【文献】
吉川 亮子他,グループ演習における個人の役割とコンピテンシ向上の関係について,情報処理学会 研究報告 コンピュータと教育,日本,情報処理学会,2015年 2月 7日,Vol.2015-CE-128 No.4,1-11
【文献】
中鉢 欣秀他,社会人学生を対象とした情報系PBLのための評価モデルの提案,情報処理学会研究報告 2012,日本,一般社団法人情報処理学会,2013年 2月 8日,Vol.2013-CE-118 No.10,1-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照して、本発明の第1から第8実施形態について説明する。
【0029】
[第1実施形態]
〔人材評価システムの構成〕
図1を参照して、本発明に係る人材評価システムの第1実施形態について説明する。
図1は、本発明に係る人材評価システムの第1実施形態のブロック図である。
図1に示すように、本実施形態の人材評価システムは、例えば、マイクロコンピュータやパーソナルコンピュータ(PC)等のコンピュータ装置(演算装置)10によって構成され、成果報告入力部20、画像形成装置40、言語解析部50、記憶部60、行動特性判定部70及び人材評価部80を備える。以下、構成要素ごとに説明する。
【0030】
成果報告入力部20は、被評価者の成果報告を入力する機能を有する。成果報告入力部20は、例えば、文書データ入力部21によって構成されている。文書データ入力部21は、成果報告書のテキストデータを入力するための入力部であり、例えば、USBポートや通信ポート等のインターフェース(I/F)30を介して予め作成されたテキストデータが入力される。なお、文書データ入力部21は、例えば、キーボード等のテキストデータを直接入力可能な入力装置であっても構わない。
【0031】
画像形成装置40は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の文字情報や画像情報を表示するための表示装置である。画像形成装置40は、例えば、VGAポートやHDMポート等のI/F30を介して演算装置10と接続される。画像形成装置40には、例えば、人材評価システム1における入力情報、処理情報及び処理結果が出力表示される。なお、画像形成装置40は、例えば、パネル端末のように、演算装置10と一体形成されていてもよい。
【0032】
言語解析部50は、入力された報告文書を自然言語解析して単語抽出を行う機能を有する。前述したように、言語解析部50には、成果報告入力部20から報告文書がテキストデータで提供される。ここで、「報告文書」とは、被評価人が業務において達成した成果を報告書として纏めた文章である。したがって、当該報告文書には、人材評価の対象となる種々の行動特性を表す単語が含まれている。
【0033】
「自然言語」とは、人間が互いに交流を図るために日常的に使っている自然発生的な言語である。「自然言語解析」とは、自然言語の解析を演算装置10に処理させる技術であり、当該演算装置10に自然言語解析ソフトウェアとしてインストールされる。言語解析部50は、自然言語解析に基づいて、一文ごとに単語分割処理をして単語抽出をするのみならず、例えば、構文解析処理、意味解析処理、辞書構築処理、文脈解析等を行う。各処理の詳細については、後述する。
【0034】
記憶部60は、人材を評価するための複数の態様のキーワードを格納する機能を有する。記憶部60としては、ハードディスク(HDD)やSSD、USBメモリ、SDカード、TFカード等の記録媒体が挙げられる。記憶部60に格納されるキーワードは、複数のコンピテンシー項目に分類される。ここでいう「コンピテンシー」とは、優れた業績を上げる人や業務遂行能力の高い人の行動特性を通じて確認される能力要素いう。
【0035】
図2は、コンピテンシー項目及び該当キーワードを例示する説明図である。
図2に示すように、コンピテンシーは、例えば、創造性(CRE)、改善行動(INV)、交渉行動(NGO)、組織感覚(OGS)、情報収集行動(INF)、確認行動(CHK)などの30余特性に分類されている。キーワードは、30余特性の各コンピテンシー項目ごとに単体ワード、サ変動詞ワード、名詞同士の組み合わせワード、または名詞とサ変動詞の組み合わせワードに設定されている。本実施形態では、各コンピテンシー項目ごとに2、3個のキーワードが設定されているが、キーワードの数は4個以上でもよく、限定されない。
【0036】
単体ワードとしては、例えば、創造性(CRE)について、「アイデア」、「新しい」などの一単語が挙げられる。また、改善行動(INV)について、「変える」、「改造」などの一単語が挙げられる。
【0037】
