【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.発行日 2019年12月20日 発行者 清水建設株式会社 刊行物 Soil Washing Pilot Test Evaluation Dioxin Remediation at Bien Hoa Airbase Area project(ページ1〜48) 2.開催日 2019年12月20日 集会名 SEMINAR ON TRIAL APPLICATION OF SHIMIZU CORPORATION’S SOIL WASHING TECHNOLOGY FOR TREATMENT OF AGENT ORANGE/DIOXIN−CONTAMINATED SOIL AT BIEN HOA AIRBASE
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の汚染土壌の洗浄処理システム(以下、単に洗浄処理システムともいう。)は、ダイオキシン類及び農薬から選ばれる1種以上の汚染物質を含む汚染土壌から汚染物質を分級し、剥離洗浄し、除去することにより、汚染土壌を洗浄するものである。
本発明の洗浄処理システムは、分級装置と、剥離洗浄装置と、除去装置と、上向流洗浄装置とを有する。
以下に、本発明の洗浄処理システムの第一実施形態について、
図1を参照して説明する。
【0012】
[第一実施形態]
≪洗浄処理システム≫
図1に示すように、本実施形態の洗浄処理システム1は、分級装置10と、剥離洗浄装置20と、除去装置30と、上向流洗浄装置40と、第一脱水装置51と、第二脱水装置52と、凝集沈殿装置60と、第一分離装置81と、第二分離装置82とを有する。分級装置10は、第一分級装置11と、第二分級装置12とから構成されている。
【0013】
第一分級装置11の二次側には、第二分級装置12が設けられている。
第二分級装置12の二次側には、剥離洗浄装置20及び第一分離装置81が設けられている。
剥離洗浄装置20の二次側には、除去装置30が設けられている。
除去装置30の二次側には、上向流洗浄装置40が設けられている。
上向流洗浄装置40の二次側には、第一脱水装置51及び第二分離装置82が設けられている。
凝集沈殿装置60は、除去装置30、第一脱水装置51、第一分離装置81及び第二分離装置82の二次側に設けられている。
凝集沈殿装置60の二次側には、第二脱水装置52が設けられている。
【0014】
第一分級装置11は、ダイオキシン類及び農薬から選ばれる1種以上の汚染物質を含む汚染土壌(以下、単に汚染土壌ともいう。)S0を、任意の粒子径超の粗粒子分S2と、粗粒子分S2を含まない土壌S1(以下、単に土壌S1ともいう。)と、に分級する装置である。土壌S1の粒子径は、粗粒子分S2の粒子径よりも小さい。
第一分級装置11は、公知の分級装置を用いることができる。第一分級装置11としては、例えば、所定の目開きの金網フルイを備える円形振動フルイ機、2段湿式フルイを備える湿式振動フルイ機等が挙げられる。2段湿式フルイは、所定の目開きの金網フルイを上段と下段の2段で備えるフルイである。上段のフルイの所定の目開きとしては、例えば、20〜50mmが挙げられる。下段のフルイの所定の目開きとしては、例えば、1〜4mmが挙げられる。
下段のフルイの所定の目開きは、除去する粗粒子分S2の粒子径に応じて適宜設定される。
本明細書において、「粒子径」とは、土壌を構成する土壌粒子の代表粒子径をいうものとする。代表粒子径D
Mは、フルイの目開きがD
LとD
Uのフルイによって分けられた土壌粒子の粒子径で、下記式(I)によって求められる。例えば、フルイの目開き38μmのフルイを通過する土壌粒子の代表粒子径D
Mは、D
L=0μm、D
U=38μmより、D
M=26.9μmとなる。
【0016】
ダイオキシン類は、ポリ塩化ジベンゾパラジオキシン(PCDDs)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDFs)及びダイオキシン様ポリ塩化ビフェニル(DL−PCBs)の総称をいう。DL−PCBsは、ダイオキシン類特有の毒性を有するポリ塩化ビフェニル(PCB)をいう。ダイオキシン類の毒性は、2,3,7,8−テトラクロロジベンゾ−1,4−ジオキシン(TCDD)の毒性を基準とする毒性の等量(TEQ)を用いて表される。
【0017】
農薬は、農作物等を害する菌、線虫、だに、昆虫、ねずみその他の動植物又はウイルスの防除に用いられる殺菌剤、殺虫剤その他の薬剤及び農作物等の生理機能の増進又は抑制に用いられる植物成長調整剤、発芽抑制剤その他の薬剤をいう。農薬としては、殺虫剤、殺菌剤、殺虫殺菌剤、除草剤、殺鼠剤、植物成長調整剤、誘引剤、展着剤、微生物剤等が挙げられる。
農薬に含まれる化学物質、すなわち汚染物質としては、例えば、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸(2,4,5−T)、3,6−ジクロロ−2−メトキシ安息香酸(ジカンバ)、1,2,3,4,5,6−ヘキサクロロシクロヘキサン(ベンゼンヘキサクロリド、BHC、HCH)、アルドリン、ディルドリン、エンドリン、クロルデン、ヘプタクロル、ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT)等が挙げられる。
本明細書において処理対象とする農薬としては、水に対する溶解度が農薬としては高く、凝集沈殿処理では対応できない、2,4−D、2,4,5−T、BHCが挙げられる。
農薬の水に対する溶解度は、2,4−Dが238mg/L(30℃)、2,4,5−Tが900mg/L(25℃)、BHCが7.3mg/L(25℃)である。これらの農薬の一部で水に溶解したものは、水中で溶存態として存在している。
なお、ダイオキシン類もごくわずかに水に溶解し、その溶解度は、2,3,7,8−TCDDで1.93×10
−5mg/L(25℃)である。
【0018】
第一分級装置11によれば、汚染土壌S0から任意の粒子径の粗粒子分S2を分離できる。
【0019】
第二分級装置12は、土壌S1を、任意の粒子径(分級径)未満の細粒子分S3と、任意の粒子径(分級径)以上の砂分S4とに分級する装置である。
第二分級装置12は、公知の分級装置を用いることができる。第二分級装置12としては、例えば、所定の目開きの金網フルイを備える円形振動フルイ機、2段湿式フルイを備える湿式振動フルイ機、土壌粒子の沈降速度差を利用した分級装置、遠心力を利用した分級装置等が挙げられる。土壌粒子の沈降速度差を利用した分級装置としては、エーキンス、ハイメッシュセパレーター等が挙げられる。遠心力を利用した分級装置としては、ハイドロサイクロン等が挙げられる。
遠心力を利用した分級装置は、遠心力を利用して、土壌S1と水W1とを混合したスラリーの分級を行う装置である。遠心力を利用した分級装置としては、例えば、円塔底部が円錐形状の容器からなり、スラリーを導入する上部流入口と、アンダーフロー(以下、UFともいう。)を取り出す下部流出口と、オーバーフロー(以下、OFともいう。)を取り出す上部流出口と、を備える装置が挙げられる。
なお、本明細書において「分級径」は、50%分級径ともいい、OFとUFとの分級の境界となる土壌粒子の粒子径を意味する。
任意の粒子径としては、例えば、30〜250μmが好ましく、50〜100μmがより好ましい。
【0020】
第二分級装置12によれば、汚染土壌S0から任意の粒子径範囲の砂分S4を得ることができる。任意の粒子径範囲としては、例えば、30〜4000μmが挙げられる。
【0021】
第一分離装置81は、第二分級装置12で分級された細粒子分S3から、所定の粒子径よりも大きな有機物や汚染粒子を分離して、除去する装置である。第一分離装置81としては、所定の目開きのメッシュ(網)を備える分離装置が挙げられる。このような分離装置としては、例えば、回転可能なメッシュベルトと掻き取り部とを備えるオーバーフロー脱水テーブル(OF脱水テーブル)が挙げられる。メッシュの所定の目開きとしては、例えば、50〜150μmが挙げられる。
【0022】
第一分離装置81によれば、細粒子分S3から所定の粒子径よりも大きな有機物や汚染粒子が除去された細粒子分S11が得られる。所定の粒子径としては、例えば、50〜150μmが挙げられる。
【0023】
剥離洗浄装置20は、砂分S4に剪断力を加えて、砂分S4の表面から汚染物質を含む汚染粒子(以下、「汚染相」ともいう。)を剥離する装置である。
