(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
可搬型の膜ユニットを単独で使用する場合の前記膜ユニットの内部には、1次側に取水ラインを、2次側に濾過水ラインを有するMF又はUFの膜モジュールが収納され、前記濾過水ラインには、供給水ラインを接続して前記膜ユニットの飲料水を給水可能とし、かつ前記濾過水ラインに接続した逆洗水ラインを介して逆洗水槽に接続し、この逆洗水槽に接続した流出ラインを逆洗ポンプを介して前記濾過水ラインに接続して前記膜モジュールを逆洗する回路を構成し、また、先端にライン接続部を設けた濾過水供給ラインを前記流出ラインから分岐させ、消毒用次亜塩素酸を注入制御するための次亜注入設備を前記膜ユニットの内部に収納し、前記次亜注入設備には、第1次亜注入ラインと第2次亜注入ラインを接続し、前記第1次亜注入ラインは、前記濾過水ラインに接続して前記供給水ラインと逆洗時の前記膜モジュールに次亜塩素酸を注入し、前記第2次亜注入ラインは、先端に給水接続部を有する前記膜ユニット内に設けたRO膜ユニット用給水ラインに接続して前記次亜注入設備を兼用すると共に、一方、前記膜ユニットとは別ユニットである可搬型のRO膜ユニットの内部には、1次側に流入ラインを、2次側に処理水ラインを有するRO膜モジュールが収納され、前記流入ラインの先端にライン接続部を設け、前記処理水ラインの先端に給水接続部を設けて前記RO膜ユニット内の回路を構成し、前記膜ユニットと前記RO膜ユニットを接続して使用する場合には、前記膜ユニットの前記ライン接続部と前記RO膜ユニットの前記ライン接続部とを着脱自在に接続すると共に前記膜ユニットの前記給水接続部と前記RO膜ユニットの前記給水接続部とを着脱自在に接続し、前記流入ラインに濾過水を流入する際には、前記逆洗水槽に次亜塩素酸を注入しない濾過水で膜モジュールの逆洗を複数回行い、前記膜モジュールをすすぎ洗いした状態で、前記膜ユニット内の前記濾過水ラインに次亜塩素酸を注入せずに制御しながら前記逆洗水槽に次亜塩素酸が入らない濾過水を貯留した状態で前記流出ラインより前記RO膜ユニット内の前記流入ラインを経て濾過水を前記RO膜モジュールに流入させて前記処理水ラインより前記膜ユニット内の前記RO膜ユニット用給水ラインから飲料水を給水可能としたことを特徴とするRO膜ユニットを接続可能な可搬型浄水処理装置。
前記RO膜ユニットにはRO膜ユニット制御部を備え、前記膜ユニットと前記RO膜ユニットが接続される際に、前記RO膜ユニット制御部と前記膜ユニットの制御部とが電気的に接続された状態で認識される請求項1に記載のRO膜ユニットを接続可能な可搬型浄水処理装置。
前記逆洗水槽を前記RO膜ユニットの高圧ポンプ手前の前記流入ラインに流入させるバッファタンクとして兼用した請求項1又は2に記載のRO膜ユニットを接続可能な可搬型浄水処理装置。
前記膜ユニットの上部位置に前記逆洗水槽を配置させ、この逆洗水槽から流出する逆洗水を前記高圧ポンプまでに自然流下させた請求項3に記載のRO膜ユニットを接続可能な可搬型浄水処理装置。
前記取水ラインに接続した長尺状の取水ポンプに、当該ポンプを縦置き状態又は横置き状態に兼用できる保持部材を設けた請求項1乃至4の何れか1項に記載のRO膜ユニットを接続可能な可搬型浄水処理装置。
前記次亜注入設備から供給される次亜塩素酸を次亜注入部に設けた配管内に突出させたパイプを介して注入するようにした請求項1乃至5の何れか1項に記載のRO膜ユニットを接続可能な可搬型浄水処理装置。
前記膜ユニットと前記RO膜ユニットを同時に運転した場合でも、AC100Vで電圧供給できるようにした請求項1乃至7の何れか1項に記載のRO膜ユニットを接続可能な可搬型浄水処理装置。
少なくとも搬送型の膜ユニットは、建屋等の出入り口に搬入、搬出可能な小型のフレーム内に収納されている請求項1乃至8の何れか1項に記載のRO膜ユニットを接続可能な可搬型浄水処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の移動式浄水装置では、MF膜又はUF膜を用いた濾過膜モジュール等の前処理フィルタを備えていないため、原水をRO膜モジュールのみで濾過処理することになるので、本来、RO膜モジュールの濾過対象ではない懸濁物質や細菌等をも濾過することになり、RO膜表面の目詰まりが発生し易くなる。さらに、通常のRO膜装置が具備しているRO膜モジュールの汚れによる濾過能力の低下を回復させる手段を具備せず、汚れたRO膜モジュールを交換することを前提として装置を構成しているので、中長期的に安定して連続運転をすることができない。また、頻繁にRO膜の交換が必要となるので、運転コストの上昇に繋がる。さらに、RO膜で逆浸透膜処理された透過水に殺菌剤を添加する機構が設けられていないので、給水後、飲み水として衛生上の問題が発生するおそれもある。
【0011】
特許文献2に記載の緊急用浄化装置は、MF膜フィルタの逆洗機構を備えていないので、MF膜フィルタが目詰まりして濾過能力が低下した場合にはフィルタの交換が必要となり、中長期的に安定して連続運転をすることができない。また、RO膜モジュールを備えていないため、溶解性有機物、ウイルス、イオン物質を除去することができないので、原水の水質によっては、給水する浄水が飲用に適さない場合もある。
【0012】
特許文献3に記載の移動式浄水設備は、移動式浄水装置の構成が複雑で大規模であるため、設備規模がトラックに搭載する必要があるほどの大きさとなるので、状況によっては、移動式浄水設備が現地に到達することができないおそれがある。