サ変動詞ワードは、例えば、「応用(する)」のようにサ変動詞として用いることができるキーワードをいう。サ変動詞ワードとしては、例えば、交渉行動(NGO)について、「取引」、「交渉」などのサ行変格活用可能な動詞が挙げられる。また、組織感覚(OGS)について、「駆け引き」、「闘争」などのサ行変格活用可能な動詞が挙げられる。
【0038】
名詞同士の組み合わせワードとしては、例えば、情報収集行動(INF)について、「必要,情報」、「特定,情報」の組み合わせが挙げられる。名詞と動詞の組み合わせワードとしては、確認行動(CHK)について、「二,重,チェック」、の組み合わせが挙げられる。
【0039】
再び、
図1を参照して、行動特性判定部70は、言語解析部50で抽出された単語と、記憶部60に格納された複数の態様のキーワードとを比較して、被評価者の行動特性を判定する機能を有する。上述したように、言語解析部50は、一文ごとに自然言語解析を行う。そして、行動特性判定部70は、一文ごとにキーワードの共起関係を判断する。ここで、本実施形態において「共起関係」とは、一文内に共に現れるキーワードをいい、例えば、「満足」、「度」、「高める」のように、一文中に共に現れることによって一連の行動特性の意味を成す関係をいう。行動特性判定部70は、コンピュータに比較処理ソフトウェアとしてインストールされる。
【0040】
人材評価部80は、各コンピテンシー項目の出現度合いを定量化する機能を有する。すなわち、人材評価部80は、各コンピテンシー項目ごとに出現度合いをカウントする。さらに、人材評価部80は、キーワードの共起関係が現れている文については、そのコンピテンシー項目を加重評価する。
【0041】
人材評価部80は、評価内容を出力する出力部に接続されている。出力部には、評価レポートが出力される。出力部としては、評価内容を文字情報や画像情報として表示する画像形成装置40や、評価内容を紙面に印刷する不図示のプリンタなどが挙げられる。
【0042】
〔人材評価システムの作用〕
次に、
図1から
図4を参照して、第1実施形態に係る人材評価システム1の作用とともに、本実施形態に係る人材評価方法について説明する。
図3は第1実施形態に係る人材評価方法のフローチャートある。
図4は第1実施形態に係る人材評価方法のシーケンス図である。
【0043】
本実施形態に係る人材評価方法は、コンピテンシー項目に対応させて複数の態様で設定されたキーワードを格納する手順と、被評価者の成果報告を読み取る手順と、入力された報告文書を自然言語解析して単語抽出を行う手順と、自然言語解析で抽出された単語と、複数の態様のキーワードとを比較して、被評価者の人材評価を行う手順と、各コンピテンシー項目の出現度合いを定量化する手順と、を有する。
【0044】
また、本実施形態に係る人材評価プログラムは、上記の人材評価方法をソフトウェアとしてコンピュータ装置(情報処理装置)にインストールすることにより実現される。コンピュータ装置は、制御部(CPU(Central Processing Unit)及びメモリを含む)、HDD(Hard Disk Drive)及びネットワークインタフェースを有する。コンピュータ装置の各部は、HDDに格納された人材評価プログラムが、制御部において、一時的にメモリに読み出され、CPUがメモリに読み出された人材評価プログラムを実行することで、人材評価システム1の各部の機能が実現される。また、コンピュータ装置の各部のうち少なくとも一部が、各種のネットワークを通じて相互に接続された複数のコンピュータ装置によって実現されてもよい。また、コンピュータ装置の各部のうち少なくとも一部は、複数のコンピュータ装置による分散処理によって実現されてもよい。
【0045】
図1から
図4に示すように、人材評価を行うに際して、まず、コンピュータ装置(演算装置)10は、予め複数の態様のキーワードを記憶部60に格納する(S110)。キーワードは、上述したように、複数のコンピテンシー項目に分類され、各コンピテンシー項目ごとに単体ワード、サ変動詞ワード、名詞同士の組み合わせワード、または名詞とサ変動詞の組み合わせワードとして、記憶部60に格納されている。
【0046】
次に、成果報告入力部20は、I/F30を介して、演算装置10に成果報告文書を入力する(S120)。第1実施形態では、成果報告入力部20が文書データ入力部21で構成されているので成果報告文書はテキストデータとして読み取られる。
【0047】
次に、言語解析部50は、成果報告文書のテキストデータを自然言語解析して単語抽出する(S130)。言語解析部50は、自然言語解析に基づいて、一文ごとに単語分割処理をして単語抽出をするのみならず、例えば、構文解析処理、意味解析処理、辞書構築処理、文脈解析処理等を行う。単語分割処理は、品詞辞書情報及び文法情報から品詞に分解する形態素解析を行う。構文解析処理は、品詞辞書情報から係り受け判別を行い文構造を形態素解析する。意味解析処理は、類義語辞書情報及び反義語辞書情報を用いて出現語をシソーラス解析してグループ化する。辞書構築処理は、シソーラス辞書構築により単語の上位/下位関係、部分/全体関係、同義関係、類義関係などによって単語を分類し体系づけて辞書を自動構築する。文脈解析処理は、複数の文に跨る構文木作成と意味解析を行なう。
