(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
樹脂成分(A)を含む第1処理剤で伝動ベルト用心線の未処理糸を処理して第1処理糸を得る第1処理工程、レゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物(B1)、未変性ラテックス(B2)および酸変性ジエン系重合体(B3)を含む第2処理剤で該第1処理糸を処理して第2処理糸を得る第2処理工程を含む伝動ベルト用心線の製造方法であって、
前記樹脂成分(A)がゴム変性エポキシ樹脂(A1−1)を含み、かつ前記縮合物(B1)および前記未変性ラテックス(B2)の合計割合(固形分換算)が前記第2処理剤中8〜25質量%であり、前記酸変性ジエン系重合体(B3)の割合(固形分換算)が前記第2処理剤中2.5〜15質量%であるか、または
前記樹脂成分(A)がレゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物(A2−1)、ラテックス(A2−2)および複数のカルボジイミド基を有するポリカルボジイミド樹脂を含む硬化剤(A2−3)を含み、かつ前記縮合物(B1)および前記未変性ラテックス(B2)の合計割合(固形分換算)が前記第2処理剤中5〜25質量%であり、前記酸変性ジエン系重合体(B3)の割合(固形分換算)が前記第2処理剤中1〜15質量%である製造方法。
酸変性ジエン系重合体(B3)の質量(固形分換算)が、縮合物(B1)および未変性ラテックス(B2)の合計質量(固形分換算)に対して0.05〜2倍である請求項1または2記載の製造方法。
伝動ベルト用心線の未処理糸を処理するための処理用キットであり、かつ樹脂成分(A)を含む第1処理剤と、レゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物(B1)、未変性ラテックス(B2)および酸変性ジエン系重合体(B3)を含む第2処理剤とを含む処理用キットであって、
前記樹脂成分(A)がゴム変性エポキシ樹脂(A1−1)を含み、かつ前記縮合物(B1)および前記未変性ラテックス(B2)の合計割合(固形分換算)が前記第2処理剤中8〜25質量%であり、前記酸変性ジエン系重合体(B3)の割合(固形分換算)が前記第2処理剤中2.5〜15質量%であるか、または
前記樹脂成分(A)がレゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物(A2−1)、ラテックス(A2−2)および複数のカルボジイミド基を有するポリカルボジイミド樹脂を含む硬化剤(A2−3)を含み、かつ前記縮合物(B1)および前記未変性ラテックス(B2)の合計割合(固形分換算)が前記第2処理剤中5〜25質量%であり、前記酸変性ジエン系重合体(B3)の割合(固形分換算)が前記第2処理剤中1〜15質量%であるキット。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<心線の製造方法>
本発明では、心線は、樹脂成分(A)を含む第1処理剤で伝動ベルト用心線の未処理糸を処理して第1処理糸を得る第1処理工程、レゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物(B1)、未変性ラテックス(B2)および酸変性ジエン系重合体(B3)を含む第2処理剤で該第1処理糸を処理して第2処理糸を得る第2処理工程を経て製造される。
【0024】
[第1処理工程]
(伝動ベルト用心線の未処理糸)
第1処理剤で処理するための未処理糸を構成する原料繊維としては、例えば、天然繊維(綿、麻など)、再生繊維(レーヨン、アセテートなど)、合成繊維(ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維、ポリスチレンなどのスチレン系繊維、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系繊維、アクリル系繊維、ポリビニルアルコールなどのビニルアルコール系繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、全芳香族ポリエステル繊維、アラミド繊維など)、無機繊維(炭素繊維、ガラス繊維など)などが挙げられる。これらの繊維は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0025】
これらの繊維のうち、高モジュラスの点から、エチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレートなどのC
2−4アルキレンアリレートを主たる構成単位とするポリエステル繊維[ポリエチレンテレフタレート系繊維(PET繊維)、ポリエチレンナフタレート系繊維(PEN繊維)、ポリトリメチレンテレフタレート繊維(PTT繊維)などのポリアルキレンアリレート系繊維]、アラミド繊維などの合成繊維、炭素繊維などの無機繊維などが汎用され、引張強度が高く、高張力、高負荷の要求に対応できる点から、アラミド繊維(芳香族ポリアミド繊維)を含むのが好ましく、パラ系アラミド繊維が特に好ましい。パラ系アラミド繊維としては、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(例えば、帝人(株)の「トワロン(登録商標)」、東レ・デュポン(株)の「ケブラー(登録商標)」など)、ポリパラフェニレンテレフタルアミドと3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドとの共重合体繊維(例えば、帝人(株)の「テクノーラ(登録商標)」など)などが例示できる。
【0026】
第1処理剤で処理するための未処理糸は、撚りが加えられていない原糸の状態であってもよく、原糸に撚りを加えた撚糸の状態(未処理撚糸コード)であってもよい。本発明では、撚糸コードであっても、第1処理剤の撚糸コード(モノフィラメント間および/またはマルチフィラメント間)への含浸性が優れているため、繊維間の接着性を向上できる。
【0027】
原糸において、マルチフィラメント糸は、パラ系アラミド繊維のモノフィラメント糸を含むのが好ましく、必要であれば、他の繊維(ポリエステル繊維など)のモノフィラメント糸を含んでいてもよい。パラ系アラミド繊維の割合は、モノフィラメント糸全体(マルチフィラメント糸)に対して50質量%以上(特に80〜100質量%)であり、通常、全モノフィラメント糸がパラ系アラミド繊維で構成されていてもよい。
【0028】
マルチフィラメント糸は、複数のモノフィラメント糸を含んでいればよく、伝動ベルトの耐久性の点から、例えば100〜5000本、好ましくは300〜2000本、さらに好ましくは600〜1500本、最も好ましくは800〜1200本のモノフィラメント糸を含んでいてもよい。
【0029】
モノフィラメント糸の平均繊度は、例えば0.8〜10dtex、好ましくは0.8〜5dtex、さらに好ましくは1.1〜3dtex、最も好ましくは1.3〜2dtexであってもよい。
【0030】
撚糸コードは、少なくとも1本の原糸を右撚り(S撚り)または左撚り(Z撚り)した撚糸コード(片撚糸)であってもよいが、強度の点から、複数本の原糸を撚り合わせた撚糸コードが好ましい。
【0031】
複数本の原糸を撚り合わせた撚糸コードは、複数の片撚糸を下撚り糸として上撚りした撚糸コード(例えば、諸撚糸、駒撚糸、ラング撚糸など)であってもよく、片撚糸と原糸(無撚糸)とを引き揃えて撚り合わせた撚糸コード(例えば、壁撚糸など)であってもよい。また、片撚り方向(下撚り方向)と上撚り方向とは、同一方向(ラング撚り)及び逆方向(諸撚り)のいずれであってもよい。これらのうち、撚り戻りの抑制や耐屈曲疲労性に優れる点から、複数の片撚糸を下撚糸として上撚りした2段階に撚糸した撚糸コード(諸撚糸やラング撚糸)が好ましく、諸撚り糸が特に好ましい。
【0032】
これらの撚糸コードを構成する下撚り糸の数は、例えば2〜5本、好ましくは2〜4本、さらに好ましくは2〜3本であってもよい。下撚りの撚り数は、例えば20〜300回/m、好ましくは30〜200回/m、さらに好ましくは50〜180回/m、最も好ましくは100〜160回/mであってもよい。下撚りにおいて、下記式(1)で表される撚り係数(T.F.)は、例えば0.01〜10程度の範囲から選択でき、諸撚糸では1〜6程度が好ましく、ラング撚糸では0.2〜2程度が好ましい。
【0033】
撚り係数(T.F.)=[撚り数(回/m)×√トータル繊度(tex)]/960 (1)
【0034】
上撚りの撚り数は、特に制限されず、例えば30〜300回/m、好ましくは50〜250回/m、さらに好ましくは150〜230回/m、最も好ましくは180〜220回/mであってもよい。上撚りにおいて、式(1)で表される撚り係数(T.F.)は、例えば0.01〜10程度の範囲から選択でき、諸撚糸では1〜6程度が好ましく、ラング撚糸では2〜5程度が好ましい。
【0035】
上撚りされた伝動ベルト用心線の未処理撚糸コードの平均径は、例えば、0.2〜3.5mm、好ましくは0.4〜3mm、さらに好ましくは0.5〜2.5mm程度であってもよい。
【0036】
複数本の原糸を撚り合わせた撚糸コードにおける撚り構成を(下撚り時の原糸引き揃え本数)×(上撚り時の下撚り糸引き揃え本数)で表す場合、1×2、1×3、1×5、2×3、2×5、3×5などの構成の撚糸コードであってもよい。
【0037】
(第1処理剤)
第1処理剤(または前処理剤)は、樹脂成分(A)を含む処理剤であればよく、慣用の接着性樹脂を含む処理剤などであってもよいが、心線とエラストマーとの耐熱接着性を向上できる点から、樹脂成分(A)として弾性ポリマーで変性された変性エポキシ樹脂(A1−1)を含む第1処理剤(A1)、または樹脂成分(A)としてレゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物(A2−1)、ラテックス(A2−2)および複数のカルボジイミド基を有するポリカルボジイミド樹脂を含む硬化剤(A2−3)を含む第1処理剤(A2)が好ましい。
【0038】
(A1)第1処理剤
第1処理剤(A1)は、弾性ポリマーで変性(強靱化)された変性エポキシ樹脂(A1−1)に加えて、硬化剤(A1−2)および有機溶媒(A1−3)をさらに含むのが好ましい。
【0039】
(A1−1)変性エポキシ樹脂