【0013】
特許文献4に記載の飲料水製造用水処理システムは、MF膜又はUF膜を用いて構成した前処理フィルタをRO膜モジュールの高圧濃縮水で逆洗する構成であるので、前処理フィルタ内の微生物を浸透圧ショックにより死滅させることはできるが、フミン質や微生物由来のタンパク質等の有機物を分解、除去することができないので、前処理フィルタの目詰まりが早期に進行して濾過性能が低下するバイオファウリングの問題が生じる。このため、随時に前処理フィルタの交換が必要となるため、中長期的に安定して連続運転するには適さず、また、前処理フィルタの交換により運転コストの上昇を招く。
【0014】
特許文献5に記載の浄水装置は、RO膜の表面に目詰まりが生じて原水の浄化機能が低下した場合には、RO膜の表面を自動的に洗浄しRO膜の浄化機能を回復させることができるが、前処理フィルタとして使用するMF膜又はUF膜を用いた濾過膜モジュールを逆洗する機構は備えていないため、前処理フィルタの濾過性能が低下するので、中長期的に安定して連続使用するには適していない。また、頻繁に前処理フィルタの交換が必要となるので、運転コストの上昇を招く。
【0015】
そこで、本発明は上記問題点を解決するために開発されたものであり、その目的とするところは、原水の水質状況に応じ、濾過膜モジュールのみを使用する運転と、濾過膜モジュールとRO膜モジュールの双方を使用する運転とを選択可能に構成され、不必要な運転コストの発生を防止することができるとともに、中長期的に安定した連続運転が可能であることに加え、小型、軽量で運搬及び設置場所の選定が容易であり、飲用に適した安全な水を給水することができる可搬型浄水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、可搬型の膜ユニットを単独で使用する場合の膜ユニットの内部には、1次側に取水ラインを、2次側に濾過水ラインを有するMF又はUFの膜モジュールが収納され、濾過水ラインには、供給水ラインを接続して膜ユニットの飲料水を給水可能とし、かつ濾過水ラインに接続した逆洗水ラインを介して逆洗水槽に接続し、この逆洗水槽に接続した流出ラインを逆洗ポンプを介して濾過水ラインに接続して膜モジュールを逆洗する回路を構成し、また、先端にライン接続部を設けた濾過水供給ラインを流出ラインから分岐させ、消毒用次亜塩素酸を注入制御するための次亜注入設備を膜ユニットの内部に収納し、次亜注入設備には、第1次亜注入ラインと第2次亜注入ラインを接続し、第1次亜注入ラインは、濾過水ラインに接続して供給水ラインと逆洗時の膜モジュールに次亜塩素酸を注入し、第2次亜注入ラインは、先端に給水接続部を有する膜ユニット内に設けたRO膜ユニット用給水ラインに接続して次亜注入設備を兼用すると共に、一方、膜ユニットとは別ユニットである可搬型のRO膜ユニットの内部には、1次側に流入ラインを、2次側に処理水ラインを有するRO膜モジュールが収納され、流入ラインの先端にライン接続部を設け、処理水ラインの先端に給水接続部を設けてRO膜ユニット内の回路を構成し、膜ユニットとRO膜ユニットを接続して使用する場合には、膜ユニットのライン接続部とRO膜ユニットのライン接続部とを着脱自在に接続すると共に膜ユニットの給水接続部とRO膜ユニットの給水接続部とを着脱自在に接続し、流入ラインに濾過水を流入する際には、逆洗水槽に次亜塩素酸を注入しない濾過水で膜モジュールの逆洗を複数回行い、膜モジュールをすすぎ洗いした状態で、膜ユニット内の濾過水ラインに次亜塩素酸を注入せずに制御しながら逆洗水槽に次亜塩素酸が入らない濾過水を貯留した状態で流出ラインよりRO膜ユニット内の前記流入ライン
を経て濾過水をRO膜モジュールに流入させて処理水ラインより膜ユニット内のRO膜ユニット用給水ラインから飲料水を給水可能としたことを特徴とするRO膜ユニットを接続可能な可搬型浄水処理装置である。
【0018】
請求項
2に係る発明は、RO膜ユニットにはRO膜ユニット制御部を備え、膜ユニットとRO膜ユニットが接続される際に、RO膜ユニット制御部と膜ユニットの制御部とが電気的に接続された状態で認識されるRO膜ユニットを接続可能な可搬型浄水処理装置である。
【0020】
請求項
3に係る発明は、逆洗水槽をRO膜ユニットの高圧ポンプ手前の流入ラインに流入させるバッファタンクとして兼用したRO膜ユニットを接続可能な可搬型浄水処理装置である。
【0021】
請求項
4に係る発明は、膜ユニットの上部位置に逆洗水槽を配置させ、この逆洗水槽から流出する逆洗水を高圧ポンプまでに自然流下させたRO膜ユニットを接続可能な可搬型浄水処理装置である。
【0022】
請求項
5に係る発明は、取水ラインに接続した長尺状の取水ポンプに、ポンプを縦置き状態又は横置き状態に兼用できる保持部材を設けたRO膜ユニットを接続可能な可搬型浄水処理装置である。
【0024】
請求項
6に係る発明は、次亜注入設備から供給される次亜
を次亜注入部に設けた配管内に突出させたパイプを介して注入するようにしたRO膜ユニットを接続可能な可搬型浄水処理装置である。
【0025】
請求項
7に係る発明は、逆洗水槽の流出部には、空気吸込み防止用の吸込み部構造を設けたRO膜ユニットを接続可能な可搬型浄水処理装置である。
【0026】
請求項
8に係る発明は、膜ユニットとRO膜ユニットを同時に運転した場合でも、AC100Vで電圧供給できるようにしたRO膜ユニットを接続可能な可搬型浄水処理装置である。
【0027】
請求項
