(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853929
(24)【登録日】2021年3月17日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】LED駆動電源装置
(51)【国際特許分類】
H05B 45/30 20200101AFI20210329BHJP
【FI】
H05B45/30
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-237280(P2016-237280)
(22)【出願日】2016年12月7日
(65)【公開番号】特開2018-92851(P2018-92851A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2019年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】591264496
【氏名又は名称】日本▲まき▼線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130410
【弁理士】
【氏名又は名称】茅原 裕二
(72)【発明者】
【氏名】村井 雄三
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 啓二
(72)【発明者】
【氏名】杉木 拓
【審査官】
安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−081684(JP,A)
【文献】
特開平10−214732(JP,A)
【文献】
特開2005−252113(JP,A)
【文献】
特開平05−328716(JP,A)
【文献】
米国特許第06137391(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 45/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源からの電力を磁束制御トランスで変換してLED回路に供給するLED駆動電源装置であって、
前記磁束制御トランスは、磁性体からなる第一のコア及び第二のコアと、
前記第一のコア及び前記第二のコアの一次側に共通して巻き付けられた巻線からなり、前記交流電源に接続される入力巻線と、
前記第一のコアの二次側に巻き付けられた巻線からなり、前記LED回路に接続される出力巻線と、
前記第二のコアの二次側に巻き付けられた巻線からなり、前記LED回路に流れる電流を制御する電流制御回路に接続される制御巻線と、
前記第一のコア及び前記第二のコアの一次側に共通して巻き付けられた巻線からなり、前記電流制御回路に電力を供給する電源巻線と、を備えて構成されており、
前記入力巻線に印加される入力電圧が基準値以上の場合に、前記電流制御回路が動作して、前記制御巻線に印加される制御電圧の基準値以上の尖頭値部分をカットすることにより、前記出力巻線に印加される出力電圧の尖頭値部分がフラットになり、前記LED回路へと流れる過電流が防止されることを特徴とするLED駆動電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載のLED駆動電源装置において、
前記交流電源が三相交流電源であって、
前記磁束制御トランスとしてU相、V相、W相の三つの磁束制御トランスを備え、
前記U相の入力巻線、前記V相の入力巻線、及び前記W相の入力巻線がそれぞれ、前記三相交流電源のU−V入力端子間、V−W入力端子間、及びW−U入力端子間に接続され、
前記U相の出力巻線、前記V相の出力巻線、及び前記W相の出力巻線がそれぞれ、前記LED回路に接続されるU−V出力端子間、V−W出力端子間、及びW−U出力端子間に接続され、
前記U相の制御巻線、前記V相の制御巻線、及び前記W相の制御巻線がそれぞれ、前記電流制御回路に接続されるU−V制御端子間、V−W制御端子間、及びW−U制御端子間に接続され、
前記W相の磁束制御トランスに設けられた電源巻線が前記電流制御回路に接続されることを特徴とするLED駆動電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDの照明用電源として好適なLED駆動電源装置に係り、特にLEDの交流駆動点灯における高電圧時のLED破損を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の照明用電源としては、例えば特許文献1に開示された高周波点灯装置が知られている。この装置は、コアに一次巻線と二次巻線を巻き付けた電流トランスからなり、一次巻線が高周波電源に接続され、二次巻線が照明負荷に接続されている。そして、高周波電源から供給された入力電圧を電流トランスで変換し、照明負荷に定格の電流を供給することによって照明負荷が点灯するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−325879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の高周波点灯装置のような従来の照明用電源によると、以下のような問題があった。