前記変性エポキシ樹脂(A1−1)は、分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂由来のエポキシ基(グリシジル基など)を弾性ポリマーで変性したエポキシ樹脂であってもよく、エポキシ樹脂の末端を弾性ポリマーで変性した変性エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0040】
このような変性エポキシ樹脂において、弾性ポリマーとしては、エポキシ樹脂よりも柔軟なポリマーであれば特に限定されず、各種のゴム、エラストマー、軟質樹脂などが利用でき、例えば、ポリブタジエン、ニトリルゴム(NBR)、カルボキシル基末端NBR、ポリウレタンエラストマーなどが挙げられる。これらの弾性ポリマーは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの弾性ポリマーのうち、NBR、カルボキシル基末端NBR、ポリウレタンエラストマーが好ましく、心線を埋設するエラストマーに対する接着性などの観点から、ブタジエンとアクリロニトリルとの共重合体であるNBRが特に好ましい。
【0041】
変性エポキシ樹脂のベースとなるエポキシ樹脂としては、特に限定されず、脂肪族エポキシ樹脂[脂肪族ポリオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのジオール類、グリセリンなどのトリオール類など)とハロゲン含有エポキシ化合物(例えば、エピクロロヒドリンなど)との反応物]、脂環族エポキシ樹脂(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂など)、芳香族エポキシ樹脂などのいずれであってもよい。
【0042】
芳香族エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂[ビスフェノール類(またはそのアルキレンオキサイド付加物)とハロゲン含有エポキシ化合物(エピクロロヒドリンなど)との反応物など]、ナフタレン型エポキシ樹脂(例えば、ジグリシジルオキシナフタレンなど)、ベンゼンジオール(例えば、ヒドロキノン)とハロゲン含有エポキシ化合物(エピクロロヒドリンなど)との反応物、ノボラック型エポキシ樹脂[ノボラック樹脂(フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど)とハロゲン含有エポキシ化合物(エピクロロヒドリンなど)との反応物など]などが挙げられる。
【0043】
ビスフェノール型エポキシ樹脂において、ビスフェノール類としては、例えば、ビフェノール類(4,4’−ジヒドロキシビフェニルなど)、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類[例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどのビス(ヒドロキシフェニル)C
1−10アルカン類]、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン類(例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなど)、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル類(例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエ−テルなど)、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン類(例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンなど)、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホキシド類(例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシドなど)、ビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド類(例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィドなど)などが挙げられる。
【0044】
これらのエポキシ樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのエポキシ樹脂のうち、芳香族エポキシ樹脂(多価フェノール類とハロゲン含有エポキシ化合物との反応物など)が好ましく、特に、パラ系アラミド繊維との接着性に優れる点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールF型エポキシ樹脂および/またはビスフェノールA型エポキシ樹脂)が好ましい。
【0045】
このようなエポキシ樹脂が前記弾性ポリマーで変性された変性エポキシ樹脂(A1−1)も、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0046】
変性エポキシ樹脂(A1−1)は、通常、分子中に2個以上のエポキシ基を有していてもよい。このような変性エポキシ樹脂のエポキシ当量は、エポキシ樹脂の種類にもよるが、例えば100〜1000g/eq、好ましくは120〜800g/eq、さらに好ましくは150〜600g/eq(特に200〜500g/eq)であってもよい。エポキシ当量が小さすぎると、繊維間を接着させる力が低下する虞があり、大きすぎると、ベルトの耐屈曲疲労性が低下する虞がある。
【0047】
なお、変性エポキシ樹脂の分子量[ポリマー型である場合には、平均分子量(質量または重量平均分子量など)]は、特に限定されず、例えば300〜3000程度の範囲から選択できる。なお、本発明では、重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)において、ポリスチレン換算で測定してもよい。
【0048】
なお、ゴム(NBR)変性エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、EPR−2000((株)ADEKA製)、EPR−4030((株)ADEKA製)、EPR−4033((株)ADEKA製)、EPB−13(日本曹達(株)製)などが挙げられる。
【0049】
(A1−2)硬化剤
硬化剤(A1−2)は、エポキシ樹脂の硬化剤として慣用的に利用されている硬化剤であってもよい。また、硬化剤は潜在性硬化剤であってもよい。
【0050】
これらの硬化剤のうち、取り扱い性などの点から、第3級アミン類が好ましい。第3級アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノールなどの脂肪族アミン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−1などの芳香環を有するアミンなどが挙げられる。これらの第3級アミン類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの第3級アミン類のうち、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの芳香環を有する第3級アミン類が特に好ましい。
【0051】
硬化剤の割合は、変性エポキシ樹脂100質量部に対して10質量部以下であってもよく、例えば1〜10質量部、好ましくは2〜8質量部、さらに好ましくは3〜6質量部である。硬化剤の割合が少なすぎると、繊維間接着性が低下する虞があり、逆に多すぎると、エラストマーに対する接着性や心線の柔軟性が低下する虞がある。
【0052】
(A1−3)有機溶媒
第1処理剤(A1)は、有機溶媒(A1−3)を含むことにより、処理剤の粘度を低下できるとともに、変性エポキシ樹脂(A1−1)および硬化剤(A1−2)を有機溶媒中に溶解または均一に分散できるため、変性エポキシ樹脂(A1−1)および硬化剤(A1−2)を撚糸コードの繊維間に均一に含浸できる。
【0053】
有機溶媒(A1−3)としては、例えば、鎖状ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、環状ケトン類(シクロヘキサノンなど)、鎖状エーテル類(ジエチルエーテルなど)、環状エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、脂肪族炭化水素類(ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、脂肪族アルコール類(エタノール、イソプロパノール、ブタノールなど)、脂環族アルコール(シクロヘキサノールなど)、多価アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルなど)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)などが例示できる。
【0054】
これらの有機溶媒は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの有機溶媒のうち、トルエンなどの芳香族炭化水素類が汎用される。
【0055】
第1処理剤の固形分(有効成分)濃度は、例えば1〜70質量%、好ましくは3〜50質量%、さらに好ましくは4〜40質量%、最も好ましくは5〜30質量%であってもよい。固形分濃度が低すぎると、繊維間の接着力が低下する虞があり、高すぎると、繊維間への処理剤の含浸性が低下する虞がある。
【0056】
(A1−4)他の添加剤
第1処理剤(A1)は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の添加剤(A1−4)として、弾性ポリマーで変性されていない汎用のエポキシ樹脂(ビスフェノール型エポキシ樹脂など)、反応性希釈剤(硬化促進剤、低粘度のポリグリシジルエーテル、モノグリシジルエーテルなど)、慣用の添加剤(接着性改善剤、充填剤、老化防止剤、滑剤、粘着付与剤、安定剤、カップリング剤、可塑剤、着色剤など)などを含んでいてもよい。
【0057】
他の添加剤(A1−4)の割合は、第1処理剤(A1)全体に対して30質量%以下であってもよく、例えば0.01〜30質量%、好ましくは0.05〜20質量%、さらに好ましくは0.1〜10質量%である。
【0058】
