特許第6853953号(P6853953)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6853953剥離剤組成物、剥離層、および剥離性物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853953
(24)【登録日】2021年3月17日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】剥離剤組成物、剥離層、および剥離性物品
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20210329BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20210329BHJP
   C08F 293/00 20060101ALI20210329BHJP
   C08L 27/12 20060101ALI20210329BHJP
   C09J 7/40 20180101ALN20210329BHJP
【FI】
   C09K3/00 R
   C08L53/00
   C08F293/00
   C08L27/12
   !C09J7/40
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-60576(P2017-60576)
(22)【出願日】2017年3月27日
(65)【公開番号】特開2018-162389(P2018-162389A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2020年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】室田 鏡太
【審査官】 柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−114620(JP,A)
【文献】 特開2005−059543(JP,A)
【文献】 特開2002−284949(JP,A)
【文献】 特開2001−301024(JP,A)
【文献】 特許第3512200(JP,B1)
【文献】 特開2012−001600(JP,A)
【文献】 特開2000−043952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
C08L 27/12
C08L 53/00
C08F 293/00
C09J 133/04
C09J 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含フッ素セグメント(a)と非フッ素セグメント(b)からなる含フッ素ブロック共重合体(A)、およびフッ素樹脂(B)を含む剥離剤組成物であって、
前記含フッ素セグメント(a)は、
一般式(1):CH=C(R)−COO−Y−Rf
(一般式(1)中、Rは、水素原子、メチル基、フッ素原子、または塩素原子を表し、Yは、炭素数が1以上30以下のアルキレン基を表し、当該アルキレン基は、無置換であってもよく、あるいは、ハロゲン原子、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、およびアリール部分のいずれか1つ以上で置換されていてもよく、Rfは、炭素数のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるフッ素単量体、および
一般式(2):CH=C(R)−COO−R
(一般式(2)中、Rは、水素原子、またはメチル基を表し、Rは、炭素数10以上24以下の、直鎖もしくは分岐鎖を有するアルキル基、または環状脂肪族基を表す。)で表される(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を構成単位として含み、
前記非フッ素セグメント(b)は、前記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を構成単位として含み、かつ当該(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、前記非フッ素セグメント(b)を構成する単量体成分100重量部において、80重量部以上であり、
前記含フッ素セグメント(a)を構成する単量体成分と、前記非フッ素セグメント(b)を構成する単量体成分の重量比((a)/(b))が、70/40以上97/3以下であり、
前記フッ素樹脂(B)は、フルオロオレフィンを構成単位として含む共重合体であり、
前記含フッ素ブロック共重合体(A)を構成する単量体成分100重量部において、前記フッ素単量体が20重量部以上60重量部以下であり、
前記フッ素樹脂(B)100重量部に対して、前記含フッ素ブロック共重合体(A)が0.1重量部以上10重量部以下であることを特徴とする剥離剤組成物。
【請求項2】
前記含フッ素セグメント(a)を構成する単量体成分100重量部において、前記フッ素単量体が10重量部以上80重量部以下であることを特徴とする請求項1記載の剥離剤組成物。
【請求項3】
硬化剤を含むことを特徴とする請求項1または2記載の剥離剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の剥離剤組成物から形成されることを特徴とする剥離層。
【請求項5】
