(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853898
(24)【登録日】2021年3月16日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】摩擦式ナノ発電機の電源管理モジュール、管理方法、エネルギーシステム及び摩擦式電子学エネルギー抽出器
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20210322BHJP
【FI】
H02M3/155 K
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-562272(P2019-562272)
(86)(22)【出願日】2018年5月11日
(65)【公表番号】特表2020-520220(P2020-520220A)
(43)【公表日】2020年7月2日
(86)【国際出願番号】CN2018086498
(87)【国際公開番号】WO2018205994
(87)【国際公開日】20181115
【審査請求日】2019年12月2日
(31)【優先権主張番号】201710340738.6
(32)【優先日】2017年5月12日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518136110
【氏名又は名称】北京納米能源與系統研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100170070
【弁理士】
【氏名又は名称】坂田 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】張 弛
(72)【発明者】
【氏名】李 偉
(72)【発明者】
【氏名】王 中林
(72)【発明者】
【氏名】席 豊本
(72)【発明者】
【氏名】パン ヤオクン
【審査官】
麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2017/067446(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0172898(US,A1)
【文献】
特表2013−523080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦式ナノ発電機の後端に電気的に接続するように配置され、整流回路及び直流降圧回路を含む、前記摩擦式ナノ発電機の電源管理モジュールであって、
前記整流回路は、前記摩擦式ナノ発電機の後端に電気的に接続され、前記摩擦式ナノ発電機により発生された信号を整流して、第1の直流信号を出力し、
前記直流降圧回路は、前記整流回路の後端に電気的に接続され、前記第1の直流信号を降圧して、第2の直流信号を出力し、
前記整流回路は、第1の出力端と第2の出力端とを含み、
前記直流降圧回路は、LC回路とスイッチ回路とを含み、
前記第1の出力端は、前記スイッチ回路を介して前記LC回路の一端に接続され、前記第2の出力端は前記LC回路の他端に接続され、
前記スイッチ回路は、自律型スイッチであり、前記第1の直流信号が参考電圧より大きい場合、前記スイッチ回路はオンになり、前記第1の直流信号が前記参考電圧より小さい場合、前記スイッチ回路はオフになり、
前記LC回路におけるキャパシターCの両端は、電源管理モジュールの電圧の出力端として配置され、前記第2の直流信号を出力し、
前記直流降圧回路は、LC回路の両端に接続され、前記スイッチ回路がオフされた時にLC回路と回路を形成して、インダクターLのエネルギーの放出のために回路を提供するためのフリーホイーリングダイオードをさらに含む、
ことを特徴とする、摩擦式ナノ発電機の電源管理モジュール。
【請求項2】
前記スイッチ回路は、電圧コンパレーターと電界効果トランジスターとを含み、
前記電圧コンパレーターの入力端はそれぞれ前記第1の出力端と前記第2の出力端とに接続され、出力端は前記電界効果トランジスターのゲートに接続されており、
