【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和 1年 7月24日に、日本保全学会 第16回学術講演会 要旨集、483から491頁にて公開 令和 1年 7月26日に、日本保全学会 第16回学術講演会にて公開
【文献】
吉松 修 他2名,”多様データセットを用いた深層学習による転がり軸受の診断”,NSK Technical Journal,2020年 1月,No.692,pp.83-89
【文献】
Amin Khorram et al.,"Intelligent Bearing Fault Diagnosis with Convolutional Long-Short-Term-Memory Recurrent Neural Network",arXiv,2019年12月 6日,arXiv:1919.07801v3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1特徴データは、前記振動の速度を時系列的に記録した時系列速度データ、前記振動の加速度の包絡線を時系列的に記録した時系列包絡線データ、又は前記振動の変位を時系列的に記録した時系列変位データであり、
前記時系列加速度データを積分することによって前記時系列速度データを生成する処理、
前記時系列加速度データから包絡線を生成することによって、前記時系列包絡線データを生成する処理、又は
前記時系列加速度データを2回積分することによって前記時系列変位データを生成する処理
をコンピュータに実行させることを特徴とする請求項7に記載のコンピュータプログラム。
前記時系列加速度データの値が所定の第1範囲に含まれている場合、前記時系列速度データの値が所定の第2範囲に含まれている場合、又は前記時系列変位データの値が所定の第3範囲に含まれている場合に、前記回転機は正常であると判定する
処理を更にコンピュータに実行させることを特徴とする請求項8に記載のコンピュータプログラム。
前記複数種類の特徴データは、前記時系列加速度データ若しくは前記第1特徴データから得られる周波数スペクトル、又は前記時系列加速度データ若しくは前記第1特徴データから得られる振幅の確率分布である第2特徴データを含むこと
を特徴とする請求項7乃至9のいずれか一つに記載のコンピュータプログラム。
前記複数種類の特徴データは、前記時系列加速度データから得られる周波数スペクトル、又は前記時系列加速度データから得られる振幅の確率分布である第2特徴データを含むこと
を特徴とする請求項6に記載のコンピュータプログラム。
前記第1学習モデルは、前記複数種類のデータに一対一に対応し、夫々に対応するデータを入力した場合に前記データの特徴ベクトルを出力する複数の畳み込みニューラルネットワークと、前記複数の畳み込みニューラルネットワークが出力した複数の特徴ベクトルを入力した場合に前記状態データを出力する全結合ニューラルネットワークとを含んでなること
を特徴とする請求項6乃至11のいずれか一つに記載のコンピュータプログラム。
物理モデルを利用することなしに、過去の診断結果を含む複数の事例を記録したデータベースから、前記時系列加速度データを読み出すことにより、前記時系列加速度データを取得し、
前記データベースから、前記状態データ、前記属性情報及び前記要因情報を読み出すことにより、前記状態データ、前記属性情報及び前記要因情報を取得すること
を特徴とする請求項17に記載の学習モデル生成方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転機には複数種類の異常が発生し得るので、回転機の診断では、発生した異常の種類を判定することが望まれる。コンピュータによる診断では、発生した異常の種類を自動で判定することには限界があるのが現状である。人による回転機の診断では、目視による外観の情報、並びに聴音及び触手による振動の情報等、複数種類の情報を用いて、総合的に診断を行っている。コンピュータによる診断においても、人による診断手法に倣うことにより、より精度良く回転機を診断することができる技術が望まれる。
【0005】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、回転機の異常の種類を精度良く判定することができる
処理方法、回転機の診断方法、コンピュータプログラム、学習モデル生成方法及び診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る
処理方法は、
回転機に取り付けられた振動センサが測定した振動の加速度を時系列的に記録した時系列加速度データを取得し、前記時系列加速度データから
異なる方法で算出される複数種類の特徴データを生成し、前記時系列加速度データ及び前記複数種類の特徴データの内の複数種類のデータを入力した場合に前記振動の状態を表した状態データを出力する第1学習モデルへ、前記複数種類のデータを入力し、
前記第1学習モデルは、複数の畳み込みニューラルネットワークと一つの全結合ニューラルネットワークとを一組とした複数組を含んでなり、夫々の組に含まれる複数の畳み込みニューラルネットワークは、前記複数種類のデータの内の複数の特定種類のデータに一対一に対応し、夫々に対応する特定種類のデータを入力した場合に前記複数の特定種類のデータの特徴ベクトルを出力し、夫々の組に含まれる全結合ニューラルネットワークは、同一の組に含まれる複数の畳み込みニューラルネットワークが出力した複数の特徴ベクトルを入力した場合に前記状態データを出力し、夫々の組に含まれる全結合ニューラルネットワークが出力する前記状態データを取得することを特徴とする。
本発明に係る回転機の診断方法は、回転機の診断を行う方法において、回転機に取り付けられた振動センサが測定した振動の加速度を時系列的に記録した時系列加速度データを取得し、前記時系列加速度データから異なる方法で算出される複数種類の特徴データを生成し、前記時系列加速度データ及び前記複数種類の特徴データの内の複数種類のデータを入力した場合に前記振動の状態を表した状態データを出力する第1学習モデルへ、前記複数種類のデータを入力し、前記第1学習モデルが出力する前記状態データを取得し、前記回転機の属性情報を取得し、前記状態データ及び前記属性情報を入力した場合に前記振動の状態の要因に関する要因情報を出力する第2学習モデルへ、前記状態データ及び前記属性情報を入力し、前記第2学習モデルが出力する前記要因情報を取得することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る回転機の
処理方法は、
回転機に取り付けられた振動センサが測定した振動の加速度を時系列的に記録した時系列加速度データを取得し、
加速度以外の
前記振動を表す量を時系列的に記録した第1特徴データを取得し、前記時系列加速度データ又は前記第1特徴データから、第2特徴データを生成し、前記時系列加速度データ、前記第1特徴データ及び前記第2特徴データの内の複数種類のデータを入力した場合に、前記振動の状態を表した状態データを出力する第1学習モデルへ、前記複数種類のデータを入力し、
前記第1学習モデルは、複数の畳み込みニューラルネットワークと一つの全結合ニューラルネットワークとを一組とした複数組を含んでなり、夫々の組に含まれる複数の畳み込みニューラルネットワークは、前記複数種類のデータの内の複数の特定種類のデータに一対一に対応し、夫々に対応する特定種類のデータを入力した場合に前記複数の特定種類のデータの特徴ベクトルを出力し、夫々の組に含まれる全結合ニューラルネットワークは、同一の組に含まれる複数の畳み込みニューラルネットワークが出力した複数の特徴ベクトルを入力した場合に前記状態データを出力し、夫々の組に含まれる全結合ニューラルネットワークが出力する前記状態データを取得することを特徴とする。
本発明に係る回転機の診断方法は、回転機の診断を行う方法において、回転機に取り付けられた振動センサが測定した振動の加速度を時系列的に記録した時系列加速度データを取得し、加速度以外の前記振動を表す量を時系列的に記録した第1特徴データを取得し、前記時系列加速度データ又は前記第1特徴データから、第2特徴データを生成し、前記時系列加速度データ、前記第1特徴データ及び前記第2特徴データの内の複数種類のデータを入力した場合に、前記振動の状態を表した状態データを出力する第1学習モデルへ、前記複数種類のデータを入力し、前記第1学習モデルが出力する前記状態データを取得し、前記回転機の属性情報を取得し、前記状態データ及び前記属性情報を入力した場合に前記振動の状態の要因に関する要因情報を出力する第2学習モデルへ、前記状態データ及び前記属性情報を入力し、前記第2学習モデルが出力する前記要因情報を取得することを特徴とする。
【0008】
本発明に係るコンピュータプログラムは、回転機に取り付けられた振動センサが測定した振動の加速度を時系列的に記録した時系列加速度データを取得し、前記時系列加速度データから
異なる方法で算出される複数種類の特徴データを生成し、前記時系列加速度データ及び前記複数種類の特徴データの内の複数種類のデータを入力した場合に前記振動の状態を表した状態データを出力する第1学習モデルへ、前記複数種類のデータを入力し、前記第1学習モデルが出力する前記状態データを取得する処理をコンピュータに実行させ