第1処理剤(A1)は、環境負荷を低減できる点から、ハロゲンを実質的に含まないのが好ましく、ハロゲンを含まないのが特に好ましい。なお、本願において、「ハロゲンを実質的に含まない」とは、ハロゲンを意図して含有させないことを意味し、具体的には、不可避不純物として第1処理剤(A1)中0.5質量%以下であればハロゲンの混入を許容することを意味する。
【0059】
(A2)第1処理剤
第1処理剤(A2)は、レゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物(A2−1)、ラテックス(A2−2)および複数のカルボジイミド基を有するポリカルボジイミド樹脂を含む硬化剤(A2−3)に加えて、親水性溶媒(A2−4)をさらに含むのが好ましい。
【0060】
(A2−1)レゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物(RF縮合物)
第1処理剤(A2)は、レゾルシン(R)とホルムアルデヒド(F)との縮合物(RF縮合物)(A2−1)を含む。RF縮合物(A2−1)は、ラテックス、特に、カルボキシル変性ラテックスとの相溶性に優れ、柔軟な被膜を形成できる。
【0061】
RF縮合物(A2−1)としては、特に制限されず、例えば、ノボラック型、レゾール型、これらの組み合わせなどが例示できる。
【0062】
RF縮合物(A2−1)は、例えば、水および塩基触媒(水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属塩;アルカリ土類金属塩;アンモニアなど)の存在下、レゾルシンとホルムアルデヒドとを反応することにより得られる反応生成物(例えば、初期縮合物またはプレポリマー)であってもよい。なお、本発明の効果を阻害しない限り、レゾルシンと共に、フェノール、クレゾールなどの芳香族モノオールを併用してもよく、カテコール、ハイドロキノンなどの芳香族ジオールまたは芳香族ポリオールを併用してもよい。また、ホルムアルデヒドとしては、ホルムアルデヒドの縮合体(例えば、トリオキサン、パラホルムアルデヒドなど)を使用してもよく、ホルムアルデヒドの水溶液(ホルマリンなど)を使用してもよい。
【0063】
レゾルシンとホルムアルデヒドとの割合(使用割合)は、例えば、前者/後者(モル比)=1/0.1〜1/5程度の範囲から選択でき、レゾール型とノボラック型との混合物を生成する場合、両者のモル比は、例えば、前者/後者=1/0.3〜1/1、好ましくは1/0.4〜1/0.95、さらに好ましくは1/0.5〜1/0.9程度であってもよい。ホルムアルデヒドの割合が多すぎると、残留ホルムアルデヒドによる汚染の虞があり、逆に少なすぎると、レゾール型RF縮合物の含有量が不足して硬化物の機械的特性が低下する虞がある。
【0064】
RF縮合物(A2−1)の割合(ラテックスも含め、固形分換算の割合、以下同様)は、ラテックス(A2−2)100質量部に対して、例えば1〜100質量部、好ましくは3〜80質量部、さらに好ましくは5〜50質量部、より好ましくは10〜40質量部、最も好ましくは20〜30質量部である。RF縮合物(A2−1)の割合が多すぎると、生成する硬化物が剛直になり易く、柔軟性が低下する虞がある。一方、RF縮合物(A2−1)の割合が少なすぎると、硬化物の機械的特性が低下する虞がある。
【0065】
(A2−2)ラテックス
ラテックス(A2−2)は、慣用のゴム成分を利用できる。慣用のゴム成分としては、特に限定されず、例えば、ジエン系ゴム[天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBRラテックス)、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン三元共重合体ラテックス(VPラテックス)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBRラテックス)、水素化ニトリルゴム(H−NBRラテックス)など]、オレフィン系ゴム[例えば、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)などのエチレン−α−オレフィン系ゴム(エチレン−α−オレフィンエラストマー);ポリオクテニレンゴム;エチレン−酢酸ビニル共重合体ゴム(EAM)などのオレフィン−ビニルエステル共重合体など]、アクリル系ゴム、シリコーン系ゴム、ウレタン系ゴムなどが挙げられる。
【0066】
さらに、ラテックス(A2−2)は、これらのゴム成分がカルボキシル基で変性されたカルボキシル変性ラテックスであってもよい。前記ゴム成分にカルボキシル基を導入する方法は、特に限定されないが、通常、エチレン性不飽和結合を有する不飽和カルボン酸を共重合させる方法が利用される。このような不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの不飽和モノカルボン酸;フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、ブテントリカルボン酸などの不飽和多価カルボン酸;マレイン酸モノエチル、イタコン酸モノメチルなどの不飽和多価カルボン酸の部分エステル化物などが挙げられる。これらの不飽和カルボン酸は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0067】
具体的なカルボキシル変性ラテックスとしては、例えば、カルボキシル変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体ラテックス(XNBRラテックス)、カルボキシル変性水素化アクリロニトリル・ブタジエン共重合体ラテックス(XHNBRラテックス)、カルボキシル変性スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス(XSBRラテックス)、カルボキシル変性スチレン・ブタジエン・ビニルピリジン共重合体ラテックス(XVPラテックス)などが挙げられる。
【0068】
これらのラテックスは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、第1処理剤(A2)によって形成される被膜の強度を向上できるとともに、ラテックスの柔軟性も向上できる点から、カルボキシル変性ラテックスが好ましく、エラストマーとの接着性に優れる点から、XNBRラテックスが特に好ましい。
【0069】
(A2−3)硬化剤
硬化剤(A2−3)は、複数のカルボジイミド基を有するポリカルボジイミド樹脂を含む。特に、ラテックス(A2−2)がカルボキシル変性ラテックスである場合、硬化剤として前記ポリカルボジイミド樹脂を用いることにより、ラテックスのカルボキシル基とカルボジイミド基との架橋反応によりラテックスを架橋して補強し、生成する被膜を強靭化できる。さらに、心線がアラミド繊維を含む場合、前記ポリカルボジイミド樹脂とアラミド繊維との間では、以下の化学構造的な密着(化学結合や分子間相互作用)が作用し、アラミド繊維をより強固に固着できる。
【0070】
(1)ポリカルボジイミド樹脂のカルボジイミド基がアラミド繊維の残存アミノ基および/またはカルボキシル基と化学反応して結合する化学的密着
(2)ポリカルボジイミド樹脂のカルボジイミド基と、アラミド繊維のアミド結合との分子間相互作用(水素結合)による化学的密着。
【0071】
前記ポリカルボジイミド樹脂は、複数のカルボジイミド基(−N=C=N−)を有していればよく、特に限定されないが、例えば、下記式(I)で表される繰り返し単位を有する樹脂(またはオリゴマー)などが挙げられる。
【0072】
−(N=C=N−R)− (I)
(式中、Rは、置換基を有していてもよい二価の炭化水素基を示す)
【0073】
前記式(I)のRにおいて、二価の炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基などが含まれる。
【0074】
脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基が挙げられる。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、イソヘキシレン基、オクタメチレン基、イソオクチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基などのC
1−20アルキレン基などが挙げられる。アルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、アリレン基、メタリレン基、1−プロペニレン基、イソプロペニレン基、ブテニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基などのC
2−20アルケニレン基などが挙げられる。アルキニレン基としては、例えば、エチニレン基、プロピニレン基などのC
2−20アルキニレン基などが挙げられる。
【0075】
脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロドデカン−ジイル基などのC
3−12シクロアルキレン基;シクロヘキセニレン基などのC
3−12シクロアルケニレン基;ビシクロヘプタニレン基、ビシクロヘプテニレン基などのC
4−15架橋環式炭化水素基などが挙げられる。
【0076】
芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基などのC
6−14アリーレン基などが挙げられる。
【0077】
さらに、炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基から選択される二種以上を結合した基であってもよい。脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した基としては、例えば、シクロへキシレンメチレン基、メチレンシクロヘキシレン基、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイル基、ジシクロヘキシルプロパン−4,4’−ジイル基などのジシクロアルキルアルカン−ジイル基などが挙げられる。脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基としては、例えば、トリレン基、キシリレン基、ジフェニルメタン−4,4’−ジイル基、ジフェニルプロパン−4,4’−ジイル基などのジアリールアルカン−ジイル基などが挙げられる。
【0078】
これらの炭化水素基のうち、メチレン基やヘキサメチレン基などのC
