特許第6853963号(P6853963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853963
(24)【登録日】2021年3月17日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】ガラスロール
(51)【国際特許分類】
   B65H 75/02 20060101AFI20210329BHJP
   B65H 75/28 20060101ALI20210329BHJP
【FI】
   B65H75/02 E
   B65H75/28
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-546306(P2018-546306)
(86)(22)【出願日】2017年10月13日
(86)【国際出願番号】JP2017037269
(87)【国際公開番号】WO2018074383
(87)【国際公開日】20180426
【審査請求日】2020年5月19日
(31)【優先権主張番号】特願2016-203427(P2016-203427)
(32)【優先日】2016年10月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】石田 直也
(72)【発明者】
【氏名】鑑継 薫
【審査官】 國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−35159(JP,A)
【文献】 特開2010−132348(JP,A)
【文献】 実開昭59−55756(JP,U)
【文献】 特開昭62−172344(JP,A)
【文献】 特開2010−132347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 75/00 − 75/32
B65D 85/58
85/62 − 85/68
B32B 17/00 − 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻芯と、前記巻芯にロール状に巻き取られ、ガラスフィルムと前記ガラスフィルムより幅が狭い飛散防止フィルムを有するフィルム体と、前記巻芯に設けられ、前記フィルム体の幅方向両側に配置されたフランジとを備えたガラスロールであって、
前記フィルム体が、前記ガラスフィルムの巻取方向の終端部側に、着脱可能なズレ防止フィルムを有し、
前記ズレ防止フィルムは、前記ガラスフィルムよりも幅が広い幅広部を有することを特徴とするガラスロール。
【請求項2】
前記フィルム体が、前記終端部側に、前記幅広部より幅が狭いリードフィルムを有し、
前記リードフィルムに、前記ズレ防止フィルムが取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のガラスロール。
【請求項3】
前記ズレ防止フィルムが、前記リードフィルムに重なった状態であり、
前記ズレ防止フィルムにおける前記リードフィルムに重なっている領域が、前記リードフィルムに接着されていることを特徴とする請求項2に記載のガラスロール。
【請求項4】
前記リードフィルムの巻取方向の終端部に、前記ズレ防止フィルムの巻取方向の始端部が取り付けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載のガラスロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻芯と、前記巻芯にロール状に巻き取られたガラスフィルムと、前記巻芯における前記ガラスフィルムの幅方向両側に設けられたフランジとを備えたガラスロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ用のガラス基板を始めとする各種ガラス板において、更なる薄板化が要請されている。そのため、当該要請を受けて、フィルム状まで薄板化が進められたガラス板、所謂ガラスフィルムの開発が進められており、例えば300μm以下の厚みをなすガラスフィルムが開発されるに至っている。
【0003】
このようなガラスフィルムは、その梱包形態として、ロール状に巻き取ってガラスロールとすることが広く採用されている(例えば特許文献1参照)。当該梱包形態は、ガラスフィルムが、その薄さから良好な可撓性を有するという特性を利用したものであって、梱包後のガラスフィルムの占有スペースの省スペース化を図ることができる等の利点がある。