剥離洗浄装置20としては、洗浄槽を備える洗浄装置、撹拌子を備える攪拌装置、攪拌槽と攪拌翼とを備えるスクラバー等が挙げられる。本明細書において、「スクラバー」とは、攪拌槽と攪拌翼とを備え、水の存在下で、攪拌翼を用いて機械的に混合、攪拌して、土壌粒子を相互に擦り合わせることができる装置をいうものとする。スクラバーによれば、土壌粒子(砂分S4)同士を衝突させることによって土壌粒子の表面を擦り洗いする(スクラブする)ことで表面に付着している汚染相を剥離させることができる。このため、剥離洗浄装置20としては、スクラバーを用いることが好ましい。
【0024】
剥離洗浄装置20によれば、砂分S4の表面から汚染相を剥離できる。すなわち、剥離洗浄装置20によれば、砂分S4の表面から汚染物質を剥離できる。
【0025】
除去装置30は、フローテーション薬剤を含む水の存在下で気泡を発生させ、剥離した汚染相を気泡に付着させてフロス(泡沫)F1とし、フロスF1を除去する除去装置である。
除去装置30としては、水槽とスクレーパーとを備えるフローテーション装置が挙げられる。スクレーパーは、水槽中に砂分S5と水W1とを含む液体の液面に浮遊したフロス(泡沫)F1を掻きとって除去するものである。フローテーション装置は、水W1を供給して、フロスF1をオーバーフローさせて除去するものでもよい。フローテーション装置によれば、剥離洗浄装置20で剥離した汚染相を効率よく除去できる。このため、除去装置30としては、フローテーション装置が好ましい。
【0026】
水処理を容易にする観点から、フローテーション薬剤としては、汚染物質を水に可溶化させない薬剤が好ましい。汚染物質を水に可溶化させないことで、汚染相をより多く気泡に付着させて、除去率をより高められる。加えて、水に可溶化する汚染物質の量を低減でき、水に可溶化した汚染物質を除去する吸着剤の使用量を大幅に低減できる。
フローテーション薬剤は、捕収剤を含む。
捕収剤は、対象の汚染相の表面に吸着して汚染粒子の粒子表面を疎水化する薬剤である。捕収剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、ジアルキルジチオリン酸塩、ザンセート、1級アミン塩、軽油、灯油、コールタール等が挙げられる。捕収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩(いわゆるアニオン系の界面活性剤)、1級アミン塩(いわゆるカチオン系の界面活性剤)、軽油、灯油は、後述する剥離洗浄工程では、剥離分散剤としても機能する。また、本明細書において、「界面活性剤」は、親水基と疎水基とを有する化合物をいい、汚染物質を水に可溶化させる目的で使用していない。
【0027】
フローテーション薬剤は、起泡剤、剥離分散剤、活性剤、抑制剤、pH調整剤を含んでもよい。
起泡剤は、界面活性が高く、特定の吸着特性を持たない界面活性剤である。起泡剤は、水中に安定な気泡を多数発生させる。起泡剤としては、例えば、4−メチル−2−ペンタノール(MIBC)、松油(pine oil)、2−エチル−1−ヘキサノール等が挙げられる。起泡剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
フローテーション薬剤に用いられる剥離分散剤は、砂分S4の表面から汚染相を剥離し、分散させる薬剤である。フローテーション薬剤に用いられる剥離分散剤としては、例えば、アルコール、アニオン系の界面活性剤(ただし、脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩を除く)、カチオン系の界面活性剤(ただし、1級アミン塩を除く)、塩化カルシウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、リグニンスルホン酸塩等が挙げられる。アルコールとしては、エタノール等のモノアルコールが挙げられる。フローテーション薬剤に用いられる剥離分散剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
活性剤(Activators)は、対象とする汚染相の浮遊性を高める薬剤である。汚染相の表面と捕収剤との親和性が低い場合、汚染相の浮遊性は低い。活性剤は、汚染相の表面に作用して、捕収剤との親和性を高め、汚染相の浮遊性を高める役割を果たす。活性剤としては、硫酸銅、塩化カルシウム、硫化ナトリウム等が挙げられる。活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
抑制剤(Depressants)は、鉱物の浮遊性を抑制する薬剤である。抑制剤としては、硫化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、タンニン、リグニン等が挙げられる。抑制剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
pH調整剤は、汚染相を剥離した砂分S5と水W1とを含む液体のpHを調整する薬剤である。pH調整剤としては、例えば、硫酸、水酸化ナトリウム、水酸カルシウム、炭酸ガス等が挙げられる。pH調整剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
除去装置30によれば、剥離した汚染相をフロスF1として除去できる。その結果、一次浄化土壌を含む第一のスラリーS6が得られる。
【0029】
上向流洗浄装置40は、除去装置30の後段に設けられ、第一のスラリーS6を上向流水中に供給して、一次浄化土壌を浄化する装置である。
上向流洗浄装置40としては、例えば、上向流水W2を供給することにより上向流を発生し、第一のスラリーS6中の粒子の沈降速度の差を利用して土壌中の大小様々な有機物や汚染粒子を分離できる比重選別装置が挙げられる。このような比重選別装置としては、例えば、アップフローカラムが挙げられる。
アップフローカラムでは、底部からの上向流によって第一のスラリーS6中の砂粒子は層膨張の状態となる。沈降速度が上向流速よりも小さな有機物や汚染粒子は浮上し、水とともにオーバーフローF2として流出する。オーバーフローF2は、第二分離装置82へと送られる。底部に堆積した砂粒子は、排出口から排出される。汚染物質を含む有機物や汚染粒子は、オーバーフローF2として除去されるため、一次浄化土壌はさらに浄化され、二次浄化土壌S7が得られる。
【0030】
上向流洗浄装置40によれば、一次浄化土壌はさらに浄化され、二次浄化土壌S7が得られる。
【0031】
第二分離装置82は、オーバーフローF2から、所定の粒子径よりも大きな有機物や汚染粒子を分離して、除去する装置である。第二分離装置82としては、第一分離装置81と同様の分離装置が挙げられる。
オーバーフローF2の水量は、細粒子分S3の水量よりも少ない。このため、第二分離装置82のテーブル面積(メッシュベルトの面積)は、第一分離装置81のテーブル面積よりも小さいことが好ましい。
第二分離装置82におけるメッシュの所定の目開きとしては、例えば、50〜150μmが挙げられる。第二分離装置82におけるメッシュの所定の目開きは、第一分離装置81におけるメッシュの所定の目開きと同じでもよく、異なっていてもよい。
【0032】
第二分離装置82によれば、オーバーフローF2から所定の粒子径よりも大きな有機物や汚染粒子が除去されたオーバーフローF3が得られる。所定の粒子径としては、例えば、50〜150μmが挙げられる。
【0033】
凝集沈殿装置60は、細粒子分S11とフロスF1とオーバーフローF3とを含む懸濁水に凝集剤を添加し、攪拌し、懸濁水中の細粒子分S11とフロスF1に付着した細かい汚染粒子と、上向流洗浄装置40から排出されたオーバーフローF3中の有機物や汚染粒子を大きな沈殿汚泥S9として沈殿させ、清澄な浄化処理水TWを分離する装置である。懸濁水は、第二分級装置12及び第一分離装置81で分離された細粒子分S11と、除去装置30で除去されたフロスF1に付着した細かい汚染粒子と、上向流洗浄装置40から排出され、第二分離装置82を通過したオーバーフローF3中の有機物や汚染粒子と、第一脱水装置51で除去された脱水処理水E1とを含む。
凝集沈殿装置60としては、水槽を備える容器、反応塔、上向流式フロック分離槽、傾斜板沈殿槽(シックナー)、及びこれらを組み合わせた装置等が挙げられる。
【0034】
凝集沈殿装置60によれば、浄化処理水TWと沈殿汚泥S9とを分離できる。浄化処理水TWは、貯水槽(不図示)に移送され、貯留される。
【0035】