、前記第1学習モデルは、複数の畳み込みニューラルネットワークと一つの全結合ニューラルネットワークとを一組とした複数組を含んでなり、夫々の組に含まれる複数の畳み込みニューラルネットワークは、前記複数種類のデータの内の複数の特定種類のデータに一対一に対応し、夫々に対応する特定種類のデータを入力した場合に前記複数の特定種類のデータの特徴ベクトルを出力し、夫々の組に含まれる全結合ニューラルネットワークは、同一の組に含まれる複数の畳み込みニューラルネットワークが出力した複数の特徴ベクトルを入力した場合に前記状態データを出力することを特徴とする。
本発明に係るコンピュータプログラムは、回転機に取り付けられた振動センサが測定した振動の加速度を時系列的に記録した時系列加速度データを取得し、前記時系列加速度データから異なる方法で算出される複数種類の特徴データを生成し、前記時系列加速度データ及び前記複数種類の特徴データの内の複数種類のデータを入力した場合に前記振動の状態を表した状態データを出力する第1学習モデルへ、前記複数種類のデータを入力し、
前記第1学習モデルが出力する前記状態データを取得し、前記回転機の属性情報を取得し、前記状態データ及び前記属性情報を入力した場合に前記振動の状態の要因に関する要因情報を出力する第2学習モデルへ、前記状態データ及び前記属性情報を入力し、前記第2学習モデルが出力する前記要因情報を取得する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るコンピュータプログラムでは、
生成された前記複数種類の特徴データは、
加速度以外の
前記振動を表す量
の時間変化を表した第1特徴データを含むことを特徴とする。
【0010】
本発明に係るコンピュータプログラムは、前記第1特徴データは、前記振動の速度を時系列的に記録した時系列速度データ、前記振動の加速度の包絡線を時系列的に記録した時系列包絡線データ、又は前記振動の変位を時系列的に記録した時系列変位データであり、前記時系列加速度データを積分することによって前記時系列速度データを生成する処理、前記時系列加速度データから包絡線を生成することによって、前記時系列包絡線データを生成する処理、又は前記時系列加速度データを2回積分することによって前記時系列変位データを生成する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るコンピュータプログラムは、前記時系列加速度データの値が所定の第1範囲に含まれている場合、前記時系列速度データの値が所定の第2範囲に含まれている場合、又は前記時系列変位データの値が所定の第3範囲に含まれている場合に、前記回転機は正常であると判定する処理を更にコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るコンピュータプログラムでは、前記複数種類の特徴データは、前記時系列加速度データ若しくは前記第1特徴データから得られる周波数スペクトル、又は前記時系列加速度データ若しくは前記第1特徴データから得られる振幅の確率分布である第2特徴データを含むことを特徴とする。
【0013】
本発明に係るコンピュータプログラムでは、前記複数種類の特徴データは、前記時系列加速度データから得られる周波数スペクトル、又は前記時系列加速度データから得られる振幅の確率分布である第2特徴データを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明に係るコンピュータプログラムでは、前記第1学習モデルは、前記複数種類のデータに一対一に対応し、夫々に対応するデータを入力した場合に前記データの特徴ベクトルを出力する複数の畳み込みニューラルネットワークと、前記複数の畳み込みニューラルネットワークが出力した複数の特徴ベクトルを入力した場合に前記状態データを出力する全結合ニューラルネットワークとを含んでなることを特徴とする。
【0015】
本発明に係るコンピュータプログラムでは、前記第1学習モデルは、複数の畳み込みニューラルネットワークと一つの全結合ニューラルネットワークとを一組とした複数組を含んでなり、夫々の組に含まれる複数の畳み込みニューラルネットワークは、前記複数種類のデータの内の複数の特定種類のデータに一対一に対応し、夫々に対応する特定種類のデータを入力した場合に前記複数の特定種類のデータの特徴ベクトルを出力し、夫々の組に含まれる全結合ニューラルネットワークは、同一の組に含まれる複数の畳み込みニューラルネットワークが出力した複数の特徴ベクトルを入力した場合に前記状態データを出力することを特徴とする。
【0017】
本発明に係るコンピュータプログラムは、前記要因情報の内容に応じた前記回転機の診断報告を出力する処理を更にコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0018】
本発明に係るコンピュータプログラムは、前記要因情報の内容を出力し、前記要因情報の修正を受け付け、受け付けた前記修正に基づいて、前記第2学習モデルを再学習させる処理を更にコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0019】
本発明に係るコンピュータプログラムは、過去の診断結果を含む複数の事例を記録したデータベースから、
前記要因情報の内容に応じた前記回転機
の診断結果との類似度が所定範囲にある事例を取得し、取得した事例を出力する処理を更にコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る学習モデル生成方法は、回転機に取り付けられた振動センサにより過去に測定された振動の加速度を時系列的に記録した時系列加速度データ、及び前記時系列加速度データから
異なる方法で算出される複数種類の特徴データ
を取得し、前記時系列加速度データ及び前記複数種類の特徴データについて、前記振動の状態を表した状態データを取得し、前記時系列加速度データ及び前記複数種類の特徴データと前記状態データとを訓練データとして、任意の振動の加速度を時系列的に記録した時系列加速度データ、及び前記時系列加速度データから生成される複数種類の特徴データを入力した場合に、前記任意の振動の状態を表した状態データを出力する第1学習モデルを、生成
し、前記回転機の属性情報、及び前記振動センサにより過去に測定された振動の状態の要因に関する要因情報を取得し、前記状態データ、前記属性情報及び前記要因情報を訓練データとして、任意の回転機に取り付けられた振動センサが測定した振動の状態を表した状態データ及び前記任意の回転機の属性情報を入力した場合に前記振動の状態の要因に関する要因情報を出力する第2学習モデルを、生成することを特徴とする。
【0021】
本発明に係る学習モデル生成方法は、物理モデルを利用することなしに、過去の診断結果を含む複数の事例を記録したデータベースから、前記時系列加速度データを読み出すことにより、前記時系列加速度データを取得し、前記データベースから
、前記状態データ
、前記属性情報及び前記要因情報を読み出すことにより、前記状態データ
、前記属性情報及び前記要因情報を取得することを特徴とする。
【0024】
本発明に係る診断装置は、回転機の診断を行う診断装置において、回転機に取り付けられた振動センサが測定した振動の加速度を時系列的に記録した時系列加速度データを取得する加速度取得部と前記時系列加速度データから
異なる方法で算出される複数種類の特徴データを生成する生成部と、前記時系列加速度データ及び前記複数種類の特徴データの内の複数種類のデータを入力した場合に前記振動の状態を表した状態データを出力する第1学習モデルと、前記複数種類のデータを
前記第1学習モデルへ入力して前記状態データを取得する状態データ取得部とを備え
、前記第1学習モデルは、複数の畳み込みニューラルネットワークと一つの全結合ニューラルネットワークとを一組とした複数組を含んでなり、夫々の組に含まれる複数の畳み込みニューラルネットワークは、前記複数種類のデータの内の複数の特定種類のデータに一対一に対応し、夫々に対応する特定種類のデータを入力した場合に前記複数の特定種類のデータの特徴ベクトルを出力し、夫々の組に含まれる全結合ニューラルネットワークは、同一の組に含まれる複数の畳み込みニューラルネットワークが出力した複数の特徴ベクトルを入力した場合に前記状態データを出力することを特徴とする。
本発明に係る診断装置は、回転機の診断を行う診断装置において、回転機に取り付けられた振動センサが測定した振動の加速度を時系列的に記録した時系列加速度データを取得する加速度取得部と前記時系列加速度データから異なる方法で算出される複数種類の特徴データを生成する生成部と、前記時系列加速度データ及び前記複数種類の特徴データの内の複数種類のデータを入力した場合に前記振動の状態を表した状態データを出力する第1学習モデルと、前記複数種類のデータを前記第1学習モデルへ入力して前記状態データを取得する状態データ取得部と、前記回転機の属性情報を取得する属性情報取得部と、前記状態データ及び前記属性情報を入力した場合に前記振動の状態の要因に関する要因情報を出力する第2学習モデルと、前記状態データ及び前記属性情報を前記第2学習モデルへ入力して前記要因情報を取得する要因情報取得部とを備えることを特徴とする。
【0025】
本発明の一形態においては、回転機に発生する振動の加速度を記録した時系列加速度データだけでなく、時系列加速度データから生成した特徴データを用いて、回転機の診断が行われる。学習モデルを用いることにより、振動に関する複数種類の情報から、振動の状態を表した状態データが容易に得られる。状態データにより、振動が正常な状態又は特定の周波数成分が大きい状態等のどのような状態になっているかが明確になる。振動に関する複数種類の情報を利用することにより、従来の診断に比べて、より精度良く診断を行うことができる。
【0026】