【0004】
また、当該ガラスロールを繰り出しながら供給し、ガラスフィルムの表面に機能性膜等を形成し、その後、機能性膜等が表面に形成されたガラスフィルムを再度巻き取る方式、所謂ロール・ツー・ロール(Roll to Roll)方式で、ガラスフィルムに機能性膜等を形成することの実施が検討されている。このようにすれば、ガラスロールからガラスフィルムを順次巻き出すだけで、ガラスフィルムに対して連続的に成膜処理を行うことができるので便宜である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2010/038761号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ガラスロールでは、その輸送中の振動により、ガラスフィルムが幅方向にずれる所謂「巻きズレ」と呼ばれる現象を生じる可能性がある。この巻きズレが生じると、ガラスロールの輸送中や、ガラスロールから巻き出した後の工程でのガラスフィルムの破損につながる恐れがある。この巻きズレを防止するために、ガラスフィルムの幅方向両側に配置されるフランジを巻芯に取り付けるのが通例である。
【0007】
一方、破損した時に破片が飛散することを防止するために、ガラスフィルムには、飛散防止フィルムが貼り付けられることがある。この飛散防止フィルムがガラスフィルムの幅方向両端部を覆っていると、搬送装置等で、ガラスフィルムの幅方向両端部を認識することができずにガラスフィルムの位置決めができない恐れがある。そのため、飛散防止フィルムがガラスフィルムの幅方向両端部を覆わないように飛散防止フィルムの幅をガラスフィルムより狭くすることが要求される場合がある。
【0008】
しかしながら、ガラスフィルムより幅が狭い飛散防止フィルムを用いた仕様は、ガラスフィルムの幅方向両端部が露出する。ガラスフィルムの幅方向両端部は、露出している場合、マイクロクラックの存在等により、衝撃を与えると破損する可能性がある。そのため、上述したフランジを巻芯に取り付けると、ガラスフィルムの幅方向両端部がフランジに当接することにより破損する可能性がある。この観点から、ガラスフィルムより幅が狭い飛散防止フィルムを用いた場合には、フランジを巻芯に取り付けないことが好ましいが、その場合には、ガラスロールの輸送中の振動によって、巻きズレが生じる可能性がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、ガラスフィルムより幅が狭い飛散防止フィルムを用いた場合でも輸送中の巻きズレを防止可能なガラスロールを提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために創案された本発明のガラスロールは、巻芯と、前記巻芯にロール状に巻き取られ、ガラスフィルムと前記ガラスフィルムより幅が狭い飛散防止フィルムを有するフィルム体と、前記巻芯に設けられ、前記フィルム体の幅方向両側に配置されたフランジとを備えたガラスロールであって、前記フィルム体が、前記ガラスフィルムの巻取方向の終端部側に、着脱可能なズレ防止フィルムを有し、前記ズレ防止フィルムは、前記ガラスフィルムよりも幅が広い幅広部を有することを特徴とする。ここで、フィルム体の幅方向とは、フィルム体の面に沿った方向でフィルム体の巻取方向に垂直な方向であり、幅とは幅方向の寸法である。フィルム体の構成要素の場合も同様である(以下、同様)。
【0011】
この構成によれば、ガラスロールの輸送中に、ガラスフィルムで巻きズレが生じそうになっても、ズレ防止フィルムの幅広部が、フランジに当接した状態であるため、あるいは、フランジに当接するため、巻きズレが生じることを防止可能である。すなわち、本発明のガラスロールによれば、ガラスフィルムより幅が狭い飛散防止フィルムを用いた場合でも輸送中の巻きズレを防止可能である。
【0012】
また、ズレ防止フィルムは、ガラスフィルムの巻取方向の終端部側にあり、ガラスロールからガラスフィルムを巻き出す場合のフィルム体の始端部側にある。そして、ズレ防止フィルムは着脱可能であるため、ガラスフィルムをガラスロールから巻き出して使用する時に、フィルム体からズレ防止フィルムを取り外すことが容易である。