【0005】
(1)電源から供給される入力電圧が変化すると、電流トランスから供給される出力電流も変化してしまう。
(2)照明負荷の抵抗が変化すると、照明負荷に流れる電流も変化してしまう。
(3)入力電圧が一定のとき、出力電圧や電流を制御することができない(小さな電力で大きな電力を制御することができない)。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、入力電圧や負荷抵抗が変化しても出力電流を一定に保つことができ、特に高電圧時にLED回路への過電流を阻止し、LEDの破損を防止することができるLED駆動電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明は、交流電源からの電力を磁束制御トランスで変換してLED回路に供給するLED駆動電源装置であって、前記磁束制御トランスは、磁性体からなる第一のコア及び第二のコアと、前記第一のコア及び前記第二のコアの一次側に共通して巻き付けられた巻線からなり、前記交流電源に接続される入力巻線と、前記第一のコアの二次側に巻き付けられた巻線からなり、前記LED回路に接続される出力巻線と、前記第二のコアの二次側に巻き付けられた巻線からなり、前記LED回路に流れる電流を制御する電流制御回路に接続される制御巻線と、前記第一のコア及び前記第二のコアの一次側に共通して巻き付けられた巻線からなり、前記電流制御回路に電力を供給する電源巻線と、を備えて構成されて
おり、前記入力巻線に印加される入力電圧が基準値以上の場合に、前記電流制御回路が動作して、前記制御巻線に印加される制御電圧の基準値以上の尖頭値部分をカットすることにより、前記出力巻線に印加される出力電圧の尖頭値部分がフラットになり、前記LED回路へと流れる過電流が防止されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明において、前記交流電源が三相交流電源であって、前記磁束制御トランスとしてU相、V相、W相の三つの磁束制御トランスを備え、前記U相の入力巻線、前記V相の入力巻線、及び前記W相の入力巻線がそれぞれ、前記三相交流電源のU−V入力端子間、V−W入力端子間、及びW−U入力端子間に接続され、前記U相の出力巻線、前記V相の出力巻線、及び前記W相の出力巻線がそれぞれ、前記LED回路に接続されるU−V出力端子間、V−W出力端子間、及びW−U出力端子間に接続され、前記U相の制御巻線、前記V相の制御巻線、及び前記W相の制御巻線がそれぞれ、前記電流制御回路に接続されるU−V制御端子間、V−W制御端子間、及びW−U制御端子間に接続され、前記W相の磁束制御トランスに設けられた電源巻線が前記電流制御回路に接続されるように構成することもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のLED駆動電源装置によれば、以下のような効果が得られる。
【0010】
(1)交流電源から供給される入力電圧が変化しても、LED駆動電源装置から供給される出力電流が変化しない。
(2)負荷抵抗が変化しても、負荷に流れる電流が変化しない。
(3)負荷電流よりも小さな制御電流をコントロールすることにより、小さな電力で大きな電力を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のLED駆動電源装置を単相交流電源に適用した例を示す図。
【
図2】本発明のLED駆動電源装置における電流制御回路の一例を示す図。
【
図3】本発明のLED駆動電源装置を三相交流電源に適用した例を示す図。
【
図4】本発明のLED駆動電源装置における入力電圧と電流値の関係を示す図。
【
図5】本発明のLED駆動電源装置における単相交流電源での動作電圧(電流)を示す図。
【
図6】本発明のLED駆動電源装置における三相交流電源での動作電圧(電流)を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1に示すように、本発明のLED駆動電源装置1は、交流電源2(本実施形態では単相交流電源2a)から入力された電力によりLED回路3を駆動する電源装置であって、本実施形態ではトロイダル型トランスを採用した磁束制御トランス4で入力電圧を変換し、LED回路3に供給するように構成されている。この磁束制御トランス4は、リング状の磁性体(鉄芯)からなる第一のコア5と、同じくリング状の磁性体(鉄芯)からなる第二のコア6の二つのコアを備えて構成されている。なお、図の例ではリング状のコアからなるトロイダル型トランスを採用したが、これに代えて、E型コアとI型コアからなるEI型トランスを採用しても良い。