1−10アルキレン基、シクロヘキシレン基などのC
5−8シクロアルキレン基、フェニレン基などのC
6−10アリーレン基や、これらの炭化水素基の組み合わせ(例えば、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイル基などのC
1−10アルキレン基とC
5−8シクロアルキレン基との組み合わせなど)が好ましい。
【0079】
これらの炭化水素基の置換基としては、例えば、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのC
1−10アルキル基)、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、オキソ基、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基などのC
1−6アルコキシ基など)、アシル基、メルカプト基、スルホン酸(塩)基、アルキルチオ基、エポキシ基、シアノ基、リン酸基などが挙げられる。これらの置換基は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの置換基のうち、イソプロピル基などのC
1−4アルキル基や、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、スルホン酸(塩)基などの親水性基などが汎用される。
【0080】
なお、ポリカルボジイミド樹脂は、繰り返し単位を構成する基Rが同一の炭化水素基である単独重合体であってもよく、異なる炭化水素基である共重合体であってもよい。
【0081】
なお、ポリカルボジイミド樹脂は、後述する親水性溶媒(A2−4)(特に水)を含む第1処理剤(A2)中でミセルを形成できる樹脂が好ましい。
【0082】
ポリカルボジイミド樹脂は、通常、イソシアネート化合物の縮合により製造されるため、ポリカルボジイミド樹脂の末端基は、イソシアネート基であってもよく、さらにこのイソシアネート基の少なくとも一部を封鎖剤で封鎖された基であってもよい。封鎖剤としては、イソシアネート基との反応性基を有する化合物(アミンやアルコールなど)であればよいが、ポリカルボジイミド樹脂に親水性を付与できる点から、親水性基を有する封鎖剤が好ましい。このような封鎖剤としては、例えば、ジメチルアミノエタノールなどのジC
1−4アルキルアミノC
1−4アルカノール、ジメチルアミノプロピルアミンなどのジC
1−4アルキルアミノC
1−4アルキルアミン、ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウムなどのヒドロキシC
1−4アルカンスルホン酸塩、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのC
2−4アルキレングリコールモノC
1−4アルキルエーテルなどが挙げられる。
【0083】
これらのポリカルボジイミド樹脂のうち、親水性溶媒(A2−4)(特に水)を含む第1処理剤(A2)中での分散性に優れ、ミセルを形成できる点から、水性(水溶性または水分散性)ポリカルボジイミド樹脂が好ましい。水性ポリカルボジイミド樹脂としては、繰り返し単位が前記親水性基を有していてもよく、末端基が親水性基で封鎖されていてもよいが、カルボジイミド基の反応性に優れる点などから、末端基が親水性基で封鎖されたポリカルボジイミド樹脂であってもよい。ポリカルボジイミド樹脂として、水性ポリカルボジイミド樹脂を用いると、水性ポリカルボジイミド樹脂が、処理剤中でミセルを形成でき、カルボジイミド基の親水性溶媒中(特に水中)での反応性を抑制できる上に、乾燥により反応性が回復し、架橋剤として機能させることもできる。
【0084】
なお、ポリカルボジイミド樹脂が親水性基を有さない樹脂であっても、界面活性剤と組み合わせることにより第1処理剤中でミセルを形成できる。界面活性剤としては、慣用のアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などを利用できる。
【0085】
ポリカルボジイミド樹脂は、カルボキシル変性ラテックスのカルボキシル基との反応性を高め、効率良くカルボキシル変性ラテックスを架橋できる点から、分子内に所定の割合でカルボジイミド基を有するのが好ましい。詳しくは、ポリカルボジイミド樹脂のカルボジイミド基1モル当たりの化学式量(NCN当量)は600以下であってもよく、例えば200〜600、好ましくは250〜500、さらに好ましくは300〜450、最も好ましくは350〜450である。NCN当量が大きすぎると、カルボキシル変性ラテックスとの反応性が低下する虞がある。
【0086】
ポリカルボジイミド樹脂の重合度は、例えば2以上であればよく、例えば2〜100、好ましくは3〜50、さらに好ましくは5〜30、最も好ましくは6〜10である。
【0087】
ポリカルボジイミド樹脂としては、市販のポリカルボジイミド樹脂を利用でき、例えば、水性樹脂用架橋剤として市販されている日清紡ケミカル(株)製「カルボジライト(登録商標)」シリーズ(E−02、E−03A、E−05など)などを利用できる。
【0088】
硬化剤(A2−3)は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の慣用の硬化剤を含んでいてもよい。他の硬化剤としては、カルボキシル基と反応可能な基を複数有する硬化剤が好ましく、ポリイソシアネート類、ポリオール類、ポリアミン類などが挙げられる。これらのうち、処理剤の繊維間への浸透性に優れる点から、ポリイソシアネートのイソシアネート基をブロック剤でマスクし反応を抑制した化合物であるブロックイソシアネート(ブロックドポリイソシアネート)が好ましい。ブロックイソシアネートとしては、慣用のブロックイソシアネートを利用でき、脂肪族ポリイソシアネート又はその誘導体[例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)またはその三量体など]、芳香族ポリイソシアネート[トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)など]などが汎用される。ブロック剤(保護剤)としては、例えば、オキシム類やラクタム類などが汎用される。ブロックイソシアネートの解離温度は、第1処理剤での浸漬処理における温度(常温)を超え、かつ浸漬処理後の熱処理温度以下であればよいが、例えば80〜220℃、好ましくは100〜200℃、さらに好ましくは120〜180℃である。ブロックイソシアネートの割合は、ポリカルボジイミド樹脂100質量部に対して1000質量部以下であってもよく、例えば10〜500質量部、好ましくは30〜300質量部、さらに好ましくは50〜200質量部である。
【0089】
硬化剤(A2−3)全体に対して、ポリカルボジイミド樹脂の割合は、例えば10質量%以上であり、好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上(特に90質量%以上)であり、100質量%(ポリカルボジイミド樹脂のみ)であってもよい。
【0090】
硬化剤(A2−3)(特にポリカルボジイミド樹脂)の割合(固形分換算の割合)は、ラテックス(A2−2)(特にカルボキシル変性ラテックス)100質量部に対して0.1〜20質量部程度の範囲から選択でき、例えば0.2〜10質量部、好ましくは0.3〜8質量部、さらに好ましくは0.5〜5質量部、最も好ましくは0.8〜3質量部である。硬化剤(A2−3)の割合が少なすぎると、繊維間の固着力が低下する虞があり、多すぎると、柔軟性が低下する虞がある。
【0091】
(A2−4)親水性溶媒
本発明では、第1処理剤(A2)の溶媒が親水性溶媒(A2−4)であるため、有機溶媒(特に、疎水性溶媒)に比べて、環境に対する負荷が小さい。親水性溶媒(A2−4)としては、例えば、水、低級脂肪族アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノールなどのC
1−4アルキルアルコールなど)、アルキレングリコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールなど)、ケトン類(アセトンなど)などが挙げられる。これらの親水性溶媒は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、水を含む親水性溶媒が好ましく、水単独が特に好ましい。
【0092】
第1処理剤(A2)中の固形分(有効成分)濃度は、例えば1〜70質量%、好ましくは5〜60質量%、さらに好ましくは10〜50質量%、最も好ましくは15〜40質量%であってもよい。固形分濃度が低すぎると、繊維間を強固に接着できない虞があり、多すぎると、処理後の心線の表面に固形分のかたまりができる虞がある。
【0093】
(A2−5)他の添加剤
第1処理剤(A2)は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の添加剤(A2−5)として、反応性のバインダー樹脂(エポキシ化合物など)、有機溶媒(モノカルボジイミド化合物などの反応性希釈剤など)、慣用の添加剤(硬化促進剤、接着性改善剤、充填剤、老化防止剤、滑剤、粘着付与剤、安定剤、カップリング剤、可塑剤、着色剤など)などを含んでいてもよい。
【0094】
他の添加剤(A2−5)の割合は、第1処理剤(A2)全体に対して30質量%以下であってもよく、例えば0.01〜30質量%、好ましくは0.05〜20質量%、さらに好ましくは0.1〜10質量%である。
【0095】
第1処理剤(A2)は、環境負荷を低減できる点から、ハロゲンを実質的に含まないのが好ましく、ハロゲンを含まないのが特に好ましい。
【0096】
(処理方法)
第1処理剤の調製方法は、特に限定されず、第1処理剤(A1)および第1処理剤(A2)ともに、例えば、一括して攪拌混合することにより調製してもよく、分割して攪拌混合することにより調製してもよい。
【0097】
伝動ベルト用心線の未処理糸を第1処理剤で処理する方法としては、特に制限されず、例えば、噴霧、塗布、浸漬などが例示できる。これらの処理方法のうち、浸漬が汎用される。浸漬時間は、例えば1〜120秒、好ましくは10〜60秒、さらに好ましくは20〜40秒である。
【0098】
