特許第6854098号(P6854098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6854098-空調システム 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6854098
(24)【登録日】2021年3月17日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/04 20060101AFI20210329BHJP
   F24F 7/00 20210101ALI20210329BHJP
   F24F 11/67 20180101ALI20210329BHJP
【FI】
   F24F7/04 B
   F24F7/00 Z
   F24F11/67
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-149569(P2016-149569)
(22)【出願日】2016年7月29日
(65)【公開番号】特開2018-17485(P2018-17485A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年6月25日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】金子 研
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 俊治
(72)【発明者】
【氏名】竹島 靖人
(72)【発明者】
【氏名】小西 弘高
(72)【発明者】
【氏名】林 昌明
【審査官】 ▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−084341(JP,A)
【文献】 特開2014−196858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/04
F24F 7/00
F24F 11/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調対象域のペリメータ側の空調を行うペリメータ用空調設備と、空調対象域の自然換気を行う自然換気設備と、空調対象域のインテリア側の空調を行うインテリア用空調設備と、が備えられ、
前記自然換気設備の給気口が、前記ペリメータ用空調設備の空気吹出口よりも空調対象域のインテリア側で、前記ペリメータ用空調設備の空気吹出口と前記インテリア用空調設備の空気吹出口との間に配置され、
前記自然換気設備の排気口が、前記インテリア用空調設備の空気吹出口に対して前記自然換気設備の給気口とは反対側に配置され、
前記自然換気設備が、前記ペリメータ用空調設備の空気吹出口と前記インテリア用空調設備の空気吹出口との間に配置される前記給気口から空調対象域に給気し、前記インテリア用空調設備の空気吹出口に対して前記自然換気設備の給気口とは反対側に配置される前記排気口から排気する形態で空調対象域の自然換気を行い、
前記ペリメータ用空調設備及び前記インテリア用空調設備は、空調対象域のペリメータ側とインテリア側とで空調負荷の種別が異なる場合でも、ペリメータ側とインテリア側の夫々の空調負荷に応じて夫々の温熱環境を調整可能な空調設備であり、
前記ペリメータ用空調設備が、空調対象域のペリメータ側の暖房負荷に応じてペリメータ側の温熱環境を調整し、前記インテリア用空調設備が、空調対象域のインテリア側の冷房負荷に応じてインテリア側の温熱環境を調整する空調システム。
【請求項2】
前記自然換気設備の給気口が、前記ペリメータ用空調設備の空気吹出口よりもインテリア側の箇所からインテリア側に向けて横向きに給気する状態で設置されている請求項記載の空調システム。
【請求項3】
空調対象域のペリメータ側の空調を行うペリメータ用空調設備と、空調対象域の自然換気を行う自然換気設備と、が備えられ、
前記自然換気設備の給気口が、前記ペリメータ用空調設備の空気吹出口よりも空調対象域のインテリア側に配置され、
空調対象域の天井側において、前記自然換気設備における外気取込口から給気口までの給気流路に、上方側に曲がった後に下方側に曲がる屈曲部が備えられ、
