【文献】
JEDRZEJ KIELKIEWICZ,Polimerization of acrylates on matrixes of β-naphthol derivatives,POLIMERY,1984年,29(6),216-219
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記化合物及び/又は前記樹脂(A)と、前記ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)と、前記感放射線性組成物に任意に含まれ得るその他の任意成分(D)と、の含有量比((A)/(B)/(D))が、前記感放射線性組成物の固形分100質量%に対して、1〜99質量%/99〜1質量%/0〜98質量%である、請求項15に記載の感放射線性組成物。
前記水と混和しない溶媒が、トルエン、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及び酢酸エチルからなる群より選ばれる1種以上の溶媒である、請求項27又は28に記載の精製方法。
前記第一抽出工程後、前記化合物及び/又は前記樹脂を含む溶液相を、さらに水に接触させて、前記化合物及び/又は前記樹脂中の不純物を抽出する第二抽出工程含む、請求項27〜29のいずれか1項に記載の精製方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル化合物」とは、アクリロイル化合物又はメタクリロイル化合物を意味する。また、「アクリロイル化合物」とは、アクリロイル基(H
2C=CH−C(=O)−)を含む化合物を意味し、「メタクリロイル化合物」とは、メタクリロイル基(H
2C=C(CH
3)−C(=O)−)を含む化合物を意味する。
【0011】
〔化合物〕
本実施形態の化合物は、下記式(A)で表される。本実施形態の化合物は、多環芳香族構造を有するため、耐熱性に優れる。そのため、フォトレジストの成分や、電気・電子部品用材料の樹脂原料、光硬化性樹脂等の硬化性樹脂原料、構造用材料の樹脂原料、樹脂硬化剤又は各種光学形成組成物として好適に用いることができる。
【化9】
(式(A)中、Xは、炭素数1〜60の2m価の基又は単結合であり、Zは、各々独立して、酸素原子、硫黄原子又は無架橋であることを表し、R
1は、各々独立して、炭素数1〜30の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2〜30のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜30のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボン酸基、チオール基、水酸基又は水酸基の水素原子がビニルフェニルメチル基で置換された基であり、前記アルキル基、前記アリール基、前記アルケニル基、前記アルコキシ基は、エーテル結合、ケトン結合またはエステル結合を含んでいても良く、R
1Aは、各々独立して、メチル基又は水素原子であり、kは、各々独立して、0〜2の整数であり、但し、すべてのkが同時に0となることはなく、mは、1〜3の整数であり、nは、各々独立して、0〜5の整数であり、pは、各々独立して、0又は1である。)
【0012】
上記式(A)におけるXは、炭素数1〜60の2m価の基又は単結合であり、このXを介して各々の芳香環が結合している。上記2m価の基とは、m=1のときには、炭素数1〜60のアルキレン基、m=2のときには、炭素数1〜60のアルカンテトライル基、m=3のときには、炭素数2〜60のアルカンヘキサイル基のことを表す。
【0013】
2m価の基としては、例えば、直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基、又は脂環式炭化水素基等が挙げられる。ここで、脂環式炭化水素基については、有橋脂環式炭化水素基も含まれる。また、2m価の基は、二重結合、ヘテロ原子若又は炭素数6〜60の芳香族基を有していてもよい。
【0014】
上記炭素数1〜60の2価の基(アルキレン基)としては、特に限定されないが、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、オクタデシレン基、シクロプロピレン基、シクロヘキシレン基、アダマンチレン基、フェニレン基、トシレン基、ジメチルフェニレン基、エチルフェニレン基、プロピルフェニレン基、ブチルフェニレン基、シクロヘキシルフェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフチレン基、アントラシレン基、フェナントリレン基、ピレニレン基、シクロプロピルメチレン基、シクロヘキシルメチレン基、アダマンチルメチレン基、フェニルメチレン基、トシルメチレン基、ジメチルフェニルメチレン基、エチルフェニルメチレン基、プロピルフェニルメチレン基、ブチルフェニルメチレン基、シクロヘキシルフェニルメチレン基、ビフェニルメチレン基、ターフェニルメチレン基、ナフチルメチレン基、アントラシレルメチレン基、フェナントリルメチレン基、ピレニルメチレン基等が挙げられる。
【0015】
上記炭素数1〜60の4価の基(アルカンテトライル基)としては、特に限定されないが、例えば、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、オクタデカンテトライル基、シクロプロパンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、アダマンタンテトライル基、ベンゼンテトライル基、トルエンテトライル基、ジメチルベンゼンテトライル基、エタンテトライル基、プロピルベンゼンテトライル基、ブチルベンゼンテトライル基、シクロヘキシルベンゼンテトライル基、ビフェニルテトライル基、ターフェニルテトライル基、ナフタレンテトライル基、アントラセンテトライル基、フェナントレンテトライル基、ピレンテトライル基、シクロプロパンジメチレン基、シクロヘキサンジメチレン基、アダマンタンジメチレン基、ベンゼンジメチレン基、トルエンジメチレン基、ジメチルベンゼンジメチレン基、エチルベンゼンジメチレン基、プロピルベンゼンジメチレン基、ブチルベンゼンジメチレン基、シクロヘキシルベンゼンジメチレン基、ビフェニルジメチレン基、ターフェニルジメチレン基、ナフタレンジメチレン基、アントラセンジメチレン基、フェナントレンジメチレン基、ピレンジメチレン基等が挙げられる。
【0016】
上記炭素数2〜60の6価の基(アルカンヘキサイル基)としては、特に限定されないが、例えば、エタンヘキサイル基、プロパンヘキサイル基、ブタンヘキサイル基、ペンタンヘキサイル基、ヘキサンヘキサイル基、ヘプタンヘキサイル基、オクタンヘキサイル基、ノナンヘキサイル基、デカンヘキサイル基、オクタデカンヘキサイル基、シクロプロパンヘキサイル基、シクロヘキサンヘキサイル基、アダマンタンヘキサイル基、ベンゼンヘキサイル基、トルエンヘキサイル基、ジメチルベンゼンヘキサイル基、エタンヘキサイル基、プロピルベンゼンヘキサイル基、ブチルベンゼンヘキサイル基、シクロヘキシルベンゼンヘキサイル基、ビフェニルヘキサイル基、ターフェニルヘキサイル基、ナフタレンヘキサイル基、アントラセンヘキサイル基、フェナントレンヘキサイル基、ピレンヘキサイル基、シクロプロパントリメチレン基、シクロヘキサントリメチレン基、アダマンタントリメチレン基、ベンゼントリメチレン基、トルエントリメチレン基、ジメチルベンゼントリメチレン基、エチルベンゼントリメチレン基、プロピルベンゼントリメチレン基、ブチルベンゼントリメチレン基、ビフェニルトリメチレン基、ターフェニルトリメチレン基、ナフタレントリメチレン基、アントラセントリメチレン基、フェナントレントリメチレン基、ピレントリメチレン基等が挙げられる。
【0017】
これらのうち、耐熱性の観点から、フェニレン基、トシレン基、ジメチルフェニレン基、エチルフェニレン基、プロピルフェニレン基、ブチルフェニレン基、シクロヘキシルフェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフチレン基、アントラシレン基、フェナントリレン基、ピレニレン基、フェニルメチレン基、トシルメチレン基、ジメチルフェニルメチレン基、エチルフェニルメチレン基、プロピルフェニルメチレン基、ブチルフェニルメチレン基、シクロヘキシルフェニルメチレン基、ビフェニルメチレン基、ターフェニルメチレン基、ナフチルメチレン基、アントラシレルメチレン基、フェナントリルメチレン基又はピレニルメチレン基が好ましい。これらの中でも特に原料の入手性の観点から、フェニルメチレン基、トシルメチレン基、ジメチルフェニルメチレン基、エチルフェニルメチレン基、プロピルフェニルメチレン基、ブチルフェニルメチレン基、シクロヘキシルフェニルメチレン基、ビフェニルメチレン基、ターフェニルメチレン基、ナフチルメチレン基、アントラシレルメチレン基、フェナントリルメチレン基又はピレニルメチレン基が好ましい。
【0018】
上記式(A)におけるZは、各々独立して、酸素原子、硫黄原子又は無架橋であることを表す。Zは、高耐熱性の観点から、酸素原子であることが好ましい。また、Zは、高溶解性の観点から、無架橋であることが好ましい。
【0019】
上記式(A)におけるR
1は、各々独立して、炭素数1〜30の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2〜30のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜30のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボン酸基、チオール基、水酸基又は水酸基の水素原子がビニルフェニルメチル基で置換された基であり、前記アルキル基、前記アリール基、前記アルケニル基、前記アルコキシ基は、エーテル結合、ケトン結合またはエステル結合を含んでいても良い。このなかでも、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フッ素原子、塩素元素、臭素元素、ヨウ素元素等が挙げられる。
【0020】
上記式(A)におけるR
1Aは、各々独立して、メチル基又は水素原子である。
【0021】
上記式(A)におけるkは、各々独立して、0〜2の整数である。但し、すべてのkが同時に0となることはない。
【0022】
上記式(A)におけるmは、1〜3の整数である。溶解性の観点から、mは1〜2であることが好ましい。
【0023】
上記式(A)におけるnは、各々独立して、0〜5の整数である。nは、溶解性の観点から、1〜5の整数であることが好ましい。また、nは、耐熱性の観点からは、0であることが好ましい。
【0024】
上記式(A)におけるpは、各々独立して、0又は1である。耐熱性の観点から、上記式(A)におけるpのいずれもが1であることが好ましい。
【0025】
上記式(A)中、Xは、炭素数1〜19の2m価の基又は単結合であり、Zは、各々独立して、酸素原子、硫黄原子又は無架橋であることを表し、R
1は、各々独立して、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子であり、R
1Aは、各々独立して、メチル基又は水素原子であり、kは、各々独立して、0〜2の整数であり、但し、すべてのkが同時に0となることはなく、mは、1〜3の整数であり、nは、各々独立して、0〜5の整数であり、pは、各々独立して、0又は1であることが好ましい。
【0026】
また、本実施形態の(メタ)アクリロイル化合物は、下記式(1)で表される化合物であることが耐熱性の観点から好ましい。
【化10】
(式(1)中、X、R
1、R
1A、m及びnは、前記式(A)で説明したものと同義である。)
【0027】
また、耐熱性の点から、本実施形態において、前記式(1)で表される化合物は、式(1−1)で表される化合物であることが好ましい。
【化11】
(式(1−1)中、X、R
1、R
1A、m、及びnは、前記式(A)で説明したものと同義である。)
【0028】
さらに、耐熱性、有機溶媒への溶解性の観点から、本実施形態において、上記式(1)で表される化合物の具体例を以下に例示するがここに列挙した限りではない。また、下記式(4)又は(7)で表される化合物であることが好ましい。
【化12】
【化13】
【0029】
なお、下記式中、R
2は下記式(6')で表される基であり、Yは、酸素原子、硫黄原子又は無架橋であり、m'及びm"は、各々独立して、0〜5の整数である。
【化14】
式(6')中、R1Aはメチル基又は水素原子である。
【0030】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【0031】
本実施形態の式(1)で表される化合物は、公知の方法で製造することができる。例えば、下記式(2)で表される化合物と、(メタ)アクリロイル基導入試剤とを、塩基触媒存在下にて反応させる工程を含む製造方法が挙げられる。当該製造方法により得られる式(1)で表される化合物の精製方法は、特に限定されないが、例えば、晶析等が挙げられる。この製造方法によれば、特に副生成物が少なく、効率良く製造することができる。また、下記式(2)で表される化合物と、(メタ)アクリロイル基導入試剤とを、酸性触媒存在下にて反応させて式(1)で表される化合物を得ることもできる。これら反応の際には重合禁止剤を併用することもできる。
【化35】
(式(2)中、Xは、炭素数1〜19の2m価の基又は単結合であり、R
1は、各々独立して、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子であり、mは、1〜3の整数であり、nは、各々独立して、0〜5の整数である。)
【0032】
耐熱性、有機溶媒への溶解性の点から、本実施形態において、前記式(2)で表される化合物は、式(2−1)で表される化合物であることが好ましい。
【化36】
(式(2−1)中、X、R
1、m及びnは、前記式(2)と同様である。)
【0033】
さらに具体的に例示すると、下記式(3)で表される化合物1モル、メタクリル酸クロライド2.6モル、炭酸カリウム5.2モルを3Lフラスコに入れてジメチルホルムアミド中オイルバスで加熱しながら90℃にてジメチルホルムアミド溶媒中で反応させ、その後反応溶液を冷却させて粗結晶を晶析することにより取り出し、得られた粗結晶及び水酸化ナトリウムをメタノール溶媒にて4時間還流し、空冷により冷却した後析出した結晶を濾過、リンスすることにより下記式(4)で表される化合物を製造することができる。
【化37】
【化38】
【0034】
本実施形態に用いる式(2)で表される化合物は、例えば、式(5)で表される化合物と、炭素数1〜19のアルデヒドとを、比較的高温で酸触媒存在下にて反応させて製造することができる。式(5)で表される化合物と、炭素数1〜19のアルデヒドとを、60〜120℃という比較的高温で酸触媒存在下にて反応させて製造する方法は、特に副生成物が少なく、効率よく製造することができる。アルデヒドとして何を用いるかによって、製造された式(1)中の基Xの構造が決定される。具体的に例示すると、2,6−ナフタレンジオールと4−ビフェニルカルボキシアルデヒドとを硫酸触媒存在下に100℃にて反応させて、式(3)で表される化合物を製造することができる。
【化39】
(式(5)中、R
1は、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子であり、nは0〜5の整数である。)
【0035】
上記式(5)で表される化合物としては、ジヒドロキシナフタレン骨格を有する化合物であれば特に制限なく用いられる。ナフタレン骨格を有することで、ベンゼン環骨格を有するジヒドロキシ化合物を用いて製造されたポリフェノール化合物よりも耐熱性の点で性能が向上することが期待できる。例えば、ナフタレンジオール、メチルナフタレンジオール、エチルナフタレンジオール、プロピルナフタレンジオール、ブチルナフタレンジオール、フルオロナフタレンジオール、クロロナフタレンジオール、ブロモナフタレンジオール、ヨードナフタレンジオールが用いられる。これらは試薬にて容易に入手可能である。また、式(5)で表される化合物として1種類又は2種類以上を用いることができる。
【0036】
本実施形態に用いる炭素数1〜19のアルデヒドとして何を用いるかによって、製造された式(2)中の基Xの構造が決定される。前記炭素数1〜19のアルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、オクチルアルデヒド、ノニルアルデヒド、デシルアルデヒド、オクタデシルアルデヒド、シクロプロピルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、アダマンチルカルボキシアルデヒド、ベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、ジメチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、プロピルベンズアルデヒド、ブチルベンズアルデヒド、シクロヘキシルベンズアルデヒド、ビフェニルカルボキシアルデヒド、ターフェニルカルボキシアルデヒド、ナフタレンカルボキシアルデヒド、アントラセンカルボキシアルデヒド、フェナントレンカルボキシアルデヒド、ピレンカルボキシアルデヒド、メタンジアルデヒド、エタンジアルデヒド、プロピオンジアルデヒド、ブチルジアルデヒド、ペンチルジアルデヒド、ヘキシルジアルデヒド、ヘプチルジアルデヒド、オクチルジアルデヒド、ノニルジアルデヒド、デシルジアルデヒド、オクタデシルジアルデヒド、シクロプロピルジアルデヒド、シクロヘキシルジアルデヒド、アダマンチルジカルボキシアルデヒド、ベンゼンジアルデヒド、メチルベンゼンジアルデヒド、ジメチルベンゼンジアルデヒド、エチルベンゼンジアルデヒド、プロピルベンゼンジアルデヒド、ブチルベンゼンジアルデヒド、シクロヘキシルベンゼンジアルデヒド、ビフェニルジカルボキシアルデヒド、ターフェニルジカルボキシアルデヒド、ナフタレンジカルボキシアルデヒド、アントラセンジカルボキシアルデヒド、フェナントレンジカルボキシアルデヒド、ピレンジカルボキシアルデヒド、メタントリアルデヒド、エタントリアルデヒド、プロピオントリアルデヒド、ブチルトリアルデヒド、ペンチルトリアルデヒド、ヘキシルトリアルデヒド、ヘプチルトリアルデヒド、オクチルトリアルデヒド、ノニルトリアルデヒド、デシルトリアルデヒド、オクタデシルトリアルデヒド、シクロプロピルトリアルデヒド、シクロヘキシルトリアルデヒド、アダマンチルトリカルボキシアルデヒド、ベンゼントリアルデヒド、メチルベンゼントリアルデヒド、ジメチルベンゼントリアルデヒド、エチルベンゼントリアルデヒド、プロピルベンゼントリアルデヒド、ブチルベンゼントリアルデヒド、シクロヘキシルベンゼントリアルデヒド、ビフェニルトリカルボキシアルデヒド、ターフェニルトリカルボキシアルデヒド、ナフタレントリカルボキシアルデヒド、アントラセントリカルボキシアルデヒド、フェナントレントリカルボキシアルデヒド、ピレントリカルボキシアルデヒドが挙げられる。
【0037】
これらのうち、耐熱性の観点から芳香環を有するベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、ジメチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、プロピルベンズアルデヒド、ブチルベンズアルデヒド、シクロヘキシルベンズアルデヒド、ビフェニルカルボキシアルデヒド、ターフェニルカルボキシアルデヒド、ナフタレンカルボキシアルデヒド、アントラセンカルボキシアルデヒド、フェナントレンカルボキシアルデヒド、ピレンカルボキシアルデヒド、ベンゼンジアルデヒド、メチルベンゼンジアルデヒド、ジメチルベンゼンジアルデヒド、エチルベンゼンジアルデヒド、プロピルベンゼンジアルデヒド、ブチルベンゼンジアルデヒド、シクロヘキシルベンゼンジアルデヒド、ビフェニルジカルボキシアルデヒド、ターフェニルジカルボキシアルデヒド、ナフタレンジカルボキシアルデヒド、アントラセンジカルボキシアルデヒド、フェナントレンジカルボキシアルデヒド、ピレンジカルボキシアルデヒド、ベンゼントリアルデヒド、メチルベンゼントリアルデヒド、ジメチルベンゼントリアルデヒド、エチルベンゼントリアルデヒド、プロピルベンゼントリアルデヒド、ブチルベンゼントリアルデヒド、シクロヘキシルベンゼントリアルデヒド、ビフェニルトリカルボキシアルデヒド、ターフェニルトリカルボキシアルデヒド、ナフタレントリカルボキシアルデヒド、アントラセントリカルボキシアルデヒド、フェナントレントリカルボキシアルデヒド、ピレントリカルボキシアルデヒドが好ましい。これらの中でも特にベンズアルデヒド、ビフェニルカルボキシアルデヒド、ターフェニルカルボキシアルデヒド、ナフタレンカルボキシアルデヒド、アントラセンカルボキシアルデヒド、フェナントレンカルボキシアルデヒド、ピレンカルボキシアルデヒド、ベンゼンジアルデヒド、ビフェニルジカルボキシアルデヒド、ターフェニルジカルボキシアルデヒド、ナフタレンジカルボキシアルデヒド、アントラセンジカルボキシアルデヒド、フェナントレンジカルボキシアルデヒド、ピレンジカルボキシアルデヒドが好ましい。
