特許第6853904号(P6853904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6853904
(24)【登録日】2021年3月16日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】エアゾール製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/196 20060101AFI20210322BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20210322BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20210322BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20210322BHJP
   A61K 47/08 20060101ALI20210322BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   A61K31/196
   A61K9/12
   A61K47/10
   A61K47/38
   A61K47/08
   A61P29/00
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-27268(P2020-27268)
(22)【出願日】2020年2月20日
【審査請求日】2020年12月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000160522
【氏名又は名称】久光製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【弁理士】
【氏名又は名称】木元 克輔
(72)【発明者】
【氏名】中西 利博
(72)【発明者】
【氏名】荒木 浩行
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 靖久
(72)【発明者】
【氏名】義永 隆明
【審査官】 大西 隆史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−102096(JP,A)
【文献】 特開2016−008178(JP,A)
【文献】 特開2009−178215(JP,A)
【文献】 特開2006−241014(JP,A)
【文献】 特開2012−001465(JP,A)
【文献】 特開平05−262621(JP,A)
【文献】 特表2012−516320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
A61P 1/00−43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液及び噴射剤を含むエアゾール組成物が、噴射バルブ装置を備えた容器に収容されたエアゾール製剤であって、
前記噴射バルブ装置のアクチュエータはメカニカルブレークアップ機構を有する噴射ボタンであり、
前記噴射ボタンの噴射口の孔径が0.3mm〜0.6mmであり、
前記薬液は、ジクロフェナク及び/又はその薬学的に許容される塩、ヒドロキシプロピルセルロース及びエタノールを含有し、
前記薬液中のヒドロキシプロピルセルロースの濃度が1〜1.5質量%であり、
ヒドロキシプロピルセルロースとエタノールの質量比が1:30〜1:50であり、
前記薬液と前記噴射剤の質量比が40:60〜50:50である、
エアゾール製剤。
【請求項2】
前記バルブ装置のステム孔の孔径が0.3mm以下である、請求項1に記載のエアゾール製剤。
【請求項3】
前記噴射剤がジメチルエーテルである、請求項1又は2に記載のエアゾール製剤。
【請求項4】
前記薬液中のエタノールの濃度が40〜50質量%である、請求項1〜のいずれか一項に記載のエアゾール製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品として広く用いられているエアゾール製剤は、指を汚すことなく、容器から患部に薬液を直接噴霧できるという特徴がある。例えば、消炎鎮痛薬及び抗真菌薬(水虫治療薬)を有効成分として含有するエアゾール製剤が臨床で使用されており、具体的には、ジクロフェナクを含有するエアゾール製剤などが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−178215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ジクロフェナクを含有するエアゾール製剤において、エアゾール製剤から噴射される微粒子の肺への侵入を防ぐためには、粒子径10μm以下の微粒子の存在率を低くすることが望まれている。