9に係る発明は、少なくとも搬送型の膜ユニットは、建屋等の出入り口に搬入、搬出可能な小型のフレーム内に収納されているRO膜ユニットを接続可能な可搬型浄水処理装置である。
【発明の効果】
【0028】
請求項1に記載の発明によると、膜ユニット単独で使用する場合であっても、膜ユニットにRO膜ユニットを接続して使用する場合であっても、次亜注入した安全な飲料水を給水することができるとともに、膜ユニットの濾過モジュールを次亜注入した逆洗水で逆洗して効果的に濾過能力を回復させることが可能な浄水処理装置として使用することができる。このため、原水の水質に応じて、膜ユニット
単独の使用と、膜ユニットにRO膜ユニットを接続した使用を選択することができる。
特に、膜ユニット単独又はRO膜ユニットを接続した場合であっても、1個の次亜注入設備を兼用して用いることができるので、飲料水として給水可能な小型で可搬な装置を提供することができる。
【0029】
膜モジュールによる濾過処理で足りる場合には、膜ユニットのみで濾過処理
してから次亜を注入して給水するとともに、膜ユニットで濾過処理した後に逆浸透膜処理が必要な場合には、膜ユニットにRO膜ユニットを接続し、膜ユニットで濾過処理した濾過水をRO膜ユニットで逆浸透膜処理し
てから膜ユニットに返送した後にRO膜ユニット用給水ラインに次亜注入を行うので、規定の遊離残留塩素濃度を保持した安全な飲料水を給水するので、原水の水質状況に応じて適切に浄化された安全な飲料水を給水することができる。
逆洗水槽の貯留工程において次亜注入して逆洗水槽に貯留した逆洗水を使用し、膜ユニットの膜モジュールを逆洗するため、単に逆洗水の水圧により膜表面に付着した物を剥離除去するだけでなく、膜に強固に付着した有機物をその酸化力により酸化分解して膜表面から剥離し易くするので、逆洗水として濾過水を用いた場合よりも、大きな膜モジュール洗浄回復効果を得ることができる。また、逆洗水槽(バッファタンク)に次亜が注入された水が貯留されることで、逆洗水槽にカビ、藻類などの繁殖を抑えられる。また、RO膜ユニットで逆浸透膜処理してから膜ユニットに返送する処理ラインの給水工程で次亜注入を行うので、規定の遊離残留塩素濃度を保持した安全な飲料水を給水することができる。
膜ユニットにRO膜ユニットを接続した際には、RO膜ユニットには次亜を注入しない濾過水を供給すると共に、膜ユニットの膜モジュールを次亜注入した逆洗水で逆洗した後に、次亜含まない清浄水で膜モジュール内を複数回すすぎ洗いして残留塩素を除去した後、RO膜ユニットに次亜を注入しない濾過水を供給するため、RO膜モジュールに残留塩素を含む濾過水を供給することがないので、RO膜モジュールに収納された逆浸透膜を劣化させるおそれがなく、中長期的に安定して給水を行うことができる。
【0030】
請求項
2に記載の発明によると、膜ユニットにRO膜ユニットを接続する際に、膜ユニットとRO膜ユニットの電源回路及び信号回路を接続すると、膜ユニットの制御部が膜ユニットとROユニットとが接続されたことを電気的に認識するとともに電源回路や信号回路が導通し、膜ユニットの制御部とRO膜ユニットのRO膜ユニット制御部が連携して膜ユニットとRO膜ユニットを同時に運転、制御することができるようになるので、膜ユニットにRO膜ユニットを接続する際に、制御部の設定作業や、膜ユニットとRO膜ユニットとの間の電源回路及び信号回路の接続作業が容易であり、操作性に優れる浄水処理装置を得ることができる。
【0033】
請求項
3に記載の発明によると、逆洗水槽をバッファタンクと兼用することにより、バッファタンクを設ける必要がなくなるため、タンクの設置数を削減することができ、もって膜ユニットの小型化を図ることができる。
【0034】
請求項
4に記載の発明によると、逆洗水槽を膜ユニットの上部位置に配置することにより、逆洗水槽から自然流下により逆洗水をRO膜ユニットの高圧ポンプに供給することができるので、逆洗水槽をバッファタンクと兼用することが可能となり、バッファタンクを設ける必要がなくなるため、タンクの設置数を削減することができ、もって膜ユニットの小型化を図ることができる。
【0035】
請求項
5の記載の発明によると、保持部材を用いることにより取水ポンプの転倒を防止して安定した状態で取水源に配置することができるとともに、取水源の水深が取水ポンプの長さよりも深い場合には縦置きして、取水源の水深が取水ポンプの長さよりも浅い場合には横置きして取水することができるので、取水源を選ぶことなく原水を取水して浄化することができる。
【0037】
請求項
6に記載の発明によると、配管内に突出させたパイプを介して次亜注入を行うため、配管内を流れる浄水に直接かつ一様に次亜を混合させることができるので、規定の遊離残留塩素濃度を保持した安全な飲料水を給水することができる。
【0038】
請求項
7に記載の発明によると、逆洗水槽の流出部の吸込み部構造が、逆洗水槽からの逆洗水が流出する際に流出部に発生する逆洗水の回転流を抑制するため、逆洗水の回転流に伴って発生する逆洗ポンプへの空気の吸込みを防止することができるので、逆洗水槽の底部付近まで貯留した逆洗水を使用することが可能となり、所要の逆洗水量を確保するために必要な逆洗水槽の容量を小さくすることができ、もって膜ユニットの小型化を図ることができる。
【0039】
請求項
8に係る発明によると、電源として家庭用AC100Vコンセントが使用できるので、装置の設置に伴って新たに配線工事を行う必要がない。また、市販の小型発電機を使用することにより、電源がない場所でも使用することができる。
【0040】
請求項
