(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853935
(24)【登録日】2021年3月17日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】消火設備配管の接続構造
(51)【国際特許分類】
F16L 37/084 20060101AFI20210329BHJP
A62C 35/68 20060101ALI20210329BHJP
【FI】
F16L37/084
A62C35/68
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-79327(P2017-79327)
(22)【出願日】2017年4月13日
(62)【分割の表示】特願2016-119438(P2016-119438)の分割
【原出願日】2016年6月16日
(65)【公開番号】特開2017-223354(P2017-223354A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2019年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000199186
【氏名又は名称】千住スプリンクラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大越 久誉
(72)【発明者】
【氏名】金 幸宏
【審査官】
西塚 祐斗
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−006596(JP,A)
【文献】
特開2015−047472(JP,A)
【文献】
特開平09−294822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 37/084
A62C 35/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火設備に設置される配管であり、
管状をしており端部の内側に牝ネジが設置された牝配管部材と、
管状をしており一端側に前記牝配管部材の前記牝ネジと螺合する牡ネジが設置された牡配管部材と、
前記牡配管部材の内部に、前記牝配管部材の前記牝ネジよりも奥側の内周面と接する外周面を有する筒状の連結部が設置され、
前記連結部の外面と前記牝配管部材の内面に接する止水部材が設置されており、
前記牡配管部材において前記牡ネジよりも他端側に係止段部が設置されており、
前記牡ネジと前記係止段部の間に斜面を有しており、
ストッパーは、前記牝配管部材において前記牝ネジよりも端側に設置され、その先端は前記牝配管部材の側面を貫いて設置され前記係止段部に挿通可能であり、
前記牡ネジと前記牝ネジの締結時において、前記ストッパーの先端が前記斜面に沿って移動して前記係止段部に挿通されることを特徴とする消火設備配管の接続構造。
【請求項2】
前記ストッパーが内部に設置された環状溝は、前記牝配管部材の内周側に通じる穴を有しており、前記ストッパーの先端は前記穴から前記牝配管部材の内周側に突き出ている請求項1記載の消火設備配管の接続構造。
【請求項3】
前記ストッパーの先端は、前記牡ネジと前記牝ネジの締結により前記斜面に沿って移動して、前記斜面を乗り越えて前記係止段部である溝の内部に収容される請求項1または請求項2記載の消火設備配管の接続構造。
【請求項4】
前記牝配管部材の端面と当接する前記牡配管部材の接触面は、前記溝を基準として前記斜面が設置された側と反対側に設置されている請求項3記載の消火設備配管の接続構造。
【請求項5】
前記牝配管部材の端面と前記牡配管部材の前記接触面が接している状態のとき、前記ストッパーは前記係止段部と係合する請求項4記載の消火設備配管の接続構造。
【請求項6】
前記牡配管部材は前記連結部を介してフレキシブル配管の端に設置されている請求項1〜請求項5何れか1項記載の消火設備配管の接続構造。
【請求項7】
前記牝配管部材は多口継手の接続口に設置されている請求項1〜請求項6何れか1項記載の消火設備配管の接続構造。
【請求項8】
前記牡ネジと前記牝ネジは平行ネジで構成される請求項1〜請求項7何れか1項記載の消火設備配管の接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手の構造に関するものであり、特に消火設備配管に用いられる管継手の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