基材の表面に、請求項4記載の剥離層が設けられたことを特徴とする剥離性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離剤組成物、剥離層、および剥離性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表面に剥離性を有する物品(剥離性物品)として、付箋紙、粘着シートや粘着テープにおける粘着面の保護材、離型フィルム、離型紙などが知られている、当該剥離性物品は、被着体に対して接着させた後、不要時には剥離される。当該剥離性物品は、各種業界・分野で使用されているが、とくに、電子機器分野では、長時間の使用、高温下での使用においても、剥離性が低下しないといった高性能の品質を有するものが求められている。
【0003】
当該物品の表面に剥離性を付与する方法としては、良好な剥離性を得るために、表面自由エネルギーが小さいシリコーン系化合物や、フッ素系化合物などを含む剥離剤組成物を用いて、物品の表面を処理する方法が知られている。
【0004】
しかしながら、通常、シリコーン系化合物を含む剥離剤組成物は、当該組成物から形成される剥離層中のシリコーン系化合物が、被着体に付着(転写)してしまうこと、また、付着したシリコーン系化合物よりシロキサンが脱離して、接点障害を引き起こしてしまうことから、電子機器分野の材料(部材)に対して使用できない問題がある。
【0005】
一方、フッ素系化合物を含む剥離剤組成物としては、例えば、フッ素含有界面活性剤などのフッ素含有化合物を含む再剥離性圧着組成物(特許文献1)、炭素数1〜6のポリフルオロアルキル基を有する単量体と炭素数が18〜30のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを構成単位とする含フッ素共重合体を含む剥離剤組成物(特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−231102号公報
【特許文献2】特開2016−65245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1で開示された再剥離性圧着組成物や特許文献2で開示された剥離剤組成物から形成される剥離層は、被着体に対して、初期の剥離性は優れるが、耐熱試験後では剥離性の低下が起こり、また、被着体から剥離する際に、ジッピングが生じるといった問題があることが分かった。
【0008】
本発明は、上記実情を鑑みてなされたものであり、初期および耐熱試験後の剥離性に優れ、かつ良好な塗膜外観を有し、さらに、ジッピングを抑制できる剥離層を形成できる剥離剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、含フッ素セグメント(a)と非フッ素セグメント(b)からなる含フッ素ブロック共重合体(A)、およびフッ素樹脂(B)を含む剥離剤組成物であって、前記含フッ素セグメント(a)は、一般式(1):CH=C(R)−COO−Y−Rf(一般式(1)中、Rは、水素原子、メチル基、フッ素原子、または塩素原子を表し、Yは、炭素数が1以上30以下のアルキレン基を表し、当該アルキレン基は、無置換であってもよく、あるいは、ハロゲン原子、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、およびアリール部分のいずれか1つ以上で置換されていてもよく、Rfは、炭素数4以上14以下のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるフッ素単量体、および一般式(2):CH=C(R)−COO−R(一般式(2)中、Rは、水素原子、またはメチル基を表し、Rは、炭素数10以上24以下の、直鎖もしくは分岐鎖を有するアルキル基、または環状脂肪族基を表す。)で表される(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を構成単位として含み、前記非フッ素セグメント(b)は、前記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を構成単位として含み、前記フッ素樹脂(B)は、フルオロオレフィンを構成単位として含む共重合体であり、前記含フッ素ブロック共重合体(A)を構成する単量体成分100重量部において、前記フッ素単量体が20重量部以上60重量部以下であり、前記フッ素樹脂(B)100重量部に対して、前記含フッ素ブロック共重合体(A)が0.1重量部以上10重量部以下であることを特徴とする剥離剤組成物、に関する。
【0010】
また、本発明は、前記剥離剤組成物から形成される剥離層、に関する。
【0011】
さらに、本発明は、基材の表面に、前記剥離層が設けられた剥離性物品、に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の剥離剤組成物は、初期および耐熱試験後の剥離性に優れ、かつ良好な塗膜外観を有し、さらに、ジッピングを抑制できる剥離層を形成でき、また、当該組成物はシリコーンフリーであるため、接点障害の懸念がないことから、電子機器分野の材料(部材)に対して好適である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の剥離剤組成物は、含フッ素ブロック共重合体(A)、およびフッ素樹脂(B)を含む。
【0014】
<含フッ素ブロック共重合体(A)>
本発明の含フッ素ブロック共重合体(A)は、含フッ素セグメント(a)と非フッ素セグメント(b)から構成される。
【0015】