そこで、本発明は、ジクロフェナクを含有するエアゾール製剤の安全性の向上を目指し、噴射される粒子径10μm以下の微粒子の存在率が0.6%以下になる、ジクロフェナク含有エアゾール製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが上記目的を達成するために鋭意研究した結果、ヒドロキシプロピルセルロース及びエタノールを所定の比で含有し、薬液と噴射剤を所定の比で含有する、エアゾール組成物を所定の容器に収容したエアゾール製剤は、粒子径10μm以下の微粒子の存在率が低いことを見出した。また、ヒドロキシプロピルセルロース以外の水溶性高分子では、ジクロフェナクを含有する薬液及び/又はエアゾール組成物の溶解性が悪いことも本発明者らは見出した。これらの知見に基づき、本発明者らは本発明を完成した。
すなわち、本発明のエアゾール製剤は、薬液及び噴射剤を含むエアゾール組成物が噴射バルブ装置を備えた容器に収容されており、上記噴射バルブ装置のアクチュエータはメカニカルブレークアップ機構を有する噴射ボタンであり、上記薬液は、ジクロフェナク及び/又はその薬学的に許容される塩、ヒドロキシプロピルセルロース及びエタノールを含有し、ヒドロキシプロピルセルロースとエタノールの質量比が1:30〜1:50であり、上記薬液と上記噴射剤の質量比が40:60〜50:50である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のエアゾール製剤は、噴射される粒子径10μm以下の微粒子の存在率が低いため、使用時に使用者の肺に微粒子が侵入するおそれが少ない。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のエアゾール製剤は、噴射バルブ装置を備えた容器に薬液及び噴射剤を含むエアゾール組成物を収容されており、上記噴射バルブ装置のアクチュエータはメカニカルブレークアップ機構を有する噴射ボタンである。メカニカルブレークアップ機構を有する噴射ボタンは、ストレートタイプの噴射ボタンと異なり、噴射口の裏側に狭い溝が形成されている。エアゾール組成物はこの溝を旋回するため、メカニカルブレークアップ機構を有する噴射ボタンは、ストレートタイプの噴射ボタンと比較して、粒子径の小さな微粒子を噴射すると一般的に考えられている。しかしながら、驚くべきことに、本発明のエアゾール製剤に収容するエアゾール組成物は、メカニカルブレークアップ機構を有する噴射ボタンで噴射すると粒子径が大きくなる、すなわち、粒子径10μm以下の微粒子の存在率が低くなることを本発明者らは見出した。
【0008】
噴射口の孔径は0.3mm〜1.0mm、好ましくは0.3mm〜0.6mmである。バルブ装置のステム孔の孔径が0.3mm以下であることが好ましい。
【0009】
エアゾール組成物を充填する容器は、エアゾール製剤として使用される一般的な容器を使用することができ、典型的には、アルミニウム、鋼又はブリキ等からなる金属製容器が使用され、金属製容器の内面は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂又はポリアミドイミド樹脂等でコーティングされていてもよい。
【0010】
次に、本発明のエアゾール製剤に充填されるエアゾール組成物について説明する。エアゾール組成物は薬液及び噴射剤を含む。エアゾール組成物における、薬液と噴射剤の質量比は40:60〜50:50であり、好ましくは40:60〜45:55である。上記数値範囲内の質量比であると、粒子径10μm以下の微粒子の存在率が十分低く、かつ、使用感に優れたエアゾール製剤となる。例えば、粒子径10μm以下の微粒子の存在率が0.6%以下であると、微粒子が肺に侵入する可能性が低くなる。したがって、エアゾール製剤の粒子径10μm以下の微粒子の存在率が0.6%以下の場合、粒子径10μm以下の微粒子の存在率は十分低いといえる。
【0011】
薬液は、ジクロフェナク及び/又はその薬学的に許容される塩、ヒドロキシプロピルセルロース及びエタノールを含有する。ヒドロキシプロピルセルロース及びエタノールを組み合わせることで、薬液の溶解性を高めつつ、粒子径10μm以下の微粒子の存在率を十分低くすることが可能となる。
【0012】