前記屈曲部の下の窪み空間に、前記ペリメータ用空調設備が設置されている空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調対象域の空調を行う空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスビル内の事務室などの空調対象域において、屋外に面する窓の近くなどのペリメータ側は、インテリア側に比べて外気温の影響を受け易い。そのため、例えば、冬季等の外気温が低い場合には、ペリメータ側では低温外気の影響でインテリア側よりも暖房負荷が大きくなり、夏季等の外気温が高い場合には、ペリメータ側では高温外気の影響でインテリア側よりも冷房負荷が大きくなるなど、ペリメータ側ではインテリア側よりも外気温に対抗するための空調負荷が大きくなる傾向がある。
また、空調対象域によっては、インテリア側ではOA機器や事務員などの発熱源が集中することに原因して一年を通じて冷房負荷が生じ、ペリメータ側では一年を通して外気温に対抗するための空調負荷(夏季は冷房負荷、冬季は暖房負荷)が生じるなど、インテリア側とペリメータ側とで空調負荷の種別が異なる場合もある。
そこで、空調対象域を空調する空調システムでは、インテリア側の空調を行うインテリア用空調設備とは別に、ペリメータ側の空調を行うペリメータ用空調設備を設けることが多用されている。
【0003】
このような空調システムにおいて、風力や温度差等を駆動力として自然換気を行う自然換気設備が設けられる場合がある。この場合、自然換気設備は、外気を空調対象域に給気する給気口と空調対象域の空気を屋外に排気する排気口とが空調対象域に臨む状態で備えられる。外気を空調対象域に給気する給気口は、例えば、特許文献1に示すように、給気経路が短くて給気抵抗の少ない屋外と空調対象域との境界となる壁部の空調対象域側(空調対象域の最もペリメータ側)の面の上部に備えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−210685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の空調システムでは、自然換気設備にて空調対象域の換気を行う際、外気温が低温となる冬季などにおいて、ペリメータ用空調設備にて暖房されている空調対象域のペリメータ側における壁部の上部から低温外気が導入されるので、空調対象域のペリメータ側で低温外気の自然降下(所謂、コールドドラフト)が生じ、ペリメータ側に居る者に不快感を与える不都合がある。
また、外気温が高温となる夏季には、ペリメータ用空調設備にて冷房されている空調対象域のペリメータ側における壁部の上部から高温外気が導入されることから、一年を通じて空調対象域のペリメータ側に空調負荷とは相反する温度帯の外気を直接的に導入することになり、ペリメータ用空調設備の空調負荷の増大を招く不都合もある。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、コールドドラフトの発生やペリメータ用空調設備の空調負荷の増大を抑制しながら、自然換気設備による自然換気を行うことのできる空調システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は、空調対象域のペリメータ側の空調を行うペリメータ用空調設備と、空調対象域の自然換気を行う自然換気設備と、空調対象域のインテリア側の空調を行うインテリア用空調設備と、が備えられ、
前記自然換気設備の給気口が、前記ペリメータ用空調設備の空気吹出口よりも空調対象域のインテリア側で、前記ペリメータ用空調設備の空気吹出口と前記インテリア用空調設備の空気吹出口との間に配置され、
前記自然換気設備の排気口が、前記インテリア用空調設備の空気吹出口に対して前記自然換気設備の給気口とは反対側に配置され、
前記自然換気設備が、前記ペリメータ用空調設備の空気吹出口と前記インテリア用空調設備の空気吹出口との間に配置される前記給気口から空調対象域に給気し、前記インテリア用空調設備の空気吹出口に対して前記自然換気設備の給気口とは反対側に配置される前記排気口から排気する形態で空調対象域の自然換気を行い、
前記ペリメータ用空調設備及び前記インテリア用空調設備は、空調対象域のペリメータ側とインテリア側とで空調負荷の種別が異なる場合でも、ペリメータ側とインテリア側の夫々の空調負荷に応じて夫々の温熱環境を調整可能な空調設備であり、