本発明の一形態においては、時系列加速度データだけでなく、振動を表す加速度以外の量を時系列的に記録した第1特徴データ、又は時系列加速度データ若しくは第1特徴データから生成した第2特徴データを用いて、回転機の診断が行われる。学習モデルを用いることにより、振動に関する複数種類の情報から、振動の状態を表した状態データが容易に得られる。状態データにより、振動がどのような状態になっているかが明確になる。振動に関する複数種類の情報を利用することにより、従来の診断に比べて、より精度良く診断を行うことができる。
【0027】
本発明の一形態においては、特徴データは、振動を表す加速度以外の量を時系列的に記録した第1特徴データを含む。時系列加速度データだけでなく、第1特徴データを用いて、回転機の診断が行われる。学習モデルを用いることにより、振動に関する複数種類の情報から、振動の状態を表した状態データが容易に得られる。振動に関する複数種類の情報を利用することにより、従来の診断に比べて、より精度良く診断を行うことができる。
【0028】
本発明の一形態においては、第1特徴データは、振動の速度を時系列的に記録した時系列速度データ、振動の加速度の包絡線を時系列的に記録した時系列包絡線データ、又は振動の変位を時系列的に記録した時系列変位データである。振動センサにより得られた時系列加速度データから、他の第1特徴データを容易に生成することができる。時系列加速度データに加えて、振動の加速度以外の量の時間変化を表した第1特徴データを利用することにより、振動に関する複数種類の情報を用いたマルチモーダルな視点から回転機の診断を行うことができる。
【0029】
本発明の一形態においては、時系列加速度データ、時系列速度データ又は時系列変位データの値が所定の範囲に含まれている場合に、回転機は正常であると判定される。振動の加速度、速度又は変位の変動が小さい場合は、振幅の大きな振動が発生しておらず、回転機が正常であると判定することが可能である。
【0030】
本発明の一形態においては、特徴データは、第2特徴データを含む。第2特徴データは、時系列加速度データ若しくは第1特徴データから得られる周波数スペクトル、又は、時系列加速度データ若しくは第1特徴データから得られる振幅の確率分布である。周波数スペクトル及び振幅の確率分布は、振動の加速度、速度、包絡線又は変位の特徴を表している。更に第2特徴データを利用することにより、振動に関する複数種類の情報を用いたマルチモーダルな視点から回転機の診断を行うことができる。
【0031】
本発明の一形態においては、第1学習モデルは、夫々に対応するデータを入力した場合に特徴ベクトルを出力する複数の畳み込みニューラルネットワークと、複数の特徴ベクトルを入力した場合に状態データを出力する全結合ニューラルネットワークとを含んでなる。複数の畳み込みニューラルネットワークにより、入力されたデータに含まれる局所的な相関に応じたデータの特徴を表す特徴ベクトルが得られる。全結合ニューラルネットワークにより、用いられる複数種類のデータの特徴に応じて、振動に関する特定の種類の量の状態を表した状態データが得られる。
【0032】
本発明の一形態においては、第1学習モデルは、複数組のニューラルネットワークを含んでなる。一組は、夫々に対応するデータを入力した場合に特徴ベクトルを出力する複数の畳み込みニューラルネットワークと、複数の特徴ベクトルを入力した場合に状態データを出力する全結合ニューラルネットワークとを含んでなる。用いられる複数種類のデータの特徴に応じて、振動に関する種々の量の状態を表した状態データが得られる。
【0033】
本発明の一形態においては、回転機の属性情報と状態データとを第2学習モデルへ入力し、第2学習モデルは、振動の状態の要因に関する要因情報を出力する。第2学習モデルを用いることにより、状態データ及び属性情報から、要因情報が容易に得られる。要因情報から、振動の状態が、回転機がどのような状態になっていることを要因としたものであるのかが明確になる。
【0034】
本発明の一形態においては、要因情報の内容に応じた回転機の診断報告が出力される。使用者は、診断報告から、回転機の診断結果を確認することができる。
【0035】
本発明の一形態においては、要因情報が修正され、要因情報の修正に基づいて第2学習モデルが再学習される。第2学習モデルの再学習により、診断の精度が向上する。
【0036】
本発明の一形態においては、過去の複数の事例を記録したデータベースから、得られた診断結果と類似する事例が出力される。使用者は、診断結果と類似した事例の内容を確認することができ、取得された振動がどのような状況で発生し易いのかを推測することが可能となる。
【0037】
本発明の一形態においては、過去に測定された振動に関する時系列加速度データ及び特徴データと、過去に測定された振動の状態を表した状態データとを訓練データとして、学習を行って、第1学習モデルが生成される。このような第1学習モデルを用いることによって、時系列加速度データ及び特徴データから、回転機に発生した振動の状態を表す状態データが得られる。
【0038】
本発明の一形態においては、過去に測定された振動の状態を表した状態データ、振動を測定された回転機の属性情報、及び振動の状態の要因に関する要因情報を訓練データとして、学習を行って、第2学習モデルが生成される。このような第2学習モデルを用いることによって、状態データ及び属性情報から要因情報が得られ、要因情報から、回転機に発生した振動の状態の要因が明らかとなる。
【0039】
本発明の一形態においては、過去の複数の事例を記録したデータベースから読み出したデータを訓練データとして、学習モデルの学習を行う。物理モデルを利用することなく、過去に蓄積された人の診断による多数の回転機についての診断結果を利用して、適切な診断を可能にする学習モデルを生成することができる。
【発明の効果】
【0040】
振動に関する複数種類の情報を用いたマルチモーダルな視点から回転機の診断を行うことによって、より精度良く回転機の診断を行うことができる等、本発明は優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
<実施形態1>
図1は、回転機の診断を行うための、実施形態1に係る診断システムの構成を示す模式図である。回転機2は、回転軸を有し、一部が回転する機械である。例えば、回転機2は、電動機、タービン、内燃機関、送風機、又はポンプ等である。診断の対象となる回転機2は、主に、「日本産業規格JISB0906機械振動の附属書B」に示されている定格出力が75kW以下である中・小型の回転機である。回転機2には、振動センサ31が取り付けられている。振動センサ31は、回転機2に発生する振動の加速度を測定し、測定した加速度の値を示す信号を出力する。例えば、回転機2の軸受に振動センサ31が取り付けられている。なお、回転機2には、複数の振動センサ31が取り付けられていてもよい。例えば、回転機2の回転軸の一端に、水平方向の振動を測定する振動センサ31と、垂直方向の振動を測定する振動センサ31とが取り付けられ、回転軸の他端にも、水平方向及び垂直方向の振動を夫々に測定する振動センサ31が取り付けられ、合計で四個の振動センサ31が取り付けられている。
【0043】
振動センサ31は、A/D(analog-to-digital )変換器32に有線又は無線で接続されている。A/D変換器32は、振動センサ31が出力した信号を受け付け、受け付けた信号をデジタル信号へ変換し、変換した信号を出力する。即ち、A/D変換器32は、振動センサ31が測定した振動の加速度の値をデジタルで示した信号を出力する。回転機2に複数の振動センサ31が取り付けられている場合は、A/D変換器32には、複数の振動センサ31が接続されている。A/D変換器32は、複数の振動センサ31が出力した複数の信号を受け付け、A/D変換を行い、複数の信号を出力する。A/D変換器32は、回転機2の診断を行う診断装置1に接続されている。診断装置1は、A/D変換器32が出力した信号を受け付ける。即ち、診断装置1は、振動センサ31が測定した振動の加速度の値を示した信号を受け付ける。振動センサ31とA/D変換器32とは一体になっていてもよい。
【0044】
診断装置1は、LAN(local area network)又はインターネット等の通信ネットワークNに接続されている。通信ネットワークNには、プリンタ等の出力装置33が接続されている。更に、通信ネットワークNには、回転機の診断に必要な学習モデルを学習させるための学習装置4が接続されている。
【0045】
図2は、診断装置1の内部の機能構成例を示すブロック図である。診断装置1は、パーソナルコンピュータ又はタブレット型コンピュータ等のコンピュータを用いて構成されている。診断装置1は、演算部11と、演算に伴って発生する一時的なデータを記憶するメモリ12と、記憶部13とを備えている。演算部11は、例えばCPU(Central Processing Unit )、GPU(Graphics Processing Unit)、又はマルチコアCPUを用いて構成されている。また、演算部11は、量子コンピュータを用いて構成されていてもよい。メモリ12は、例えばRAM(Random Access Memory)である。記憶部13は、不揮発性であり、例えばハードディスクである。
【0046】