ジクロフェナクの薬学的に許容される塩としては、ナトリウム塩、エポラミン塩(1−(2−ヒドロキシエチル)ピロリジン塩)、アンモニウム塩が挙げられ、これらの中でもナトリウム塩であることが好ましい。
【0013】
薬液中のジクロフェナク及び/又はその薬学的に許容される塩の濃度は、0.1質量%〜5質量%、好ましくは1質量%〜3質量%である。薬液中のヒドロキシプロピルセルロースの濃度は、0.5質量%〜2質量%、好ましくは1〜1.5質量%である。上記数値範囲内の濃度であると、使用感に優れたエアゾール製剤となる。ヒドロキシプロピルセルロースとしては、2質量%水溶液としたときの粘度が100mPa・S〜5000mPa・Sであってよく、1000mPa・S〜4000mPa・sであってよい。ここで2質量%水溶液の粘度はB型粘度計を用いて、20℃にて測定した値を意味する。薬液の溶解性の観点から、好ましくは、薬液は、ヒドロキシプロピルセルロース以外の水溶性高分子(疎水化ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等)を含有しない。上記薬液中のエタノールの濃度は、30〜70質量%、好ましくは40〜50質量%である。上記数値範囲内の濃度であると、粒子径10μm以下の微粒子の存在率が十分低いエアゾール製剤となる。
【0014】
薬液は、上記成分の他、水、pH調節剤、抗酸化剤、湿潤剤、界面活性剤、清涼化剤、吸収促進剤などを含んでいてもよい。
【0015】
水は、ヒドロキシプロピルセルロース及びその他の成分を溶解又は分散させるための媒体となる。水の含有量は、薬液の全質量を基準として、例えば、10質量%〜60質量%又は30質量%〜50質量%であってよい。
【0016】
pH調節剤としては、例えば、乳酸、酢酸、ギ酸、酒石酸、シュウ酸、安息香酸、リンゴ酸、クエン酸及びアミン類(ジエタノールアミン等)が挙げられるが、乳酸が好ましい。エアゾール組成物のpHとしては、5.0〜9.0又は6.0〜8.0であってよい。
【0017】
抗酸化剤としては、トコフェロール及びそのエステル誘導体、アスコルビン酸及びそのエステル誘導体、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、2−メルカプトベンズイミダゾール等が挙げられる。抗酸化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。抗酸化剤としては、ジクロフェナクの分解をより抑制できる観点から、ジブチルヒドロキシトルエンが好ましい。抗酸化剤の含有量は、薬液の全質量を基準として、例えば、0質量%〜1質量%であってよい。
【0018】
湿潤剤としては、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−ソルビトール、キシリトール、マンニトール、エリスリトール及び尿素が挙げられる。湿潤剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。湿潤剤としては、皮膚がより保湿される観点から、プロピレングリコールが好ましい。湿潤剤の含有量は、薬液の全質量を基準として、例えば、1質量%〜10質量%又は1質量%〜5質量%であってよい。
【0019】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤(ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポリソルベート60、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60等)、イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤の含有量は、薬液の全質量を基準として、例えば、0質量%〜10質量%であってよい。
【0020】
清涼化剤としては、例えば、チモール、l−メントール、dl−メントール、l−イソプレゴール、ハッカ油等を挙げることができ、l−メントールが好ましい。清涼化剤の含有量は、薬液の全質量を基準として、例えば、1質量%〜5質量%又は1質量%〜3質量%であってよい。
【0021】
