(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記亜硝酸塩化合物が、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸マグネシウム及び亜硝酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載のキット。
前記タンパク質分解酵素が、プロナーゼ、プロテアーゼA、プロテアーゼN、ディスパーゼ、中性プロテアーゼ、glu-C、パパイン、トリプシン及びペプシンからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載のキット。
前記発色試薬が、N-(カルボキシメチルアミノカルボニル)-4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミン、10-(カルボキシメチルアミノカルボニル)-3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジンナトリウム塩、10-(N-メチルカルバモイル)-3,7-ビス(ジメチルアミノ)-1H-フェノチアジン、N,N,N',N',N'',N''-ヘキサ-3-スルホプロピル-4,4',4''-トリアミノトリフェニルメタン及びオルト-フェニレンジアミンからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載のキット。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、HbA1cの定量分析用のキットであって、
糖及び亜硝酸塩化合物を含む第1の組成物と、
糖、アミノ酸、糖アルコール及びポリアミンからなる群から選択される少なくとも1つ、タンパク質分解酵素、並びに酸化剤を含む第2の組成物と、
糖及び有機ポリマーからなる群から選択される少なくとも1つ、並びにフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(FAOD)を含む第3の組成物と、
糖及び発色試薬を含む第4の組成物と
を含有するキットを提供する。
【0015】
特に、第2の組成物は、糖、アミノ酸、糖アルコール及びポリアミンからなる群から選択される少なくとも1つ、並びにタンパク質分解酵素を含む第2の第1組成物と、
糖、アミノ酸、糖アルコール及びポリアミンからなる群から選択される少なくとも1つ、並びに酸化剤を含む第2の第2組成物と
を含んでもよい。
【0016】
さらに、上記発明では、各組成物から選択される2つの組合せは、互いに混合されていてもよく、2つの組合せは、第2の組成物と第3の組成物の組合せでもよい。
【0017】
特に、糖は単糖、二糖及び多糖からなる群から選択される少なくとも1つでもよく、より具体的には、単糖はフラクトース、ガラクトース、グルコース又はマンノースでもよく、
二糖は、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、ツラノース又はセロビオースでもよく、
多糖は、デキストラン、ジエチルアミノエチル-デキストラン、デキストリン、セルロース又はβ-グルカンでもよい。
【0018】
さらに、アミノ酸として、アルギニン、サルコシン、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、ピロリジン、プロリン、グルタミン、セリン及びスレオニンからなる群から選択される少なくとも1つを使用してもよい。
【0019】
さらにまた、糖アルコールとして、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトールからなる群から選択される少なくとも1つを使用してもよい。
【0020】
さらに、ポリアミンとして、スペルミン、プトレッシン、スペルミジン、カダベリン、アグマチン及びオルニチンからなる群から選択される少なくとも1つを使用してもよい。
【0021】
さらに、有機ポリマーとして、ポリジエン系、ポリアルケン系、ポリアクリル酸系、ポリアクリレート系、ポリアクリルアミド系、ポリメタクリル酸系、ポリメタクリレート系、ポリメタクリルアミド系、ポリビニルエーテル系、ポリビニルチオエーテル系、ポリビニルアルコール系、ポリビニルケトン系、ポリビニルハライド系、ポリビニルニトリル系、ポリビニルエステル系、ポリスチレン系、ポリフェニレン系、ポリオキシド系、ポリカーボネート系、ポリエステル系、ポリ無水物系、ポリウレタン系、ポリスルホネート系、ニトロソポリマー系、ポリシロキサン系、ポリスルフィド系、ポリチオエステル系、ポリスルホン系、ポリスルホンアミド系、ポリアミド系、ポリイミン系、ポリウレア系、ポリアニリン系、ポリチオフェン系、ポリピロール系、ポリ複素環、ポリエーテル系、ポリホスフェート系及びポリシルセスキオキサン系のホモポリマー、それらの誘導体、並びにそれらのコポリマー又はその誘導体からなる群から選択される少なくとも1つを使用してもよい。
【0022】
さらに、亜硝酸塩化合物として、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸マグネシウム及び亜硝酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つを使用してもよい。
【0023】
特に、亜硝酸塩化合物は、1mM〜500mMの濃度で添加されることが好ましい。亜硝酸塩化合物が1mMより低い場合は、ヘモグロビンのタンパク質構造の円滑な修飾が困難になるという問題があり、亜硝酸塩化合物が500mMを超える場合は、全ヘモグロビン濃度の測定時に散乱が発生するという問題がある。
【0024】
さらに、タンパク質分解酵素として、プロナーゼ、プロテアーゼA、プロテアーゼN、ディスパーゼ、中性プロテアーゼ、glu-C、パパイン、トリプシン及びペプシンからなる群から選択される少なくとも1つを使用してもよい。
【0025】
特に、タンパク質分解酵素は、500U/mL〜1000U/mLの量で添加されることが好ましい。タンパク質分解酵素が500U/mLより少ない量で添加される場合は、全体の反応感受性が低下するという問題があり、一方、タンパク質分解酵素が1000U/mLより多い量で添加される場合は、使用する酵素も一緒に分解され、それにより反応性が低下するという問題がある。
【0026】
さらに、FAODにより発生する過酸化水素を酸化させる限り、使用されうる酸化剤は限定されないが、例えばペルオキシダーゼ(POD)を使用してもよい。
【0027】
特に、酸化剤は、5U/mL〜900U/mLの量において添加されることが好ましい。酸化剤が5U/mLより少ない量で添加される場合は、全体の反応感受性が低下するという問題があり、一方、酸化剤が900U/mLより多い量で添加される場合は、酵素自体が有する色がヘモグロビンのそれと類似し、HbA1c濃度測定に対する障害になるという問題がある。
【0028】
さらに、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(FAOD)は、フルクトシルペプチドオキシダーゼ(FPOX)であることが好ましい。
【0029】
特に、FAODは1.0U/mL〜300U/mLの量において添加されることが好ましい。FAODが1.0U/mLより少ない量で添加される場合は、全体の反応感受性が低下するという問題があり、一方、FAODが300U/mLより多い量で添加される場合は、FAODが必要以上に過剰に用いられ、不経済であるという問題がある。
【0030】
