(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記宙乗機が線に設置した場合に、前記カバー部材は下部の下縁が、前・後方向視でローラの下縁に沿う形状を呈し、かつ、側方向視で線に重なるように延在したものであることを特徴とする請求項1に記載の単導体用宙乗機ローラ防護カバー。
前記前・後のローラに設けた前記カバー部材の少なくとも一方には、作業者に接触を検知させる接触検知部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の単導体用宙乗機ローラ防護カバー。
前記宙乗機は、レバー部材の操作によって前記宙乗機の線に対する移動を規制するブレーキ装置を有し、前記レバー部材は、接触検知部の取り付け箇所と平面視で線を挟んで反対側に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の単導体用宙乗機ローラ防護カバー。
前記フレームは、前・後のローラをそれぞれ回転可能に支持する前・後のローラフレームと、前・後のローラフレーム同士を前後に間隔を置いて固定するメインフレームとを有し、ローラフレームに対して平面視で線に対するメインフレームの固定側と同じ側に前記接触検知部が配置されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の単導体用宙乗機ローラ防護カバー。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の宙乗機では、作業者は電線に手を掛けて送り出して漕ぐ際に、架線を握る手がローラに手が触れてしまうと、宙乗機を一旦停止して電線を持ち直し再度漕ぐため作業に支障が生じる。また、ローラに手が触れるのを防止するためにブレーキ装置を掛けるとしても頻繁なブレーキの使用は手間がかかってしまう。しかながら、従来は、ローラに手が触れることを簡易な構造で防止する技術は提案されていなかった。
【0008】
本発明は、斯かる実情に鑑み、作業者が宙乗機に架線に手をかけた際にローラに触れることを防止できる単導体用宙乗機ローラ防護カバーを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、線に懸架されて作業者が乗った状態で線上を移動可能な宙乗機において、
フレームと、
前記フレームの長さ方向の前部・後部にそれぞれ回転可能に設けられて線に懸架するための前・後のローラと、
前記フレームに支持され、作業者が乗るための腰掛板と、
前記前のローラを少なくとも前記長さ方向の前側から覆い、前記後のローラを少なくとも前記長さ方向の後側から覆う前・後のカバー部材とを備えたことを特徴とする単導体用宙乗機ローラ防護カバーである。
【0010】
本発明において、前記カバー部材は、前・後方向視でローラに重なる構造を有することが好適である。
【0011】
本発明において、前記宙乗機が線に設置した場合に、前記カバー部材は下部の下縁が、前・後方向視でローラの下縁に沿う形状を呈し、かつ、側方向視で線に重なるように延在したものであることが好適である。
【0012】
本発明において、前記前・後のカバー部材は、前記前・後のローラをそれぞれ前記長さ方向の前側及び後ろ側から覆うものであって、それぞれがフレームから着脱可能になっていることが好適である。
【0013】
本発明において、前記前・後のローラに設けた前記カバー部材の少なくとも一方には、作業者に接触を検知させる接触検知部が設けられていることが好適である。
【0014】
本発明において、前記宙乗機には、レバー部材の操作によって前記宙乗機の線に対する移動を規制するブレーキ装置を有し、前記レバー部材は、接触検知部の取り付け箇所と平面視で線を挟んで反対側に設けられていることが好適である。
【0015】
本発明において、前記接触検知部は、撓み可能な弾性材から構成されていることが好適である。
【0016】
本発明において、前記フレームは、前・後のローラをそれぞれ回転可能に支持する前・後のローラフレームと、前・後のローラフレーム同士を前後に間隔を置いて固定するメインフレームとを有し、ローラフレームに対して平面視で線に対するメインフレームの固定側と同じ側に前記接触検知部が配置されていることが好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の単導体用宙乗機ローラ防護カバーによれば、前のローラを少なくとも前記長さ方向の前側から覆い、前記後のローラを少なくとも前記長さ方向の後側から覆う前・後のカバー部材を備えているので、宙乗機に乗った作業者が線を持ったときにカバー部材によって作業者がローラに接触することを防止できるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0020】