前記ペリメータ用空調設備が、空調対象域のペリメータ側の暖房負荷に応じてペリメータ側の温熱環境を調整し、前記インテリア用空調設備が、空調対象域のインテリア側の冷房負荷に応じてインテリア側の温熱環境を調整する点にある。
【0008】
本構成によれば、自然換気設備にて空調対象域の自然換気を行う際、ペリメータ用空調設備の空気吹出口よりも空調対象域のインテリア側に配置された給気口から、ペリメータ用空調設備から吹き出される調整空気よりも空調対象域のインテリア側に外気を導入するので、空調対象域のペリメータ側への外気の導入を抑制し、空調対象域のインテリア側への外気の導入を促進することができる。
よって、外気温が低温となる冬季などにおいて、ペリメータ用空調設備にて暖房されている空調対象域のペリメータ側で低温外気の自然降下(所謂、コールドドラフト)が生じるのを抑制することができ、ペリメータ側に居る者への不快感を低減することができる。
また、一年を通じて空調対象域のペリメータ側に対して空調負荷とは相反する温度帯の外気の導入を抑制することができるので、導入外気によるペリメータ用空調設備の空調負荷の増大を抑制することができる。
したがって、コールドドラフトの発生やペリメータ用空調設備の空調負荷の増大を抑制しながら、自然換気設備による自然換気を行うことができる。
【0009】
さらに、自然換気設備にて空調対象域の自然換気を行う際のコールドドラフトの発生やペリメータ用空調設備の空調負荷の増大を抑制できることで、自然換気を有効に利用できる外気条件を拡大することができる。よって、自然換気を行う機会を増やすことが可能となり、自然換気による省エネルギー化を促進することができる。
【0010】
しかも、自然換気設備にて空調対象域の換気を行う際の空調対象域のインテリア側への外気の導入を促進することができるので、例えば、外気温が低温であるにもかかわらず、空調対象域のインテリア側で冷房負荷が生じている場合に、外気冷房による省エネルギー性の向上も図ることも可能となる。
【0012】
加えて、自然換気設備にて空調対象域の自然換気を行う際、ペリメータ用空調設備の空気吹出口とインテリア用空調設備の空気吹出口との間に配置された自然換気設備の給気口から導入される外気により、インテリア用空調設備で調整されたインテリア側の領域と、ペリメータ用空調設備で調整されたペリメータ側の領域との間での空気の流通を抑制することができる。
したがって、空調対象域のペリメータ側とインテリア側とで空調負荷の種別が異なる場合において、ペリメータ用空調設備によるペリメータ側の空調(例えば暖房)とインテリア用空調設備によるインテリア側の空調(例えば冷房)とを、混合損失(ミキシングロス)を抑制した状態で効率的に行うことができ、省エネルギー性を一層向上させることができる。
【0013】
本発明の第特徴構成は、前記自然換気設備の給気口が、前記ペリメータ用空調設備の空気吹出口よりもインテリア側の箇所からインテリア側に向けて横向きに給気する状態で設置されている点にある。
【0014】
本構成によれば、自然換気設備にて空調対象域の自然換気を行う際、自然換気設備の給気口の背面側となるペリメータ側への外気の導入を一層抑制しながら、給気口の正面側となるインテリア側への外気の導入を一層促進することができる。
さらに、自然換気設備の給気口を天井面等の水平面の近くからインテリア側に向けて横向きに給気するようにすれば、コアンダー効果により給気の流れが当該水平面に沿った流れになり易く、ペリメータ側への外気の導入を更に抑制しながら、インテリア側への外気の導入を更に促進することができる。
したがって、自然換気設備にて空調対象域の換気を行う際のコールドドラフトの発生やペリメータ用空調設備の空調負荷の増大を一層抑制することができる。また、自然換気を有効に利用できる外気条件を一層拡大して自然換気による省エネルギー化を一層促進することができるとともに、外気冷房による省エネルギー性を一層向上させることができる。
【0015】
本発明の第特徴構成は、空調対象域のペリメータ側の空調を行うペリメータ用空調設
備と、空調対象域の自然換気を行う自然換気設備と、が備えられ、
前記自然換気設備の給気口が、前記ペリメータ用空調設備の空気吹出口よりも空調対象
