(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6853969
(24)【登録日】2021年3月17日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】冷却板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20210329BHJP
B21J 5/06 20060101ALI20210329BHJP
B21J 5/08 20060101ALI20210329BHJP
H05K 7/20 20060101ALN20210329BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
B21J5/06 B
B21J5/06 C
B21J5/08 Z
!H05K7/20 B
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-571304(P2019-571304)
(86)(22)【出願日】2018年7月3日
(65)【公表番号】特表2020-526016(P2020-526016A)
(43)【公表日】2020年8月27日
(86)【国際出願番号】EP2018000336
(87)【国際公開番号】WO2019007547
(87)【国際公開日】20190110
【審査請求日】2019年12月23日
(31)【優先権主張番号】102017006425.3
(32)【優先日】2017年7月7日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102018005265.7
(32)【優先日】2018年7月2日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511072851
【氏名又は名称】ホルツハウア ゲーエムベーハ ウント コムパニ ケーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100077791
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 収二
(72)【発明者】
【氏名】アントン ホルツハウア
(72)【発明者】
【氏名】ヨーヒム ホルツハウア
【審査官】
川原 光司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−129774(JP,A)
【文献】
特開2012−199324(JP,A)
【文献】
特開2014−138099(JP,A)
【文献】
特開2005−103582(JP,A)
【文献】
特開2016−120526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 5/06
B21J 5/08
H01L 23/29
H01L 23/34−23/36
H01L 23/373−23/427
H01L 23/44
H01L 23/467−23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅、アルミニウム、それらの合金を含む熱伝導性が非常に良好な材料の冷却板であって、冷却剤が流される有効面にベースを越えてほぼ垂直に突出ピンを備え、該ピンが実質的に半径方向に延びるフラットな機能的に必要な周縁部により囲まれており、ツールでワークピースを加工することにより冷却板を製造する方法において、
前記ワークピースは、均一な材料厚さを有するフラットな素材ブランクの形態とされており、ツールの中心に配置され、該ツールは、実質的にフラットな周縁部を形成するための少なくとも1つのアウターパンチ(周縁部パンチ)と、ピンを形成するためにツールに設けられたピン形成用開口部と協働するインナーパンチ(ピンパンチ)を有しており、
インナーパンチでワークピースを押さえつけ、アウターパンチをプレスすることにより、素材ブランクの周縁部の材料厚が減少するように形成し、
次いで、アウターパンチを押し下げた状態で、インナーパンチをプレスすることによりピン形成用開口部と協働してピンを形成することを特徴とする冷却板の製造方法。
【請求項2】
アウターパンチにより周縁部を形成するとき、ピンの長さ分だけオフセットして周縁部に隣接するツールのピン形成用開口部の少なくとも何個かをエジェクタ装置により閉じることを特徴とする請求項1に記載の冷却板の製造方法。
【請求項3】
ピンは、自由端から開始する校正が実施されることを特徴とする請求項1または2に記載の冷却板の製造方法。
【請求項4】