図1は第1実施形態に係る単導体用宙乗機ローラ防護カバーの全体説明図、
図2〜
図5は各部品図、
図6は作動説明図である。
【0021】
第1実施形態に係る宙乗機は、
図1に示すように、鉄塔等の支持体に懸架された送電線等の架線を例とする線26上に設置されて使用されるものであって、作業者が乗った状態で線26上を移動可能な宙乗機である。
【0022】
図1においては、ブレーキ装置40が掛かった状態を示しているが、宙乗機は、ブレーキ装置40を開放した状態で線26に対して進退動可能である。
図1では、ブレーキ装置40の付けられている側を後(符号Bで示す)とし、ブレーキ装置40の無い側を前(符号Fで示す)とする。
【0023】
図1に示すように、宙乗機は、フレーム10と、フレーム10の長さ方向の前部・後部にそれぞれ回転可能に設けられて線26に懸架するための前・後のローラ12・14と、フレーム10に支持され、作業者が乗るための腰掛板16(概略図示)と、前のローラ12をフレーム10の長さ方向の前側及び後側から覆う前のカバー部材18と、後のローラ14をフレーム10の長さ方向の前側及び後側から覆う後のカバー部材20、作業者が移動の際に線26を握った手が前・後のカバー部材18・20に近接したことを接触によって検知させる接触検知部36と、作業時や休止中に、宙乗機の移動を規制(静止)して線26上の一定位置に固定するためのブレーキ装置40とを備えている。
【0024】
〔フレーム10〕
フレーム10は、前方又は後方から見て概略矩形であって内部に前・後のローラ12・14をそれぞれ回転可能に支持する前・後のローラフレーム10a・10bと、前・後のローラフレーム10a・10b同士を前後に所定間隔を置いて連結し溶接等で固定された棒状等長さのあるメインフレーム10cと、ローラフレーム10a・10bの一部(実施形態では、乗員側)に開いた切り欠き10dを、開閉する開閉蓋10eとを有している。なお、フレーム10、開閉蓋10eは剛性のある金属材からなる。
【0025】
〔吊下げ部材22〕
腰掛板16はフレーム10に吊下げる吊下げ部材22によって支持される。吊下げ部材22は、前・後のローラフレーム10a・10bの下部に延びるブラケットに連結され、吊下げ部材22の下部に腰掛板16が連結されている。腰掛板16の吊下げ部材22は各種構造とすることができる。
【0026】
〔前・後のローラ12・14〕
前・後のローラ12・14は、フレーム10の上部に左右方向に沿って貫通して固定された回転軸24によってフレーム10(前・後のローラフレーム10a・10b)に回転可能に設けられる。
【0027】
前・後のローラ12・14は、軸方向に側部よりも中央部が小径になって線26に乗架させた際に誘導しやすくなっている。
【0028】
なお、前・後のローラフレーム10a・10bの内部において、前・後のローラ12・14の下方にガイドローラ28が設けられる。また、前・後のローラフレーム10a・10bの外部には、作業者が作業中に背中を支持する背当てベルト30の両端部を連結するリング状のブラケット32・32がそれぞれ固定されている。
【0029】
前・後のローラフレーム10a・10bの上部には、宙乗機を搬送の際等に吊下げるためのリング状の搬送用ブラケット34が上方に突出してそれぞれ固定されている。
〔前・後のカバー部材18・20〕
【0030】
前・後のカバー部材18・20は、
図1に示すように、前・後のローラ12・14の各回転軸24方向に沿う側面視で下開きのU字形状に概略呈している側面に空間のあるものである。
【0031】
前・後のカバー部材18・20は、前・後のローラ12・14をそれぞれフレーム10(メインフレーム10c)の長さ方向の前側及び後ろ側から覆うものであって、それぞれのカバー部材18・20がフレーム10(ローラフレーム10a・10b)から着脱可能になっている。したがって、前後のカバー部材18・20は、フレーム10の長さ方向の前側及び後ろ側から前・後のローラ12・14を覆うことから、宙乗機に乗った作業者が移動のため線26を掴んで漕ぐ際に、前・後のカバー部材18・20が手に当たるので作業者は前・後のローラ12・14に手が当たることを防止できる。
【0032】
ここで、部品図として、