また、診断装置1は、光ディスク等の記録媒体10から情報を読み取るドライブ部14と、使用者からの操作を受け付ける操作部15と、画像を表示する表示部16と、インタフェース部17と、通信部18とを備えている。操作部15は、使用者からの操作を受け付けることにより、テキスト等の情報を受け付ける。操作部15は、例えば、キーボード又はポインティングデバイスである。表示部16は、例えば液晶ディスプレイ又はELディスプレイ(Electroluminescent Display)である。インタフェース部17は、信号の入出力を行う。インタフェース部17には、A/D変換器32が接続される。通信部18は、通信ネットワークNが接続され、診断装置1の外部との間で通信を行う。通信部18は、通信ネットワークNを通じて、出力装置33及び学習装置4とデータの送受信を行う。
【0047】
演算部11は、記録媒体10に記録されたコンピュータプログラム131をドライブ部14に読み取らせ、読み取ったコンピュータプログラム131を記憶部13に記憶させる。演算部11は、コンピュータプログラム131に従って、診断装置1に必要な処理を実行する。なお、コンピュータプログラム131は、診断装置1の外部からダウンロードされてもよい。この場合は、診断装置1はドライブ部14を備えていなくてもよい。
【0048】
診断装置1は、A/D変換器32が出力した信号をインタフェース部17で受け付ける。即ち、診断装置1は、振動センサ31が測定した振動の加速度の値を示した信号を受け付ける。回転機2を診断する際には、振動センサ31は繰り返し振動の加速度を測定し、診断装置1は、振動の加速度の値を示した信号を断続的に受け付ける。振動の加速度の値は、絶対的な値でもよく、所定の基準からの相対的な値であってもよい。記憶部13は、振動の加速度を時系列的に記録した時系列加速度データ134を記憶している。時系列加速度データ134は、振動センサ31が測定した振動の加速度の値が時系列的に記録されているデータである。演算部11は、A/D変換器32からの信号を受け付ける都度、信号が示す値を、受け付けた順に時系列加速度データ134に記録する処理を行う。回転機2に複数の振動センサ31が取り付けられている場合は、演算部11は、複数の振動センサ31に対応する複数の時系列加速度データ134を記憶部13に記憶する。振動センサ31は、少なくとも10秒〜150秒の長時間、振動の測定を継続する。時系列加速度データ134は、少なくとも10秒〜150秒の長時間に亘る振動の加速度の時間変化を記録している。10秒以上の長時間の振動に関するデータが得られることにより、不規則振動をとらえることができる。150秒までの長時間の振動に関するデータが得られることにより、ほとんどの長周期の振動をとらえることができる。
【0049】
診断装置1は、時系列加速度データ134から振動の状態を判定するために用いられる学習モデルである振動判定モデル132を備えている。振動判定モデル132は第1学習モデルに対応する。振動判定モデル132は、後述するように、時系列加速度データ134等の振動を示すデータを入力された場合に振動の状態を表した状態データを出力するように学習されている。また、診断装置1は、状態データから回転機2の診断を行うために用いられる学習モデルである診断モデル133を備えている。診断モデル133は第2学習モデルに対応する。診断モデル133は、後述するように、状態データを入力された場合に振動の状態の要因に関する要因情報を出力するように学習されている。
【0050】
振動判定モデル132及び診断モデル133は、コンピュータプログラム131に従って演算部11が情報処理を実行することにより実現される。記憶部13は、振動判定モデル132及び診断モデル133を実現するために必要なデータを記憶している。また、振動判定モデル132又は診断モデル133は、ハードウェアを用いて構成されていてもよい。例えば、振動判定モデル132又は診断モデル133は、プロセッサと、必要なプログラムおよびデータを記憶するメモリとを含んで構成されていてもよい。また、振動判定モデル132又は診断モデル133は、量子コンピュータを用いて実現されてもよい。
【0051】
図3は、学習装置4の内部の機能構成例を示すブロック図である。学習装置4は、サーバ装置等のコンピュータを用いて構成されている。学習装置4は、演算部41と、メモリ42と、記憶部43と、ドライブ部44と、通信部45とを備えている。演算部41は、例えばCPU、GPU又はマルチコアCPUを用いて構成されている。また、演算部41は、量子コンピュータを用いて構成されていてもよい。メモリ42は、例えばRAMである。記憶部43は、不揮発性であり、例えばハードディスクである。通信部45は、通信ネットワークNが接続され、学習装置4の外部との間で通信を行う。通信部45は、通信ネットワークNを通じて、診断装置1とデータの送受信を行う。
【0052】
演算部41は、記録媒体40に記録されたコンピュータプログラム431をドライブ部44に読み取らせ、読み取ったコンピュータプログラム431を記憶部43に記憶させる。演算部41は、コンピュータプログラム431に従って、学習装置4に必要な処理を実行する。なお、コンピュータプログラム431は、学習装置4の外部からダウンロードされてもよい。この場合は、学習装置4はドライブ部44を備えていなくてもよい。
【0053】
記憶部43は、回転機の診断を実際に行った複数の事例を記録した事例データベース432を記憶している。事例データベース432は、過去に多数の回転機について取得された種々のデータと、夫々の回転機について行われた診断の結果とを関連付けて記録している。例えば、事例データベース432の内容は、過去に人の診断によって多数の回転機について作成された、診断の結果と対策とを報告した診断カルテに基づいて、作成されている。学習装置4は、事例データベース432に記録されたデータを訓練データとして、学習モデルである振動判定モデル及び診断モデルを学習させる処理を行う。学習の処理については後述する。
【0054】
診断装置1は、回転機2の診断方法を実行する。
図4は、診断装置1が行う回転機の診断の処理の手順を示すフローチャートである。以下、ステップをSと略す。演算部11は、コンピュータプログラム131に従って以下の処理を実行する。演算部11は、記憶部13から、時系列加速度データ134を読み出す(S101)。例えば、演算部11は、記憶部13に記憶している時系列加速度データ134から、最新の所定量のデータを読み出す。読み出されるデータは、少なくとも10秒〜150秒の時間に亘る振動の加速度の時間変化を記録したデータを含む。S101の処理は、加速度取得部に対応する。演算部11は、次に、振動を表す加速度以外の量を時系列的に記録した第1特徴データを生成する(S102)。
【0055】
S102では、演算部11は、時系列加速度データ134から、複数種類の第1特徴データを生成する。複数種類の第1特徴データは、振動の速度を時系列的に記録した時系列速度データ、振動の加速度の包絡線を時系列的に記録した時系列包絡線データ、及び振動の変位を時系列的に記録した時系列変位データである。演算部11は、時系列加速度データ134を積分することによって、時系列速度データを生成する。演算部11は、時系列加速度データ134から包絡線を生成することによって、時系列包絡線データを生成する。例えば、演算部11は、時系列加速度データ134に記録される加速度を、「日本産業規格JISB0906機械振動」で規定されるハイパスフィルタ又は高周波のバンドパスフィルタに通し、その後の波形を整流及び平滑化するか、又はヒルベルト変換することによって、包絡線を生成する。演算部11は、時系列加速度データ134を2回積分することによって、時系列変位データを生成する。このようにして、診断装置1は、複数種類の第1特徴データを取得する。演算部11は、第1特徴データをメモリ12又は記憶部13に記憶する。
【0056】
図5は、第1特徴データを生成する処理の例を示す概念図である。
図5に示すように、時系列加速度データ134から、時系列速度データ、時系列包絡線データ、及び時系列変位データが生成される。図中には、時系列加速度データ134、時系列速度データ、時系列包絡線データ、及び時系列変位データが表す振動の加速度、速度、包絡線及び変位の時間変化を表す波形を示す。波形の横軸は時間を示し、縦軸は振動の加速度、速度、包絡線上の加速度及び変位の各時点での値を示す。時系列加速度データ134、時系列速度データ、時系列包絡線データ、及び時系列変位データは、互いに波形が異なっており、更に互いに異なる特徴を示す。
【0057】
なお、演算部11は、S102において、全ての種類の第1特徴データを生成するものに限らない。演算部11は、以降の処理で必要になる第1特徴データのみを生成してもよい。例えば、演算部11は、S102で時系列速度データのみを生成してもよい。
【0058】
演算部11は、次に、時系列加速度データ134に含まれる加速度の値が所定の第1範囲内に含まれており、かつ、時系列速度データに含まれる速度の値が所定の第2範囲内に含まれているか否かを判定する(S103)。例えば、加速度の値は正負の値で表されており、加速度の絶対値が所定の第1閾値以下である場合に、演算部11は、加速度の値が第1範囲内に含まれていると判定する。例えば、速度の値は正負の値で表されており、速度の絶対値が所定の第2閾値以下である場合に、演算部11は、速度の値が第2範囲内に含まれていると判定する。第1閾値及び第2閾値は、予め記憶部13に記憶されているか、又はコンピュータプログラム131に含まれている。
【0059】