スプリンクラー設備はビルやショッピングセンター等に設置されており、火災を消すための水を貯蔵する貯水槽と、水を散布するスプリンクラーヘッド、貯水槽とスプリンクラーヘッドを接続する消火設備配管、貯水槽の水をスプリンクラーヘッドへ送水するためのポンプ等の設備から構成されている。消火設備配管の内部には加圧された水が充填されている。
【0003】
スプリンクラーヘッドは主に天井面や、倉庫等の天井が無い建物では屋根の直下等の高い位置に設置される。そのため貯水槽からスプリンクラーヘッドに水を送る消火設備配管は室内の高い位置に敷設されるので、作業者は高所作業車に乗って高い位置に移動して、尚且つ上を向きながら配管部材を接続する作業を行っている。ゆえに消火設備配管の施工は足元が不安定な高所での作業となっており作業者の負担が大きいものであった。
【0004】
消火設備配管は、貯水槽へと続いている主配管を多口継手により分岐させ、金属製のフレキシブル配管や樹脂管等の可撓管を介してスプリンクラーヘッドと接続されている。可撓管と多口継手の接続部の口径サイズは16A〜25Aが主に用いられ、接続構造は管用テーパーネジ構造となっており、ネジ部にシールテープを巻いた後、所定のトルクをかけて螺合させることでネジ山の間にシールテープが食い込んでシール性が得られる。
【0005】
しかしながら上記の作業について、作業に不慣れな者が行うと漏れが生じてしまうことがある。漏れた箇所は作業のやり直しとなり作業効率が低下する要因となっていた。また上記の作業において、所定のトルクをかけて螺合させるために専用工具を用いる必要があった。より具体的に説明すると、専用工具として金属製のレンチやスパナが用いられており、この金属製の重い工具を使用して頭上に設置された多口継手へ可撓管を接続する作業は、作業者の負担が大きいものであった。
【0006】
近年においては、ネジを用いない迅速管継手(例えば、特許文献1参照)や、融着接続可能な樹脂配管(例えば、特許文献2参照)を用いることで作業の効率化および作業者の負担を軽減することができる。しかしながら、樹脂配管を融着するための熱源として専用の融着装置が必要であり、高所での接続作業には適していない。またこれらの継手を用いて、万が一に接合不良によって管が継手から外れてしまった場合には、大量の水が室内に放出されて水損被害が生じるおそれがある。ゆえに、前述のネジ接続構造を用いたほうが施工不良における水損リスクが少ないとの考え方もある。
【0007】
また、配管の接続箇所が確実に締結しているかどうかを作業者の間で確認できるように、接続部分に油性ペン等で締結済みの印を付けている現場もある。あるいは接続作業が終了した後に現場管理者等の点検者が接続部分の確認を行うケースがあり、その確認作業のために点検者が脚立等の足場や高所作業車を使用して多口継手との接続部分を確認する作業には多大な時間と手間を要している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−226532号公報
【特許文献2】特開平10−118219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明では上記に鑑み、作業が不慣れな者でもネジ接続により安定したシール性能を得ることができ、これに加えて接続箇所が確実に締結されていることが容易に確認できる消火設備配管の接続構造及びその接続方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の消火設備配管の接続構造を提供する。
すなわち、消火設備に設置される配管であり、管状をしており端部の内側に牝ネジが設置された牝配管部材と、管状をしており一端側に牝配管部材の牝ネジと螺合する牡ネジが設置された牡配管部材と、牡配管部材の内部に、牝配管部材の牝ネジよりも奥側の内周面と接する外周面を有する筒状の連結部が設置され、連結部の外面と牝配管部材の内面に接する止水部材が設置されており、牡ネジの近傍に係止段部が設置されており、牡ネジと牝ネジが締結した状態において、牝配管部材の側面を貫いて係止段部に挿通されるストッパーが設置されている消火設備配管の接続構造である。
【0011】
牝ネジを備えた牝配管部材と、牡ネジを備えた牡配管部材とを従来からのネジによる締結構造にするとともに、牡配管部材の内部に設けた筒状の連結部の外面と牝配管部材の内面の間を止水する止水部材を設置した。これにより、従来のシールテープによる止水ではなくOリング等の止水部材によって安定した止水性能を得ることができる。また、従来のようなシールテープを巻く手間を省くことができる。さらに接続作業は従来からのネジ構造であるから接続の手順は従来と同じであり作業者が直感的に理解しやすいものである。
【0012】