【0048】
言語解析部50は、単語抽出データを行動特性判定部70へ受け渡す(S140)。行動特性判定部70は、言語解析部50で抽出された単語と、記憶部60に格納された複数の態様のキーワードとを比較して、被評価者の行動特性を判定する(S150)。さらに、行動特性判定部70は、一文ごとにキーワードの共起関係を判断する(S160)。
【0049】
行動特性判定部70は、行動特性の判定結果とキーワードの共起関係を人材評価部80へ受け渡す(S170)。人材評価部80は、各コンピテンシー項目の出現度合いを定量化する(S180)。さらに、人材評価部80は、キーワードの共起関係
が現れている文については、そのコンピテンシー項目を加重評価する。その結果、人材評価部80は、被評価者がどのような人材として適しているかを評価する。
【0050】
人材評価部80は、人材評価結果をビジュアル化処理又は/及び数値化処理し、評価レポートとして画像形成装置40や不図示のプリンタ等の出力部へ出力表示する(S190)。具体的には、
図5及び
図6に示すように出力表示する。
【0051】
図5は、コンピテンシー項目の出現度合いをビジュアル化した評価レポートの説明図である。
図5において、縦軸はコンピテンシー項目の分類であり、横軸は被評価者を示している。
図5に示すように、本実施形態の評価レポートは、コンピテンシー項目ごとに各コンピテンシー項目の出現度合いを定量化し、その出現度合いを□の大きさで表しており、各コンピテンシー項目における出現度合いを一見して把握できるようにしている。
図5において、Aはコンピテンシーの発揮度合いが高い場合の分布であり、Bはコンピテンシーの発揮度合いが低い場合の分布である。
【0052】
図5では評価者ごとのコンピテンシー項目の出現度合いを表しているが、同一人の時間経過に伴うコンピテンシー項目の出現度合いの変化を表すことも可能である。例えば、人事研修受ける前後の、同一人のコンピテンシー項目の出現度合いの変化を把握することによって、研修の効果をはかることもできる。
【0053】
図6は、コンピテンシー項目の出現度合いを数値化した評価レポートの説明図である。
図6において、縦軸は被評価者IDであり、横軸はコンピテンシー項目を示している。
図6に示すように、各被評価者に対して、各コンピテンシー項目の出現度合いを数値化し、かつ着色濃度で表すことにより、各コンピテンシー項目における出現度合いを一見して把握できるようにしている。
【0054】
以上説明したように、本実施形態に係る人材評価システム1、人材評価方法及び人材評価プログラムでは、成果報告入力部20から入力された報告文書のテキストデータを言語解析部50で自然言語解析して単語を抽出し、
行動特性判定部70が抽出された単語と、コンピテンシー項目に対応させて複数の態様で設定されたキーワードとを比較して、被評価者の人材評価を行い、人材評価部80が各コンピテンシー項目の出現度合いを定量化する。したがって、本実施形態によれば、専門家に頼ることなく、適正かつ精度の良い人材の持つ細かな能力要素の評価を効率的かつ安価に行うことができ、評価内容が定量的で把握し易い人材評価システム、人材評価方法及び人材評価システムを提供することができる。さらに、現在もっている能力要素を可視化することにより、能力要素に応じた人材の適材適所による最適配置や、能力要素の有無に応じた適切な開発手法の提示など今後の人材開発に繋げることができる。
【0055】
また、キーワードは、複数のコンピテンシー項目に分類され、各コンピテンシー項目ごとに単体ワード、サ変動詞ワード、名詞同士の組み合わせワード、または名詞とサ変動詞の組み合わせワードが設定されている。すなわち、本実施形態に係る人材評価システム1では、業務遂行能力を30余項目に分類しており、人材がどのような具体的な能力を有しているかを細分化して測ることができる。したがって、本実施形態に係る人材評価システム1によれば、キーワード構造及び態様を工夫することにより、コンピテンシー項目の評価・査定精度を飛躍的に高めることができる。
【0056】
さらに、言語解析部50は、一文ごとに自然言語解析を行い、行動特性判定部70は一文ごとにキーワードの共起関係を判断する。したがって、本実施形態に係る人材評価システム1によれば、文章全体からでなく、文章の中の一文一文を認識し、文ごとに解析する手法をとることで、文章の中で「どこの文に具体的な能力が発揮されているか」の確認が可能であり、評価・査定精度を向上させることができる。
【0057】