前記電界効果トランジスターのゲートは制御極とされ、ドレインとソースとのうちの一方は前記第1の出力端に接続されて入力極とされ、ドレインとソースとのうちの他方は出力極として前記LC回路の一端に接続されている、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電源管理モジュール。
【請求項3】
前記電圧コンパレーターへのエネルギー供給は前記摩擦式ナノ発電機により提供される、
ことを特徴とする、請求項2に記載の電源管理モジュール。
【請求項4】
前記LC回路において、インダクターLのインダクタンスは1〜10mHである、
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の電源管理モジュール。
【請求項5】
前記LC回路において、キャパシターCのキャパシタンスは1〜20μFである、
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の電源管理モジュール。
【請求項6】
前記整流回路は、フルウェーブブリッジである、
ことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の電源管理モジュール。
【請求項7】
摩擦式ナノ発電機により発生された交流信号を整流して、第1の直流信号を出力することと、
前記第1の直流信号と参考電圧とを比較して、前記参考電圧より大きい場合、前記摩擦式ナノ発電機により発生されたエネルギーはLC回路に放出され、前記LC回路により直流降圧された後負荷に第2の直流信号を出力し、前記参考電圧より小さい場合、前記LC回路はフリーホイーリング回路を介して負荷に前記第2の直流信号を出力することと、を含む、
ことを特徴とする、摩擦式ナノ発電機の電源管理方法。
【請求項8】
摩擦式ナノ発電機と、
請求項1から6のいずれか一項に記載の電源管理モジュールと、
を含み、
前記電源管理モジュールは前記摩擦式ナノ発電機の後端に電気的に接続されており、前記第2の直流信号はエネルギーシステムの出力として、エネルギー蓄積デバイスを充電したり、又は、直接電子デバイスを駆動したりする、
ことを特徴とする、エネルギーシステム。
【請求項9】
整流回路とスイッチ回路とを含み、
前記整流回路は、摩擦式ナノ発電機の後端に電気的に接続されて、前記摩擦式ナノ発電機により発生された信号を整流し、第1の直流信号を出力し、
前記整流回路は、第1の出力端と第2の出力端とを含み、
スイッチ回路は、電圧コンパレーターと電界効果トランジスターとを含み、前記電圧コンパレーターの入力端はそれぞれ前記整流回路の出力端に接続され、前記出力端は前記電界効果トランジスターのゲートに接続されており、前記電界効果トランジスターのドレインとソースとのうちの一方は前記整流回路の第1の出力端に接続され、ドレインとソースとのうちの他方はスイッチ回路の一方の出力端であり、前記整流回路の第2の出力端はスイッチ回路の他方の出力端であり、
前記第1の直流信号が参考電圧より大きい場合、前記スイッチ回路はオンになり、前記第1の直流信号が参考電圧より小さい場合、前記スイッチ回路はオフになる、
ことを特徴とする、摩擦式ナノ発電機の摩擦式電子学エネルギー抽出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、回路管理分野に関し、さらには、摩擦式ナノ発電機の電源管理モジュール及びそれを含むエネルギーシステム、並びに、摩擦式ナノ発電機の電源管理方法及び摩擦式電子学エネルギー抽出器に関する。
【背景技術】
【0002】
摩擦式ナノ発電機は、人体の運動エネルギーや環境の機械的エネルギーの収集において、大きな利点と応用潜在力を持っている。IDTechEx社の調査レポートの予測によると、2027年まで、摩擦電気エネルギーの収集がセンサー分野において占めるマーケティング規模は4億ドルに達し、これは、広い開発価値のある新規なエネルギー技術である。現在、摩擦式ナノ発電機の出力電力は、既に500W/m