前記含フッ素セグメント(a)は、一般式(1):
CH=C(R)−COO−Y−Rf
(一般式(1)中、Rは、水素原子、メチル基、フッ素原子、または塩素原子を表し、Yは、炭素数が1以上30以下のアルキレン基を表し、当該アルキレン基は、無置換であってもよく、あるいは、ハロゲン原子、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、およびアリール部分のいずれか1つ以上で置換されていてもよく、Rfは、炭素数4以上14以下のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるフッ素単量体、および
一般式(2):CH=C(R)−COO−R
(一般式(2)中、Rは、水素原子、またはメチル基を表し、Rは、炭素数10以上24以下の、直鎖もしくは分岐鎖を有するアルキル基、または環状脂肪族基を表す。)で表される(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を構成単位として含む。
【0016】
前記フッ素単量体は、被着体に対する剥離性を剥離層に付与する機能を有する。前記フッ素単量体は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
前記フッ素単量体としては、前記一般式(1)中のYが無置換のアルキレン基の場合、例えば、CH=CHCOO(CH(CFCF、CH=C(CH)COO(CH(CFCF、CH=C(F)COO(CH(CFCF、CH=C(Cl)COO(CH(CFCF、CH=CHCOO(CH18(CFCF、CH=C(CH)COO(CH18(CFCF、CH=CHCOO(CH(CFCF、CH=CHCOO(CH(CFCF、CH=CHCOO(CH(CF11CF、CH=CHCOOCH(CFCH、CH=CHCOO(CH(CFCF(CF3、CH=CHCOO(CH(CFCF(CF3、CH=C(CH)COO(CH(CFCF3、CH=C(CH)COO(CH(CFCF3、CH=C(CH)COO(CH(CFCF3、CH=C(CH)COO(CH(CF11CF3、CH=C(CH)COOCH(CFCH3、CH=C(CH)COO(CH(CFCF(CF3、CH=C(CH)COO(CH(CFCF(CF3などが挙げられる。
【0018】
また、前記アルキレン基は、ハロゲン原子、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−COO−または−OCO−)、アミド結合(−NHCO−または−CONH−)、およびアリール部分(フェニル基、ナフチル基、トルイル基、キシリル基、アントラニル基、フェナントリル基など)のいずれか1つ以上で置換されていてもよい。
【0019】
前記置換されていてもよいアルキレン基としては、例えば、−(CHn1−COOC−(n1は1〜10である)、−(CHn2−OCOC−(n2は1〜10である)、−(CHn3−C−(n3は1〜10である)、−(CHCHO)n4−CHCH−(n4は1〜10である)、−(CHCHO)n5−CO−C−(n5は1〜10である)などが挙げられる。
【0020】
前記一般式(1)中、Rは水素原子、メチル基が好ましく、Yは炭素数2以上18以下であることが好ましく、Rfは、直鎖でも分岐鎖のパーフルオロアルキル基であってもよいが、炭素数4以上8以下であることが好ましい。また、前記一般式(1)中、Yは無置換であることが好ましい。
【0021】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、炭素数10以上24以下の、直鎖もしくは分岐鎖を有するアルキル基、または環状脂肪族基を、エステル基の末端に有するアルキル(メタ)アクリレートである。前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
前記一般式(2)中、Rとしては、例えば、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ベヘニル基などの直鎖のアルキル基;イソデシル基、イソウンデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基、イソペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、イソオクタデシル基、イソノナデシル基、イソエイコシル基、イソベヘニル基などの分岐鎖のアルキル基;3,3,5−トリメチルシクロヘキシル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基などの環状脂肪族基が挙げられる。前記Rは、炭素数12以上22以下の直鎖もしくは分岐鎖を有するアルキル基が好ましく、中でも、ドデシル基、オクタデシル基、ベヘニル基がより好ましい。
【0023】
前記フッ素単量体は、剥離層に剥離性を付与する観点から、前記含フッ素セグメント(a)を構成する単量体成分100重量部において、10重量部以上であることが好ましく、20重量部以上であることがより好ましく、30重量部以上であることがさらに好ましく、そして、剥離層の塗膜外観を向上させる観点から、80重量部以下であることが好ましく、70重量部以下であることが好ましく、60重量部以下であることがさらに好ましい。