【0038】
炭素数1〜19のアルデヒドは工業製品又は試薬として、容易に入手可能である。また、炭素数1〜19のアルデヒドとして1種類又は2種類以上を用いることができる。
【0039】
本実施形態に用いる(メタ)アクリロイル基導入試剤としては、式(2)で表される化合物の水酸基の水素原子を下記式(6)で表される(メタ)アクリロイル基に置換できる化合物であれば特に制限なく用いられる。このような化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイル酸クロライド、(メタ)アクリロイル酸ブロマイド、(メタ)アクリロイル酸ヨーダイド又は(メタ)アクリロイル酸等が挙げられる。また、(メタ)アクリロイル導入試剤として1種類又は2種類以上を用いることができる。
【化40】
(式(6)中、R
1Aはメチル基又は水素原子である。)
【0040】
本実施形態の式(2)で表される化合物と(メタ)アクリロイル基導入試剤との反応に用いられる塩基触媒は、周知の塩基触媒より適宜選択することができる。例えば、金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属水酸化物等)、金属炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸塩等)、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸水素塩等の無機塩基、アミン類(例えば、第3級アミン類(トリエチルアミン等のトリアルキルアミン、N,N−ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン、1−メチルイミダゾール等の複素環式第3級アミン)等、カルボン酸金属塩(酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム等の酢酸アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩等)等の有機塩基が挙げられる。入手の容易さや取り扱い易さ等の製造上の観点から、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが好ましい。また、塩基触媒として1種類又は2種類以上を用いることができる。
【0041】
次に、式(2)で表される化合物と、(メタ)アクリロイル基導入試剤との反応条件について詳細に説明する。
【0042】
反応は、式(2)で表される化合物1モルに対し、(メタ)アクリロイル基導入試剤を1モル〜過剰量、及び塩基触媒を0.001〜1モル使用し、常圧で、20〜150℃で20分〜100時間程度反応させることにより進行する。反応後、公知の方法により目的物を精製する。例えば、氷水等で冷却させ結晶を析出、単離して粗結晶を得る方法が挙げられる。
【0043】
続いて、粗結晶を有機溶媒に溶解させ、強塩基を加え、常圧で、20〜150℃で20分〜100時間程度反応させる。反応後、公知の方法により目的物を単離する。例えば、反応液を濃縮し、純水を加えて反応生成物を析出させ、室温まで冷却した後、濾過を行って分離、得られた固形物を濾過し、乾燥させた後、カラムクロマトにより、副生成物と分離精製し、溶媒留去、濾過、乾燥を行って式(1)で表される目的化合物を得る方法が挙げられる。
【0044】
次に、式(1')で表される本実施形態の化合物について説明する。耐熱性の点から、上記式(A)で表される化合物は、下記式(1')で表される化合物であることが好ましい。
【化41】
(式(1')中、X、R
1、R
1A、m及びnは、前記式(A)で説明したものと同義である。)
【0045】
耐熱性、有機溶媒への溶解性の点から、本実施形態において、前記式(1')で表される化合物は、下記式(1'−1)で表される化合物であることが好ましい。
【化42】
(式(1'−1)中、X、R
1、R
1A、m及びnは、前記式(A)で説明したものと同義である。)
【0046】
さらに、耐熱性の観点から、本実施形態において、上記式(1')で表される化合物は、下記式(4')で表される化合物であることが好ましい。
【化43】
【0047】
本実施形態の式(1')の化合物は、公知の方法で製造することができる。例えば、式(2')で表される化合物と、(メタ)アクリロイル基導入試剤とを、塩基触媒存在下にて反応させる工程を含む製造方法が挙げられる。当該製造方法により得られる式(1')で表される化合物の精製方法は、特に限定されないが、例えば、晶析等が挙げられる。この製造方法によれば、特に副生成物が少なく、効率良く製造することができる。また、式(2')で表される化合物と、(メタ)アクリロイル基導入試剤とを、酸性触媒存在下にて反応させて式(1')で表される化合物を得ることもできる。これら反応の際には重合禁止剤を併用することもできる。
【化44】
(式(2')中、Xは、炭素数1〜19の2m価の基又は単結合であり、R
1は、各々独立して、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子であり、mは、1〜3の整数であり、nは、各々独立して、0〜5の整数である。)
【0048】
耐熱性、有機溶媒への溶解性の点から、本実施形態において、前記式(2')で表される化合物は、式(2'−1)で表される化合物であることが好ましい。
【化45】
(式(2'−1)中、X、R
1、m及びnは、前記式(2')と同様である。)
【0049】
具体的に例示すると、下記式(3')で表される化合物1モル、メタアクリロイルクロライド5.2モル、炭酸カリウム10.4モルを3Lフラスコに入れてジメチルホルムアミド中オイルバスで加熱しながら90℃にてジメチルホルムアミド溶媒中で反応させ、その後反応溶液を冷却させて粗結晶を晶析することにより取り出し、得られた粗結晶及び水酸化ナトリウムをメタノール溶媒にて4時間還流し、空冷により冷却した後析出した結晶を濾過、リンスすることにより下記式(4')で表される化合物を製造することができる。
【化46】
【化47】
【0050】
本実施形態に用いる式(2')で表される化合物は、例えば、下記式(5)で表される化合物と、炭素数1〜19のアルデヒドとを、20〜60℃という比較的低温で酸触媒存在下にて反応させて製造することができる。下記式(5)で表される化合物と、炭素数1〜19のアルデヒドとを、比較的低温で酸触媒存在下にて反応させて製造する方法は、特に副生成物が少なく、効率よく製造することができる。アルデヒドとして何を用いるかによって、製造された式(1')中の基Xの構造が決定される。具体的に例示すると、2,6−ナフタレンジオールと4−ビフェニルカルボキシアルデヒドとを硫酸触媒存在下に30℃にて反応させて、上記式(3')で表される化合物を製造することができる。
【化48】
(式(5)中、R
1は、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子であり、nは0〜5の整数である。)
【0051】
本実施形態に用いる式(5)で表される化合物は、ジヒドロキシナフタレン骨格を有する化合物であれば特に制限なく用いられる。ナフタレン骨格を有することで、ベンゼン環骨格を有するジヒドロキシ化合物を用いて製造されたポリフェノール化合物よりも耐熱性の点で性能が向上することが期待できる。例えば、ナフタレンジオール、メチルナフタレンジオール、エチルナフタレンジオール、プロピルナフタレンジオール、ブチルナフタレンジオール、フルオロナフタレンジオール、クロロナフタレンジオール、ブロモナフタレンジオール、ヨードナフタレンジオールが用いられる。これらは試薬にて容易に入手可能である。また、式(5)で表される化合物として1種類又は2種類以上を用いることができる。
【0052】
本実施形態に用いる炭素数1〜19のアルデヒドとして何を用いるかによって、製造された式(2')中の基Xの構造が決定される。前記炭素数1〜19のアルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、オクチルアルデヒド、ノニルアルデヒド、デシルアルデヒド、オクタデシルアルデヒド、シクロプロピルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、アダマンチルカルボキシアルデヒド、ベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、ジメチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、プロピルベンズアルデヒド、ブチルベンズアルデヒド、シクロヘキシルベンズアルデヒド、ビフェニルカルボキシアルデヒド、ターフェニルカルボキシアルデヒド、ナフタレンカルボキシアルデヒド、アントラセンカルボキシアルデヒド、フェナントレンカルボキシアルデヒド、ピレンカルボキシアルデヒド、メタンジアルデヒド、エタンジアルデヒド、プロピオンジアルデヒド、ブチルジアルデヒド、ペンチルジアルデヒド、ヘキシルジアルデヒド、ヘプチルジアルデヒド、オクチルジアルデヒド、ノニルジアルデヒド、デシルジアルデヒド、オクタデシルジアルデヒド、シクロプロピルジアルデヒド、シクロヘキシルジアルデヒド、アダマンチルジカルボキシアルデヒド、ベンゼンジアルデヒド、メチルベンゼンジアルデヒド、ジメチルベンゼンジアルデヒド、エチルベンゼンジアルデヒド、プロピルベンゼンジアルデヒド、ブチルベンゼンジアルデヒド、シクロヘキシルベンゼンジアルデヒド、ビフェニルジカルボキシアルデヒド、ターフェニルジカルボキシアルデヒド、ナフタレンジカルボキシアルデヒド、アントラセンジカルボキシアルデヒド、フェナントレンジカルボキシアルデヒド、ピレンジカルボキシアルデヒド、メタントリアルデヒド、エタントリアルデヒド、プロピオントリアルデヒド、ブチルトリアルデヒド、ペンチルトリアルデヒド、ヘキシルトリアルデヒド、ヘプチルトリアルデヒド、オクチルトリアルデヒド、ノニルトリアルデヒド、デシルトリアルデヒド、オクタデシルトリアルデヒド、シクロプロピルトリアルデヒド、シクロヘキシルトリアルデヒド、アダマンチルトリカルボキシアルデヒド、ベンゼントリアルデヒド、メチルベンゼントリアルデヒド、ジメチルベンゼントリアルデヒド、エチルベンゼントリアルデヒド、プロピルベンゼントリアルデヒド、ブチルベンゼントリアルデヒド、シクロヘキシルベンゼントリアルデヒド、ビフェニルトリカルボキシアルデヒド、ターフェニルトリカルボキシアルデヒド、ナフタレントリカルボキシアルデヒド、アントラセントリカルボキシアルデヒド、フェナントレントリカルボキシアルデヒド、ピレントリカルボキシアルデヒドが挙げられる。
【0053】
これらのうち、耐熱性の観点から芳香環を有するベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、ジメチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、プロピルベンズアルデヒド、ブチルベンズアルデヒド、シクロヘキシルベンズアルデヒド、ビフェニルカルボキシアルデヒド、ターフェニルカルボキシアルデヒド、ナフタレンカルボキシアルデヒド、アントラセンカルボキシアルデヒド、フェナントレンカルボキシアルデヒド、ピレンカルボキシアルデヒド、ベンゼンジアルデヒド、メチルベンゼンジアルデヒド、ジメチルベンゼンジアルデヒド、エチルベンゼンジアルデヒド、プロピルベンゼンジアルデヒド、ブチルベンゼンジアルデヒド、シクロヘキシルベンゼンジアルデヒド、ビフェニルジカルボキシアルデヒド、ターフェニルジカルボキシアルデヒド、ナフタレンジカルボキシアルデヒド、アントラセンジカルボキシアルデヒド、フェナントレンジカルボキシアルデヒド、ピレンジカルボキシアルデヒド、ベンゼントリアルデヒド、メチルベンゼントリアルデヒド、ジメチルベンゼントリアルデヒド、エチルベンゼントリアルデヒド、プロピルベンゼントリアルデヒド、ブチルベンゼントリアルデヒド、シクロヘキシルベンゼントリアルデヒド、ビフェニルトリカルボキシアルデヒド、ターフェニルトリカルボキシアルデヒド、ナフタレントリカルボキシアルデヒド、アントラセントリカルボキシアルデヒド、フェナントレントリカルボキシアルデヒド、ピレントリカルボキシアルデヒドが好ましい。これらの中でも特にベンズアルデヒド、ビフェニルカルボキシアルデヒド、ターフェニルカルボキシアルデヒド、ナフタレンカルボキシアルデヒド、アントラセンカルボキシアルデヒド、フェナントレンカルボキシアルデヒド、ピレンカルボキシアルデヒド、ベンゼンジアルデヒド、ビフェニルジカルボキシアルデヒド、ターフェニルジカルボキシアルデヒド、ナフタレンジカルボキシアルデヒド、アントラセンジカルボキシアルデヒド、フェナントレンジカルボキシアルデヒド、ピレンジカルボキシアルデヒドが好ましい。
【0054】
炭素数1〜19のアルデヒドは工業製品又は試薬として、容易に入手可能である。また、炭素数1〜19のアルデヒドとして1種類又は2種類以上を用いることができる。
【0055】
本実施形態に用いる(メタ)アクリロイル基導入試剤としては、式(2')で表される化合物の水酸基の水素原子を下記式(6)で表される(メタ)アクリロイル基に置換できる化合物であれば特に制限なく用いられる。このような化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイル酸クロライド、(メタ)アクリロイル酸ブロマイド、(メタ)アクリロイル酸ヨーダイド等が挙げられる。また、(メタ)アクリロイル基導入試剤として1種類又は2種類以上を用いることができる。
【0056】
【化49】
(式(6)中、R
1Aはメチル基又は水素原子である。)
【0057】
本実施形態の一般式(2')と(メタ)アクリロイル基導入試剤との反応に用いられる塩基触媒は、周知の塩基触媒より適宜選択することができ、例えば、金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属水酸化物等)、金属炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸塩等)、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属炭酸水素塩等の無機塩基、アミン類(例えば、第3級アミン類(トリエチルアミン等のトリアルキルアミン、N,N−ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン、1−メチルイミダゾール等の複素環式第3級アミン)等、カルボン酸金属塩(酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム等の酢酸アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩等)等の有機塩基が挙げられる。入手の容易さや取り扱い易さ等の製造上の観点から、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが好ましい。また、塩基触媒として1種類又は2種類以上を用いることができる。
【0058】
次に、式(2')で表される化合物と、(メタ)アクリロイル基導入試剤との反応条件について詳細に説明する。
【0059】
反応は、式(2')で表される化合物1モルに対し、(メタ)アクリロイル基導入試剤を1モル〜過剰量、及び塩基触媒を0.001〜1モル使用し、常圧で、20〜150℃で20分〜100時間程度反応させることにより進行する。反応後、公知の方法により目的物を精製する。例えば、氷水等で冷却させ結晶を析出、単離して粗結晶を得る方法が挙げられる。
【0060】
続いて、粗結晶を有機溶媒に溶解させ、強塩基を加え、常圧で、20〜150℃で20分〜100時間程度反応させる。反応後、公知の方法により目的物を単離する。例えば、反応液を濃縮し、純水を加えて反応生成物を析出させ、室温まで冷却した後、濾過を行って分離、得られた固形物を濾過し、乾燥させた後、カラムクロマトにより、副生成物と分離精製し、溶媒留去、濾過、乾燥を行って式(1')で表される目的化合物を得る方法が挙げられる。
【0061】
[式(A)で表される化合物に由来する構成単位を有する樹脂]
本実施形態の樹脂は、上記式(A)で表される化合物(以下、「本実施形態の化合物」ともいう。)に由来する構成単位を有する樹脂で得ある。上記式(A)で表される化合物は、リソグラフィー用膜形成組成物等として、そのまま使用することができる。また、上記式(A)で表される化合物に由来する構成単位を有する樹脂としても使用することができる。なお、式(A)で表される化合物に由来する構造単位を有する樹脂には、式(1)で表される化合物に由来する構成単位を有する樹脂、及び、式(1')で表される化合物に由来する構成単位を有する樹脂、式(4)で表される化合物に由来する構成単位を有する樹脂、式(4')で表される化合物に由来する構成単位を有する樹脂、及び式(7)で表される化合物に由来する構成単位を有する樹脂が含まれ、以下、「式(A)で表される化合物」は、「式(1)で表される化合物」、「式(1')で表される化合物」、「式(4)で表される化合物」、「式(4')で表される化合物」、又は「式(7)で表される化合物」と読み替えることできるものとする。
【0062】
本実施形態の樹脂は、例えば、上記式(A)で表される化合物と架橋反応性のある化合物とを反応させることによって得られる。
【0063】
架橋反応性のある化合物としては、上記式(A)で表される化合物をオリゴマー化又はポリマー化し得るものである限り、公知のものを特に制限なく使用することができる。その具体例としては、例えば、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、カルボン酸ハライド、ハロゲン含有化合物、アミノ化合物、イミノ化合物、イソシアネート、不飽和炭化水素基含有化合物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0064】
本実施形態における樹脂の具体例としては、例えば、上記式(A)で表される化合物を架橋反応性のある化合物であるアルデヒドとの縮合反応等によってノボラック化した樹脂が挙げられる。
【0065】
ここで、上記式(A)で表される化合物をノボラック化する際に用いるアルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、トリオキサン、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロロベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、ブチルベンズアルデヒド、ビフェニルアルデヒド、ナフトアルデヒド、アントラセンカルボアルデヒド、フェナントレンカルボアルデヒド、ピレンカルボアルデヒド、フルフラール等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、ホルムアルデヒドがより好ましい。なお、これらのアルデヒド類は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記アルデヒド類の使用量は、特に限定されないが、上記式(A)で表される化合物1モルに対して、0.2〜5モルが好ましく、より好ましくは0.5〜2モルである。
【0066】