第一脱水装置51は、上向流洗浄装置40で得られた二次浄化土壌S7を脱水して、洗浄砂S8を得る装置である。
第一脱水装置51としては、脱水フルイ機、脱水サイクロン等が挙げられる。
第一脱水装置51によれば、二次浄化土壌S7から水分を除去した洗浄砂S8が得られる。
【0036】
第二脱水装置52は、凝集沈殿装置60で得られた沈殿汚泥S9を脱水して、濃縮残渣C1を得る装置である。
濃縮残渣C1は、高濃度の汚染物質を含む。濃縮残渣C1としては、例えば、脱水ケーキが挙げられる。
第二脱水装置52としては、濾布等からなるフィルターとプレス機とを備える加圧式濾過装置(フィルタープレス機)等が挙げられる。
【0037】
≪汚染土壌の洗浄処理方法≫
本発明の汚染土壌の洗浄処理方法(以下、単に洗浄処理方法ともいう。)は、ダイオキシン類及び農薬から選ばれる1種以上の汚染物質を含む汚染土壌から、汚染物質を含む汚染粒子(以下、「汚染相」ともいう。例えば、細粒子分、砂分に付着した無機粒子、有機物等が汚染相に該当する。)を剥離し、これを除去することにより、汚染土壌を洗浄処理する方法である。
本発明の洗浄処理方法は、分級工程と、剥離洗浄工程と、除去工程と、上向流洗浄工程とを有する。
以下に、本発明の洗浄処理方法の一実施形態について、
図1及び
図2を参照して説明する。
【0038】
<分級工程>
分級工程P1は、ダイオキシン類及び農薬から選ばれる1種以上の汚染物質を含む汚染土壌S0から任意の粒子径範囲の砂分S4と任意の粒子径未満の細粒子分S3とを得る工程である。本実施形態では、分級工程P1は、第一分級工程P1−1と、第二分級工程P1−2とを有する。
第一分級工程P1−1は、任意の粒子径以下の土壌S1と、任意の粒子径超の粗粒子分S2とに分離する工程である。
任意の粒子径は、汚染土壌S0の汚染の程度や、第二分級装置12の許容サイズ等に応じて適宜設定される。任意の粒子径としては、例えば、1〜4mmが挙げられ、2mmが特に好ましい。
ダイオキシン類及び農薬から選ばれる1種以上の汚染物質は、所定の粒子径超の粗粒子分S2には吸着しにくい。このため、あらかじめ汚染土壌S0から粗粒子分S2を除去しておくと、汚染土壌S0の洗浄効率を向上しやすい。ここで、所定の粒子径としては、例えば、1〜4mmが挙げられ、2mmが特に好ましい。加えて、あらかじめ汚染土壌S0から粗粒子分S2を除去しておくと、第二分級装置12の負荷を軽減しやすい。
よって、分級工程P1は、第一分級工程P1−1と、第二分級工程P1−2とを有することが好ましい。
【0039】
第一分級工程P1−1では、まず、第一分級装置11に入れた汚染土壌S0に水W1を添加し、スラリー状にする。次に、汚染土壌S0を、任意の粒子径以下の土壌S1と、任意の粒子径超の粗粒子分S2とに篩い分ける。
一般に、粗粒子分S2の汚染物質濃度は低く、土壌環境基準値以下である。土壌環境基準値超の粗粒子分S2は、ログウォッシャー等の砂利洗浄装置(不図示)で洗浄して処理される。このように、粗粒子分S2は、再利用可能である。
【0040】
一般に、粒子径の小さい土壌ほど汚染物質濃度が高い。このため、土壌S1は、粗粒子分S2より汚染物質濃度が高い。土壌S1は、第二分級装置12へと送られる。
【0041】
第二分級工程P1−2は、土壌S1を、任意の粒子径(分級径)未満の細粒子分S3と、任意の粒子径(分級径)以上の砂分S4とに分離する工程である。
一般に、細粒子分S3の汚染物質濃度は高く、砂分S4の汚染物質濃度は低い。細粒子分S3を分離することで、回収された砂分S4の汚染物質濃度は大幅に低減される。
任意の粒子径としては、例えば、30〜250μmが好ましく、50〜100μmがより好ましい。
第二分級工程P1−2では、第二分級装置12によって、細粒子分S3を含むOFと、砂分S4を含むUFとに分級される。第二分級工程P1−2では、外部から第二分級装置12へと水W1が供給されてもよい。
【0042】
第二分級装置12として、ハイドロサイクロンを用いた場合、上部流入口から入ったスラリー状の土壌S1は、円筒容器の円周方向に高速で供給されることにより、旋回運動による遠心作用によって分級される。この時、スラリー中の粒子径の大きな粒子や比重の重い粒子は、遠心力により周壁に集まり、次第にUF出口(下部流出口)に向かい、排出される。粒子径の小さな粒子や比重の軽い粒子は、円筒容器の中央部を渦流となって上昇し、OF出口(上部流出口)から排出される。
任意の粒子径範囲は、ハイドロサイクロンを回転させるときのスラリー状の土壌S1の流量、供給圧力、ハイドロサイクロンの出口サイズ等により調整できる。
【0043】
砂分S4を含むUFは、剥離洗浄装置20へと送られる。細粒子分S3を含むOFは、第一分離装置81へと送られる。
【0044】
<剥離洗浄工程>
剥離洗浄工程P2は、砂分S4に剪断力を加えて、砂分S4の表面から汚染相を剥離する工程である。
UF中の砂分S4は、剥離洗浄装置20において、剥離分散剤によって表面処理される。この表面処理により、砂分S4の表面から汚染相が化学的に剥離しやすい状態となる。
剥離分散剤としては、例えば、アルコール、アニオン系の界面活性剤、カチオン系の界面活性剤、軽油、灯油、塩化カルシウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、リグニンスルホン酸塩等が挙げられる。剥離分散剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
次に、砂分S4に剪断力を加えて、砂分S4の表面から汚染相が物理的に剥離される。砂分S4に剪断力を加える方法としては、例えば、スクラビング(攪拌することによる擦り洗い)が挙げられる。
剥離洗浄工程P2は、攪拌槽と攪拌翼とを備えるスクラバーを用いて、砂分S4を攪拌して相互に擦り合わせる操作を有することが好ましい。剥離洗浄工程P2が、前記操作を有することで、砂分S4の表面から汚染相をより効果的に剥離できる。
剥離洗浄工程P2に要する時間は、2〜10分が好ましく、4〜6分がより好ましい。剥離洗浄工程P2に要する時間が上記下限値以上であると、砂分S4の表面から汚染相を充分に剥離しやすい。剥離洗浄工程P2に要する時間が上記上限値以下であると、作業効率を向上しやすい。
剥離洗浄工程P2で用いられる剥離分散剤の種類、添加量、pH条件等は、砂分S4に吸着している汚染物質の濃度、存在形態等に応じて、適宜調整できる。
【0046】
汚染相が剥離された砂分S5を含むUFは、除去装置30へと送られる。
【0047】
<除去工程>
除去工程P3は、フローテーション薬剤を含む水の存在下で気泡を発生させ、剥離した汚染相を気泡に付着させてフロスF1とし、フロスF1を除去して、一次浄化土壌を含む第一のスラリーS6を得る工程である。
除去工程P3では、砂分S5を含むスラリーは、除去装置30の水槽(フローテーションセル)に供給される。除去工程P3では、フローテーション薬剤として起泡剤が添加されフローテーションが行われる。フローテーションは、除去装置30の水槽内に任意の量の空気を導入する。導入された空気は、除去装置30の攪拌翼で急速に攪拌され、その過程で任意の大きさの気泡が発生する。フローテーション薬剤(捕収剤)の作用により、剥離洗浄工程P2で剥離された汚染相をその気泡に付着させる。
良好なフロスF1が形成される条件は、汚染物質の種類、フローテーション薬剤の種類、攪拌翼の回転速度、導入される空気量等によって異なる。攪拌翼の回転速度は、砂分S5が除去装置30の底部に沈殿せず、かつ、液面まで上昇しない範囲で流動するように調整することが好ましい。供給する空気の流量は、良好な大きさのフロスF1が形成されるように調整することが好ましい。本工程において、汚染物質を水に可溶化させないフローテーション薬剤を用いることで、汚染相をより多く気泡に付着させて、除去率をより高められる。加えて、水に可溶化する汚染物質の量を低減でき、水に可溶化した汚染物質を除去する吸着剤の使用量を大幅に低減できる。
【0048】
汚染相を付着した気泡は、フロスF1として液面へと上昇し、除去装置30のスクレーパーにより回収され、除去装置30の系外へと除去される。除去工程P3では、外部から除去装置30へと水W1が供給されてもよい。水W1を供給して、フロスF1をオーバーフローさせて除去してもよい。
除去工程P3に要する時間は、5〜20分が好ましく、10〜15分がより好ましい。除去工程P3に要する時間が上記下限値以上であると、フロスF1を充分に除去しやすい。除去工程P3に要する時間が上記上限値以下であると、作業効率を向上しやすい。
