
【0048】
前記ポリヒドロキシアミドをポリベンゾオキサゾールに転換させる方法としては、熱転
換法がある。ポリアミック酸溶液をイミド化させる方法としては、熱イミド化法と化学イ
ミド化法が挙げられるが、化学イミド化法を使用することがより好ましい。より好ましく
は、化学イミド化法を実施した溶液を沈殿した後、精製、乾燥させ、再度溶媒に溶かして
使用する。この溶媒は上述した溶媒と同様である。化学イミド化法は、ポリアミド酸溶液
に、無水酢酸などの酸無水物に代表される脱水剤と、イソキノリン、β−ピコリン、ピリ
ジンなどの3級アミン類などに代表されるイミド化触媒とを適用させる方法である。化学
イミド化法に熱イミド化法を併用することができ、加熱条件はポリアミック酸溶液の種類
やフィルムの厚さなどによって変動されうる。
【0049】
ここで、反応時の条件は特に限定されないが、反応の際にアルゴンや窒素などの不活性
ガス雰囲気であることがより好ましい。
【0050】
上述した単量体の溶液重合反応のための有機溶媒は、ポリアミック酸及びポリヒドロキ
シアミドを溶解する溶媒であれば、特に限定されない。公知の反応溶媒として、m−クレ
ゾール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジ
メチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、エチ
ルアセテート、ジエチルホルムアミド(DEF)、ジエチルアセトアミド(DEA)、プ
ロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME;Propylene glycol
monomethyl ether)、及びプロピレングリコールモノエチルエーテル
(PGMEA;Propylene glycol monomethyl ether
Acetate)の中から選ばれた1種以上の極性溶媒を使用する。この他にも、テト
ラヒドロフラン(THF)、クロロホルムなどの低沸点溶液またはγ−ブチロラクトンな
どの低吸収性溶媒を使用することができる。このような溶媒は、目的に応じて単独で或い
は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0051】
有機溶媒の含有量については特に限定されないが、適切なポリアミド酸及びポリヒドロ
キシアミド溶液の分子量と粘度を得るために、有機溶媒の含有量は、全部のポリアミック
酸及びポリヒドロキシアミド溶液に対して、50〜95重量%が好ましく、さらに好まし
くは70〜90重量%である。
【0052】
前記S1段階のポリヒドロキシアミドと、S2段階のポリアミック酸溶液との当量比は
0.2〜0.8:0.8〜0.2であってもよい。前記当量比の調節によって、本発明は
、最適な、耐熱特性、複屈折及び光学特性を有する。ここで、ポリアミック酸溶液に対し
てポリヒドロキシアミド溶液の比率が増加するほど、耐熱特性及び複屈折は改善されたが
、光学特性が低下した。特に、0.4:0.6〜0.6:0.4の当量比で最適な効果を
示した。このことから、前記モル比は0.4:0.6乃至0.6:0.4であることが好
ましいことを確認することができる。
【0053】
化学イミド化法の後、沈殿、乾燥させて溶媒に溶かし、溶液化して支持体に塗布するが
、塗布されたフィルムは、乾燥空気及び熱処理によって支持体上でゲル化される。塗布さ
れたフィルムのゲル化温度条件は100〜250℃が好ましく、支持体としてはガラス、
アルミ箔、循環ステンレスベルト、ステンレスドラムなどを使用することができる。
【0054】
ゲル化に必要な処理時間は、温度、支持体の種類、塗布されたポリアミック酸溶液の量
、触媒の混合条件によって異なり、一定の時間に限定されていない。好ましくは5分〜3
0分の範囲で行うことがよい。
【0055】
ゲル化されたフィルムは、支持体から剥離させて熱処理することにより、乾燥及びイミ
ド化を完了させる。熱処理温度は100〜500℃とし、処理時間は1分〜30分とする
。ゲル化されたフィルムは、熱処理の際に支持台に固定させて行う。ゲルフィルムは、ピ
ン型のフレームまたはクリップ型のものを用いて固定することができる。
【0056】
熱処理を済ませたフィルムの残留揮発分は5%以下であり、好ましくは3%以下である
【0057】
熱処理を済ませたフィルムは、一定の張力下で熱処理することにより、製膜の際に発生
したフィルム内部の残留応力を除去する。ここで、最後の熱処理を施さない場合、熱膨張
係数値が既存のフィルムからずれた、非常に減少した値を得ることになるが、これは、フ
ィルム内の収縮しようとする残留応力が、熱膨張を減少させるためである。熱処理によっ
て熱膨張係数の履歴現象を減らすことができる。ここで、張力及び温度条件は互いに相関
関係を持つので、温度に応じて張力条件は変わり得る。温度は100〜500℃の範囲に
維持することが望ましく、時間は1分〜3時間の範囲維持することが好ましい。
【0058】
得られるポリイミド−ポリベンゾオキサゾールフィルムの厚さは、特に限定されるもの