【0013】
上記の構成において、前記フィルム体が、前記終端部側に、前記幅広部より幅が狭いリードフィルムを有し、前記リードフィルムに、前記ズレ防止フィルムが取り付けられていてもよい。
【0014】
この構成によれば、ズレ防止フィルムをガラスフィルムに直接取り付ける場合に比較して、ガラスフィルムが破損する可能性を低減できる。
【0015】
上記の構成において、前記ズレ防止フィルムが、前記リードフィルムに重なった状態であり、前記ズレ防止フィルムにおける前記リードフィルムに重なっている領域が、前記リードフィルムに接着されていてもよい。
【0016】
この構成によれば、ズレ防止フィルムがリードフィルムに対してより確実に固定されるので、リードフィルムやガラスフィルムで、より確実に巻きズレ防止効果が得られる。
【0017】
上記の構成において、前記リードフィルムの巻取方向の終端部に、前記ズレ防止フィルムの巻取方向の始端部が取り付けられていてもよい。
【0018】
この構成によれば、ズレ防止フィルムが、更に、ガラスロールからガラスフィルムを巻き出す場合のフィルム体の始端部側にある。従って、ガラスフィルムをガラスロールから巻き出して使用する時に、フィルム体からズレ防止フィルムを取り外すことが更に容易となる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、ガラスフィルムより幅が狭い飛散防止フィルムを用いた場合でも輸送中の巻きズレを防止可能なガラスロールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係るガラスロールの概略断面図である。
図2】第1実施形態に係るフィルム体を巻芯に巻き取り始めた状態の概略斜視図である。
図3】第1実施形態に係るフィルム体を展開した状態の概略平面図である。
図4】本発明の第2実施形態に係るガラスロールを示す概略断面図である。
図5】第2実施形態に係るフィルム体を巻芯に巻き取り始めた状態の概略斜視図である。
図6】第2実施形態に係るフィルム体を展開した状態の概略平面図である。
図7】第3実施形態に係るガラスロールのフィルム体を巻芯に巻き取る途中の状態の概略斜視図である。
図8】第4実施形態に係るフィルム体を展開した状態の概略平面図である。
図9】第5実施形態に係るフィルム体を展開した状態の概略平面図である。
図10】第6実施形態に係るフィルム体を展開した状態の概略平面図である。
図11】第5及び第6実施形態に係るフィルム体を巻芯に巻き取られた状態から巻き出す様子を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について図面に基づき説明する。
【0022】
図1は、本発明の第1実施形態に係るガラスロールの概略断面図である。このガラスロール1は、巻芯2と、ガラスフィルム3、リードフィルム4,5、ズレ防止フィルム6、飛散防止フィルム7を有するフィルム体Fと、一対のフランジ8,8とを備えている。フィルム体Fは、巻芯2にロール状に巻き取られている。フィルム体Fは、巻取方向が長手方向となる帯状である。ガラスフィルム3も同様である。飛散防止フィルム7は、ガラスフィルム3より幅が狭い。一対のフランジ8,8は、巻芯2に設けられている。一対のフランジ8,8は、フィルム体Fの幅方向両側に配置されており、巻きズレ防止の機能を有する。
【0023】
本実施形態では、巻芯2は、円筒状であるが、これに限定されるものでなく、例えば、中実の円柱状であってもよい。また、フランジ8は、巻芯2に対し着脱可能であるが、これに限定されず、フランジ8は、巻芯2に対して固定されたままのものであってもよい。
【0024】
図2及び図3に示すように、フィルム体Fは、ガラスフィルム3の巻取方向の終端部3aの側に、リードフィルム4に着脱可能なズレ防止フィルム6を有する。ズレ防止フィルム6は、ガラスフィルム3よりも幅が広い幅広部6aを有する。ズレ防止フィルム6の幅広部6aは、本実施形態では、ズレ防止フィルム6の巻取方向に沿った全域であるが、ズレ防止フィルム6の巻取方向に沿った一部領域であってもよい。なお、リードフィルム4の巻取方向に沿った全域は、ズレ防止フィルム6の幅広部6aより幅が狭い。
【0025】