除去工程P3で用いられるフローテーション薬剤の種類、添加量、pH条件等は、砂分S5を含むスラリー中の汚染物質の濃度、スラリー濃度、スラリー流量、スラリーの滞留時間等に応じて、適宜調整できる。
【0049】
除去工程P3では、汚染相は、汚染物質を吸着していない土壌粒子との界面化学的性質の差を利用して選択的に分離され、気泡とともに液面まで上昇し、フロスF1として除去される。
【0050】
汚染相が除去され、洗浄された一次浄化土壌を含む第一のスラリーS6は、上向流洗浄装置40へと送られる。
フロスF1に付着した細かい汚染粒子は、細粒子分S11を含むOFとともに凝集沈殿装置60へと送られる。
剥離洗浄工程P2、除去工程P3を経て浄化された一次浄化土壌の汚染物質濃度は、分級工程P1後の砂分S4の汚染物質濃度に比べて、さらに一段と低減している。
【0051】
<上向流洗浄工程>
上向流洗浄工程P4は、除去工程P3の後に、第一のスラリーS6を上向流水中に供給して、一次浄化土壌を浄化する工程である。本実施形態は、上向流洗浄工程P4を有することにより、ダイオキシン類及び農薬から選ばれる1種以上の汚染物質をより確実に除去できる。
上向流洗浄工程P4では、上向流水W2を供給することにより上向流を発生する。第一のスラリーS6は、上向流洗浄装置40に設置された供給口から塔内へ供給される。上向流水W2は、上向流洗浄装置40の底部の注入口から注入板を経て塔内へ均一に注入され、塔内を上昇し、底部から所定の位置で越流(オーバーフロー)する。上向流速Vは、線速度(空塔速度)で表され、底部からの上向流水量と第一のスラリーS6中の水量との和を塔の断面積で割った値となる。この上向流速Vによって、第一のスラリーS6中の砂粒子は、砂濾過の逆流洗浄に似た層膨張の状態を示す。
沈降速度が上向流速Vよりも小さな粒子は浮上するという原理によって、有機物や汚染粒子は分離され、オーバーフローF2として流出する。上向流洗浄工程P4で分離された有機物と汚染粒子とを含むオーバーフローF2は、第二分離装置82へと流入する。
沈降速度が上向流速Vよりも大きな粒子は沈降し、上向流洗浄装置40の底部に堆積する。底部の排出口にはバルブが設置されており、砂粒子の堆積が一定量以上になると自動的に排出される。汚染物質が吸着した有機物や汚染粒子は、オーバーフローF2として除去されるため、一次浄化土壌はさらに浄化され、二次浄化土壌S7が得られる。本実施形態において、二次浄化土壌S7を浄化された土壌としてもよい。
【0052】
上向流速Vは、第一のスラリーS6中の砂粒子の粒径や密度、除去対象である有機物や汚染粒子の粒径や密度、上向流洗浄装置40の形状や大きさ、砂粒子の層膨張率等に応じて調整できる。
例えば、第一のスラリーS6中の汚染粒子の粒径が40〜60μm、上向流洗浄装置40が円筒形で、直径が1〜5m、高さが2〜6m、第一のスラリーS6を流出する位置が底部から0.5〜2mの場合、上向流速Vは、3〜5m/hrが好ましい。上向流速Vは、汚染粒子の粒径や密度に合わせて適宜調整できる。
上向流速Vが上記下限値以上であると、汚染物質が吸着した有機物や汚染粒子を充分に除去できる。上向流速Vが上記上限値以下であると、二次浄化土壌S7の産出量の低減を抑制できる。
【0053】
<その他の工程>
本実施形態の洗浄処理方法は、分級工程P1、剥離洗浄工程P2、除去工程P3、上向流洗浄工程P4以外のその他の工程を有していてもよい。その他の工程としては、第一分離工程P8−1、第二分離工程P8−2、第一脱水工程P5−1、第二脱水工程P5−2、凝集沈殿工程P6等が挙げられる。
【0054】
第一分離工程P8−1は、第二分級工程P1−2で分級された細粒子分S3から、所定の粒子径よりも大きな有機物や汚染粒子を分離して、除去する工程である。
所定の粒子径よりも大きく、かつ、軽質の有機物や汚染粒子は、浮遊しやすいため、後述する凝集沈殿工程P6でうまく除去できない場合がある。このため、本実施形態の洗浄処理方法は、第一分離工程P8−1でこれらの有機物や汚染粒子をあらかじめ除去しておくことが好ましい。ここで、「軽質」とは水の比重1よりも比重が小さいことをいう。軽質の有機物としては、例えば、植物片、炭殻、腐植質等が挙げられる。
第一分離工程P8−1では、例えば、OF脱水テーブルにより、所定の粒子径よりも大きく、かつ、軽質の有機物や汚染粒子を分離して、除去する。OF脱水テーブルは、所定の目開きのメッシュを回転可能に設置したメッシュベルトと、メッシュベルト上の平坦部(脱水テーブル)に濾し取られた有機物や汚染粒子を掻き取るための掻き取り部とを備える。OF脱水テーブルに送られた細粒子分S3を含むOFからは、メッシュベルトの篩目により、所定の粒子径よりも大きく、かつ、軽質の有機物や汚染粒子が脱水テーブル上に濾し取られる。これらの有機物や汚染粒子は、掻き取り棒等の掻き取り部によって掻き取られ、除去される。第一分離工程P8−1によれば、所定の粒子径よりも大きく、かつ、軽質の有機物や汚染粒子が除去されたOF(細粒子分S11を含むOF)が得られる。細粒子分S11を含むOFには、所定の粒子径よりも大きく、かつ、軽質の有機物や汚染粒子が含まれないため、凝集沈殿工程P6での除去効率をより高められる。所定の粒子径よりも大きく、かつ、軽質の有機物や汚染粒子は、高熱処理等の分解処理が可能な焼却施設や管理型の廃棄物処分場等に搬出される。
メッシュの所定の目開きとしては、例えば、50〜150μmが挙げられ、80〜120μmがより好ましい。所定の粒子径としては、例えば、50〜150μmが挙げられ、80〜120μmがより好ましい。
【0055】
細粒子分S11を含むOFは、所定の粒子径以下の汚染粒子を含み、フロスF1に付着した細かい汚染粒子、脱水処理水E1及び脱水処理水E2とともに、凝集沈殿装置60へと送られる。
【0056】
第二分離工程P8−2は、上向流洗浄工程P4で流出したオーバーフローF2から、所定の粒子径よりも大きな有機物や汚染粒子を分離して、除去する工程である。
所定の粒子径よりも大きく、かつ、軽質の有機物や汚染粒子は、浮遊しやすいため、後述する凝集沈殿工程P6でうまく除去できない場合がある。このため、本実施形態の洗浄処理方法は、第二分離工程P8−2でこれらの有機物や汚染粒子をあらかじめ除去しておくことが好ましい。
第二分離工程P8−2では、例えば、OF脱水テーブルにより、所定の粒子径よりも大きく、かつ、軽質の有機物や汚染粒子を分離して、除去する。OF脱水テーブルに送られたオーバーフローF2からは、メッシュベルトの篩目により、所定の粒子径よりも大きく、かつ、軽質の有機物や汚染粒子が脱水テーブル上に濾し取られる。これらの有機物や汚染粒子は、掻き取り棒等の掻き取り部によって掻き取られ、除去される。第二分離工程P8−2によれば、所定の粒子径よりも大きく、かつ、軽質の有機物や汚染粒子が除去されたオーバーフローF3が得られる。オーバーフローF3には、所定の粒子径よりも大きく、かつ、軽質の有機物や汚染粒子が含まれないため、凝集沈殿工程P6での除去効率をより高められる。所定の粒子径よりも大きく、かつ、軽質の有機物や汚染粒子は、高熱処理等の分解処理が可能な焼却施設や管理型の廃棄物処分場等に搬出される。
メッシュの所定の目開きとしては、例えば、50〜150μmが挙げられ、80〜120μmがより好ましい。所定の粒子径としては、例えば、50〜150μmが挙げられ、80〜120μmがより好ましい。
【0057】
オーバーフローF3は、所定の粒子径以下の汚染粒子を含み、細粒子分S11を含むOF、フロスF1に付着した細かい汚染粒子、脱水処理水E1及び脱水処理水E2とともに、凝集沈殿装置60へと送られる。
【0058】
第一脱水工程P5−1は、二次浄化土壌S7を脱水して、洗浄砂S8を得る工程である。第一脱水工程P5−1では、二次浄化土壌S7は、第一脱水装置51によって脱水され、洗浄砂S8として回収される。洗浄砂S8は、剥離洗浄工程P2、除去工程P3、上向流洗浄工程P4を経て得られるため、汚染物質の濃度が充分に低減されている。洗浄砂S8は、汚染物質の濃度が土壌環境基準値以下であれば、再利用できる。土壌環境基準値超であれば、再度の洗浄処理を行う。2回目の洗浄処理によっても洗浄砂S8の汚染物質の濃度が土壌環境基準値を超過する場合は、高熱処理等の分解処理が可能な焼却施設や管理型の廃棄物処分場等に搬出されて処理される。
脱水によって分離された水分は、脱水処理水E1として、細粒子分S11を含むOF、フロスF1に付着した細かい汚染粒子、上向流洗浄装置40で分離され、第二分離装置82を通過したオーバーフローF3とともに凝集沈殿装置60へと送られる。