ではないが、10〜250μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜10
0μmであることがよい。
【0059】
以上のジアミノフェノール、ジカルボニルクロリド成分と、ジアミン、ジアンヒドリド
成分とは等モル量となるようにして有機溶媒中に溶解して反応させることにより、ポリイ
ミド−ポリベンゾオキサジン前駆体溶液を製造し、これをキャスティングした後、熱処理
して脱水閉環することによりフィルムを製造したのである。
【0060】
本発明は、ジアミノフェノール化合物とジカルボニルクロリド化合物との重合物が脱水
閉環された第1繰り返し単位;及びジアンヒドリド化合物とジアミン化合物との重合物が
脱水閉環された第2繰り返し単位を含む、ポリイミド−ポリベンゾオキサゾールフィルム
を提供することができる。
【0061】
前記第1繰り返し単位は、前記第1繰り返し単位と第2繰り返し単位の総モルに対して
20〜80モル%であってもよい。前記第1繰り返し単位は、総モルに対して20モル%
未満含まれる場合には熱特性の改善が微々たるものであり得、80モル%超で含まれる場
合には黄色度が10以上であり得る。前記第1繰り返し単位は40〜60モル%であるこ
とが、熱的特性と黄色度を満足する観点から好ましい。
【0062】
すなわち、本発明は、前記前駆体溶液からジアミノフェノールとジカルボニルクロリド
の重合反応物である化学式1で表わされる第1繰り返し単位;及びジアミンとジアンヒド
リドの重合反応物である化学式2で表わされる第2繰り返し単位を含む、ポリイミド−ポ
リベンゾオキサゾールフィルムを提供することができる。
【0063】
<化学式1>

【0064】
<化学式2>

【0065】
前記X及び1−Xは、モル分率を意味し、範囲は0<X<1であり、
【0066】
は、ジアミノフェノールである、ビスアミノヒドロキシフェニルヘキサフルオロプ
ロパン(2,2−Bis(3−amino−4−hydroxyphenyl)Hexa
fluoropropane、6FAP)、ビスアミノヒドロキシフェニルスルホン(B
is(3−amino−4−hydroxyphenyl)Sulfone、BAS)、
ジヒドロキシベンジジン(3,3’−Dihydroxybenzidine、HAB)
、ビスアミノヒドロキシフェニルプロパン(2,2−Bis(3−amino−4−hy
droxyphenyl)propane)、ビスアミノヒドロキシロキシフェニルフル
オレン(9,9−Bis(3−amino−4−hydroxyphenyl)fluo
rene)などから誘導された構造であり得、Rは、ジカルボニルクロリド成分である
、フタロイルクロリド(Phthaloyl Chloride)、テレフタロイルクロ
リド(Terephthaloyl Cloride、TPC)、イソフタロイルクロリ
ド(Isophthaloyl chloride)、ビフェニルジカルボニルクロリド
(4,4’−Biphenyldicarbonyl chloride)、オキシビス
ベンゾイルクロリド(4,4’−Oxybis(benzoyl chloride))
、ナフタレンジカルボニルジクロリド(Naphthalene−2,3−dicarb
onyl dichloride)などから誘導された構造であり得る。Rは、ジアン
ヒドリドである、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパ
ンジアンヒドリド(6FDA)、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル
)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物(TDA)
、ピロメリット酸二無水物(1,2,4,5−benzene tetracarbox
ylic dianhydride、pyromellictic acid dian
hydride、PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(3,3,4,
4−Benzophenone tetracarboxylic dianhydri
de、BTDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3,4,4−Biphe
nyltetracarboxylic dianhydride、BPDA)、オキシ
ジフタル酸二無水物(4,4−Oxydiphthalic dianhydride、
ODPA)、ビスカルボキシフェニルジメチルシラン二無水物(Bis(3,4−dic
arboxyphenyl)dimethyl−silane dianhydride
、SiDA)、ビスジカルボキシフェノキシジフェニルスルフィド二無水物(4,4−b
is(3,4−dicarboxyphenoxy)diphenyl sulfide
dianhydride、BDSDA)、スルホニルジフタル酸無水物(Sulfon
yldiphthalic anhydride、SO2DPA)、シクロブタンテトラ
カルボン酸二無水物(Cyclobutane−1,2,3,4−tetracarbo