9に係る発明によると、一般的な幅700mmの人の出入りができるだけの片扉等から膜ユニットを搬入することが可能であるため、膜ユニットを設置する建屋等の制約を受けず、なおかつ山奥等の重機等を使用することができない設置個所にも、人力等で搬入して設置することができるので実用性に優れる浄水処理装置を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明におけるRO膜ユニットを接続可能な可搬型浄水処理装置の実施形態の一例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本実施形態におけるRO膜ユニットを接続可能な可搬型浄水処理装置1の膜ユニット2の模式図であり、
図2は本実施形態におけるRO膜ユニットを接続可能な可搬型の浄水処理装置1において膜ユニット2にRO膜ユニット3を接続した状態の模式図である。
【0043】
先ず、
図1により膜ユニット2について説明する。
図1において、膜ユニット2は、1次側に取水ライン11を、2次側に濾過水ライン12を有するMF(精密濾過膜)又はUF(限外濾過膜)のフィルタを備えた膜モジュール13と、膜モジュール13が濾過処理した濾過水を濾過水ライン12に接続した逆洗水ライン14を介して流入させて貯留する逆洗水槽15と、この逆洗水槽15に貯留した濾過水を逆洗ポンプ16を介して膜モジュール13に逆洗洗浄用の逆洗水として流出させる流出ライン17と、膜モジュール13が濾過処理した濾過水を直接給水するために濾過水ライン12に設けた膜ユニット用の供給水ライン18と、逆洗水槽15に貯留する濾過水に逆洗用次亜を注入するとともに、この膜ユニット2を単独で運転し濾過水を給水する場合に、濾過水に消毒用次亜
塩素酸(以下、「次亜」という。)を注入する次亜注入設備19と、逆洗水槽15に貯留した濾過水をRO膜ユニットに供給する濾過水供給ライン20と、RO膜ユニット3から返送されるRO膜処理水を給水するためのRO膜ユニット用給水ライン21と膜ユニット2とROユニット3の運転を制御するための制御部22と、取水ポンプ23を備えている。また、
図1に示すように、取水ポンプ23を除いた各部は、フレーム24内に収納されている。
【0044】
取水ライン11は、取水ポンプ接続口26と膜モジュール13の1次側を連結する管路であり、取水ポンプ23が取水した原水を膜モジュール13の1次側に供給する。取水ライン11の膜モジュール13の前には、プレフィルタ装置27を設けている。このプレフィルタ装置27は、原水が膜モジュール13に流入するに先立って、原水に含まれるゴミ(土、砂、その他夾雑物)を除去するストレーナであり、本例では、目開き寸法200μmのディスク型ストレーナを使用している。また、プレフィルタ装置27には、図示ない差圧測定装置が装備されており、目詰まり異常を検知することができる。
【0045】
濾過水ライン12は、膜モジュール13の2次側に取り付けられ、膜モジュール13が濾過処理した濾過水を膜モジュール13の外部に流出させるための管路である。
【0046】
膜モジュール13は、MF又はUFのフィルタ(濾過膜)を収納しており、原水に含まれる一般細菌、病原菌、懸濁物質(SS)などを濾過除去する。本例では、公称孔径0.1μmで膜面積23m
2のMF膜フィルタを使用している。膜モジュール13には、内部に収納するMF又はUFのフィルタを逆洗洗浄する際に、逆洗水を膜モジュール13の外部に排水するための逆洗水排水ライン28が設けられており、膜モジュール13から排水された逆洗水を逆洗水排水ライン28を介して膜ユニット2の外部に排水することができる。
また、本例では、長尺状の膜モジュール13を縦方向にフレーム24内に収納することにより、膜洗浄方法として膜モジュール13下部からエアを送り、膜モジュール13内の膜表面の懸濁物質を剥離させる洗浄方法を実施することができるようにしているため、
図2には図示されていないが、逆洗時の膜モジュール13に空気を供給してエアスクラビング洗浄するコンプレッサーと空気供給管を設けている。膜モジュール13に収納されたMF又はUFのフィルタをより効果的に逆洗するためには、これらのエアスクラビング用の装置を設置することが好ましい。なお、膜モジュール13にも、図示ない差圧測定装置が装備されており、目詰まり異常を検知することができる。
【0047】
逆洗水ライン14は、濾過水ライン12から膜モジュール13が濾過処理した濾過水を取得し、逆洗水槽15に供給するための管路である。
【0048】
逆洗水槽15は、逆洗水ライン14を介して供給される濾過水を貯留する容器であり、膜ユニット2の上部位置に配置されている。逆洗水槽は、内部に濾過水を貯留し、膜モジュール13に収納されたMF又はUFのフィルタを逆洗洗浄する際にその貯留した濾過水を逆洗水として供給する役割と、膜ユニット2にRO膜ユニット3を接続した場合には、RO膜ユニット3の後述する高圧ポンプ54に濾過水を自然流下で供給するバッファタンクとしての役割も有している。本例では、逆洗水槽15はポリエチレン樹脂製であり、容量60Lの角型に成形されている。
【0049】
この逆洗水槽15の内部には、図示しない水位計が設けられており、この水位計によって、逆洗水槽15内が逆洗水で満水になったか、また逆洗水槽が空になったかを検知している。なお、逆洗水槽15の流出部に設けた空気吸込み防止用の吸込み部構造については後述する。
【0050】