さらに、牡ネジと牝ネジの締結が完了した際に牡配管部材の端面と当接する接触面を牡配管部材の外周に設置し、平行ネジで構成された牡ネジと牝ネジを螺合する際には、牝配管部材の端面が牡配管部材の外周に設置された接触面に当接するまで螺入でき、作業者は牡ネジと牝ネジが十分に螺合して締結状態にあることを認識できる。一方、消火設備配管の接続箇所を確認する点検者においても、牝配管部材の端面と牡配管部材の接触面が接触しているか否かを確認することで牡ネジと牝ネジの締結状態を認識できる。
【0013】
また、連結部に対して牡配管部材は空回り可能であり、連結部に予め長い配管が接続されている場合には連結部を回転させずに牡配管部材のみを回転させて牡ネジと牝ネジを締結することができる。さらに、牡ネジと牝ネジが締結した後も連結部は牡配管部材に対して空回り可能であり、連結部に捻じれや曲げの過負荷が加わった場合においても連結部が空回りすることで配管部材にかかる負荷を低減することができる。
【0014】
上記の止水部材としてはOリング等の環状の止水部材が一般的に用いられており、連結部を牝配管部材に押し込んで止水部材を潰す際に生じる摩擦抵抗が、作業者の負荷となり作業効率低下の一つの要因となっている。この負荷を軽減するためにネジの螺入による連結部の移動によって止水部材を潰すことで作業者の負荷を軽減させている。また止水部材を複数設置する場合、サイズが異なる止水部材を設置することで止水部材を潰すために必要な連結部の移動量を短くすることができる。これにより連結部を牝配管部材に螺入することで止水部材を潰す場合にネジ長さを短くすることができる。
【0015】
上記構成にしたことで、牝配管部材から牡配管部材を外す際には止水部材がシール面から離れた状態のときでも牡ネジと牝ネジが螺合しているので、配管内部の流体が加圧された状態であっても流体の圧力によって牡配管部材が脱管することを防止している。
【0016】
また、止水部材は牡配管部材から牝配管部材側に突出して設置された連結部と、多口継手の間に止水部材が設置されていると、牡配管部材と牝配管部材を螺合する際に、牡配管部材だけが回転して連結部と牝配管部材は回転しないので止水部材に捩じりが生じることを防止できる。
【0017】
前記本発明について、牡配管部材の端部に設置された段部と、牝配管部材の端部に設置された段部とを備えており、2つの段部に着脱可能に係合可能なインジケーターを設置して構成することができる。インジケーターは牡ネジと牝ネジが締結しており止水部材が適度に潰れた状態のときに段部に係合可能である。ネジの締結が不足している場合には、2つの段部の間が離れているのでインジケーターが段部に係合できないように構成されている。インジケーターが2つの段部に装着された状態のとき、止水部材が機能して密閉状態が保たれるとともにネジが締結状態にあることを容易に確認することができる。
【0018】
前記本発明について、牡ネジの近傍には係止段部が刻設されており、牡ネジと牝ネジが締結した状態において牝配管部材の側面を貫いて係止段部に挿通されるストッパーが設置されている。牡ネジと牝ネジの締結によって止水部材が適度に潰れた状態のとき、ストッパーは牡ネジ先端の係止段部と係合する。これにより施工後の振動等によるネジの緩みを防止できる。
【0019】
さらにストッパーを牝配管部材の外周面に刻設された溝の内部に設置すると、ストッパーと牡配管部材を一体に構成することができる。これにより配管接続作業においてストッパーを牡配管部材に取付ける作業を省くことができる。
【0020】
上記の消火設備配管の接続構造を用いた接続方法は、牝ネジを有する牝配管部材の接続口に牡配管部材から突出した連結部を挿通させて、牝配管部材の内周部シール面に連結部の外周部シール面を挿通させる工程と、連結部に対して空回りする牡配管部材を回転させて牡ネジと牝ネジを螺合して、ストッパーを係止段部に係合させる工程とから成る。またこれらの工程の後にインジケーターを取り付ける工程を含めることで接続完了状態であることを容易に確認することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、作業が不慣れな者でもネジ接続により安定したシール性能を得ることができ、これに加えて接続箇所が確実に締結されていることが容易に確認できる消火設備配管の接続構造及びその接続方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図5】(a)はインジケーターの外観図。(b)は(a)の矢印A方向から見た外観図。
【
図8】(a)は
図7のインジケーターの断面図。(b)は(a)の矢印A方向から見た外観図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の消火設備配管の接続構造を備えた多口継手Tとフレキシブル配管Fとの接続構造について
図1〜
図8を参照して説明する。
【0024】