xylic dianhydride、CBDA)、イソプロピリデンジフェノキシビス
フタル酸無水物(4,4’−(4,4’−Isopropylidenedipheno
xy)bis(phthalic anhydride)、6HBDA)などから誘導さ
れた構造であり得る。Rは、ジアミンである、オキシジアニリン(4,4’−Oxyd
ianiline、ODA)、p−フェニレンジアミン(para−phenylene
diamine、pPDA)、m−フェニレンジアミン(meta−phenylen
e diamine、mPDA)、p−メチレンジアニリン(para−Methylene Dian
iline、pMDA)、m−メチレンジアニリン(meta−Methylene Dianiline、mMD
A)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(1,3−bis(3−amin
ophenoxy)benzene、133APB)、1,3−ビス(4−アミノフェノ
キシ)ベンゼン(1,3−bis(4−aminophenoxy)benzene、1
34APB)、ビスアミノフェノキシフェニルヘキサフルオロプロパン(2,2’−bi
s[4(4−aminophenoxy)phenyl]hexafluoroprop
ane、4BDAF)、ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(2,2’−bis
(3−aminophenyl)hexafluoropropane、33−6F)、
ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(2,2’−bis(4−aminophe
nyl)hexafluoropropane、44−6F)、ビス(4−アミノフェニ
ル)スルホン(bis(4−aminophenyl)sulfone、4DDS)、ビ
ス(3−アミノフェニル)スルホン(bis(3−aminophenyl)sulfo
ne、3DDS)、ビストリフルオロメチルベンジジン(2,2’−bis(trifl
uoromethyl)benzidine、TFDB)、1,3−シクロヘキサンジア
ミン(1,3−Cyclohexanediamine、13CHD)、1,4−シクロ
ヘキサンジアミン(1,4−Cyclohexanediamine、14CHD)、ビ
スアミノフェノキシフェニルプロパン(2,2−Bis[4−(4−aminophen
oxy)−phenyl]propane、6HMDA)、ビスアミノヒドロキシフェニ
ルヘキサフルオロプロパン(2,2−Bis(3−amino−4−hydroxy−p
henyl)−hexafluoropropane、DBOH)、及びビスアミノフェ
ノキシジフェニルスルホン(4,4’−Bis(3−amino phenoxy)di
phenyl sulfone、DBSDA)などから誘導された構造であってもよい。
【0067】
前記光透過度、黄変度及び耐熱性を満足する本発明のポリイミドフィルムは、従来のポ
リイミドフィルムが持つ黄色により使用が制限されていた、保護膜、またはTFT−LC
Dなどにおける拡散板及びコーティング膜、例えば、TFT−LCDにおける層間膜(I
nterlayer)、ゲート絶縁膜(Gate Insulator)及び液晶配向膜
など、透明性が要求される分野への使用が可能であり、液晶配向膜に前記透明ポリイミド
を適用するとき、開口率の増加に寄与して高コントラスト比のTFT−LCDの製造が可
能である。また、既存のディスプレイにおいて、ガラスを代替するフレキシブルディスプ
レイ基板(Flexible Display substrate)及びハードコーテ
ィング(Hard Coating)フィルムとしても使用が可能である。
【0068】
本発明のポリベンゾオキサゾール−イミドフィルムは、50〜250℃で熱膨張係数(
Coefficient of Thermal Expansion)が55ppm/
℃以下であり、無色透明である特徴を持つ。前記熱膨張係数は、熱機械分析装置(TMA
;TA Instrument社製、Q400)を用い、熱機械分析法(TMA−Met
hod)により、2回にわたって50〜250℃での線形熱膨張係数を測定したものであ
る。この際、試験片のサイズは4mm×24mm、荷重は0.02N、昇温速度は10℃
/minとした。
【0069】
前記ポリイミド−ポリベンゾオキサゾールフィルムは、フィルム厚さ10〜100μm
を基準にUV分光計で測定するとき、380〜780nmでの平均透過度が80%以上で
あり、551〜78nmでの平均透過度が85%以上であることを特徴とする。前記平均
透過度は、UV分光計(コニカミノルタ社製、CM−3700d)を用いて550nmで
透過度を3回測定し、その平均値を求めたものである。
【0070】
このとき、ポリイミド−ポリベンゾオキサゾールフィルムは、フィルム厚さ10〜10
0μmを基準にUV分光計で測定するとき、550nmでの透過度が85%以上、500
nmでの透過度が80%以上であることを特徴とする。