上記式(A)で表される化合物とアルデヒドとの縮合反応において、酸触媒を用いることもできる。ここで使用する酸触媒については、公知のものから適宜選択して用いることができ、特に限定されない。このような酸触媒としては、無機酸、有機酸、ルイス酸、固体酸が広く知られており、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、フッ酸等の無機酸;シュウ酸、マロン酸、こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、蟻酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸等の有機酸;塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化鉄、三フッ化ホウ素等のルイス酸;或いはケイタングステン酸、リンタングステン酸、ケイモリブデン酸又はリンモリブデン酸等の固体酸等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらのなかでも、製造上の観点から、有機酸および固体酸が好ましく、入手の容易さや取り扱い易さ等の製造上の観点から、塩酸又は硫酸が好ましい。なお、酸触媒については、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】
また、酸触媒の使用量は、使用する原料及び使用する触媒の種類、さらには反応条件などに応じて適宜設定でき、特に限定されないが、反応原料100質量部に対して、0.01〜100質量部であることが好ましい。
【0068】
但し、架橋反応性のある化合物として、インデン、ヒドロキシインデン、ベンゾフラン、ヒドロキシアントラセン、アセナフチレン、ビフェニル、ビスフェノール、トリスフェノール、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4−ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、5−ビニルノルボルナ−2−エン、α−ピネン、β−ピネン、リモネンなどの非共役二重結合を有する化合物との共重合反応の場合は、必ずしもアルデヒド類は必要ない。
【0069】
上記式(A)で表される化合物とアルデヒドとの縮合反応において、反応溶媒を用いることもできる。この重縮合における反応溶媒としては、公知のものの中から適宜選択して用いることができ、特に限定されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン又はこれらの混合溶媒等が例示される。なお、反応溶媒は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0070】
また、これらの反応溶媒の使用量は、使用する原料及び使用する触媒の種類、さらには反応条件などに応じて適宜設定でき、特に限定されないが、反応原料100質量部に対して0〜2000質量部の範囲であることが好ましい。さらに、反応温度は、反応原料の反応性に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、通常10〜200℃の範囲である。なお、反応方法は、公知の手法を適宜選択して用いることができ、特に限定されないが、上記式(A)で表される化合物、アルデヒド類、触媒を一括で仕込む方法や、上記式(A)で表される化合物やアルデヒド類を触媒存在下で滴下していく方法がある。
【0071】
重縮合反応終了後、得られた樹脂の単離は、常法にしたがって行うことができ、特に限定されない。例えば、系内に存在する未反応原料や触媒等を除去するために、反応釜の温度を130〜230℃ にまで上昇させ、1〜50mmHg程度で揮発分を除去する等の一般的手法を採ることにより、目的物であるノボラック化した樹脂を得ることができる。
【0072】
ここで、本実施形態における樹脂は、上記式(A)で表される化合物の単独重合体であってもよいが、他のフェノール類との共重合体であってもよい。ここで共重合可能なフェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、ジメチルフェノール、トリメチルフェノール、ブチルフェノール、フェニルフェノール、ジフェニルフェノール、ナフチルフェノール、レゾルシノール、メチルレゾルシノール、カテコール、ブチルカテコール、メトキシフェノール、メトキシフェノール、プロピルフェノール、ピロガロール、チモール等が挙げるが、これらに特に限定されない。
【0073】
また、本実施形態における樹脂は、上述した他のフェノール類以外に、重合可能なモノマーと共重合させたものであってもよい。かかる共重合モノマーとしては、例えば、ナフトール、メチルナフトール、メトキシナフトール、ジヒドロキシナフタレン、インデン、ヒドロキシインデン、ベンゾフラン、ヒドロキシアントラセン、アセナフチレン、ビフェニル、ビスフェノール、トリスフェノール、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4−ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルナエン、ピネン、リモネン等が挙げられるが、これらに特に限定されない。なお、本実施形態における樹脂は、上記式(A)で表される化合物と上述したフェノール類との2元以上の(例えば、2〜4元系)共重合体であっても、上記式(A)で表される化合物と上述した共重合モノマーとの2元以上(例えば、2〜4元系)共重合体であっても、上記式(A)で表される化合物と上述したフェノール類と上述した共重合モノマーとの3元以上の(例えば、3〜4元系)共重合体であってもよい。
【0074】
なお、本実施形態における樹脂の分子量は、特に限定されないが、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が500〜30,000であることが好ましく、より好ましくは750〜20,000である。また、架橋効率を高めるとともにベーク中の揮発成分を抑制する観点から、本実施形態における樹脂は、分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が1.2〜7の範囲内のものが好ましい。なお、上記Mnは、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
【0075】
[組成物]
本実施形態の組成物は、前記式(A)で表される化合物、及び該化合物に由来する構成単位を有する樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含有する。また、本実施形態の組成物は、本実施形態の化合物と本実施形態の樹脂の両方を含有してもよい。以下、「上記式(A)で表される化合物及び該化合物に由来する構成単位を有する樹脂からなる群より選ばれる1種以上」を、「本実施形態の化合物及び/又は樹脂」又は「成分(A)」ともいう。
【0076】
[光学部品形成用組成物]
本実施形態の光学部品形成用組成物は、上記式(A)で表される化合物及び該化合物に由来する構成単位を有する樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含有する。また、本実施形態の光学部品形成用組成物は、本実施形態の化合物と本実施形態の樹脂の両方を含有してもよい。ここで、「光学部品」とは、フィルム状、シート状の部品の他、プラスチックレンズ(プリズムレンズ、レンチキュラーレンズ、マイクロレンズ、フレネルレンズ、視野角制御レンズ、コントラスト向上レンズ等)、位相差フィルム、電磁波シールド用フィルム、プリズム、光ファイバー、フレキシブルプリント配線用ソルダーレジスト、メッキレジスト、多層プリント配線板用層間絶縁膜、感光性光導波路をいう。本発明の化合物及び樹脂はこれら光学部品形成用途に有用である。
【0077】
[リソグラフィー用膜形成組成物]
本実施形態のリソグラフィー用膜形成組成物は、上記式(A)で表される化合物及び該化合物に由来する構成単位を有する樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含有する。また、本実施形態のリソグラフィー用膜形成組成物は、本実施形態の化合物と本実施形態の樹脂の両方を含有してもよい。
【0078】
[レジスト組成物]
本実施形態のレジスト組成物は、上記式(A)で表される化合物及び該化合物に由来する構成単位を有する樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含有する。また、本実施形態のレジスト組成物は、本実施形態の化合物と本実施形態の樹脂の両方を含有してもよい。
【0079】
また、本実施形態のレジスト組成物は、溶媒を含有することが好ましい。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−プロピル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル等の乳酸エステル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸n−アミル、酢酸n−ヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メトキシ−3−メチルプロピオン酸ブチル、3−メトキシ−3−メチル酪酸ブチル、アセト酢酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、シクロペンタノン(CPN)、シクロヘキサノン(CHN)等のケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;γ−ラクトン等のラクトン類等を挙げることができるが、特に限定はされない。これらの溶媒は、単独で又は2種以上を使用することができる。
【0080】
本実施形態で使用される溶媒は、安全溶媒であることが好ましく、より好ましくは、PGMEA、PGME、CHN、CPN、2−ヘプタノン、アニソール、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル及び乳酸エチルから選ばれる少なくとも1種であり、さらに好ましくはPGMEA、PGME及びCHNから選ばれる少なくとも一種である。
【0081】
本実施形態において、固形成分の量と溶媒との量は、特に限定されないが、固形成分の量と溶媒との合計質量100質量%に対して、固形成分1〜80質量%及び溶媒20〜99質量%であることが好ましく、より好ましくは固形成分1〜50質量%及び溶媒50〜99質量%、さらに好ましくは固形成分2〜40質量%及び溶媒60〜98質量%であり、特に好ましくは固形成分2〜10質量%及び溶媒90〜98質量%である。
【0082】
本実施形態のレジスト組成物は、他の固形成分として、酸発生剤(C)、酸架橋剤(G)、酸拡散制御剤(E)及びその他の成分(F)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有してもよい。なお、本明細書において固形成分とは溶媒以外の成分をいう。
【0083】
以下、酸発生剤(C)、酸架橋剤(G)、酸拡散制御剤(E)及びその他の成分(F)について説明する。
【0084】
[酸発生剤(C)]
本実施形態のレジスト組成物において、可視光線、紫外線、エキシマレーザー、電子線、極端紫外線(EUV)、X線及びイオンビームから選ばれるいずれかの放射線の照射により直接的又は間接的に酸を発生する酸発生剤(C)を一種以上含むことが好ましい。酸発生剤(C)は、特に限定されないが、例えば、国際公開WO2013/024778号に記載のものを用いることができる。酸発生剤(C)は、単独で又は2種以上を使用することができる。
【0085】
酸発生剤(C)の使用量は、固形成分全重量の0.001〜49質量%が好ましく、1〜40質量%がより好ましく、3〜30質量%がさらに好ましく、10〜25質量%が特に好ましい。上記範囲内で使用することにより、高感度でかつ低エッジラフネスのパターンプロファイルが得られる。本実施形態では、系内に酸が発生すれば、酸の発生方法は限定されない。g線、i線などの紫外線の代わりにエキシマレーザーを使用すれば、より微細加工が可能であるし、また高エネルギー線として電子線、極端紫外線、X線、イオンビームを使用すればさらに微細加工が可能である。
【0086】
[酸架橋剤(G)]
本実施形態において、酸架橋剤(G)を一種以上含むことが好ましい。酸架橋剤(G)とは、酸発生剤(C)から発生した酸の存在下で、成分(A)を分子内又は分子間架橋し得る化合物である。このような酸架橋剤(G)としては、例えば成分(A)を架橋し得る1種以上の基(以下、「架橋性基」という。)を有する化合物を挙げることができる。
【0087】
このような架橋性基としては、例えば(i)ヒドロキシ(C1−C6アルキル基)、C1−C6アルコキシ(C1−C6アルキル基)、アセトキシ(C1−C6アルキル基)等のヒドロキシアルキル基又はそれらから誘導される基;(ii)ホルミル基、カルボキシ(C1−C6アルキル基)等のカルボニル基又はそれらから誘導される基;(iii)ジメチルアミノメチル基、ジエチルアミノメチル基、ジメチロールアミノメチル基、ジエチロールアミノメチル基、モルホリノメチル基等の含窒素基含有基;(iv)グリシジルエーテル基、グリシジルエステル基、グリシジルアミノ基等のグリシジル基含有基;(v)ベンジルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基等の、C1−C6アリルオキシ(C1−C6アルキル基)、C1−C6アラルキルオキシ(C1−C6アルキル基)等の芳香族基から誘導される基;(vi)ビニル基、イソプロペニル基等の重合性多重結合含有基等を挙げることができる。本実施形態における酸架橋剤(G)の架橋性基としては、ヒドロキシアルキル基、及びアルコキシアルキル基等が好ましく、特にアルコキシメチル基が好ましい。
【0088】
上記架橋性基を有する酸架橋剤(G)としては、特に限定されないが、例えば、国際公開WO2013/024778号に記載のものを用いることができる。酸架橋剤(G)は単独で又は2種以上を使用することができる。
【0089】
本実施形態において酸架橋剤(G)の使用量は、固形成分全重量の0.5〜49質量%が好ましく、0.5〜40質量%がより好ましく、1〜30質量%がさらに好ましく、2〜20質量%が特に好ましい。上記酸架橋剤(G)の配合割合を0.5質量%以上とすると、レジスト膜のアルカリ現像液に対する溶解性の抑制効果を向上させ、残膜率が低下したり、パターンの膨潤や蛇行が生じたりするのを抑制することができるので好ましく、一方、50質量%以下とすると、レジストとしての耐熱性の低下を抑制できることから好ましい。
【0090】
[酸拡散制御剤(E)]
本実施形態においては、放射線照射により酸発生剤から生じた酸のレジスト膜中における拡散を制御して、未露光領域での好ましくない化学反応を阻止する作用等を有する酸拡散制御剤(E)をレジスト組成物に配合しても良い。この様な酸拡散制御剤(E)を使用することにより、レジスト組成物の貯蔵安定性が向上する。また解像度が向上するとともに、放射線照射前の引き置き時間、放射線照射後の引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れたものとなる。このような酸拡散制御剤(E)としては、特に限定されないが、窒素原子含有塩基性化合物、塩基性スルホニウム化合物、塩基性ヨードニウム化合物等の放射線分解性塩基性化合物が挙げられる。
【0091】
上記酸拡散制御剤(E)としては、特に限定されないが、例えば、国際公開WO2013/024778号に記載のものを用いることができる。酸拡散制御剤(E)は、単独で又は2種以上を使用することができる。
【0092】
酸拡散制御剤(E)の配合量は、固形成分全重量の0.001〜49質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましく、0.01〜5質量%がさらに好ましく、0.01〜3質量%が特に好ましい。上記範囲内であると、解像度の低下、パターン形状、寸法忠実度等の劣化を防止することができる。さらに、電子線照射から放射線照射後加熱までの引き置き時間が長くなっても、パターン上層部の形状が劣化することがない。また、配合量が10質量%以下であると、感度、未露光部の現像性等の低下を防ぐことができる。またこの様な酸拡散制御剤を使用することにより、レジスト組成物の貯蔵安定性が向上し、また解像度が向上するとともに、放射線照射前の引き置き時間、放射線照射後の引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れたものとなる。
【0093】
[その他の成分(F)]
本実施形態のレジスト組成物には、その他の成分(F)として、必要に応じて、溶解促進剤、溶解制御剤、増感剤、界面活性剤及び有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体等の各種添加剤を1種又は2種以上添加することができる。
【0094】
[溶解促進剤]
低分子量溶解促進剤は、式(A)で表される化合物の現像液に対する溶解性が低すぎる場合に、その溶解性を高めて、現像時の上記化合物の溶解速度を適度に増大させる作用を有する成分であり、必要に応じて、使用することができる。上記溶解促進剤としては、例えば、低分子量のフェノール性化合物を挙げることができ、例えば、ビスフェノール類、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン等を挙げることができる。これらの溶解促進剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0095】
溶解促進剤の配合量は、使用する上記化合物の種類に応じて適宜調節されるが、固形成分全重量の0〜49質量%が好ましく、0〜5質量%がより好ましく、0〜1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0096】
[溶解制御剤]
溶解制御剤は、式(A)で表される化合物の現像液に対する溶解性が高すぎる場合に、その溶解性を制御して現像時の溶解速度を適度に減少させる作用を有する成分である。このような溶解制御剤としては、レジスト被膜の焼成、放射線照射、現像等の工程において化学変化しないものが好ましい。
【0097】
溶解制御剤としては、特に限定されないが、例えば、フェナントレン、アントラセン、アセナフテン等の芳香族炭化水素類;アセトフェノン、ベンゾフェノン、フェニルナフチルケトン等のケトン類;メチルフェニルスルホン、ジフェニルスルホン、ジナフチルスルホン等のスルホン類等を挙げることができる。これらの溶解制御剤は、単独で又は2種以上を使用することができる。
溶解制御剤の配合量は、使用する上記化合物の種類に応じて適宜調節されるが、固形成分全重量の0〜49質量%が好ましく、0〜5質量%がより好ましく、0〜1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0098】
[増感剤]
増感剤は、照射された放射線のエネルギーを吸収して、そのエネルギーを酸発生剤(C)に伝達し、それにより酸の生成量を増加する作用を有し、レジストの見掛けの感度を向上させる成分である。このような増感剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、ビアセチル類、ピレン類、フェノチアジン類、フルオレン類等を挙げることができるが、特に限定はされない。これらの増感剤は、単独で又は2種以上を使用することができる。
【0099】
増感剤の配合量は、使用する上記化合物の種類に応じて適宜調節されるが、固形成分全重量の0〜49質量%が好ましく、0〜5質量%がより好ましく、0〜1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0100】
[界面活性剤]
界面活性剤は、本実施形態のレジスト組成物の塗布性やストリエーション、レジストの現像性等を改良する作用を有する成分である。このような界面活性剤は、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤あるいは両性界面活性剤のいずれでもよい。好ましい界面活性剤はノニオン系界面活性剤である。ノニオン系界面活性剤は、レジスト組成物の製造に用いる溶媒との親和性がよく、より効果がある。ノニオン系界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル類、ポリオキシエチレン高級アルキルフェニルエーテル類、ポリエチレングリコールの高級脂肪酸ジエステル類等が挙げられるが、特に限定はされない。市販品としては、以下商品名で、エフトップ(ジェムコ社製)、メガファック(大日本インキ化学工業社製)、フロラード(住友スリーエム社製)、アサヒガード、サーフロン(以上、旭硝子社製)、ペポール(東邦化学工業社製)、KP(信越化学工業社製)、ポリフロー(共栄社油脂化学工業社製)等を挙げることができる。