逆洗ポンプ16は、逆洗水槽15内に貯留した逆洗水を流出ライン17及び濾過水ライン12を介して膜モジュール13の2次側に圧送し、膜モジュール13に収納されMF又はUFのフィルタを逆洗洗浄するためのポンプであり、逆洗水槽15と濾過水ライン12を連接する流出ライン17の途中に設けられている。本例では、逆洗ポンプ16として、ステンレス製の横軸渦巻ポンプ(0.4kW、32A)を使用している。
【0051】
供給水ライン18は、膜ユニット2を単独で運転する際に、膜モジュール13で濾過処理した濾過水を外部に直接給水するため、濾過水ライン12に続いて設けた膜ユニット2用の給水管である。
【0052】
次亜注入設備19は、濾過水ライン12
とRO膜ユニット用給水ライン21に次亜を注入する装置であり、図示しない次亜タンクと次亜注入ポンプ、並びに
第1次亜注入ライン30と
第2次亜注入ライン31より構成される。次亜タンク内に貯留された
次亜は、
第1次亜注入ライン30を介して濾過水ライン12に設けた次亜注入部32から濾過水ライン12内を流れる濾過水に注入され、また、
第2次亜注入ライン31を介してRO膜ユニット用給水ライン21に設けた次亜注入部33からRO膜ユニット用給水ライン21内を流れる処理水に注入される。なお、次亜注入部32、33の細部については後述する。
【0053】
本例では、次亜注入設備19により次亜塩素酸ナトリウムを注入しており、次亜タンクはポリエチレン樹脂製で、容量25Lの角型に成形されている。また、次亜注入ポンプは、ダイヤフラム式定量ポンプ(φ4×20W)を使用し、
第1次亜注入ライン30と
第2次亜注入ライン31に注入することができる。次亜注入設備19から注入する消毒剤は、本例の次亜塩素酸ナトリウムに限定するものではなく、次亜塩素酸ナトリウムと同様に、水道消毒用の塩素剤である次亜塩素酸カルシウム又は液化塩素を使用することもできる。
【0054】
濾過水供給ライン20は、膜ユニット2にRO膜ユニット3を接続して運転する際に、膜ユニット2が濾過処理した濾過水をRO膜ユニット3に供給するための管路であり、逆洗ポンプ16の上部で流出ライン17から分岐している。濾過水供給ライン20の先端部には、RO膜ユニット3の後述する流入ライン51と接続するためのライン接続部35aを備えている。
【0055】
RO膜ユニット用給水ライン21は、RO膜ユニット3で逆浸透膜処理されてから膜ユニット2に返送された処理水に、次亜注入設備19から次亜注入した後に膜ユニット2の外部に給水するための管路である。膜ユニット2にRO膜ユニット用給水ライン21を設けたことにより、RO膜ユニット3で逆浸透膜処理した処理水に対しても、膜ユニット2の次亜注入設備19を用いて次亜注入することができる。RO膜ユニット用給水ライン21の先端部には、RO膜ユニット3の後述する処理水ラインと接続するための給水接続部36aを備えている。
【0056】
制御部22は後述するRO膜ユニット制御部22aと連携し、膜ユニット2とRO膜ユニット3の運転を制御し、可搬型浄水処理装置1を自動運転する装置である。制御部22及びRO膜ユニット制御部22aは、PLC(Programmable Logic Controller)を使用してシーケンス制御を行っており、予め設定した時間間隔毎に膜モジュール13の逆洗洗浄を行い、その濾過処理能力を回復させている。
【0057】
これに加え、制御部22は、逆洗水槽15に設置した水位計からの信号に基づき、取水ポンプ23の作動、濾過水(逆洗水)の逆洗水槽15への貯留、逆洗ポンプ16の作動、次亜注入設備19の次亜注入ポンプの作動を制御しており、これらの制御に伴って膜ユニット2内のラインに設置した電動バルブの開閉操作を行っている。
【0058】
また、制御部22は、
図3に示すように、膜ユニット2の上部位置で逆洗水槽15の正面側に配置され、その正面に可搬型浄水処理装置1の操作・表示部22bを設けているので、膜ユニット2を縦型に構成したことと併せて、装置の操作及び表示部の確認を容易に行うことができる。
【0059】
取水ポンプ23は、取水源37から原水37aを取水して膜ユニット2に供給する長尺状のポンプであり、
図1に示すように、取水源37の原水中に完全に水没させた状態で使用する。取水ポンプ23と膜ユニット2の取水ポンプ接続口26との間は、取水ホース23aにより連結されている。なお、取水ポンプ23の詳細については後述する。
【0060】
本例では、フレーム24はステンレス鋼(SUS)の形材を組み合わせて製作されており、フレームの内部に各部を組み込んだ状態の外観は
図3に示すとおりとなり、フレーム24の底部には搬送手段としてキャスター44を設けている。
【0061】
以上のように構成された膜ユニット2は、幅約650mm、奥行き約800mm、高さ約1750mmの縦型のフレーム24に収納された状態で小型に構成されるとともに、運搬時の質量が約185kgと軽量であるため、建屋に一般的に使用される幅700mmの片扉から人力による搬入が可能であるだけでなく、狭小スペースでも移動や収納を容易であり、また、限られたスペースでも複数台を設置することができる。
【0062】
次いで、
図2によりRO膜ユニット3について説明する。
図2において、RO膜ユニット3は、1次側に流入ライン51を、2次側に処理水ライン52を有するRO膜(逆浸透膜)のフィルタを備えたRO膜モジュール53と、膜ユニット2から流入ライン51を介して供給された濾過水を加圧してRO膜モジュール53に供給する高圧ポンプ54と、RO膜モジュール53が逆浸透処理した透過水の導伝導率を計測する導電率計55と、膜ユニット2の制御部22と連携してRO膜ユニット3の動作を制御するRO膜ユニット制御部22aを備え、フレーム56内に収納されている。