【0071】
前記ポリイミド−ポリベンゾオキサゾールフィルムは、フィルム厚さ10〜100μm
を基準に黄色度が10以下であることを特徴とする。黄色度は、UV分光計(コニカミノ
ルタ社製、CM−3700d)を用いてASTM E313規格で測定したものである。
これにより、本発明のポリベンゾオキサゾール−ポリイミドフィルムは無色透明であるこ
とを確認した。
【0072】
前記ポリイミド−ポリベンゾオキサゾールフィルムは、複屈折△n=TE(Trans
verse Electric)−TM(Transverse magnetic)=
0.010以下のフィルム値を持つ。前記複屈折は、複屈折分析器(Prism Cou
pler、Sairon SPA4000)を用いて532nmで、TE(Transv
erse Electric)モード、TM(Transverse magnetic
)モードにて、それぞれ3回測定し、その平均値を測定したのである。
【0073】
上述した熱膨張係数、透過度、黄色度などの物性は、これを測定するとき、フィルム厚
さが10〜100μmの範囲内にあるフィルム、例えば11μm、12μm、13μm、
・・・、100μmなどの厚さを持つフィルムで測定することができ、前記厚さ内にある
フィルムをそれぞれ測定するとき、前記物性の範囲をすべて満たすことができる。この際
、前記フィルムの厚さの範囲は、前記物性を測定するための測定方法に該当するものであ
り、特に言及がない限り、フィルムの厚さを限定する意味ではない。
【0074】
また、本発明に係るポリイミド−ポリベンゾオキサゾールフィルムは、上記の物性、す
なわち熱膨張係数、透過度、黄色度、複屈折それぞれの範囲をすべて満たすことを特徴と
する。
【0075】
最終的に、本発明は、前記ポリイミド−ポリベンゾオキサゾールフィルムを含む映像表
示素子を提供することができる。
【実施例】
【0076】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は、本発明をよ
り具体的に説明するためのものに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0077】
<実施例1>
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を取り付けた500mlの反
応器に、窒素を通過させながら、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)284.867
gを満たした後、6FAP7.398g(0.022mol)を溶解し、10℃でIPC
4.466g(0.022mol)を入れて2時間反応させた。その後、TFDB28.
180g(0.088mol)を溶解した後、BPDA15.535g(0.053mo
l)を入れて5時間反応させ、6FDA15.638g(0.035mol)を入れた。
その後、溶液の温度を常温に維持した後、18時間反応させた。その結果、固形分濃度2
0重量%及び粘度202poiseの溶液を得た。反応終了の後、得られた溶液をステン
レス板に塗布し、10〜20μmにキャスティングし、80℃の熱風で20分、120℃
にて20分、300℃にて等温で10分、熱風で乾燥させた後、徐々に冷却して板から分
離することにより、厚さ12μmのポリイミドフィルムを製造した。
【0078】
<実施例2>
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を取り付けた500mlの反
応器に、窒素を通過させながら、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)272.971
gを満たした後、6FAP14.795g(0.044mol)を溶解し、10℃でIP
C8.933g(0.044mol)を入れて2時間反応させた。その後、TFDB21
.135g(0.066mol)を溶解した後、BPDA11.651g(0.040m
ol)を入れて5時間反応させ、6FDA11.728g(0.026mol)を入れた
。その後、溶液の温度を常温に維持した後、18時間反応させた。その結果、固形分濃度
20重量%及び粘度187poiseの溶液を得た。反応終了の後、得られた溶液をステ
ンレス板に塗布し、10〜20μmにキャスティングし、80℃の熱風で20分、120
℃にて20分、300℃にて等温で10分、熱風で乾燥させた後、徐々に冷却して板から
分離することにより、厚さ12μmのポリイミドフィルムを製造した。
【0079】
<実施例3>
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を取り付けた500mlの反
応器に、窒素を通過させながら、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)261.075
gを満たした後、6FAP22.193g(0.066mol)を溶解させ、10℃でI
PC13.399g(0.066mol)を入れて2時間反応させた。その後、TFDB