吸収促進剤としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノ−ル酸、リノレン酸等の脂肪酸、ラウリン酸メチル、ラウリン酸ヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸セチル等の脂肪酸エステル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸ジメチル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジオクチル、フタル酸ジエチル、及びフタル酸ジブチル等のジカルボン酸エステル、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、セチルアルコール、オクチルドデカノール等の脂肪族アルコールが挙げることができる。ジクロフェナクナトリウムの皮膚への吸収をより向上させる観点から、吸収促進剤はアジピン酸ジイソプロピルが好ましい。吸収促進剤の含有量は、薬液の全質量を基準として、例えば、1質量%〜10質量%又は3質量%〜7質量%であってよい。
【0022】
ヒドロキシプロピルセルロースとエタノールの質量比は、1:30〜1:50であり、好ましくは1:30〜1:45である。上記数値範囲内の質量比であると、粒子径10μm以下の微粒子の存在率が十分低く、かつ、使用感に優れたエアゾール製剤となる。
【0023】
噴射剤は、エアゾール製剤に使用される公知の物質を用いることができ、例えば、ジメチルエーテル、液化石油ガス(LPG)、窒素ガス、炭酸ガス、代替フロンガス等が挙げられるが、薬液との相溶性の観点から、噴射剤はジメチルエーテルであることが好ましい。
【0024】
本発明のエアゾール組成物は、常法により製造することができるが、例えば、薬液の各成分を均一になるまで混合し、その薬液をエアゾール容器に充填し、その容器のバルブを装着させ、噴射剤を充填することにより、製造することができる。更に、その容器に噴射ボタンを取り付けることで、エアゾール製剤を製造することができる。
【0025】
エアゾール製剤を患部に噴霧することで、患部の痛みや炎症を緩和することができる。
【実施例】
【0026】
試験例1
表1に示す成分をそれぞれ秤取し、均一になるまで混合して、薬液を得た。次いで、得られた薬液をエアゾール容器に充填し、そのエアゾール容器にバルブを装着させた後、原液と噴射剤(ジメチルエーテル)の質量比が45:55になるように充填し、エアゾール組成物を得た。次いで、エアゾール容器に噴射ボタンを取り付けることで、エアゾール製剤1〜6を作製した。
【0027】
【表1】
【0028】
得られた薬液及びエアゾール組成物を目視で確認して、以下の基準で溶解性を評価した。また、粒子径10μm以下の微粒子の存在率及びガス圧力を以下の条件で測定した。評価した結果を表2に示す。
溶解性の基準
A:白濁及び不溶物なし
B:白濁又は不溶物あり
粒子径10μm以下の微粒子の存在率の測定条件
測定装置:スプレーテックSTP5311 (Malvern PanalyticalLtd)
測定方法:レーザー回折法 粒度分布測定
測定温度:25℃
測定範囲:0.1〜200μm
使用レンズ:100mm〜300mm
焦点距離:30cm(検出器レンズから測定個所までの距離)
噴射距離:15cm(噴射口から測定個所までの距離)
噴射時間:3秒
解析モデル式:ロジン・ラムラーの式
ガス圧力の測定条件
測定装置:圧力ゲージPG-208(日本電産コパル電子株式会社)
測定方法:エアゾール製剤の容器のステムに圧力ゲージを押し当てて測定
【0029】
【表2】
【0030】
表2に示した結果から分かるように、薬液中にヒドロキシプロピルセルロースが含まれていると、溶解性に優れ、かつ、粒子径10μm以下の微粒子の存在率が低いエアゾール製剤を提供できることが確認された。薬液中に水溶性高分子を含有しないエアゾール製剤は、粒子径10μm以下の微粒子の存在率が高いことが確認された。また、他の水溶性高分子では溶解性が悪く、エアゾール組成物の製造に適さないことが確認された。
【0031】
試験例2
表3に示す成分をそれぞれ秤取し、均一になるまで混合して、薬液を得た。次いで、得られた薬液をエアゾール容器に充填し、そのエアゾール容器にバルブを装着させた後、原液と噴射剤(ジメチルエーテル)の質量比が45:55になるように充填し、エアゾール組成物を得た。次いで、エアゾール容器に噴射ボタンを取り付けることで、エアゾール製剤7〜13を作製した。
【0032】
【表3】
【0033】
試験例1と同様に、得られた薬液及びエアゾール組成物を目視で確認して溶解性を評価し、エアゾール製剤の粒子径10μm以下の微粒子の存在率及びガス圧力を測定した。また、速乾性及びべたつきを以下の条件で評価した。評価した結果を表4に示す。
速乾性の評価
エアゾール製剤を1秒間前腕にスプレーし、下記の基準により評価した。
1:遅い
2:やや速い
3:速い
べたつきの評価
エアゾール製剤を1秒間前腕にスプレーし、乾いた後に手指で触れてべたつきがあるか否かを下記の基準により評価した。
1:べたつく
2:ほとんどべたつかない