加えて、言語解析部50は、単にキーワードをピックアップするのではなく、文の中の品詞解析を行い、人材の能力発揮を表す動詞を特定することで、より精度の高い能力測定を行うことができる。
【0058】
具体的には、本実施形態に係る人材評価システム1及び人材評価方法によれば、従来の人手による評価・査定でのコンピテンシー分析と比較して、1/10の時間と費用で実施することができる。また、同じ費用で、より多くの被評価者を対象として、多くの回数の評価・査定を行うことができる。さらに、人材評価部80が各コンピテンシー項目の出現度合いを定量化するので、管理職への登用の際に、必要な能力を備えているか否かの評価・査定を簡易に実施することができ、管理職登用の失敗を低減することができる。そして、各コンピテンシー項目の出現度合いを定量化により、時系列比較や同僚比較、他社比較も容易である。
【0059】
[第2実施形態]
次に、
図7を参照して、本発明に係る人材評価システムの第2実施形態について説明する。
図7は第2実施形態に係る人材評価システムのブロック図である。なお、第1実施形態と同一の構成要素は、同一の符号を付している。
【0060】
図7に示すように、第2実施形態では、成果報告入力部10が書面読み取り入力部22で構成されている点が第1実施形態と異なる。書面読み取り入力部22は、成果報告が記載された書面Lを画像読み取りするための装置であり、例えば、スキャナーが用いられる。
【0061】
演算装置10は、光学認識部91を備えている。光学文字認識部91は、書面読み取り入力部12で読み取った文書画像データをOCR処理してテキストデータに変換する。光学文字認識部91は、OCR処理ソフトとして演算装置10にインストールされる。
【0062】
第2実施形態に係る人材評価システム2は、基本的には第1実施形態に係る人材評価システム1と同様の作用効果を発揮する。特に、第2実施形態に係る人材評価システム2は、成果報告入力部10が書面読み取り入力部22で構成され、光学文字認識部91が文書画像データをOCR(Optical Character Recognition:光学文字認識)処理してテキストデータに変換する。したがって、第2実施形態に係る人材評価システム2によれば、紙打ち出しされた成果報告文書に基づいて評価処理するができ、テキストデータが存在しなくとも人材評価を行うことができるという有利な効果を奏する。
【0063】
[第3実施形態]
次に、
図8を参照して、本発明に係る人材評価システムの第3実施形態について説明する。
図8は第3実施形態に係る人材評価システムのブロック図である。なお、第1実施形態と同一の構成要素は、同一の符号を付している。
【0064】
図8に示すように、第3実施形態では、成果報告入力部10が音声入力部23で構成されている点が第1実施形態及び第2実施形態と異なる。音声入力部23は、成果報告を音声を入力する装置であり、例えば、マイクMが用いられる。なお、音声入力端子から録音された音声データを入力してもよい。
【0065】
演算装置10は、音声テキスト変換部92を備えている。音声テキスト変換部92は、音声入力部13から入力された音声データをテキストデータに変換する。音声テキスト変換部92は、音声入力処理ソフトとして演算装置10にインストールされる。
【0066】
第3実施形態に係る人材評価システム3は、基本的には第1実施形態に係る人材評価システム1と同様の作用効果を発揮する。特に、第3実施形態に係る人材評価システム3は、成果報告入力部10が音声入力部23で構成され、音声テキスト変換部92が音声データをテキストデータに変換する。したがって、第3実施形態に係る人材評価システム3によれば、成果報告を音声で入力処理することができ、操作が簡便で、文章作成が苦手な被評価者にも対応することができるという有利な効果を奏する。
【0067】
[第4実施形態]
次に、
図9を参照して、本発明に係る人材評価システムの第4実施形態について説明する。
図9は、第4実施形態に係る人材評価システムのブロック図である。なお、第1実施形態と同一の構成要素は、同一の符号を付している。
【0068】
図9に示すように、第4実施形態では、成果事例要素を評価する事例評価部200を備える点が第1実施形態と異なる。事例評価部200は、評価対象事例の事例特性を質問形式で把握することで、評価対象事例の事例難易度を評価する。すなわち、事例評価部200は、評価対象事例の対人難易度評価、事例新規度評価、業績影響度評価、組織巻き込み度評価などを行う。
【0069】
対人難易度評価は、成果達成相手がどのような人物であるかを判断し、その対人難易度をスコアリングする。すなわち、被評価者のコミュニケーション能力が発揮された場合でも、コミュニケーションの相手が社長なのか、部下なのかによって、コミュニケーションの難易度が異なるので対人難易度をスコアに反映させる。例えば、コミュニケーション相手が社長の場合は対人難易度を高度に、上司の場合は対人難易度を中度に、部下の場合は対人難易度を低度にスコアリングする。