2に達しており、仕様から見ると、多数の消耗電力の低いシステムの要求を満たしている。しかし、摩擦式ナノ発電機は、高出力インピーダンス特性の制約により、エネルギー蓄積デバイスに対して直接充電する場合、その効率が極めて低く、直接電気用品のために電力を提供できず、日常的な電子システムに適用できなかった。摩擦式ナノ発電機の普及及び実用化のためには、まず、電源管理のボルトネック問題を解決する必要があり、摩擦式ナノ発電機が市販の電子デバイスの動作要求を満たして、実際に生産や生活に応用できるには、ランダムな機械的エネルギーを安定的な電気エネルギーに変換し続けて出力することができなければならない。
【0003】
現在、摩擦式ナノ発電機向きの電源管理モジュール製品は未だになく、摩擦式ナノ発電機の電源管理方法に関する研究も少ない。そのうち、機械的スイッチによる電源管理方式では、スイッチの数と電圧の変換比に限界があるので、システムの構成の設計が非常に複雑になり、在来式トランスによる電源管理では、高周波交流信号の変圧にしか応用できず、且つ、トランスの体積や質量は相当大きくなり、内部給電電子スイッチによる電源管理では、回路の体積が大きく、内部の漏れ電流が大きく、予め電力を蓄積して動作する必要があり、回路の効率に限界がある。
【0004】
そこで、汎用的で、効率的で、実用化できる摩擦式ナノ発電機の電源管理モジュールを開発することは、摩擦式発電機がマイクロエネルギー応用分野において早めに突破すべき核心技術になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに鑑みて、この開示の目的は、上記の少なくとも一つの技術的問題を解決できる摩擦式ナノ発電機の電源管理モジュール及びエネルギー収集管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この開示のある局面によると、摩擦式ナノ発電機の後端に電気的に接続するように配置され、整流回路及び直流降圧回路を含む、前記摩擦式ナノ発電機の電源管理モジュールであって、前記整流回路は、摩擦式ナノ発電機の後端に電気的に接続され、前記摩擦式ナノ発電機により発生された信号を整流して、第1の直流信号を出力し、前記直流降圧回路は、前記整流回路の後端に電気的に接続され、前記第1の直流信号を降圧して、第2の直流信号を出力する、摩擦式ナノ発電機の電源管理モジュールを提供する。
【0007】
さらに、整流回路は、第1の出力端と第2の出力端とを含み、直流降圧回路は、LC回路とスイッチ回路とを含み、前記第1の出力端は、前記スイッチ回路を介して前記LC回路の一端に接続され、前記第2の出力端は前記LC回路の他端に接続され、LC回路におけるキャパシターCの両端は、電源管理モジュールの電圧の出力端として配置され、前記第2の直流信号を出力する。
【0008】
さらに、前記直流降圧回路は、LC回路の両端に接続され、前記スイッチ回路がオフされた時にLC回路と回路を形成して、インダクターLのエネルギーの放出のために回路を提供するためのフリーホイーリングダイオードをさらに含む。
【0009】
さらに、前記スイッチ回路は、自律型スイッチであり、電圧コンパレーターと電界効果トランジスターとを含み、前記電圧コンパレーターの入力端はそれぞれ前記第1の出力端と第2の出力端とに接続され、出力端は電界効果トランジスターのゲートに接続されており、前記電界効果トランジスターのゲートは前記制御極とされ、ドレインとソースとのうちの一方は前記第1の出力端に接続されて入力極とされ、ドレインとソースとのうちの他方は出力極としてLC回路の一端に接続されている。
【0010】
さらに、前記電圧コンパレーターへのエネルギー供給は前記摩擦式ナノ発電機により提供される。
【0011】
さらに、前記LC回路において、インダクターLのインダクタンスは1〜10mHである。
【0012】
さらに、前記LC回路において、キャパシターCのキャパシタンスは1〜20μFである。
【0013】
さらに、前記整流回路は、フルウェーブブリッジである。
【0014】
この開示の他の局面によると、摩擦式ナノ発電機により発生された交流信号を整流して、第1の直流信号を出力することと、前記第1の直流信号と参考電圧とを比較して、前記参考電圧より大きい場合、前記摩擦式ナノ発電機により発生されたエネルギーはLC回路に放出され、LC回路により直流降圧された後負荷に第2の直流信号を出力し、参考電圧より小さい場合、LC回路はフリーホイーリング回路を介して負荷に第2の直流信号を出力することと、を含む、摩擦式ナノ発電機の電源管理方法を提供する。