第一脱水工程P5−1によれば、汚染物質が除去された二次浄化土壌S7から脱水処理水E1を分離した洗浄砂S8が得られる。
【0059】
凝集沈殿工程P6は、細粒子分S11とフロスF1とオーバーフローF3とを含む懸濁水に凝集剤を添加し、攪拌し、懸濁水中の細粒子分S11とフロスF1に付着した細かい汚染粒子とオーバーフローF3中の有機物や汚染粒子を大きな沈殿汚泥S9として沈殿させ、清澄な浄化処理水TWを分離する工程である。
凝集沈殿装置60には、細粒子分S11、フロスF1に付着していた細かい汚染粒子、上向流洗浄装置40で分離され、第二分離装置82を通過した有機物と汚染粒子を含むオーバーフローF3、脱水処理水E1及び脱水処理水E2を含む懸濁水が供給される。凝集沈殿工程P6では、懸濁水に凝集剤を添加して攪拌する。凝集剤を添加して攪拌することにより、懸濁水中の細粒子分S11と細かい有機物や汚染粒子とを大きな沈殿汚泥S9として沈殿させることができる。懸濁水は、沈殿汚泥S9を沈殿させることにより、清澄な浄化処理水TWとして再利用できる。浄化処理水TWは、貯水槽(不図示)に移送され、貯留される。
凝集剤は特に限定されず、無機凝集剤、高分子凝集剤、pH調整剤、凝集助剤等が挙げられる。
沈殿汚泥S9は、第二脱水装置52へと送られる。
【0060】
第二脱水工程P5−2は、沈殿汚泥S9を脱水する工程である。第二脱水工程P5−2では、沈殿汚泥S9は、第二脱水装置52によって脱水され、濃縮残渣C1となる。濃縮残渣C1は、高熱処理等の分解処理が可能な焼却施設や管理型の廃棄物処分場等に搬出されて処理される。
脱水によって分離された水分は、脱水処理水E2として、細粒子分S11を含むOF、フロスF1に付着した細かい汚染粒子、上向流洗浄装置40で分離され、第二分離装置82を通過した有機物と汚染粒子を含むオーバーフローF3とともに凝集沈殿装置60へと送られる。
第二脱水工程P5−2によれば、沈殿汚泥S9から脱水処理水E2を分離して、体積及び重量を大幅に低減した濃縮残渣C1が得られる。
【0061】
浄化処理水TWの一部又は全部は、第一分級装置11、砂利洗浄装置、第二分級装置12、除去装置30又は上向流洗浄装置40のいずれかの装置に適宜供給して、水W1又は上向流水W2として循環利用してもよい。浄化処理水TWの一部又は全部は、いずれか1つの装置に供給してもよいし、2つ以上の装置に供給してもよい。浄化処理水TWの一部又は全部は、貯水槽から、ポンプ等を用いて、各プロセスへ必要な量が供給される。
【0062】
本実施形態の洗浄処理システム1によれば、分級装置10により、汚染土壌S0から、汚染物質濃度が低い粗粒子分S2を分離できる。
分級装置10により、汚染土壌S0から任意の粒子径範囲の砂分S4を得ることができる。
剥離洗浄装置20により、砂分S4の表面から汚染相を剥離できる。
除去装置30により、剥離した汚染相を気泡に付着させてフロスF1とし、フロスF1を除去して、一次浄化土壌を含む第一のスラリーS6が得られる。
上向流洗浄装置40により、第一のスラリーS6に含まれる一次浄化土壌はさらに浄化され、二次浄化土壌S7が得られる。
剥離洗浄装置20と除去装置30と上向流洗浄装置40と第一脱水装置51とにより、汚染物質が除去された洗浄砂S8が得られる。
本実施形態の洗浄処理システム1は、上述の構成を有することにより、効率よく汚染物質を除去でき、汚染土壌からの汚染物質の除去率をより高められる。
加えて、本実施形態の洗浄処理システム1によれば、従来の分級洗浄(フルイ+サイクロン)や、分級洗浄に表面研磨を行った汚染土壌では不可能だった、汚染物質の高い除去率と洗浄砂の高い回収率の両立を実現できる。
さらに、本実施形態の洗浄処理システム1によれば、汚染物質を洗剤等によって水に可溶化させて、汚染土壌S0を洗浄する従来の技術に比べて、汚染物質を含む水の処理がはるかに容易になる。
【0063】
[第二実施形態]
≪洗浄処理システム≫
図3に、本発明の第二実施形態に係る汚染土壌の洗浄処理システムの模式図を示す。第一実施形態と同じ構成には、同じ符号を付して、その説明を省略する。
図3に示すように、本実施形態の洗浄処理システム2は、分級装置10と、剥離洗浄装置20と、除去装置30と、上向流洗浄装置42と、第一脱水装置53と、第二脱水装置54と、水処理装置70と、第一分離装置81と、第二分離装置82と、浄化処理水移送路90と、を有する。分級装置10は、第一分級装置11と、第二分級装置12とから構成されている。水処理装置70は、第一水処理部71と、第二水処理部72とから構成されている。第二水処理部72は、混合吸着槽73と、吸着剤凝集沈殿槽74と、凝集物移送部75とから構成されている。
【0064】
第二分級装置12の二次側には、剥離洗浄装置20と、第一分離装置81とが設けられている。
除去装置30の二次側には、上向流洗浄装置42が設けられている。
上向流洗浄装置42の二次側には、第一脱水装置53及び第二分離装置82が設けられている。
第一水処理部71は、除去装置30、第一脱水装置53、第一分離装置81及び第二分離装置82の二次側に設けられている。
第一水処理部71の二次側には、第二脱水装置54と、混合吸着槽73とが設けられている。
混合吸着槽73の二次側には、吸着剤凝集沈殿槽74が設けられている。
吸着剤凝集沈殿槽74と混合吸着槽73とは、混合液W4を移送する配管で接続されている。
吸着剤凝集沈殿槽74と第二脱水装置54とは、余剰吸着剤凝集物S12を移送する配管で接続されている。
凝集物移送部75は、吸着剤凝集沈殿槽74から混合吸着槽73へと戻る配管で構成されている。凝集物移送部75と混合液W4を移送する配管とは、異なる配管で構成されている。
浄化処理水移送路90は、吸着剤凝集沈殿槽74から浄化処理水TWを排出する配管と、第一分級装置11と第二分級装置12と除去装置30と上向流洗浄装置42と、をそれぞれ接続する配管で構成されている。
【0065】
上向流洗浄装置42は、除去装置30の後段に設けられ、第一のスラリーS6を上向流水中に供給して、一次浄化土壌を浄化する装置である。
上向流洗浄装置42では、底部からの上向流によって第一のスラリーS6中の砂粒子は層膨張の状態となる。沈降速度が上向流速よりも小さな有機物や汚染粒子は浮上し、水とともにオーバーフローF2として流出する。オーバーフローF2は、第二分離装置82へと送られる。底部に堆積した砂粒子は、排出口から排出される。汚染物質を含む有機物や汚染粒子は、オーバーフローF2として除去されるため、一次浄化土壌はさらに浄化され、二次浄化土壌S14が得られる。
【0066】
上向流洗浄装置42によれば、一次浄化土壌はさらに浄化され、二次浄化土壌S14が得られる。
加えて、上向流洗浄装置42には、吸着剤凝集沈殿槽74から浄化処理水TWの一部が供給される。浄化処理水TWには、微量の吸着剤が含まれる場合がある。上向流洗浄装置42によれば、浄化処理水TWに含まれる吸着剤を除去できる。
上向流洗浄装置42としては、上向流洗浄装置40と同様の比重選別装置が挙げられる。
【0067】
第一脱水装置53は、上向流洗浄装置42で得られた二次浄化土壌S14を脱水して、洗浄砂S15を得る装置である。
第一脱水装置53としては、第一脱水装置51と同様の装置が挙げられる。
第一脱水装置53によれば、二次浄化土壌S14から水分を除去した洗浄砂S15が得られる。
【0068】
第二脱水装置54は、第一水処理部71で除去された沈殿汚泥S10を脱水して、濃縮残渣C2を得る装置である。
濃縮残渣C2は、高濃度の汚染物質を含む。濃縮残渣C2としては、濃縮残渣C1と同様の脱水ケーキが挙げられる。
第二脱水装置54としては、第二脱水装置52と同様の加圧式濾過装置(フィルタープレス機)等が挙げられる。
【0069】
水処理装置70は、細粒子分S3とフロスF1とオーバーフローF2とを含む第二のスラリーに溶存する汚染物質を、吸着剤A1に吸着させて浄化処理水TWを得る装置である。浄化処理水TWは、貯水槽(不図示)に移送され、貯留される。
本実施形態の水処理装置70は、第一水処理部71と、第二水処理部72とから構成されている。
【0070】
第一水処理部71は、細粒子分S11とフロスF1とオーバーフローF3とを含む第二のスラリーから、汚染物質を含む懸濁粒子を沈殿させ分離して、凝集沈殿処理水W3を得る装置である。第二のスラリーは、第二分級装置12で分級され、かつ、第一分離装置81を通過した細粒子分S11を含むOFと、除去装置30で除去されたフロスF1に付着した細かい汚染物質の粒子(汚染粒子)と、上向流洗浄装置40で分離され、かつ、第二分離装置82を通過した有機物と汚染粒子を含むオーバーフローF3と、第一脱水装置53で分離された脱水処理水E1と、第二脱水装置54で分離された脱水処理水E2とを含む。懸濁粒子は、細粒子分S11と、汚染粒子とを含む。沈殿汚泥S10は、懸濁粒子が凝集して沈殿したものである。