【0070】
具体的には、対人難易度は、例えば、「コミュニケーションの相手」と「コミュニケーションの内容・目的」の二つの観点に基づいて、レベル1からレベル3まで評価する。「コミュニケーションの相手」は、例えば、下記の3段階のレベルで評価する。
Level1:他部署の同僚や顧客、取引先等がコミュニケーションの中心相手
Level2:主に社内の経営者、経営幹部層がコミュニケーションの中心相手
Level3:レベル3:主に組織外の経営幹部層や官庁の幹部層がコミュニケーションの中心相手
Level1からLevel3へとレベル数が上昇するほど、対人難易度が高いと評価する。
【0071】
「コミュニケーションの内容・目的」は、例えば、下記の3段階のレベルで評価する。
Level1::伝達、指示、納得形成が主な目的のコミュニケーション
Level2:裁量を持ち、相手のキーマンとの「交渉」が目的のコミュニケーション
Level3:事業のイメージの形成や、事業の防御などが目的のコミュニケーション
Level1からLevel3へとレベル数が上昇するほど、対人難易度が高いと評価する。
【0072】
図10は、コミュニケーションの相手とコミュニケーションの内容との関係を示す説明図である。
図10の横軸にはコミュニケーション相手のLevelが表され、縦軸にはコミュニケーションの内容のLevelが表されている。
図10に示すように、コミュニケーションの相手のLevelと、コミュニケーションの内容のlevelとの関係に基づいて、「VH(Very High)」、「H(High)」、「M(Middle)」、「L(Low)」の符号が付されている。すなわち、Level1同士の組み合わせは「L」、Level1とLevel2との組み合わせは「M」、Level2とLeve32との組み合わせは「H」、Level3同士の組み合わせは「VH」で表されている。「VH」、「H」、「M」、「L」に応じて、コンピテンシーの「伝達行動」、「組織感覚」、「交渉行動」の項目に対して、「L」は1.0、「M」は1.1、「H」は1.2、「VH」は1.3の加点係数を与える。
【0073】
事例新規度評価は、成果事例そのものに新規性があるか否かを判断し、その新規性度合いをスコアリングする。すなわち、評価対象事例の内容の取り組みが、その企業において未体験の新規性が高い取り組みであるか否かを判断する。新規性度合いが高い場合は、そのスコアを問題解決や創造性のコンピテンシー項目への加点要素とする。
【0074】
具体的には、「事例新規度」は、例えば、下記の3段階のレベルで評価する。
Level1:前例を参考にし、経験を活用することによって解決策をつくる
Level2:広範なリサーチや深い分析により解決策を検討する
Level3:複雑でかつてない状況、手本となる解決策がないような状況で今までにないような解決策をつくる
上記の「事例新規度」のLevelに応じて、コンピテンシーの「問題解決行動」、「創造性」、「改善行動」の項目に対して、1.0〜1.2の加点係数を与える
【0075】
業績影響度評価は、評価対象事例が経営業績に影響するか否かを判断し、その影響度合いをスコアリングする。すなわち、評価対象事例の内容の取り組みが、経営業績に対して好影響を与えているか否かを判断する。経営業績への好影響を与えている場合は、そのスコアを問題解決のコンピテンシー項目への加点要素とする。
【0076】
具体的には、「業績影響度」は、例えば、下記の3段階のレベルで評価する。
Level1:売上、利益には直接的には関係しない業務(例、人事、経理、総務などの間接的業務)
Level2:今期の売上、利益に直接関係する業務(例、製品開発、マーケティング、営業などの直接業務)
Level3:将来の売上や株価に直接関係する業務(例、新製品の開発業務、将来有望な基礎技術研究など)
上記の「業績影響度」のLevelに応じて、コンピテンシーの「ビジョン設定行動」、「戦略思考力」、「意思決定行動」の項目に1.0〜1.2の加点係数を与える。
【0077】
組織巻き込み度評価は、評価対象事例が組織を巻き込んでいるか否かを判断し、その巻き込み範囲の広さをスコアリングする。すなわち、評価対象事例の内容の取り組みが組織内外を巻き込んでいるか否かを判断する。組織内外への巻き込み範囲が広い場合は、そのスコアを対人影響力、コミュニケーション、組織統率のコンピテンシー項目への加点要素とする。
【0078】
具体的には、「組織巻き込み度」は、例えば、下記の3段階のレベルで評価する。
Level1:業務を遂行する上で、自身で業務は完結する
Level2:業務を遂行する上で、他部門の同僚などに「連絡・調整」が発生し、関連者をまとめあげる必要がある
Level3:業務を遂行する上で、全社の社員に対し、「告知・連絡・質問対応・調整」が発生し、組織全体をまとめあげる必要がある