域のインテリア側に配置され、
空調対象域の天井側において、前記自然換気設備における外気取込口から給気口までの
給気流路に、上方側に曲がった後に下方側に曲がる屈曲部が備えられ、
前記屈曲部の下の窪み空間に、前記ペリメータ用空調設備が設置されている点にある。
【0016】
上記構成によれば、自然換気設備の給気口をペリメータ用空調設備の給気口よりもインテリア側に配置するための給気流路の屈曲部の上方側に曲がった部位が水返しとなって給気流路を通じて空調対象域に雨水が浸入することを抑制することができる。しかも、給気流路の上方側に曲がった後に下方側に曲がる屈曲部の下の窪み空間を利用してペリメータ用空調設備を合理的且つ見栄えよく設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】空調システムの概念図
図2】空調システムの要部の断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る空調システムの実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る空調システムの構成を模式的に示したものであり、同図1に示すように、この空調システムは、オフィスビル内の事務室などの空調対象域Aの温熱環境の調整と換気と行うシステムとして構成されている。
【0019】
この空調システムには、空調対象域Aにおける窓の近くなどのペリメータ側を空調するペリメータ用空調設備1と、空調対象域Aのインテリア側を空調するインテリア用空調設備2とが備えられ、空調対象域Aのペリメータ側とインテリア側の各々の熱負荷に応じてペリメータ側とインテリア側の各々の温熱環境を調整する。
また、この空調システムには、空調対象域Aの自然換気を行う自然換気設備3と、空調対象域Aの機械換気を行う機械換気設備4とが備えられ、外気条件などの諸条件に応じて自然換気と機械換気とを適宜に切り替え、その時点で適した換気形態で空調対象域Aの換気を行う。
【0020】
前記ペリメータ用空調設備1には、温調された調整空気SAを空調対象域Aのペリメータ側に向けて吹き出す空気吹出口11が備えられている。ペリメータ用空調設備1は、この空気吹出口11から吹き出す調整空気SAによって空調対象域Aのペリメータ側の温熱環境を調整する。ペリメータ用空調設備1の空気吹出口11は、例えば、ペリメータ用空調設備1の室内機12などに装備された状態で、空調対象域Aのペリメータ側の天井部Cなどに配置される。
ペリメータ用空調設備1の室内機12としては、パッケージエアコンの室内機やファンコイルユニットなどを例示することができ、例えば、空気吸込口(図示省略)から空調対象域Aのペリメータ側の空気を吸い込んで、その吸い込み空気を内部の熱交換器(図示省略)で温調して調整空気SAとした上で空気吹出口11から吹き出すように構成することができる。
【0021】
前記インテリア用空調設備2には、温調された調整空気SAを空調対象域Aのインテリア側に向けて吹き出す空気吹出口21が備えられている。インテリア用空調設備2は、この空気吹出口21から吹き出す調整空気SAによって空調対象域Aのインテリア側の温熱環境を調整する。インテリア用空調設備2の空気吹出口21は、例えば、インテリア用空調設備2の室内機22などに装備された状態で、空調対象域Aのインテリア側の天井部Cなどに配置される。
インテリア用空調設備2の室内機22としても、パッケージエアコンの室内機やファンコイルユニットなどを例示することができ、例えば、空気吸込口(図示省略)から空調対象域Aのインテリア側の空気を吸い込んで、その吸い込み空気を内部の熱交換器(図示省略)で温調して調整空気SAとした上で空気吹出口21から吹き出すように構成することができる。
【0022】
前記自然換気設備3は、外気OAを空調対象域Aに供給する給気流路31と、空調対象域Aの空気を排気空気EAとして屋外に排気する排気流路32とを備えて構成されている。
自然換気設備3の給気流路31は、屋外に臨む状態で開口する外気取込口31Aと、空調対象域Aに臨む状態で開口する給気口31Bとが備えられ、外気取込口31Aから取り込んだ外気OAを給気口31Bから空調対象域Aに供給する。自然換気設備3の給気口31Bは、例えば、空調対象域Aに臨む天井部Cなどに設置される。