時系列加速度データ134に含まれる加速度の値が所定の第1範囲内に含まれており、時系列速度データに含まれる速度の値が所定の第2範囲内に含まれており、かつ、時系列変位データに含まれる変位の値が所定の第3範囲内に含まれている場合は(S103:YES)、演算部11は、回転機2は正常であると判定する(S104)。回転機2に異常が発生した場合は、振幅の大きな振動が発生することが多い。振動の加速度、速度及び変位が小さい場合は、振幅の大きな振動が発生しておらず、回転機2が正常であると判定することが可能である。なお、S103では、演算部11は、加速度が第1範囲内に含まれている場合に回転機2は正常であると判定する処理を行ってもよく、速度が第2範囲内に含まれている場合に回転機2は正常であると判定する処理を行ってもよく、変位が第3範囲内に含まれている場合に回転機2は正常であると判定する処理を行ってもよい。S103では、演算部11は、加速度及び速度が所定の範囲に含まれている場合に回転機2は正常であると判定する処理を行ってもよく、加速度及び変位が所定の範囲に含まれている場合に回転機2は正常であると判定する処理を行ってもよく、速度及び変位が所定の範囲に含まれている場合に回転機2は正常であると判定する処理を行ってもよい。
【0060】
時系列加速度データ134に含まれる加速度の一部の値が第1範囲に含まれていない、時系列速度データに含まれる速度の一部の値が第2範囲内に含まれていない、又は時系列変位データに含まれる変位の一部の値が第3範囲内に含まれていない場合は(S103:NO)、演算部11は、第2特徴データを生成する(S105)。S105では、演算部11は、時系列加速度データ134及び各第1特徴データの周波数分布及び振幅の確率分布に関する特徴を表した複数種類の第2特徴データを生成する。具体的には、演算部11は、第2特徴データとして、時系列加速度データ134、時系列速度データ、時系列包絡線データ及び時系列変位データから、周波数スペクトル、及び振幅の確率分布を生成する。
【0061】
S105では、演算部11は、時系列加速度データ134、時系列速度データ、時系列包絡線データ及び時系列変位データの高速フーリエ変換を行うことにより、加速度の周波数スペクトル、速度の周波数スペクトル、包絡線の周波数スペクトル及び変位の周波数スペクトルを生成する。また、演算部11は、時系列加速度データ134、時系列速度データ、時系列包絡線データ及び時系列変位データに含まれる振幅の頻度を計算し、頻度から確率密度を計算することにより、加速度振幅の確率分布、速度振幅の確率分布、包絡線振幅の確率分布、及び変位振幅の確率分布を生成する。振幅の確率分布は、「日本産業規格JISB0153機械振動・衝撃用語」に示されている不規則振動を示す確率分布である。このようにして、診断装置1は、複数種類の第2特徴データを取得する。演算部11は、夫々の第2特徴データをメモリ12又は記憶部13に記憶する。
【0062】
図6は、第2特徴データを生成する処理の例を示す概念図である。
図6に示すように、時系列加速度データ134、時系列速度データ、時系列包絡線データ及び時系列変位データの夫々から、周波数スペクトル及び振幅の確率分布が計算される。図中には、加速度の周波数スペクトル及び加速度振幅の確率分布を表すグラフを示す。加速度の周波数スペクトルの横軸は周波数を示し、縦軸は振幅を示す。加速度振幅の確率分布の横軸は、時系列加速度データ134に含まれる振幅又は正規化された振幅を示し、縦軸は確率密度を示す。周波数スペクトル及び振幅の確率分布は、時系列加速度データ134、時系列速度データ、時系列包絡線データ及び時系列変位データの特徴を表している。
【0063】
なお、演算部11は、S105において、全ての種類の第2特徴データを生成するものに限らない。演算部11は、以降の処理で必要になる第2特徴データのみを生成してもよい。例えば、演算部11は、時系列速度データ、時系列包絡線データ及び時系列変位データの内、S102で生成されていない第1特徴データについては、周波数スペクトル及び振幅の確率分布を生成しなくてもよい。第1特徴データ及び第2特徴データは、振動の特徴を表す複数種類の特徴データに含まれる。S102及びS105の処理は生成部に対応する。
【0064】
演算部11は、次に、振動判定モデル132を用いて、振動の状態を表した状態データを生成する(S106)。振動判定モデル132は、複数の畳み込みニューラルネットワークと一つの全結合ニューラルネットワークとを一組とした複数組のニューラルネットワークを含んでなる。以下、ニューラルネットワーク(neural network)をNN、畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional neural network)をCNN、全結合ニューラルネットワークをFCNN(Fully connected neural network)と言う。
【0065】
図7は、振動判定モデル132及び診断モデル133の構成及び機能の概要を示す概念図である。振動判定モデル132は、複数のCNNと一つのFCNNとを一組とした複数の組51,52,…を含む。各組の内容は互いに異なっている。各組に含まれるCNNの数は、互いに同じでもよく、互いに異なっていてもよい。各組に含まれる複数のCNNは、時系列加速度データ134、時系列速度データ、時系列包絡線データ、時系列変位データ、時系列加速度データ134の第2特徴データ、時系列速度データの第2特徴データ、時系列包絡線データの第2特徴データ、及び時系列変位データの第2特徴データの内の複数種類のデータに、一対一で対応している。各組に含まれる複数のCNN及びFCNNは、複数の中間層を有するNNであることが望ましい。
【0066】
図8は、振動判定モデル132に含まれるNNの組の構成及び機能の一例を示す概念図である。NNの組51は、CNN511a、511b及び511cとFCNN512とを含んでいる。CNN511aは時系列加速度データ134に対応し、CNN511bは加速度の周波数スペクトルに対応し、CNN511cは加速度振幅の確率分布に対応する。夫々のCNNは、対応するデータが入力される。
図8に示す例では、CNN511aへ時系列加速度データ134が入力され、CNN511bへ加速度の周波数スペクトルが入力され、CNN511cへ加速度振幅の確率分布が入力される。データがCNN511a、511b及び511cへ入力される際には、正規化等のデータ加工が行われてもよい。CNN511a、511b及び511cは、夫々に、入力されたデータの特徴を表す特徴ベクトルを出力する。
【0067】
FCNN512は、CNN511a、511b及び511cが出力した複数の特徴ベクトルが入力される。データがFCNN512へ入力される際には、正規化等のデータ加工が行われてもよい。FCNN512は、振動の状態を表した状態データ513を出力する。
図8に示す例では、FCNN512は、振動の加速度の状態を表す状態データ513を出力する。状態データ513には、振動の加速度に非周期性の成分、周期的な特定の成分A1、及び周期的な特定の成分A2等の夫々の特定の成分が含まれている確率又は確信度が含まれている。或いは、状態データ513には、振動の加速度に含まれている夫々の特定の成分の強度が含まれている。CNN511a、511b及び511c並びにFCNN512は、時系列加速度データ134がCNN511aへ入力され、加速度の周波数スペクトルがCNN511bへ入力され、加速度振幅の確率分布がCNN511cへ入力された場合にFCNN512が振動の加速度の状態を表す状態データ513を出力するように、予め学習されている。
【0068】
CNNを用いることにより、入力されたデータに含まれる局所的な相関に応じたデータの特徴を表す特徴ベクトルが得られる。例えば、時系列加速度データ134に含まれる値の短周期の変化が特徴ベクトルに反映される。複数の特徴ベクトルを入力されるFCNNにより、用いられる複数種類のデータの特徴に応じて、振動に関する特定の種類の量の状態を表した状態データが得られる。
【0069】
図9は、振動判定モデル132に含まれるNNの組の構成及び機能の他の例を示す概念図である。NNの組52は、CNN521a、521b及び521cとFCNN522とを含んでいる。CNN521aは時系列速度データに対応し、CNN521bは速度の周波数スペクトルに対応し、CNN521cは速度振幅の確率分布に対応する。CNN521a、521b及び521cは、夫々に、対応するデータが入力され、入力されたデータの特徴を表す特徴ベクトルを出力する。
【0070】
FCNN522は、CNN521a、521b及び521cが出力した複数の特徴ベクトルが入力される。FCNN522は、振動の速度の状態を表す状態データ523を出力する。状態データ523には、振動の速度にサイン波形の成分、サイン波形に近似する成分、特定の成分B1、及び特定の成分B2等の夫々の特定の成分が含まれている確率又は確信度が含まれている。或いは、状態データ523には、振動の速度に含まれている夫々の特定の成分の強度が含まれている。CNN521a、521b及び521c並びにFCNN522は、時系列速度データがCNN521aへ入力され、速度の周波数スペクトルがCNN521bへ入力され、速度振幅の確率分布がCNN521cへ入力された場合にFCNN522が振動の速度の状態を表す状態データ523を出力するように、予め学習されている。
【0071】
図8及び