図1に示すように、幅広部6aの幅方向両端部6b,6bが、ガラスフィルム3の幅方向両端部3b,3bより突出した状態で、ズレ防止フィルム6は配設されている。幅広部6aの幅方向両側には、一対のフランジ8,8が配置されている。幅広部6aの幅方向両端部6b,6bは、一対のフランジ8,8に対し、当接した状態、或いは、微小な隙間を介して対向した状態である。
【0026】
図2及び図3に示すように、ズレ防止フィルム6は、リードフィルム4に重なった状態で取り付けられており、ズレ防止フィルム6におけるリードフィルム4に重なっている領域が、リードフィルム4に接着されている。本実施形態では、リードフィルム4とズレ防止フィルム6の巻取方向に沿った寸法は同一であるが、異なっていてもよい。また、リードフィルム4の巻取方向の端部4a,4bの端面は、それぞれ、ズレ防止フィルム6の巻取方向の端部6c,6dの端面に対して巻取方向で同位置であるが、巻取方向で異なった位置でもよい。
【0027】
本実施形態では、ズレ防止フィルム6は、リードフィルム4に対し弾性接着剤で接着されているが、アクリル系、シリコン系、ゴム系接着剤等のその他の接着剤を使用してもよい。なお、接着剤は、ズレ防止フィルム6とリードフィルム4との接着部を再度分離可能なものである。
【0028】
ガラスフィルム3の長手方向(巻取方向)の両端部3a,3cには、リードフィルム4,5が、連結用テープ9(樹脂部材)で取り付けられている。
【0029】
リードフィルム4は、ロール・ツー・ロール法で、ガラスフィルム3の損傷を防ぐために、ガラスフィルム3に先行して処理装置に投入される部材であり、リードフィルム5は、ガラスロール1から巻き出されるガラスフィルム3の終端まで処理することを可能にするために、ガラスフィルム3に後行して処理装置に投入される部材である。
【0030】
ガラスフィルム3の巻取方向の終端部3aと、巻取方向の終端側のリードフィルム4の巻取方向の始端部4aとは、重なっておらず、両者を突き合わせた状態、或いは間隔を置いて対向させた状態である。ガラスフィルム3の巻取方向の終端部3aと、リードフィルム4の巻取方向の始端部4aとは、双方に跨るように連結用テープ9を貼着することによって連結されている。
【0031】
ガラスフィルム3の巻取方向の始端部3cと、巻取方向の始端側のリードフィルム5の巻取方向の終端部5aとは、重なっておらず、両者を突き合わせた状態、或いは間隔を置いて対向させた状態である。ガラスフィルム3の巻取方向の始端部3cと、リードフィルム5の巻取方向の終端部5aとは、双方に跨るように連結用テープ9を貼着することによって連結されている。
【0032】
また、飛散防止フィルム7が、ガラスフィルム3の一方の面における幅方向中間部に長手方向(巻取方向)に沿って貼り付けられている。飛散防止フィルム7の長手方向の両端部7a,7bは、連結用テープ9に重なっている。
【0033】
飛散防止フィルム7は、ガラスフィルム3において、巻き取られた際にガラスロール1の外周側となる面に貼り付けられている。なお、飛散防止フィルム7は、ガラスフィルム3において、巻き取られた際にガラスロール1の内周側となる面に接するように介装されていてもよい。連結用テープ9は、ガラスフィルム3とリードフィルム4,5において、巻き取られた際にガラスロール1の外周側となる面に貼り付けられている。また、ズレ防止フィルム6は、リードフィルム4において、巻き取られた際にガラスロール1の外周側となる面に重ねられている。
【0034】
ガラスフィルム3は、オーバーフローダウンドロー法により成形されたものであって、厚みが1μm〜200μm(好ましくは10μm〜100μm)を呈するものである。このような厚みに設定した理由は、当該数値範囲の厚みであれば、ガラスフィルム3に対して適度な可撓性と強度を付与することができ、巻き取り時において支障を来たすことがないためである。換言すれば、ガラスフィルム3の厚みが1μm未満であると、強度不足によって取り扱いが面倒になり、ガラスフィルム3の厚みが200μmを超えると、可撓性が不十分となって巻き取り半径を不当に大きくせざるを得なくなるという不具合が生じ得る。
【0035】
ガラスフィルム3の幅は、100mm以上であることが好ましく、300mm以上であることがより好ましく、500mm以上であることが更に好ましい。なお、ガラスフィルム3は、小型の携帯電話用等の小画面ディスプレイから大型のテレビ受像機等の大画面ディスプレイに至るまで、多岐に亘るデバイスに使用されるので、ガラスフィルム3の幅は、最終的には、使用されるデバイスの基板の大きさに応じて適宜選択することが好ましい。