図1に示すように、多口継手Tの側面に設置された接続口10は金属製のフレキシブル配管Fと接続している。フレキシブル配管Fのもう一方の端にはスプリンクラーヘッドSが接続されている。多口継手Tの上端は給水配管Pと接続されており、給水配管Pは図示しないポンプや水源等の給水装置と接続されている。
【0025】
図2および
図4は多口継手Tとフレキシブル配管Fとの接続部分の拡大断面図であり、多口継手Tの接続口10の内部には牝ネジ11が設置されている。接続口10は本発明の牝配管部材である。牝ネジ11よりも奥には止水部材としてOリング12が設置されている。牝ネジ11とOリング12の間には、後述する連結部20に設置されたOリング26が接するシール面9となっている。
【0026】
牝ネジ11よりも手前にはロックリング13が設置されており、ロックリング13は接続口10の外周面に形成された環状溝14の内部に設置されている。
【0027】
ロックリング13は弾性素材から形成されている。ロックリング13は牝ネジ11と後述する牡ネジ21の緩みを防止するストッパーである。ロックリング13は
図3に示すように切欠きを有するリング形状をしており一方の端が中心側に折り曲げられたロック部13aを備えている。
【0028】
ロック部13aは環状溝14から接続口10の内周側に通じる穴15に挿通されており、ロックリング13が環状溝14に嵌め込まれた状態において接続口の内周面よりも内側に突き出た状態となっている。またロックリング13の太さ寸法に対して環状溝14の深さ寸法が小さいので先の尖った工具やマイナスドライバー等を利用してロックリング13を環状溝14から容易に取外すことができる。
【0029】
接続口10において環状溝14よりも奥側には段部16が設置されている。段部16は環状に刻設された溝となっている。
【0030】
フレキシブル配管Fの一端は筒状の連結部20と接続している。連結部20の外側には牡ネジ21を備えた牡配管部材22が設置されている。牡配管部材22は管状をしており、一端側(図中右側)に牡ネジ21が形成されている。
【0031】
連結部20の外周面の段23と牡配管部材22の内部の段24が係止され、さらに連結部20の外周に設置した止め輪25により牡配管部材22の牡ネジ21側の端面を係止している。これにより、連結部20は牡配管部材22の内部に組み込まれた状態となり、牡配管部材22が連結部20に対して空回り可能となっている。
【0032】
止め輪25が設置された側の連結部20の端(図中右側の端)は牡配管部材22から突出しており、外周面には止水部材としてOリング26が設置されている。Oリング26よりも先端側は接続口10の内部に設置されたOリング12が接するシール面27となっている。また連結部20の先端を曲面やテーパー状に形成しておくことで、連結部20を接続口10に挿通する際に連通部20の先端でOリング12に傷が付かないようにしている。
【0033】
止め輪25が設置された側と反対側の連結部20の端(図中左側の端)はフレキシブル配管Fとの接続部となっている。連結部20とフレキシブル配管Fは、ナット28を介して接続されている。ナット28とフレキシブル配管Fは溶接等によって固定されている。ナット28の牝ネジと連結部20の牡ネジ29は着脱可能である。
【0034】
牡配管部材22の外周部には前述の牡ネジ21が一端側(図中右側)に設置されている。牡ネジ21よりも他端側には環状をした溝30が刻設されている。溝30にはロックリング13のロック部13aの先端が収容される。溝30はストッパーが係止される係止段部として機能する。ロック部13aを溝30に係合しやすくするために、溝30と牡ネジ21の間に斜面30aが設置されている。
【0035】
溝30において斜面30aが設置された側と反対の縁は、牡ネジ21と牝ネジ11を締結した際に接続口10の端面が当接する接触面30bとなっている。
【0036】
牡配管部材22の溝30よりも他端側には段部31が設置されている。段部31は環状に刻設された溝となっている。段部31と接続口10側の段部16にはインジケーター32が係合される。
【0037】
インジケーター32は
図5に示すようにC字型をしており、材質は樹脂や金属等の弾性を有する部材が用いられている。インジケーター32の内側には段部16、31と係合する突起33、33が設置されている。突起33はインジケーター32の中心側に延出されており、突起33、33の間は薄肉部34となっている。突起33の内縁には複数の切欠き35が設置されており、インジケーター32が弾性変形しやすくなっている。またインジケーター32の両端部は薄肉部34が欠落している。これによりインジケーター2を取り付ける際に突起33、33を段部16、31に係合しやすくなる。
【0038】
