特許第6854101号(P6854101)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6854101
(24)【登録日】2021年3月17日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/514 20060101AFI20210329BHJP
   A61F 5/44 20060101ALI20210329BHJP
   A61F 13/505 20060101ALI20210329BHJP
【FI】
   A61F13/514 500
   A61F5/44 H
   A61F5/44 T
   A61F13/514 320
   A61F13/505 100
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-169341(P2016-169341)
(22)【出願日】2016年8月31日
(65)【公開番号】特開2018-33684(P2018-33684A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】岡田 友記
【審査官】 ▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−081669(JP,A)
【文献】 特開平02−004370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15−13/84
A61L15/16−15/64
A61F 5/00− 6/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体と、前記吸収体の肌側を覆う透液性のトップシートと、前記吸収体の非肌側を覆う防水シートと、前記防水シートの非肌側を覆う透液性のバックシートとを備え、
前記防水シートの前記吸収体より幅方向外側に延在する部分に、長手方向に沿って引裂可能な引裂線が形成され、前記防水シートを前記引裂線で引き裂くことにより、前記吸収体と重なる部分の全ての前記防水シートを取り除くことができるようになっており、
前記防水シートは、少なくとも前記吸収体より長手方向外側に延在する部分が、前記トップシート側に設けられた粘着剤層に剥離可能に接着されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
吸収性物品の長手方向端縁から所定の離間距離をあけた内側に前記粘着剤層が形成され、前記粘着剤層より吸収性物品の長手方向外側に、前記防水シートを前記トップシート側に接着しない摘み部が形成されている請求項記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記バックシートに前記防水シートを摘み出すための開口が設けられている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ、失禁パンツ、おむつカバーなどのアウターの内面に装着して使用される尿取りパッド、失禁パッドなどの吸収性物品に係り、詳しくは非肌側が不透液性とされた簡易交換用としての使用態様と、非肌側が透液性とされた補助吸収用としての使用態様とを選択可能とした吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、使い捨ておむつなどのアウターの内面に装着して使用される尿取りパッドなどのインナーパッドとして、前記簡易交換用としての使用態様と、前記補助吸収用としての使用態様の2通りがあることが知られている。前記簡易交換用としての使用態様では、頻繁に使い捨ておむつを交換する手間を軽減するとともに、おむつの購入費用を削減することなどを目的として、尿を吸収したインナーパッドのみを交換して使い捨ておむつを繰り返し使用できるように、吸収体に吸収された尿のアウター側への漏れを防止するため、インナーパッドの非肌側が不透液性のシート材で覆われている。この簡易交換用のインナーパッドは、昼間などパッドを頻繁に交換できるときに主に使用されている。
【0003】
一方、前記補助吸収用としての使用態様では、使い捨ておむつなどのアウターの吸収能力を増大させることなどを目的として、使い捨ておむつの内面に積層して使用し、吸収体に吸収された尿が速やかに使い捨ておむつの吸収体に移行するように、インナーパッドの非肌側が透液性のシート材で覆われている。この補助吸収用のインナーパッドは、就寝時などパッドを長時間に亘って交換できないときに主に使用されている。
【0004】
このように、前記簡易交換用としての使用態様ではアウターに尿が溢れ出ないことが要求される一方で、前記補助吸収用としての使用態様ではインナーパッド及びアウターの各吸収体の吸収性能を有効に活用するため、インナーパッドからアウター側に尿がスムーズに移行することが要求されている。このように、簡易交換用としての使用態様と補助吸収用としての使用態様とでは、相反する性能が要求されることとなる。
【0005】
従来のインナーパッドでは、非肌側のシート材を不透液性とするか透液性とするかによって、何れか一方の機能を備えることしかできなかったため、使用者は各機能に応じたパッドを2種類用意しておかなければならなかった。