【0101】
界面活性剤の配合量は、使用する上記化合物の種類に応じて適宜調節されるが、固形成分全重量の0〜49質量%が好ましく、0〜5質量%がより好ましく、0〜1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0102】
[有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体]
感度劣化防止又はレジストパターン形状、引き置き安定性等の向上の目的で、さらに任意の成分として、有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体を含有させることができる。なお、有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体は、酸拡散制御剤と併用することも出来るし、単独で用いても良い。有機カルボン酸としては、例えば、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸などが好適である。リンのオキソ酸若しくはその誘導体としては、リン酸、リン酸ジ−n−ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステルなどのリン酸又はそれらのエステルなどの誘導体、ホスホン酸、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸ジ−n−ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステルなどのホスホン酸又はそれらのエステルなどの誘導体、ホスフィン酸、フェニルホスフィン酸などのホスフィン酸及びそれらのエステルなどの誘導体が挙げられ、これらの中で特にホスホン酸が好ましい。
【0103】
有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体は、単独で又は2種以上を使用することができる。有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体の配合量は、使用する上記化合物の種類に応じて適宜調節されるが、固形成分全重量の0〜49質量%が好ましく、0〜5質量%がより好ましく、0〜1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0104】
[上述した添加剤(溶解促進剤、溶解制御剤、増感剤、界面活性剤及び有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体等)以外のその他添加剤]
さらに、本実施形態のレジスト組成物には、必要に応じて、上記溶解制御剤、増感剤、、界面活性剤、及び有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体以外の添加剤を1種又は2種以上配合することができる。そのような添加剤としては、例えば、染料、顔料、及び接着助剤等が挙げられる。例えば、染料又は顔料を配合すると、露光部の潜像を可視化させて、露光時のハレーションの影響を緩和できるので好ましい。また、接着助剤を配合すると、基板との接着性を改善することができるので好ましい。さらに、他の添加剤としては、ハレーション防止剤、保存安定剤、消泡剤、形状改良剤等、具体的には4−ヒドロキシ−4'−メチルカルコン等を挙げることができる。
【0105】
本実施形態のレジスト組成物において、任意成分(F)の合計量は、固形成分全重量の0〜99質量%であり、0〜49質量%が好ましく、0〜10質量%がより好ましく、0〜5質量%がさらに好ましく、0〜1質量%がさらに好ましく、0質量%が特に好ましい。
【0106】
[各成分の配合割合]
本実施形態のレジスト組成物において、本実施形態の化合物及び/又は樹脂の含有量は、特に限定されないが、固形成分の全質量(式(A)で表される化合物、式(A)で表される化合物を構成成分として含む樹脂、酸発生剤(C)、酸架橋剤(G)、酸拡散制御剤(E)及びその他の成分(F)(「任意成分(F)」とも記す)などの任意に使用される成分を含む固形成分の総和、以下同様。)の50〜99.4質量%であることが好ましく、より好ましくは55〜90質量%、さらに好ましくは60〜80質量%、特に好ましくは60〜70質量%である。上記含有量の場合、解像度が一層向上し、ラインエッジラフネス(LER)が一層小さくなる。なお、本実施形態の化合物及び樹脂との両方を含有する場合、上記含有量は、本実施形態の化合物及び樹脂の合計量である。
【0107】
本実施形態のレジスト組成物において、本実施形態の化合物及び/又は樹脂(成分(A))、酸発生剤(C)、酸架橋剤(G)、酸拡散制御剤(E)、任意成分(F)の含有量比(成分(A)/酸発生剤(C)/酸架橋剤(G)/酸拡散制御剤(E)/任意成分(F))は、レジスト組成物の固形分100質量%に対して、好ましくは50〜99.4質量%/0.001〜49質量%/0.5〜49質量%/0.001〜49質量%/0〜49質量%であり、より好ましくは55〜90質量%/1〜40質量%/0.5〜40質量%/0.01〜10質量%/0〜5質量%であり、さらに好ましくは60〜80質量%/3〜30質量%/1〜30質量%/0.01〜5質量%/0〜1質量%であり、特に好ましくは60〜70質量%/10〜25質量%/2〜20質量%/0.01〜3質量%/0質量%、である。成分の配合割合は、その総和が100質量%になるように各範囲から選ばれる。上記配合にすると、感度、解像度、現像性等の性能に優れる。なお、「固形分」とは、溶媒を除いた成分をいい、「固形分100質量%」とは、溶媒を除いた成分を100質量%とすることをいう。
【0108】
本実施形態のレジスト組成物は、通常は、使用時に各成分を溶媒に溶解して均一溶液とし、その後、必要に応じて、例えば、孔径0.2μm程度のフィルター等でろ過することにより調製される。
【0109】
本実施形態のレジスト組成物は、必要に応じて、本実施形態の樹脂以外の他の樹脂を含むことができる。当該樹脂は、特に限定されず、例えば、ノボラック樹脂、ポリビニルフェノール類、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸樹脂、及びアクリル酸、ビニルアルコール、又はビニルフェノールを単量体単位として含む重合体あるいはこれらの誘導体などが挙げられる。上記樹脂の含有量は、特に限定されず、使用する成分(A)の種類に応じて適宜調節されるが、成分(A)100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下、特に好ましくは0質量部である。
【0110】
[レジスト組成物の物性等]
本実施形態のレジスト組成物は、スピンコートによりアモルファス膜を形成することができる。また、一般的な半導体製造プロセスに適用することができる。用いる現像液の種類によって、ポジ型レジストパターン及びネガ型レジストパターンのいずれかを作り分けることができる。
【0111】
ポジ型レジストパターンの場合、本実施形態のレジスト組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜の23℃における現像液に対する溶解速度は、5Å/sec以下が好ましく、0.05〜5Å/secがより好ましく、0.0005〜5Å/secがさらに好ましい。当該溶解速度が5Å/sec以下であると現像液に不溶で、レジストとすることができる。また、0.0005Å/sec以上の溶解速度を有すると、解像性が向上する場合もある。これは、成分(A)の露光前後の溶解性の変化により、現像液に溶解する露光部と、現像液に溶解しない未露光部との界面のコントラストが大きくなるからと推測される。またLERの低減、ディフェクトの低減効果がある。
【0112】
ネガ型レジストパターンの場合、本実施形態のレジスト組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜の23℃における現像液に対する溶解速度は、10Å/sec以上であることが好ましい。当該溶解速度が10Å/sec以上であると現像液に易溶で、レジストに一層向いている。また、10Å/sec以上の溶解速度を有すると、解像性が向上する場合もある。これは、成分(A)のミクロの表面部位が溶解し、LERを低減するからと推測される。またディフェクトの低減効果がある。
【0113】
上記溶解速度は、23℃にて、アモルファス膜を所定時間現像液に浸漬させ、その浸漬前後の膜厚を、目視、エリプソメーターまたはQCM法等の公知の方法によって測定し決定できる。
【0114】
ポジ型レジストパターンの場合、本実施形態のレジスト組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜のKrFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線等の放射線により露光した部分の23℃における現像液に対する溶解速度は、10Å/sec以上であることが好ましい。当該溶解速度が10Å/sec以上であると現像液に易溶で、レジストに一層向いている。また、10Å/sec以上の溶解速度を有すると、解像性が向上する場合もある。これは、成分(A)のミクロの表面部位が溶解し、LERを低減するからと推測される。またディフェクトの低減効果がある。
【0115】
ネガ型レジストパターンの場合、本実施形態のレジスト組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜のKrFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線等の放射線により露光した部分の23℃における現像液に対する溶解速度は、5Å/sec以下が好ましく、0.05〜5Å/secがより好ましく、0.0005〜5Å/secがさらに好ましい。当該溶解速度が5Å/sec以下であると現像液に不溶で、レジストとすることができる。また、0.0005Å/sec以上の溶解速度を有すると、解像性が向上する場合もある。これは、成分(A)の露光前後の溶解性の変化により、現像液に溶解する未露光部と、現像液に溶解しない露光部との界面のコントラストが大きくなるからと推測される。またLERの低減、ディフェクトの低減効果がある。
【0116】
[リソグラフィー用膜形成組成物]
本実施形態のレジスト組成物は、リソグラフィー用膜形成組成物としても用いることができる。
【0117】
[感放射線性組成物]
本実施形態の感放射線性組成物は、本実施形態の化合物及び/又は本実施形態の樹脂(A)と、ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)と、溶媒と、を含有する感放射線性組成物であって、前記溶媒の含有量が、前記感放射線性組成物の総量100質量%に対して、20〜99質量%であり、前記溶媒以外の成分の含有量が、前記感放射線性組成物の総量100質量%に対して、1〜80質量%である。
【0118】
本実施形態の感放射線性組成物に含有させる成分(A)は、後述するジアゾナフトキノン光活性化合物(B)と併用し、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線を照射することにより、現像液に易溶な化合物となるポジ型レジスト用基材として有用である。g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線により、成分(A)の性質は大きくは変化しないが、現像液に難溶なジアゾナフトキノン光活性化合物(B)が易溶な化合物に変化することで、現像工程によってレジストパターンを作り得る。
【0119】
本実施形態の感放射線性組成物に含有させる成分(A)は、上記式(A)に示すとおり、比較的低分子量の化合物であることから、得られたレジストパターンのラフネスは非常に小さい。また、上記式(A)中、R
1〜R
5からなる群より選択される少なくとも1つがヨウ素原子を含む基であることが好ましい。本実施形態の感放射線性組成物は、このような好ましい態様であるヨウ素原子を含む基を有する成分(A)を適用した場合は、電子線、極端紫外線(EUV)、X線などの放射線に対する吸収能を増加させ、その結果、感度を高めることが可能となり、非常に好ましい。
【0120】
本実施形態の感放射線性組成物に含有させる成分(A)のガラス転移温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは140℃以上、特に好ましくは150℃以上である。成分(A)のガラス転移温度の上限値は、特に限定されないが、例えば、400℃である。成分(A)のガラス転移温度が上記範囲内であることにより、半導体リソグラフィープロセスにおいて、パターン形状を維持しうる耐熱性を有し、高解像度などの性能が向上する。
【0121】
本実施形態の感放射線性組成物に含有させる成分(A)のガラス転移温度の示差走査熱量分析により求めた結晶化発熱量は20J/g未満であるのが好ましい。また、(結晶化温度)−(ガラス転移温度)は好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上、特に好ましくは130℃以上である。結晶化発熱量が20J/g未満、又は(結晶化温度)−(ガラス転移温度)が上記範囲内であると、感放射線性組成物をスピンコートすることにより、アモルファス膜を形成しやすく、かつレジストに必要な成膜性が長期に渡り保持でき、解像性を向上することができる。
【0122】
本実施形態において、上記結晶化発熱量、結晶化温度及びガラス転移温度は、島津製作所製DSC/TA−50WSを用いた示差走査熱量分析により求めることができる。試料約10mgをアルミニウム製非密封容器に入れ、窒素ガス気流中(50mL/分)昇温速度20℃/分で融点以上まで昇温する。急冷後、再び窒素ガス気流中(30mL/分)昇温速度20℃/分で融点以上まで昇温する。さらに急冷後、再び窒素ガス気流中(30mL/分)昇温速度20℃/分で400℃まで昇温する。ステップ状に変化したベースラインの段差の中点(比熱が半分に変化したところ)の温度をガラス転移温度(Tg)、その後に現れる発熱ピークの温度を結晶化温度とする。発熱ピークとベースラインに囲まれた領域の面積から発熱量を求め、結晶化発熱量とする。
【0123】
本実施形態の感放射線性組成物に含有させる成分(A)は、常圧下、100以下、好ましくは120℃以下、より好ましくは130℃以下、さらに好ましくは140℃以下、特に好ましくは150℃以下において、昇華性が低いことが好ましい。昇華性が低いとは、熱重量分析において、所定温度で10分保持した際の重量減少が10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下、特に好ましくは0.1%以下であることを示す。昇華性が低いことにより、露光時のアウトガスによる露光装置の汚染を防止することができる。また低ラフネスで良好なパターン形状を得ることができる。
【0124】
本実施形態の感放射線性組成物に含有させる成分(A)は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロヘキサノン(CHN)、シクロペンタノン(CPN)、2−ヘプタノン、アニソール、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル及び乳酸エチルから選ばれ、かつ、成分(A)に対して最も高い溶解能を示す溶媒に、23℃で、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、特に好ましくは、PGMEA、PGME、CHNから選ばれ、かつ、(A)レジスト基材に対して最も高い溶解能を示す溶媒に、23℃で、20質量%以上、特に好ましくはPGMEAに対して、23℃で、20質量%以上溶解する。上記条件を満たしていることにより、実生産における半導体製造工程での使用が可能となる。
【0125】
[ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)]
本実施形態の感放射線性組成物に含有させるジアゾナフトキノン光活性化合物(B)は、ポリマー性及び非ポリマー性ジアゾナフトキノン光活性化合物を含む、ジアゾナフトキノン物質であり、一般にポジ型レジスト組成物において、感光性成分(感光剤)として用いられているものであれば特に制限なく、1種又は2種以上任意に選択して用いることができる。
【0126】
このような感光剤としては、ナフトキノンジアジドスルホン酸クロライドやベンゾキノンジアジドスルホン酸クロライド等と、これら酸クロライドと縮合反応可能な官能基を有する低分子化合物又は高分子化合物とを反応させることによって得られた化合物が好ましいものである。ここで、酸クロライドと縮合可能な官能基としては、特に限定されないが、例えば、水酸基、アミノ基等が挙げられるが、特に水酸基が好適である。水酸基を含む酸クロライドと縮合可能な化合物としては、特に限定されないが、例えばハイドロキノン、レゾルシン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4'−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2',3,4,6'−ペンタヒドロキシベンゾフェノン等のヒドロキシベンゾフェノン類、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン等のヒドロキシフェニルアルカン類、4,4',3",4"−テトラヒドロキシ−3,5,3',5'−テトラメチルトリフェニルメタン、4,4',2",3",4"−ペンタヒドロキシ−3,5,3',5'−テトラメチルトリフェニルメタン等のヒドロキシトリフェニルメタン類などを挙げることができる。
【0127】
また、ナフトキノンジアジドスルホン酸クロライドやベンゾキノンジアジドスルホン酸クロライドなどの酸クロライドとしては、例えば、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルフォニルクロライド、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルフォニルクロライドなどが好ましいものとして挙げられる。
【0128】
本実施形態の感放射線性組成物は、例えば、使用時に各成分を溶媒に溶解して均一溶液とし、その後、必要に応じて、例えば、孔径0.2μm程度のフィルター等でろ過することにより調製されることが好ましい。
【0129】
[溶媒]
本実施形態の感放射線性組成物に用いることにできる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン、アニソール、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、及び乳酸エチルが挙げられる。このなかでもプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンが好ましい、溶媒は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0130】
溶媒の含有量は、感放射線性組成物の総量100質量%に対して、20〜99質量%であり、好ましくは50〜99質量%であり、より好ましくは60〜98質量%であり、特に好ましくは90〜98質量%である。
【0131】
また、溶媒以外の成分(固形成分)の含有量は、感放射線性組成物の総量100質量%に対して、1〜80質量%であり、好ましくは1〜50質量%であり、より好ましくは2〜40質量%であり、特に好ましくは2〜10質量%である。
【0132】
[感放射線性組成物の特性]
本実施形態の感放射線性組成物は、スピンコートによりアモルファス膜を形成することができる。また、一般的な半導体製造プロセスに適用することができる。用いる現像液の種類によって、ポジ型レジストパターン及びネガ型レジストパターンのいずれかを作り分けることができる。
【0133】
ポジ型レジストパターンの場合、本実施形態の感放射線性組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜の23℃における現像液に対する溶解速度は、5Å/sec以下が好ましく、0.05〜5Å/secがより好ましく、0.0005〜5Å/secがさらに好ましい。当該溶解速度が5Å/sec以下であると現像液に不溶で、レジストとすることができる。また、0.0005Å/sec以上の溶解速度を有すると、解像性が向上する場合もある。これは、成分(A)の露光前後の溶解性の変化により、現像液に溶解する露光部と、現像液に溶解しない未露光部との界面のコントラストが大きくなるからと推測される。またLERの低減、ディフェクトの低減効果がある。