さらに、発色試薬として、N-(カルボキシメチルアミノカルボニル)-4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミン(DA-64;和光純薬株式会社)、10-(カルボキシメチルアミノカルボニル)-3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジンナトリウム塩(DA-67:和光純薬株式会社)、10-(N-メチルカルバモイル)-3,7-ビス(ジメチルアミノ)-1H-フェノチアジン(MCDP:同仁化学研究所社製)、N,N,N',N',N'',N''-ヘキサ-3-スルホプロピル-4,4',4''-トリアミノトリフェニルメタン(TPM-PS:同仁化学研究所社製)、及びオルトフェニレンジアミン(OPD)からなる群から選択される少なくとも1つを使用してもよい。
【0031】
具体的には、発色試薬は、5mg/dL〜100mg/dLの濃度で添加されることが好ましい。発色試薬が5mg/dLより少ない量で添加される場合は、その量では発色を誘導するのに不十分であり得るという問題があり、一方、発色試薬が100mg/dLを超える量で添加される場合は、自発的な色変化が生じ、それにより分光測定における誤差が生じるという問題がある。発色試薬は、単独で用いる場合は、外部条件又は温度により自発的に蒸発する不安定な材料であるため、使用の際は注意が必要である。
【0032】
本発明によるHbA1cの定量分析用のキットは、複数の試料導入ユニットを備えてもよく、第1の組成物、第2の組成物、第3の組成物及び第4の組成物は、複数の試料導入ユニットに各々独立して固定されることが好ましい。具体的には、第1の組成物、第2の組成物、第3の組成物及び第4の組成物は、乾燥状態で試料導入ユニットに固定されることが好ましい。
【0033】
一実施形態において、本発明によるHbA1cの定量分析用のキットは、以下の通りの構造を有するカートリッジであり得る:
【0034】
試料を供給するための挿入式の試料カートリッジ、及び該挿入式の試料カートリッジを受容できる反応カートリッジを備える、HbA1cの定量分析用のカートリッジにおいて、
反応カートリッジは、
挿入式の試料カートリッジを挿入して受容するための受容ユニット、
受容ユニット内に提供され、一端に開口ユニットを備えると共に、その内部に試料と反応できる反応溶液を貯蔵し、貯蔵される反応溶液の放出を防止するように該開口ユニットに接着されるカバーテープを備え、カバーテープに接着した開口ユニットが反応カートリッジの内部に向けて設けられる、反応溶液貯蔵チャンバ、
反応溶液貯蔵チャンバのカバーテープに向かって設けられると共に、カバーテープから離れて設けられる、カバーテープ破壊ユニット、
反応溶液貯蔵チャンバを固定すると共に、反応溶液貯蔵チャンバをカバーテープ破壊ユニットの方向へ移動させるための移動経路を備える、チャンバ移動枠、
カバーテープが取り除かれたときに放出される反応溶液を受容すると共に、反応溶液を、挿入式の試料カートリッジの試料注入ユニットと接触させて放出される生体試料と混合し、それにより混合液を形成する、混合ユニット、
試料を固定して混合ユニット内の混合液との反応を可能にする、試料導入ユニット、
反応結果の光学的測定用の測定ユニット、並びに、
混合ユニット、試料導入ユニット及び測定ユニットを連結する流路
を備え、
挿入式の試料カートリッジは、
液状の生体試料を回収及び貯蔵し、貯蔵された生体試料を反応カートリッジに供給できる、試料注入ユニットが設けられている、毛管形状の試料注入ユニット、並びに、
反応カートリッジの反応溶液貯蔵チャンバと接触し、それにより、挿入式の試料カートリッジが反応カートリッジの受容ユニットに挿入されたときに、カバーテープ破壊ユニットに反応溶液貯蔵チャンバを輸送する突起
を備える。
【0035】
具体的には、挿入式の試料カートリッジが、反応カートリッジに挿入されるのと同時に、反応溶液貯蔵チャンバは、カバーテープ破壊ユニットの方向へ移動し、それにより、カバーテープを破壊することができ、反応カートリッジは、複数の試料導入ユニットを備えてもよく、放出された反応溶液及び生体試料の混合液は、重力及び全カートリッジの回転により生じる遠心力により、流路に沿って測定ユニット又は試料導入ユニットに輸送されることができ、反応カートリッジはさらに、測定後の生体試料、反応溶液及び化学的試料の混合液を処理するための廃液処理ユニットを備えてもよく、反応カートリッジはさらに、円滑移動及び廃液の回収のための排気口を備えてもよい。
【0036】
一方、本発明によるHbA1cの定量分析用の酵素法は、以下の4つの化学的反応からなる。
【0037】
第1の反応は、血液試料の溶血反応であり、そこでは血液の赤血球が破壊され、それによりヘモグロビンが放出される。具体的には、溶血のために使用する反応溶液は、各種の方法(例えばpH調整、界面活性剤の使用など)により調製することができる。例えば、界面活性剤として、双性イオン性界面活性剤、例えば3-(ジメチル(3-テトラデカンアミドプロピル)アンモニオ)プロパン-1-スルホネート、4-(ジメチル(3-テトラデカンアミドプロピル)アンモニオ)ブタン-1-スルホネート、3-(ジメチル(テトラデシル)アンモニオ)プロパン-1-スルホネートなどを使用してもよい。
【0038】
第2の反応は、タンパク質分解酵素を用いてHbA1c分子を切断する反応であり、各種の酵素(例えば、プロテアーゼA、プロテアーゼN、ディスパーゼ、プロナーゼ、中性プロテアーゼ、Glu-C、パパイン、トリプシン、ペプシンなど)を用いてもよい。例えば、タンパク質分解酵素は、HbA1cのN末端β鎖のグルコース-Val-Hisのみを選択的に切断することができ、それは赤血球の溶血により放出され、単分子のフルクトシルアミノ酸が得られる。
【0039】
第3の反応は、タンパク質分解酵素による切断を経て生じた糖化ペプチド又は糖化アミノ酸分子が、フルクトシルペプチドオキシダーゼ(FPOX)と呼ばれる酸化酵素により酸化される反応であり、この第3の反応により過酸化水素が発生する。
【0040】
第4の反応は、発色のための化学的反応であり、過酸化水素(H
2O
2)が、ペルオキシダーゼ(POD)の使用により酸化され、該酸化により放出された電子が発色試薬及び基質を還元し、その結果変色を生じさせる。
【0041】
血液試料中のHbA1c濃度は、プロテアーゼ処理前の赤血球からの溶血直後の全ヘモグロビンの量と、変色から測定される全ヘモグロビンの量とを比較することにより定量することができる。
【0042】
具体的には、全ヘモグロビン量に対するHbA1cの量を、パーセンテージとして表すことができる。さらに、全ヘモグロビン量は、分光測定デバイス(例えばUV/vis)を用いて測定することができる。
【0043】
酵素法によるHbA1cの定量分析に関して説明すると、例えば、前記4つの反応を本発明による生化学的分析カートリッジにおいて実施し、
図2〜6に図示されるカートリッジ構造によりHbA1cの定量分析を実施する。しかしながら、本発明によるHbA1cの定量分析用のキットはそれに限定されない。
【0044】
分析を実施するために、血液を回収し、注入式の試料カートリッジ100の試料注入ユニット101に貯蔵した。次に、挿入式の試料カートリッジ100を、反応カートリッジ200の受容ユニット201に挿入し、反応溶液貯蔵チャンバ301を、挿入式の試料カートリッジの突起102により、チャンバ移動枠203を通じて輸送させ、反応溶液貯蔵チャンバに接着されるカバーテープ302がカバーテープ破壊ユニット202と接触するとき、貯蔵チャンバ内の反応溶液が放出され、混合ユニット204へ移動した。放出された反応溶液は、試料の試料注入ユニット101と接触し、血液試料と混合され、その結果、血液試料及び反応溶液による溶血が生じる。溶血完了後、血液試料により固定された試薬は、第1の試料導入ユニットにおいて溶解し、そこでタンパク質分解酵素の1つであるFPOX及びPODが固定され、酵素反応がそれによって誘導される。