伝動ベルト用心線の未処理糸を第1処理剤で処理した後、必要に応じて乾燥してもよい。乾燥温度は、例えば100〜250℃程度の範囲から選択でき、第1処理剤(A1)の乾燥温度は、好ましくは150〜240℃、さらに好ましくは170〜210℃であってもよく、第1処理剤(A2)の乾燥温度は、好ましくは120〜200℃、さらに好ましくは130〜180℃であってもよい。乾燥時間は、例えば5秒〜10分、好ましくは10秒〜5分、さらに好ましくは20秒〜1分であってもよい。さらに、乾燥は、伝動ベルト用心線の未処理糸に対して張力を作用させて行ってもよい。張力は、例えば、5〜15N、好ましくは10〜15N程度であってもよい。張力の作用下で乾燥させると、伝動ベルト用心線の未処理糸に対して処理剤が馴染み易くなり、撚りムラを低減でき、撚りムラによって生じる撚糸コードの径のばらつきを小さくすることができる。
【0099】
第1処理剤により形成される被膜の平均厚みは、例えば0.001〜20μm程度の範囲から選択でき、第1処理剤(A1)により形成される被膜の平均厚みは、例えば0.001〜5μm、好ましくは0.01〜3μm、さらに好ましくは0.05〜2μmであってもよく、第1処理剤(A2)により形成される被膜の平均厚みは、例えば0.1〜15μm、好ましくは1〜12μm、さらに好ましくは5〜10μmである。厚みが薄すぎると、心線とエラストマーとの接着強度が低下する虞があり、厚すぎると、心線とエラストマーとのせん断接着強度が低下する虞がある。
【0100】
本願において、被膜の厚みは走査型電子顕微鏡を用いた方法により測定できる。具体的には、走査型電子顕微鏡を用いて、処理剤で処理した心線の処理コードの断面を観察し、任意の10点の被膜の厚みを測定し、平均値を求めることで測定できる。
【0101】
[第2処理工程]
第2処理工程では、第1処理糸が撚糸コードである場合、第2処理剤は、第1処理剤の被膜の上に被膜を形成し、撚糸コードの集束性および第1処理糸との密着性を向上するとともに、ベルトを構成するエラストマーとの接着性も向上できる。本発明では、第1処理剤と第2処理剤とを組み合わせる2浴処理であるため、心線とゴムとの弾性率の差をなだらかに繋ぐことができることが、接着力を向上できる1つの要因になっていると推定できる。
【0102】
(第2処理剤)
第2処理剤は、レゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物(B1)、未変性ラテックス(B2)および酸変性ジエン系重合体(B3)を含む。
【0103】
(B1)レゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物
レゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物(B1)は、好ましい態様も含め、第1処理剤(A2)のRF縮合物(A2−1)として例示されたRF縮合物から選択できる。
【0104】
RF縮合物(B1)の割合(固形分換算の割合)は、未変性ラテックス(B2)100質量部に対して、例えば1〜100質量部、好ましくは10〜80質量部、さらに好ましくは20〜70質量部、より好ましくは30〜60質量部、最も好ましくは40〜50質量部である。RF縮合物(B1)の割合が多すぎると、生成する硬化物が剛直になり易く、柔軟性が低下する虞がある。一方、RF縮合物(B1)の割合が少なすぎると、硬化物の機械的特性が低下する虞がある。
【0105】
(B2)未変性ラテックス
未変性ラテックス(B2)としては、第1処理剤(A2)のラテックス(A2−2)として例示された慣用のゴム成分を利用できる。前記ゴム成分は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。前記ゴム成分のうち、第1処理剤およびエラストマーとの接着性に優れる点から、ジエン系ゴムが好ましく、ビニルピリジン骨格を有するジエン系ゴムが特に好ましい。
【0106】
ビニルピリジン骨格を有するジエン系ゴムとしては、ブタジエンおよびビニルピリジンに加えて、慣用の共重合成分[スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなど]を含んでいてもよい。これらのうち、スチレンなどの芳香族ビニル系単量体が汎用される。すなわち、ビニルピリジン−ブタジエン系共重合体としては、例えば、ブタジエン−ビニルピリジン共重合体、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン三元共重合体(VPラテックス)などが汎用される。
【0107】
第2処理剤中において、RF縮合物(B1)および未変性ラテックス(B2)の合計濃度は5〜25質量%程度の範囲から選択できる。
【0108】
第1処理剤が第1処理剤(A1)である場合、第2処理剤中において、RF縮合物(B1)および未変性ラテックス(B2)の合計濃度(固形分換算の濃度)は、例えば7〜30質量%(例えば8〜25質量%)、好ましくは10〜25質量%、さらに好ましくは11〜20質量%(例えば11.5〜18質量%)、より好ましくは13〜20質量%、最も好ましくは15〜18質量%である。上記の合計濃度が低すぎると、接着性が低下する虞があり、逆に高すぎると、被膜が厚くなりすぎるためか、心線の接着処理中にローラーとの摩擦により被膜が剥がれて滓が発生し、処理の継続が困難となる虞がある。
【0109】
第1処理剤が第1処理剤(A2)である場合、第2処理剤中において、RF縮合物(B1)および未変性ラテックス(B2)の合計濃度(固形分換算の濃度)は、例えば5〜25質量%、好ましくは5.2〜15質量%、さらに好ましくは5.5〜10質量%、より好ましくは6〜8質量%、最も好ましくは6.5〜7質量%である。上記の合計濃度が低すぎると、接着性が低下する虞があり、逆に高すぎると、被膜が厚くなりすぎるためか、心線の接着処理中にローラーとの摩擦により被膜が剥がれて滓が発生し、処理の継続が困難となる虞がある。
【0110】
なお、詳細なメカニズムは不明であるが、第1処理剤(A1)よりも第1処理剤(A2)の方が第1処理糸に含まれる第1処理剤と第2処理剤との相互作用が強まるためか、第1処理剤(A2)は第1処理剤(A1)よりも接着力の向上効果が大きい。そのため、RF縮合物(B1)および未変性ラテックス(B2)の合計濃度について、第1処理剤(A2)は第1処理剤(A1)よりも低くても十分な接着力が得られ、合計濃度の下限値は5質量%まで下げることができ、材料コストを低減できる。さらに、第1処理剤(A2)は、第1処理剤、第2処理剤ともに親水性溶媒を使用でき、有機溶媒を使用しないため、環境負荷の低減効果も大きい。
【0111】
(B3)酸変性ジエン系重合体
第2処理剤は、RF縮合物(B1)および未変性ラテックス(B2)に加えて、酸変性ジエン系重合体(B3)をさらに含み、これらの成分を特定の割合で組み合わせることによって、前記第1処理糸(特に、第1処理剤で形成された被膜)との密着性を向上でき、かつベルトのエラストマーとの接着性も向上できる。
【0112】
酸変性ジエン系重合体(B3)は、カルボン酸または酸無水物で変性されたジエン系重合体であればよく、詳しくは、カルボキシル基および/または酸無水物基を有するジエン系重合体であればよい。酸による変性方法としては、ジエン系重合体の骨格にカルボキシル基および/または酸無水物基が導入されればよく、特に限定されないが、機械的特性などの点から、カルボキシル基および/または酸無水物基を有する単量体を共重合により導入する方法が好ましい。共重合の形態としては、ランダム共重合、ブロック共重合などであってもよいが、エラストマーとの接着性を向上できる点から、グラフト共重合が好ましい。
【0113】
ジエン系重合体としては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体などが挙げられる。これらのジエン系重合体は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ブタジエン単位を含むポリブタジエン系重合体が好ましく、ポリブタジエン(1,4−ブタジエンホモポリマー)が特に好ましい。
【0114】
カルボキシル基および/または酸無水物基を有する単量体としては、例えば、不飽和モノカルボン酸[例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、アンゲリカ酸など]、不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物[例えば、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)シトラコン酸、(無水)イタコン酸、メサコン酸など]などが挙げられる。これらの単量体は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの単量体のうち、接着性を向上できる点から(メタ)アクリル酸などの不飽和モノカルボン酸、(無水)マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物が好ましく、(無水)マレイン酸が特に好ましい。また、ジカルボン酸で変性されたジエン系重合体は、無水カルボン酸で変性されたジエン系重合体の酸無水物基を開環して得られた重合体であってもよい。さらに、カルボキシル基は、アルカリ(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属や、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属など)で中和された塩の形態であってもよい。
【0115】
前記単量体(酸変性ジエン系重合体中での単量体単位)の割合は、ジエン系重合体1モルに対して1モル以上であればよく、例えば1〜30モル、好ましくは3〜25モル、さらに好ましくは5〜20モル、より好ましくは7〜15モル、最も好ましくは9〜13モルである。前記単量体の割合が少なすぎると、エラストマーとの接着性が低下する虞がある。
【0116】
酸変性ジエン系重合体(B3)の酸価は10mgKOH/g以上であってもよく、例えば10〜500mgKOH/g、好ましくは20〜300mgKOH/g、さらに好ましくは30〜200mgKOH/g、最も好ましくは35〜150mgKOH/gである。酸価が低すぎると、エラストマーとの接着性が低下する虞がある。
【0117】
酸変性ジエン系重合体(B3)の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)において、ポリスチレン換算で、例えば1000〜300000、好ましくは1500〜10000、さらに好ましくは2000〜10000、より好ましくは3000〜8000、最も好ましくは4000〜6000である。酸変性ジエン系重合体の分子量が小さすぎると、エラストマーとの接着性が低下する虞があり、逆に大きすぎると、機械的特性が低下する虞がある。