【0134】
ネガ型レジストパターンの場合、本実施形態の感放射線性組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜の23℃における現像液に対する溶解速度は、10Å/sec以上であることが好ましい。当該溶解速度が10Å/sec以上であると現像液に易溶で、レジストに一層向いている。また、10Å/sec以上の溶解速度を有すると、解像性が向上する場合もある。これは、成分(A)のミクロの表面部位が溶解し、LERを低減するからと推測される。またディフェクトの低減効果がある。
【0135】
上記溶解速度は、23℃にて、アモルファス膜を所定時間現像液に浸漬させ、その浸漬前後の膜厚を、目視、エリプソメーターまたはQCM法等の公知の方法によって測定し決定できる。
【0136】
ポジ型レジストパターンの場合、本実施形態の感放射線性組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜のKrFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線等の放射線により照射した後、又は、20〜500℃で加熱した後の露光した部分の、23℃における現像液に対する溶解速度は、10Å/sec以上が好ましく、10〜10000Å/secがより好ましく、100〜1000Å/secがさらに好ましい。当該溶解速度が10Å/sec以上であると現像液に易溶で、レジストに一層向いている。また、10000Å/sec以下の溶解速度を有すると、解像性が向上する場合もある。これは、成分(A)のミクロの表面部位が溶解し、LERを低減するからと推測される。またディフェクトの低減効果がある。
ネガ型レジストパターンの場合、本実施形態の感放射線性組成物をスピンコートして形成したアモルファス膜のKrFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線等の放射線により照射した後、又は、20〜500℃で加熱した後の露光した部分の、23℃における現像液に対する溶解速度は、5Å/sec以下が好ましく、0.05〜5Å/secがより好ましく、0.0005〜5Å/secがさらに好ましい。当該溶解速度が5Å/sec以下であると現像液に不溶で、レジストとすることができる。また、0.0005Å/sec以上の溶解速度を有すると、解像性が向上する場合もある。これは、成分(A)の露光前後の溶解性の変化により、現像液に溶解する未露光部と、現像液に溶解しない露光部との界面のコントラストが大きくなるからと推測される。またLERの低減、ディフェクトの低減効果がある。
【0137】
[各成分の配合割合]
本実施形態の感放射線性組成物において、成分(A)の含有量は、固形成分全重量(成分(A)、ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)及びその他の成分(D)などの任意に使用される固形成分の総和、以下同様。)に対して、好ましくは1〜99質量%であり、より好ましくは5〜95質量%、さらに好ましくは10〜90質量%、特に好ましくは25〜75質量%である。本実施形態の感放射線性組成物は、成分(A)の含有量が上記範囲内であると、高感度でラフネスの小さなパターンを得ることができる。
【0138】
本実施形態の感放射線性組成物において、ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)の含有量は、固形成分全重量(成分(A)、ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)及びその他の成分(D)などの任意に使用される固形成分の総和、以下同様。)に対して、好ましくは1〜99質量%であり、より好ましくは5〜95質量%、さらに好ましくは10〜90質量%、特に好ましくは25〜75質量%である。本実施形態の感放射線性組成物は、ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)の含有量が上記範囲内であると、高感度でラフネスの小さなパターンを得ることができる。
【0139】
[その他の成分(D)]
本実施形態の感放射線性組成物には、必要に応じて、成分(A)及びジアゾナフトキノン光活性化合物(B)以外の成分として、上述の酸発生剤、酸架橋剤、酸拡散制御剤、溶解促進剤、溶解制御剤、増感剤、界面活性剤、有機カルボン酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体等の各種添加剤を1種又は2種以上添加することができる。なお、本明細書において、その他の成分(D)を任意成分(D)ということがある。
【0140】
成分(A)と、ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)と、感放射線性組成物に任意に含まれ得るその他の任意成分(D)と、の含有量比((A)/(B)/(D))は、感放射線性組成物の固形分100質量%に対して、好ましくは1〜99質量%/99〜1質量%/0〜98質量%であり、より好ましくは5〜95質量%/95〜5質量%/0〜49質量%であり、さらに好ましくは10〜90質量%/90〜10質量%/0〜10質量%であり、特に好ましくは20〜80質量%/80〜20質量%/0〜5質量%であり、最も好ましくは25〜75質量%/75〜25質量%/0質量%である。
【0141】
各成分の配合割合は、その総和が100質量%になるように各範囲から選ばれる。本実施形態の感放射線性組成物は、各成分の配合割合を上記範囲にすると、ラフネスに加え、感度、解像度等の性能に優れる。
【0142】
本実施形態の感放射線性組成物は、本実施形態以外の樹脂を含んでもよい。このような樹脂としては、ノボラック樹脂、ポリビニルフェノール類、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸樹脂、及びアクリル酸、ビニルアルコール、又はビニルフェノールを単量体単位として含む重合体あるいはこれらの誘導体などが挙げられる。これらの樹脂の配合量は、使用する成分(A)の種類に応じて適宜調節されるが、成分(A)100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下、特に好ましくは0質量部である。
【0143】
[アモルファス膜の製造方法]
本実施形態のアモルファス膜の製造方法は、上記感放射線性組成物を用いて、基板上にアモルファス膜を形成する工程を含む。
【0144】
[感放射線性組成物を用いたレジストパターン形成方法]
本実施形態の感放射線性組成物を用いたレジストパターン形成方法は、上記感放射線性組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程と、形成された前記レジスト膜の少なくとも一部を露光する工程と、露光した前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程と、を含む。なお、詳細には以下の、レジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法と同様の層さとすることができる。
【0145】
[レジスト組成物を用いたレジストパターンの形成方法]
本実施形態のレジスト組成物を用いたレジストパターンの形成方法は、上述した本実施形態のレジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程と、形成されたレジスト膜の少なくとも一部を露光する工程と、露光した前記レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程とを備える。本実施形態におけるレジストパターンは多層プロセスにおける上層レジストとして形成することもできる。
【0146】
レジストパターンを形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、従来公知の基板上に上記本実施形態のレジスト組成物を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の塗布手段によって塗布することによりレジスト膜を形成する。従来公知の基板とは、特に限定されず、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等を例表することができる。より具体的には、シリコンウェハー、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板や、ガラス基板等が挙げられる。配線パターンの材料としては、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、金等が挙げられる。また必要に応じて、前述基板上に無機系及び/又は有機系の膜が設けられたものであってもよい。無機系の膜としては、無機反射防止膜(無機BARC)が挙げられる。有機系の膜としては、有機反射防止膜(有機BARC)が挙げられる。ヘキサメチレンジシラザン等による表面処理を行ってもよい。
【0147】
次に、必要に応じて、塗布した基板を加熱する。加熱条件は、レジスト組成物の配合組成等により変わるが、20〜250℃が好ましく、より好ましくは20〜150℃である。加熱することによって、レジストの基板に対する密着性が向上する場合があり好ましい。次いで、可視光線、紫外線、エキシマレーザー、電子線、極端紫外線(EUV)、X線、及びイオンビームからなる群から選ばれるいずれかの放射線により、レジスト膜を所望のパターンに露光する。露光条件等は、レジスト組成物の配合組成等に応じて適宜選定される。本実施形態においては、露光における高精度の微細パターンを安定して形成するために、放射線照射後に加熱するのが好ましい。
【0148】
次いで、露光されたレジスト膜を現像液で現像することにより、所定のレジストパターンを形成する。上記現像液としては、使用する成分(A)に対して溶解度パラメーター(SP値)の近い溶剤を選択することが好ましく、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤、炭化水素系溶剤又はアルカリ水溶液を用いることができる。
【0149】
ケトン系溶剤としては、例えば、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、アセトン、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート等を挙げることができる。
【0150】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等を挙げることができる。
【0151】
アルコール系溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール(2−プロパノール)、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、4−メチル−2−ペンタノール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−デカノール等のアルコールや、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤等を挙げることができる。
【0152】
エーテル系溶剤としては、例えば、上記グリコールエーテル系溶剤の他、ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0153】
アミド系溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が使用できる。
【0154】
炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0155】
上記の溶剤は、複数混合してもよいし、性能を有する範囲内で、上記以外の溶剤や水と混合し使用してもよい。但し、本発明の効果を十二分に奏するためには、現像液全体としての含水率が70質量%未満であり、50質量%未満であることが好ましく、30質量%未満であることがより好ましく、10質量%未満であることがさらに好ましく、実質的に水分を含有しないことが特に好ましい。すなわち、現像液に対する有機溶剤の含有量は、現像液の全量に対して、30質量%以上100質量%以下であり、50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、70質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、90質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましく、95質量%以上100質量%以下であることが特に好ましい。
【0156】
アルカリ水溶液としては、例えば、モノ−、ジ−あるいはトリアルキルアミン類、モノ−、ジ−あるいはトリアルカノールアミン類、複素環式アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、コリン等のアルカリ性化合物が挙げられる。
【0157】
特に、現像液は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の溶剤を含有する現像液が、レジストパターンの解像性やラフネス等のレジスト性能を改善するため好ましい。
【0158】
現像液の蒸気圧は、20℃において、5kPa以下が好ましく、3kPa以下がさらに好ましく、2kPa以下が特に好ましい。現像液の蒸気圧を5kPa以下にすることにより、現像液の基板上あるいは現像カップ内での蒸発が抑制され、ウェハ面内の温度均一性が向上し、結果としてウェハ面内の寸法均一性が良化する。
【0159】
5kPa以下の蒸気圧を有する具体的な例としては、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸ブチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等のエステル系溶剤;n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、4−メチル−2−ペンタノール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−デカノール等のアルコール系溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドのアミド系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0160】
特に好ましい範囲である2kPa以下の蒸気圧を有する具体的な例としては、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン等のケトン系溶剤;酢酸ブチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等のエステル系溶剤;n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、4−メチル−2−ペンタノール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−デカノール等のアルコール系溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドのアミド系溶剤;キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0161】
現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量添加することができる。
界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、イオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。これらのフッ素及び/又はシリコン系界面活性剤として、例えば、特開昭62−36663号公報、特開昭61−226746号公報、特開昭61−226745号公報、特開昭62−170950号公報、特開昭63−34540号公報、特開平7−230165号公報、特開平8−62834号公報、特開平9−54432号公報、特開平9−5988号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、好ましくは、非イオン性の界面活性剤である。非イオン性の界面活性剤としては特に限定されないが、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を用いることがさらに好ましい。
【0162】
界面活性剤の使用量は現像液の全量に対して、通常0.001〜5質量%、好ましくは0.005〜2質量%、さらに好ましくは0.01〜0.5質量%である。
【0163】
現像方法としては、たとえば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)などを適用することができる。パターンの現像を行なう時間には特に制限はないが、好ましくは10秒〜90秒である。
【0164】
また、現像を行う工程の後に、他の溶媒に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
【0165】
現像の後には、有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄する工程を含むことが好ましい。
【0166】
現像後のリンス工程に用いるリンス液としては、架橋により硬化したレジストパターンを溶解しなければ特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液又は水を使用することができる。上記リンス液としては、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。より好ましくは、現像の後に、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。さらにより好ましくは、現像の後に、アルコール系溶剤又はエステル系溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。さらにより好ましくは、現像の後に、1価アルコールを含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。特に好ましくは、現像の後に、炭素数5以上の1価アルコールを含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。パターンのリンスを行なう時間には特に制限はないが、好ましくは10秒〜90秒である。
【0167】
ここで、現像後のリンス工程で用いられる1価アルコールとしては、直鎖状、分岐状、環状の1価アルコールが挙げられ、具体的には、1−ブタノール、2−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−ヘキサノール、シクロペンタノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、3−ヘキサノール、3−ヘプタノール、3−オクタノール、4−オクタノールなどを用いることができ、特に好ましい炭素数5以上の1価アルコールとしては、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノールなどを用いることができる。
【0168】
上記各成分は、複数混合してもよいし、上記以外の有機溶剤と混合し使用してもよい。
【0169】
リンス液中の含水率は、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。含水率を10質量%以下にすることで、より良好な現像特性を得ることができる。
【0170】