【0063】
流入ライン51は、膜ユニット2から供給された濾過水をRO膜モジュール53の1次側に供給する管路であり、その先端部にはライン接続部35bを備え、膜ユニット2の濾過水供給ライン20の先端部に設けたライン接続部35aと接続可能となっている。
【0064】
処理水ライン52は、RO膜モジュール53の2次側に取付けられ、RO膜モジュール53が逆浸透膜処理した透過水(処理水)を膜ユニット2に返送するための管路であり、その先端部には給水接続部36bを備え、膜ユニット2のRO膜ユニット用給水ライン21の先端部に設けた給水接続部36aと接続可能となっている。
【0065】
RO膜モジュール53は、逆浸透膜(RO膜)のフィルタを内蔵しており、膜ユニット2のMF又はUFのフィルタでは除去することができない細菌、ウイルス、有害な有機物等を除去する。本例では、RO膜モジュール53は、芳香族ポリアミド系複合逆浸透膜を用いている。
【0066】
また、RO膜モジュール53には、内部に収納するRO膜で膜ユニット2から供給された濾過水を逆浸透膜処理する際に生じる濃縮水をRO膜モジュール53の外部に排水するための濃縮水排水ライン57が設けられており、RO膜モジュール53での逆浸透膜処理で生じた濃縮水を濃縮水排水ライン57を介してRO膜ユニット3の外部に排水することができる。RO膜モジュール53にも図示ない差圧測定装置が装備されており、目詰まり異常を検知することができる。
【0067】
高圧ポンプ54は、流入ライン51の途中に設けられており、膜ユニット2から供給される濾過水を加圧してRO膜モジュール53に供給するポンプである。本例では、高圧ポンプ54として、ベーンポンプを使用し、濾過水を1.0MPaに加圧してRO膜モジュール53に供給している。
【0068】
導電率計55は、RO膜モジュール53直後の処理水ライン53に設けられており、RO膜モジュール53が逆浸透膜処理した透過水(処理水)の導電率を計測している。RO膜モジュール53で逆浸透膜処理を開始した直後には、RO膜モジュール53の内部に残留していた水が流出してくるが、この導電率計55で透過水の導電率を計測することにより、RO膜モジュール53内に残留していた水の流出が終了し、新たにRO膜モジュール53で逆浸透処理された濾過水の透過が開始されたことを確認することができる。
【0069】
このRO膜モジュール53が作動し始めた直後に流出してくる水をRO膜ユニット3の外部に排水するため、処理水ライン52と濃縮水排水ライン57の間を排水ライン58で連結するとともに、この排水ラインに58に電動バルブ59を設け、導電率計55の計測値が規定値以下となるまで電動バルブ59を開放状態にして、RO膜モジュール53の作動し開始直後に流出してくる水を濃縮水排水ライン57に排水するようにしている。
【0070】
RO膜ユニット制御部22aは、膜ユニット2の制御部22と連携して高圧ポンプ54の作動を制御している。高圧ポンプ54を制御するにあたり、RO膜ユニット制御部22aは、膜ユニット2の制御部22からの信号と導電率計55の計測値とに基づいて、電動バルブ59、60の開閉操作を行っている。
【0071】
本例では、フレーム56は、膜ユニット2のフレーム24と同様にSUSの形材を組み合わせて製作されており、フレーム56の内部に各部を組み込んだ状態の外観斜視図は
図4に示すとおりとなる。
【0072】
前述したように、膜ユニット2とRO膜ユニット3とは、膜ユニット2の濾過水供給ライン20の先端部に設けたライン接続部35aとRO膜ユニット3の流入ライン51の先端部に設けたライン接続部35bとから構成されるライン接続部35、並びに膜ユニット2のRO膜ユニット用給水
ライン21の先端部に設けた給水接続部36aとRO膜ユニット3の処理水ライン52の先端部に設けた給水接続部36bとから構成される給水接続部36を介して着脱自在に接続される。
【0073】
ライン接続部35及び給水接続部36は、膜ユニット2とRO膜ユニット3間のライン系統と電気系統を接続・分離するための部位であり、図示しないホース系統接続部と電気系統接続部とを備えている。ホース系統接続部により、膜ユニット2の濾過水供給ライン20とRO膜ユニット3の流入水ライン51、並びに膜ユニット2のRO膜ユニット用給水ライン21とRO膜ユニット3の処理水ライン52を水密状態で接続し、また分離することができる。電気系統接続部により、膜ユニット2とRO膜ユニット3間の電源回路及び信号回路を接続すると、膜ユニット2の制御部22は、RO膜ユニット3のRO膜ユニット制御部22aと接続されたことを認識し、膜ユニット2とRO膜ユニット3を連携させて運転することが可能となる。
【0074】
なお、本例では、膜ユニット2の取水ライン11、濾過水ライン12、逆洗水ライン14、流出ライン17、供給水ライン18、濾過水供給ライン20、RO膜ユニット用給水ライン21、逆洗水排水ライン28、並びにRO膜ユニット3の流入ライン51、処理水ライン52、濃縮水排水ライン57、排水ライン58は、内径25AのHIVP管(耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管)を使用して構成している。
【0075】
次に、逆洗水槽15の流出部に設けた空気吸込み防止用の吸込み部構造、次亜注入設備19の次亜注入部32、33の細部構造、取水ポンプ23の詳細について説明する。
【0076】
先ずは、逆洗水槽15の流出部61に設けた空気吸込み防止用の吸込み部構造について説明する。