上記の「組織巻き込み度」のLevelに応じて、コンピテンシーの「動機づけ行動」、「対人影響行動」、「関係構築行動」の項目に対して、1.0〜1.2の加点係数を与える。
【0079】
第4実施形態に係る人材評価システム4は、基本的には第1実施形態に係る人材評価システム1と同様の作用効果を発揮する。特に、第4実施形態に係る人材評価システム4は、成果事例要素を評価する事例評価部200を備えており、事例評価部200は、評価対象事例の対人難易度評価、事例新規度評価、業績影響度評価、組織巻き込み度評価を行う。すなわち、成果報告文書のテキストデータによる成果事例の解析に加え、評価対象事例の事例特性を質問形式で把握することで、発揮された各能力のスコアリング調整を行なっている。したがって、第4実施形態に係る人材評価システム4によれば、評価対象事例の事例難易度を加味した精度の高い人材評価を行うことができるという有利な効果を奏する。
【0080】
[第5実施形態]
次に、
図11を参照して、本発明に係る人材評価システムの第5実施形態について説明する。
図11は、第5実施形態に係る人材評価システムのブロック図である。なお、第1実施形態と同一の構成要素は、同一の符号を付している。
【0081】
図11に示すように、第5実施形態では、業務内容ごとにコンピテンシーモデルを構築する業務モデル構築部210を備える点が第1実施形態と異なる。例えば、営業職において必要なコンピテンシー項目と、事務職において必要なコンピテンシー項目と、現場監督職において必要なコンピテンシー項目と、は異なる。したがって、業務モデル構築部210は、人材評価対象となる企業の各業務ごとに必要なコンピテンシー項目を抽出し、各業務ごとにコンピテンシーモデルを構築する。業務モデル構築部210で構築した各業務ごとのコンピテンシーモデルは、記憶部60にフィードバックされて継続的にデータ蓄積される。
【0082】
また、
図12は、職種とコンピテンシーとの関係を示す説明図である。すなわち、
図12は、営業職、事務職及び現場監督職について、問題解決行動、意思決定行動、計画行動、組織構築行動、達成行動、伝達行動、対人影響行動、関係構築行動、場づくり行動、顧客志向行動、組織感覚、交渉行動、人材管理、確認行動、学習及び論理的思考うち、どのコンピテンシー項目が必要であるのかを示している。営業職については、達成行動、対人影響行動、関係構築行動、顧客志向行動及び交渉行動のコンピテンシー項目を評価している。事務職については、計画行動、伝達行動、組織感覚、確認行動、学習及び論理的思考のコンピテンシー項目を評価している。現場監督職については、問題解決行動、意思決定行動、計画行動、組織構築行動、場づくり行動及び人材管理のコンピテンシー項目を評価している。
【0083】
第5実施形態に係る人材評価システム5は、基本的には第1実施形態に係る人材評価システム1と同様の作用効果を発揮する。特に、第5実施形態に係る人材評価システム5は、業務内容ごとにコンピテンシーモデルを形成する業務モデル構築部210を備えており、各業務ごとに構築されたコンピテンシーモデルを記憶部60にフィードバックしている。したがって、第5実施形態に係る人材評価システム5によれば、人材評価の専門家の評価・査定ノウハウや、ハイパフォーマーの行動特徴をAI学習させることができるという有利な効果を奏する。また、人材評価対象となる企業の各業務ごとに応じた精度の高い人材評価・査定を行うことができるという有利な効果を奏する。
【0084】
[第6実施形態]
次に、
図13を参照して、本発明に係る人材評価システムの第6実施形態について説明する。
図13は、第6実施形態に係る人材評価システムのブロック図である。なお、第1実施形態と同一の構成要素は、同一の符号を付している。
【0085】
図13に示すように、第6実施形態では、成果事例要素を評価する事例評価部200と、業務内容ごとにコンピテンシーモデルを構築する業務モデル構築部210と、を備える点が第1実施形態と異なる。すなわち、第6実施形態に係る人材評価システム6は、第4実施形態と第5実施形態とを組み合わせており、その他は第1実施形態と同様に構成されている。
【0086】
事例評価部200は、上述したように、評価対象事例の事例特性を質問形式で把握することで、評価対象事例の事例難易度を評価する。すなわち、事例評価部200は、評価対象事例の対人難易度評価、事例新規度評価、業績影響度評価、組織巻き込み度評価などを行う。
【0087】
また、業務モデル構築部210は、上述したように、人材評価対象となる企業の各業務ごとに必要なコンピテンシー項目を抽出し、各業務ごとにコンピテンシーモデルを構築する。業務モデル構築部210で構築した各業務ごとのコンピテンシーモデルは、記憶部60にフィードバックされて継続的にデータ蓄積される。
【0088】