14.090g(0.044mol)を溶解した後、BPDA7.767g(0.026
mol)を入れて5時間反応させ、6FDA7.819g(0.018mol)を入れた
。その後、溶液の温度を常温に維持した後、18時間反応させ、その結果、固形分濃度2
0重量%及び粘度161poiseの溶液を得た。反応終了の後、得られた溶液をステン
レス板に塗布し、10〜20μmにキャスティングし、80℃の熱風で20分、120℃
にて20分、300℃にて等温で10分、熱風で乾燥させた後、徐々に冷却して板から分
離することにより、厚さ13μmのポリイミドフィルムを製造した。
【0080】
<実施例4>
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を取り付けた500mlの反
応器に、窒素を通過させながら、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)254.357
gを満たした後、6FAP29.591g(0.088mol)を溶解し、10℃でIP
C17.866g(0.088mol)を入れて2時間反応させた。その後、TFDB7
.045g(0.022mol)を溶解した後、BPDA3.884g(0.013mo
l)を入れて5時間反応させ、6FDA3.909g(0.009mol)を入れた。そ
の後、溶液の温度を常温に維持した後、18時間反応させ、その結果、固形分濃度20重
量%及び粘度160poiseの溶液を得た。反応終了の後、得られた溶液をステンレス
板に塗布し、10〜20μmにキャスティングし、80℃の熱風で20分、120℃にて
20分、300℃にて等温で10分、熱風で乾燥させた後、徐々に冷却して板から分離す
ることにより、厚さ13μmのポリイミドフィルムを製造した。
【0081】
<実施例5>
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を取り付けた500mlの反
応器に、窒素を通過させながら、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)289.387
gを満たした後、BAS5.606g(0.020mol)を溶解し、10℃でDPDO
C5.582g(0.020mol)を入れて2時間反応させた。その後、TFDB25
.618g(0.080mol)を溶解した後、6FDA35.540g(0.080m
ol)を入れて5時間反応させた。その後、溶液の温度を常温に維持した後、18時間反
応させ、その結果、固形分濃度20重量%及び粘度245poiseの溶液を得た。反応
終了の後、得られた溶液をステンレス板に塗布した後、10〜20μmにキャスティング
し、80℃の熱風で20分、120℃にて20分、300℃にて等温で10分、熱風で乾
燥させた後、徐々に冷却して板から分離することにより、厚さ11μmのポリイミドフィ
ルムを製造した。
【0082】
<実施例6>
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を取り付けた500mlの反
応器に、窒素を通過させながら、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)272.982
gを満たした後、BAS11.212g(0.040mol)を溶解し、10℃でDPD
OC11.165g(0.040mol)を入れて2時間反応させた。その後、TFDB
19.124g(0.060mol)を溶解した後、6FDA26.655g(0.60
mol)を入れて5時間反応させた。その後、溶液の温度を常温に維持した後、18時間
反応させた。その結果、固形分濃度20重量%及び粘度238poiseの溶液を得た。
反応終了の後、得られた溶液をステンレス板に塗布した後、10〜20μmにキャスティ
ングし、80℃の熱風で20分、120℃でにて20分、300℃にて等温で10分、熱
風で乾燥させた後、徐々に冷却して板から分離することにより、厚さ13μmのポリイミ
ドフィルムを製造した。
【0083】
<実施例7>
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を取り付けた500mlの反
応器に、窒素を通過させながら、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)256.578
gを満たした後、BAS16.818g(0.060mol)を溶解し、10℃でDPD
OC16.747g(0.060mol)を入れて2時間反応させた。その後、TFDB
12.809g(0.040mol)を溶解した後、6FDA17.770g(0.04
0mol)を入れて5時間反応させた。その後、溶液の温度を常温に維持した後、18時
間反応させ、その結果として、固形分濃度20重量%及び粘度232poiseの溶液を
得た。反応終了の後、得られた溶液をステンレス板に塗布した後、10〜20μmにキャ
スティングし、80℃の熱風で20分、120℃にて20分、300℃で10分、熱風で
乾燥させた後、徐々に冷却して板から分離することにより、厚さ12μmのポリイミドフ