【0006】
ところが近年では、このようなパッドにも幾多の改良が重ねられ、1つのパッドで簡易交換用としての使用態様と、補助吸収用としての使用態様とを選択可能としたものが提案されている。例えば、下記特許文献1では、内面側に液透過性のトップシートが、内部に前記トップシートを通過した液を吸収する吸収コアが、外面側に液不透過性のバックシートが設けられ、前記バックシートには、前記吸収コアを透過した液を通過させる開口部が形成されている吸収性物品が開示されている。
【0007】
また、下記特許文献2では、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これら両シートの間に配置された吸収体を有する吸収性物品において、前記バックシートに線状の引裂線を形成する分離手段を具備したことにより、前記バックシートに開口部を形成することができる吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3756000号公報
【特許文献2】特許第4023005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載の吸収性物品では、液不透過性のバックシートに液を通過させる開口部が形成され、この開口部を塞ぐための被覆シートが設けられているため、資材コストや製造コストが嵩む要因となるとともに、アウターの表面に固定するための粘着剤層の配設領域が前記開口部や被覆シートの配設領域以外の領域に制限されていた。また、前記被覆シートを取り除いてバックシートの開口部を開口させた補助吸収用としての使用態様において、インナーパッドからアウターへの尿の移行が前記開口部を通じてしか行われないため、尿がスムーズに移行できない欠点があった。
【0010】
また、上記特許文献2に記載の吸収性物品では、バックシートに線状の切れ目を形成する分離手段を具備しているが、この切れ目が形成されたバックシートがアウターの表面に直に接するため、装着時にバックシートの切れ目が裂けやすく、簡易交換用として使用したときの漏れが問題となっていた。
【0011】
そこで本発明の主たる課題は、簡易交換用としての使用態様においてアウターへの尿の漏れを防止するとともに、補助吸収用としての使用態様においてアウターに尿がスムーズに移行できるようにした吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、吸収体と、前記吸収体の肌側を覆う透液性のトップシートと、前記吸収体の非肌側を覆う防水シートと、前記防水シートの非肌側を覆う透液性のバックシートとを備え、
前記防水シートの前記吸収体より幅方向外側に延在する部分に、長手方向に沿って引裂可能な引裂線が形成され、前記防水シートを前記引裂線で引き裂くことにより、前記吸収体と重なる部分の全ての前記防水シートを取り除くことができるようになっており、
前記防水シートは、少なくとも前記吸収体より長手方向外側に延在する部分が、前記トップシート側に設けられた粘着剤層に剥離可能に接着されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0013】
上記請求項1記載の発明では、肌側からトップシート、吸収体、防水シート、バックシートの順に配設された吸収性物品において、前記防水シートの吸収体より幅方向外側に延在する部分に、長手方向に沿って引裂可能な引裂線を形成することによって、吸収性物品の使用態様に応じて、吸収体とバックシートとの間に介在された防水シートを引き抜きできるようにしている。具体的には、非肌側を不透液性とした簡易交換用の使用態様では、吸収体とバックシートとの間に防水シートが介在された状態のままでアウターに装着することにより、防水シートの引裂線が吸収体と重なる位置に形成されていないため、引裂線を通じた漏れが防止できるとともに、前記引裂線が形成された防水シートの外面がバックシートで覆われているため、引裂線が直接アウターに接することがなくなり、使用中に引裂線から防水シートが裂けるのが防止できるようになる。また、非肌側を透液性とした補助吸収用の使用態様では、前記防水シートを引裂線から引き裂きながら、簡単に防水シートを引き抜くことができるとともに、吸収体と重なる部分の全ての防水シートが取り除かれるため、アウターに尿がスムーズに移行できるようになる。
【0014】
更に、上記請求項記載の発明では、少なくとも吸収体より長手方向の両端部において、前記防水シートがトップシート側に設けられた粘着剤層に剥離可能に接着されているため、簡易交換用としての使用態様においては、長手方向の端部から尿が漏れ出すことを防止でき、補助吸収用としての使用態様においては、防水シートが取り除かれた後、トップシート側に設けられた粘着剤層がバックシートに接着することによって、バックシートがトップシート及び吸収体から浮くことを防止でき、装着時のズレが生じ難くなる。
【0015】
請求項に係る本発明として、吸収性物品の長手方向端縁から所定の離間距離をあけた内側に前記粘着剤層が形成され、前記粘着剤層より吸収性物品の長手方向外側に、前記防水シートを前記トップシート側に接着しない摘み部が形成されている請求項記載の吸収性物品が提供される。
【0016】