【0045】
溶血は混合ユニット204において実施され、第1の試料導入ユニットによる酵素反応が完了した反応溶液は、回転及び重力により、流路206を通じて測定ユニット207へ輸送される。測定ユニット207へ輸送された反応溶液に対して、UV-Vis分光光度計を用いて、535nmで生じる吸光度に基づき、溶血した全ヘモグロビン濃度を測定することができる。
【0046】
全ヘモグロビンの測定が完了した反応溶液は、カートリッジの回転により第2の試料導入ユニットに輸送される。第2の試料導入ユニットにおいて、第1の試料導入ユニットに固定された酵素を除く2つの残存する酵素が混合された試薬と、発色試薬が固定され、2つの酵素試薬及び発色試薬は、対面構造において構成される。
【0047】
第2の試料導入ユニットに輸送された反応溶液は、酵素反応及び発色反応に供される。酵素反応及び発色反応が完了した反応溶液は、カートリッジの回転により測定ユニット207へ再び輸送される。次に、発色反応により発色した糖化ヘモグロビン(HbA1c)の濃度を、UV-Vis分光光度計を用い、660nm付近の領域で生じる吸光度に基づき測定することができる。
【0048】
分析が完了した廃液は、カートリッジの回転により廃液処理ユニット208に輸送され、廃液処理ユニット208内の吸収原材料による吸収を通じて、廃液が回収される。
【0049】
上述の通り、HbA1cの定量分析のためには、HbA1cが、糖化ヘモグロビンと全ヘモグロビン濃度との比を表すという理由から、2度の分光測定を実施しなければならない。すなわち、多くのステップ、例えば血液試料の前処理プロセス及び標識材料を結合させるプロセスなどからなる分析プロセスを実施することは、測定者にとり厄介な負担となる。しかしながら、本発明によるHbA1cの定量分析用のキットを使用してHbA1cを分析するとき、全ヘモグロビン及びHbA1cの絶対濃度及び酵素反応性能の測定は、カートリッジの回転により反応溶液を輸送することを通じて、単一のカートリッジにおいて実施することができる。特に、挿入式の試料カートリッジ100が反応カートリッジ200に挿入されるのと同時に、反応溶液(HbA1c分析の場合、溶血試薬)を、反応カートリッジ内の混合ユニットに自動的に放出させることができる。その結果、自己分析プロセスで分析を実施している分析実施者による直接的な介入を最小化することができ、また分析時間の遅延や分析精度の低下を防止することもできる。さらに、反応溶液貯蔵チャンバ301が反応カートリッジ200内に設けられているため、試料カートリッジ100の挿入前に、反応溶液の外部への放出を防止できるという効果もある。
【0050】
本発明によるHbA1cの定量分析用のキットを、その具体的実施形態によって上記したが、該キットは様々な形態に改変することができ、当業者であれば、本発明の範囲を逸脱しない限り各種の変更をなすことができる。変形及び改変を実施できることは理解されよう。
【0051】
[実施例]
本発明を以下の実験例により詳述する。
【0052】
しかしながら、以下の実験例は、本発明の例示を目的とするものに過ぎず、本発明はそれらに限定されない。
【0053】
[実験例1]
時間経過に伴うFPOX試薬の熱安定性の評価
1.実験方法
時間経過に伴うFPOX試薬の熱安定性を評価するため、FPOX試薬を室温(15℃〜20℃)、40℃又は50℃に置き、生じる変化を測定した。
【0054】
50mM MES(pH5.5)に溶解させた40U/mL FPOXを、1ウェルあたり5μLの量で、セパレート型96ウェルプレートの各ウェルに分配し、50℃のオーブンにおいて乾燥させ、個々にパックした。個々にパックされた各試料を長期間、室温(15℃〜20℃)、40℃又は50℃で貯蔵した。
【0055】
使用する試薬の組成は、以下の通りである。
1.溶血溶液:100mM MES-NaOH、pH6.0、10mM CaCl
2、0.5mM NaNO
2、1.25mg/mL ASB-14
2.プロテアーゼ溶液:1.6mg/mLプロナーゼ(ロシュ社製)、100mM MES-NaOH、10mM CaCl
2、0.5mM NaNO
2、pH6.0
3.POD溶液:50U POD(TOYOBO社製)、100mM MES-NaOH、10mM CaCl
2、0.5mM NaNO
2、1.25mg/mL ASB-14、pH6.0
4.DA-67溶液:4.8mg/dL DA 100mM MES-NaOH、10mM CaCl
2、1.25mg/mL ASB-14、pH6.0
5.測定用試料:Lyphochek Diabetes Linearity Controls Level 1 & 4(Bio-Rad社製)
【0056】
活性測定は、以下の通り実施した。
1.プロテアーゼ、POD溶液及び溶血溶液を40℃の一定温度の水浴中で少なくとも30分間インキュベートする。DA-67溶液は、露光させないよう注意して扱う。
2.溶血溶液(395μL)及び測定される試料(Level #1又は#4: 5μL)をチューブ中で混合する。
3.400μLの量の溶血溶液及びPOD溶液を各々no.2のチューブに添加し、十分に混合する。
4.no.2のチューブ中の溶液を120μLの量で各ウェルに添加し、測定されるFPOX試薬をそこに分配し/乾燥させ、37℃で1分間インキュベートする。
5.プロテアーゼ溶液及びDA-67溶液を各々100μLの量でチューブに添加し、1:1の比率で混合する。
6.no.5のチューブ中の溶液を80μLの量で第4のウェルに添加し、37℃でインキュベートする。インキュベートから1、2及び3分後、それぞれ、663nm及び750nmの波長の吸光度を測定する。
7.培養から2分後の663nm及び750nmの波長の吸光度を算出してY軸として使用し、測定される試料のHbA1cの濃度%からHbA1cの理論モル濃度(μM)を算出してX軸として使用するように一次方程式を作成し、傾き及びY切片を算出する。
【0057】
2.実験結果
時間経過に伴う残存活性を検査した結果、室温で貯蔵したとき、初期活性の95%以上が、312時間後であっても維持され、一方、40℃で貯蔵したとき、残存活性が初期活性の65%まで減少し、また50℃で貯蔵したとき、活性は312時間後に完全に失われたことを確認した。
【0058】
上記の結果から、
図7に示すように、FPOX単独で分配/乾燥させた試料の場合、時間経過に伴う活性の減少が、適用される温度に対し有意に比例関係にあることが確認された。その結果から、FPOX試薬を乾燥後に用いるとき、FPOX試薬の熱安定性を改善する必要があることが確認された。
【0059】
[実験例2]
安定化剤のタイプによるFPOX試薬の熱安定性の評価1
1.実験方法
50mM MES(pH5.5)に溶解させたFPOX(40U/mL)及びPOD400U/mL(400U/mL)を混合した試薬混合物を、10μLの量で分配し、本発明のタンパク質安定化剤として機能する100mMトレハロース、50mMマンニトール又は1wt%デキストランで各々処理し、50℃における安定性を評価した。
【0060】
使用する他の試薬の組成は、以下の通りである。
1.溶血溶液:100mM MES-NaOH、pH6.0、10mM CaCl
2、0.5mM NaNO
2、1.25mg/mL ASB-14
2.プロテアーゼ溶液:1.6mg/mLプロナーゼ(ロシュ社製) 100mM MES-NaOH、10mM CaCl
2、0.5mM NaNO
2、pH6.0
3.DA-67溶液:4.8mg/dL DA 100mM MES-NaOH、10mM CaCl