第一水処理部71としては、第二のスラリーと凝集剤とを反応させる薬品反応部(不図示)を有する上向流式フロック分離槽、シックナー、及びこれらを組み合わせた装置等が挙げられる。薬品反応部は、上向流式フロック分離槽やシックナーの入り口部分に設けられるものである。
薬品反応部は、1つでもよく、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。薬品反応部を2つ以上組み合わせて用いると、第二のスラリーに含まれる汚染物質の濃度をより低減しやすい。洗浄処理システム2をコンパクトにする観点から、薬品反応部は、1つ又は2つが好ましい。
【0071】
第二水処理部72は、凝集沈殿処理水W3に吸着剤A1を接触させ、凝集沈殿処理水W3に溶存する汚染物質を吸着剤A1に吸着させて浄化処理水TWを得る装置である。
本実施形態の第二水処理部72は、混合吸着槽73と、吸着剤凝集沈殿槽74と、凝集物移送部75とから構成されている。
【0072】
混合吸着槽73は、凝集沈殿処理水W3と粒状の吸着剤A1とを混合して、混合液W4を得るものである。
混合吸着槽73としては、水槽と攪拌翼とを備える攪拌槽が挙げられる。攪拌槽は1つでもよく、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。攪拌槽を2つ以上組み合わせて用いると、凝集沈殿処理水W3に溶存する汚染物質をより確実に吸着剤A1に吸着させられる。洗浄処理システム2をコンパクトにする観点から、攪拌槽は1つ又は2つが好ましく、混合吸着槽73としては、1つ又は2つの攪拌槽を備える装置が好ましい。
【0073】
吸着剤凝集沈殿槽74は、混合液W4に凝集剤A2を添加して粒状の吸着剤A1を凝集物として分離し、浄化処理水TWを得るものである。粒状の吸着剤A1を凝集物として混合液W4から分離することで、混合液W4よりも汚染物質の濃度が大幅に低減した浄化処理水TWが得られる。
吸着剤凝集沈殿槽74としては、混合液W4と凝集剤A2とを反応させる薬品反応部を有する上向流式フロック分離槽、シックナー等が挙げられる。
【0074】
水処理装置70としては、上述した第一水処理部71と、第二水処理部72とを有する装置の他に、吸着剤A1を塔内に充填した吸着塔等が挙げられる。吸着塔によれば、凝集沈殿処理水W3よりも汚染物質の濃度が大幅に低減した浄化処理水TWが得られる。しかし、凝集沈殿処理水W3と吸着剤A1との接触効率を高め、凝集沈殿処理水W3に溶存する汚染物質をより効率よく除去できる観点から、水処理装置70は、第一水処理部71と、第二水処理部72とを有することが好ましい。
【0075】
第二水処理部72は、混合吸着槽73を有することで、凝集沈殿処理水W3と粒状の吸着剤A1とを混合した混合液W4が得られる。凝集沈殿処理水W3に溶存する汚染物質を吸着剤A1に吸着させる効率(吸着効率)を向上でき、汚染物質をより効率的に除去できる観点から、第二水処理部72は、混合吸着槽73を有することが好ましい。
第二水処理部72は、吸着剤凝集沈殿槽74を有することで、混合液W4から汚染物質を吸着した吸着剤を分離できる。その結果、混合液W4よりも汚染物質の濃度が大幅に低減した浄化処理水TWが得られる。このため、第二水処理部72は、吸着剤凝集沈殿槽74を有することが好ましい。
加えて、第二水処理部72は、混合吸着槽73と、吸着剤凝集沈殿槽74とを有することで、汚染物質の除去率をより一層高められる。このため、第二水処理部72は、混合吸着槽73と、吸着剤凝集沈殿槽74とを有することがより好ましい。
【0076】
水処理装置70は、凝集物を吸着剤凝集沈殿槽74から混合吸着槽73に移送する凝集物移送部75を有することが好ましい。水処理装置70が凝集物移送部75を有することで、混合吸着槽73で用いる吸着剤A1と後述する再利用吸着剤S13とを併用できる。吸着剤A1と再利用吸着剤S13とを併用することで、吸着剤A1の使用量を低減できる。吸着剤A1の使用量を低減することで、汚染土壌S0を洗浄処理する際に要するコストを大幅に低減できる。
凝集物移送部75は、凝集物を移送できる配管で構成されている。配管としては、引き抜きポンプを備える配管、循環ポンプを備える配管等が挙げられる。
【0077】
浄化処理水移送路90は、水処理装置70で得られた浄化処理水TWの一部又は全部を第一分級装置11、砂利洗浄装置(不図示)、第二分級装置12、除去装置30又は上向流洗浄装置42のいずれかの装置に移送する。浄化処理水移送路90は、浄化処理水TWの一部又は全部をいずれか1つの装置に移送してもよいし、2つ以上の装置に移送してもよい。
洗浄処理システム2が、浄化処理水移送路90を有することで、浄化処理水TWを再利用できる。浄化処理水TWを再利用することで、外部から導入する水W1の使用量を大幅に低減できる。このため、汚染土壌S0を洗浄処理する際に要するコストを大幅に低減できる。
【0078】
≪洗浄処理方法≫
本実施形態の洗浄処理方法は、分級工程と、剥離洗浄工程と、除去工程と、上向流洗浄工程とを有し、水処理工程をさらに有する。
以下に、本実施形態の洗浄処理方法について、
図3及び
図4を参照して説明する。
【0079】
<分級工程>
本実施形態の分級工程P1は、第一実施形態の分級工程P1と同様である。
【0080】
<剥離洗浄工程>
本実施形態の剥離洗浄工程P2は、第一実施形態の剥離洗浄工程P2と同様である。
【0081】
<除去工程>
本実施形態の除去工程P3は、第一実施形態の除去工程P3と同様である。
【0082】
<上向流洗浄工程>
本実施形態の上向流洗浄工程P4は、第一のスラリーS6に加えて、後述する水処理工程P7で得られる浄化処理水TWを上向流洗浄装置42に供給する。本実施形態は、浄化処理水TWを上向流洗浄装置42に供給することにより、浄化処理水TWに含まれ得る吸着剤を除去できる。吸着剤には、水中に溶解した汚染物質が吸着されているため、吸着剤を除去することにより、汚染物質をより確実に除去できる。
上向流洗浄工程P4では、上向流水W2を供給することにより上向流を発生する。第一のスラリーS6は、上向流洗浄装置42に設置された供給口から塔内へ供給される。浄化処理水TWの一部は、上向流水W2として、上向流洗浄装置42の底部の注入口から注入板を経て塔内へ均一に注入され、塔内を上昇し、底部から所定の位置で越流(オーバーフロー)する。上向流速Vは、線速度(空塔速度)で表され、底部からの上向流水量と第一のスラリーS6中の水量との和を塔の断面積で割った値となる。この上向流速Vによって、第一のスラリーS6中の砂粒子は、砂濾過の逆流洗浄に似た層膨張の状態を示す。
沈降速度が上向流速Vよりも小さな粒子は浮上するという原理によって、有機物や吸着剤を含む汚染粒子は分離され、オーバーフローF2として流出する。上向流洗浄工程P4で分離された有機物と汚染粒子とを含むオーバーフローF2は、第二分離装置82へと流入する。
沈降速度が上向流速Vよりも大きな粒子は沈降し、上向流洗浄装置42の底部に堆積する。底部の排出口にはバルブが設置されており、砂粒子の堆積が一定量以上になると自動的に排出される。汚染物質が吸着した有機物や汚染粒子は、オーバーフローF2として除去されるため、一次浄化土壌はさらに浄化され、二次浄化土壌S14が得られる。
【0083】
<水処理工程>
水処理工程P7は、細粒子分S11とフロスF1とオーバーフローF3とを含む第二のスラリーに溶存する汚染物質を、吸着剤A1に吸着させて浄化処理水TWを得る工程である。本実施形態の水処理工程P7は、第一水処理操作P7−1と、第二水処理操作P7−2とを有する。
【0084】
第一水処理操作P7−1は、細粒子分S11とフロスF1とオーバーフローF3とを含む第二のスラリーから、汚染物質を含む懸濁粒子を沈殿させ分離して、凝集沈殿処理水W3を得る操作である。
第一水処理操作P7−1では、細粒子分S11とフロスF1とオーバーフローF3とを含む第二のスラリーに凝集剤、pH調整剤を添加し、攪拌し、細粒子分S11とフロスF1に付着した細かい汚染粒子と、オーバーフローF3中の有機物や汚染粒子とを大きな粒子の懸濁粒子として沈殿させ、凝集沈殿処理水W3を得る。懸濁粒子は、沈殿汚泥S10として除去される。