【0036】
ガラスフィルム3のガラス組成としては、シリカガラスやホウケイ酸ガラスなどのケイ酸塩ガラスなどの種々のガラス組成を使用することができるが、無アルカリガラスであることが好ましい。これは、ガラスフィルム3にアルカリ成分が含有されていると、所謂ソーダ吹きと称される現象が生じて構造的に粗となり、ガラスフィルム3を湾曲させた場合に、経年劣化により構造的に粗となった部分から破損が生じるおそれがあるためである。なお、ここでいう無アルカリガラスとは、アルカリ成分を実質的に含有していないガラスのことであって、具体的には、アルカリ金属酸化物が1000ppm以下(好ましくは500ppm以下、より好ましくは300ppm以下)であることをいう。
【0037】
また、ガラスフィルム3の強度確保の観点からは、ガラスフィルム3の少なくとも幅方向両端面は、レーザー切断により切断された切断面により構成されていることが好ましい。このようにすれば、ガラスフィルム3の幅方向両端面が、マイクロクラック等の破損原因となる欠陥のない高強度断面となる。具体的には、レーザー切断を利用した場合には、切断後に研磨等を施さなくても、ガラスフィルム3の幅方向両端面の算術平均粗さRa(JIS B0601:2001に準拠)を0.1μm以下(好ましくは、0.05μm以下)とすることができる。
【0038】
リードフィルム4,5の厚みや幅は、特に限定されるものではないが、ガラスフィルム3と同一のロール・ツー・ロール装置内を通過させることを考慮すれば、ガラスフィルム3と同程度の厚みや幅を有することが好ましい。
【0039】
具体的には、リードフィルム4,5の厚みは、1〜200μmであることが好ましく、リードフィルム4,5の幅は、処理装置への投入を考慮すると、ガラスフィルム3の幅の0.9〜1.1倍であることが好ましく、略同等であることが特に好ましい。なお、リードフィルム4,5には、ガラスフィルム3を牽引するだけの強度が必要となるため、リードフィルム4,5を形成する材質等を考慮して最終的に厚みを決定することが好ましい。
【0040】
リードフィルム4,5の材料としては、後述するズレ防止フィルム6の材料と同様のものが挙げられるが、伸びにくいものを使用することが好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を使用することが好ましい。金属フィルムを使用することも可能であり、その場合の金属としては例えばアルミニウムや銅等が使用できる。
【0041】
ズレ防止フィルム6の厚みは、特に限定されるものではないが、ガラスフィルム3と同程度の厚みを有することが好ましい。具体的には、ズレ防止フィルム6の厚みは1〜200μmであることが好ましい。
【0042】
ズレ防止フィルム6の幅は、ガラスフィルム3の巻きズレを防止する目的を達成するため、ガラスフィルム3の幅より5〜50mm(好ましくは10〜30mm)広い。
【0043】
ズレ防止フィルム6の材料としては、例えば、アイオノマーフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、エチレン−メタクリル酸共重合体フィルム、ナイロン(登録商標)フィルム(ポリアミドフィルム)、ポリイミドフィルム、セロファンなどの有機樹脂フィルム(合成樹脂フィルム)などを使用することができる。更に、緩衝性能と強度を同時に確保する観点からは、ズレ防止フィルム6として、ポリエチレン発泡樹脂製シートなどの発泡樹脂フィルムを使用することが好ましく、強度を確保する観点からは、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を使用することが好ましい。
【0044】
飛散防止フィルム7は、ガラスフィルム3が破損した場合でも、破片が飛散することを防止するための部材であり、本実施形態では、粘着性を有さない支持層の一方の面にガラスフィルム3への貼着用の粘着層が形成されている。
【0045】
飛散防止フィルム7の厚みは、特に限定されるものではないが、通常、ガラスフィルム3の表面に貼られるため、ガラスフィルム3と同程度の厚みを有することが好ましい。具体的には、飛散防止フィルム7の厚みは1μm〜8mmであることが好ましい。