【0118】
酸変性ジエン系重合体(B3)としては、(無水)マレイン変性ジエン系重合体が好ましく、(無水)マレイン酸ポリブタジエンがさらに好ましく、マレイン酸変性ポリブタジエンが最も好ましい。
【0119】
第2処理剤中において、酸変性ジエン系重合体(B3)の濃度は1〜15質量%程度の範囲から選択できる。
【0120】
第1処理剤が第1処理剤(A1)である場合、第2処理剤中において、酸変性ジエン系重合体(B3)の濃度(固形分換算の濃度)は、例えば2.5〜15質量%、好ましくは3〜10質量%、さらに好ましくは3.5〜10質量%、より好ましくは3.5〜8質量%、最も好ましくは4〜5質量%である。酸変性ジエン系重合体(B3)の濃度が低すぎると、接着性が低下する虞があり、逆に高すぎると、被膜が厚くなりすぎるためか、心線の接着処理中にローラーとの摩擦により被膜が剥がれて滓が発生し、処理の継続が困難となる虞がある。
【0121】
第1処理剤が第1処理剤(A2)である場合、第2処理剤中において、酸変性ジエン系重合体(B3)の濃度(固形分換算の濃度)は、例えば1〜15質量%、好ましくは3〜14質量%、さらに好ましくは5〜13質量%、より好ましくは8〜12質量%、最も好ましくは9〜11質量%である。酸変性ジエン系重合体(B3)の濃度が低すぎると、接着性が低下する虞があり、逆に高すぎると、被膜が厚くなりすぎるためか、心線の接着処理中にローラーとの摩擦により被膜が剥がれて滓が発生し、処理の継続が困難となる虞がある。
【0122】
酸変性ジエン系重合体(B3)の質量は、縮合物(B1)および未変性ラテックス(B2)の合計質量に対して0.05〜2倍程度の範囲から選択できる。
【0123】
第1処理剤が第1処理剤(A1)である場合、酸変性ジエン系重合体(B3)の質量(固形分換算の質量)は、縮合物(B1)および未変性ラテックス(B2)の合計質量(固形分換算の質量)に対して、例えば0.05〜2倍、好ましくは0.05〜1.5倍、さらに好ましくは0.1〜1倍(例えば0.2〜0.9倍)、より好ましくは0.15〜0.5倍、最も好ましくは0.2〜0.3倍である。酸変性ジエン系重合体(B3)の比率が低すぎると、接着性が低下する虞があり、逆に高すぎると、被膜が厚くなりすぎるためか、心線の接着処理中にローラーとの摩擦により被膜が剥がれて滓が発生し、処理の継続が困難となる虞がある。
【0124】
第1処理剤が第1処理剤(A2)である場合、酸変性ジエン系重合体(B3)の質量(固形分換算の質量)は、縮合物(B1)および未変性ラテックス(B2)の合計質量(固形分換算の質量)に対して、例えば0.1〜2倍、好ましくは0.3〜1.8倍、さらに好ましくは0.5〜1.7倍、より好ましくは1〜1.6倍、最も好ましくは1.3〜1.5倍である。酸変性ジエン系重合体(B3)の比率が低すぎると、接着性が低下する虞があり、逆に高すぎると、被膜が厚くなりすぎるためか、心線の接着処理中にローラーとの摩擦により被膜が剥がれて滓が発生し、処理の継続が困難となる虞がある。
【0125】
(B4)親水性溶媒
本発明では、第2処理剤の溶媒が親水性溶媒(B4)であってもよく、有機溶媒(特に、疎水性溶媒)に比べて、環境に対する負荷が小さい。親水性溶媒(B4)は、好ましい態様も含め、前記第1処理剤(A2)の親水性溶媒(A2−4)として例示された親水性溶媒から選択できる。
【0126】
第2処理剤中の固形分(有効成分)濃度は、例えば1〜70質量%、好ましくは5〜60質量%、さらに好ましくは10〜50質量%、最も好ましくは15〜40質量%であってもよい。固形分濃度が低すぎると、接着性が低下する虞があり、多すぎると、処理後の心線の表面に固形分のかたまりができる虞がある。
【0127】
(B5)他の添加剤
第2処理剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の添加剤(B5)として、反応性のバインダー樹脂(エポキシ化合物など)、慣用の添加剤(架橋剤、硬化促進剤、共架橋剤、接着性改善剤、充填剤、老化防止剤、滑剤、粘着付与剤、安定剤、カップリング剤、可塑剤、着色剤など)などを含んでいてもよい。
【0128】
他の添加剤(B5)の割合は、第2処理剤全体に対して30質量%以下であってもよく、例えば0.01〜30質量%、好ましくは0.05〜20質量%、さらに好ましくは0.1〜10質量%である。
【0129】
第2処理剤は、環境負荷を低減できる点から、ハロゲンを実質的に含まないのが好ましく、ハロゲンを含まないのが特に好ましい。
【0130】
(処理方法)
第2処理剤の調製方法は、特に限定されず、例えば、一括して攪拌混合することにより調製してもよく、分割して攪拌混合することにより調製してもよい。
【0131】
第1処理糸を第2処理剤で処理する方法としては、特に制限されず、例えば、噴霧、塗布、浸漬などが例示できる。これらの処理方法のうち、浸漬が汎用される。浸漬時間は、例えば1〜120秒、好ましくは5〜60秒、さらに好ましくは10〜30秒である。
【0132】
第1処理糸を第2処理剤で処理した後、必要に応じて乾燥してもよい。乾燥温度は、例えば100〜250℃、好ましくは150〜240℃、さらに好ましくは170〜220℃である。乾燥時間は、例えば10秒〜10分、好ましくは30秒〜5分、さらに好ましくは1〜3分である。さらに、乾燥は、第1処理糸に対して張力を作用させて行ってもよい。張力は、例えば、5〜15N、好ましくは10〜15N程度であってもよい。張力の作用下で乾燥させると、第1処理糸に対して処理剤が馴染み易くなり、撚りムラを低減でき、撚りムラによって生じる撚糸コードの径のばらつきを小さくすることができる。
【0133】
第2処理剤により形成される被膜の平均厚みは、例えば0.05〜30μm、好ましくは0.1〜10μm、さらに好ましくは0.3〜5μm、より好ましくは1〜4.5μm、最も好ましくは3〜4μmである。第2処理剤により形成される被膜の厚みが薄すぎると、心線とエラストマーとの接着強度が低下する虞があり、厚すぎると、心線とエラストマーとのせん断接着強度が低下する虞がある。
【0134】
本発明の製造方法は、前記第1処理工程および第2処理工程を含んでいればよく、ゴム糊によってオーバーコート処理する工程を含まないのが好ましい。本発明の製造方法は、工数の増大や、有機溶媒の使用による環境負荷増大を招くオーバーコート処理する工程を含んでいなくても、心線とエラストマーとの接着性を向上できるため、工数と環境負荷を低減することができる。
【0135】
<伝動ベルト用心線>
本発明の製造方法によって得られた伝動ベルト用心線は、前記製造方法により、表面および繊維間に樹脂成分が付与された伝動ベルト用心線であり、表面および繊維間に、少なくとも樹脂成分(A)と、レゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物(B1)、未変性ラテックス(B2)および酸変性ジエン系重合体(B3)とを含む。
【0136】
本発明の製造方法によって得られた心線は、伝動ベルト用途に適しており、通常、伝動ベルトのゴム層と接触して利用され、該ゴム層に埋設して利用されるのが好ましい。なお、ゴム層は、エラストマーを含むゴム組成物で形成されていればよく、伝動ベルトの用途などに応じて適宜選択でき、例えば、ローエッジコグドVベルトでは、ゴム組成物で形成された接着ゴム層であってもよい。
【0137】
エラストマーとしては、加硫または架橋可能なゴムを用いてよく、例えば、ジエン系ゴム[天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリルゴム)、水素化ニトリルゴムなど]、エチレン−α−オレフィンエラストマー、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。これらのエラストマーは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0138】
これらのうち、耐オゾン性、耐熱性、耐寒性、耐候性に優れ、ベルト重量を低減できる点から、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)などのエチレン−α−オレフィンエラストマーが好ましく、EPDMが特に好ましい。本発明では、エラストマーがエチレン−α−オレフィンエラストマーであっても、ゴム層と心線との接着性を向上できる。
【0139】
EPDMにおいて、エチレンとプロピレンとの割合(質量比)は、前者/後者=35/65〜90/10、好ましくは40/60〜80/20、さらに好ましくは45/55〜70/30、最も好ましくは50/50〜60/40である。
【0140】
エチレン−α−オレフィンエラストマー(特に、EPDMなどのエチレン−α−オレフィン−ジエン三元共重合体ゴム)のジエン含量は10質量%以下であってもよく、例えば0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜8質量%、さらに好ましくは1〜7質量%、最も好ましくは2〜6質量%である。ジエン含量が多すぎると、耐熱性が低下する虞がある。
【0141】
なお、本願において、ジエン含量は、エチレン−α−オレフィンエラストマーを構成する全単位中のジエンモノマー単位の質量割合を意味し、慣用の方法により測定できるが、モノマー比であってもよい。
【0142】
エラストマーがエチレン−α−オレフィンエラストマーを含む場合、エラストマー中のエチレン−α−オレフィンエラストマーの割合は50質量%以上(特に80〜100質量%程度)であってもよく、100質量%(エチレン−α−オレフィンエラストマーのみ)が特に好ましい。
【0143】
ゴム組成物は、エラストマーに加えて、慣用の加硫剤または架橋剤を含んでいてもよい。エラストマーがエチレン−α−オレフィンエラストマーである場合、架橋剤は、有機過酸化物であってもよい。
【0144】