図5(a)は、逆洗水槽15の流出部61に空気吸込み防止用の吸込み部構造を設けない場合に、逆洗水槽15から逆洗水62が流出している状況を模式的に示す図である。なお、逆洗水槽15から逆洗水62が流出する状態は、膜モジュール13を逆洗する際だけではなく、RO膜ユニット3に濾過水を供給する際にも発生する。膜モジュール13の逆洗や、RO膜ユニット3へ供給するため、逆洗水槽15内に貯留されている逆洗水62を流出部61から取り出すと、流出部61内で逆洗水62に回転流63が生じる。このとき、逆洗水槽15内の逆洗水62にも回転が生じるため、水面64は漏斗状に窪み、逆洗水62の流出が進んで水面64が降下すると、遂には、矢印65で示すように流出部61への空気の吸込みが発生する。空気が逆洗ポンプ16やRO膜ユニット3の高圧ポンプ54に吸い込まれると、逆洗ポンプ16や高圧ポンプ54の故障の原因となるため、逆洗水槽15に空気吸込み防止用の吸込み部構造を設けない場合には、空気の吸込みが発生しない段階で逆洗水の取出しを停止する必要があるので、所要の逆洗水量を確保するため、また、RO膜ユニット3への供給量を確保するために、逆洗水槽15を大型化する必要がある。
【0077】
このため、逆洗水槽15に貯留した逆洗水を逆洗ポンプ16で圧送する場合やRO膜ユニット3へ供給する場合に、流出部61内で逆洗水に発生する回転流を抑制し、逆洗水槽15の底部66まで逆洗水の取出しを可能とするため、流出部61に空気吸込み防止用の吸込み部構造を設け、所要の逆洗水量を確保しつつ、逆洗水槽15の小型化を図った。
【0078】
逆洗水槽15には上部と底部にそれぞれ図示しない水位計が設けられており、これらの水位計が逆洗水槽15内の満水状態と空状態を検知し、制御部22に信号を送信している。この水位計は、長さの異なる4本の水位検知用の金属電極とコモン用の金属電極1本の計5本の金属電極を備えており、水位検知用とコモン用の電極が2本とも逆洗水に接した状態になると水位検知用とコモン用の電極間を電流が導通する構造になっている。このため、逆洗水槽15の上部に配した水位計が導通した場合には逆洗水槽15が満水状態になったと判断し、逆洗水ライン17を介しての逆洗水の供給を停止し、逆洗水槽15の底部66に配した水位計の導通が切れた場合には逆洗水槽15が空状態になったと判断し、逆洗ポンプ16の作動を停止している。
【0079】
本発明においては、
図5(b)に示すように、逆洗水槽15の底部66側に配置する水位計の金属電極67、68を流出部61内に挿入し、空気吸込み防止用の吸込み部構造としている。このように流出部61内に電極67、68を挿入することにより、逆洗水の流下速度を抑制することが可能となるとともに、電極67、68が整流板としての効果も生じるため、流出部61における回転流の発生を抑制し、逆洗ポンプ16やRO膜ユニット3の高圧ポンプ54への空気の吸込みを防止することができる。この結果、所要の逆洗水量を確保しつつ、逆洗水槽15を小型化することが可能となった。
【0080】
また、
図5(b)のA部を拡大した
図6に示すように、短い方の電極67の先端部には合成樹脂等の絶縁材料で製作された保護カバー69を取り付け、電極67が直接に流出部61に管壁61aに接触することにより発生する可能性がある検出誤差を防止している。逆洗水槽15の底部に配置した水位計では、短い方の電極67が逆洗水62の水面から露出すると電極67、68間が導通しなくなるので、この信号を送信されている制御部22が、逆洗水槽15内に貯留した逆洗水62の水位が下限界に達したと判断する。ところが、電極67と管壁61aとが直接接触し得る状態にあると、管壁61aの表面を濡らす水(逆洗水)の影響により電極67と電極68を導通させる可能性があるため、この可能性を排除するため、電極67の先端部に保護カバー69を取付け、電極67が流出部61の管壁61aに直接接触することを防止している。
【0081】
これに加え、製作上、保護カバー69の上面部69aに平坦面が形成されるため、この面上に水が溜まることを防止するため、首部69bに上面部69aから流れ落ちてくる水を確実に排除することができる高さ(本例では、5mm以上)を有する垂直部を形成し、さらに、首部69bに続く胴部69cの径を首部69の径よりも大きく形成することにより、電極67が直接に流出部61に管壁61aに接触することにより発生する誤検出、及び管壁61aの表面を濡らす水と電極67に付着した水が接触することによる誤検出の発生を防止している。
【0082】
以上のように構成した結果、
図6に示すように、逆洗水槽15に貯留した逆洗水62の水面64が、電極67の先端部に取付けた保護カバー69の上面部69aの高さよりも低下した段階で、確実に逆洗水槽15内に貯留した逆洗水62の水位が下限界に達したと判断する。このため、所要の逆洗水量及びRO膜ユニット3への供給量を確保して、逆洗水槽15を小型化することができる。
【0083】
続いて、次亜注入部の細部構造について説明する。次亜注入部32と次亜注入部33とは、同一の構造を備えているので、ここでは次亜注入部32について説明する。
図7に示すように、次亜注入部32は、濾過水ライン12の途中にT字管71を設け、濾過水ライン12とT字管71が構成する配管内のT字管71の内周面72から次亜注入用のパイプ73を配管内に突出させている。パイプ73は、次亜注入設備19から次亜を供給される消毒用次亜注入ライン30の先端に薬品注入継手74により取り付けられている。パイプ73とT字管71とは、ユニオン継手75により着脱自在に接続されている。