2、1.25mg/mL ASB-14、pH6.0
【0061】
測定用試料:Lyphochek Diabetes Linearity Controls Levels 1 & 4(Bio-Rad社製)
【0062】
活性測定は、以下の通り実施した。
1.プロテアーゼ及び溶血溶液を40℃の一定温度の水浴中で少なくとも30分間インキュベートする。DA-67溶液は、露光させないよう注意して扱う。
2.溶血溶液(395μL)及び測定される試料(Level #1又は#4: 5μL)をチューブ中で混合する。
3.800μLの量の溶血溶液をno.2のチューブに添加し、十分に混合する。
4.no.2のチューブ中の溶液を120μLの量で各ウェルに添加し、測定される(FPOX + POD)試薬をそこに分配し/乾燥させ、37℃で1分間インキュベートする。
5.プロテアーゼ溶液及びDA-67溶液を各々100μLの量でチューブに添加し、1:1の比率で混合する。
6.no.5のチューブ中の溶液を80μLの量で第4のウェルに添加し、37℃でインキュベートする。インキュベートから1、2及び3分後、それぞれ、663nm及び750nmの波長の吸光度を測定する。
7.培養から2分後の663nm及び750nmの波長の吸光度を算出してY軸として使用し、測定される試料のHbA1cの濃度%からHbA1cの理論モル濃度(μM)を算出してX軸として使用するように一次方程式を作成し、傾き及びY切片を算出する。
【0063】
2.実験結果
酵素単独の試薬混合物の場合、120時間にわたって時間の経過とともに活性が急速に減少し、また500時間後に活性が完全に失われた。50mMマンニトールを含んだ場合、同様の変化が示されたが、500時間後であっても若干の活性(約10%)は残存することが示された。一方、100mMトレハロース又は1wt%のデキストランを含む試料の場合、約95%以上の活性が200時間の時点まで維持されたが、活性はその後減少し始め、500時間後には75%にまで減少した。
【0064】
すなわち、
図8に示すように、トレハロース及びデキストランの場合には、それらは(FPOX + POD)混合物の熱安定性を著しく増加させた。PODの場合、試薬自体の熱安定性が優れることは従来公知であるが、したがって本発明の実験結果から、トレハロース及びデキストランがFPOXの熱安定性を顕著に改善しうることが確認された。
【0065】
[実験例3]
安定化剤のタイプによるFPOX試薬の熱安定性の評価2
1.実験方法
FPOX(40U/mL)及びPOD 400U/mL(400U/mL)を混合した試薬混合物を5μLの量で分配し、その試薬へ500mMトレハロース、500mMマンニトール、5wt%のデキストラン、5wt%のジエチルアミノエチルセルロース-デキストラン(DEAE-デキストラン)、5wt%のポリエチレングリコール(PEG)、5wt%のポリビニルピロリドン(PVP)、5wt%のポリビニルアルコール(PVA)、5wt%のポリアクリル酸(PAA)、5wt%のパラアミノサリチル酸(PAS)又は5wt%のコーンデキストリン(CD)を各々添加し、50℃で120分間乾燥させ、パックし、50℃で貯蔵し、時間経過に伴う熱安定性をHbA1c測定により評価した。
【0066】
使用する他の試薬の組成は、以下の通りである。
1.溶血溶液:100mM MES-NaOH、pH6.0、10mM CaCl
2、0.5mM NaNO
2、1.25mg/mL ASB-14
2.プロテアーゼ溶液:1.6mg/mLプロナーゼ(ロシュ社製) 100mM MES-NaOH、10mM CaCl
2、0.5mM NaNO
2、pH6.0
3.DA-67溶液:4.8mg/dL DA、100mM MES-NaOH、10mM CaCl
2、1.25mg/mL ASB-14、pH6.0
4.測定用試料:Lyphochek Diabetes Linearity Controls Levels 1 & 4(Bio-Rad社製)
【0067】
活性測定は、以下の通り実施した。
1.プロテアーゼ及び溶血溶液を40℃の一定温度の水浴中で少なくとも30分間インキュベートする。DA-67溶液は、露光させないよう注意して扱う。
2.溶血溶液(395μL)及び測定される試料(Level #1又は#4: 5μL)をチューブ中で混合する。
3.800μLの量の溶血溶液をno.2のチューブに添加し、十分に混合する。
4.no.2のチューブ中の溶液を120μLの量で各ウェルに添加し、測定される(FPOX + POD)試薬をそこに分配し/乾燥させ、37℃で1分間インキュベートする。
5.プロテアーゼ溶液及びDA-67溶液を各々100μLの量でチューブに添加し、1:1の比率で混合する。
6.no.5のチューブ中の溶液を80μLの量で第4のウェルに添加し、37℃でインキュベートする。インキュベートから1、2及び3分後、それぞれ、663nm及び750nmの波長の吸光度を測定する。
7.培養から2分後の663nm及び750nmの波長の吸光度を算出してY軸として使用し、また測定した試料のHbA1cの濃度%からHbA1cの理論モル濃度(μM)を算出してX軸として使用するように一次方程式を作成し、傾き及びY切片を算出する。
【0068】
2.実験結果
時間経過に伴う残存活性を検査した結果、(FPOX + POD)単独の組成物(安定化剤を添加しない)では、活性は殆ど消失し、トレハロース、デキストラン、DEAE-デキストラン及びポリアクリル酸(PAA)を高濃度で含む試料では、活性は90%以上のレベルであり、ゆえにこれらの材料が安定性の維持に寄与することが確認された。ポリビニルアルコール(PVP)、デキストリン(CD)、マンニトールなども安定化効果を示したが、その効果は、トレハロース、デキストラン、DEAE-デキストラン、ポリアクリル酸(PAA)、ポリエチレングリコール(PEG)及びパラアミノサリチル酸(PAS)の場合よりも低かった。上記の結果に基づき、高い安定化効果を示すトレハロースと、ポリマー(例えばデキストラン、DEAE-デキストラン及びポリアクリル酸(PAA))との組合せが、その効果を改善しうるか否かについて検査を要した。
【0069】
[実験例4]
緩衝液のタイプによるFPOX試薬の熱安定性の評価
1.実験方法
FPOX(40U/mL)を10mM MES-NaOH緩衝液(pH5.5)、10mM MES-NaOH緩衝液(pH6.0)、100mMリン酸緩衝液(pH6.5:TOYOBO社製)又は100mMリン酸緩衝液(pH7.0)で処理し、次に、セパレート型の96ウェルプレートの各ウェルに5μLの量で分配し、50℃のオーブンにおいて2時間乾燥させ、個々にパックした。個々にパックされた各試料を、長期間にわたり40℃及び50℃で貯蔵した。個々にパックした各試料の、40℃及び50℃の温度条件での熱安定性を、HbA1c測定により評価した。
【0070】
使用する試薬の組成は、以下の通りである。
1.溶血溶液:100mM MES-NaOH、pH6.0、10mM CaCl
2、0.5mM NaNO
2、1.25mg/mL ASB-14
2.プロテアーゼ溶液:1.6mg/mLプロナーゼ(ロシュ社製) 100mM MES-NaOH、10mM CaCl
2、0.5mM NaNO
2、pH6.0
3.POD溶液:50U PD(TOYOBO社製) 100mM MES-NaOH、10mM CaCl
2、0.5mM NaNO
2、1.25mg/mL ASB-14、pH6.0
4.DA-67溶液:4.8mg/dL DA 100mM MES-NaOH、10mM CaCl
2、1.25mg/mL ASB-14、pH6.0
5.測定用試料:Lyphochek Diabetes Linearity Controls Levels 1 & 4(Bio-Rad社製)