図2は前のカバー部材18を示し、
図3は後のカバー部材20を示す。
図2、
図3において、前方を符号F、後方を符号B、右側を符号R、左側を符号Lによってそれぞれ示している。
図4は取付プレート38を示し、
図5は接触検知部36を示している。
【0033】
〔前のカバー部材18〕
詳しくは、前のカバー部材18は、
図2に示すように、前のローラ12(
図1参照)を上から覆う天板から前・後から覆う前後板までの外板部18aが側面視でU字形状に折り曲げられて形成されている。前のローラ12の両側部に対向する側板部18bが外板部18aの両側に壁状に形成されている。
【0034】
実施形態では、側板部18bの取り囲む空間18buは、
図2(c)に示すように全体的に側面視で下開きのU字形状に概略呈している。空間18buは、前のローラ12とほぼ同じ大きさになるように大きく抉れている。したがって、このような側面の空間18buがあるので、この空間18buを通して前のローラ12の側面から前のカバー部材18の内部に手を入れやすくなっており、取付プレート38を取り付ける際にアクセスしやすい構造である。また、側板部18bは外板部18aと共に断面コ字形状を呈して、外板部18aを補強する機能も有する。
【0035】
なお、本発明において、カバー部材の構造は、種々に構成でき、側板部の大きさは種々に設定して、前のローラ12の側面にラップしなくても、部分的又は全面的に覆うこともでき、さらには、側板部自体を設けない構造とすることも種々にできる。
【0036】
また、
図2に(b)、(c)に示すように、両側板部18bのうちで前方Fに対して左側18bLは全体に形成され、右側18bRは後部が切り欠き18cが空間18buに連続している。この切り欠き18cは、フレーム10のメインフレーム10c(
図1参照)が干渉しないように逃がすことができる。
【0037】
また、前のカバー部材18は、その前方の下端部の左右に、後記する接触検知部36固定用の環状の取り付け部18dが固定されている。取付け部18dは、対(2つ)で形成されているので、接触検知部36を何れかの取り付け部18dに選択して取り付け、又は、別の部材を取り付けることができる。
【0038】
外板部18aの上部には、前のカバー部材18をフレームの搬送用ブラケット34を通す挿通孔18eと取付け穴18f、18fが形成されている。
図1に示すように、挿通孔18eにブラケット34を通して、前のカバー部材18をローラフレーム10aに設置し、そして、ローラフレーム10aを下方から挟み付けるように取付プレート38を設置し、上方から取付け穴18f、18fにボルトを通して前のカバー部材18を取付プレート38にボルト止めし、前のカバー部材18をローラフレーム10aに固定する。
【0039】
前のカバー部材18は、
図1に示すように、上方から前のローラ12を完全に覆い、かつ、前・後方向視で前のローラ12に重なる構造を有する。
【0040】
具体的には、宙乗機を線26に設置した場合に、
図1に示すように、前のカバー部材18は下部の下縁18auが、前・後方向視で前のローラ12の下縁に沿う形状を呈し、かつ、側方向視で線26に重なるように延在したものである。実施形態では、
図1、
図2に示すように、前のカバー部材18は、下部の下縁18auが下開きの半円形状を呈し、前のローラ12の下縁形状が同様に下開きの半円形状を呈している。前のカバー部材18における下縁18auの位置は前のローラ12の下縁位置に対して上方に位置して線26に干渉しにくい構造になっている。
【0041】
〔後のカバー部材20〕
詳しくは、後のカバー部材20は、
図3に示すように、後のローラ14(
図1参照)を上から覆う天板から前・後から覆う前後板までの外板部20aが側面視でU字形状に折り曲げられて形成されている。後のローラ14の両側部に対向する側板部20bが外板部20aの両側に壁状に形成されている。
【0042】
実施形態では、側板部20bの取り囲む空間20buは、
図3(c)に示すように全体的に側面視で下開きのU字形状に概略呈している。空間20buは、後のローラ14とほぼ同じ大きさになるように大きく抉れている。したがって、このような側面の空間20buがあるので、この空間20buを通して後のローラ14の側面から後のカバー部材20の内部に手を入れやすくなっており、取付プレート38(
図1参照)を取り付ける際にアクセスしやすい構造である。また、側板部20bは外板部20aと共に断面コ字形状を呈して、外板部20aを補強する機能も有する。
【0043】