【0024】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、剥離層の塗膜外観を向上させる観点から、前記含フッ素セグメント(a)を構成する単量体成分100重量部において、20重量部以上であることが好ましく、30重量部以上であることがより好ましく、40重量部以上であることがさらに好ましく、そして、剥離層に剥離性を付与する観点から、90重量部以下であることが好ましく、80重量部以下であることが好ましく、70重量部以下であることがさらに好ましい。
【0025】
前記フッ素単量体および前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の合計は、重合性の観点から、前記含フッ素セグメント(a)を構成する単量体成分100重量部において、80重量部以上であることが好ましく、90重量部以上であることがより好ましく、95重量部以上であることがさらに好ましく、98重量部以上であることがよりさらに好ましい。
【0026】
なお、前記含フッ素セグメント(a)を構成する単量体には、前記フッ素単量体および前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体以外のその他の単量体を用いることができる。
【0027】
前記その他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルなどのヒドロキシル基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3−メチルーオキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3−エチルーオキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3−ブチルーオキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3−ヘキシルーオキセタニルメチル(メタ)アクリレートなどの環状エーテル基を有するモノマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの、炭素数1以上9以下の、直鎖もしくは分岐鎖を有するアルキル基、または環状脂肪族基もしくはアリール基を、エステル基の末端に有するアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。前記その他の単量体は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
前記非フッ素セグメント(b)は、前記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を構成単位として含む。
【0029】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体は、剥離層の塗膜外観を向上させる観点から、前記非フッ素セグメント(b)を構成する単量体成分100重量部において、80重量部以上であることが好ましく、90重量部以上であることがより好ましく、95重量部以上であることがさらに好ましく、98重量部以上であることがよりさらに好ましい。
【0030】
なお、前記含フッ素セグメント(b)を構成する単量体には、前記その他の単量体を用いることができる。
【0031】
前記含フッ素セグメント(a)を構成する単量体成分と、前記非フッ素セグメント(b)を構成する単量体成分の重量比((a)/(b))は、剥離層に剥離性を付与する観点、剥離層の塗膜外観を向上させる観点から、60/40以上であることが好ましく、70/30以上であることがより好ましく、そして、97/3以下であることが好ましく、95/5以下であることがより好ましい。
【0032】
前記フッ素単量体は、前記含フッ素ブロック共重合体(A)を構成する単量体成分100重量部において、20重量部以上60重量部以下である。前記フッ素単量体は、高い剥離性を剥離層に付与できる観点から、前記含フッ素ブロック共重合体(A)を構成する単量体成分100重量部において、25重量部以上55重量部以下が好ましい。
【0033】
<含フッ素ブロック共重合体(A)の製造方法>
本発明の含フッ素ブロック共重合体(A)の製造方法は、公知のブロック共重合体の製造方法を用いて得ることができ、何ら制限されるものではないが、例えば、アニオン重合法、ポリメリックペルオキシド(ポリメリックパーオキシド)を用いた重合法が挙げられる。前記重合法としては、例えば、塊状重合法、懸濁重合法、溶液重合法、エマルション重合法が挙げられる。
【0034】
前記ポリメリックペルオキシドを用いた重合法は、1分子中に2個以上のペルオキシ(パーオキシド)結合を有する化合物を、重合開始剤として用いる重合法である。前記ポリメリックペルオキシドとしては、例えば、特公平5−59942号公報に開示されている各種ポリメリックペルオキシド化合物が挙げられる。前記ポリメリックペルオキシドは、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
前記ポリメリックペルオキシドとしては、一般式(3):
【化1】
(一般式(3)中、Rは「−OOCO−アルキル基」を表し、R´は「−CO−アルキル基」を表し、nは1〜10の整数を表し、mは2〜20の整数を表す。)で表される化合物、一般式(4):
【化2】
(一般式(4)中、Rは「−OOCO−アルキル基」を表し、R´は「−CO−アルキル基」を表し、nは2〜20の整数を表す。)で表される化合物、一般式(5):
【化3】