【0071】
活性測定は、以下の通り実施した。
1.プロテアーゼ及び溶血溶液を40℃の一定温度の水浴中で少なくとも30分間インキュベートする。DA-67溶液は、露光させないよう注意して扱う。
2.溶血溶液(395μL)及び測定される試料(Level #1又は#4: 5μL)をチューブ中で混合する。
3.400μLの量の溶血溶液及びPOD溶液を各々no.2のチューブに添加し、十分混合する。
4.no.2のチューブ中の溶液を120μLの量でウェルに添加し、測定される(FPOX + POD)試薬をそこに分配し/乾燥させ、37℃で1分間インキュベートする。
5.プロテアーゼ溶液及びDA-67溶液を各々100μLの量でチューブに添加し、1:1の比率で混合する。
6.no.5のチューブ中の溶液を80μLの量で第4のウェルに添加し、37℃でインキュベートする。インキュベートから1、2及び3分後、それぞれ、663nm及び750nmの波長の吸光度を測定する。
7.培養から2分後の663nm及び750nmの波長の吸光度を算出してY軸として使用し、測定される試料のHbA1cの濃度%からHbA1cの理論モル濃度(μM)を算出してX軸として使用するように一次方程式を作成し、傾き及びY切片を算出する。
【0072】
2.実験結果
図10及び
図11に示すように、各種の緩衝液及びpHのうち、リン酸緩衝液の使用により、FPOX自体の熱安定性が他の組成物と比較し大幅に改善されることが確認された。これらの結果から、安定化剤(例えばトレハロース)の添加による効果のみならず、緩衝液の組成を変更することによっても、さらに安定性の改善が予測されうることが確認された。
【0073】
[実験例5]
トレハロース処理の濃度による、FPOXの熱安定性の評価
1.実験方法
組成(40U/mL FPOX、400U/mL POD、100mM PB pH6.5、1.5mg/mL 3-(N,N-ジメチルミリスチルアンモニオ)プロパンスルホネート、+0mM、100mM、200mM、300mM、400mM及び500mMトレハロース)に従い、(FPOX + POD)混合物を調製し、5μLの量で各々分配し、50℃のオーブンにおいて2時間乾燥させた。次に、50℃のオーブン中で貯蔵しつつ、生成物の時間経過による残存活性を検査した。
【0074】
使用する他の試薬の組成は、以下の通りである。
1.溶血溶液:100mM MES-NaOH、pH6.0、10mM CaCl
2、0.5mM NaNO
2、1.25mg/mL ASB-14
2.プロテアーゼ溶液:1.6mg/mLプロナーゼ(ロシュ社製) 100mM MES-NaOH、10mM CaCl
2、0.5mM NaNO
2、pH6.0
3.DA-67溶液:4.8mg/dl DA 100mM MES-NaOH、10mM CaCl
2、1.25mg/mL ASB-14、pH6.0
4.測定用試料:Lyphochek Diabetes Linearity Controls Levels 1 & 4(Bio-Rad社製)
【0075】
活性測定は、以下の通り実施した。
1.プロテアーゼ及び溶血溶液を40℃の一定温度の水浴中で少なくとも30分間インキュベートする。DA-67溶液は、露光させないよう注意して扱う。
2.溶血溶液(395μL)及び測定される試料(Level #1又は#4: 5μL)をチューブ中で混合する。
3.800μLの量の溶血溶液をno.2のチューブに添加し、十分に混合する。
4.no.2のチューブ中の溶液を120μLの量でウェルに添加し、測定される(FPOX + POD)試薬をそこに分配し/乾燥させ、37℃で1分間インキュベートする。
5.プロテアーゼ溶液及びDA-67溶液を各々100μLの量でチューブに添加し、1:1の比率で混合する。
6.no.5のチューブ中の溶液を80μLの量で第4のウェルに添加し、37℃でインキュベートする。インキュベートから1、2及び3分後、それぞれ、663nm及び750nmの波長の吸光度を測定する。
7.培養から2分後の663nm及び750nmの波長の吸光度を算出してY軸として使用し、測定される試料のHbA1cの濃度%からHbA1cの理論モル濃度(μM)を算出してX軸として使用するように一次方程式を作成し、傾き及びY切片を算出する。
【0076】
2.実験結果
図12に示すように、トレハロースが濃度依存的にFPOXの熱安定性を改善することが示された。
【0077】
トレハロースを含まない試料、及びトレハロースを100mM〜200mMの濃度で含む試料の場合、活性は急速に減少し始め、360時間後に殆ど全ての活性は消失した。一方、トレハロースを300mM〜500mMの濃度で含む組成物は、熱ストレスへの安定性が高かったが、活性は200時間後に急速に減少した。500mMトレハロースを含む組成物が、これまでのところ長期間にわたり非常に熱安定が高いという結果を考慮すると、本実験の乾燥後再溶解の間における溶解速度を増加させる界面活性剤である3-(N,N-ジメチルミリスチルアンモニオ)プロパンスルホネートの効果、又はリン酸緩衝液、界面活性剤及びFPOXの組合せの効果に困難がある可能性がある。
【0078】
[実験例6]
安定化剤との併用処理によるFPOXの熱安定性の評価
1.実験方法
500mMの濃度のトレハロース単独で、又は1wt%〜5wt%の濃度のデキストラン、DEAD若しくはPAAとの組合せにより500mMトレハロースで、FPOX(40U/mL、5μL)を処理した後に、生成物を100mMリン酸緩衝液(pH6.5)に溶解させ、80℃で10分間乾燥させ、パックし、50℃で貯蔵しつつ、HbA1c測定により時間経過に伴う熱安定性を評価した。
【0079】
使用する他の試薬の組成は、以下の通りである。
1.溶血溶液:100mM MES-NaOH、pH6.0、10mM CaCl
2、0.5mM NaNO
2、1.25mg/mL ASB-14
2.プロテアーゼ溶液:4,000U/mL中性プロテアーゼ(TOYOBO社製) 100mM MES-NaOH、10mM CaCl
2、0.5mM NaNO
2、pH6.0
3.POD溶液:50U/mL PD(TOYOBO社製) 100mM MES-NaOH、10mM CaCl
2、0.5mM NaNO
2、1.25mg/mL ASB-14、pH6.0
4.DA-67溶液:4.8mg/dL DA 100mM MES-NaOH、10mM CaCl
2、1.25mg/mL ASB-14、pH6.0
5.測定用試料:Lyphochek Diabetes Linearity Controls Levels 1 & 4(Bio-Rad社製)
【0080】
活性測定は、以下の通り実施した。
1.プロテアーゼ及び溶血溶液を40℃の一定温度の水浴中で少なくとも30分間インキュベートする。DA-67溶液は、露光させないよう注意して扱う。
2.溶血溶液(395μL)及び測定される試料(Level #1又は#4: 5μL)をチューブ中で混合する。
3.400μLの量の溶血溶液及びPOD溶液を各々no.2のチューブに添加し、十分に混合する。
4.no.2のチューブ中の溶液を120μLの量でウェルに添加し、測定される(FPOX + POD)試薬をそこに分配し/乾燥させ、37℃で1分間インキュベートする。
5.プロテアーゼ溶液及びDA-67溶液を各々100μLの量でチューブに添加し、1:1の比率で混合する。
6.no.5のチューブ中の溶液を80μLの量で第4のウェルに添加し、37℃でインキュベートする。インキュベートから1、2及び3分後、それぞれ、663nm及び750nmの波長の吸光度を測定する。
7.培養から2分後の663nm及び750nmの波長の吸光度を算出してY軸として使用し、測定される試料のHbA1cの濃度%からHbA1cの理論モル濃度(μM)を算出してX軸として使用するように一次方程式を作成し、傾き及びY切片を算出する。