ィルムを製造した。
【0084】
<実施例8>
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を取り付けた500mlの反
応器に、窒素を通過させながら、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)240.173
gを満たした後、BAS22.424g(0.080mol)を溶解し、10℃でDPD
OC22.330g(0.080mol)を入れて2時間反応させた。その後、TFDB
6.405g(0.020mol)を溶解した後、6FDA8.885g(0.020m
ol)を入れて5時間反応させた。その後、溶液の温度を常温に維持した後、18時間反
応させ、その結果、固形分濃度20重量%および粘度221poiseの溶液を得た。反
応終了の後、得られた溶液をステンレス板に塗布した後、10〜20μmにキャスティン
グし、80℃の熱風で20分、120℃にて20分、300℃にて等温で10分、熱風で
乾燥させた後、徐々に冷却して板から分離することにより、厚さ12μmのポリイミドフ
ィルムを製造した。
【0085】
<実施例9>
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を取り付けた500mlの反
応器に、窒素を通過させながら、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)240.406
gを満たした後、BAS5.606g(0.020mol)を溶解し、10℃でIPC4
.060g(0.020mol)を入れて2時間反応させた。その後、TFDB25.6
18g(0.080mol)を溶解した後、ODPA24.817g(0.080mol
)を入れて5時間反応させた。その後、溶液の温度を常温に維持した後、18時間反応さ
せた。その結果、固形分濃度20重量%及び粘度220poiseの溶液を得た。反応終
了の後、得られた溶液をステンレス板に塗布した後、10〜20μmにキャスティングし
、80℃の熱風で20分、120℃にて20分、300℃にて等温で10分、熱風で乾燥
させた後、徐々に冷却して板から分離することにより、厚さ12μmのポリイミドフィル
ムを製造した。
【0086】
<実施例10>
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を取り付けた500mlの反
応器に、窒素を通過させながら、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)228.637
gを満たした後、BAS11.212g(0.040mol)を溶解し、10℃でIPC
8.121g(0.040mol)を入れて2時間反応させた。その後、TFDB19.
214g(0.060mol)を溶解した後、ODPA18.613g(0.060mo
l)を入れて5時間反応させた。その後、溶液の温度を常温に維持した後、18時間反応
させた。その結果、固形分濃度20重量%及び粘度215poiseの溶液を得た。反応
終了の後、得られた溶液をステンレス板に塗布した後、10〜20μmにキャスティング
し、80℃の熱風で20分、120℃にて20分、300℃にて等温で10分、熱風で乾
燥させた後、徐々に冷却して板から分離することにより、厚さ13μmのポリイミドフィ
ルムを製造した。
【0087】
<実施例11>
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を取り付けた500mlの反
応器に、窒素を通過させながら、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)216.867
gを満たした後、BAS16.818g(0.060mol)を溶解し、10℃でIPC
12.181g(0.060mol)を入れて2時間反応させた。その後、TFDB12
.809g(0.040mol)を溶解した後、ODPA12.408g(0.040m
ol)を入れて5時間反応させた。その後、溶液の温度を常温に維持した後、18時間反
応させた。その結果、固形分濃度20重量%及び粘度218poiseの溶液を得た。反
応終了の後、得られた溶液をステンレス板に塗布した後、10〜20μmにキャスティン
グし、80℃の熱風で20分、120℃にて20分、300℃で10分、熱風で乾燥させ
た後、徐々に冷却して板から分離することにより、厚さ12μmのポリイミドフィルムを
製造した。
【0088】
<実施例12>
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を取り付けた500mlの反
応器に、窒素を通過させながら、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)205.098
gを満たした後、BAS22.424g(0.080mol)を溶解し、10℃でIPC
16.242g(0.080mol)を入れて2時間反応させた。その後、TFDB6.