【0015】
さらに、前記参考電圧は、前記摩擦式ナノ発電機の最大出力電圧である。
【0016】
この開示のさらに他の局面によると、摩擦式ナノ発電機と、上記の電源管理モジュールと、を含み、前記電源管理モジュールは前記摩擦式ナノ発電機の後端に電気的に接続されており、前記第2の直流信号はエネルギーシステムの出力として、エネルギー蓄積デバイスを充電したり、又は、直接電子デバイスを駆動したりする、エネルギーシステムを提供する。
【0017】
この開示の別の局面によると、整流回路とスイッチ回路とを含み、前記整流回路は、摩擦式ナノ発電機の後端に電気的に接続されて、前記摩擦式ナノ発電機により発生された信号を整流し、スイッチ回路は、電圧コンパレーターと電界効果トランジスターとを含み、前記電圧コンパレーターの入力端はそれぞれ前記整流回路の出力端に接続され、出力端は前記電界効果トランジスターのゲートに接続されており、前記電界効果トランジスターのドレインとソースとのうちの一方は前記整流回路の第1の出力端に接続され、ドレインとソースとのうちの他方はスイッチ回路の一方の出力端であり、整流回路の第2の出力端はスイッチ回路の他方の出力端である、摩擦式ナノ発電機の摩擦式電子学エネルギー抽出器を提供する。
【0018】
この開示は、下記の特徴を有する。摩擦式ナノ発電機のエネルギー伝達の最大化の原理と自律型電子スイッチに基づいて、整流回路とスイッチ回路とを含む摩擦式電子学エネルギー抽出器を提案し、直流降圧変換回路と結合して、摩擦式ナノ発電機の電源管理モジュールを提案した。
【発明の効果】
【0019】
当該モジュールは、自律的に摩擦式ナノ発電機のエネルギーを最大限に放出でき、直流降圧変換により、負荷において持続的かつ安定的な電源を得ることができる。
【0020】
当該モジュールは、各種の異なる摩擦式ナノ発電機に対して電源管理を実現でき、人体の運動エネルギーと環境の機械的エネルギーとの収集に用いられ、汎用性、効率性及び実用性を持ち、ウェアラブル電子機器や産業上の分布式計測制御用の無線ネット構築等の応用分野のためにマイクロエネルギー解決策を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、この開示の実施例に係る摩擦式ナノ発電機の電源管理モジュールの回路原理図である。
【
図2】
図2A及び
図2Bは、それぞれ
図1の電源管理モジュールにおいてスイッチ回路のオン又はオフ状態における等価回路図である。
【
図3】
図3は、この開示の実施例に係る摩擦式ナノ発電機の電源管理モジュールにおける摩擦式電子学エネルギー抽出器の回路原理図である。
【
図4】
図4は、この開示の実施例に係る摩擦式ナノ発電機のエネルギー伝達過程において実測された電圧−電荷グラフである。
【
図5】
図5は、この開示の実施例に係る摩擦式ナノ発電機が電源管理モジュールを通じて出力する出力電圧テスト結果を示す図である。
【
図6】
図6は、この開示の実施例に係る電源管理前後の摩擦式ナノ発電機の出力電力を比較したグラフである。
【
図7】
図7は、この開示の実施例に係る電源管理前後の摩擦式ナノ発電機によりキャパシターを充電した結果を比較した図である。
【
図8】
図8は、摩擦式ナノ発電機及び電源管理モジュールによるマイクロエネルギー収集、管理及び応用システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この開示の目的、技術案及び利点をより明らかにするために、具体的な実施例に基づき、図面を参照して、この開示についてより詳細に説明する。以下の図面を参照したこの開示の実施形態に対する説明は、この開示の全般的な発明構想を解釈するためであり、この開示は、これに限定されない。
【0023】
この開示の基本的な構想によると、摩擦式ナノ発電機の電源管理モジュールを提供しており、整流回路と直流降圧回路とにより直流出力の調整と出力インピーダンスの変換を実現して、直接電子デバイスのために給電することやエネルギー蓄積デバイスのために充電する効率が低い問題点を解決した。