なお、本発明において、後のカバー部材20の構造は、種々に構成でき、側板部の大きさは種々に設定して、後のローラ14の側面にラップしなくても、部分的又は全面的に覆うこともでき、さらには、側板部自体を設けない構造とすることも種々にできる。
【0044】
図3に(b)、(c)に示すように、両側板部20bのうちで前方Fに対して左側20bLは全体に形成され、右側20bRは前部が切り欠かれて空間20cになっている。この空間20cは、フレーム10のメインフレーム10c(
図1参照)が干渉しないように逃がすことができる。
【0045】
また、後のカバー部材20は、その後部の下端部の右側に、後記する接触検知部36固定用の環状の取り付け部20dが固定されている。取付け部20dは、後のカバー部材20の右側に1つが形成されている。反対の左側に取付け部20dの形成されていないが、これは後述するブレーキ装置40のレバー部材40aに干渉しないようになっている。
【0046】
外板部20aの上部には、後のカバー部材20をフレームの搬送用ブラケット34を通す挿通孔20eと取付け穴20f、20fが形成されている。
図1に示すように、挿通孔20eにブラケット34を通して、後のカバー部材20をローラフレーム10aに設置し、そして、ローラフレーム10aを下方から挟み付けるように取付プレート38を設置し、上方から取付け穴20f、20fにボルトを通して後のカバー部材20を取付プレート38によってボルト止めする。
【0047】
後のカバー部材20は、
図1に示すように、前のローラ12と前のカバー部材18の関係と同様に、上方から後のローラ14を完全に覆い、かつ、前・後方向視で後のローラ14に重なる構造を有する。具体的には、前記宙乗機を線26に設置した場合に、後のカバー部材20は下部の下縁が、前・後方向視で後のローラ14の下縁に沿う形状を呈し、かつ、側方向視で線26に重なるように延在したものである。後のカバー部材20は、下部の下縁20buが下開きの半円形状を呈し、後のローラ14の下縁形状が同様に下開きの半円形状を呈している。後のカバー部材20の下縁位置は後のローラ14の下縁位置に対して上方に位置して線26に干渉しにくい構造になっている。
【0048】
なお、前・後のカバー部材18・20は、前記前・後のローラ12・14をそれぞれ長さ方向の前側及び後ろ側から覆うものであるので、作業者が線26を持って漕いで移動する際にそれぞれがフレームから着脱可能になっている。
【0049】
〔取付プレート38〕
取付プレート38は、
図4に示すように、概略平板状であり、前・後のカバー部材18・20をフレーム10(ローラフレーム10a)(
図1参照)に取り付けるための金属材からなる部材である。
【0050】
取付プレート38は、中央部38aが両端部38b・38bに比較して段部38a1・38a1から下方に向けて凹むように曲がっている。取付プレート38は、両端部38b・38bに、下面にナット38c・38cが溶接固定されている。
【0051】
前・後のカバー部材18・20をフレーム10に取付けるに際には、まず、上方から前・後のカバー部材18・20を前・後のローラ12・14に被せる。挿通孔18e・20eに搬送用ブラケット34・34に通して、前・後のカバー部材18・20の下面をローラフレーム10a・10aの上部に対向・当接させる。その後、ローラフレーム10a・10aの上部の下面側に取付プレート38・38の中央部38a・38aの凹みを嵌め込んで取付プレート38・38を位置させる。そして、おのおの上方から取付け穴18f、20fにボルトを通してナット38c・38cに螺合させて締め付け、カバー部材18・20を取付プレート38にボルト止めする。
【0052】
前・後のカバー部材18・20はフレーム10に対してボルト止めするので着脱が容易である。
【0053】
〔接触検知部36〕
図1に示すように、作業者が移動の際に線26を握った手が前・後のカバー部材18・20に近接したことを接触によって検知させる接触検知部36を設けている。接触検知部36は、前・後のローラ12・14に設けた前・後のカバー部材18・20にそれぞれ前・後に突出して取付けられている。
【0054】
図5は、接触検知部36の部品図である。
図5に示すように、長円形の長穴36aの開いた、全体が角の丸い長方形の金属製のブラケット体36bと、コイルバネからなる円筒形状で撓み可能な弾性検知体36cと、ブラケット体36bの弾性検知体36cを取り付けるための取り付け用リブ36dと、弾性検知体36cをリブ36dに取り付けるためのネジ36eとを有している。