【0046】
飛散防止フィルム7がガラスフィルム3の幅方向両端部3b,3bを覆うと、搬送装置等でガラスフィルム3の幅方向両端部3b,3bが認識できず、ガラスフィルム3の位置決め等が難しくなる可能性がある。そのため、飛散防止フィルム7の幅は、ガラスフィルム3より幅が狭く、その幅はガラスフィルム3より1〜30mm(好ましくは5〜10mm)狭い幅である。
【0047】
飛散防止フィルム7の支持層の材料としては、上述したズレ防止フィルム6の材料と同様のものが挙げられる。飛散防止フィルム7の粘着層としては、弾性接着剤、アクリル系、シリコン系、ゴム系接着剤等が挙げられる。接着剤は、飛散防止フィルム7とガラスフィルム3との接着部を再度分離可能なものを使用する。なお、飛散防止フィルム7は、粘着層がなく、支持層のみで構成される態様を含み、この場合、合紙と同様の機能を有する。
【0048】
連結用テープ9は、本実施形態では、粘着性を有さない支持層の一方の面にガラスフィルム3及びリードフィルム4,5への貼着用の粘着層が形成されている。ガラスフィルム3及びリードフィルム4,5の巻取方向及び幅方向に沿った連結用テープ9の長さは、それぞれ、所望の強度等を考慮して、適宜、設定される。
【0049】
連結用テープ9の支持層の厚さは、150μm以下が好ましく、100μm以下が更に好ましい。そして、支持層の厚さは、10μm以上が好ましく、30μm以上が更に好ましい。支持層の厚さが10μm未満の場合、強度に支障を来す可能性が生じ、150μmを超える場合、可撓性が不十分になる可能性や、ガラスフィルム3を巻き取った際に、支持層の厚さによって、ガラスフィルム3に負荷が掛かる可能性が生じる。
【0050】
連結用テープ9の粘着層の厚さは、接着強度を考慮して、適宜設定され、例えば、10μm〜15μmである。また、連結用テープ9の厚さが厚い場合、連結用テープ9と、ガラスフィルム3やリードフィルム4,5との段差に起因して、水による洗浄後の水切れが良好でなくなり、この段差の周辺領域に水垢汚れが発生する可能性がある。従って、この観点から、支持層の厚さと粘着層の厚さの合計は、60μm以下が好ましい。
【0051】
連結用テープ9の支持層や粘着層の材料は、特に限定されるものではなく、従来から使用されているものでよい。例えば、支持層の材料としては、ポリエステル等の樹脂が挙げられる。粘着層の材料としては、弾性接着剤、アクリル系、シリコン系、ゴム系接着剤等が挙げられる。なお、接着剤は、連結用テープ9とリードフィルム4,5、ガラスフィルム3との接着部を再度分離可能なものを使用する。
【0052】
次にガラスロール1の製造方法を説明する。
【0053】
最初に、リードフィルム4,5を連結用テープ9でガラスフィルム3に取り付ける。そして、飛散防止フィルム7を、ガラスフィルムに貼りつける。その後に、ズレ防止フィルム6を弾性接着剤でリードフィルム4に取り付ける。これで、フィルム体Fが完成する。
【0054】
次に、フィルム体Fを巻芯2にロール状に巻き取る。その後に、巻芯2に一対のフランジ8,8を装着する。これで、ガラスロール1が完成する。
【0055】
ガラスロール1を使用する場合には、ズレ防止フィルム6をフィルム体Fから取り外して、残ったフィルム体Fを、処理装置に導入する。
【0056】
以上のように構成された本実施形態のガラスロール1では以下の効果を享受できる。
【0057】
ガラスロール1の輸送中に、ガラスフィルム3の巻取方向の終端部3aで巻きズレが生じそうになった場合に、ズレ防止フィルム6の幅広部6aが、フランジ8に当接した状態であるため、あるいは、フランジ8に当接するため、巻きズレが生じることを防止可能である。すなわち、本実施形態のガラスロール1によれば、ガラスフィルム3より幅が狭い飛散防止フィルム7を用いた場合でも輸送中の巻きズレを防止可能である。
【0058】
また、リードフィルム4に着脱可能なズレ防止フィルム6は、ガラスフィルム3の巻取方向の終端部3aの側にあり、ガラスロール1からガラスフィルム3を巻き出す場合のフィルム体Fの始端部側にある。従って、ガラスフィルム3をガラスロール1から巻き出して使用する時に、フィルム体Fからズレ防止フィルム6を取り外すことが容易である。
【0059】
次に、図4図6を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係るガラスロールについて説明する。