第6実施形態に係る人材評価システム6は、基本的には第1実施形態に係る人材評価システム1と同様の作用効果を発揮する。特に、第6実施形態に係る人材評価システム6は、事例評価部200が評価対象事例の対人難易度評価、事例新規度評価、業績影響度評価、組織巻き込み度評価を行うと共に、業務モデル構築部210が各業務ごとに構築されたコンピテンシーモデルを記憶部60にフィードバックする。したがって、第6実施形態に係る人材評価システム5によれば、評価対象事例の事例難易度を加味した精度の高い人材評価を行うことができるという有利な効果を奏する。また、人材評価対象となる企業の各業務ごとに応じた精度の高い人材評価・査定を行うことができるという有利な効果を奏する。
【0089】
[第7実施形態]
次に、
図14を参照して、本発明に係る人材評価システムの第7実施形態について説明する。
図14は、第7実施形態に係る人材評価システムのブロック図である。なお、第1実施形態と同一の構成要素は、同一の符号を付している。
【0090】
図14に示すように、第7実施形態では、被評価者の思考の特性を評価する思考特性評価部220を備える点が第1実施形態と異なる。思考特性評価部220は、例えば、視野の広さや視点の高さ、思考の深さの観点に基づいて被評価者の思考の特性を評価する。どれ位の「視野の広さ」、「視点の高さ」、「思考の深さ」を持っているかは、思考の特性(認知能力)であり、コンピテンシーと並んで成果創出に影響を与える能力である。ここで、「視野の広さ」とは、広い視野を持って考えているか?という観点から、被評価者の思考の特性を評価する評価項目である。また、「視点の高さ」とは、高い視点を持って考えているか?という観点から、被評価者の思考の特性を評価する評価項目である。さらに、「思考の深さ」とは、経営や仕事について深く考えているか?という観点から、被評価者の思考の特性を評価する評価項目である。
【0091】
思考特性評価部220は、成果事例の中から、対象者がどのような「思考特性(認知能力)」を持っているかを、文章中のキーワードの共起関係に基づいて特性をスコア化する機能を有する。具体的には、「視野の広さ」、「視点の高さ」、「思考の深さ」という観点に基づいて、キーワードの共起関係を加重評価する。
【0092】
「視野の広さ」としては、例えば、経営資源に対する視野や、バリューチェーンに対する視野などが挙げられる。「経営資源に対する視野」に関する代表的な共起関係としては、例えば、「人、物、金」と「資源(資産、アセット)」との共起関係が挙げられる。また、「バリューチェーンに対する視野」に関する代表的な共起関係としては、例えば、「開」と「製」と販」との共起関係や、「一気」と「通貫」との共起関係、「全社」と「プロセス」との共起関係が挙げられる。
【0093】
「視点の高さ」としては、業界や市場に対する視点や、グローバル市場に対する視点などが挙げられる。「業界や市場に対する視点」に関する代表的な共起関係としては、例えば、「自社」と「競合」と「顧客」との共起関係が挙げられる。また、「グローバル市場に対する視点」に関する代表的な共起関係としては、「グローバル」と「市場(環境、マーケット)」との共起関係が挙げられる。
【0094】
「思考の深さ」としては、例えば、事業に対する考え、組織に対する考え及び経営に対する考えなどが挙げられる。「事業に対する考え」に関する代表的な共起関係としては、例えば、「事業」と「ライフサイクル」との共起関係や、「外部」と「活用(提携、協業)」との共起関係が挙げられる。また、「経営に対する考え」に関する代表的な共起関係としては、例えば、「経営」と「理念」との共起関係や、「経営」と「哲学」との共起関係、「企業」と「倫理」との共起関係が挙げられる。
【0095】
次に、
図15を参照して、行動特性と思考特性との関係による人材評価手法について説明する。
図15は、行動特性と思考特性との関係を示す説明図である。
図15に示すように、この人材評価モデルは、横軸に行動特性を表し、縦軸に思考特性を表し、四つに区分された領域に「○」、「△」もしくは「×」の評価を付与している。
【0096】
「○」で表される右上の領域に該当する被評価者は、行動特性と思考特性との双方に優れた人材であると捉えることができる。右上の領域に該当する被評価者は、行動力があり、かつ、事業や組織、経営等の目線も備えているので、経営者や上級管理職への登用に適した人材であると言える。このような経営に適した人材を登用することにより、企業の業績を上げることが期待できる。
【0097】
「△」で表される左上の領域に該当する被評価者は、思考特性(視野の広さ、視点の高さ、思考の深さ)には優れているが、行動力が足りない人材であると捉えることができる。左上の領域に該当する被評価者は、事業や組織、経営等の目線を備えているので、中堅管理職に適している。また、足りない行動項目(コンピテンシー項目)を補うように適切な指導すれば、より優れた人材になる余地があると言える。さらに、足りないコンピテンシー項目をチェックすれば、今後の人材開発の指針材料となる。