上記請求項記載の発明では、吸収性物品の長手方向端縁から所定の離間距離をあけた内側に前記粘着剤層を形成し、この粘着剤層の外側に、防水シートをトップシート側に接着しない摘み部を形成しているため、補助吸収用として使用するのに防水シートを取り除く際、前記摘み部から防水シートを容易に摘むことができるようになる。
【0017】
請求項に係る本発明として、前記バックシートに前記防水シートを摘み出すための開口が設けられている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0018】
上記請求項記載の発明では、前記バックシートに前記防水シートを摘み出すための開口を設けることによって、この開口から防水シートを摘んで簡単に引き出すことができるようになる。
【発明の効果】
【0019】
以上詳説のとおり本発明によれば、簡易交換用としての使用態様においてアウターへの尿の漏れが防止できるとともに、補助吸収用としての使用態様においてアウターに尿がスムーズに移行できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】インナーパッド1の使用状態(アウター30への装着状態)を示す展開図である。
図2図1のII−II線矢視図である。
図3】本発明に係るインナーパッド1の一部破断展開図(簡易交換用としての使用態様)である。
図4図3のIV−IV線矢視図である。
図5】防水シート4の引き抜き要領を示すインナーパッド1の斜視図である。
図6】補助吸収用としての使用態様を示すインナーパッド1の展開図である。
図7図6のVII−VII線矢視図である。
図8】第2形態例に係るインナーパッド1Aの展開図である。
図9図8のIX−IX線矢視図である。
図10】第3形態例に係るインナーパッド1Bの展開図である。
図11】第4形態例に係るインナーパッド1Cの展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。なお、本発明における「長手方向」とは、インナーパッド1の前側と後側を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは長手方向と直交する方向(インナーパッド1の展開時の左右方向)を意味する。
【0022】
本発明に係るインナーパッド1は、図1及び図2に示されるように、使い捨ておむつ、失禁パンツ、おむつカバーなどのアウター30の内面に装着して使用されるものであり、具体的には尿取りパッドや失禁パッドなどとして知られるものである。
【0023】
前記アウター30(使い捨ておむつ)は、図1及び図2に示されるように、不織布などからなる透液性トップシート31と、バックシート32との間に、綿状パルプ等からなる吸収体33を介在させた構造から成る。より具体的には、有孔または無孔の不織布や孔開きプラスチックシート等からなり使用面側を覆う透液性トップシート31と、不織布からなりおむつの外面側を覆うとともに、おむつ両側部では後述のギャザーシート35とともにサイドフラップ部を構成するバックシート32と、前記透液性トップシート31とバックシート32との間に介在された、綿状パルプ等からなる、たとえば砂時計形状(または長方形状等)のある程度の剛性を有する吸収体33と、前記吸収体33とバックシート32との間に少なくとも吸収体33の全面積を覆うように配設されたポリエチレン等からなる防水フィルム34と、アウター30の両側部に肌側に起立する立体ギャザー36、36を形成するとともに、おむつ両側部では前記バックシート32とともにサイドフラップ部を構成するためのギャザーシート35とから主に構成されている。なお、前記吸収体33は、形状保持と透液性トップシート31を透過した体液の拡散性向上のためにクレープ紙や不織布等からなる被包シートによって囲繞されているのが好ましい。
【0024】
〔第1形態例〕
第1形態例に係るインナーパッド1は、図3及び図4に示されるように、綿状パルプ等からなり、たとえば略砂時計状のある程度の剛性を有するとともに、必要に応じてクレープ紙や不織布等からなる被包シートによって囲繞された吸収体2と、前記吸収体2の肌側(表面側)を覆うように配設された有孔または無孔の不織布や孔開きプラスチックシート等からなる透液性のトップシート3と、前記吸収体2の非肌側を覆うように配設されたポリエチレン等からなる不透液性の防水シート4と、前記防水シート4の非肌側(裏面側)を覆うように配設された有孔または無孔の不織布や孔開きプラスチックシート等からなる透液性のバックシート5とから主に構成され、好ましくは前記吸収体2と防水シート4との間に、親水性の不織布からなるセカンドシート6が配設されている。また、前記吸収体2の周囲の所定領域において、その吸収体2の外縁よりも外側に延出しているトップシート3、防水シート4、バックシート5及びセカンドシート6がホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合され、外周に吸収体2の存在しない外周フラップ部が形成されている。
【0025】
前記インナーパッド1は、アウター30の前側領域から後側領域に亘る製品長とされるとともに、アウター30の立体ギャザー36、36間に配置可能であって、アウター30の吸収体33より小さな寸法幅で形成されている。
【0026】