405g(0.020mol)を溶解した後、ODPA6.204g(0.020mol
)を入れて5時間反応させた。その後、溶液の温度を常温に維持した後、18時間反応さ
せた。その結果、固形分濃度20重量%及び粘度209poiseの溶液を得た。反応終
了の後、得られた溶液をステンレス板に塗布した後、10〜20μmにキャスティングし
、80℃の熱風で20分、120℃にて20分、300℃にて等温で10分、熱風で乾燥
させた後、徐々に冷却して板から分離することにより、厚さ12μmのポリイミドフィル
ムを製造した。
【0089】
<実施例13>
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を取り付けた500mlの反
応器に、窒素を通過させながら、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)258.498
gを満たした後、6FAP7.325g(0.020mol)を溶解し、10℃でOBB
OC5.902g(0.020mol)を入れて2時間反応させた。その後、TFDB2
5.618g(0.080mol)を溶解した後、BTDA25.778g(0.080
mol)を入れて5時間反応させた。その後、溶液の温度を常温に維持した後、18時間
反応させた。その結果、固形分濃度20重量%及び粘度249poiseの溶液を得た。
反応終了の後、得られた溶液をステンレス板に塗布した後、10〜20μmにキャスティ
ングし、80℃の熱風で20分、120℃にて20分、300℃にて等温で10分、熱風
で乾燥させた後、徐々に冷却して板から分離することにより、厚さ11μmのポリイミド
フィルムを製造した。
【0090】
<実施例14>
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を取り付けた500mlの反
応器に、窒素を通過させながら、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)260.011
gを満たした後、6FAP14.650g(0.040mol)を溶解し、10℃でOB
BOC11.805g(0.040mol)を入れて2時間反応させた。その後、TFD
B19.214g(0.060mol)を溶解した後、BTDA19.334g(0.0
60mol)を入れて5時間反応させた。その後、溶液の温度を常温に維持した後、18
時間反応させた。その結果、固形分濃度20重量%及び粘度251poiseの溶液を得
た。反応終了の後、得られた溶液をステンレス板に塗布した後、10〜20μmにキャス
ティングし、80℃の熱風で20分、120℃にて20分、300℃にて等温で10分、
熱風で乾燥させた後、徐々に冷却して板から分離することにより、厚さ11μmのポリイ
ミドフィルムを製造した。
【0091】
<実施例15>
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を取り付けた500mlの反
応器に、窒素を通過させながら、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)261.525
gを満たした後、6FAP21.976g(0.060mol)を溶解し、10℃でOB
BOC17.707g(0.060mol)を入れて2時間反応させた。その後、TFD
B12.809g(0.040mol)を溶解した後、BTDA12.889g(0.0
40mol)を入れて5時間反応させた。その後、溶液の温度を常温に維持した後、18
時間反応させた。その結果、固形分濃度20重量%及び粘度241poiseの溶液を得
た。反応終了の後、得られた溶液をステンレス板に塗布した後、10〜20μmにキャス
ティングし、80℃の熱風で20分、120℃にて20分、300℃にて等温で10分、
熱風で乾燥させた後、徐々に冷却して板から分離することにより、厚さ12μmのポリイ
ミドフィルムを製造した。
【0092】
<実施例16>
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を取り付けた500mlの反
応器に、窒素を通過させながら、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)263.038
gを満たした後、6FAP29.301g(0.080mol)を溶解し、10℃でOB
BOC23.610g(0.080mol)を入れて2時間反応させた。その後、TFD
B6.405g(0.020mol)を溶解した後、BTDA6.445g(0.020
mol)を入れて5時間反応させた。その後、溶液の温度を常温に維持した後、18時間
反応させた。その結果、固形分濃度20重量%及び粘度238poiseの溶液を得た。
反応終了の後、得られた溶液をステンレス板に塗布した後、10〜20μmにキャスティ
ングし、80℃の熱風で20分、120℃にて20分、300℃にて等温で10分、熱風
で乾燥させた後、徐々に冷却して板から分離することにより、厚さ13μmのポリイミド
フィルムを製造した。
【0093】
<比較例1>
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を取り付けた500mlの反
応器に、窒素を通過させながら、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)269.785
gを満たした後、TFDB32.023g(0.010mol)を溶解し、BPDA17
.653g(0.060mol)を入れて5時間反応させ、6FDA17.770g(0
.010mol)を入れた。その後、溶液の温度を常温に維持した後、18時間反応させ
た。その結果、固形分濃度20重量%及び粘度235poiseの溶液を得た。反応終了
の後、得られた溶液をステンレス板に塗布した後、10〜20μmにキャスティングし、