自然換気設備3の排気流路32は、空調対象域Aに臨む状態で開口する排気口32Aと、屋外に臨む状態で開口する空気放出口32Bとが備えられ、排気口32Aから取り込んだ空調対象域Aの空気を排気空気EAとして空気放出口32Bから屋外に放出する。自然換気設備3の排気口32Aも、例えば、空調対象域Aに臨む天井部Cなどに設置される。
【0023】
前記機械換気設備4は、図示は省略するが、給気ファン、給気流路、排気ファン、排気路などを備えて構成され、給気ファンの駆動力で給気流路を通じて外気OAを空調対象域Aに供給するとともに、排気ファンの駆動力で排気流路を通じて空調対象域Aの空気を排気空気EAとして屋外に放出する。
【0024】
なお、機械換気設備4には、給気流路を通じて空調対象域Aに供給される外気OAと排気流路を通じて屋外に放出される排気空気EAとの間で熱交換させる全熱交換器などの熱交換器を適宜に付設することができる。このようにすれば、夏季などの外気OAが空調対象域Aの空気よりも高温・高湿となる時期には、高温・高湿の外気OAを、それよりも低温・低湿の排気空気EAとの全熱交換で冷却・除湿した上で空調対象域Aに供給することができる。また、冬季などの外気OAが空調対象域Aの空気よりも低温・低湿となる時期には、低温・低湿の外気OAを、それよりも高温・高湿の排気空気EAとの全熱交換で加熱・加湿した上で空調対象域Aに供給することができる。
【0025】
次に、自然換気設備3の給気口31Bの配置について説明を加える。
この空調システムでは、自然換気設備3の給気口31Bが、ペリメータ用空調設備1の空気吹出口11よりも空調対象域Aのインテリア側に配置されている。また、自然換気設備3の給気口31Bがペリメータ用空調設備1の空気吹出口11と、インテリア用空調設備2の空気吹出口21との間に配置されている。
【0026】
具体的には、この空調システムでは、空調対象域Aに臨む天井部Cにおいて、窓Wの近くのペリメータ側から中央側のインテリア側に向かう順で、ペリメータ用空調設備1の空気吹出口11、自然換気設備3の給気口31B、インテリア用空調設備2の空気吹出口21が配置されている。自然換気設備3の給気口31Bは、例えば、ペリメータ用空調設備1の空調対象領域(ペリメータゾーン)とインテリア用空調設備2の空調対象領域(インテリアゾーン)との境界部に配置されている。
【0027】
このように構成された空調システムでは、自然換気設備3にて空調対象域Aの自然換気を行う際の外気OAの導入位置が、ペリメータ用空調設備1の空気吹出口11よりも空調対象域Aのインテリア側に寄っているので、その分、外気温に対抗するための空調負荷の大きな空調対象域Aのペリメータ側への外気OAの導入を抑制し、空調対象域Aのインテリア側への外気OAの導入を促進することができる。
【0028】
そのため、外気温が低温となる冬季などにおいて、ペリメータ用空調設備1にて暖房されている空調対象域Aのペリメータ側で低温外気OAの自然降下(所謂、コールドドラフト)が生じるのを抑制することができ、ペリメータ側に居る者への不快感を低減することができる。また、一年を通じて空調対象域Aのペリメータ側に対して空調負荷とは相反する温度帯の外気OAの導入を抑制することで、自然換気時の導入外気OAによるペリメータ用空調設備1の空調負荷の増大を抑制することができる。
【0029】
さらに、自然換気設備3にて空調対象域Aの自然換気を行う際のコールドドラフトの発生やペリメータ用空調設備1の空調負荷の増大を抑制できることで、自然換気を有効に利用できる外気条件を拡大することができる。よって、外気条件によって自然換気と機械換気とを切り替えて空調対象域Aの換気を行う場合に、自然換気を行う機会を増やすことが可能となり、自然換気による省エネルギー化を促進することができる。
【0030】
また、自然換気設備3にて空調対象域Aの自然換気を行う際の空調対象域Aのインテリア側への外気OAの導入を促進することで、例えば、外気温が低温であるにもかかわらず、空調対象域Aのインテリア側で冷房負荷が生じている場合に、外気冷房による省エネルギー性の向上も図ることができる。
【0031】
次に、自然換気設備3の給気流路31について説明を加える。