【0024】
図1は、この開示の実施例に係る摩擦式ナノ発電機の電源管理モジュールの回路原理図である。
図1に示すように、この開示の実施例の一局面によると、整流回路と直流降圧回路とを含み、整流回路は、摩擦式ナノ発電機(TENG)の後端に電気的に接続され、前記摩擦式ナノ発電機により発生された信号を整流して、第1の直流信号を出力し、直流降圧回路は、前記整流回路の後端に電気的に接続され、前記第1の直流信号を降圧して、第2の直流信号を出力する、摩擦式ナノ発電機の管理モジュールを提供する。
【0025】
ここで、直流降圧回路はスイッチ回路S、フリーホイーリングダイオードD、LC回路(インダクターLとキャパシターCとを含む)を含んでもよい。
【0026】
整流回路は、前記摩擦式ナノ発電機により発生された交流信号を直流信号に整流するためのものであり、第1の出力端と第2の出力端とを含み、第1の出力端と第2の出力端と間の電圧はUABであり、第1の出力端は、スイッチ回路を介してLC回路の一端に接続され、第2の出力端はLC回路の他端に接続され、LC回路の両端にはフリーホイーリングダイオードDが接続されており、フリーホイーリングダイオードDは、前記スイッチ回路がオフされた時にLC回路と回路を形成して、インダクターLのエネルギーの放出のために回路を提供し、LC回路におけるキャパシターCの両端は管理モジュール中の電圧の出力端として配置され、第2の直流信号を出力する。ここで、整流回路はフルウェーブブリッジであってもよい。
【0027】
当該回路は摩擦式ナノ発電機と直流降圧回路との結合と見なすことができる。ここで、ブリッジは摩擦式ナノ発電機により発生された交流信号を第1の直流信号に変換する。スイッチ回路Sは、摩擦式ナノ発電機に対してエネルギーの蓄積と放出を制御する作用を果たすとともに、直流降圧回路においてスイッチング変換の作用を果たす。フリーホイーリングダイオードDは、スイッチ回路Sがオンになる時にオフ状態にあり、摩擦式ナノ発電機は後端のLC回路にエネルギーを伝達し、スイッチ回路Sがオフになる時にフリーホイーリング状態にあり、インダクターのエネルギーの放出のために回路を提供する。インダクターLとキャパシターCとは一つのローパスフィルターを構成し、摩擦式ナノ発電機の出力電圧のうちの直流成分を通過させ、出力電圧のうちのスイッチング周波数及びその高調波成分を抑えて、直流降圧変換を実現する。摩擦式ナノ発電機のエネルギーは、電源管理モジュールの伝達と変換により、最終的には、負荷抵抗Rにおいて安定的な直流電圧出力を得ることができる。
【0028】
図2A及び
図2Bは、それぞれ
図1の電源管理モジュールにおいてスイッチ回路のオン又はオフ状態における等価回路図である。
図2Aに示すように、摩擦式ナノ発電機の電圧が最大になると、スイッチ回路Sはオンになり、ダイオードDはオフ状態にあり、摩擦式ナノ発電機は等価的に一つのエネルギー満タンのキャパシターCTと見なすことができ、後端にエネルギーを伝達するが、そのうち、一部はインダクターLにより阻止、吸収されて磁界エネルギーになって蓄積されることになり、残りの一部はキャパシターCによりグラウンドにバイパスされて、電界エネルギーの形でキャパシターCに蓄積される。その等価的なキャパシターにおける電圧が0まで降りると、摩擦式ナノ発電機におけるエネルギーは全部放出され、スイッチ回路Sはオフになる。
図2Bに示すように、スイッチ回路Sがオフされると、ダイオードDは導通状態にあり、インダクターLの電流は、ダイオードDを通じてフリーホイーリングを実現し、スイッチ回路Sが再びオンになるまで、エネルギーをインダクターLとキャパシターCから放出して負荷Rに給電する。このような方法は、エネルギーの伝達を最大限に実現できるとともに、摩擦式ナノ発電機の出力信号のうちの交流信号の部分を抑えて、出力インピーダンス変換を実現でき、最後に回路が安定的な状態になると、負荷抵抗Rにおいて持続的且つ安定的な直流電圧出力を得ることができる。
【0029】