図9に示した例と同様に、振動判定モデル132に含まれるNNの組の夫々に含まれる複数のCNNは、特定の複数種類のデータに一対一に対応する。夫々の組に含まれる複数のCNN及びFCNNは、対応する複数種類のデータが複数のCNNへ入力された場合に特定の種類の状態データをFCNNが出力するように、予め学習されている。複数の組に含まれるFCNNが出力する複数の状態データは、振動に関する互いに異なる種類の状態を表す。例えば、振動の加速度の状態を表す状態データ513又は振動の速度の状態を表す状態データ523以外に、速度の波形の状態を表す状態データ、又は加速度の包絡線の状態を表す状態データ等が出力される。夫々の組に含まれる複数のCNNに対応する複数種類のデータの組み合わせは、組別に異なっていることが望ましい。夫々の組に含まれるFCNNが状態データを出力することにより、振動判定モデル132は、複数の状態データを出力する。
【0072】
S106では、演算部11は、振動判定モデル132に含まれるNNの組の夫々に含まれる複数のCNNへ、対応するデータを入力し、振動判定モデル132が出力した複数の状態データを取得する。このようにして、S106では、演算部11は、状態データを生成する。振動判定モデル132は、特定の複数種類のデータを入力されて状態データを出力するように学習されていれば、
図7に示した構成以外の構成を有する学習モデルであってもよい。S106の処理は状態データ取得部に対応する。
【0073】
演算部11は、次に、回転機2の属性情報を取得する(S107)。
図10は、属性情報の内容例を示す概念図である。属性情報は、回転機2に関する情報であり、回転機2の仕様によって定まる情報と、回転機2が使用される環境によって定まる情報とが含まれる。仕様によって定まる情報には、回転機2の種類、支持構造、駆動方式、及び機械定格等が含まれる。回転機2の種類には、電動機、タービン、内燃機関、送風機、又はポンプ等がある。回転機2の支持構造には、片持ち、又は両持ち等がある。駆動方式には、電動機直結、ベルト駆動、又はインバータ駆動等がある。機械定格には、回転機2の容量、回転数、軸受の種類、及び軸受の呼び番号等が含まれる。回転機2が使用される環境によって定まる情報には、回転機2が設置される架台又は基礎に関する情報等が含まれる。架台・基礎に関する情報には、例えば、コンクリート又はH鋼等の材料の種類、剛性の剛柔、亀裂の有無、及び変形の有無等が含まれる。
【0074】
図10に示す例では、機種(回転機2の種類)を示す情報が含まれており、機種が電動機及びポンプ等の何れであるかを指定する情報が属性情報に含まれる。例えば、属性情報には、該当する機種を1、該当しない機種を0で表現した情報が含まれる。
図10に示す例では、回転機2の駆動方式を示す情報が含まれており、回転機2の駆動方式が、電動機直結、ベルト駆動、及びインバータ駆動等の何れの方式であるかを指定する情報が属性情報に含まれる。例えば、属性情報には、該当する駆動方式を1、該当しない駆動方式を0で表現した情報が含まれる。また、
図10に示す例では、回転機の軸受けの種類が、滑り軸受及び転がり軸受等の何れの種類であるかを指定する情報が属性情報に含まれる。例えば、属性情報には、該当する軸受の種類を1、該当しない種類を0で表現した情報が含まれる。
【0075】
図10に示す例では、回転機2が設置されている架台・基礎の剛性が剛又は柔であるかを示す情報が含まれる。例えば、属性情報には、該当する剛性を1、該当しない剛性を0で表現した情報が含まれる。属性情報には、前述したようなその他の情報が含まれていてもよい。また、属性情報には、振動センサ31が取り付けられている位置を示す情報が含まれていてもよい。
図10には、仕様によって定まる情報と環境によって定まる情報との両方が属性情報に含まれている例を示したが、属性情報にはいずれか一方の情報のみが含まれていてもよい。
【0076】
属性情報は、予め記憶部13に記憶されており、S107では、演算部11は、記憶部13から属性情報を読み出す。或いは、S107において、使用者が操作部15を操作することにより属性情報が操作部15で入力され、演算部11は、入力された属性情報を取得してもよい。
【0077】
演算部11は、次に、診断モデル133を用いて、振動の状態の要因に関する要因情報を生成する(S108)。診断モデル133は、NNを用いてなる学習モデルである。診断モデル133は、NNとして、CNN、又は再帰型ニューラルネットワーク(RNN:Recurrent Neural Network)を用いてもよい。診断モデル133は、複数の中間層を有するNNであることが望ましい。なお、診断モデル133は、NN以外の学習モデルであってもよい。
【0078】
図7に示すように、診断モデル133は、振動判定モデル132が出力した複数の状態データと属性情報とを入力され、要因情報を出力する。
図11は、要因情報の内容の例を示す概念図である。要因情報には、回転機2が正常である確率又は確信度が含まれている。また、要因情報には、回転機2に発生した振動について、回転軸の位置が正しい位置からずれている軸ずれ、軸受の潤滑が良好に行われていない潤滑不良、又は回転機2が架台に確実に固定されてはいない固定不良等が要因である確率又は確信度が含まれている。診断モデル133は、複数の状態データと属性情報とを入力された場合に要因情報を出力するように予め学習されている。
【0079】
S108では、演算部11は、診断モデル133へ、振動判定モデル132が出力した複数の状態データと属性情報とを入力し、診断モデル133が出力した要因情報を取得する。このようにして、S108では、演算部11は、要因情報を生成する。
【0080】
演算部11は、次に、学習装置4の記憶部43が記憶している事例データベース432から、類似事例を取得する(S109)。S109では、演算部11は、類似事例の要求を、通信部18に学習装置4へ送信させる。例えば、類似事例の要求には、状態データ及び要因情報等の診断に関する情報が含まれる。通信部18は、通信ネットワークNを介して、類似事例の要求を学習装置4へ送信する。学習装置4は、類似事例の要求を通信部45で受信する。演算部41は、受信した要因情報との類似度が所定範囲にある診断結果を含む事例のデータを、事例データベース432から抽出する。例えば、演算部41は、回転機2と同等の機種に関する事例のデータを絞り込み、絞り込んだデータに含まれる状態データ及び要因情報と類似事例の要求に含まれる状態データ及び要因情報との類似度を計算する。例えば、状態データ及び要因情報を表すベクトルの差を計算し、ベクトルの差の絶対値を類似度とする。例えば、演算部41は、類似度が所定値以下となる事例のデータの内、診断日時が最新の所定数の事例のデータを抽出する。演算部41は、抽出したデータを通信部45に診断装置1へ送信させる。学習装置4からのデータを通信部18で受信することにより、演算部11は、類似事例を取得する。
【0081】
演算部11は、次に、振動の加速度の時間変化を表す波形、要因情報、及び類似事例を出力する(S110)。S110では、演算部11は、振動の加速度の波形、要因情報、及び類似事例を示した画像を表示部16に表示させる。
図12は、表示部16が表示する画像の例を示す模式図である。画像には、時系列加速度データ134が表す振動の加速度の波形、加速度の周波数スペクトル、及び振動の要因を分析した内容が含まれる。振動の要因分析結果は、要因情報の夫々の要素に対応するクラスを横軸とし、確信度を縦軸とした棒グラフの形で表示される。例えば、クラス0は回転機2が正常であることに対応し、クラス1は軸ずれに対応する。
図12に示す例では、「正常」に対応するクラスの確信度が他のクラスよりも大きく、ほぼ1と同等の値であるので、振動の要因となる回転機2の状態として、「正常」と分析した結果が表示されている。確信度の大きいクラスが複数ある場合は、演算部11は、振動の要因を複数併記して表示部16に表示させてもよい。使用者は、表示部16で表示された画像によって、得られた要因情報を確認することができる。
【0082】
また、
図12に示した例では、診断結果が要因情報に類似した類似事例の内容が表示されている。使用者は、表示された類似事例の内容を確認することで、過去の診断結果を確認することができ、取得された振動がどのような状況で発生し易いのかを推測することが可能となる。演算部11は、取得した複数の類似事例を出力してもよい。
【0083】
演算部11は、次に、要因情報の修正の受付を待ち受ける(S111)。使用者は、表示部16で表示された画像に含まれる要因情報を確認した後、得られた要因情報が誤っていると感じた場合に、操作部15を操作して、要因情報の修正を入力することができる。要因情報の修正を受け付けた場合は(S111:YES)、演算部11は、受け付けた要因情報の修正の内容を表したデータを通信部45に学習装置4へ送信させる(S112)。後述するように、学習装置4では、要因情報の修正に基づいて、学習モデルの学習を行う。演算部11は、S112が終了した後、診断の処理を終了する。
【0084】
S104が終了した後、又はS111で要因情報の修正の受付が無い場合は(S111:NO)、演算部11は、回転機2を診断した結果を含んだ診断報告を出力する(S113)。S113では、演算部11は、要因情報に応じて診断報告を作成し、通信部18に出力装置33へ診断報告のデータを送信させる。プリンタ等の出力装置33は、通信ネットワークNを介して診断装置1からの診断報告のデータを受信し、診断報告を出力する。例えば、演算部11は、S104での判定に応じて、振動の振幅が小さいために回転機2が正常であることを報告する内容の診断報告を出力する。例えば、演算部11は、
図12に示す如きS110で出力した画像と同一の内容を記録した診断報告を出力する。演算部11は、要因情報の内容を言葉で説明した文章を付加した診断報告を出力してもよい。使用者は、診断報告から、回転機2の診断結果を確認することができる。また、使用者は、診断報告を用いて、他車に回転機2の診断結果を説明することができる。演算部11は、S113が終了した後、診断の処理を終了する。