前記吸収体2は、たとえばフラッフ状パルプと高吸水性ポリマーとにより構成されている。前記吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。吸収体2を囲繞するクレープ紙を設ける場合には、結果的にトップシート3と吸収体2との間にクレープ紙が介在することになり、吸収性に優れる前記クレープ紙によって体液を速やかに拡散させるとともに、これら尿の逆戻りを防止するようになる。
【0027】
前記吸収体2は、図示例では平面形状を略長方形状として成形されたものを使用しているが、股下部で吸収体の幅寸法を狭めた略砂時計状として成形されたものを使用することにより、股間部への当たりを弱くし着用者にゴワ付き感を与えないようにしてもよい。この吸収体2は、形状保持とトップシート3を透過した体液の拡散性向上のために前記被包シートによって被包されているのが好ましい。
【0028】
前記吸収体2の肌側(上層側)を覆う透液性のトップシート3としては、液を透過する性質を有し、例えば、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維は特に限定されない。例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法、ポイントボンド法及びエアスルー法は嵩高で圧縮復元性(=ソフト性)が高い点で優れている。また、トップシート3は、1枚のシートから成るものであっても、2枚以上のシートを貼り合わせて得た積層シートから成るものであってもよい。透液性トップシート3に多数の透孔を形成した場合には、尿などが速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド−バイ−サイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維を好適に用いることもできる。
【0029】
前記吸収体2の非肌側(下層側)を覆う防水シート4は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂等からなるプラスチックフィルムや不織布の表面にプラスチックフィルムを設けたラミネート不織布、プラスチックフィルムに不織布等を重ねて接合した積層シートなどを例示することができるが、近年はムレ防止の点から透湿性を有するものが好適に用いられる。この遮水・透湿性シートは、たとえばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートであり、仮にシート厚が同じであれば無孔シートよりも剛性が低下するため、柔軟性の点で勝るものとなる。この他にも、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂または疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、プラスチックフィルムを用いずに液不透過性としたシートも用いることができる。前記防水シート4の外縁は、インナーパッド1の外縁とほぼ一致している。
【0030】
前記防水シート4の非肌側(下層側)を覆うバックシート5は、上記透液性のトップシート3と同様に、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維は特に限定されない。例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法、ポイントボンド法及びエアスルー法は嵩高で圧縮復元性(=ソフト性)が高い点で優れている。前記バックシート5は、インナーパッド1の最外面を構成する。前記バックシート5の外面側には、図示しないが、アウター30の内面とのズレ止めを図るための粘着剤層を設けるのが好ましい。前記バックシート5の外縁は、インナーパッド1の外縁とほぼ一致している。
【0031】
前記吸収体2と防水シート4との間に配設される親水性不織布からなるセカンドシート6は、無孔シートの他、多数の開孔が形成された多孔シートを用いることができる。前記親水性不織布としては、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることにより素材自体に親水性を有するものを用いるか、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維を親水化剤によって表面処理し親水性を付与した繊維を用いることにより親水性を有するようにしたものを好適に用いることができる。前記セカンドシート6の外縁は、インナーパッド1の外縁とほぼ一致しており、少なくとも吸収体2の外縁より外側に延在する部分が、好ましくは前記セカンドシート6の全面が前記トップシート3及び吸収体2とホットメルト接着剤などの接合手段によって接合されている。このセカンドシート6は、設けなくてもよいが、後段で詳述するように防水シート4を取り除いた際に、吸収体2をトップシート3とセカンドシート6との間に保持する、吸収体2からのパルプ繊維やポリマーのこぼれを防止するなどの観点から設けるのが望ましい。
【0032】