(一般式(5)中、Rは「−OOCO−アルキル基」を表し、R´は「−CO−アルキル基」を表し、nは3〜20の整数を表す。)で表される化合物、が好ましい。
【0036】
なお、前記一般式(3)〜(5)における前記アルキル基は、通常、炭素数1以上18以下の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基を表す。
【0037】
前記ポリメリックペルオキシドを用いた重合法は、例えば、ポリメリックペルオキシドを重合開始剤として用い、前記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を溶液(重合溶剤)中で重合する工程により、連鎖中にペルオキシ結合が導入されたペルオキシ結合含有非フッ素セグメント(b)を有する共重合体の溶液を得る第1工程と、得られたペルオキシ結合含有非フッ素セグメント(b)を有する共重合体の溶液に、フッ素単量体および前記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を加えて重合する工程により、含フッ素セグメント(a)と非フッ素セグメント(b)からなる含フッ素ブロック共重合体(A)を得る第2工程を含む重合法である。なお、前記ポリメリックペルオキシドを用いた重合法では、第1工程として、フッ素単量体および前記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を加えてペルオキシ結合含有フッ素セグメント(a)を有する共重合体の溶液を得た後、第2工程として、前記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を加えて重合してもよい。
【0038】
前記溶液(重合溶剤)としては、例えば、ノルマルパラフィン、イソパラフィンなどのパラフィン系炭化水素溶剤などが挙げられる。前記重合溶剤は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
また、前記ポリメリックペルオキシドの使用量は、含フッ素ブロック共重合体(A)を構成する単量体成分100重量部に対して、3〜7重量部であることが好ましく、4〜6重量部であることがより好ましい。重合反応を行う温度は、使用する前記ポリメリックペルオキシドの種類によって適宜変更されるが、工業的に製造を行う上で、30〜150℃であることが好ましく、40〜100℃であることがより好ましい。
【0040】
前記含フッ素ブロック共重合体(A)は、重量平均分子量(Mw)が、20,000以上100,000以下であることが好ましく、40,000以上80,000以下であることがより好ましい。なお、前記重量平均分子量(Mw)は、以下の条件にて求めることができる。
【0041】
<重量平均分子量(Mw)の測定条件>
分析装置:TOSOH HLC−8320GPC
カラム1、2:TSKgel SuperMulbipore HZ−M
カラム3:TSKgel Super H−RC
カラムサイズ:15cm×4.6mmφ(3本すべて)
溶離液:THF
流量:0.35ml/min
検出器:RI
カラム温度:40℃
試料濃度:0.5wt%
標準試料:ポリスチレン(商品名「PStQuick MP−M」、東ソー社製)
【0042】
<フッ素樹脂(B)>
本発明のフッ素樹脂(B)は、フルオロオレフィンを構成単位として含む共重合体である。
【0043】
前記フルオロオレフィンとしては、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン(VdF)、フッ化ビニルなどが挙げられる。前記フルオロオレフィンは、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
また、前記フッ素樹脂(B)では、構成単位として、エチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテルなど炭化水素系モノマーや、水酸基含有モノマー(例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−2−メチルブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテルなど);カルボキシル基含有モノマー(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、桂皮酸、3−アリルオキシプロピオン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、イタコン酸無水物、コハク酸無水物、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸無水物、フマル酸、フタル酸ビニル、ピロメリット酸ビニル、3−アリルオキシプロピオン酸など);アミノ基含有モノマー(例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなど);エポキシ基含有モノマー(例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、エポキシビニル、エポキシビニルエーテルなど);アルコキシシリル基含有モノマー(例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなど)、イソシアネート基含有モノマー(例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートなど)などの官能基含有モノマーを用いることができる。とくに、前記フッ素樹脂(B)に反応基を導入できる観点から、前記官能基含有モノマーを用いることが好ましく、中でも、水酸基含有モノマーを用いることがさらに好ましい。