インジケーター32は、フレキシブル配管Fと多口継手Tの接続箇所が確実に締結していることを示すためのものである。インジケーター32は牡ネジ21と牝ネジ11を螺合させて牡継手部材22の接触面30bと接続口10の端面が当接した状態のときに段部16、31と係合可能である。牡ネジ21と牝ネジ11の螺合が不足していると、突起33、33の間隔に対して段部16と段部31の間隔が広いので突起33、33と段部16、31が係合せず、作業者がネジの締結が不十分であることを認識できる。この場合、牡配管部材22をさらにネジが締まる方向に回転させて接触面30bと接続口10の端面を当接させてからインジケーター32を段部16、31に装着させる。
【0039】
またインジケーター32を蛍光色の目立つ色で着色しておくと建物の高い位置に設置された多口継手Tとフレキシブル配管Fとの接続状態を点検者が床面から目視により確認しやすくなる。
【0040】
続いて、上記のフレキシブル配管Fを多口継手Tに接続する手順を説明する。
【0041】
室内の上部に設置された給水配管Pと接続された多口継手Tは側面に複数の接続口10が設けられている。フレキシブル配管Fはナット28を介して連結部20と予め接続された状態にある。まず接続口10の内部に、牡配管部材22から突出した連結部20を挿通させると、連結部20側のシール面27が接続口10側のシール面9の内側に挿通される。この段階で牡ネジ21と牝ネジ11は螺合していない。
【0042】
続いて牡配管部材22を回転させて牡ネジ21と牝ネジ11を螺合させる。すると連結部20は少しずつ接続口10の奥へ移動してOリング11、26とシール面27、9が接触する。このとき、牡配管部材22は連結部20に対して空回りするので牡ネジ21と牝ネジ11の螺合の際に連結部20は回転せず、Oリング11、26が螺合による回転で捻じれることを防止している。また、連結部20の他端側に接続されているフレキシブル配管Fもネジの螺合による回転によって捻じれることが無い。
【0043】
さらに牡配管部材22を回転させると、連結部20が接続口10の奥に向かって移動してOリング12、26がシール面27、9と接して潰れる。ネジの螺合による連結部20の移動によってOリング12、26が潰れるため作業者の負担が軽減される。
【0044】
またOリング12、26を接続口10と連結部20の各々に設置したことで、2つのOリング12、26を潰すために必要な連結部の移動量がOリング1個を潰す移動量で済み、それにより牝ネジ11と牡ネジ21のネジ長さが短く構成されている。ネジ長さが短いことで継手の長さも短縮でき、さらに軽量化できるメリットがある。
【0045】
牡ネジ21と牝ネジ11を螺合する際に、ロックリング13のロック部13aの先端が、牡配管部材22の斜面30aに沿って外側に弾性変形して斜面30aを乗り越えて溝30の内部に移動する。この段階で牝ネジ11を緩む方向に回転しようとするとロック部13aと溝30の縁が干渉して緩む方向への回転が阻止される。
【0046】
牡ネジ21と牝ネジ11は平行ネジなので、接続口10の端面が牡配管部材22の接触面30bに接触するまで牡配管部材22は回転可能である。牡ネジ21と牝ネジ11を締結させた後、インジケーター32を取り付ける。インジケーター32の突起33、33の端を段部16、31に沿わせて押し込むと、切欠き35によってインジケーター32は弾性変形をして突起33、33が段部16、31に係合される。このときインジケーター32の内側にロックリング13が配置された状態となる。
【0047】
これにより多口継手Tとフレキシブル配管Fの接続は完了する。その後、フレキシブル配管Fの末端に接続されたスプリンクラーヘッドSを天井下地材5に固定した後、天井Cが設置される。
【0048】
フレキシブル配管Fを多口継手Tから取外す手順は、先にインジケーター32を取外し、ロックリング13が収容されている環状溝14からドライバー等の工具を利用してロックリング13を取外す。その後、牡配管部材22を回転させてネジを緩める。最後に連結部20を接続口10から引き抜くことで作業が完了する。
【0049】
上記の実施形態においては、フレキシブル配管Fと連結部20との間にナット28を介して接続していたが、これに限らず、例えば
図6に示すようにフレキシブル配管Fと連結部20を溶接等によって直に接続させて構成することも可能である。
【0050】
さらに異なる実施形態として
図7に示すものがある。
図7では、連結部20の先端に段差41を形成してサイズが異なるOリング42、43を設置したものである。より具体的にはOリング42に対してOリング43は太さ及び外径が小さいものが用いられている。
【0051】