本実施形態の洗浄処理方法は、第一水処理操作P7−1を有することで、第二のスラリーから沈殿汚泥S10を除去し、凝集沈殿処理水W3が得られる。凝集沈殿処理水W3は懸濁粒子等の固形分が除去されているため、第二水処理操作P7−2において、凝集沈殿処理水W3に溶存する汚染物質を吸着剤A1に吸着させる吸着効率を向上でき、汚染物質をより効率的に除去できる。
【0085】
凝集剤は特に限定されず、無機凝集剤、高分子凝集剤、凝集助剤等が挙げられる。無機凝集剤としては、例えば、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、鉄塩等が挙げられる。高分子凝集剤としては、例えば、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸塩等が挙げられる。凝集剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
pH調整剤は、上述したフローテーション薬剤で用いられるpH調整剤と同じでもよく、異なっていてもよい。
凝集沈殿処理水W3は、混合吸着槽73へと送られる。沈殿汚泥S10は、第二脱水装置54へと送られる。
【0086】
第二水処理操作P7−2は、凝集沈殿処理水W3に吸着剤A1を接触させ、凝集沈殿処理水W3に溶存する汚染物質を吸着剤A1に吸着させて浄化処理水TWを得る操作である。本実施形態の第二水処理操作P7−2は、混合吸着処理P7−2−1と、吸着剤凝集沈殿処理P7−2−2と、凝集物移送処理P7−2−3とを有する。
【0087】
混合吸着処理P7−2−1は、凝集沈殿処理水W3と粒状の吸着剤A1とを混合して混合液W4を得る処理である。混合吸着処理P7−2−1では、混合吸着槽73中の凝集沈殿処理水W3に粒状の吸着剤A1を添加し、攪拌して混合する。その結果、凝集沈殿処理水W3に溶存する汚染物質は、粒状の吸着剤A1に吸着される。凝集沈殿処理水W3に溶存する汚染物質の除去率を高める観点から、第二水処理操作P7−2は、混合吸着処理P7−2−1を有することが好ましい。
【0088】
吸着剤A1は、凝集沈殿処理水W3に溶存する汚染物質を吸着する薬剤である。
吸着剤A1としては、例えば、竹炭、ヤシ殻系の活性炭、石炭系の活性炭、粉末活性炭、粒状活性炭等の活性炭、ゼオライト、活性アルミナ、合成吸着剤等の他の吸着剤が挙げられる。吸着剤A1としては、汚染物質の吸着能に優れる観点から、活性炭が好ましく、細孔径が大きい点から、ヤシ殻系の活性炭、石炭系の活性炭がより好ましい。また、洗浄処理システム2の運転管理が容易な点から、粒状活性炭がより好ましい。
吸着剤A1は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本明細書において、吸着剤A1は吸着能が消費されていない吸着剤を指す。吸着能が消費されていない吸着剤としては、例えば、新品の吸着剤や未使用の吸着剤が挙げられる。後述する再利用吸着剤S13は、吸着能の一部が消費された吸着剤を指す。
【0089】
汚染土壌S0中の農薬は、経過年月、土壌環境、降雨等、種々の外的要因によって、劣化・分解が進行している場合が多い。このため、吸着剤A1の添加量と滞留時間は、実験的検討を経て適宜調整できる。
【0090】
混合吸着処理P7−2−1では、吸着剤A1と、再利用吸着剤S13とを併用することが好ましい。吸着剤A1と、再利用吸着剤S13とを併用することで、吸着剤A1の使用量を低減できる。吸着剤A1の使用量を低減することで、汚染土壌S0を洗浄処理する際に要するコストを大幅に低減できる。
混合吸着処理P7−2−1では、汚染物質の除去率をより高められる観点から、吸着剤A1を用いることが好ましい。
吸着剤A1と再利用吸着剤S13との混合比率は、凝集沈殿処理水W3に溶存する汚染物質の種類、濃度、存在形態等に応じて、適宜調整できる。
【0091】
混合吸着処理P7−2−1によれば、混合液W4が得られる。混合液W4は、吸着剤凝集沈殿槽74へと送られる。
【0092】
吸着剤凝集沈殿処理P7−2−2は、混合液W4に凝集剤A2を添加して、粒状の吸着剤A1を凝集物として分離し、浄化処理水TWを得る処理である。
凝集物を分離する方法は、特に限定されず、吸着剤凝集沈殿槽74の底に沈殿させてから、引き抜きポンプ等で凝集物を除去する方法が挙げられる。
吸着剤凝集沈殿処理P7−2−2で凝集させる吸着剤は、吸着剤A1の他、再利用吸着剤S13を含んでいてもよい。
吸着剤を凝集し、捕集しやすい観点から、凝集剤A2としては、上述した高分子凝集剤が好ましい。
吸着剤凝集沈殿槽74で分離された凝集物は、余剰吸着剤凝集物S12と、再利用吸着剤S13とに分けられる。凝集剤A2として、高分子凝集剤を用いた場合、凝集物の一部は、凝集物移送部75のポンプ(不図示)と配管の内部で高分子凝集剤の架橋作用が破壊され、元の吸着剤A1の粒子の状態に戻り、再利用吸着剤S13として混合吸着槽73へと移送される。
凝集物の残部は、余剰吸着剤凝集物S12として吸着剤凝集沈殿槽74の外部に排出される。余剰吸着剤凝集物S12は、第二脱水装置54へと移送され、沈殿汚泥S10とともに脱水される。
【0093】
汚染物質を吸着した吸着剤A1は、凝集物として除去される。その結果、浄化処理水TWは、凝集沈殿処理水W3よりも汚染物質の濃度が大幅に低減している。浄化処理水TWは、貯水槽(不図示)に移送され、貯留される。
浄化処理水TWの一部又は全部は、第一分級装置11、砂利洗浄装置、第二分級装置12、除去装置30又は上向流洗浄装置42のいずれかの装置に適宜供給して、水W1又は上向流水W2として循環利用してもよい。浄化処理水TWの一部又は全部は、いずれか1つの装置に供給してもよいし、2つ以上の装置に供給してもよい。浄化処理水TWの一部又は全部は、貯水槽から、ポンプ等を用いて、各プロセスへ必要な量が供給される。
凝集物として除去される吸着剤は、吸着剤A1の他、再利用吸着剤S13を含んでいてもよい。
【0094】
余剰吸着剤凝集物S12は、その全量を第二脱水装置54へ移送し、沈殿汚泥S10とともに脱水して濃縮残渣C2としてもよい。余剰吸着剤凝集物S12は、その一部を凝集物移送部75へ移送し、再利用吸着剤S13としてもよい。汚染土壌S0を洗浄処理する際に要するコストを低減する観点から、余剰吸着剤凝集物S12は、その一部を混合吸着処理P7−2−1で再利用吸着剤S13として再利用することが好ましい。このため、水処理工程P7は、吸着剤凝集沈殿処理P7−2−2で分離された凝集物を混合吸着槽73中の混合液W4に移送する凝集物移送処理P7−2−3を有することが好ましい。凝集物移送処理P7−2−3においては、凝集物は、吸着剤凝集沈殿槽74から、凝集物移送部75を経由して混合吸着槽73へと移送される。
【0095】
本実施形態の水処理工程P7は、凝集物を吸着剤凝集沈殿槽74から第一水処理部71に移送する凝集物移送操作を有していてもよい。水処理工程P7が、凝集物を第一水処理部71に移送する凝集物移送操作を有することで、第一水処理部71で吸着剤A1を用いる場合に、吸着剤A1と再利用吸着剤S13とを併用でき、汚染土壌S0を洗浄処理する際に要するコストを大幅に低減できる。このため、水処理工程P7は、凝集物を第一水処理部71に移送する凝集物移送操作を有することが好ましい。
【0096】
水処理装置70によれば、浄化処理水TWと余剰吸着剤凝集物S12とが得られる。
【0097】
<その他の工程>
本実施形態の洗浄処理方法は、分級工程P1、剥離洗浄工程P2、除去工程P3、上向流洗浄工程P4、水処理工程P7以外のその他の工程を有していてもよい。その他の工程としては、第一分離工程P8−1、第二分離工程P8−2、第一脱水工程P5−1、第二脱水工程P5−2、浄化処理水移送工程P9等が挙げられる。
【0098】
本実施形態の第一分離工程P8−1は、第一実施形態の第一分離工程P8−1と同様である。
本実施形態の第二分離工程P8−2は、第一実施形態の第二分離工程P8−2と同様である。
【0099】
第一脱水工程P5−1は、二次浄化土壌S14を脱水して、洗浄砂S15を得る工程である。第一脱水工程P5−1では、二次浄化土壌S14は、第一脱水装置53によって脱水され、洗浄砂S15として回収される。洗浄砂S15は、剥離洗浄工程P2、除去工程P3、上向流洗浄工程P4を経て得られるため、汚染物質の濃度が充分に低減されている。洗浄砂S15は、汚染物質の濃度が土壌環境基準値以下であれば、再利用でき、土壌環境基準値超であれば、再度の洗浄処理を行う。2回目の洗浄処理によっても洗浄砂S15の汚染物質の濃度が土壌環境基準値を超過する場合は、高熱処理等の分解処理が可能な焼却施設や管理型の廃棄物処分場等に搬出されて処理される。