校正により、ピンの自由端がプレス又はカシメによりフラットにされることを特徴とする請求項3に記載の冷却板の製造方法。
【請求項5】
ピンの先端から開始して、ピンの先端からフット領域の方向に向けてピンの直径が小さくなる逆円錐形態とするように校正が実施されることを特徴とする請求項3又は4に記載の冷却板の製造方法。
【請求項6】
ピンの先端から開始して、ピンの先端からフット領域の方向に向けてピンの直径が大きくなる円錐形態とするように校正が実施されることを特徴とする請求項3又は4に記載の冷却板の製造方法。
【請求項7】
フラットな素材ブランクは四辺形の形態を有していることを特徴とする前記請求項の何れかに記載の冷却板の製造方法。
【請求項8】
フラットな素材ブランクは長方形の形態を有していることを特徴とする前記請求項の何れかに記載の冷却板の製造方法。
【請求項9】
フラットな素材ブランクは、圧延された銅を含む圧延材又はプレス材から形成されていることを特徴とする前記請求項の何れかに記載の冷却板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅、アルミニウム、それらの合金などの非常に良好な熱伝導性を有する材料から成る冷却板を製造する方法に関し、冷却板は、冷却剤が流される有効面にベースを越えてほぼ垂直に突出する複数のピンを備え、複数のピンはほぼ半径方向に延びるフラットな周端部により囲まれており、冷却板は、ワークピースを形成することによりワークピースの中で製造される。
【背景技術】
【0002】
このような冷却板は、例えば、バッテリー構造、インバーター、燃料電池におけるチップなどのような感熱性の電気部品又は電子部品に用途がある。
【0003】
一般的なタイプの冷却板は、追加の複雑な再仕上げを普通に必要とする鍛造又は機械加工のプロセスにより製造されるのが通常である。
これまで、そのような冷却プレートは、製造するのに比較的高価であり、しばしば廃棄物が生じるが、非常に良好な熱伝導性を有する材料を処理するので、製造のためのコストが比較的高いものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ドイツ特許公開10 2015 120835A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ドイツ特許公開10 2015 120835A1は、冷却板の製造プロセスを開示しており、フラットな材料がロールで圧延することにより処理される。
この場合、ピンが不規則に形成され、実質的に同じ長さのピンを形成するためには十分に間隔をあけなければならない。
更に、複雑で、特に時間のかかる再仕上げのプロセスが必要とされる。
このため、有効面の上におけるピンの密度が低く、冷却効果が低下する。
【0006】
本発明は、安価に実現でき、材料を節約し、資源に優しく、有効面の上におけるピンの密度が高い、非常に効果的な冷却作用を有するタイプの冷却板の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、銅、アルミニウム、それらの合金を含む熱伝導性が非常に良好な材料の冷却板であって、冷却剤が流される有効面にベースを越えてほぼ垂直に突出ピンを備え、該ピンが実質的に半径方向に延びるフラットな機能的に必要な周縁部により囲まれており、ツールでワークピースを加工することにより冷却板を製造する方法が提供される。
ワークピースは、均一な材料厚さを有するフラットな素材ブランクの形態とされており、ツールの中心に配置され、該ツールは、実質的にフラットな周縁部を形成するための少なくとも1つのアウターパンチ(周縁パンチ)と、ピンを形成するためにツールに設けられたピン形成用開口部と協働するインナーパンチ(ピンパンチ)を有しており、
インナーパンチでワークピースを押さえつけ、アウターパンチをプレスすることにより、素材ブランクの周縁部の材料厚が減少するように形成し、
次いで、アウターパンチを押し下げた状態で、インナーパンチをプレスすることによりピン形成用開口部と協働してピンを形成する。
【0008】
従って、本発明は、コスト効果の高い冷間プレスまたは熱間プレスを採用し、冷却剤が流される有効面の上にピンを形成するに際し、成形を通じてフラットな素材ブランクとされた材料が直接に使用される。
これにより、本発明による製造は、材料ロスや、材料廃棄物の問題に遭遇することはなく、材料の節約と資源に優しい製造プロセスを実現する。
更に、本発明の方法により形成される材料の突出部は、ワークピースの或る領域にわたり形成され、その領域の上で、冷却板の製造中に有効面の上にピンが形成される。
フラットな素材ブランクの残りの表面は、ピンの形成中に変形されないため、例えば、追加の再仕上げを必要とせずに、シールに適した支持面が提供される。