【0081】
2.実験結果
図13に示す通り、トレハロース単独でFPOXを処理したとき、FPOXをトレハロースと他のタイプの安定化剤との組合せで処理したときと比較し、FPOXの熱安定性が大幅に改善されたことが確認された。
【0082】
80℃で10分間の乾燥条件において、1%のデキストラン及び5%のPAAを含まない全ての組成において、初期活性が約95%〜100%のレベルで維持された。しかしながら、500mMトレハロース単独で処理したときでも、50℃において、FPOX活性が1ヶ月以上維持されうる可能性があることが確認された。
【0083】
[実験例7]
トレハロース及び緩衝液処理による、FPOXの熱安定性の評価
1.実験方法
500mMの濃度でトレハロースを含むFPOXを、100mMリン酸緩衝液(pH6.5)に分配し、80℃で10分間乾燥させ、パックし、50℃で貯蔵しつつ、HbA1c測定により時間経過を伴う熱安定性を評価した。
【0084】
使用する他の試薬の組成は、以下の通りである。
1.溶血溶液:100mM MES-NaOH、pH6.0、10mM CaCl
2、0.5mM NaNO
2、1.25mg/mL ASB-14
2.プロテアーゼ溶液:4,000U/mL中性プロテアーゼ(TOYOBO社製) 100mM MES-NaOH、10mM CaCl
2、0.5mM NaNO
2、pH6.0
3.POD溶液:50U/mL PD(TOYOBO社製) 100mM MES-NaOH、10mM CaCl
2、0.5mM NaNO
2、1.25mg/mL ASB-14、pH6.0
4.DA-67溶液:4.8mg/dL DA 100mM MES-NaOH、10mM CaCl
2、1.25mg/mL ASB-14、pH6.0
5.測定用試料:Lyphochek Diabetes Linearity Controls Levels 1 & 4(Bio-Rad社製)
【0085】
活性測定は、以下の通り実施した。
1.プロテアーゼ及び溶血溶液を40℃の一定温度の水浴中で少なくとも30分間インキュベートする。DA-67溶液は、露光させないよう注意して扱う。
2.溶血溶液(395μL)及び測定される試料(Level #1又は#4: 5μL)をチューブ中で混合する。
3.400μLの量の溶血溶液及びPOD溶液を各々no.2のチューブに添加し、十分に混合する。
4.no.2のチューブ中の溶液を120μLの量でウェルに添加し、測定される(FPOX + POD)試薬をそこに分配し/乾燥させ、37℃で1分間インキュベートする。
5.プロテアーゼ溶液及びDA-67溶液を各々100μLの量でチューブに添加し、1:1の比率で混合する。
6.no.5のチューブ中の溶液を80μLの量で第4のウェルに添加し、37℃でインキュベートする。インキュベートから1、2及び3分後、それぞれ、663nm及び750nmの波長の吸光度を測定する。
7.培養から2分後の663nm及び750nmの波長の吸光度を算出してY軸として使用し、測定される試料のHbA1cの濃度%からHbA1cの理論モル濃度(μM)を算出してX軸として使用するように一次方程式を作成し、傾き及びY切片を算出する。
【0086】
2.実験結果
図14に示すように、リン酸緩衝液(pH6.5)及びトレハロースで処理したFPOXが、約70日以上の間、50℃で安定性を維持したことが確認された。
【0087】
これは、一般的な酵素安定性試験の換算法(50℃の1日を、室温の12.9日として算出)によると930日(2.5年)に対応する。
【0088】
図14において、傾きは活性を表し、切片(Y切片)は測定システム自体のバックグラウンド吸光度(試料の非存在下での吸光度値)を表す。
【0089】
[実験例8]
Neo Protein Saver(NPS)の添加によるFPOXの均一性の評価
100mM PB(pH6.5)及び500mMトレハロースに溶解させたFPOX(200U/mL)が混合された試薬混合物(10mL)、並びに活性成分としてのアミノ酸及びペプチドを含む市販のタンパク質安定化剤であるNeo Protein Saver(NPS、TOYOBO社)が17mg/mLの濃度までさらに混合された組成物(10mLの溶液)の可溶性を各々評価するため、UV-Vis分光光度計を使用し、330nmでの濁度を測定した。溶液の調製直後から3時間経過まで、1時間ごとに溶液を測定し、100%として設定した500mMトレハロースのみ含む組成物のOD値に基づき、NPSを含む組成物の比率を算出した。
【0090】
図15に示すように、FPOXに対して17mg/mLまでの濃度のNPSを含む溶液(実験群)と、NPSを含まない溶液(対照群)とを比較した結果、対照群(約20%)のものと比較し実験群の溶液では低い濁度を示し、透明であることが観察された。これは視覚的に検出することができ、NPSがFPOXの可溶性に影響を及ぼしたことを示すものである。
【0091】
上記の結果に基づき、100mM PB(pH6.5)及び500mMトレハロースに溶解したFPOX(40U/mL)を混合した試薬組成物、及びNPSを17mg/mLの濃度までさらに混合した組成物を、各々5μLの量で分配し、80℃で10分間乾燥させ、パックし、50℃で貯蔵し、1、6及び14日後の熱安定性を、HbA1c測定により評価した。
【0092】
使用する他の試薬の組成は、以下の通りである。
1.溶血溶液:100mM MES-NaOH、pH6.0、10mM CaCl
2、0.5mM NaNO
2、1.25mg/mL ASB-14
2.プロテアーゼ溶液:4,000U/mL中性プロテアーゼ(TOYOBO社製) 100mM MES-NaOH、10mM CaCl
2、0.5mM NaNO
2、pH6.0
3.POD溶液:50U/mL PD(TOYOBO社製) 100mM MES-NaOH、10mM CaCl
2、0.5mM NaNO
2、1.25mg/mL ASB-14、pH6.0
4.DA-67溶液:4.8mg/dL DA 100mM MES-NaOH、10mM CaCl
2、1.25mg/mL ASB-14、pH6.0
5.測定用試料:Lyphochek Diabetes Linearity Controls Levels 1 & 4(Bio-Rad社製)
【0093】
活性測定は、以下の通り実施した。
1.プロテアーゼ、POD溶液及び溶血溶液を40℃の一定温度の水浴中で少なくとも30分間インキュベートする。DA-67溶液は、露光させないよう注意して扱う。
2.溶血溶液(395μL)及び測定される試料(Level #1又は#4: 5μL)をチューブ中で混合する。
3.400μLの量の溶血溶液及びPOD溶液を各々no.2のチューブに添加し、十分に混合する。
4.no.2のチューブ中の溶液を120μLの量でウェルに添加し、測定される(FPOX + POD)試薬をそこに分配し/乾燥させ、37℃で1分間インキュベートする。
5.プロテアーゼ溶液及びDA-67溶液を各々100μLの量でチューブに添加し、1:1の比率で混合する。
6.no.5のチューブ中の溶液を80μLの量で第4のウェルに添加し、37℃でインキュベートする。インキュベートから1、2及び3分後、それぞれ、663nm及び750nmの波長の吸光度を測定する。
7.培養から2分後の663nm及び750nmの波長の吸光度を算出してY軸として使用し、測定される試料のHbA1cの濃度%からHbA1cの理論モル濃度(μM)を算出してX軸として使用するように一次方程式を作成し、傾き及びY切片を算出する。
8.実験群及び対照群において算出される傾きの比率をそれぞれ算出する。
【0094】
2.実験結果