脱水によって分離された水分は、脱水処理水E1として、細粒子分S11を含むOF、フロスF1に付着した細かい汚染粒子、上向流洗浄装置40で分離され、第二分離装置82を通過したオーバーフローF3とともに水処理装置70へと送られる。
第一脱水工程P5−1によれば、汚染物質が除去された二次浄化土壌S14から脱水処理水E1を分離した洗浄砂S15が得られる。
【0100】
第二脱水工程P5−2は、沈殿汚泥S10と余剰吸着剤凝集物S12とを脱水する工程である。第二脱水工程P5−2では、沈殿汚泥S10と余剰吸着剤凝集物S12とは、第二脱水装置54によって脱水され、濃縮残渣C2となる。濃縮残渣C2は、高熱処理等の分解処理が可能な焼却施設や管理型の廃棄物処分場等に搬出されて処理される。
脱水によって分離された水分は、脱水処理水E2として、細粒子分S11を含むOF、フロスF1に付着した細かい汚染粒子、オーバーフローF3中の有機物や汚染粒子及び脱水処理水E1とともに第一水処理部71へと送られる。
第二脱水工程P5−2によれば、沈殿汚泥S10及び余剰吸着剤凝集物S12から脱水処理水E2を分離して、体積及び重量を大幅に低減した濃縮残渣C2が得られる。
【0101】
浄化処理水移送工程P9は、浄化処理水TWの一部又は全部を、第一分級装置11、砂利洗浄装置(不図示)、第二分級装置12、除去装置30又は上向流洗浄装置42のいずれかの装置へと移送する工程である。浄化処理水移送工程P9では、浄化処理水移送路90を介して、浄化処理水TWの一部又は全部を、洗浄処理システム2の各プロセスへと移送する。浄化処理水移送工程P9では、浄化処理水TWの一部又は全部をいずれか1つの装置に移送してもよいし、2つ以上の装置に移送してもよい。
浄化処理水移送工程P9によれば、浄化処理水TWの一部又は全部を、洗浄処理システム2の各プロセスで再利用できる。
【0102】
本実施形態の洗浄処理システム2によれば、汚染土壌の洗浄処理に用いた水に溶出した溶存態の汚染物質を除去できる。
さらに、本実施形態の洗浄処理システム2によれば、浄化処理水TWを再利用できる。
【0103】
以上、本発明の汚染土壌の洗浄処理システム及び洗浄処理方法について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、洗浄処理システムでは、分級装置10は、一つの分級装置から構成されたものであってもよい。
剥離洗浄装置20と除去装置30とは、一つの装置が兼用する形態であってもよい。
【0104】
浄化処理水TWの一部又は全部を第一水処理部71、混合吸着槽73又は吸着剤凝集沈殿槽74のいずれかの装置に供給して再利用してもよい。
洗浄処理システムは、浄化処理水TWの一部又は全部をいずれか1つの装置に供給してもよいし、2つ以上の装置に供給してもよい。
【0105】
上述の実施形態では、細粒子分S11を含むOFと、フロスF1と、オーバーフローF3と、脱水処理水E1と、脱水処理水E2とを混合してから第一水処理部71に供給している。細粒子分S11を含むOFと、フロスF1と、オーバーフローF3と、脱水処理水E1と、脱水処理水E2とは、第一水処理部71に供給する前に混合してもよく、細粒子分S11を含むOF、フロスF1、オーバーフローF3、脱水処理水E1、脱水処理水E2を別々に第一水処理部71に供給し、第一水処理部71の内部で混合してもよい。
細粒子分S11を含むOFの供給のしやすさ、作業効率を高める観点から、細粒子分S11を含むOFと、フロスF1と、オーバーフローF3と、脱水処理水E1と、脱水処理水E2とは、第一水処理部71に供給する前に混合することが好ましい。
第二のスラリーに溶出した溶存態の汚染物質濃度が低い場合、第一水処理部71に吸着剤A1を投入してもよい。この場合、第二水処理部72を省略できる。
吸着剤A1の吸着能が高い場合、第一水処理部71に吸着剤A1を投入してもよい。この場合、第二水処理部72を省略できる。
吸着剤A1に対する汚染物質の吸着効率を高め、より確実に汚染物質を吸着剤A1に吸着させる観点から、洗浄処理システムは、第一水処理部71と、第二水処理部72とを有することが好ましい。
【実施例】
【0106】
以下に、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0107】
[実施例1〜26]
表1に示す規模の各装置を有する洗浄処理システム1を用いて、表2に示す汚染物質濃度の汚染土壌に対して洗浄処理試験を行った。なお、汚染物質として、農薬(2,4−D、2,4,5−T)が含まれていたが、低濃度であったため、評価の対象から除外した。すなわち、本実施例の汚染物質は、ダイオキシン類である。
日本やドイツにおけるダイオキシン類の環境基準は、1000pg−TEQ/g以下である。ベトナムにおいては、ダイオキシン類の環境基準は、土地利用用途によって異なり、住宅地では300pg−TEQ/g以下、公園・緑地利用では600pg−TEQ/g以下、商業用地あるいは工業用地では1200pg−TEQ/g以下である。
【0108】
【表1】
【0109】
汚染土壌(元土壌、フィード)の汚染物質濃度に応じてフィードを分類した。フィードは、4000pg−TEQ/g未満を低濃度領域(実施例1〜6)、4000pg−TEQ/g以上8000pg−TEQ/g未満を中濃度領域(実施例7〜14)、8000pg−TEQ/g以上16000pg−TEQ/g未満を高濃度領域(実施例15〜22)、16000pg−TEQ/g以上を高高濃度領域(実施例23〜26)とした。
【0110】
洗浄処理システム1を用いて得られた洗浄砂(洗浄土ともいう。)の汚染物質濃度(ダイオキシン類濃度)を測定した。ダイオキシン類濃度は、認定を受けた計量証明事業所(分析会社)において、フィード及び洗浄砂(洗浄土)に含まれるダイオキシン類を一連の抽出操作(ソックスレー抽出等)とクリーンアップ操作によって抽出し、高分解能ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)により測定した。汚染物質除去率(ダイオキシン類除去率)は、下記式(II)により算出した。結果を表2に示す。
【0111】
【数2】
【0112】
式(II)において、「除去率(%)」は、ダイオキシン類除去率を表す。「C
clean sand」は、洗浄砂(洗浄土)のダイオキシン類濃度(pg−TEQ/g)を表す。「C
feed soil」は、汚染土壌(元土壌)のダイオキシン類濃度(pg−TEQ/g)を表す。
【0113】
【表2】
【0114】
表2に示すように、低濃度領域のフィードに対しては、ベトナムにおける住宅地もしくは公園・緑地利用のダイオキシン類の環境基準を満足する洗浄砂が得られた。中濃度領域のフィードに対しては、ベトナムにおける住宅地もしくは公園・緑地利用のダイオキシン類の環境基準を満足する洗浄砂が得られた。高濃度領域のフィードに対しては、ベトナムにおける公園・緑地利用、商業用地あるいは工業用地のダイオキシン類の環境基準を満足する洗浄砂が得られた。高高濃度領域のフィードに対しては、ベトナムにおける商業用地あるいは工業用地のダイオキシン類の環境基準を満足する洗浄砂が得られた。
すなわち、最大20000pg−TEQ/gまでの汚染土壌に対して、ベトナムにおけるダイオキシン類の環境基準を満足する洗浄砂を産出できることが確認できた。
洗浄処理試験によって得られた処理水のダイオキシン類濃度を分析した結果、いずれの実施例においても水中のダイオキシン類濃度は、定量下限値未満であった。
加えて、本発明を適用した実施例1〜26において、93%以上の非常に高い汚染物質除去率が得られた。
本発明を適用することにより、ダイオキシン類及び農薬から選ばれる1種以上の汚染物質をより確実に除去できることが分かった。
ダイオキシン類及び農薬から選ばれる1種以上の汚染物質を含む汚染土壌(S0)から任意の粒子径範囲の砂分(S4)と任意の粒子径未満の細粒子分(S3)とを得る分級装置(10)と、砂分(S4)の表面から前記汚染物質を含む汚染粒子を剥離する剥離洗浄装置(20)と、フローテーション薬剤を含む水の存在下で気泡を発生させ、前記の剥離した汚染粒子を前記気泡に付着させてフロス(F1)とし、フロス(F1)を除去して、一次浄化土壌を含む第一のスラリー(S6)を得る除去装置(30)と、除去装置(30)の後段に設けられ、第一のスラリー(S6)を上向流水(W2)中に供給して、前記一次浄化土壌を浄化する上向流洗浄装置(40)と、を有する、汚染土壌の洗浄処理システム(1)。