本発明による方法は、単一の成形作業により、組み合わせられた周縁部パンチ(アウターパンチ)による実質的にフラットで機能的に必要な周縁部の形成と、ツールのピン形成用開口部と協働するインナーパンチ(ピンパンチ)によるピンの形成との両方の形成が可能になる。
【0009】
好ましくは、アウターパンチにより周縁部を形成するとき、ピンの長さ分だけオフセットして周縁部に隣接するツールのピン形成用開口部の少なくとも何個かを閉じるエジェクタ装置が使用される。
【0010】
好ましくは、本発明の方法において、ピンは、その自由端から開始する校正が実施される。校正時に、ピンの自由端がフラットにプレスされ、あるいは、カシメがされる。
更に、ピンの校正中に逆円錐形の形態を形成することができ、ピンの自由端から開始するとき、ピンの直径が自由端からフット領域の方向に向けて小さくなるように校正が実施される。
【0011】
別の方法として、校正は、円錐形の形態とするものでも良く、ピンの自由端から開始するとき、ピンの直径を自由端からフット領域の方向に向けて大きくなるように校正を実施することができる。
【0012】
適切には、フラットな素材ブランクは四辺形の形態を有している。特に、長方形のフラットな素材ブランクを含むことができる。
【0013】
好ましくは、フラットな素材ブランクは、圧延またはプレス材料、特に、圧延された銅から形成される。
【0014】
要約すると、本発明の方法は、成形プロセスによってのみ、ピンと共に冷却板が製造されることを本質としている。
【0015】
本発明の更なる詳細、構成および利点は、特徴を限定するものではないが、添付の図面を参照することにより、以下に記載した好ましい例示的な実施形態の説明から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明による冷却プレートの使用例を示す概略的断面図である。
【
図2】
図2ないし
図7は、本発明による冷却板の製造方法における工程の順序を示しており、
図2は、1つの工程を説明する概略的部分斜視図である。
【
図3】工程の順序における1つの工程を説明する概略的部分斜視図である。
【
図4】工程の順序における1つの工程を説明する概略的部分斜視図である。
【
図5】工程の順序における1つの工程を説明する概略的部分斜視図である。
【
図6】工程の順序における1つの工程を説明する概略的部分斜視図である。
【
図7】成形されたピン付きの冷却板を示す概略的斜視図である。
【
図8】
図7に示す冷却板の個々のピンの例を破断して示す拡大図である。
【
図9】
図7に示す冷却板の個々のピンの例を破断して示す拡大図である。
【
図10】ピンの更なる実施形態の例を示す概略図である。
【
図11】ピンの更なる実施形態の例を示す概略図である。
【
図12】ピンの更なる実施形態の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面の図において、同一または類似する部分は、同じ参照符号で示している。
【0018】
図1は、本発明の冷却装置の使用例を概略的に示しており、符号1で示している。
冷却板3は、ピン2の反対側の表面を介して、電気部品または電子部品などの冷却される部品に取り付けられる。
図示のように、冷却板3は、冷却剤が流される有効面5にピン4を有している。
図例において、ピン4を囲んでほぼ半径方向に延びる平面をなす周縁部Uにシール6を介してカバー7が液密的に接続されており、冷却板3のピン4とカバー7の間にギャップ8を形成し、そこに冷却液体ないし冷却流体のような冷却剤9が流れるように構成している。
【0019】
以下、非常に良好な熱伝導性を有する材料の冷却板を製造するための本発明に係る製造工程の順序を
図2ないし
図7を参照することにより、より詳細に説明する。
【0020】
図2は、底部に多数の形成用開口部20を有するツールWの部分的断面図を概略的に示している。
周縁部Uに隣接する形成用開口部20の少なくとも何個かはエジェクタ装置により閉じられている。ツールWに距離をあけて概略的に示されたものは、フラットな素材でブランクの形態とされたワークピースWSである。
図2において、このワークピースWSは、均一または同一の材料厚を有している。
【0021】
図3から明らかなように、ワークピースWSないしフラットな素材ブランク10は、ツールWの中心に正確に配置され、その底部に置かれる。
図3から分かるように、フラットな素材ブランク10は、ツールWの横方向境界とフラットな素材ブランク10の外周との間に、円周方向に向けて所定の距離Aを維持するようにして、ツールWに配置される。
【0022】
図4は、一般に符号22で示されるパンチアセンブリの概略的な部分的断面図を示している。