【0085】
回転機2に複数の振動センサ31が取り付けられている場合は、演算部11は、複数の振動センサ31の夫々について、S101〜S113の処理を実行する。複数の振動センサ31についての処理は順次行われてもよく、並行して行われてもよい。S110では、複数の振動センサ31についての振動の加速度の波形、要因情報及び類似事例が、まとめて出力されてもよい。
【0086】
S101〜S113の内、S109の処理は省略されてもよい。この場合は、S110では類似事例は出力されない。また、S112の後にもS113の処理が行われてもよい。或いは、S111及びS112の処理は省略されてもよい。
【0087】
学習装置4は、学習モデル生成方法を実行する。
図13は、事例データベース432の内容例を示す概念図である。事例データベース432には、複数の回転機について過去に診断を行った多数の事例が記録されている。診断を行った日時に関連付けて、診断を受けた回転機に関する属性情報、時系列加速度データ、状態データ、及び要因情報が記録されている。属性情報には、回転機の機種、回転機の駆動方式、及び軸受の種類等の情報が含まれる。
図13に示す例では、機種としてポンプが記録されている。事例データベース432には、診断を受けた回転機に取り付けた振動センサにより取得された時系列加速度データが記録されている。なお、時系列速度データ等の第1特徴データ、又は時系列加速度データの周波数スペクトル若しくは値の確率分布等の第2特徴データが更に記録されていてもよい。
【0088】
また、事例データベース432には、振動の状態を表した状態データが記録されている。
図13に示すように、事例データベース432には、振動の加速度の状態を表す状態データ、及び振動の速度の状態を表す状態データ等、複数の状態データが記録されている。更に、事例データベース432には、振動の状態の要因に関する要因情報が記録されている。これらのデータが互いに関連付けられて、過去に行われた回転機の診断の夫々について、事例として記録されている。事例データベース432に記録された状態データ及び要員情報の内容は、例えば、過去の診断において、振動センサを用いて振動を観測した人が決定した内容である。
【0089】
学習装置4は、事例データベース432に記録されたデータを訓練データとして、学習モデルである振動判定モデル132及び診断モデル133を生成する処理を行う。
図14は、振動判定モデル132に含まれる、複数のCNNと一つのFCNNとからなる一組のNNを、学習装置4が生成する処理の手順を示すフローチャートである。演算部41は、記憶部43で記憶している事例データベース432から、一つの機種について記録されている時系列加速度データ及び特定の状態データを複数通り読み出す(S21)。特定の状態データは、生成すべきNNの組が出力すべき種類の状態データである。例えば、
図8に示すCNN511a、511b及び511c並びにFCNN512を含むNNの組を生成する際には、振動の加速度の状態を表す状態データが読み出される。
【0090】
演算部41は、次に、読み出した複数の時系列加速度データから、必要な特徴データを生成する(S22)。S22では、演算部41は、S102又はS105で演算部11が行う方法と同様の方法で、第1特徴データ又は第2特徴データを生成する。生成される特徴データは、生成すべきNNの組へ入力すべき特徴データである。例えば、
図8に示すNNの組を生成する際には、時系列包絡線データの周波数スペクトルが生成される。事例データベース432に必要な特徴データが記録されている場合は、演算部41は、S22の処理の代わりに、事例データベース432から必要な特徴データを読み出す処理を行ってもよい。
【0091】
演算部41は、読み出した時系列加速度データ、生成した特徴データ、並びに状態データの複数の組み合わせを訓練データとして、時系列加速度データ、特徴データを入力した場合に状態データを出力する一組のNNを生成する(S23)。S23では、演算部41は、複数のCNNの夫々へ、時系列加速度データ、第1特徴データ及び第2特徴データの内の対応するデータを入力し、複数のCNNが出力する複数の特徴ベクトルをFCNNへ入力する。例えば、
図8に示すNNの組を生成する際には、CNN511aへ時系列加速度データを入力し、CNN511bへ加速度の周波数スペクトルを入力し、CNN511cへ加速度振幅の確率分布を入力する。FCNNによって、状態データが出力される。演算部41は、出力された状態データと訓練データとして用いる状態データとを変数とする誤差関数により誤差を計算し、誤差逆伝搬法によって誤差が最小となるように、複数のCNN及びFCNNの入力層、中間層及び出力層に含まれる各ノードの演算のパラメータを調整する。
【0092】
演算部41は、訓練データに含まれる時系列加速度データ及び特徴データと状態データとの複数の組み合わせを用いて、処理を繰り返し、複数のCNN及びFCNNのパラメータを調整することにより、一組のNNの機械学習を行う。演算部41は、調整された最終的なパラメータを有する複数のCNN及びFCNNを生成する。
【0093】
S23が終了した後、演算部41は、処理を終了する。演算部41は、複数組のNNの夫々について、S21〜S23の処理を実行する。S21〜S23の処理を複数回実行することにより、演算部41は、複数のCNN及び一つのFCNNを一組とした複数組のNNを含んでなる振動判定モデル132を生成する。
【0094】
図15は、学習装置4が診断モデル133を生成する処理の手順を示すフローチャートである。演算部41は、記憶部43で記憶している事例データベース432から、一つの機種について記録されている状態データ、属性情報、及び要因情報を複数通り読み出す(S31)。演算部41は、読み出した状態データ、属性情報及び要因情報の複数の組み合わせを訓練データとして、状態データ及び属性情報を入力した場合に要員情報を出力する診断モデル133を生成する(S32)。
【0095】
S32では、演算部41は、状態データ及び属性情報を診断モデル133へ入力する。診断モデル133から要因情報が出力される。演算部41は、出力された要因情報と訓練データとして用いる要因情報とを変数とする誤差関数により誤差を計算し、誤差逆伝搬法によって誤差が最小となるように、診断モデル133の入力層、中間層及び出力層に含まれる各ノードの演算のパラメータを調整する。演算部41は、訓練データに含まれる状態データ及び属性情報並びに要因情報の複数の組み合わせを用いて処理を繰り返し、診断モデル133のパラメータを調整することにより、診断モデル133の機械学習を行う。演算部41は、調整された最終的なパラメータを有する診断モデル133を生成する。S32が終了した後、演算部41は、処理を終了する。
【0096】
演算部41は、回転機の機種別に、S21〜S23及びS31〜S32の処理を行い、振動判定モデル132及び診断モデル133を生成する。即ち、学習装置4は、回転機の機種毎に、訓練データを事例データベース432から読み出し、学習モデルを生成する。演算部41は、生成した振動判定モデル132及び診断モデル133を実現するために必要なデータを記憶部43に記憶する。
【0097】
演算部41は、生成した振動判定モデル132及び診断モデル133を実現するために必要なデータを、通信部45に診断装置1へ送信させる。診断装置1は、振動判定モデル132及び診断モデル133を実現するために必要なデータを通信部18で受信し、演算部11は、受信したデータを記憶部13に記憶することにより、振動判定モデル132及び診断モデル133を実現する。記憶部13には、回転機の機種別に振動判定モデル132及び診断モデル133のデータが記憶され、診断装置1は、回転機2の機種に応じた学習モデルを利用して診断の処理を行う。
【0098】
学習装置4は、学習モデルの再学習を行うこともできる。診断装置1は、S112の処理で、要因情報の修正の内容を表したデータを学習装置4へ送信する。S112で診断装置1が送信するデータは、回転機2に関する属性情報、状態情報及び修正された要因情報が含まれる。学習装置4は、通信部45でデータを受信し、演算部41は、記憶部43が記憶する修正データベース433に受信したデータを記憶する。修正データベース433には、属性情報、状態情報及び修正された要因情報の組み合わせが複数記録される。
【0099】
図16は、学習装置4が行う再学習の処理の手順を示すフローチャートである。演算部41は、修正データベース433から、属性情報、状態情報及び要因情報の複数の組み合わせでなる訓練データを読み出す(S41)。演算部41は、訓練データに基づいて診断モデル133の再学習を行う(S42)。S42では、演算部41は、状態データ及び属性情報を診断モデル133へ入力し、診断モデル133から出力された要因情報と訓練データとして用いる要因情報とを変数とする誤差関数により誤差を計算し、誤差逆伝搬法によって誤差が最小となるように、診断モデル133のパラメータを調整する。演算部41は、訓練データに含まれる状態データ及び属性情報並びに要因情報の複数の組み合わせを用いて処理を繰り返し、診断モデル133の再学習を行う。S42が終了した後、演算部41は、処理を終了する。
【0100】