【0045】
また、前記フッ素樹脂(B)としては、例えば、特公昭60−21686号公報、特開平3−121107号公報、特開平4−279612号公報、特開平4−28707号公報、特開平2−232221号公報などに記載されているようなものが挙げられ、さらに、より具体的には、TFE/アルキルビニルエーテル/ヒドロキシアルキルビニルエーテル系共重合体、CTFE/アルキルビニルエーテル/ヒドロキシアルキルビニルエーテル系共重合体、TFE/アルキルビニルエーテル/マレイン酸系共重合体、CTFE/アルキルビニルエーテル/マレイン酸系共重合体などが挙げられる。
【0046】
前記フッ素樹脂(B)の市販品としては、例えば、商品名「ルミフロン」(旭硝子株式会社製)、商品名「フルオネート」(大日本インキ化学工業株式会社製)、商品名「セフラルコート」(セントラル硝子株式会社製)、商品名「ザフロン」(東亜合成株式会社製)、商品名「ゼッフル」(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられる。
【0047】
<剥離剤組成物>
本発明の剥離剤組成物は、含フッ素ブロック共重合体(A)およびフッ素樹脂(B)を含む。
【0048】
前記剥離剤組成物において、前記含フッ素ブロック共重合体(A)は、前記フッ素樹脂(B)100重量部に対して、0.1重量部以上10重量部以下である。前記含フッ素ブロック共重合体(A)は、剥離層に剥離性を付与する観点から、前記フッ素樹脂(B)100重量部に対して、0.3重量部以上であることが好ましく、0.5重量部以上であることがより好ましく、そして、8重量部以下であることが好ましく、5重量部以下であることがより好ましい。
【0049】
前記剥離剤組成物には、硬化剤を含むことができる。前記硬化剤は、前記含フッ素ブロック共重合体(A)および/または前記フッ素樹脂(B)が有する官能基(架橋性基)に対して、反応性を有する官能基を2以上有する化合物である。前記硬化剤は、前記架橋性基と反応して架橋構造を形成することで、剥離層を硬化させる役割を果たす。前記硬化剤は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
前記硬化剤としては、前記含フッ素ブロック共重合体(A)および/または前記フッ素樹脂(B)が有する官能基(架橋性基)が有する架橋性基の種類に応じて選択されるが、例えば、イソシアネート系硬化剤、ブロック化イソシアネート系硬化剤、アミノ樹脂系硬化剤、金属アルコキシド系硬化剤などが挙げられる。これらのなかでも、イソシアネート系硬化剤が好ましい。
【0051】
前記イソシアネート系硬化剤としては、例えば、芳香族イソシアネート(例えば、2,4−(または2,6−)トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート)、脂環式イソシアネート(例えば、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ノルボルネンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、)、脂肪族イソシアネート(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート)などのイソシアネートモノマー;これらイソシアネートモノマーをトリメチロールプロパンなどの多価アルコールと付加したアダクト系イソシアネート化合物;イソシアヌレート化合物;ビュレット型化合物;さらには任意の適切なポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなどを付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネートなどが挙げられる。
【0052】
前記イソシアネート系硬化剤の市販品としては、例えば、商品名「D−110N、500、600、700」(三井武田ケミカル株式会社製)、商品名「コロネートHX、HXL、HXR、HKMR、EH、HL」(東ソー株式会社製)などが挙げられる。
【0053】
前記硬化剤は、前記含フッ素ブロック共重合体(A)および前記フッ素樹脂(B)の合計100重量部に対して、15重量部以上であることが好ましく、18重量部以上であることがより好ましく、そして、28重量部以下であることが好ましく、25重量部以下であることがより好ましい。
【0054】
また、前記剥離剤組成物には、硬化反応を促進し、形成される剥離層に良好な化学性能および物理性能を付与させる観点から、硬化触媒を含ませるのが好ましい。特に、低温において短時間で硬化させる場合には、硬化触媒を含有させるのがより好ましい。前記硬化触媒は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
前記硬化触媒としては、例えば、イソシアネート系硬化剤、ブロック化イソシアネート系硬化剤の反応を促進する触媒(例えば、オクチル酸錫、トリブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレートなどの錫触媒など)などが挙げられる。前記硬化触媒を用いる場合、前記硬化剤100重量部に対して、通常、0.001〜10重量部程度である。
【0056】