図2は自然換気設備3の給気流路31の具体的な構成例を示している。同図2の例では、給気流路31は、空調対象域Aの天井部Cの側に構成されている。給気流路31は、屋外側端となる外気取込口31Aと、空調対象域A側端となる給気口31Bと、外気取込口31Aと給気口31Bとに亘らせた給気ダクト31Dから構成されている。給気ダクト31Dには、給気流路31を開閉するダンパー31Eが介装されている。ダンパー31Eは、自然換気設備3による自然換気と機械換気設備4による機械換気の切り替え時などに用いられる。
給気流路31の外気取込口31Aは、例えば、給気口31Bと略同じ高さに配置され、屋外と空調対象域Aとの境界となる壁部における窓Wの上部から横向きに外気OAを取り込む状態で設置されている。
【0032】
給気流路31の給気口31Bは、空調対象域Aの天井部Cの近傍箇所において、ペリメータ用空調設備1の空気吹出口11よりもインテリア側の箇所からインテリア側に向けて横向きに給気する状態で設置されている。
そのため、この空調システムでは、自然換気設備3にて空調対象域Aの自然換気を行う際に、自然換気設備3の給気口31Bの背面側となるペリメータ側への外気の導入を一層抑制しながら、給気口31Bの正面側となるインテリア側への外気OAの導入を促進することができる。しかも、天井面の近傍箇所からインテリア側に向けて横向きに外気OAを給気するので、コアンダー効果により給気の流れが天井部Cの天井面に沿った流れになり易く、このことで、ペリメータ側への外気OAの導入を更に抑制しながら、インテリア側への外気OAの導入を更に促進することができる。
【0033】
給気流路31の給気ダクト31Dには、上方側に曲がった後に下方側に曲がる屈曲部Kが備えられている。
具体的には、給気ダクト31Dは、屋外の外気取込口31Aから屋内の給気口31B側に向かって斜め上向きに延びる上向きダクト部31aと、上向きダクト部31aの先端から給気口31B側に向かって横方向に延びる第1横向きダクト部31bと、第1横向きダクト部31bの先端から給気口31B側に向かってほぼ真下向きに延びる下向きダクト部31cと、下向きダクト部31cの先端側から給気口31B側に向かって横向きに延びる第2横向きダクト部31dとから構成されている。給気ダクト31Dの屈曲部Kは、上向きダクト部31aと第1横向きダクト部31bと下向きダクト部31cとから構成されている。
【0034】
そして、給気ダクト31Dの屈曲部Kの下の窪み空間S、すなわち、上向きダクト部31aと第1横向きダクト部31bと下向きダクト部31cとで囲まれる上向きの窪み空間Sに、ペリメータ用空調設備1の室内機12が埋め込み状態で設置されている。換言すれば、ペリメータ用空調設備1の室内機12は、給気ダクト31Dの屈曲部Kの下の窪み空間Sに収容されている。
【0035】
そのため、この空調システムでは、給気ダクト31Dの屈曲部Kにおける上向きダクト部31a(上方側に曲がった部位の一例)が水返しとなって給気流路31を通じて空調対象域Aに雨水が浸入することを抑制することができる。しかも、その給気ダクト31Dの屈曲部Kの下の窪み空間Sを利用してペリメータ用空調設備1を合理的且つ見栄えよく設置することができる。
【0036】
〔別実施形態〕
(1)前述の実施形態では、自然換気設備3の給気口31Bの具体的構成として、空調対象域Aのインテリア側に向けて横向きに給気するものを例に示したが、下向きや上向きに給気するものであってもよい。
【0037】
(2)前述の実施形態では、自然換気設備3の給気流路31に備えられた屈曲部Kが、上方側に曲がった後に下方側に屈曲するように構成されている場合を例に示したが、例えば、上方側のみに曲がるように構成されていてもよい。また、自然換気設備3の給気流路31に屈曲部Kが備えられていなくともよい。
【0038】
(3)前述の実施形態では、自然換気設備3の給気口Aが、ペリメータ用空調設備1の空調対象領域(ペリメータゾーン)とインテリア用空調設備2の空調対象領域(インテリアゾーン)との境界部に配置されている場合を例に示したが、境界部よりもペリメータ側やインテリア側に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 ペリメータ用空調設備
11 空気吹出口
2 インテリア用空調設備
21 空気吹出口
3 自然換気設備
31 給気流路
31A 外気取込口
31B 給気口
A 空調対象域
K 屈曲部
S 窪み空間
図1
図2