LC回路におけるキャパシターCとインダクターLとのパラメーターの設計については、摩擦式ナノ発電機により出力された電圧信号の特性に基づいて、U0及び安定時間の要求に応じて、キルホッフ法則により計算できる。代表的なインダクターLのインダクタンスは1〜10mHにしてもよく、キャパシターCのキャパシタンスは1〜20μFにしてもよい。
【0030】
図3は、この開示の実施例に係る摩擦式ナノ発電機の電源管理モジュールにおける摩擦式電子学エネルギー抽出器の回路原理図である。
図3に示すように、スイッチ回路Sは自律型スイッチであり、マイクロ電力消費電圧コンパレーターと電界効果トランジスターとにより構成され、動作原理における自律的なオンオフ機能を実現する。電圧コンパレーターの入力端はそれぞれ整流回路の第1の出力端と第2の出力端に接続され、出力端は電界効果トランジスターのゲートに接続されており、電界効果トランジスターのゲートは前記制御極とされ、ドレインとソースとのうちの一方は前記第1の出力端に接続されて入力極とされ、ドレインとソースとのうちの他方は出力極として、スイッチ回路の出力端としてLC回路の一端に接続されている。整流回路の第2の出力端はスイッチ回路の他方の出力端である。
【0031】
電圧コンパレーターの機能は、直流電源を接続することで提供してもよく、上記の摩擦式ナノ発電機により提供してもよく、自律型スイッチを自律型受動スイッチとすることで、電源管理モジュール全体が外部電源を必要としないようにすることができる。
【0032】
摩擦式ナノ発電機の出力電圧はブリッジを通過した後、一連のパルス型電圧信号を得ることができ、電圧コンパレーターにより参考電圧と比較される。参考電圧より小さい場合、コンパレーターはローレベル信号を出力し、電界効果トランジスターはオフ状態にあり、参考電圧より大きい場合、コンパレーターは有効信号(制御電圧UGS)を出力して電界効果トランジスターをオンにする。電圧コンパレーターと電界効果トランジスターのパラメーター設計により、摩擦式ナノ発電機の出力電圧が最高になる時に電界効果トランジスターがオンされることを保障して、自律型電子スイッチの機能を実現し、摩擦式ナノ発電機から最大限にエネルギーを取得して回路の後端に出力する。
【0033】
電圧コンパレーターと電界効果トランジスターを選択する原則としては、摩擦式ナノ発電機(TENG)の出力電圧信号の特性及び動作周波数に応じて、できる限り低損失及び高耐圧値効果を満たすように選択し、例えば、電圧コンパレーターはTLV3401であってもよく、電界効果トランジスターはFDD3N40であってもよい。
【0034】
この開示の実施例の他の局面によると、摩擦式ナノ発電機により発生された交流信号を整流して、第1の直流信号を出力することと、前記第1の直流信号と参考電圧とを比較して、前記参考電圧より大きい場合、前記摩擦式ナノ発電機により発生されたエネルギーはLC回路に放出され、LC回路により直流降圧された後負荷に第2の直流信号を出力し、参考電圧より小さい場合、LC回路はフリーホイーリング回路を通じて負荷に第2の直流信号を出力することと、を含む、摩擦式ナノ発電機の電源管理方法を提供する。
【0035】
摩擦式ナノ発電機の電源管理方法は、電源管理モジュールの方式を採用することで実現でき、ここでは、説明を重複しない。
【0036】
参考電圧は、回路におけるデバイスのパラメーターに応じて設計することができ、前記摩擦式ナノ発電機の最大の出力電圧であってもよい。
【0037】
上記の第2の直流信号はエネルギーソースの出力として、エネルギー蓄積デバイスを充電したり、又は、直接電子デバイスを駆動したりすることができる。
【0038】
図4は、この開示の実施例の摩擦式ナノ発電機のエネルギー伝達過程中の電圧−電荷(U−Q)グラフの実測図である。摩擦式ナノ発電機が周期的な運動をする場合、前半の周期において、摩擦式ナノ発電機の電圧波形が最大の正の電圧まで上昇する時、コンパレーターの参考電圧に達し、コンパレーターは制御電圧を出力して電界効果トランジスターをオンさせ、摩擦式ナノ発電機に蓄積されたエネルギーを後端の回路に放出し、その電圧は迅速に0まで落ち、遷移電荷は迅速に上昇する。同様に、後半の周期において、摩擦式ナノ発電機の電圧波形が最大の負の電圧に達する時、整流されてコンパレーターの参考電圧に達し、コンパレーターは制御電圧を出力して電界効果トランジスターをオンさせ、摩擦式ナノ発電機は再び後端の回路にエネルギーを放出し、その電圧は迅速に0に戻るとともに、遷移電荷も逆方向に0に戻る。この過程において、摩擦式電子学エネルギー抽出器は、摩擦式ナノ発電機のエネルギーの抽出と、後端の回路への伝達とを最大限に実現している。