現像後に用いるリンス液の蒸気圧は、20℃において0.05kPa以上、5kPa以下が好ましく、0.1kPa以上、5kPa以下がさらに好ましく、0.12kPa以上、3kPa以下が最も好ましい。リンス液の蒸気圧を0.05kPa以上、5kPa以下にすることにより、ウェハ面内の温度均一性がより向上し、さらにはリンス液の浸透に起因した膨潤がより抑制され、ウェハ面内の寸法均一性がより良化する。
【0171】
リンス液には、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
【0172】
リンス工程においては、現像を行ったウェハを上記の有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄処理する。洗浄処理の方法は特に限定されないが、たとえば、一定速度で回転している基板上にリンス液を塗出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)、などを適用することができ、この中でも回転塗布方法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2000rpm〜4000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去することが好ましい。
【0173】
レジストパターンを形成した後、エッチングすることによりパターン配線基板が得られる。エッチングの方法はプラズマガスを使用するドライエッチング及びアルカリ溶液、塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液等によるウェットエッチングなど公知の方法で行うことが出来る。
【0174】
レジストパターンを形成した後、めっきを行うことも出来る。上記めっき法としては、例えば、銅めっき、はんだめっき、ニッケルめっき、金めっきなどがある。
【0175】
エッチング後の残存レジストパターンは有機溶剤で剥離することが出来る。上記有機溶剤として、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート),PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル),EL(乳酸エチル)等が挙げられる。上記剥離方法としては、例えば、浸漬方法、スプレイ方式等が挙げられる。また、レジストパターンが形成された配線基板は、多層配線基板でもよく、小径スルーホールを有していてもよい。
【0176】
本実施形態において得られる配線基板は、レジストパターン形成後、金属を真空中で蒸着し、その後レジストパターンを溶液で溶かす方法、すなわちリフトオフ法により形成することもできる。
【0177】
[リソグラフィー用下層膜形成材料]
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成材料は、本実施形態の化合物及び/又は本実施形態の樹脂を含有する。本実施形態の化合物及び/又は本実施形態の樹脂は塗布性及び品質安定性の点から、リソグラフィー用下層膜形成材料中、1〜100質量%であることが好ましく、10〜100質量%であることがより好ましく、50〜100質量%であることがさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0178】
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成材料は、湿式プロセスへの適用が可能であり、耐熱性及びエッチング耐性に優れる。さらに、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成材料は上記物質を用いているため、高温ベーク時の膜の劣化が抑制され、酸素プラズマエッチング等に対するエッチング耐性にも優れた下層膜を形成することができる。さらに、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成材料はレジスト層との密着性にも優れるので、優れたレジストパターンを得ることができる。なお、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成材料は、本発明の効果が損なわれない範囲において、既に知られているリソグラフィー用下層膜形成材料等を含んでいてもよい。
【0179】
[リソグラフィー用下層膜形成用組成物]
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物は、上記リソグラフィー用下層膜形成材料と溶媒とを含有する。
【0180】
[溶媒]
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物において用いられる溶媒としては、上述した成分(A)が少なくとも溶解するものであれば、公知のものを適宜用いることができる。
【0181】
溶媒の具体例としては、特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセロソルブ系溶媒;乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステル系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール系溶媒;トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系炭化水素等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0182】
上記溶媒の中で、安全性の点から、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ヒドロキシイソ酪酸メチル、アニソールが特に好ましい。
【0183】
溶媒の含有量は、特に限定されないが、溶解性及び製膜上の観点から、上記下層膜形成材料100質量部に対して、100〜10,000質量部であることが好ましく、200〜5,000質量部であることがより好ましく、200〜1,000質量部であることがさらに好ましい。
【0184】
[架橋剤]
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物は、インターミキシングを抑制する等の観点から、必要に応じて架橋剤を含有していてもよい。本実施形態で使用可能な架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、国際公開WO2013/024779号に記載のものを用いることができる。なお、本実施形態において、架橋剤は、単独で又は2種以上を使用することができる。
【0185】
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物において、架橋剤の含有量は、特に限定されないが、下層膜形成材料100質量部に対して、5〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは10〜40質量部である。上記の好ましい範囲にすることで、レジスト層とのミキシング現象の発生が抑制される傾向にあり、また、反射防止効果が高められ、架橋後の膜形成性が高められる傾向にある。
【0186】
[酸発生剤]
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物は、熱による架橋反応をさらに促進させるなどの観点から、必要に応じて酸発生剤を含有していてもよい。酸発生剤としては、熱分解によって酸を発生するもの、光照射によって酸を発生するものなどが知られているが、いずれのものも使用することができる。
【0187】
酸発生剤としては、特に限定されないが、例えば、国際公開WO2013/024779号に記載のものを用いることができる。なお、本実施形態において、酸発生剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0188】
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物において、酸発生剤の含有量は、特に限定されないが、下層膜形成材料100質量部に対して、0.1〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜40質量部である。上記の好ましい範囲にすることで、酸発生量が多くなって架橋反応が高められる傾向にあり、また、レジスト層とのミキシング現象の発生が抑制される傾向にある。
【0189】
[塩基性化合物]
さらに、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物は、保存安定性を向上させる等の観点から、塩基性化合物を含有していてもよい。
【0190】
塩基性化合物は、酸発生剤より微量に発生した酸が架橋反応を進行させるのを防ぐための、酸に対するクエンチャーの役割を果たす。このような塩基性化合物としては、例えば、第一級、第二級又は第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシ基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、水酸基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド誘導体、イミド誘導体等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0191】
本実施形態において用いられる塩基性化合物としては、特に限定されないが、例えば、国際公開WO2013/024779号に記載のものを用いることができる。なお、本実施形態において、塩基性化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0192】
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物において、塩基性化合物の含有量は、特に限定されないが、下層膜形成材料100質量部に対して、0.001〜2質量部であることが好ましく、より好ましくは0.01〜1質量部である。上記の好ましい範囲にすることで、架橋反応を過度に損なうことなく保存安定性が高められる傾向にある。
【0193】
[その他の添加剤]
また、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物は、熱硬化性の付与や吸光度をコントロールする目的で、他の樹脂及び/又は化合物を含有していてもよい。このような他の樹脂及び/又は化合物としては、ナフトール樹脂、キシレン樹脂ナフトール変性樹脂、ナフタレン樹脂のフェノール変性樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ジシクロペンタジエン樹脂、(メタ)アクリレート、ジメタクリレート、トリメタクリレート、テトラメタクリレート、ビニルナフタレン、ポリアセナフチレンなどのナフタレン環、フェナントレンキノン、フルオレンなどのビフェニル環、チオフェン、インデンなどのヘテロ原子を有する複素環を含む樹脂や芳香族環を含まない樹脂;ロジン系樹脂、シクロデキストリン、アダマンタン(ポリ)オール、トリシクロデカン(ポリ)オール及びそれらの誘導体等の脂環構造を含む樹脂又は化合物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。さらに、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物は、公知の添加剤を含有していてもよい。上記公知の添加剤としては、以下に限定されないが、例えば、紫外線吸収剤、界面活性剤、着色剤、ノニオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0194】
[リソグラフィー用下層膜の形成方法]
本実施形態のリソグラフィー用下層膜の形成方法は、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物を用いて、基板上に下層膜を形成する工程を含む。
【0195】
[リソグラフィー用下層膜形成用組成物を用いたレジストパターン形成方法]
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物を用いたレジストパターン形成方法は、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物を用いて、基板上に下層膜を形成する工程(A−1)と、前記下層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成する工程(A−2)と、前記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像してレジストパターンを形成する工程(A−3)と、を有する。
【0196】
[リソグラフィー用下層膜形成用組成物を用いた回路パターン形成方法]
本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物を用いた回路パターン形成方法は、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物を用いて、基板上に下層膜を形成する工程(B−1)と、前記下層膜上に、珪素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いて中間層膜を形成する工程(B−2)と、前記中間層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成する工程(B−3)と、前記工程(B−3)の後、前記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像してレジストパターンを形成する工程(B−4)と、前記工程(B−4)の後、前記レジストパターンをマスクとして前記中間層膜をエッチングして、中間層膜パターンを形成する工程(B−5)と、得られた中間層膜パターンをエッチングマスクとして前記下層膜をエッチングして、下層膜パターンを形成する工程(B−6)と、得られた下層膜パターンをエッチングマスクとして基板をエッチングすることで基板にパターンを形成する工程(B−7)と、を有する。
【0197】
本実施形態のリソグラフィー用下層膜は、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物から形成されるものであれば、その形成方法は特に限定されず、公知の手法を適用することができる。例えば、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成用組成物をスピンコートやスクリーン印刷等の公知の塗布法或いは印刷法などで基板上に付与した後、有機溶媒を揮発させるなどして除去することで、下層膜を形成することができる。
【0198】
下層膜の形成時には、上層レジストとのミキシング現象の発生を抑制するとともに架橋反応を促進させるために、ベークをすることが好ましい。この場合、ベーク温度は、特に限定されないが、80〜450℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは200〜400℃である。また、ベーク時間も、特に限定されないが、10〜300秒の範囲内であることが好ましい。なお、下層膜の厚さは、要求性能に応じて適宜選定することができ、特に限定されないが、通常、30〜20,000nm程度であることが好ましく、より好ましくは50〜15,000nmとすることが好ましい。
【0199】
下層膜を作製した後、2層プロセスの場合はその上に珪素含有レジスト層、或いは通常の炭化水素からなる単層レジスト、3層プロセスの場合はその上に珪素含有中間層、さらにその上に珪素を含まない単層レジスト層を作製することが好ましい。この場合、このレジスト層を形成するためのフォトレジスト材料としては公知のものを使用することができる。
【0200】
基板上に下層膜を作製した後、2層プロセスの場合はその下層膜上に珪素含有レジスト層あるいは通常の炭化水素からなる単層レジストを作製することができる。3層プロセスの場合はその下層膜上に珪素含有中間層、さらにその珪素含有中間層上に珪素を含まない単層レジスト層を作製することができる。これらの場合において、レジスト層を形成するためのフォトレジスト材料は、公知のものから適宜選択して使用することができ、特に限定されない。
【0201】
2層プロセス用の珪素含有レジスト材料としては、酸素ガスエッチング耐性の観点から、ベースポリマーとしてポリシルセスキオキサン誘導体又はビニルシラン誘導体等の珪素原子含有ポリマーを使用し、さらに有機溶媒、酸発生剤、必要により塩基性化合物等を含むポジ型のフォトレジスト材料が好ましく用いられる。ここで珪素原子含有ポリマーとしては、この種のレジスト材料において用いられている公知のポリマーを使用することができる。
【0202】
3層プロセス用の珪素含有中間層としてはポリシルセスキオキサンベースの中間層が好ましく用いられる。中間層に反射防止膜として効果を持たせることによって、効果的に反射を抑えることができる傾向にある。例えば、193nm露光用プロセスにおいて、下層膜として芳香族基を多く含み基板エッチング耐性が高い材料を用いると、k値が高くなり、基板反射が高くなる傾向にあるが、中間層で反射を抑えることによって、基板反射を0.5%以下にすることができる。このような反射防止効果がある中間層としては、以下に限定されないが、193nm露光用としてはフェニル基又は珪素−珪素結合を有する吸光基を導入された、酸或いは熱で架橋するポリシルセスキオキサンが好ましく用いられる。
【0203】
また、Chemical Vapour Deposition(CVD)法で形成した中間層を用いることもできる。CVD法で作製した反射防止膜としての効果が高い中間層としては、以下に限定されないが、例えば、SiON膜が知られている。一般的には、CVD法よりスピンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスによる中間層の形成の方が、簡便でコスト的なメリットがある。なお、3層プロセスにおける上層レジストは、ポジ型でもネガ型でもどちらでもよく、また、通常用いられている単層レジストと同じものを用いることができる。
【0204】
さらに、本実施形態における下層膜は、通常の単層レジスト用の反射防止膜或いはパターン倒れ抑制のための下地材として用いることもできる。本実施形態の下層膜は、下地加工のためのエッチング耐性に優れるため、下地加工のためのハードマスクとしての機能も期待できる。
【0205】
上記フォトレジスト材料によりレジスト層を形成する場合においては、上記下層膜を形成する場合と同様に、スピンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスが好ましく用いられる。また、レジスト材料をスピンコート法などで塗布した後、通常、プリベークが行われるが、このプリベークは、80〜180℃で10〜300秒の範囲で行うことが好ましい。その後、常法にしたがい、露光を行い、ポストエクスポジュアーベーク(PEB)、現像を行うことで、レジストパターンを得ることができる。なお、レジスト膜の厚さは特に制限されないが、一般的には、30〜500nmが好ましく、より好ましくは50〜400nmである。
【0206】
また、露光光は、使用するフォトレジスト材料に応じて適宜選択して用いればよい。一般的には、波長300nm以下の高エネルギー線、具体的には248nm、193nm、157nmのエキシマレーザー、3〜20nmの軟X線、電子ビーム、X線等を挙げることができる。
【0207】
上記の方法により形成されるレジストパターンは、本実施形態における下層膜によってパターン倒れが抑制されたものとなる。そのため、本実施形態における下層膜を用いることで、より微細なパターンを得ることができ、また、そのレジストパターンを得るために必要な露光量を低下させ得る。
【0208】
次に、得られたレジストパターンをマスクにしてエッチングを行う。2層プロセスにおける下層膜のエッチングとしては、ガスエッチングが好ましく用いられる。ガスエッチングとしては、酸素ガスを用いたエッチングが好適である。酸素ガスに加えて、He、Arなどの不活性ガスや、CO、CO
2、NH
3、SO
2、N
2、NO
2、H
2ガスを加えることも可能である。また、酸素ガスを用いずに、CO、CO
2、NH
3、N
2、NO
2、H