【0060】
本実施形態のガラスロール1が、第1実施形態のガラスロールと異なる点は、ズレ防止フィルム6が、リードフィルム4と重なっていない状態で、リードフィルム4に取り付けられている点である。詳述すれば、リードフィルム4の巻取方向の終端部4bと、ズレ防止フィルム6の巻取方向の始端部6cが、突き合わせた状態、或いは間隔を置いて対向した状態である。そして、リードフィルム4の巻取方向の終端部4bと、ズレ防止フィルム6の巻取方向の始端部6cは、双方に跨るように連結用テープ9を貼着することによって連結されている。その他の構成については、第1実施形態と同様なので、同一の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0061】
次に、図7を参照しつつ、本発明の第3実施形態に係るガラスロールについて説明する。
【0062】
本実施形態では、第1実施形態と異なり、ズレ防止フィルム6は、リードフィルム4において、巻き取られた際にガラスロール1の内周側となる面に重ねられている。また、第2実施形態と異なり、リードフィルム4とズレ防止フィルム6は、互いの端部を重ねた状態で、それらの端部に跨るように連結用テープ9を貼着することで連結されている。
【0063】
また、本実施形態では、上記実施形態と異なり、リードフィルム4は、ガラスフィルム3において、巻き取られた際にガラスロール1の内周側となる面に重ねられている。そして、ガラスフィルム3とリードフィルム4は、互いの端部を重ねた状態で、それらの端部に跨るように連結用テープ9を貼着することで連結されている。また、連結用テープ9は、いずれも、フィルム体Fにおいて、巻き取られた際にガラスロール1の内周側となる面に貼り付けられている。なお、飛散防止フィルム7の巻取方向の終端部7bは、ガラスフィルム3の巻取方向の終端部3aと巻取方向(長手方向)で同位置である。その他の構成については、上記実施形態と同様なので、同一の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0064】
次に、図8を参照しつつ、本発明の第4実施形態に係るガラスロールについて説明する。
【0065】
本実施形態では、上記実施形態と異なり、飛散防止フィルム7が、ガラスフィルム3からリードフィルム4,5における巻取方向(長手方向)の中間部まで延在している。つまり、飛散防止フィルム7の長手方向の端部7a,7bがリードフィルム4,5における長手方向の中間部に位置する。このような態様は、特に、飛散防止フィルム7が粘着性を有さない場合に用いられるが、飛散防止フィルム7が粘着性を有する場合に用いられてもよい。その他の構成については、第2実施形態と同様なので、同一の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0066】
次に、図9を参照しつつ、本発明の第5実施形態に係るガラスロールについて説明する。
【0067】
本実施形態では、上記実施形態と異なり、ズレ防止フィルム6が、リードフィルム4ではなく、飛散防止フィルム7に取り付けられている。詳述すれば、飛散防止フィルム7の巻取方向の終端部7bの側が、ガラスフィルム3からリードフィルム4上を経由してリードフィルム4の巻取方向の終端部4bを越えた位置まで延在している。そして、飛散防止フィルム7の巻取方向の終端部7bと、ズレ防止フィルム6の巻取方向の始端部6cが、突き合わせた状態、或いは間隔を置いて対向した状態となっている。そして、飛散防止フィルム7の巻取方向の終端部7bと、ズレ防止フィルム6の巻取方向の始端部6cは、双方に跨るように連結用テープ9を貼着することによって連結されている。なお、リードフィルム4の巻取方向の終端部4bと、ズレ防止フィルム6の巻取方向の始端部6cは、間隔を置いて対向した状態である。その他の構成については、第4実施形態と同様なので、同一の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0068】
次に、図10を参照しつつ、本発明の第6実施形態に係るガラスロールについて説明する。
【0069】