図16に示すように、FPOXをトレハロースで処理した場合と比較して、トレハロース及びNPSを含むFPOX混合物では、14日間、同程度の熱安定性レベルが維持されることが確認された。その結果、FPOX混合物の溶液にNPSをさらに添加することにより、熱安定性を確立しつつ、溶液の均一性が改善されうることが確認された。溶液の均一性が、対応する溶液をカートリッジの形態に調製する過程における全体の質に寄与しうると考えられる。
【0095】
[実験例9]
時間経過に伴うFPOX、トレハロース、NPS及び緩衝液を含む組成物の熱安定性の評価
1.実験方法
FPOX(180U/mL)、500mMトレハロース、NPS(17.5mg/mL)及び100mMリン酸緩衝液(pH6.5)を含む組成物を調製し、次に5μLの量で試薬カートリッジのFPOX位置(
図1)に分配し、80℃で10分間乾燥させ、パックし、貯蔵し、HbA1c測定により時間経過に伴う熱安定性を評価した。
【0096】
使用する他の試薬の組成は、以下の通りである。
1.溶血溶液:100mM MES-NaOH、pH6.0、10mM CaCl
2、1.25mg/mL ASB-14
2.プロテアーゼ及びPOD溶液:40,000U/mL中性プロテアーゼ(TOYOBO社製)、800U/mL PD(TOYOBO社製)、100mM MES-NaOH、100mMトレハロース、pH6.0
3.酸化溶液:300mM NaNO
2、0.005wt% D10、pH8.0
4.DA-67溶液:40mg/dL DA、DW
5.測定用試料:Lyphochek Diabetes Linearity Controls Level 4(Bio-Rad社製)
【0097】
活性測定は、以下の通り実施した。
1.一定時間50℃で分配したFPOXカートリッジを回収し、他の溶液を分配し、組立/融合させ、連結し、試薬カートリッジを作製した。
2.A1Care Analyzerの測定ウインドウの「RUN」ボタンをクリックし、測定を開始する。
3.試料コレクタのキャピラリーチューブに、測定する対照試料を注入した後、試料コレクタをカートリッジに載せ、A1Care Analyzerのドアを開けた後、用意されたカートリッジを載せる。
4.試料コレクタを最後まで装置の内部に挿入し、カートリッジ内部に載せた溶液セルを破壊し、それにより溶血溶液及び試料コレクタ内の試料を混合する。
5.A1Care Analyzerのドアを閉め、反応を開始させる。
6.約4分間の測定が完了した後、HbA1cの%値を確認する。
【0098】
2.実験結果
図17に示すように、FPOX、トレハロース、NPS及び緩衝液を含む組成物は、カートリッジ上での分配/乾燥により調製したときでも、約63日以上の間、50℃の温度で安定性を維持することが確認された。
【0099】
[実験例10]
安定化剤のタイプによる、プロナーゼの安定性の評価
1.実験方法
プロナーゼ(0.1mg/mL)、100mM MES-NaOH緩衝液、10mM CaCl
2及び0.5mM NaNO
2(pH6.0)を含む組成物を調製し、安定化剤を100mM又は1wt%の濃度でさらに添加し、熱安定性を評価した。
【0100】
具体的には、本実験において使用した安定化剤は、低分子量安定化剤及び高分子量安定化剤に分類されるものであった。低分子量安定化剤として、トレハロース、トリメチルアミンN-オキシド(TMA-NO)、スペルミン(SP)、スペルミジン(SPD)、アルギニン(Arg)、サルコシン(Src)、ベタイン及びマンニトールを使用し、高分子量安定化剤として、デキストラン、PEG、PVP及びデキストリンを使用した。
【0101】
2.実験結果
低分子量安定化剤を処理した
図18を参照すると、トレハロースは、約300時間までプロナーゼの安定性を維持することが示され、さらに、アルギニン、サルコシン、マンニトール、スペルミンなどに対して80%以上の安定化効果を誘導した。
【0102】
高分子量安定化剤を処理した
図19を参照すると、デキストランは、約300時間までプロナーゼの安定性を維持することが示され、また、デキストリンは約75%まで活性を維持することが示されたが、PEG及びPVPは、プロナーゼの熱安定性を誘導できないことが示された。
【0103】
[実験例11]
複合安定化剤の処理によるプロナーゼの安定性の評価
1.実験方法
時間経過に伴うプロテアーゼ試薬の熱安定性を評価するため、プロテアーゼ試薬を50℃で静置し、その変化を測定した。高分子量化合物(1M又は10%)と100mM MES(pH6.0)に溶解させたプロナーゼ(0.1mg/mL)を混合した組成物を調製し、5μLの量でセパレート型96ウェルプレートの各ウェルに分配し、50℃のオーブンにおいて2時間乾燥させ、個々にパックした。個々にパックされた各試料を、長期間にわたり50℃で貯蔵した。
【0104】
使用する他の試薬の組成は、以下の通りである。
1.溶血溶液:100mM MES-NaOH、pH6.0、10mM CaCl
2、2mM NaNO
2、0.75mg/mL ASB-14
2.FPOX溶液:5U/mL FPOX(TOYOBO社製)、100mM MES-NaOH、pH6.0、10mM CaCl
2、2mM NaNO
2、0.75mg/mL ASB-14
3.POD溶液:50U POD(TOYOBO社製)、100mM MES-NaOH、pH6.0、10mM CaCl
2、2mM NaNO
2、0.75mg/mL ASB-14
4.DA-67溶液:4.8mg/dL DA 100mM MES-NaOH pH6.0、10mM CaCl
2、0.75mg/mL ASB-14
5.測定用試料:Lyphochek Diabetes Linearity Controls Levels 1 & 4(Bio-Rad社製)
【0105】
活性測定は、以下の通り実施した。
1.プロテアーゼ、POD溶液及び溶血溶液を40℃の一定温度の水浴中で少なくとも30分間インキュベートする。DA-67溶液は、露光させないよう注意して扱う。
2.溶血溶液(395μL)及び測定される試料(Level #1又は#4:5μL)をチューブ中で混合する。
3.400μLの量のFPOX溶液及びPOD溶液を各々no.2のチューブに添加し、十分に混合する。
4.no.2のチューブ中の120μLの量の溶液をウェルに添加し、測定されるプロテアーゼ試薬をそこに分配し/乾燥させ、37℃で1分間インキュベートする。
5.プロテアーゼ溶液及びDA-67溶液を各々100μLの量でチューブに添加し、1:1の比率で混合する。
6.no.5のチューブ中の溶液を80μLの量で第4のウェルに添加し、37℃でインキュベートする。インキュベートから1、2及び3分後、それぞれ、663nm及び750nmの波長の吸光度を測定する。
7.培養から2分後の663nm及び750nmの波長の吸光度を算出してY軸として使用し、測定される試料のHbA1cの濃度%からHbA1cの理論モル濃度(μM)を算出してX軸として使用するように一次方程式を作成し、傾き及びY切片を算出する。
【0106】
2.実験結果
図20に示すように、他の種類の化合物(デキストラン、PEG、Man又はSrc)とトレハロースとの組合せは、相乗効果を誘導しなかったが、トレハロースを単独で用いたときと比較し、安定性に有意な差がないことが確認された。しかしながら、トレハロースを他のタイプの高分子量化合物と混合したとき、溶液の粘性を増加させることができ、それにより分配及び乾燥においては有利であると考えられた。
【0107】
[実験例12]
安定化剤のタイプによる中性プロテアーゼの熱安定性の評価
1.実験方法