2ガスだけでガスエッチングを行うこともできる。特に後者のガスは、パターン側壁のアンダーカット防止のための側壁保護のために好ましく用いられる。
【0209】
一方、3層プロセスにおける中間層のエッチングにおいても、ガスエッチングが好ましく用いられる。ガスエッチングとしては、上記の2層プロセスにおいて説明したものと同様のものが適用可能である。とりわけ、3層プロセスにおける中間層の加工は、フロン系のガスを用いてレジストパターンをマスクにして行うことが好ましい。その後、上述したように中間層パターンをマスクにして、例えば酸素ガスエッチングを行うことで、下層膜の加工を行うことができる。
【0210】
ここで、中間層として無機ハードマスク中間層膜を形成する場合は、CVD法やALD法等で、珪素酸化膜、珪素窒化膜、珪素酸化窒化膜(SiON膜)が形成される。窒化膜の形成方法としては、以下に限定されないが、例えば、特開2002−334869号公報(特許文献6)、WO2004/066377(特許文献7)に記載された方法を用いることができる。このような中間層膜の上に直接フォトレジスト膜を形成することができるが、中間層膜の上に有機反射防止膜(BARC)をスピンコートで形成して、その上にフォトレジスト膜を形成してもよい。
【0211】
中間層として、ポリシルセスキオキサンベースの中間層も好ましく用いられる。レジスト中間層膜に反射防止膜として効果を持たせることによって、効果的に反射を抑えることができる傾向にある。ポリシルセスキオキサンベースの中間層の具体的な材料については、以下に限定されないが、例えば、特開2007−226170号(特許文献8)、特開2007−226204号(特許文献9)に記載されたものを用いることができる。
【0212】
また、次の基板のエッチングも、常法によって行うことができ、例えば、基板がSiO
2、SiNであればフロン系ガスを主体としたエッチング、p−SiやAl、Wでは塩素系、臭素系ガスを主体としたエッチングを行うことができる。基板をフロン系ガスでエッチングする場合、2層レジストプロセスの珪素含有レジストと3層プロセスの珪素含有中間層は、基板加工と同時に剥離される。一方、塩素系或いは臭素系ガスで基板をエッチングした場合は、珪素含有レジスト層又は珪素含有中間層の剥離が別途行われ、一般的には、基板加工後にフロン系ガスによるドライエッチング剥離が行われる。
【0213】
本実施形態における下層膜は、これら基板のエッチング耐性に優れる特徴がある。なお、基板は、公知のものを適宜選択して使用することができ、特に限定されないが、Si、α−Si、p−Si、SiO
2、SiN、SiON、W、TiN、Al等が挙げられる。また、基板は、基材(支持体)上に被加工膜(被加工基板)を有する積層体であってもよい。このような被加工膜としては、Si、SiO
2、SiON、SiN、p−Si、α−Si、W、W−Si、Al、Cu、Al−Si等種々のLow−k膜及びそのストッパー膜等が挙げられ、通常、基材(支持体)とは異なる材質のものが用いられる。なお、加工対象となる基板或いは被加工膜の厚さは、特に限定されないが、通常、50〜10,000nm程度であることが好ましく、より好ましくは75〜5,000nmである。
【0214】
[化合物及び/又は樹脂の精製方法]
本実施形態の化合物及び/又は樹脂の精製方法は、本実施形態の化合物及び/又は本実施形態の樹脂を、溶媒に溶解させて溶液(S)を得る工程と、得られた溶液(S)と酸性の水溶液とを接触させて、前記化合物及び/又は前記樹脂中の不純物を抽出する第一抽出工程とを含み、前記溶液(S)を得る工程で用いる溶媒が、水と混和しない有機溶媒を含む。
【0215】
当該第一抽出工程において、上記樹脂は、上記式(A)で表される化合物と架橋反応性のある化合物との反応によって得られる樹脂であることが好ましい。本実施の形態の精製方法によれば、上述した特定の構造を有する化合物又は樹脂に不純物として含まれうる種々の金属の含有量を低減することができる。
【0216】
より詳細には、本実施形態の精製方法においては、上記化合物及び/又は上記樹脂を、水と混和しない有機溶媒に溶解させて溶液(S)を得て、さらにその溶液(S)を酸性水溶液と接触させて抽出処理を行うことができる。これにより、本実施形態の化合物及び/又は樹脂を含む溶液(S)に含まれる金属分を水相に移行させたのち、有機相と水相とを分離して金属含有量の低減された、本実施形態の化合物及び/又は樹脂を得ることができる。
【0217】
本実施形態の精製方法で使用する本実施形態の化合物及び/又は樹脂は単独でもよいが、2種以上混合することもできる。また、本実施形態の化合物及び/又は樹脂は、各種界面活性剤、各種架橋剤、各種酸発生剤、各種安定剤等を含有していてもよい。
【0218】
本実施形態で使用される水と混和しない溶媒としては、特に限定されないが、半導体製造プロセスに安全に適用できる有機溶媒が好ましく、具体的には、室温下における水への溶解度が30%未満である有機溶媒であり、より好ましくは20%未満であり、特に好ましくは10%未満である有機溶媒が好ましい。当該有機溶媒の使用量は、使用する本実施形態の化合物及び/又は樹脂に対して、1〜100質量倍であることが好ましい。
【0219】
水と混和しない溶媒の具体例としては、以下に限定されないが、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸n‐ブチル、酢酸イソアミル等のエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2‐ヘプタノン、2−ペンタノン等のケトン類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテート類;n‐ヘキサン、n‐ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。これらの中でも、トルエン、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル等が好ましく、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートがより好ましく、メチルイソブチルケトン、酢酸エチルがよりさらに好ましい。メチルイソブチルケトン、酢酸エチル等は、本実施形態の化合物及び樹脂の飽和溶解度が比較的高く、沸点が比較的低いことから、工業的に溶媒を留去する場合や乾燥により除去する工程での負荷を低減することが可能となる。これらの溶媒はそれぞれ単独で用いることもできるし、また2種以上を混合して用いることもできる。
【0220】
本実施形態の精製方法で使用される酸性の水溶液としては、特に限定されないが、例えば、無機系化合物を水に溶解させた鉱酸水溶液又は有機系化合物を水に溶解させた有機酸水溶液が挙げられる。鉱酸水溶液としては、特に限定されないが、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸を1種類以上水に溶解させた鉱酸水溶液が挙げられる。また、有機酸水溶液としては、特に限定されないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、フェノールスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸を1種類以上水に溶解させた有機酸水溶液が挙げられる。これら酸性の水溶液は、それぞれ単独で用いることもできるし、また2種以上を組み合わせて用いることもできる。これら酸性の水溶液の中でも、塩酸、硫酸、硝酸及びリン酸からなる群より選ばれる1種以上の鉱酸水溶液、又は、酢酸、プロピオン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、フェノールスルホン酸、p−トルエンスルホン酸及びトリフルオロ酢酸からなる群より選ばれる1種以上の有機酸水溶液であることが好ましく、硫酸、硝酸、及び酢酸、蓚酸、酒石酸、クエン酸等のカルボン酸の水溶液がより好ましく、硫酸、蓚酸、酒石酸、クエン酸の水溶液がさらに好ましく、蓚酸の水溶液がよりさらに好ましい。蓚酸、酒石酸、クエン酸等の多価カルボン酸は金属イオンに配位し、キレート効果が生じるために、より効果的に金属を除去できる傾向にあるものと考えられる。また、ここで用いる水は、本実施の形態の精製方法の目的に沿って、金属含有量の少ない水、例えばイオン交換水等を用いることが好ましい。
【0221】
本実施形態の精製方法で使用する酸性の水溶液のpHは特に限定されないが、本実施形態の化合物及び/又は樹脂への影響を考慮し、水溶液の酸性度を調整することが好ましい。通常、pH範囲は0〜5程度であり、好ましくはpH0〜3程度である。
【0222】
本実施形態の精製方法で使用する酸性の水溶液の使用量は特に限定されないが、金属除去のための抽出回数を低減する観点及び全体の液量を考慮して操作性を確保する観点から、当該使用量を調整することが好ましい。上記観点から、酸性の水溶液の使用量は、前記溶液(S)100質量%に対して、好ましくは10〜200質量%であり、より好ましくは20〜100質量%である。
【0223】
本実施形態の精製方法においては、上記のような酸性の水溶液と、本実施形態の化合物及び/又は樹脂と、及び水と混和しない溶媒を含む溶液(S)と、を接触させることにより、溶液(S)中の前記化合物又は前記樹脂から金属分を抽出することができる。
【0224】
本実施形態の精製方法においては、前記溶液(S)が、さらに水と混和する有機溶媒を含むことが好ましい。水と混和する有機溶媒を含む場合、本実施形態の化合物及び/又は樹脂の仕込み量を増加させることができ、また、分液性が向上し、高い釜効率で精製を行うことができる傾向にある。水と混和する有機溶媒を加える方法は特に限定されない。例えば、予め有機溶媒を含む溶液に加える方法、予め水又は酸性の水溶液に加える方法、有機溶媒を含む溶液と水又は酸性の水溶液とを接触させた後に加える方法のいずれでもよい。これらの中でも、予め有機溶媒を含む溶液に加える方法が操作の作業性や仕込み量の管理のし易さの点で好ましい。
【0225】
本実施形態の精製方法で使用される水と混和する有機溶媒としては、特に限定されないが、半導体製造プロセスに安全に適用できる有機溶媒が好ましい。水と混和する有機溶媒の使用量は、溶液相と水相とが分離する範囲であれば特に限定されないが、本実施形態の化合物及び/又は樹脂に対して、0.1〜100質量倍であることが好ましく、0.1〜50質量倍であることがより好ましく、0.1〜20質量倍であることがさらに好ましい。
【0226】
本実施形態の精製方法において使用される水と混和する有機溶媒の具体例としては、以下に限定されないが、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン等のエーテル類;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;アセトン、N−メチルピロリドン等のケトン類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類等の脂肪族炭化水素類が挙げられる。これらの中でも、N−メチルピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が好ましく、N−メチルピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。これらの溶媒はそれぞれ単独で用いることもできるし、また2種以上を混合して用いることもできる。
【0227】
抽出処理を行う際の温度は通常、20〜90℃であり、好ましくは30〜80℃の範囲である。抽出操作は、例えば、撹拌等により、よく混合させたあと、静置することにより行われる。これにより、本実施形態の化合物及び/又は樹脂と有機溶媒を含む溶液に含まれていた金属分が水相に移行する。また、本操作により、溶液の酸性度が低下し、本実施形態の化合物及び/又は樹脂の変質を抑制することができる。
【0228】
前記混合溶液は静置により、本実施形態の化合物及び/又は樹脂と溶媒を含む溶液相と、水相とに分離するので、デカンテーション等により本実施形態の化合物及び/又は樹脂と溶媒とを含む溶液相を回収する。静置する時間は特に限定されないが、溶媒を含む溶液相と水相との分離をより良好にする観点から、当該静置する時間を調整することが好ましい。通常、静置する時間は1分以上であり、好ましくは10分以上であり、より好ましくは30分以上である。また、抽出処理は1回だけでもかまわないが、混合、静置、分離という操作を複数回繰り返して行うのも有効である。
【0229】
本実施形態の精製方法は、前記第一抽出工程後、前記化合物又は前記樹脂を含む溶液相を、さらに水に接触させて、前記化合物又は前記樹脂中の不純物を抽出する工程(第二抽出工程)を含むことが好ましい。具体的には、例えば、酸性の水溶液を用いて上記抽出処理を行った後に、該水溶液から抽出され、回収された本実施形態の化合物及び/又は樹脂と溶媒を含む溶液相を、さらに水による抽出処理に供することが好ましい。上記の水による抽出処理は、特に限定されないが、例えば、上記溶液相と水とを、撹拌等により、よく混合させたあと、得られた混合溶液を、静置することにより行うことができる。当該静置後の混合溶液は、本実施形態の化合物及び/又は樹脂と溶媒とを含む溶液相と、水相とに分離するのでデカンテーション等により本実施形態の化合物及び/又は樹脂と溶媒とを含む溶液相を回収することができる。
【0230】
また、ここで用いる水は、本実施形態の目的に沿って、金属含有量の少ない水、例えば、イオン交換水等であることが好ましい。抽出処理は1回だけでもかまわないが、混合、静置、分離という操作を複数回繰り返して行うのも有効である。また、抽出処理における両者の使用割合や、温度、時間等の条件は特に限定されないが、先の酸性の水溶液との接触処理の場合と同様で構わない。
【0231】
こうして得られた本実施形態の化合物及び/又は樹脂と溶媒とを含む溶液に混入しうる水分については、減圧蒸留等の操作を施すことにより容易に除去できる。また、必要により上記溶液に溶媒を加え、本実施形態の化合物及び/又は樹脂の濃度を任意の濃度に調整することができる。
【0232】
得られた本実施形態の化合物及び/又は樹脂と溶媒とを含む溶液から、本実施形態の化合物及び/又は樹脂を単離する方法は、特に限定されず、減圧除去、再沈殿による分離、及びそれらの組み合わせ等、公知の方法で行うことができる。必要に応じて、濃縮操作、ろ過操作、遠心分離操作、乾燥操作等の公知の処理を行うことができる。
【実施例】
【0233】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。但し、本実施形態は、これらの実施例に特に限定はされない。
【0234】
化合物の評価方法は次の通りである。
<熱分解温度の測定>
エスアイアイ・ナノテクノロジー社製EXSTAR6000DSC装置を使用し、試料約5mgをアルミニウム製非密封容器に入れ、窒素ガス(30ml/min)気流中昇温速度10℃/minで500℃まで昇温した。その際、ベースラインに減少部分が現れる温度を熱分解温度とした。
【0235】
<合成例1>
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積100mlの容器に2,6−ナフタレンジオール(シグマ−アルドリッチ社製試薬)3.20g(20mmol)と4−ビフェニルカルボキシアルデヒド(三菱瓦斯化学社製)1.82g(10mmol)とを30mlメチルイソブチルケトンに仕込み、95%の硫酸5mlを加えて、反応液を100℃で6時間撹拌して反応を行った。次に反応液を濃縮し、純水50gを加えて反応生成物を析出させ、室温まで冷却した後、濾過を行って分離した。得られた固形物を濾過し、乾燥させた後、カラムクロマトによる分離精製を行い、下記式(3)で表される目的化合物が3.05g得られた。
【0236】
400MHz−
1H−NMRにより下記式(3)の化学構造を有することを確認した。
1H−NMR:(d−DMSO、内部標準TMS)
δ(ppm)9.7(2H,O−H)、7.2〜8.5(19H,Ph−H)、6.6(1H,C−H)
【0237】
尚、2,6−ナフタレンジオールの置換位置が1位であることは、3位と4位のプロトンのシグナルがダブレットであることから確認した。
【化50】
【0238】
<合成例2>
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積300mLの容器において、2−ナフトール(シグマ−アルドリッチ社製試薬)10g(69.0mmol)を120℃で溶融後、硫酸0.27gを仕込み、4−アセチルビフェニル(シグマ−アルドリッチ社製試薬)2.7g(13.8mmol)を加えて、内容物を120℃で6時間撹拌して反応を行って反応液を得た。次に反応液にN−メチル−2−ピロリドン(関東化学株式会社製)100mL、純水50mLを加えたあと、酢酸エチルにより抽出した。次に純水を加えて中性になるまで分液後、濃縮を行って溶液を得た。
【0239】
得られた溶液を、カラムクロマトによる分離後、下記式(BiN−1)で表される目的化合物(BiN−1)が1.0g得られた。
【0240】
得られた化合物(BiN−1)について、前記方法により分子量を測定した結果、466であった。また、炭素濃度は87.5質量%、酸素濃度は6.9質量%であった。
【0241】
得られた化合物(BiN−1)について、前記測定条件で、NMR測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記式(BiN−1)の化学構造を有することを確認した。
δ(ppm)9.69(2H,O−H)、7.01〜7.67(21H,Ph−H)、2.28(3H,C−H)
【化51】
【0242】
<合成例3>
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積100mlの容器に2,6−ナフタレンジオール(シグマ−アルドリッチ社製試薬)3.20g(20mmol)と4−ビフェニルカルボキシアルデヒド(三菱瓦斯化学社製)1.82g(10mmol)とを30mlメチルイソブチルケトンに仕込み、95%の硫酸5mlを加えて、反応液を100℃で3時間撹拌して反応を行った。次に反応液を濃縮し、純水50gを加えて反応生成物を析出させ、室温まで冷却した後、濾過を行って分離した。得られた固形物を濾過し、乾燥させた後、カラムクロマトによる分離精製を行い、下記式(BiN−2)で表される目的化合物(BiN−2)が1.0g得られた。
【0243】
400MHz−
1H−NMRにより下記式(BiN−2)の化学構造を有することを確認した。
1H−NMR:(d−DMSO、内部標準TMS)
δ(ppm)9.7(2H,O−H)、7.2〜8.5(19H,Ph−H)、6.6(1H,C−H)
【化52】
【0244】
<実施例1>
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積200mlの容器に上記式(3)で表される化合物5.8g(12.4mmol)と炭酸カリウム4g(28mmol)とを100mlアセトンに仕込み、メタアクリロイルクロライド2.8g(27mmol)、10−クラウン−6 0.8gを加えて、反応液を還流下で7時間撹拌して反応を行った。次に反応液を氷浴で冷却し、反応液を濃縮し析出した固形物を濾過し、乾燥させた後、カラムクロマトによる分離精製を行い、下記式(4)で表される目的化合物を2.0g得た。
【0245】
400MHz−
1H−NMRにより下記式(4)の化学構造を有することを確認した。
1H−NMR:(d−DMSO、内部標準TMS)
δ(ppm)7.2〜7.8(19H,Ph−H)、6.7(1H,C−H)、5.6〜6.0(4H,−C(CH
3)=CH
2)、1.9(6H,−C(CH
3)=CH
2)
【化53】
【0246】
得られた化合物の熱分解温度は385℃であり、高耐熱性が確認できた。
【0247】
<実施例2>
メタアクリロイルクロライドの代わりにアクリロイルクロライド2.8g(28mol)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、下記式(7)で表される目的化合物を1.8g得た。
【0248】
400MHz−
1H−NMRにより下記式(7)の化学構造を有することを確認した。
1H−NMR:(d−DMSO、内部標準TMS)
δ(ppm)7.2〜7.8(19H,Ph−H)、6.7(1H,C−H)、5.9〜6.3(6H,−CH=CH
2)
【化54】
【0249】