図4において、曲線により囲まれた面積は摩擦式ナノ発電機により放出されたエネルギーであり、テスト結果によると、一つの周期において摩擦式ナノ発電機により放出、伝達されたエネルギーは理論値の85%に達し、これは電源管理モジュールの設計及び動作原理に合致する。
【0039】
図5は、この開示の実施例の摩擦式ナノ発電機が電源管理モジュールを通じた出力電圧(UO)のテスト結果である。
図5に示すように、摩擦式ナノ発電機の運動周波数が1Hzであり、負荷抵抗Rが1MΩであり、インダクターLのインダクタンスが5mHであり、キャパシターのキャパシタンスが10μFであると、モジュールの出力電圧は初期状態から上昇続き、20sが経過した後、安定な状態になり、直流成分は3.0Vの出力に維持され、電圧のリップルは0.4Vである。摩擦式ナノ発電機が直接抵抗に出力するパルス型電圧の波形に比べて、電源管理モジュールによると、負荷抵抗において平穏な電圧波形を得ることができ、電源管理モジュールの設計要求に合致できる。
【0040】
図6は、この開示の実施例の電源管理前後の摩擦式ナノ発電機の出力パワーグラフを比較した図である。
図6に示すように、摩擦式ナノ発電機は当該管理モジュールを通じた後、出力整合インピーダンス(RM/RD)は35Mから1Mまで低下し、最大の出力パワーはそれぞれ11.2μW及び9.0μWであり、出力インピーダンスを大きく低下させるとともに80%の出力パワーを維持している。
【0041】
図7は、この開示の実施例の電源管理前後の摩擦式ナノ発電機によりキャパシターを充電した結果を比較する図である。
図7に示すように、摩擦式ナノ発電機により、周波数1Hzにおいて直接1mFのキャパシターを5分間充電した結果、電圧はただ4.632Vから4.636Vまで上昇しており、充電エネルギーは18.5μJである。電源管理モジュールを通じてキャパシタンスの同じキャパシターを5分間充電し続いた結果、電圧は4.632Vから5.118Vまで上昇しており、充電エネルギーは2.37mJであり、128倍も向上されており、電源管理モジュールの設計原理と機能の有効性を立証している。
【0042】
図8は、この開示の実施例において摩擦式ナノ発電機と電源管理モジュールとによるマイクロエネルギー収集、管理及び応用システムのブロック図である。
図8に示すように、種類の異なる摩擦式ナノ発電機を利用して人体の運動エネルギーや環境の機械的エネルギーを収集でき、摩擦式ナノ発電機の電源管理モジュールの収集と管理により、電源に代えて、エネルギー蓄積デバイスを充電したり、又は、直接各種類の電子デバイスを駆動したりすることができ、汎用性、効率性及び実用性機能を持つ。
【0043】
上記のように、この開示は摩擦式ナノ発電機向きの電源管理モジュールを提案しており、最大限に、且つ、自律的に摩擦式ナノ発電機のエネルギーを放出でき、直流降圧変換により、外部抵抗負荷において持続的かつ安定的な電圧出力を得ることができる。当該モジュールは各種の異なる摩擦式ナノ発電機に対して電源管理を実現でき、人体の運動エネルギーと環境の機械的エネルギーとを収集でき、汎用性、効率性及び実用性を持ち、ウェアラブル電子機器や産業上の無線ネット分野のために完全なマイクロエネルギー解決策を提供できる。
【0044】
以上の具体的な実施例により、この開示の目的、技術案及び有益な効果についてさらに説明したが、以上はこの開示の具体的な実施例のみであり、この開示を制限するためではなく、この開示の精神と原則の範囲において施された変更や等価的な置換や改良などは、いずれもこの開示の保護範囲に含められることに注意すべきである。
【符号の説明】
【0045】
C :キャパシター
D :フリーホイーリングダイオード
L :インダクター
LC :フリーホイーリングダイオード
R :負荷抵抗
S :スイッチ回路