有機過酸化物としては、例えば、ジアシルパーオキサイド(ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイドなど)、パーオキシケタール[1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタンなど]、アルキルパーオキシエステル(t−ブチルパーオキシベンゾエートなど)、ジアルキルパーオキサイド[ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,3−ビス(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンなど]、パーオキシカーボネート(t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチル−ヘキシルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチル−ヘキシルカーボネートなど)などが挙げられる。これらの有機過酸化物は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、1,3−ビス(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどのジアルキルパーオキサイドが好ましい。
【0145】
加硫剤または架橋剤(特に、有機過酸化物)の割合は、エラストマー100質量部に対して、例えば0.1〜30質量部、好ましくは1〜20質量部、さらに好ましくは3〜15質量部、最も好ましくは5〜10質量部である。
【0146】
ゴム組成物は、慣用の補強剤をさらに含んでいてもよい。慣用の補強剤としては、例えば、カーボンブラック、シリカ、クレー、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、短繊維などが挙げられる。これらの補強剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0147】
補強剤の割合は、エラストマー100質量部に対して、例えば10〜200質量部、好ましくは20〜150質量部、さらに好ましくは30〜100質量部、最も好ましくは50〜80質量部である。
【0148】
本発明のゴム組成物は、ゴムの配合剤として利用される慣用の添加剤をさらに含んでいてもよい。慣用の添加剤としては、例えば、共架橋剤(ビスマレイミド類など)、加硫助剤または加硫促進剤(チウラム系促進剤など)、加硫遅延剤、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化鉄、酸化銅、酸化チタン、酸化アルミニウムなど)、軟化剤(パラフィンオイルや、ナフテン系オイル等のオイル類など)、加工剤または加工助剤(ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、ワックス、パラフィン、脂肪酸アマイドなど)、シランカップリング剤、老化防止剤(酸化防止剤、熱老化防止剤、屈曲き裂防止剤、オゾン劣化防止剤など)、着色剤、粘着付与剤、安定剤(紫外線吸収剤、熱安定剤など)、難燃剤、帯電防止剤などが挙げられる。これらの添加剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。なお、金属酸化物は架橋剤として作用してもよい。
【0149】
慣用の添加剤の合計割合は、エラストマー100質量部に対して、例えば5〜50質量部、好ましくは10〜30質量部、さらに好ましくは15〜25質量部である。
【0150】
伝動ベルト用心線は、前記の製造方法により得られるアラミド心線であってもよい。すなわち、伝動ベルト用アラミド心線は、第1処理剤および第2処理剤で処理(例えば、被覆または含浸)したアラミド系マルチフィラメント糸(例えば、撚糸コード)であってもよい。
【0151】
伝動ベルト用心線の平均径は、例えば、0.3〜3.6mm、好ましくは0.5〜3.1mm、さらに好ましくは0.6〜2.7mmである。
【0152】
<伝動ベルトおよびその製造方法>
伝動ベルトは、前記伝動ベルト用心線を含んでいればよく、通常、ベルトの長手方向(または周方向)に沿って、伝動ベルト用心線(特に、複数の伝動ベルト用心線)を埋設したゴム層を備えた伝動ベルトである場合が多い。隣接する心線の間隔(スピニングピッチ)は、例えば0.5〜4mm、好ましくは0.6〜2.5mm、さらに好ましくは0.7〜2.3mmである。
【0153】
代表的には、伝動ベルトは、接着ゴム層と、この接着ゴム層の一方の面に圧縮ゴム層とを有し、接着ゴム層が伝動ベルト用心線を埋設する伝動ベルトであってもよい。なお、接着ゴム層の他方の面には伸張ゴム層を設けてもよい。また、伝動ベルトは、ゴム層からなるベルト本体の一部(例えば、伸張ゴム層および/または圧縮ゴム層の表面)または全部を補強布で被覆(または積層)していてもよい。
【0154】
このような伝動ベルトとしては、ラップドVベルト、ローエッジVベルトなどのVベルト、Vリブドベルト、平ベルト、歯付ベルトなどが挙げられる。
【0155】
図1は、本発明の製造方法によって得られた伝動ベルト用心線を含む伝動ベルトの一例であるVリブドベルトを示す概略断面図である。この例では、ベルトの長手方向に伝動ベルト用心線1を埋設した接着ゴム層2と、この接着ゴム層の一方の面(内周面)に形成された圧縮ゴム層3と、前記接着ゴム層の他方の面(外周面または背面)に形成された伸張ゴム層4とを備えており、圧縮ゴム層3にV字状溝のリブ5が形成されている。圧縮ゴム層3には、伝動ベルトの耐側圧性を向上させるため、短繊維6が含有されている。なお、接着ゴム層2、圧縮ゴム層3および伸張ゴム層4は、エチレン−α−オレフィンエラストマーを含むゴム組成物などで形成されているのが好ましい。また、伸張ゴム層4の背面には、織物、不織布、編物などで形成された補強布を積層してもよい。
【0156】
図2は、本発明の製造方法によって得られた伝動ベルト用心線を含む伝動ベルトの他の例であるローエッジVベルトを示す概略断面図である。
図2に示すベルトは、圧縮ゴム層3にリブ5が形成されていない点および外周面から内周面に向かってベルト幅が小さくなる台形状である点を除き、
図1に示されるVリブドベルトと同様に構成されている。なお、圧縮ゴム層3には、ベルトの長手方向に沿って、複数のコグ(凸部)を所定の間隔をおいて形成してもよい。また、圧縮ゴム層3の面(内周面)および伸張ゴム層4の面(外周面)には、織物、不織布、編物などで形成された補強布を積層してもよい。
【0157】
これらの伝動ベルトは、例えば、円筒状の成形ドラムに、圧縮ゴム層用シートと第1接着ゴム層用シートとを順次巻き付け、この上に伝動ベルト用心線を螺旋状にスピニングし、さらに、第2接着ゴム層用シートと伸張ゴム層用シートとを順次巻き付けて積層体を形成し、この積層体を加硫して加硫ベルトスリーブを作製し、この円筒状の加硫ベルトスリーブを周方向に切断して形成される。この切断の際、周方向に配列又は配向した伝動ベルト用心線も切断され、伝動ベルト用心線が伝動ベルトの側面(切断面)に露出する。伝動ベルト用心線が伝動ベルトの側面に露出していると、心線の糸が解れ易くなり、伝動ベルトの側面から解れた糸を起点として、伝動ベルト用心線が伝動ベルトの側面から突出するポップアウトが生じ、ポップアウトした伝動ベルト用心線が回転するプーリの軸に巻き付いて伝動ベルトが破断するおそれがある。しかし、
図1および
図2に示す伝動ベルトでは、接着ゴム層に特定の処理剤で処理された伝動ベルト用心線を埋設しており、伝動ベルト用心線のフィラメント同士の結束性が高いため、伝動ベルトの側面で伝動ベルト用心線が解れることがなく、伝動ベルト用心線のポップアウトを有効に防止でき、伝動ベルトの耐久性を著しく向上できる。
【0158】
伝動ベルトは、前記Vリブドベルト及びローエッジVベルトに限定されず、歯付ベルト、平ベルトなどにも利用できる。
【0159】
伝動ベルトの製造方法としては、前記方法に限定されず、ベルトの種類に応じて、心線をベルトの長手方向に沿ってゴム層に埋設させる埋設工程を含む慣用の方法、例えば、一対の未加硫ゴムシート(未加硫の積層ゴムシートを含む)の間に、特定の処理剤で処理したアラミド心線を挟持させた円筒状の積層体を加硫して伝動ベルト前駆体(加硫ベルトスリーブ)を作製し、この円筒状の伝動ベルト前駆体を周方向にカッティングする方法などが挙げられる。本発明では、このようにカッティングしても、伝動ベルトの側面において、アラミド心線の毛羽立ちやホツレが生成しない。なお、一対の未加硫ゴムシートは、同一または異なってもよく、エチレン−α−オレフィンエラストマーを含むゴム組成物で形成されている場合が多い。
【実施例】
【0160】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0161】
実施例1〜9、参考例1〜4および比較例1〜5
(撚りコードの作製)
原糸(帝人(株)製「Twaron1014」、1680dtex、フィラメント数1000本)2本を引き揃え、撚り数15回/10cmでS方向に下撚りして下撚り糸を作製し、下撚り糸3本を引き揃え、撚り数20回/10cmでZ方向に上撚りして、下撚りと上撚りの撚り方向が逆である諸撚り糸を作製した。
【0162】
(第1処理剤A1の調製)
変性エポキシ樹脂、硬化剤およびトルエンを表1に示す割合で混合し、室温で10分間攪拌して、第1処理剤A1を調製した。
【0163】
【表1】
【0164】
表1の変性エポキシ樹脂、硬化剤の詳細は以下の通りである。
【0165】
変性エポキシ樹脂:NBR変性エポキシ樹脂、(株)ADEKA製「EPR−2000」
硬化剤:2,4,6,−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、大都産業(株)製「ダイトクラールHD−Acc43」。
【0166】
(第1処理剤A2の調製)
A液およびB液の混合液に、C液を表2に示す割合で混合し、室温で10分間攪拌して、第1処理剤A2を調製した。
【0167】
【表2】
【0168】
表2のラテックス1およびカルボジイミドの詳細は以下の通りである。
【0169】
ラテックス1:カルボキシル変性NBRラテックス、日本ゼオン(株)製「Nipol 1571CL」、有効成分38質量%
カルボジイミド:ポリカルボジイミド分散液、日清紡ケミカル(株)製「カルボジライトE−05」、有効成分40質量%、NCN当量310。
【0170】
(第2処理剤の調製)
D液とE液とを表3に示す割合で混合し、室温で10分間攪拌してRFL液を調製し、得られたRFL液にマレイン酸変性ポリブタジエン分散液および水を表6〜8に示す割合で加えて、室温で10分間攪拌し、第2処理剤を調製した。
【0171】
【表3】
【0172】
表3のラテックス2および表6〜8のマレイン酸変性ポリブタジエン分散液の詳細は以下の通りである。