【0055】
実施形態の宙乗機においては、接触検知部36を設けているので、作業者が腰を掛けて移動する際に線26を握った状態で前・後のカバー部材18・20に近接した場合、カバー部材18・20に手が当たるより前に弾性検知体36cに手が触れることを手の触覚で認識できる。したがって、接触検知部36によって、作業者は手がカバー部材18・20に近づいたことを明確に認識できる。
【0056】
ここで、実施形態の宙乗機では、カバー部材18・20によって前・後のローラ12・14に手が触れることを防止している。仮に、宙乗機に乗った作業者が勢いよく移動した場合に、カバー部材18・20の曲がりやその下方への潜り込みが生じたときに前・後のローラ12・14への近接が考えられるが、接触検知部36を設けているためカバー部材18・20に触れるより前に作業者は前・後のローラ12・14及びカバー部材18・20への近接を認識できるので、移動を停止するなど接触防止の対策を容易にとることができる。
【0057】
接触検知部36は、撓み可能な弾性材のコイルスプリングによって弾性検知体36cを構成しているが、その他、接触検知部36は、全体又は一部を弾性材で構成することができる。弾性材としてコイル構造以外の板状のスプリングや、樹脂を材質としたもの等種々に構成できる。
【0058】
〔ブレーキ装置40〕
宙乗機には、
図1に示すように、レバー部材40aの操作によって宙乗機の線26に対する移動を規制するブレーキ装置40を有する。ブレーキ装置40のレバー部材40aは、接触検知部36の取り付け箇所(実施形態で右R側)と平面視で線26を挟んで反対側(実施形態で左L側)に設けられている。
【0059】
ブレーキ装置40は、
図1に示すように、後のローラ14の回転軸24にレバー部材40aの支点の基端40a1が回転可能に軸支される。レバー部材40aの力点の先端40a2に、図示しないロープが連結され、作業者がロープによってレバー部材40aを回動操作可能な構造になっている。レバー部材40aは、摩擦材を備えたブレーキシュー40bを上下動させるリンク機構40cが連結される。
【0060】
なお、リンク機構40cには、レバー部材40aを上方に、かつ、ブレーキシュー40bを下方に付勢するスプリング40dがローラフレーム10bとリンク機構40cとの間に連結され、スプリング40dの作用によって、レバー部材40aの非操作時には、ブレーキが開放した状態になる。
〔フレーム10〕
【0061】
前記フレームは、
図1に示すように、前・後のローラ12・14をそれぞれ回転可能に支持する前・後のローラフレーム10a・10bと、前・後のローラフレーム10a・10b同士を前後に間隔を置いて固定するメインフレーム10cを有する。ローラフレーム10a・10bには、背当てベルト30の両端が連結されている。背当てベルト30は長さが調整可能である。
【0062】
作業者がメインフレーム10cの反対側から線26と背当てベルト30との間に位置して、足をメインフレーム10c側に下ろし、乗車する。作業者は背当てベルト30の長さを調整した状態で背中側を適切に保持して腰掛板16に腰を掛けて安定した作業姿勢になる。
【0063】
図1(a)が示すように、ローラフレーム10a・10bに対して平面視で線26に対するメインフレーム10cの固定側と同じ側に接触検知部36・36が配置されている。
【0064】
宙乗機は、レバー部材40aの操作によって宙乗機の線26に対する移動を規制するブレーキ装置40を有するが、
図1(a)、(c)に示すように、ブレーキ装置40において、レバー部材40aは、接触検知部36・36の取り付け箇所(実施形態で右R側)と平面視で線26を挟んで反対側に設けられている。
【0065】
〔宙乗機の使用〕
図6は、宙乗機の使用の際の、ブレーキ装置の操作説明図である。
【0066】
図6において、作業者は背当てベルト30の長さを調整した状態で背中側を適切に保持して腰掛板16に腰を掛けて安定した作業姿勢になる。
【0067】
図6において、二点鎖線によってレバー部材40aの非操作状態を示している。ブレーキ装置40の操作時にレバー部材40aを下方(符号D方向)に押し下げたときに、ブレーキシュー40bが上昇して(符号U方向)線26に押し当たり、摩擦力によって宙乗機の移動を規制する。なお、レバー部材40aには、ロープ等の操作用の線条体の一端が繋がり、他端がフレーム10に繋がっており、線条体を作業者が踏む等することによってレバー部材40aが下がり、ブレーキがかかる構造である。
【0068】