時間経過に伴うプロテアーゼ試薬の熱安定性を評価するため、プロテアーゼ試薬を50℃で静置し、その変化を測定した。高分子量化合物(100mM又は1%)と100mM MES(pH6.0)に溶解させた中性プロテアーゼ(TOYOBO社)(0.2mg/mL)を混合した組成物を調製し、5μLの量でセパレート型96ウェルプレートの各ウェルに分配し、50℃のオーブンにおいて2時間乾燥させ、個々にパックした。個々にパックされた各試料を、長期間にわたり50℃で貯蔵した。
【0108】
使用する他の試薬の組成は、以下の通りである。
1.溶血溶液:100mM MES-NaOH、pH6.0、10mM CaCl
2、2mM NaNO
2、0.75mg/mL ASB-14
2.FPOX溶液:5U/mL FPOX(TOYOBO社製)、100mM MES-NaOH、pH6.0、10mM CaCl
2、2mM NaNO
2、0.75mg/mL ASB-14
3.POD溶液:50U POD(TOYOBO社製)、100mM MES-NaOH、pH6.0、10mM CaCl
2、2mM NaNO
2、0.75mg/mL ASB-14
4.DA-67溶液:4.8mg/dL DA 100mM MES-NaOH pH6.0、10mM CaCl
2、0.75mg/mL ASB-14
5.測定用試料:Lyphochek Diabetes Linearity Controls Levels 1 & 4(Bio-Rad社製)
【0109】
活性測定は、以下の通り実施した。
1.プロテアーゼ、POD溶液及び溶血溶液を40℃の一定温度の水浴中で少なくとも30分間インキュベートする。DA-67溶液は、露光させないよう注意して扱う。
2.溶血溶液(395μL)及び測定される試料(Level #1又は#4:5μL)をチューブ中で混合する。
3.各々400μLの量のFPOX溶液及びPOD溶液をno.2のチューブに添加し、十分に混合する。
4.no.2のチューブ中の溶液を120μLの量でウェルに添加し、測定されるプロテアーゼ試薬をそこに分配し/乾燥させ、37℃で1分間インキュベートする。
5.溶血溶液及びDA-67溶液を各々100μLの量でチューブに添加し、1:1の比率で混合する。
6.no.5のチューブ中の溶液を80μLの量で第4のウェルに添加し、37℃でインキュベートする。インキュベートから1、2及び3分後、それぞれ、663nm及び750nmの波長の吸光度を測定する。
7.培養から2分後の663nm及び750nmの波長の吸光度を算出してY軸として使用し、測定される試料のHbA1cの濃度%からHbA1cの理論モル濃度(μM)を算出してX軸として使用するように一次方程式を作成し、傾き及びY切片を算出する。
【0110】
2.実験結果
図21に示すように、中性プロテアーゼは基本的にプロナーゼより高い熱安定性を有し、ゆえに、酵素を単独で含む組成物と、トレハロース、マンニトール及びデキストランを含む組成物との間に相違がない。むしろ、アルギニン又はスペルミンを含有する組成物の活性は、顕著に低下した。
【0111】
図22に示すように、酵素を単独で用いたとき、Y切片の値が時間経過と伴い顕著に増加することが確認された。対照的に、トレハロース、アルギニン、スペルミンなどを混合した場合、バックグラウンドの増加は観察されなかった。これらの結果から、活性及びバックグラウンド値の両方が安定に維持されるトレハロースを含む組成物が、安定化剤として適切であると考えられる。
【0112】
[実験例13]
安定化剤処理による、NaNO
2の熱安定性の評価
1.実験方法
他の酵素試薬とNaNO
2を混合できないため、組成物を別々に調製し、分配することが必要である。組成物の評価のため、200mM NaNO
2を単純にMES緩衝液に溶解させ、乾燥させたが、スポットが広がらず、「球体」の形状で乾燥し、したがって、全て組立及び融合/連結のプロセスの間に破壊され、ゆえに使用が困難であった。ゆえに、界面活性剤であるD10(3-(N,N-ジメチルミリスチルアンモニオ)プロパンスルホン酸塩)及びトレハロースを混合し、物理的特性をもたらし、性能を評価した。
【0113】
2.実験結果
図23に示すように、50℃で400時間以上の間静置したときでも、上記で調製したNaNO
2、D10、トレハロース及びMES緩衝液を含む組成物が初期値を維持したことが確認された。この結果から、NaNO
2を分離でき、乾燥させることができることが確認された。さらに、トレハロースの有無に依存してスポットの物理的形状が変化するものの、調製プロセス及び性能については相違はないことが確認された。
【0114】
[実験例14]
安定化剤処理による発色試薬の熱安定性の評価
1.実験方法
ホルマザン系の染料(メチレンブルー構造から合成)である「DA-67」は、ペルオキシダーゼとの組み合わせて使用することにより、主にH
2O
2濃度の測定(OD)において用いられる発色試薬を指し、WAKO社により製造販売されている。DA-67は吸光度の変化が大きく、良好な発色能力を有するため、広く用いられる。しかしながら、DA-67自体の安定性が低く、露光されると急速に分解し、無色から青色に変色するため、取り扱いが困難である。ゆえに、本発明者らは、DA-67の効率的利用を目的とし、露光による自己分解を最小化できる安定化剤のスクリーニングを行った。
【0115】
2.実験結果
図24に示すように、ポリ(アクリル酸ナトリウム塩(PAAS)、ポリ(アクリル酸)(PAA)及びトレハロースは、DA-67単独群と比較し、Y切片の増加を阻害することが確認された。しかしながら、PAAS及びPAAは、DA-67シグナル自体を阻害する効果を伴った。
【0116】
[実験例15]
本発明によるHbA1cの定量分析用のキットの貯蔵特性の評価
1.実験方法
冷蔵庫の低温室(2℃〜8℃)及び一定温度及び一定湿度の実験室(20℃〜25℃)に貯蔵したHbA1cの定量分析用のキットを使用し、長期にわたる測定により安定性を確認した。確認は、「EP25-Aインビトロ診断試薬の安定性の評価(承認ガイドライン)」(EP25-A Evaluation of Stability of in Vitro Diagnostic Reagents; Approved Guideline)及び韓国保健福祉部の「医療機器の安全基準」(Safety criteria for medical devices)に従い行った。
【0117】
基準は、以下の通りである。
1.特定の期間の経過後、冷蔵庫の低温室(2℃〜8℃)及び一定温度及び一定湿度の実験室(20℃〜25℃)において貯蔵したカートリッジを一度に10個取り出し、使用の際室温(20℃〜25℃)で貯蔵した。
2.測定準備のため、A1Care analyzerの電源をオンにする。
3.測定の10〜20分前に測定される(低温及び高温)試料を凍結貯蔵下で取り出し、室温条件で混合する。
4.Low Control試料を試料コレクタに滴下し、カートリッジ本体に載せる。
5.A1Care analyzerのドアを開け、カートリッジを挿入し、試料コレクタを押し、A1Care analyzerのドアを閉める。
6.測定完了後、HbA1c値(%)がタッチスクリーンにて算出され、値が記録される。
7.同じ手順を、High Control試料に対しても行った。
8.ステップ4〜7を繰り返す(試料当たりの5回反復測定)。
【0118】
値が初期測定値(HbA1c%)に対し±5%の範囲内で維持されるとき、カートリッジの性能が期間内に安定に維持されると判断し、±5%超の値が連続して3回以上繰り返されるとき、安定性が維持されないと判断する。
【0119】
2.実験結果
図25に示すように、冷蔵庫で貯蔵した場合、本発明によるHbA1cの定量分析用のキットは2年超にわたる安定性を示し、
図26に示すように、室温で貯蔵した場合、本発明によるHbA1cの定量分析用のキットは1年超にわたる安定性を示した。