図7において、接続口10の段差41に対応する連結部20の外周位置に段44が形成されており、段44の近傍のストレート部がOリング42、43のシール面となっている。サイズが異なるOリング42、43を設置したことで、前述と同様に牡ネジ11と牝ネジ21のネジ長さを短くすることができる。また
図7の実施形態ではロックリング13を省いており、よりシンプルな構成となっている。
【0052】
図7、
図8に示すインジケーター45は、接続口10の先端に形成された鍔部46と牡配管部材22の外周面に設置された鍔部47を側面から囲むように取付けられている。インジケーター45はC字形状をした一対のリング48、48の間に鍔部46、47を押圧保持する複数の保持部49が介在している。
【0053】
リング48、48の間隔は、
図7に示すように鍔部46、47の対向する端面どうしが接触しているときの厚さtと略同じになっている。これにより作業者が牝ネジ11と牡ネジ21の螺合した後にインジケーター45を鍔部46、47に装着する際に、リング48、48の間に鍔部46、47が嵌らない場合はネジの締結が不十分であると認識できる。また鍔部46に隣接した溝51により、鍔部46、47の位置にインジケーター45を装着すると、リング48の切欠き部48aは溝51を通過して接続口10の外周部との干渉を避けている。
【0054】
また保持部49はリング48の切欠き部48aから最も離れた位置に設置された保持部49aと、保持部49aと切欠き部48aの間に設置された2つの保持部49bが設置されている。保持部49bは鍔部46、47の側面を挟むように対向して設置されている。また保持部49bの切欠き部48a側は切欠き部48aに対向した平面49cとなっている。
図8(a)では3つの保持部(49a、49b、49b)によって二点鎖線で示す鍔部46、47の側面を押圧保持している。保持部49bの切欠き部48a側の端は、若干内側に湾曲しており、保持部49の内側に挿通された鍔部46、47が外れることを阻止している。
【0055】
インジケーター45は下方から見えやすいように
図8(a)のように保持部49aを下側にして鍔部46、47に装着される。これにより室内の高所に設置されたインジケーター45を点検者が床面から目視にて認識しやすくなる。
【0056】
インジケーター45は鍔部46、47のみに接続可能に構成され、鍔部46、47の近傍にはインジケーター45の非装着部が設置されている。より具体的に説明すると、把持部50にインジケーター45を装着させる場合、リング48の内周径は鍔部47に隣接された把持部50の外径よりも大きいので保持部49aを下向きにするとインジケーター45把持部50に装着することができない。保持部49aを上向きにして把持部50の上に載置して設置できる可能性はあるが、少しの振動で脱落してしまい長期において安定した状態でインジケーター45を把持部50に設置することはできない。また切欠き部48aが下向きに配置されるので点検者がインジケーターの向きが逆である事を認識しやすい。
【0057】
あるいはインジケーター45の2つある保持部49bの一方を
図8(a)に点線で示すように他方の保持部49bよりも大きくして重量を増やすと、把持部50に保持部49aを載置させたときに重い方の保持部49bが下方に移動してインジケーター45を把持部50から脱落させ、インジケーター45が保持部50に装着できないように構成できる。
【0058】
一方、接続口10の外周部にインジケーター45を装着させようとした場合、接続口10の外周径はリング48の内周径よりも大きく、無理に接続口10の外周部にインジケーター45を装着しようとすると、インジケーター45が破損するので装着することができない。
【0059】
これによりインジケーター45は鍔部46、47の位置にしか装着できず、尚且つ鍔部46、47が接触した状態のときに装着できるので、インジケーター45が装着されていることで牝ネジ11と牡ネジ21が締結状態にあることが離れた場所からでも容易に判断することができる。
【0060】
また上記では、多口継手Tとフレキシブル配管Fとの接続構造を実施形態として説明したが、本発明はこれに限らず、消火設備配管の接続部に適用することができ、多口継手Tに換えてエルボやチー等に適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
F フレキシブル配管
T 多口継手
9、27、45 シール面
10 接続口(牝配管部材)
11 牝ネジ
12、26、42、43 Oリング(止水部材)
13 ロックリング(ストッパー)
16、31 段部
20 連結部
21 牡ネジ
22 牡配管部材
28 ナット
30、51 溝
30a 斜面
30b 接触面
32、45 インジケーター
33 突起
34 薄肉部
46、47 鍔部
48 リング
49 保持部
50 把持部