80℃の熱風で20分、120℃にて20分、300℃にて等温で10分、熱風で乾燥さ
せた後、徐々に冷却して板から分離することにより、厚さ12μmのポリイミドフィルム
を製造した。
【0094】
<比較例2>
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を取り付けた500mlの反
応器に、窒素を通過させながら、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)305.792
gを満たした後、TFDB32.023g(0.010mol)を溶解し、6FDA44
.425g(0.010mol)を入れて5時間反応させた。その後、溶液の温度を常温
に維持した後、18時間反応させた。その結果、固形分濃度20重量%及び粘度231p
oiseの溶液を得た。反応終了の後、得られた溶液をステンレス板に塗布した後、10
〜20μmにキャスティングし、80℃の熱風で20分、120℃にて20分、300℃
にて等温で10分、熱風で乾燥させた後、徐々に冷却して板から分離することにより、厚
さ13μmのポリイミドフィルムを製造した。
【0095】
<比較例3>
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を取り付けた500mlの反
応器に、窒素を通過させながら、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)252.176
gを満たした後、TFDB32.023g(0.010mol)を溶解し、ODPA31
.021g(0.010mol)を入れて5時間反応させた。その後、溶液の温度を常温
に維持した後、18時間反応させた。その結果、固形分濃度20重量%及び粘度202p
oiseの溶液を得た。反応終了の後、得られた溶液をステンレス板に塗布した後、10
〜20μmにキャスティングし、80℃の熱風で20分、120℃にて20分、300℃
にて等温で10分、熱風で乾燥させた後、徐々に冷却して板から分離することにより、厚
さ13μmのポリイミドフィルムを製造した。
【0096】
<比較例4>
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を取り付けた500mlの反
応器に、窒素を通過させながら、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)256.984
gを満たした後、TFDB32.023g(0.010mol)を溶解し、BTDA32
.223g(0.010mol)を入れて5時間反応させた。その後、溶液の温度を常温
に維持した後、18時間反応させた。その結果、固形分濃度20重量%及び粘度226p
oiseの溶液を得た。反応終了の後、得られた溶液をステンレス板に塗布した後、10
〜20μmにキャスティングし、80℃の熱風で20分、120℃にて20分、300℃
にて等温で10分、熱風で乾燥させた後、徐々に冷却して板から分離することにより、厚
さ13μmのポリイミドフィルムを製造した。
【0097】
上記の実施例及び比較例で製造されたポリイミドフィルムの物性を次の方法で評価し
、その結果を下記表1及び表2に示す。
【0098】
(1)透過度の測定
UV分光計(コニカミノルタ社製、CM−3700d)を用いて550nmで透過度を
3回測定し、その平均値を表1に示した。
【0099】
(2)粘度
ブルックフィールド(Brookfield)粘度計(RVDV−II+P)を用い、
25℃で6番または7番のスピンドルを用いて50rpmで2回測定し、その平均値を測
定した。
【0100】
(3)黄色度(Y.I.)を測定
UV分光計(コニカミノルタ社製、CM−3700d)を用いてASTM E313規
格で黄色度を測定した。
【0101】
(4)複屈折測定
複屈折分析器(Prism Coupler、Sairon SPA4000)を用い
て532nmでTE(Transverse Electric)モード、TM(Tra
nsverse magnetic)モードで、それぞれ3回測定し、その平均値を測定
した。
【0102】
(5)熱膨張係数(CTE)の測定
熱機械分析装置(TMA;TA Instrument社製、Q400)を用いて熱機
械分析法(TMA−Method)により、2回にわたって50〜250℃での線形熱膨
張係数を測定した。試験片のサイズは4mm×24mm、荷重は0.02N、昇温速度は
10℃/minとした。
【0103】
フィルムを製膜し、熱処理によってフィルム内に残留応力が残っているおそれがあるた
め、一番目の作動(Run)で残留応力を完全に除去した後、2番目の値を実測定値とし
て提示した。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
表1及び表2に示すように、実施例1〜16のポリイミドフィルムは、比較例のレベル
で無色透明でありながらも、より低い複屈折率を有することが分かる。特に、線形熱膨張
係数により表される耐熱特性が、10%以上改善されたことを確認することができる。こ
れにより、ベンゾオキサゾールの含有量が増加するにつれて耐熱性が改善されることが分
かる。しかし、実施例1〜16の結果に基づいてベンゾオキサゾール単位構造のモル分率
Xが増えるほど、前記組成において耐熱特性及び複屈折は改善されるが、光学特性が低下
することを確認した。0<X≦0.6の範囲であるときに、得ようとする10以下の、Y
.I.(Yellow Index)値を有する無色透明なポリイミド−ポリベンゾオキ
サゾールフィルムを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明に係るポリイミド−ポリベンゾオキサゾール前駆体溶液、ポリイミド−ポリベン
ゾオキサゾールフィルム、及びその製造方法は、OLED、TFT−LCD、フレキシブ
ルディスプレイなどの表示素子の素材に利用可能である。