前記剥離剤組成物は、有機溶剤で希釈して調製することができる。
【0057】
前記有機溶剤としては、前記重合溶剤として例示したものと同様のものが使用できる。
【0058】
前記剥離剤組成物には、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤などの安定剤、着色剤、難燃剤、レベリング剤などを用いることができるが、前記含フッ素ブロック共重合体(A)および前記フッ素樹脂(B)の合計100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましい。
【0059】
本発明の剥離層は、前記剥離剤組成物から形成されるものであり、例えば、前記剥離剤組成物(溶液)を基材に塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層を基材上に形成することにより作製される。前記塗布の方法としては、従来公知の各種の方法を使用可能である。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法が挙げられる。前記乾燥は、使用する重合溶剤、硬化剤などによって、乾燥の温度および時間を適宜調整することが好ましいが、通常、80〜120℃で、5〜10分間程度である。
【0060】
前記基材としては、ポリエステル系樹脂、セルロース樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂などのプラスチックフィルム基材;上質紙、コート紙などの紙基材;などが挙げられる。
【0061】
前記剥離層は、製造性や機能付与の観点から、膜厚が、0.05〜5μmであることが好ましく、0.1〜1μmであることがより好ましく、0.3〜0.6μmであることがさらに好ましい。
【0062】
本発明の剥離性物品は、前記基材の表面に、前記剥離層が設けられたものである。前記剥離性物品としては、例えば、剥離性フィルム(離型フィルム)、離型紙、などが挙げられる。前記剥離性フィルムとしては、例えば、フレキシブルプリント基板用離型フィルム(FPC)、ACM基板用離型フィルムなどの電子部材用フィルム:などが挙げられる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例により何ら制限を受けるものではない。
【0064】
<含フッ素ブロック共重合体(A)の製造>
<製造例1−1>
温度計、撹拌機および還流冷却管を備えた5リットルの4つ口反応釜に、イソパラフィン(商品名「NAS−3」、日油株式会社製)1035重量部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら70℃に加熱した。その後、当該フラスコに、イソパラフィン333重量部およびメタクリル酸ラウリル(以下、LMAとも称す)162重量部からなる混合液と、イソパラフィン126重量部およびポリメリックペルオキシド(一般式(3)、RおよびR´にかかるアルキル基は−CHCH(CH)CHC(CHnは10、mは5)54重量部からなる混合液の両液を同時に30分かけて滴下し、さらに3.5時間重合反応を行い、ペルオキシ結合含有非フッ素セグメント(b)を有する共重合体の分散溶液を得た。
【0065】
続いて、上記のペルオキシ結合含有非フッ素セグメント(b)を有する共重合体の分散溶液に、イソパラフィン778重量部、フッ素単量体CH=CHCOO(CH(CFCF(以下、FA(C6)とも称す)486重量部、メタクリル酸ラウリル(LMA)432重量部からなる混合液を1.5時間かけて滴下し、さらに2時間重合反応を行った。その後、80℃に昇温して3時間重合反応を行い、含フッ素セグメント(a)と非フッ素セグメント(b)からなる含フッ素ブロック共重合体(A)を含む分散液を得た。得られた含フッ素ブロック共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は48,000であった。
【0066】
なお、表1では、各単量体の重量は、上記の製造例で使用した単量体成分の合計を100重量部として換算した値で表記した。
【0067】
<剥離剤組成物の製造>
<実施例1−1>
上記で得られ含フッ素ブロック共重合体(A)の分散溶液を、キシレンで希釈して濃度30重量%の分散溶液を調整した。当該含フッ素ブロック共重合体(A)の分散溶液中の含フッ素ブロック共重合体(A)が、フッ素樹脂(B)溶液(商品名「ルミフロンLF200」、旭硝子株式会社製、濃度60重量%)のフッ素樹脂(B)(固形分)100重量部に対して、3重量部となるように配合した。さらに、フッ素樹脂(B)(固形分)100重量部に対して、硬化剤としてイソシアネート系硬化剤(商品名「コロネートHX」、東ソー株式会社製)10重量部、硬化触媒としてジブチル錫ジラウレート(0.0001wt%キシレン希釈溶液)3重量部混合した後、キシレンで5倍希釈して、剥離剤組成物を得た。
【0068】
<剥離性物品の作製>
上記で得られた剥離剤組成物を、PETフィルム(商品名「コスモシャインA4100」、東洋紡株式会社製)にバーコーターNo.3(第一理化製)を用いて、乾燥膜厚が0.5μm程度になるように、コーティングした。その後、100℃で5分間、加熱硬化を行うことで、剥離性物品の試験片を得た。得られた試験片について、下記の(1)〜(4)の評価方法で得られた結果を表3に示す。
【0069】
<初期剥離性の評価>
試験片の初期剥離性について、JIS Z 0237に準拠して、以下の条件により、剥離力の評価を行った。3N以下で良好とした。