本実施形態では、第5実施形態と同様に、ズレ防止フィルム6の巻取方向の始端部6cが飛散防止フィルム7の巻取方向の終端部7bに取り付けられているが、ズレ防止フィルム6の巻取方向の終端部6dが、リードフィルム4の巻取方向の終端部4bに対して巻取方向で同位置となっている点で第5実施形態と異なる。
【0070】
本実施形態では、ズレ防止フィルム6は、リードフィルム4に対して接着剤で接着されていてもよいし、接着されていなくてもよい。なお、ズレ防止フィルム6は、リードフィルム4に対して接着剤で接着される場合、接着剤は、ズレ防止フィルム6とリードフィルム4との接着部を再度分離可能なものである。その他の構成については、第5実施形態と同様なので、同一の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0071】
第6実施形態については、第5実施形態と比較して次のような効果を享受できる。
【0072】
第5及び第6実施形態のように、ズレ防止フィルム6が飛散防止フィルム7に取り付けられており、リードフィルム4がガラスフィルム3に取り付けられている場合には、図11に示すように、巻芯2に巻き取られた状態のフィルム体Fを巻き出す際には、ローラ10を介して、飛散防止フィルム7をガラスフィルム3から引き剥がして、ズレ防止フィルム6を先頭にして、巻芯11に巻き取る。一方、飛散防止フィルム7を引き剥がされたガラスフィルム3は、リードフィルム4を先頭にして、所定の処理装置に導入する。
【0073】
このようにフィルム体Fを巻き出す際には、最初に、飛散防止フィルム7に取り付けられているズレ防止フィルム6を巻芯11側に誘導する一方で、ガラスフィルム3に取り付けられているリードフィルム4を処理装置の側に誘導する必要がある。つまり、ズレ防止フィルム6とリードフィルム4を、異なる方向に誘導するために分けなければならない。
【0074】
この時、第5実施形態のようにズレ防止フィルム6の終端部6dが、リードフィルム4の終端部4bに対して巻取方向で大きく異なった位置になっていると、ズレ防止フィルム6とリードフィルム4を分けることが難しくなる。
【0075】
これに対し、第6実施形態のようにズレ防止フィルム6の終端部6dが、リードフィルム4の終端部4bに対して巻取方向で同位置となっていると、ズレ防止フィルム6とリードフィルム4を分けることが容易となる。
【0076】
本発明は、上記実施形態に限定されるものでは無く、その技術的思想の範囲内で、様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では、ズレ防止フィルム6は、リードフィルム4や飛散防止フィルム7に取り付けられていたが、ガラスフィルム3に取り付けられてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、ガラスフィルム3とリードフィルム4,5を連結用テープ9で貼着して連結するが、ガラスフィルム3とリードフィルム4,5を接着剤で接着して連結するようにしてもよい。この場合、接着剤としては、連結用テープ9の粘着層と同様のものを使用でき、また、ガラスフィルム3とリードフィルム4,5との接着部を再度分離可能なものを使用する。
【0078】
また、上記の実施形態では、ガラスフィルム3をオーバーフローダウンドロー法により成形する場合を説明したが、ガラスフィルム3は、スロットダウンドロー法やリドロー法等のダウンドロー法によって成形されたものであってもよい。このようにダウンドロー法を使用すれば、フロート法によってガラスフィルム3を成形した場合のように、ガラスフィルム3の表面が錫等で汚染されていないので、ガラスフィルム3の表面を未研磨面のまま使用することができるという利点がある。ガラスロール1は、厚みの薄いガラスフィルム3を対象とするものなので、未研磨面のまま使用できるということは、ガラスフィルム3の破損リスクを低減する上でも非常に有利となる。なお、ガラスフィルム3の表面の平滑性を確保する観点からは、ダウンドロー法の中でも、オーバーフローダウンドロー法やリドロー法を採用するのが好ましい。
【符号の説明】
【0079】
1 ガラスロール
2 巻芯
3 ガラスフィルム
3a 終端部
4 リードフィルム
4b 終端部
6 ズレ防止フィルム
6a 幅広部
6c 始端部
7 飛散防止フィルム
8 フランジ
F フィルム体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11