得られた化合物の熱分解温度は385℃であり、高耐熱性が確認できた。
【0250】
<実施例3>
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積200mlの容器に上記式(BiN−1)で表される化合物5.8g(12.4mmol)と炭酸カリウム4g(28mmol)とを100mlアセトンに仕込み、メタアクリロイルクロライド2.8g(27mmol)、10−クラウン−6 0.8gを加えて、反応液を還流下で7時間撹拌して反応を行った。次に反応液を氷浴で冷却し、反応液を濃縮し析出した固形物を濾過し、乾燥させた後、カラムクロマトによる分離精製を行い、下記式(12)で表される目的化合物を2.0g得た。
【0251】
400MHz−
1H−NMRにより下記式(12)の化学構造を有することを確認した。
1H−NMR:(d−DMSO、内部標準TMS)
δ(ppm)7.16〜8.02(21H,Ph−H)、2.54(3H,C−H)、
6.18〜6.43(4H,−C(CH
3)=CH
2)、2.0(6H,−C(CH
3)=CH
2)
【化55】
【0252】
得られた化合物の熱分解温度は384℃であり、高耐熱性が確認できた。
【0253】
<実施例4>
メタアクリロイルクロライドの代わりにアクリロイルクロライド2.8g(28mol)を用いた以外は、実施例3と同様に行い、下記式(13)で表される目的化合物を1.8g得た。
【0254】
400MHz−
1H−NMRにより下記式(13)の化学構造を有することを確認した。
1H−NMR:(d−DMSO、内部標準TMS)
δ(ppm)7.23〜8.09(21H,Ph−H)、2.54(3H,C−H)、
5.74〜6.24(4H,−C(CH
3)=CH
2)、6.1(6H,−C(CH
3)=CH
2)
【化56】
【0255】
得られた化合物の熱分解温度は384℃であり、高耐熱性が確認できた。
【0256】
<実施例5>
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積200mlの容器に上記式(BiN−2)で表される化合物5.8g(12.4mmol)と炭酸カリウム4g(28mmol)とを100mlアセトンに仕込み、メタアクリロイルクロライド2.8g(27mmol)、10−クラウン−6 0.8gを加えて、反応液を還流下で7時間撹拌して反応を行った。次に反応液を氷浴で冷却し、反応液を濃縮し析出した固形物を濾過し、乾燥させた後、カラムクロマトによる分離精製を行い、下記式(14)で表される目的化合物を2.0g得た。
【0257】
400MHz−
1H−NMRにより下記式(14)の化学構造を有することを確認した。
1H−NMR:(d−DMSO、内部標準TMS)
δ(ppm)6.9〜7.75(19H,Ph−H)、5.48(1H,C−H)、6.18〜6.43(8H,−C(CH
3)=CH
2)、2.0(12H,−C(CH
3)=CH
2)
【化57】
【0258】
得られた化合物の熱分解温度は385℃であり、高耐熱性が確認できた。
【0259】
<実施例6>
メタアクリロイルクロライドの代わりにアクリロイルクロライド2.8g(28mol)を用いた以外は、実施例5と同様に行い、下記式(15)で表される目的化合物を1.8g得た。
【0260】
400MHz−
1H−NMRにより下記式(15)の化学構造を有することを確認した。
1H−NMR:(d−DMSO、内部標準TMS)
δ(ppm)6.94〜7.75(19H,Ph−H)、5.48(1H,C−H)、5.74〜6.24(8H,−C(CH
3)=CH
2)、6.1(12H,−C(CH
3)=CH
2)
【化58】
【0261】
得られた化合物の熱分解温度は385℃であり、高耐熱性が確認できた。
【0262】
(比較例1)
ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた、底抜きが可能な内容積10Lの四つ口フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流中、1,5−ジメチルナフタレン1.09kg(7mol、三菱ガス化学(株)製)、40質量%ホルマリン水溶液2.1kg(ホルムアルデヒドとして28mol、三菱ガス化学(株)製)及び98質量%硫酸(関東化学(株)製)0.97mLを仕込み、常圧下、100℃で還流させながら7時間反応させた。その後、希釈溶媒としてエチルベンゼン(和光純薬工業(株)製試薬特級)1.8kgを反応液に加え、静置後、下相の水相を除去した。さらに、中和及び水洗を行い、エチルベンゼン及び未反応の1,5−ジメチルナフタレンを減圧下で留去することにより、淡褐色固体のジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂1.25kgを得た。
【0263】
続いて、ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積0.5Lの四つ口フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流下で、上記のようにして得られたジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂100g(0.51mol)とパラトルエンスルホン酸0.05gとを仕込み、190℃まで昇温させて2時間加熱した後、攪拌した。その後さらに、1−ナフトール52.0g(0.36mol)を加え、さらに220℃まで昇温させて2時間反応させた。溶剤希釈後、中和及び水洗を行い、溶剤を減圧下で除去することにより、黒褐色固体の変性樹脂(CR−1)126.1gを得た。
【0264】
[実施例1〜6、比較例1]
(耐熱性及びレジスト性能)
式(4)、式(7)、式(12)、式(13)、式(14)、式(15)、及びCR−1を用いて、耐熱性試験及びレジスト性能評価を行った結果を表1に示す。
【0265】
(レジスト組成物の調製)
上記で合成した各化合物を用いて、表1に示す配合でレジスト組成物を調製した。なお、表1中のレジスト組成物の各成分のうち、酸発生剤(C)、酸拡散制御剤(E)及び溶媒については、以下のものを用いた。
酸発生剤(C)
P−1:トリフェニルベンゼンスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート(みどり化学(株))
酸拡散制御剤(E)
Q−1:トリオクチルアミン(東京化成工業(株))
溶媒
S−1:プロピレングリコールモノメチルエーテル(東京化成工業(株))
【0266】
(耐熱性能の試験方法)
エスアイアイ・ナノテクノロジー社製EXSTAR6000DSC装置を使用し、試料約5mgをアルミニウム製非密封容器に入れ、窒素ガス(30ml/min)気流中昇温速度10℃/minで500℃まで昇温した。その際、ベースラインに減少部分が現れる温度を熱分解温度(Tg)とし、以下の基準で耐熱性を評価した。
評価A:熱分解温度が≧150℃
評価C:熱分解温度が<150℃
【0267】
(レジスト組成物のレジスト性能の評価方法)
均一なレジスト組成物を清浄なシリコンウェハー上に回転塗布した後、110℃のオーブン中で露光前ベーク(PB)して、厚さ60nmのレジスト膜を形成した。得られたレジスト膜に対して、電子線描画装置(ELS−7500、(株)エリオニクス社製)を用いて、50nm間隔の1:1のラインアンドスペース設定の電子線を照射した。当該照射後に、レジスト膜を、それぞれ所定の温度で、90秒間加熱し、TMAH2.38質量%アルカリ現像液に60秒間浸漬して現像を行った。その後、レジスト膜を、超純水で30秒間洗浄、乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。形成されたレジストパターンについて、ラインアンドスペースを走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジー製S−4800)により観察し、レジスト組成物の電子線照射による反応性を評価した。
【0268】
【表1】
【0269】
表1から明らかなように、実施例1及び実施例2、3、4、5、6で用いた化合物(順に、式(4)、式(7)、式(12)、式(13)、式(14)、式(15))は耐熱性が良好であるが、比較例1で用いた化合物(CR−1)は耐熱性が劣ることが確認できた。
【0270】
また、レジストパターン評価については、実施例1及び実施例2、3、4、5、6では50nm間隔の1:1のラインアンドスペース設定の電子線を照射により、良好なレジストパターンを得た。一方、比較例1では良好なレジストパターンを得ることはできなかった。
【0271】
このように本発明の要件を満たす化合物は比較化合物(CR−1)に比べて、耐熱性が高く、また良好なレジストパターン形状を付与できる。前記した本発明の要件を満たす限り、実施例に記載した化合物以外の化合物についても同様の効果を示す。
【0272】
[実施例7〜12、比較例2]
(感放射線性組成物の調製)
表2記載の成分を調合し、均一溶液としたのち、得られた均一溶液を、孔径0.1μmのテフロン(登録商標)製メンブランフィルターで濾過して、感放射線性組成物を調製した。調製した各々の感放射線性組成物について以下の評価を行った。
【0273】
【表2】
【0274】
なお、比較例2におけるレジスト基材として、つぎのものを用いた。
PHS−1:ポリヒドロキシスチレン Mw=8000(シグマ−アルドリッチ社)
光活性化合物(B)として、つぎのものを用いた。
B−1:化学構造式(G)のナフトキノンジアジド系感光剤(4NT−300、東洋合成工業(株))
溶媒として、つぎのものを用いた。
S−1:プロピレングリコールモノメチルエーテル(東京化成工業(株))
【化59】
【0275】
(感放射線性組成物のレジスト性能の評価)
上記で得られた感放射線性組成物を清浄なシリコンウェハー上に回転塗布した後、110℃のオーブン中で露光前ベーク(PB)して、厚さ200nmのレジスト膜を形成した。該レジスト膜に対して、紫外線露光装置(ミカサ製マスクアライナMA−10)を用いて紫外線を露光した。紫外線ランプは超高圧水銀ランプ(相対強度比はg線:h線:i線:j線=100:80:90:60)を使用した。照射後に、レジスト膜を、110℃で90秒間加熱し、TMAH2.38質量%アルカリ現像液に60秒間浸漬して現像を行った。その後、レジスト膜を、超純水で30秒間洗浄し、乾燥して、5μmのポジ型のレジストパターンを形成した。
【0276】
形成されたレジストパターンにおいて、得られたラインアンドスペースを走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジー製S−4800)により観察した。ラインエッジラフネスはパターンの凹凸が50nm未満を良好とした。
【0277】
実施例7及び実施例8、9、10、11、12における感放射線性組成物を用いた場合は、解像度5μmの良好なレジストパターンを得ることができた。また、そのパターンのラフネスも小さく良好であった。
【0278】
一方、比較例2における感放射線性組成物を用いた場合は、解像度5μmの良好なレジストパターンを得ることができた。しかしながら、そのパターンのラフネスは大きく不良であった。
【0279】
上記のように、実施例7及び実施例8、9、10、11、12では、比較例2に比べて、ラフネスが小さく、かつ良好な形状のレジストパターンを形成することができることがわかった。上記した本発明の要件を満たす限り、実施例に記載した以外の感放射線性組成物も同様の効果を示す。
【0280】
実施例1及び実施例2、3、4、5、6で得られた化合物は、比較的に低分子量で低粘度であり、また、ガラス転移温度がいずれも100℃以下と低いことから、これを用いたリソグラフィー用下層膜形成材料は埋め込み特性が比較的に有利に高められ得る。また、熱分解温度はいずれも150℃以上(評価A)であり、酸解離性基の脱離後は、その構造の剛直さにより高い耐熱性を有するので、高温ベーク条件でも使用することができる。
【0281】
[実施例13〜18、比較例3]
(リソグラフィー用下層膜形成用組成物の調製)
表3に示す組成となるように、リソグラフィー用下層膜形成用組成物を調製した。次に、これらのリソグラフィー用下層膜形成用組成物をシリコン基板上に回転塗布し、その後、240℃で60秒間、さらに400℃で120秒間ベークして、膜厚200nmの下層膜を各々作製した。酸発生剤、架橋剤及び有機溶媒については以下のものを用いた。
酸発生剤:みどり化学社製 ジターシャリーブチルジフェニルヨードニウムノナフルオロメタンスルホナート(DTDPI)
架橋剤:三和ケミカル社製 ニカラックMX270(ニカラック)
有機溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
ノボラック:群栄化学社製 PSM4357
【0282】
次に、下記に示す条件でエッチング試験を行い、エッチング耐性を評価した。評価結果を表3に示す。
【0283】
[エッチング試験]
エッチング装置:サムコインターナショナル社製 RIE−10NR
出力:50W
圧力:20Pa
時間:2min
エッチングガス
Arガス流量:CF
4ガス流量:O
2ガス流量=50:5:5(sccm)
【0284】
(エッチング耐性の評価)
エッチング耐性の評価は、以下の手順で行った。まず、ノボラック(群栄化学社製 PSM4357)を用いること以外は、上記条件で、ノボラックの下層膜を作製した。そして、このノボラックの下層膜を対象として、上記のエッチング試験を行い、そのときのエッチングレートを測定した。
【0285】
次に、実施例13及び実施例14、15、16、17,18と比較例3の下層膜を、ノボラックの下層膜と同様の条件で作製し、上記エッチング試験を同様に行い、そのときのエッチングレートを測定した。
【0286】
そして、ノボラックの下層膜のエッチングレートを基準として、以下の評価基準でエッチング耐性を評価した。
[評価基準]
A:ノボラックの下層膜に比べてエッチングレートが、−10%未満
B:ノボラックの下層膜に比べてエッチングレートが、−10%〜+5%
C:ノボラックの下層膜に比べてエッチングレートが、+5%超
【0287】
【表3】
【0288】
実施例13及び実施例14、15、16、17、18では、ノボラックの下層膜に比べて優れたエッチングレートが発揮されることが分かった。
【0289】
一方、比較例3では、ノボラックの下層膜に比べてエッチングレートが劣ることがわかった。
【0290】
(実施例19)
次に、実施例13のリソグラフィー用下層膜形成用組成物を膜厚300nmのSiO
2基板上に塗布して、240℃で60秒間、さらに400℃で120秒間ベークすることにより、膜厚85nmの下層膜を形成した。この下層膜上に、ArF用レジスト溶液を塗布し、130℃で60秒間ベークすることにより、膜厚140nmのフォトレジスト層を形成した。
【0291】
なお、ArFレジスト溶液としては、下記式(16)の化合物:5質量部、トリフェニルスルホニウムノナフルオロメタンスルホナート:1質量部、トリブチルアミン:2質量部、及びPGMEA:92質量部を配合して調製したものを用いた。
【0292】
式(16)の化合物は、次のように調製した。すなわち、2−メチル−2−メタクリロイルオキシアダマンタン4.15g、メタクリルロイルオキシ−γ−ブチロラクトン3.00g、3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート2.08g、アゾビスイソブチロニトリル0.38gを、テトラヒドロフラン80mLに溶解させて反応溶液とした。この反応溶液を、窒素雰囲気下、反応温度を63℃に保持して、22時間重合させた後、反応溶液を400mLのn−ヘキサン中に滴下した。このようにして得られる生成樹脂を凝固精製させ、生成した白色粉末をろ過し、減圧下40℃で一晩乾燥させて下記式で表される化合物を得た。
【化60】
(式(16)中、40、40、20とあるのは、各構成単位の比率を示すものであり、ブロック共重合体を示すものではない。)
【0293】
次いで、電子線描画装置(エリオニクス社製;ELS−7500,50keV)を用いて、フォトレジスト層を露光し、115℃で90秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で60秒間現像することにより、ポジ型のレジストパターンを得た。
【0294】
(比較例4)
下層膜の形成を行わないこと以外は、実施例19と同様にして、フォトレジスト層をSiO
2基板上に直接形成し、ポジ型のレジストパターンを得た。
【0295】
[評価]
実施例19及び比較例4のそれぞれについて、得られた45nmL/S(1:1)及び80nmL/S(1:1)のレジストパターンの形状を(株)日立製作所製電子顕微鏡(S−4800)を用いて観察した。現像後のレジストパターンの形状については、パターン倒れがなく、矩形性が良好なものを良好とし、そうでないものを不良として評価した。また、当該観察の結果、パターン倒れが無く、矩形性が良好な最小の線幅を解像性として評価の指標とした。さらに、良好なパターン形状を描画可能な最小の電子線エネルギー量を感度として、評価の指標とした。その結果を、表4に示す。
【0296】
【表4】
【0297】
表4から明らかなように、実施例19における下層膜は、比較例4に比して、解像性及び感度ともに有意に優れていることが確認された。また、現像後のレジストパターン形状もパターン倒れがなく、矩形性が良好であることが確認された。さらに、現像後のレジストパターン形状の相違から、実施例19におけるリソグラフィー用下層膜形成材料は、レジスト材料との密着性がよいことが示された。
【0298】
(実施例20)
実施例13で用いたリソグラフィー用下層膜形成用組成物を膜厚300nmのSiO
2基板上に塗布して、240℃で60秒間、さらに400℃で120秒間ベークすることにより、膜厚90nmの下層膜を形成した。この下層膜上に、珪素含有中間層材料を塗布し、200℃で60秒間ベークすることにより、膜厚35nmの中間層膜を形成した。さらに、この中間層膜上に、前記ArF用レジスト溶液を塗布し、130℃で60秒間ベークすることにより、膜厚150nmのフォトレジスト層を形成した。なお、珪素含有中間層材料としては、特開2007−226170号公報<合成例1>に記載の珪素原子含有ポリマーを用いた。
【0299】
次いで、電子線描画装置(エリオニクス社製;ELS−7500,50keV)を用いて、フォトレジスト層をマスク露光し、115℃で90秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で60秒間現像することにより、45nmL/S(1:1)のポジ型のレジストパターンを得た。
【0300】
その後、サムコインターナショナル社製 RIE−10NRを用いて、得られたレジストパターンをマスクにして珪素含有中間層膜(SOG)のドライエッチング加工を行い、続いて、得られた珪素含有中間層膜パターンをマスクにした下層膜のドライエッチング加工と、得られた下層膜パターンをマスクにしたSiO
2膜のドライエッチング加工とを順次行った。
【0301】
各々のエッチング条件は、下記に示すとおりである。
レジストパターンのレジスト中間層膜へのエッチング条件
出力:50W
圧力:20Pa
時間:1min
エッチングガス
Arガス流量:CF
4ガス流量:O
2ガス流量=50:8:2(sccm)
レジスト中間膜パターンのレジスト下層膜へのエッチング条件
出力:50W
圧力:20Pa
時間:2min
エッチングガス
Arガス流量:CF
4ガス流量:O
2ガス流量=50:5:5(sccm)
レジスト下層膜パターンのSiO2膜へのエッチング条件
出力:50W
圧力:20Pa
時間:2min
エッチングガス
Arガス流量:C
5F
12ガス流量:C
2F
6ガス流量:O
2ガス流量
=50:4:3:1(sccm)
【0302】
[評価]
上記のようにして得られた実施例20のパターン断面(エッチング後のSiO
2膜の形状)を、(株)日立製作所製電子顕微鏡(S−4800)を用いて観察したところ、本発明の下層膜を用いた実施例は、多層レジスト加工におけるエッチング後のSiO
2膜の形状は矩形であり、欠陥も認められず良好であることが確認された。
【0303】
本出願は、2015年7月23日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2015−145643)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。