このパンチアセンブリ22は、少なくとも1つのアウターパンチないし周縁部パンチ23と、インナーパンチないしピンパンチ24を有している。
このパンチアセンブリ22は、
図5においてフラットな素材ブランク10に向けて移動され、ワークピースWSないし10をインナーパンチ24で押さえ付け、周縁部Uをアウターパンチ23でプレスすることにより材料厚が減少するように形成する。
その結果、
図4と比較すると、ワークピースWSには、形成された周縁部Uに対して、材料突出部11が形成される。
更に、
図4および
図5から明らかなように、エジェクタ装置21のパーツは、周縁部Uに隣接するピン形成用開口部20の少なくとも何個かを好ましい態様で閉鎖する。
その結果、周縁部Uを形成するためのプレス工程中に、ワークWSの材料が形成用開口部20にも進入することを効果的に防止することができる。
【0023】
図6は、アウターパンチ23が押し下げられた状態で、インナーパンチ24がプレスを介してピン形成用開口20と協働してピン4を形成する処理手順を概略的に説明している。
図6から分かるように、完成した冷却プレート3は、周縁部Uと、ピン4を備えた冷却プレート3の残りの部分から成る連続的なベースを有している。
冷却板3のベースの材料厚は、周縁部Uと実質的に同じ寸法である。
【0024】
図7は、有効面5の上に複数のピン4が非常に近接して配置された冷却板3の概略的斜視図を示している。
周縁部Uは、複数のピン4を囲み、ピン4のフット領域と共通のベースを形成している。
【0025】
図8は、2つのピンの概略的拡大図を示しており、ピンの形状は、
図5及び
図6に示すように、ピン形成用開口部20と協働するプレス作業を介して、インナーパンチ24の相互作用により形成されている。
図9は、校正(キャリブレーション)が行われた後のピン4’ を備えた冷却プレート3を示している。
図8および
図9から分かるように、ピン4、4’ は、
図6に示す成形で形成された後、わずかに外向きに湾曲した自由端12を有する。
図9に示す校正中に、これらの自由端12は、フラットにプレスされ、あるいは、カシメ(アップセット)される。
【0026】
最後に、
図10ないし
図12を参照すると、ピン4の形態について、更なる例示的実施形態が概略的に示されている。
【0027】
図10は、円柱形のピン4’ を示している。
図11は、1例として、ピン4”の逆円錐形の形態を示しているが、この逆円錐形の形態は、それぞれのピン4”の高さの約半分以上しか延びていない。
ピン4”の自由端から始まるこのような逆円錐形の形態では、自由端12から始まるピン4”の直径がフット領域の方向に向けて小さくなるように校正が実施される。
【0028】
また、
図12は、ピン4"'のこのような逆円錐形の形態の別の例を示している。ここでは、逆円錐形の形態は、ピン4"'のフット領域にほぼ達している。
あるいは、ピン4は、全体として円錐形または部分的に円錐形に形成することができる。
これは、それに応じた校正プロセスにより実現される。
その場合、ピン4の自由端12から始まり、ピン4の直径が自由端からフット領域の方向に向けて増大するように校正が実施される。
【0029】
もちろん、本発明は、図示された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明の精神から逸脱しなければ、当業者が任意に適用する多数の変更および修正が可能である。
特に、ピン4、4'、4"、4"'は、それぞれの適用分野に応じて、図示の例示的な実施形態と異なる校正による構成を有するものとしても良く、または
図9ないし
図12に例示する実施形態の組み合わせを含むものとしても良い。
図示の例は、長方形の形状としたフラットな素材ブランク10に基づいているが、勿論、一般的な四辺形または円い形状などで構成しても良く、四角形の形状とした素材ブランクを含むこともできる。
【0030】
好ましくは、フラットな素材ブランクは、圧延またはプレスされた材料、特に、圧延された銅により形成されるが、非常に良好な熱伝導性を有する材料であれば良い。
【符号の説明】
【0031】
1 冷却装置全体
2 冷却される部品
3 冷却板
4 ピン(
図8)
4' ピン(
図9及び
図10)
4" ピン(
図11)、
4"' ピン(
図12)
5 有効面
6 シール
7 カバー
8 ギャップ
9 冷却剤
10 原材料部品またはワークピースWSとしてのフラットな素材ブランク
11 材料突出部
12 ピン4の自由端
20 ピン形成用開口部
21 エジェクタ装置
22 パンチアセンブリ
23 アウターパンチ
24 インナーパンチ
A 距離
U 周縁部
W ツール
WS ワークピース