演算部41は、再学習した診断モデル133を実現するために必要なデータを記憶部43に記憶する。演算部41は、再学習した診断モデル133を実現するために必要なデータを、通信部45に診断装置1へ送信させる。診断装置1は、再学習した診断モデル133を実現するために必要なデータを通信部18で受信し、演算部11は、受信したデータを記憶部13に記憶することにより、診断モデル133を更新する。以降の診断装置1は、再学習した診断モデル133を利用して診断の処理を行う。診断モデル133の再学習により、診断の精度が向上する。
【0101】
以上詳述した如く、診断装置1は、回転機2に発生する振動の加速度を記録した時系列加速度データから、複数種類の特徴データを生成する。特徴データには、振動を表す加速度以外の量を記録した第1特徴データ、又は時系列加速度データ若しくは第1特徴データの周波数分布若しくは振幅の確率分布に関する第2特徴データが含まれる。診断装置1は、時系列加速度データだけでなく、第1特徴データ又は第2特徴データを含む特徴データを用いて、回転機2の診断を行う。複数種類の情報を用いた人による診断と同様に、診断装置1は、回転機2に発生する振動に関する複数種類の情報を利用したマルチモーダルな視点から回転機2の診断を行うことができる。この結果、診断装置1は、従来の診断に比べて、より精度良く診断を行うことができる。また、診断装置1は、事例データベース432に記録されたデータを訓練データとすることにより、回転機2の物理モデルを利用することなく、振動の測定結果に基づいて、回転機2の診断を行うことができる。
【0102】
学習モデルである振動判定モデル132を用いることにより、振動に関する複数種類の情報から、振動の状態を表した状態データが容易に得られる。状態データにより、振動の加速度又は速度等が、正常な状態又は特定の周波数成分が大きい状態等のどのような状態になっているかが明確になる。また、学習モデルである診断モデル133を用いることにより、状態データ及び回転機2に関する属性情報から、振動の状態の要因に関する要因情報が容易に得られる。要因情報から、振動の状態が、回転機2がどのような状態になっていることを要因としたものであるのかが明確になる。このため、回転機2がどのような状態になっているのかを精度良く診断することが可能となる。
【0103】
なお、学習装置4は、複数の診断装置1に対して学習された振動判定モデル132及び診断モデル133を提供する形態であってもよい。例えば、通信ネットワークNに複数の診断装置1が接続されており、学習装置4は、振動判定モデル132及び診断モデル133を実現するために必要なデータを複数の診断装置1へ送信する。学習装置4は、要因情報の修正を複数の診断装置1から受信してもよい。
【0104】
実施形態1では、診断装置1と学習装置4とは通信ネットワークNを介して接続されている形態を示したが、診断装置1と学習装置4とは互いに分離している形態であってもよい。この形態では、通信ネットワークNを介した通信以外の方法で、振動判定モデル132及び診断モデル133を実現するために必要なデータが学習装置4から診断装置1へ渡される。例えば、振動判定モデル132及び診断モデル133を実現するために必要なデータは、学習装置4から読み出され、可搬型メモリ又は光ディスク等の記録媒体に記録され、記録媒体から診断装置1に読み出される。
【0105】
<実施形態2>
図17は、実施形態2に係る診断システムの構成を示す模式図である。実施形態2では、A/D変換器32は、送信部34に接続されている。送信部34は、通信ネットワークNに接続されている。送信部34は、A/D変換器32が出力した信号を受け付け、受け付けた信号を、通信ネットワークNを介して診断装置1へ送信する。診断装置1は、サーバ装置等のコンピュータである。診断装置1は、送信部34から送信された信号を受信する。即ち、診断装置1は、振動センサ31が測定した振動の加速度の値を示した信号を、通信ネットワークNを介して受信する。診断システムは、端末装置6を備えている。端末装置6は、通信ネットワークNに接続されている。診断システムのその他の部分の構成は、実施形態1と同様である。
【0106】
端末装置6は、回転機2の診断を行うために使用者が使用する装置である。例えば、端末装置6は、回転機2の付近に配置される。
図18は、端末装置6の内部の機能構成例を示すブロック図である。端末装置6は、パーソナルコンピュータ、タブレット型コンピュータ又はスマートフォン等のコンピュータを用いて構成されている。端末装置6は、演算部61と、メモリ62と、記憶部63と、操作部64と、表示部65と、通信部66とを備えている。演算部61は、例えばCPU、GPU、又はマルチコアCPUを用いて構成されている。メモリ62は、例えばRAMである。記憶部63は、不揮発性であり、例えばハードディスクである。操作部64は、例えば、キーボード、ポインティングデバイス又はタッチパネルである。表示部65は、例えば液晶ディスプレイ又はELディスプレイである。通信部66は、通信ネットワークNが接続され、端末装置6の外部との間で通信を行う。通信部66は、通信ネットワークNを通じて、診断装置1とデータの送受信を行う。
【0107】
記憶部63は、コンピュータプログラム631を記憶している。例えば、コンピュータプログラム631は、回転機2の診断を行うためのウェブアプリケーションのプログラムであり、診断装置1からダウンロードされ、記憶部63に記憶される。コンピュータプログラム631は、メモリ62に記憶されてもよい。
【0108】
診断装置1は、振動センサ31が測定した振動の加速度の値を示した信号を受信し、記憶部13に時系列加速度データ134を記憶する。使用者は、操作部64を操作して、回転機2の診断の指示を入力する。演算部61は、入力された指示に応じて、通信部66に、診断の開始の指示を診断装置1へ送信させる。診断装置1は、診断の開始の指示を通信部18で受信し、演算部41は、S101〜S113の処理を実行する。S110では、演算部11は、振動の加速度の時間変化を表す波形、要因情報、及び類似事例を通信部18に端末装置6へ送信させ、端末装置6では、振動の加速度の波形、要因情報、及び類似事例を表示部65に表示する。使用者は、端末装置6を操作して、回転機2の診断の結果を知ることができる。
【0109】
なお、診断装置1は、複数の回転機2の診断を行う形態であってもよい。例えば、複数の送信部34及び複数の端末装置6が通信ネットワークNに接続されている。診断装置1は、複数の振動センサ31が測定した振動の加速度の値を示した信号を受信し、記憶部13に複数の時系列加速度データ134を記憶する。診断装置1は、複数の端末装置6から診断の開始の指示を受け付け、夫々の回転機2の診断を行う。また、学習装置4は、複数の回転機2に関する要因情報の修正を受け付け、修正データベース433に記録し、再学習の処理を行うことができる。
【0110】
実施形態2においても、診断装置1は、回転機2に発生する振動に関する複数種類の情報を利用することにより、従来の診断に比べて、より精度良く診断を行うことができる。実施形態2では、使用者は、診断装置1を直接に操作する必要が無く、より手軽に回転機2の診断を行うことができる。また、学習装置4は、複数の回転機2についての診断結果に基づいて診断モデル133の再学習を行うことができる。これにより、診断モデル133を用いた診断の精度がより向上する。
【0111】
実施形態1及び2においては、振動センサ31が測定した振動の測定結果を診断装置1で取得する形態を示したが、振動の測定結果を取得する装置と回転機2の診断のための処理を行う装置とは異なる装置であってもよい。実施形態1及び2においては、学習装置4が事例データベース432を記憶する形態を示したが、事例データベース432を記憶する装置と学習モデルの学習の処理を行う装置とは異なる装置であってもよい。
【0112】
実施形態1及び2においては、振動判定モデル132が複数のCNNと一つのFCNNとを一組とした複数の組のNNを含んでいる形態を示したが、振動判定モデル132は、複数のCNN及び一つのFCNNからなる一組のNNのみからなる形態であってもよい。実施形態1及び2においては、時系列加速度データ134以外に、時系列速度データ等の第1特徴データを用いる形態を示したが、診断装置1は、第1特徴データを利用しない形態であってもよい。
【0113】
実施形態1及び2においては、時系列速度データ等の第1特徴データを時系列加速度データ134から計算する形態を示したが、診断装置1は、時系列加速度データ134から計算する方法以外の方法で第1特徴データを取得する形態であってもよい。例えば、回転機2の振動の速度を測定するセンサを回転機2に取り付け、診断装置1は、センサが測定した速度を時系列的に記録した時系列速度データを取得してもよい。診断装置1は、時系列速度データ、時系列包絡線データ及び時系列変位データ以外の第1特徴データを用いる形態であってもよい。診断装置1は、周波数スペクトル及び振幅の確率分布以外に、振動の特徴を示す特徴データを用いる形態であってもよい。
【0114】
本発明は上述した実施の形態の内容に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。即ち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【解決手段】回転機の診断方法では、回転機に取り付けられた振動センサが測定した振動の加速度を時系列的に記録した時系列加速度データを取得し、前記時系列加速度データから、複数種類の特徴データを生成し、前記時系列加速度データ及び前記複数種類の特徴データの内の複数種類のデータを入力した場合に前記振動の状態を表した状態データを出力する第1学習モデルへ、前記複数種類のデータを入力し、前記第1学習モデルが出力する前記状態データを取得する。