【0014】
第一のコア5は出力(Main)用のコアであり、第二のコア6は制御(Sub)用のコアである。この二つのコア5,6には、両者の一次側に共通して銅線をN回巻き付けた巻線(以下これを「入力巻線」という)7が設けられている。この入力巻線7は入力端子8を介して単相交流電源2aに接続される。なお、図の例では第一のコア5は一つしか設けられていないが、出力(Main)用のコアは二つ以上設けられていても良い。
【0015】
第一のコア5の二次側には、銅線をN
1回巻き付けた巻線(以下これを「出力巻線」という)9が設けられている。この出力巻線9は単相整流回路10に接続された出力端子11を介してLED回路3に接続される。なお、本実施形態のLED回路3は、複数個のLEDを直列に接続してなるLED照明機器である。
【0016】
これに対し、第二のコア6の二次側には、銅線をN
2回巻き付けた巻線(以下これを「制御巻線」という)12が設けられている。この制御巻線12は単相整流回路13に接続された制御端子14を介して電流制御回路15に接続されている。なお、本実施形態の電流制御回路15は、LED回路3に接続されており、LEDに流れる電流を一定に制御する定電流回路である。この定電流回路は、
図2に一例を示すように、バイアス抵抗(R1)、FET(Q1)、トランジスタ(Q2)、電流制限抵抗(R2)からなる電流値制限回路を採用することができる。
【0017】
さらに、第一のコア5と第二のコア6には、両者の一次側に共通して銅線を巻き付けた巻線(以下これを「電源巻線」という)16が入力巻線7とは別に設けられている。この電源巻線16は、AC−DC変換回路17を介して電流制御回路15に接続されており、AC−DC変換回路17にて交流から直流に変換された電力を電流制御回路15に供給し、電流制御回路15を駆動する電源生成トランス部として機能する。なお、第一のコア5と第二のコア6は異なる材料で構成されていても良い。また、第二のコア6について、ギャップを設けたり、透磁率が高い材質にすることにより、飽和磁束密度等の特性を変えることができる。
【0018】
ここで、上述した実施形態では本発明のLED駆動電源装置1を単相交流電源2aに適用した例について説明したが、これに代えて、
図3に示すような三相交流電源2bに適用することもできる。この例は並列方式を採用したLED駆動電源装置1であって、U相、V相、W相の三つの磁束制御トランス4a,4b,4cを備えて構成されている。
【0019】
三つの磁束制御トランス4a,4b,4cのうち、U相の入力巻線7aはU−V入力端子8a,8b間に接続され、V相の入力巻線7bはV−W入力端子8b,8c間に接続され、W相の入力巻線7cはW−U入力端子8c,8a間に接続される。U相の出力巻線9aはU−V出力端子11a,11b間に接続され、V相の出力巻線9bはV−W出力端子11b,11c間に接続され、W相の出力巻線9cはW−U出力端子11c,11a間に接続されており、これらの出力端子11a,11b,11cは三相整流回路18を介してLED回路3に接続されている。U相の制御巻線12aはU−V制御端子14a,14b間に接続され、V相の制御巻線12bはV−W制御端子14b,14c間に接続され、W相の制御巻線12cはW−U制御端子14c,14a間に接続されており、これらの制御端子14a,14b,14cは三相整流回路19を介して電流制御回路15に接続されている。
【0020】
また、W相の磁束制御トランス4cには電源巻線16が設けられている。この電源巻線16は、AC−DC変換回路17を介して電流制御回路15に接続されており、AC−DC変換回路17にて交流から直流に変換された電力を電流制御回路15に供給する。なお、その他の構成については上述した実施形態と同様であるので、同一部品には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0021】
本発明のLED駆動電源装置1によれば、Subの第二のコア6に電流制御回路15を設けたことにより、入力電圧Vが上昇しても規定値以上に制御電流I
2が上昇しない。このため、Mainに反映される出力電圧V
1の上昇が抑えられ、LED回路3を流れる出力電流I
1も制限されるのでLEDの破損を防止することができる。以下この動作について図面を参照しながら説明する。
【0022】