3:べたつかない
【0034】
【表4】
【0035】
表4に示した結果から分かるように、薬液中のヒドロキシプロピルセルロース濃度が1.0〜1.5質量%であると、粒子径10μm以下の微粒子の存在率が低く、かつ、使用感(速乾性及びべたつき)に優れたエアゾール製剤を提供できることが確認された。薬液中のヒドロキシプロピルセルロース濃度が1.8質量%以上であると、速乾性が不十分であることが確認された。
【0036】
試験例3
表5に示す成分をそれぞれ秤取し、均一になるまで混合して、薬液を得た。次いで、得られた薬液をエアゾール容器に充填し、そのエアゾール容器にバルブを装着させた後、原液と噴射剤(ジメチルエーテル)の質量比が45:55になるように充填し、エアゾール組成物を得た。次いで、エアゾール容器に噴射ボタンを取り付けることで、エアゾール製剤14〜19を作製した。
【0037】
【表5】
【0038】
試験例2と同様に、得られた薬液及びエアゾール組成物を目視で確認して溶解性を評価し、エアゾール製剤の粒子径10μm以下の微粒子の存在率及びガス圧力を測定し、速乾性及びべたつきを評価した。評価した結果を表6に示す。
【0039】
【表6】
【0040】
表6に示した結果から分かるように、薬液中のエタノール濃度が40〜50質量%であると、粒子径10μm以下の微粒子の存在率が低く、かつ、使用感(速乾性及びべたつき)に優れたエアゾール製剤を提供できることが確認された。薬液中のエタノール濃度が70質量%であると、粒子径10μm以下の微粒子の存在率が十分低くないことが確認された。また、エタノールに代えてイソプロパノールを使用すると、速乾性が不十分であることが確認された。
【0041】
試験例4
表7に示す成分をそれぞれ秤取し、均一になるまで混合して、薬液を得た。次いで、得られた薬液をエアゾール容器に充填し、そのエアゾール容器にバルブを装着させた後、原液と噴射剤(ジメチルエーテル)の質量比が表7に示す数値となるように充填し、エアゾール組成物を得た。次いで、エアゾール容器に噴射ボタンを取り付けることで、エアゾール製剤20〜24を作製した。
【0042】
【表7】
【0043】
試験例2と同様に、得られた薬液及びエアゾール組成物を目視で確認して溶解性を評価し、エアゾール製剤の粒子径10μm以下の微粒子の存在率及びガス圧力を測定し、速乾性及びべたつきを評価した。評価した結果を表8に示す。
【0044】
【表8】
【0045】
表8に示した結果から分かるように、薬液と噴射剤の質量比が40:60〜50:50であると、粒子径10μm以下の微粒子の存在率が低く、かつ、使用感(速乾性及びべたつき)に優れたエアゾール製剤を提供できることが確認された。薬液と噴射剤の質量比が35:65であると、粒子径10μm以下の微粒子の存在率が十分低くないことが確認された。薬液と噴射剤の質量比が55:45であると、速乾性が不十分であることが確認された。
【0046】
試験例5
表9に示す成分をそれぞれ秤取し、均一になるまで混合して、薬液を得た。次いで、得られた薬液をエアゾール容器に充填し、そのエアゾール容器にバルブを装着させた後、原液と噴射剤(ジメチルエーテル)の質量比が45:55になるように充填し、エアゾール組成物を得た。次いで、エアゾール容器に噴射ボタンを取り付けることで、エアゾール製剤25〜29を作製した。
【0047】
【表9】
【0048】
試験例2と同様に、得られた薬液及びエアゾール組成物を目視で確認して溶解性を評価し、エアゾール製剤の粒子径10μm以下の微粒子の存在率及びガス圧力を測定し、速乾性及びべたつきを評価した。評価した結果を表10に示す。
【0049】
【表10】
【0050】
表10に示した結果から分かるように、ボタン機構がメカニカルブレークアップであり、更にバルブのステム孔径がφ0.3mm以下であると、粒子径10μm以下の微粒子の存在率が低く、かつ、使用感(速乾性及びべたつき)に優れたエアゾール製剤を提供できることが確認された。
【要約】
【課題】粒子径10μm以下の微粒子の存在率が低い、ジクロフェナク含有エアゾール製剤を提供すること。
【解決手段】薬液及び噴射剤を含むエアゾール組成物が、噴射バルブ装置を備えた容器に収容されたエアゾール製剤であって、上記噴射バルブ装置のアクチュエータはメカニカルブレークアップ機構を有する噴射ボタンであり、上記薬液は、ジクロフェナク及び/又はその薬学的に許容される塩、ヒドロキシプロピルセルロース及びエタノールを含有し、ヒドロキシプロピルセルロースとエタノールの質量比が1:30〜1:50であり、上記薬液と上記噴射剤の質量比が40:60〜50:50である、エアゾール製剤。
【選択図】なし