前記防水シート4及びバックシート5は、前記吸収体2より幅方向外側に延在する部分に前記インナーパッド1の両側縁に沿うとともに長手方向のほぼ全長に亘って連続的又は間欠的に設けられた、ホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シールなどからなる接合部7で肌側のシート材(セカンドシート6)に接合されている。前記接合部7は、各シート間が容易に剥離しないように強固に固着された構造用接合部である。すなわち、前記防水シート4は、前記接合部7のみで肌側に隣接して配置されたセカンドシート6に固着され、その他の部分では固着されていない。また、前記バックシート5も同様に、前記接合部7のみで肌側に隣接して配置された防水シート4に固着され、その他の部分では固着されていない。なお、ここでいう「固着され」とは、前記接合部7のような構造用接合部で剥離不能に強固に接合されたことを意味し、後段で詳述する粘着剤層9による剥離可能な接合は含まない。前記接合部7は、後段で詳述する引裂線8より外側の領域にのみ設けられ、引裂線8より内側の領域にはこれらのシートを固着した部分が設けられていない。
【0033】
本インナーパッド1では、前記防水シート4の吸収体2より幅方向外側に延在する部分に、長手方向に沿って引裂可能な引裂線8が形成されていることが特徴的である。前記引裂線8は、ミシン目、スリット、切り込み線、圧縮線などの公知の技術で形成される線状弱化領域であり、特に、タイ:カット=1〜5mm:2〜5mmのミシン目であることが好ましい。前記引裂線8は、防水シート4のみに形成され、他のシート材には形成されていない。前記引裂線8は、防水シート4が吸収体2の外縁よりも外側に延出した部分に形成され、前記吸収体2と重なる部分には形成されていない。前記引裂線8は、防水シート4の全長に亘って、すなわち防水シート4の前側端縁と後側端縁とを結ぶ長手方向に設けられている。前記引裂線8は、前記接合部7より幅方向内側に形成されている。
【0034】
以上の構成からなる本インナーパッド1では、防水シート4の吸収体2より幅方向外側に延在する部分に、長手方向に沿って引裂可能な引裂線8が形成されているため、インナーパッド1の使用態様に応じて、セカンドシート6とバックシート5との間に介在された防水シート4を引き抜きできるようにしている。
【0035】
具体的には、非肌側を不透液性とした簡易交換用の使用態様では、セカンドシート6とバックシート5との間に防水シート4が介在された状態のままでアウター30に装着する。このとき、防水シート4の引裂線8が吸収体2と重なる位置に形成されていないため、引裂線8を通じた漏れが防止できるとともに、引裂線8が形成された防水シート4の外面がバックシート5で覆われているため、引裂線8が直接アウター30に接することがなくなり、使用中に引裂線8から防水シート4が裂けるのが防止できるようになる。
【0036】
一方、非肌側を透液性とした補助吸収用の使用態様では、アウター30への装着前に防水シート4を取り除く作業を行う。防水シート4を取り除くには、図5に示されるように、バックシート5と防水シート4との間の長手方向一方側端縁に形成された開口部から手を突っ込み、他方側の防水シート4の端縁を摘むとともに、反対側の手で他方側のトップシート3及びセカンドシート6の積層部分の端縁を摘んで、両側の引裂線8、8で防水シート4を引き裂きながら、防水シート4を摘んだ手を引き抜くことによって、防水シート4を容易に取り除くことができる(図6及び図7)。なお、この方法に代えて、長手方向の一方側端縁において、それぞれの手で防水シート4の端縁とトップシート3及びセカンドシート6の積層部分の端縁とを摘み、両側の引裂線8を引き裂きながら防水シート4を引き抜くことによって防水シート4を取り除くようにしてもよい。
【0037】
また、補助吸収用の使用態様では、図6及び図7に示されるように、前記引裂線8が吸収体2の外縁より外側に形成されているため、吸収体2と重なる部分の全ての防水シート4が取り除かれるようになる。このため、インナーパッド1からアウター30への尿の移行がスムーズに行われる。
【0038】
前記防水シート4は、前記吸収体2より長手方向外側に延在する部分が、トップシート3側(防水シート4のトップシート3側に隣接するセカンドシート6)に設けられた粘着剤層9に剥離可能に接着されているのが好ましい。これにより、簡易交換用としての使用態様においては、前記粘着剤層9で堰き止められて長手方向の端部から尿が漏れ出すことを防止できる。一方、補助吸収用としての使用態様においては、防水シート4が取り除かれた後、セカンドシート6に設けられた粘着剤層9がバックシート5に接着することによって、バックシート5がセカンドシート6から浮くことを防止でき、装着時のズレが生じ難くなる。前記粘着剤層9は、両側の引裂線8、8間のほぼ全幅に亘って、インナーパッド1の幅方向に沿う線状又は帯状に形成されている。
【0039】