作業時において、宙乗機に腰掛板16に乗った状態の作業者は、前・後方向の何れかに移動する際に、線26を掴んで送り出して行う。
【0069】
実施形態の単導体用宙乗機ローラ防護カバーによれば、前のローラ12を少なくとも長さ方向の前側から覆い、後のローラ14を少なくとも長さ方向の後側から覆う前・後のカバー部材18・20を備えているので、宙乗機に乗った作業者が線26を持ったときにカバー部材18・20によって作業者がローラ12・14に接触することを防止できる。
【0070】
また、接触検知部36に手が接触することによって作業者は、手が前・後のカバー部材18・20に近づいたことを知ることができる。前方から手が前の接触検知部36に接触したとき、また、後方から手が後の接触検知部36に接触したときに、作業者用がそれぞれ検知できる。
【0071】
実施形態は本発明の一例であり、種々に変形実施できる。第1実施形態では線26として例えばACSR(鋼心アルミ撚線)であって330mm
2〜610mm
2用(呼びのもの)である。前・後のローラ12・14は寸法が同じであり、ローラ12・14の最小部、フランジ外径、ローラの内周面径が、ローラ12・14の軸方向の厚さや、前・後カバー部材18・20の縦、幅、高さ、取付プレート寸法等は、ローラが覆えるカバーであれば寸法は種々に選択できる。例えばローラ12・14の外径が125mm、カバー部材18・20がほぼ長さ150〜170mm程度に設定できる。
【0072】
第2実施形態では、宙乗機を適用する線26の太さが第1実施形態と異なり、それに使用する前・後のローラ12・14も大きさが異なるものである。
図7は、第2実施形態に係る宙乗機の説明図、
図8、
図9に前・後のカバー部材18・20である。なお、各部については、第1実施形態と同様部分に同一符号を付している。
【0073】
第2実施形態では線26として例えばACSR(鋼心アルミ撚線)であるが、100mm
2〜410mm
2用のものである。ローラが覆えるカバーであれば寸法は種々に選択できる。例えばローラ12・14の外径が100mm、カバー部材18・20がほぼ長さ130〜150mm程度に設定できる。
【0074】
なお、宙乗機を適用する線26は種々に選択することができるが、線の太さが変われば宙乗機もそのローラ防護カバーも異なる実施形態を適用することができる。第1実施形態や第2実施形態を適用する線の太さと異なる太さの線について対応させた宙乗機ローラ防護カバーの他の実施形態を
図10、
図11によって説明する。
図10は、第3実施形態に係る単導体用宙乗機ローラ防護カバー、
図11は、第4実施形態に係る単導体用宙乗機ローラ防護カバーである。
【0075】
図10、
図11に示す第3実施形態、第4実施形態に係るローラ防護カバーでは、宙乗機を適用する線26の太さが第1実施形態と異なり、それに使用する前・後のローラ12・14も大きさが異なるものである。なお、
図10、
図11において、各部については、第1実施形態と同様部分に同一符号を付している。
第3実施形態では、第1実施形態よりも線が太く、適用電線としてはACSRが810mm
2〜1160mm
2用のものである。この場合、カバー部材18・20は、長さがほぼ190〜210mm、高さがほぼ155〜165mm、幅がほぼ125〜130mmにできる。
【0076】
また、
図11に示す第4実施形態に係るローラ防護カバーでは、適用電線としてはACSRが810mm
2〜1520mm
2用のものにできる。カバーの長さや高さは第3実施形態とほぼ同様であるが幅が異なる。この場合、カバー部材18・20は、長さがほぼ190〜210mm、高さがほぼ155〜165mmであるが、幅がほぼ130〜140mmである。
【0077】
本発明は前述の実施形態に限定されず本発明の範囲内で種々に変形実施できる。例えば、宙乗機が適用できる線の種類や寸法は上記の他にサイズ種々に選定できることはもちろんである。また線に懸架するローラは前・後のローラ以外に中間ローラを設けたものでもよく、その場合も少なくとも前・後のローラにカバー部材を設けたものが本発明の範囲内である。
【解決手段】 線に懸架されて作業者が乗った状態で線上を移動可能な宙乗機において、フレームと、前記フレームの長さ方向の前部・後部にそれぞれ回転可能に設けられて線に懸架するための前・後のローラと、前記フレームに支持され、作業者が乗るための腰掛板と、前記前のローラを少なくとも前記長さ方向の前側から覆い、前記後のローラを少なくとも前記長さ方向の後側から覆う前・後のカバー部材とを備えた単導体用宙乗機ローラ防護カバー。