テープ:幅25mmセロテープ(日東電工製31B)
試験機:AUTOGRAPH AGS−H 500N(島津製作所製)
方法:試験片表面にセロテープを貼り、引張速度200mm/min、180°で剥がした際の剥離力を測定した
【0070】
<塗膜外観の評価>
試験片の塗膜外観について、剥離層の表面を目視により外観を判断した。○以上で合格とした。
○:平滑性に優れる
△:微小な凹凸やムラがみられる
×:凹凸、ムラや白濁がみられる
【0071】
<ジッピングの有無の評価>
初期剥離性の評価において、テープを剥がす際に、剥離が重く、滑らかに剥離しない現象が生じたかを評価した。
○以上で合格とした。
○:ジッピングが生じない
△:ジッピングがわずかに生じる
×:ジッピングがひどく生じる
【0072】
<耐熱試験後の剥離性の評価>
各試験片を50℃で12時間の条件下にさらした後、上記の剥離性の評価を行った。6N以下で良好とした。
【0073】
<含フッ素ブロック共重合体(A)の製造>
<製造例1−2〜1−6>
製造例1−1に記載の各単量体を、表1に記載の単量体とその配合割合に変更したこと以外は、製造例1−1と同様の操作を行い、製造例1−2〜1−6の含フッ素ブロック共重合体(A)を得た。なお、使用した単量体成分の合計重量は、1080重量部である。
【0074】
<剥離剤組成物の製造および剥離性物品の作製>
<実施例1−2〜1−6>
実施例1−1に記載の含フッ素ブロック共重合体(A)を、製造例1−2〜1−6の含フッ素ブロック共重合体(A)に変更したこと以外は、実施例1−1と同様の操作を行い、実施例1−2〜1−6の剥離剤組成物を得た。さらに、当該剥離剤組成物を用いて、上述の操作により、実施例1−2〜1−6の剥離性物品を作製した。得られた試験片について、上記の(1)〜(4)の評価方法で得られた結果を表3に示す。
【0075】
<含フッ素ブロック共重合体の製造>
<比較製造例2−1〜2−4>
製造例1−1に記載の各単量体を、表2に記載の単量体とその配合割合に変更したこと以外は、製造例1−1と同様の操作を行い、比較製造例2−1〜2−4の含フッ素ブロック共重合体を得た。なお、使用した単量体成分の合計重量は、1080重量部である。
【0076】
<剥離剤組成物の製造および剥離性物品の作製>
<比較例2−1〜2−5>
実施例1−1に記載の含フッ素ブロック共重合体(A)を使用しない、あるいは、比較製造例2−1〜2−4の含フッ素ブロック共重合体に変更したこと以外は、実施例1−1と同様の操作を行い、比較例2−1〜2−5の剥離剤組成物を得た。さらに、当該剥離剤組成物を用いて、上述の操作により、比較例2−1〜2−5の剥離性物品を作製した。得られた試験片について、上記の(1)〜(4)の評価方法で得られた結果を表4に示す。
【0077】
<含フッ素ランダム共重合体の製造>
<比較製造例2−5>
温度計、撹拌機および還流冷却管を備えた5リットルの4つ口フラスコに、前記イソパラフィン1035重量部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら70℃に加熱した。その後、当該フラスコに、イソパラフィン778重量部、メタクリル酸ラウリル(LMA)594重量部、および含フッ素単量体CH=CHCOO(CH(CFCF(FA(C6))486重量部からなる混合液と、イソパラフィン459重量部およびt−ブチルパーオキシピバレート(日油製:パーブチルPV)26.8重量部からなる混合液の両液を同時に2時間かけて滴下し、さらに3時間重合反応を行った。その後、当該フラスコをさらに80℃に昇温して3時間重合反応を行うことで、含フッ素ランダム共重合体を含む分散液を得た。得られた含フッ素ランダム共重合体の重量平均分子量(Mw)は、45,000であった。
【0078】
<剥離剤組成物の製造および剥離性物品の作製>
<比較例2−6>
実施例1−1に記載の含フッ素ブロック共重合体(A)を、比較製造例2−5の含フッ素ランダム共重合体に変更したこと以外は、実施例1−1と同様の操作を行い、比較例2−6の剥離剤組成物を得た。さらに、当該剥離剤組成物を用いて、上述の操作により、比較例2−6の剥離性物品を作製した。得られた試験片について、上記の(1)〜(4)の評価方法で得られた結果を表4に示す。
【0079】
<剥離剤組成物の製造および剥離性物品の作製>
<比較例2−7〜2−8>
実施例1−1に記載の含フッ素ブロック共重合体(A)を、表4に記載のフッ素化合物、またはフッ素系界面活性剤に変更したこと以外は、実施例1−1と同様の操作を行い、比較例2−7〜2−8の剥離剤組成物を得た。さらに、当該剥離剤組成物を用いて、上述の操作により、比較例2−7〜2−8の剥離性物品を作製した。得られた試験片について、上記の(1)〜(4)の評価方法で得られた結果を表4に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
表1および2中、FA(C6)は、CH=CHCOO(CH(CFCF
LMAは、メタクリル酸ラウリル;
SAは、アクリル酸ステアリル;
SMAは、メタクリル酸ステアリル;
BeAは、アクリル酸ベヘニル;
BMAは、メタクリル酸ブチル;
CHMAは、メタクリル酸シクロヘキシル;を示す。
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】
表4中、フッ素化合物は、ビスコート8FM(大阪有機化学);
フッ素系界面活性剤は、メガファックF−551(DIC社製);を示す。