【0098】
「△」で表される右下の領域に該当する被評価者は、行動力はあるが、思考特性に劣る人材であると捉えることができる。右下の領域に該当する被評価者は、事業や組織、経営等の目線が足りないが、行動力はあるので、営業職等の実働部隊に適している。また、足りない思考特性(視野の広さ、視点の高さ、思考の深さ)を補って経営者目線を育てるように適切な指導すれば、より優れた人材になる余地があると言える。さらに、足りない思考特性の項目をチェックすれば、今後の人材開発の指針材料となる。
【0099】
「×」で表される左下の領域に該当する被評価者は、行動特性と思考特性との双方が劣る人材であると捉えることができる。左下の領域に該当する被評価者は、行動力がなく、経営目線も備えていないが、適材適所という観点から発揮されているコンピテンシー項目を抽出することが好ましい。
【0100】
第7実施形態に係る人材評価システム7は、基本的には第1実施形態に係る人材評価システム1と同様の作用効果を発揮する。特に、第7実施形態に係る人材評価システム7は、被評価者の思考の特性を評価する思考特性評価部220を備えており、「視野の広さ」、「視点の高さ」、「思考の深さ」という観点に基づいて、キーワードの共起関係を加重評価している。したがって、第7実施形態に係る人材評価システム7によれば、事業や組織、経営等に関する被評価者の思考特性を加重評価することができ、経営に適した人材を登用して、業績の向上に繋げることができるという有利な効果を奏する。また、行動特性
判定に加え、思考特性評価を行うことにより、今後の人材開発の指針材料に供することができるという有利な効果を奏する。例えば、営業マンとして働く者の2割が優れた営業成績を上げている場合に、2割のハイパフォーマー営業マンに共通する能力要素の統計をとれば、営業職の人材開発に供することができる。
【0101】
[第8実施形態]
次に、
図16を参照して、本発明に係る人材評価システムの第8実施形態について説明する。
図16は、第8実施形態に係る人材評価システムのブロック図である。なお、第7実施形態と同一の構成要素は、同一の符号を付している。
【0102】
図16に示すように、第8実施形態では、文の語頭・語尾に基づいて未来志向を判定する語頭・語尾判定部230を備える点が第7実施形態と異なる。語頭・語尾判定部240は、行動特性判定部70及び思考特性評価部220と電気的に接続されている。すなわち、語頭・語尾判定部230は、被評価者の行動特性を判定する行動特性判定部70の判定段階において、文の語頭と文の語尾とを判定する。また、語頭・語尾判定部230は、被評価者の思考特性を評価する思考特定評価部220の評価段階においても、文の語頭と文の語尾とを判定する。
【0103】
例えば、文の語頭に「今後」や「将来」などのキーワードが記載されていれば、被評価者に未来志向があると判定する。また、文の語尾に「予定である」や「したい」などのキーワードが記載されていれば、被評価者に未来志向があると判定する。文の語頭・語尾に未来志向が現れていれば、加点評価する。
【0104】
第8実施形態に係る人材評価システム8は、基本的には第1実施形態及び第7実施形態に係る人材評価システム1、7と同様の作用効果を発揮する。特に、第8実施形態に係る人材評価システム8は、文の語頭・語尾に基づいて未来志向を判定する語頭・語尾判定部230を備えており、行動特性判定部70の判定段階や思考特定評価部220の評価段階において文の語頭・語尾を判定している。したがって、第8実施形態に係る人材評価システム8によれば、を行動特性判定の判定段階や思考特性評価の評価段階において被評価者の未来志向を加味することができるという有利な効果を奏する。
【0105】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【0106】
例えば、第2実施形態に係る人材評価システム2では、紙打ち出し書面を読み取ってOCR処理しているが、これに限定されず、pdf文書等の電子化書面を読み取ってOCR処理するように構成してもよい。
【0107】
上述したように、コンピュータ装置の各部(各構成要素)は、HDDに格納された人材評価プログラムが、制御部において、一時的にメモリに読み出され、CPUがメモリに読み出された人材評価プログラムを実行することで、人材評価システムの各部の機能が実現される。したがって、
図1、
図7、
図8、
図9、
図11、
図13、
図14及び
図16の人材評価システム1〜8において、適宜、記憶部60と構成要素との接続を省略図示しているが、全ての構成要素は記憶部60と電気的に接続されており、データの読み込みや書き込みが行われている。