【0173】
ラテックス2:スチレン・ブタジエン・ビニルピリジンラテックス、日本ゼオン(株)製「Nipol 2518FS」、有効成分40.5質量%
マレイン酸変性ポリブタジエン分散液:クレイ・バレー社製「Ricobond7004」、固形分濃度30質量%。
【0174】
(撚りコードの浸漬処理)
実施例1〜5、参考例1〜2および比較例1〜2については、得られた撚りコードについて、以下に示すように、第1処理剤A1および第2処理剤の2浴処理を順に行い、処理コードを得た。
【0175】
すなわち、未処理撚りコードを、第1処理剤A1に30秒間浸漬し、190℃、1分間の条件で乾燥処理し、第1処理糸を得た(第1処理工程)。次に、第1処理糸を、第2処理剤に15秒間浸漬し、200℃、2分間の条件で乾燥処理し、第2処理糸を得た(第2処理工程)。
【0176】
一方、実施例6〜9、参考例3〜4および比較例3〜4については、第1処理工程において、第1処理剤A1の代わりに第1処理剤A2を用いて、30秒間浸漬した後、150℃で1分間乾燥して第1処理糸を得る以外は、実施例1〜5、参考例1〜2および比較例1〜2と同様にして、第2処理糸を得た。
【0177】
なお、比較例5については、未処理撚りコードを、第1処理工程を経ることなく、第2処理剤に15秒間浸漬し、200℃、2分間の条件で乾燥処理し、第2処理糸を得た。
【0178】
(接着ゴム層用シートの調製)
接着ゴム層用シートは、表4に示す配合の組成物をバンバリーミキサーで混練し、カレンダーロールで、所定の厚みに圧延して作製した。
【0179】
【表4】
【0180】
表4の成分の詳細は以下の通りである。
【0181】
EPDM1:JSR(株)製「EP24」、エチレン含量54質量%、ジエン含量4.5質量%
カーボンブラックFEF:キャボットジャパン(株)製「N550」
シリカ:エボニックデグサジャパン製「ウルトラシルVN3」、BET比表面積175m
2/g
パラフィン系オイル:出光興産(株)製「ダイアナプロセスオイルPW−90」
老化防止剤:4,4'−ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、大内新興化学工業(株)製「ノクラックCD」
酸化亜鉛:堺化学工業(株)製「酸化亜鉛2種」
有機過酸化物:α,α'−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、日油(株)製「P−40MB(K)」、有効成分40質量%。
【0182】
(圧縮ゴム層および伸張ゴム層用シートの調製)
圧縮ゴム層および伸張ゴム層用シートは、表5に示す配合の組成物をバンバリーミキサーで混練し、カレンダーロールで、所定の厚みに圧延して作製した。
【0183】
【表5】
【0184】
表5の成分の詳細は以下の通りである。
【0185】
EPDM2:JSR(株)製「EP93」、エチレン含量55質量%、ジエン含量2.7質量%
ポリアミド短繊維:帝人(株)製「トワロン」、平均繊維長3mm
カーボンブラックHAF:キャボットジャパン(株)製「N330」
パラフィン系オイル:出光興産(株)製「ダイアナプロセスオイルPW−90」
老化防止剤:4,4'−ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、大内新興化学工業(株)製「ノクラックCD」
酸化亜鉛:堺化学工業(株)製「酸化亜鉛2種」
ステアリン酸:日油(株)製「ビーズステアリン酸つばき」
共架橋剤:N,N'−m−フェニレンジマレイミド、大内新興化学工業(株)製「バルノックPM」
有機過酸化物:α,α'−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、日油(株)製「P−40MB(K)」、有効成分40質量%。
【0186】
(伝動ベルトの作製)
補強布(厚み0.5mm、構成2/2綾織りのポリアミド帆布)と圧縮ゴム層用シート(未加硫ゴム)との積層体を、補強布を下にして歯部と溝部とを交互に配した平坦なコグ付き型に設置し、75℃でプレス加圧することによってコグ部を型付けしたコグパッド(完全には加硫しておらず、半加硫状態にある)を作製した。次に、このコグパッドの両端をコグ山部の頂部から垂直に切断した。
【0187】
円筒状の金型に歯部と溝部とを交互に配した内母型を被せ、この歯部と溝部に係合させてコグパッドを巻き付けてコグ山部の頂部でジョイントし、この巻き付けたコグパッドの上に接着ゴム層用シート(未加硫ゴム)を積層した後、心線を螺旋状にスピニングし、この上に接着ゴム層用シート(上記接着ゴム層用シートと同じ)と伸張ゴム層用シート(未加硫ゴム)を順次巻き付けて成形体を作製した。その後、歯部と溝部とを交互に配した外母型及びジャケットを被せて金型を加硫缶に設置し、温度170℃、時間40分で加硫してベルトスリーブを得た。このスリーブをカッターでV字状に切断して、ベルト内周側及び外周側にコグを有する変速ベルトであるローエッジダブルコグドVベルト(サイズ:上幅35.0mm、厚み(内周側コグ山部から外周側コグ山部までの距離)15.0mm、V角度28°、コグ高さ(内周側)6.0mm、コグ高さ(外周側)2.8mm、ベルト外周長さ1100mm)を作製した。
【0188】
(剥離試験)
外径150mmの円筒の外周に、処理コードを幅30mmとなるまで隙間なく螺旋状に巻きつけた。巻きつけた処理コードの上に粘着テープを貼り付けた後、長さ150mmとなるように切断した。この粘着テープと処理コードの積層体を、幅30mm、長さ150mm、深さ4mmの金型に、粘着テープの面が下になるように(金型底面に接するように)挿入した。そして、処理コードの上に圧縮ゴム層用の未加硫ゴムシートを、短繊維の長さ方向と処理コードの長さ方向とが平行となるように充填した。その上に補強布を配置し、面圧2MPa、温度170℃で40分間加硫した。加硫後の積層物を幅25mmとなるようにカットし、
図3に示すように、幅25mm、長さ150mm、厚み4mmの剥離試験用試料を作製した。
【0189】
図4に示すように、作製した剥離試験用試料の長さ方向の片方の端部において、処理コード12と加硫ゴム13の界面部分に刃物で切り込みを入れ、粘着テープ11と処理コード12とが積層された掴み部分Aと、加硫ゴム13と補強布14とが積層された掴み部分B(掴み部分の長さは約30mm)とに分離した。
【0190】
引張試験機((株)島津製作所製「AGS−J10kN」))の上側掴み具で掴み部分Aを、下側掴み具で掴み部分Bを把持し、上側掴み具を速度50mm/分で上昇させ、引張力を記録した。測定時間は、上側掴み具の移動距離および剥離部分が約100mmとなるように、2分間とした。試験温度(雰囲気温度)は23℃と120℃の2水準で行い、剥離試験用試料は試験温度で3時間以上放置した後に測定した。引張力は波状曲線を示すが、JIS K6274(2018)のE法に従ってその平均値を求めた。すなわち、試験開始時の初期上昇曲線を無視して、波状曲線の全てのピークの中の最大値および最小値の平均値を求めた。求めた平均値をサンプルの幅で除して、幅1cm当たりの剥離力とした。
【0191】
(耐久試験)
耐久試験は、
図5に示すように、駆動プーリ21(外径110mm、V溝上幅35mm、V溝角度26°)と、従動プーリ22(外径240mm、V溝上幅35mm、V溝角度26°)とを備える2軸走行試験機を用いて行った。各プーリにローエッジダブルコグドVベルト23を掛架し、駆動プーリの回転数を6000rpm、従動プーリの負荷を25kW、軸荷重(デッドウェイト)を2000Nとし、雰囲気温度80℃にて70時間走行させた。耐久試験後の圧縮ゴム側面(プーリと接する面)を目視観察して、心線とエラストマー間の剥離の有無を確認し、剥離が観察された場合は、剥離の長さを測定した。剥離の長さとは、ベルトの周長方向に延びる長さを意味する。剥離が複数箇所で確認された場合は、そのうちの最大の長さを剥離の長さとした。
【0192】
実施例、参考例および比較例の評価結果を表6〜8に示す。なお、表6〜8において、配合量、固形分および濃度は、いずれも質量基準である。
【0193】
【表6】
【0194】
【表7】
【0195】
【表8】
【0196】
表6は、第1処理工程として第1処理剤A1を適用した結果であり、表7は、第1処理工程として第1処理剤A2を適用した結果であり、表8は、未処理撚りコードを第1処理工程を経ずに第2処理工程に供した結果である。
【0197】
表6では、第2処理剤中のRFL濃度が8.0〜18.2質量%、マレイン酸変性ポリブタジエンの濃度は2.7〜13.2質量%である場合に、剥離力が高く、耐久試験後の剥離も無しまたは小さく、良好な結果を示した。なかでも、RFL濃度11.6〜17.0質量%、マレイン酸変性ポリブタジエンの濃度4.2〜9.6質量%の範囲にある実施例2および3が高い剥離力を示した。参考例1はマレイン酸変性ポリブタジエンの濃度が低い例、参考例2はマレイン酸変性ポリブタジエンおよびRFL濃度が低い例であるが、いずれも剥離力が低かった。また、RFLを含まない比較例1は、処理中に被膜が剥がれて滓が発生するため、処理の継続が不可能であった。マレイン酸変性ポリブタジエンを含まない比較例2は、剥離力が低く、耐久試験後の剥離の長さが長かった。
【0198】
表7では、第2処理剤中のRFL濃度が5.2〜15質量%、マレイン酸変性ポリブタジエンの濃度は1.2〜9.7質量%である場合に、剥離力が高く、耐久試験後の剥離も無しまたは小さく、良好な結果を示した。なかでも、RFL濃度6.7〜10.0質量%、マレイン酸変性ポリブタジエンの濃度6.2〜9.7質量%の範囲にある実施例7および8が高い剥離力を示した。参考例3はマレイン酸変性ポリブタジエンの濃度が低い例、参考例4はRFL濃度が低い例であるが、いずれも剥離力が低かった。また、比較例3は、第2処理液がRFLを含まない例であるが、剥離力がさらに低下した。さらに、比較例4は、第2処理液が酸変性ポリブタジエンを含まない例であるが、比較例3と同様の結果であった。
【0199】
第2処理剤はRFLとマレイン酸変性ポリブタジエンとを混合していることから、これらの比に着目すると、第1処理剤A1を用いた場合、マレイン酸変性ポリブタジエン/RFLの比(固形分の質量比)が0.17〜1.66の間で良好な結果が得られ、第1処理剤A2を用いた場合、前記比が0.08〜1.45の間で良好な結果が得られた。
【0200】
表8では、第1処理工程を経ずに第2処理工程に供した比較例5の結果が示されているが、比較例3および4の結果と同様に剥離力は向上しなかった。