図4において、横軸に入力電圧Vを示し、縦軸に電流値を示す。入力電圧Vが小さいときには、Subの電流制御回路15は動作していない(不動作領域)。このため、入力電圧Vの上昇に伴ってSubの制御電圧V
2と制御電流I
2、及びMainの出力電圧V
1と出力電流I
1も上昇し、LED回路3のLEDが点灯する。ここで、入力電圧Vが更に上昇して大きくなると、Subの電流制御回路15が動作し、Subの制御電圧V
2が規定値になって上昇が停止し、制御電流I
2が設定された電流値で一定になる(定電流動作領域)。これにより、Mainの出力電圧V
1が規定値になって上昇が停止し、出力電流I
1も一定になる。よって、LED回路3に過電流が流れないため、LEDの破損を防止することができる。
【0023】
また、本発明のLED駆動電源装置1について、
図5には単相交流電源2aでの動作電圧(電流)を示し、
図6には三相交流電源2bでの動作電圧(電流)を示す。両図ともに全波整流後の波形を示している。
【0024】
図5(a)に示すように、入力電圧Vが電流制御回路15で設定した基準値以上の場合には、電流制御回路15が動作し、Subの制御電圧V
2(制御電流I
2)は基準値以上の尖頭値部分がカットされてフラットになる。そして、これに伴ってMainの出力電圧V
1(出力電流I
1)も同様に尖頭値部分がフラットになるため、LED回路3へと流れる過電流が防止される。
【0025】
また、
図5(b)に示すように、入力電圧Vが基準値の場合には、電流制御回路15は動作寸前であるが動作していない。このため、Subの制御電圧V
2(制御電流I
2)とMainの出力電圧V
1(出力電流I
1)は尖頭値のフラット部分がなくなり、Mainの単相整流回路10で全波整流された電圧(電流)がLED回路3へと印加される。なお、
図5(c)に示すように、入力電圧Vが基準値以下の場合には、電流制御回路15が動作していないため、
図5(b)の場合と同様となる。
【0026】
図6は三相交流電源2bの場合において、入力電圧Vが電流制御回路15の基準値のときの動作電圧を示したものである。図に示すように、入力電圧Vが基準値の場合には、電流制御回路15は動作していないため、Mainの三相整流回路18で全波整流された電圧(電流)がLED回路3へと印加される。なお、入力電圧Vが基準値以上、基準値以下の場合の動作は、
図5に示した単相交流電源2aの場合と同様である。
【0027】
以上説明したとおり、本発明のLED駆動電源装置1によれば、磁束制御トランス4のSub側に電流制御回路15を設けたことにより、入力電圧が高いときにはMain側に出力される駆動電圧(電流)が制限されるため、LED回路3に過電流が流れず、LEDの破損を防止することができる。また、電流制御回路15を駆動する電源生成トランス部として、電源巻線16を磁束制御トランス4に一体化したことにより、別電源を設けなくて済むため、装置全体の小型化を実現することができる。さらには、電流制御回路15の電圧をLEDの標準(推奨)値に設定することにより、エネルギーロスがないシステムを構築することができる。
【0028】
なお、本発明によれば、海外の電力インフラの不備な国や地域、あるいは漁船に搭載された船舶発電機のように、電源変動の大きなLED照明機器における電源として好適に利用することができる。例えば船舶発電機の場合、表記より高めでの発電電圧があるので、Subの電流制御回路15の規定電流を小さく設定すれば、LEDの過電流破損を防ぐことができる。しかし、駆動電流が少ないため、LED照明機器の明るさが減少する。そこで、LEDの過電流破損と明るさの効率を考慮し、LEDの特性の定格値付近より計算される、電流制御回路15の規定値を設定するのが最適である。
【符号の説明】
【0029】
1:LED駆動電源装置
2:交流電源
2a:単相交流電源
2b:三相交流電源
3:LED回路
4:磁束制御トランス
4a:U相の磁束制御トランス
4b:V相の磁束制御トランス
4c:W相の磁束制御トランス
5:第一のコア
6:第二のコア
7:入力巻線
7a:U相の入力巻線
7b:V相の入力巻線
7c:W相の入力巻線
8:入力端子
8a:U相の入力端子
8b:V相の入力端子
8c:W相の入力端子
9:出力巻線
9a:U相の出力巻線
9b:V相の出力巻線
9c:W相の出力巻線
10:単相整流回路
11:出力端子
11a:U相の出力端子
11b:V相の出力端子
11c:W相の出力端子
12:制御巻線
12a:U相の制御巻線
12b:V相の制御巻線
12c:W相の制御巻線
13:単相整流回路
14:制御端子
14a:U相の制御端子
14b:V相の制御端子
14c:W相の制御端子
15:電流制御回路
16:電源巻線
17:AC−DC変換回路
18:三相整流回路
19:三相整流回路