前記粘着剤層9を形成する粘着剤としては、たとえばスチレン系ポリマー、粘着付与剤、可塑剤のいずれかが主成分であるものが好適に使用される。前記スチレン系ポリマーとしては、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体等が挙げられるが、これらのうち1種のみを使用しても、二種以上のポリマーブレンドであってもよい。この中でも熱安定性が良好であるという点で、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体が好ましい。また、前記粘着付与剤および可塑剤としては、常温で固体のものを好ましく用いることができ、粘着付与剤ではたとえばC5系石油樹脂、C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、ロジン系石油樹脂、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等が挙げられ、前記可塑剤では例えば、リン酸トリフレシル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等のモノマー可塑剤の他、ビニル重合体やポリエステルのようなポリマー可塑剤が挙げられる。
【0040】
前記粘着剤層9は、インナーパッド1の長手方向端縁から所定の離間距離をあけた内側に形成され、その外側は前記防水シート4をセカンドシート6に接着しない摘み部10とするのが好ましい。この摘み部10は、防水シート4を引き抜く際に、防水シート4の長手方向端縁を手で摘むための部分である。前記摘み部10の大きさは、手で摘みやすい大きさであればよいが、インナーパッド1の長手方向端縁から長手方向の内側に向けて10〜15mmの長さで設けるのが好ましい。
【0041】
〔第2形態例〕
第2形態例に係るインナーパッド1Aは、図8及び図9に示されるように、バックシート5に防水シート4を摘み出すための開口11が設けられている点で、上記第1形態例に係るインナーパッド1と相違する。前記開口11は、バックシート5が厚み方向に貫通する部分であり、この開口11からはバックシート5の肌側に隣接して配置された防水シート4が臨んでいる。この開口11は、非肌側を透液性とした補助吸収用のインナーパッド1Aとして使用する際に、該開口11から臨む防水シート4を摘んで、両側の引裂線8で引き裂きながら引き出すためのものである。これによって、より簡単に防水シート4を引き抜くことができるようになる。
【0042】
前記開口11は、インナーパッド1Aの略中央部に設けるのが好ましい。前記開口11の大きさは、この開口11から防水シート4が容易に摘み出せる大きさであればよいが、30〜100mm、好ましくは50〜70mmとするのがよい。前記開口11の平面形状は、図示例では円形であるが、楕円形や多角形などで形成することもできる。
【0043】
〔第3形態例〕
第3形態例に係るインナーパッド1Bは、図10に示されるように、第2形態例に係るインナーパッド1Aと比較して、前記粘着剤層9の形成範囲が相違する。具体的には、本インナーパッド1Bでは、前記粘着剤層9は、パッド長手方向の端縁から所定の離間距離をあけた内側にパッド幅方向に沿って形成された粘着剤層9a、9aと、前記開口11の両側にそれぞれ、パッド長手方向に沿うとともに、前後の粘着剤層9a、9a間に亘って、1条又はパッド幅方向に離間する複数条の粘着剤層9b、9b…とから構成されている。前記粘着剤層9a、9bを設けることにより、吸収体2の非肌側に防水シート4が介在する簡易交換用の使用態様において、防水シート4とセカンドシート6とのズレや浮きが防止できるとともに、吸収体2の非肌側に防水シート4が介在しない補助吸収用の使用態様において、バックシート5とセカンドシート6とのズレや浮きが防止できるようになる。前記粘着剤層9は、開口11部分には設けないのが好ましい。
【0044】
なお、前記粘着剤層9a及び9bを設ける形態は、前記開口11が形成されない上記第1形態例に係るインナーパッド1にも同様に採用することが可能である。
【0045】
〔第4形態例〕
上記形態例では、吸収体2より幅方向外側に延在する両側部にそれぞれ、防水シート4及びバックシート5をセカンドシート6に固着する接合部7を設けるとともに、接合部7の内側に防水シート4の引裂線8を形成し、長手方向の端部には構造用接合部及び引裂線を設けないようにしていたが、第4形態例に係るインナーパッド1Cでは、図11に示されるように、バックシート5に防水シート4を摘み出すための開口11を設ける条件の下で、吸収体2より長手方向外側に延在する両端部にそれぞれ、防水シート4及びバックシート5をセカンドシート6に固着する第2接合部12を設けるとともに、この第2接合部の内側に両側の引裂線8、8の端部同士を繋ぐように防水シート4の第2引裂線13を設けてもよい。
【0046】
この場合、防水シート4を引き抜くには、前記開口11から防水シート4の中央部を摘んで、周囲の引裂線8及び第2引裂線13で引き裂きながら引き抜くようにする。
【0047】
本インナーパッド1Cでは、周囲が接合部7及び第2接合部12で接合されることにより、バックシート5のズレや浮きが防止できる。なお、図示しないが、適宜の形態でセカンドシート6の非肌側に粘着剤層9を設けることにより、セカンドシート6と防水シート4とのズレや浮きを防止するとともに、セカンドシート6とバックシート5とのズレや浮きを防止するのが好ましい。
【符号の説明】
【0048】
1…インナーパッド、2…吸収体、3…トップシート、4…防水シート、5…バックシート、6…セカンドシート、7…接合部、8…引裂線、9…粘着剤層、10…摘み部、11…開口、12…第2接合部、13…第2引裂線、30…アウター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11