【0084】
パイプ73の先端部73aは、配管内のT字管71の内周面72から突出しているため、パイプ73の先端部73aから配管内を流れる水(濾過水)に直接次亜を供給可能であるので、供給された次亜は、直ちに配管内の水の流れにより一様に水と混合する。ただし、過度にパイプ73の先端部73aを突出させるとる流体抵抗となるので、パイプ71の突出量には留意する必要がある。
【0085】
また、ユニオン継手75のねじ部を緩めることにより、パイプ73を簡単にT字管71から取り外すことができるので、パイプ73に異物や塩素凝固による詰まりが発生しているか否かについて目視による点検を容易に行うことができ、パイプ73の先端部73aに詰まりが発生している場合には、直ちに清掃して詰まりを解消することができるので、確実に次亜が供給された安全な飲料水を供給することができる。これに加え、パイプ73をT字管71から取り外した状態で可搬型浄水処理装置1を運転することにより、次亜注入設備19から次亜を供給する必要がある場合に実際に次亜が供給されていること、また、次亜が供給されてはならない場合に確実に次亜の供給が停止していることを、実際に目視確認することができる。
【0086】
本例では、パイプ73を合成樹脂管で製作しており、塩素が凝固した詰まりの取り除きが困難となった場合には、先端部を容易に清掃又は切断して再利用できるようになっている。
【0087】
さらに、取水ポンプ23について説明する。
図8に示すように、取水ポンプ23は、水中モータ部81の上部に、水中モータ部81により回転する多段ポンプ82を配置し、水中ポンプ部81の上部側面に吸込み口83を備えている。また、水中モータ部81、吸込み口83、多段ポンプ82の外周に長尺状の外管84を設けるとともに、さらに外管84の外周に大きな異物を除去するための長尺状に円筒状スクリーン(パンチングメタル)85を設けている。
【0088】
以上のように取水ポンプ23を構成したことにより、水中モータ部81の外周面と外管84の内周の間に形成される隙間86の断面積を取水ポンプ23の原水吸込み口87の面積よりも小さく形成すると、原水吸込み口87から吸い込まれ、隙間86を流れる原水37aの流速が速くなる。従って、取水ポンプ23では、この、隙間86を通過する原水37aの流速が、水中モータ部81に内蔵された水中モータを冷却可能な最低速度となるように、水中モータ部81の外周面と外管84の内周の間に形成される隙間86の断面積が形成されている。
【0089】
水中モータ部81等の外周に外管84を設け、隙間86の断面積をこのように形成したことにより、取水ポンプ23が取水している状態では、常に水中モータが確実に冷却されるため、安定した長時間使用が可能となった。また、取水ポンプ23に姿勢に係わらず安定して水中ポンプの冷却が可能であるので、井戸以外のどの様な取水源であっても、取水ポンプ23を水没させる水深があれば、原水を取水することが可能となった。
【0090】
これに加え、取水ポンプ23は、
図9(a)、(b)に示すように、その外周部の中程に三脚取付け部88と、上部に二脚取付け部89を備えている。
図9(a)に示すように、三脚取付け部88に脚91を3本取付けると、取水ポンプ23を縦置き状態で安定させて使用することができる。従って、取水源が、井戸以外の例えば池や河川、湖等であっても、3本の脚91により取水ポンプ23を安定させた状態で取水源の底面に配置することができるとともに、取水ポンプ23の端部92と取水源37の底部の間に隙間93を設け、底部の汚泥の吸込みを防止することができる。
【0091】
また、取水源の水深が浅く、取水ポンプ23を縦置きでは水没させることができない場合には、上部の二脚取付け部89に脚91を2本取付け、取水ポンプ23を横置き状態で取水源37に水没させて取水することができる。なお、脚91は、取水ポンプ23を縦置きした場合には、取水ポンプ23の端部92と取水源の底部の間に隙間93を設けることができ、取水ポンプ23を横置き状態で使用した場合には必要な角度を確実に設定することができる長さに設定されている。また、円筒状スクリーン(パンチングメタル)85は固定されていないことから、回転及び微量に横方向に動くことができる構造である。これにより、清掃がし易く、また外部から衝撃を受けた際も、円筒状スクリーン(パンチングメタル)85が回転及び微量に横方向に動くことで変形し難い構造である。
【0092】
続いて、本発明における可搬型浄水処理装置1の作用及び効果を説明する。先ず、膜ユニット2を単独で運転する場合の作用及び効果を説明する。膜ユニット2単独の運転においては、給水工程、逆洗水貯留工程、逆洗工程の各工程がある。以下、図面により各工程を説明するが、図中、実線で示す管路は水等が流れていることを示し、破線で示す管路は水等が流れていないことを示す。また、白色で表現された電動バルブは開状態であることを示し、黒色で表現された電動バルブは閉状態であることを示す。
【0093】
図10は、膜ユニット2を単独で運転する場合の給水工程を示している。本工程は、取水した原水を浄化し、安全な飲料水として給水する工程である。取水ポンプ23が取水源から取水した原水は、取水ライン11を介してプレフィルタ装置27を通過し、原水に含まれるゴミが除去された後、膜モジュール13に供給される。
【0094】
膜モジュール13で濾過処理され、原水に含まれる一般細菌、病原菌、懸濁物質(SS)などが除去された濾過水は、濾過水ライン12を通過する間に、次亜注入設備19から次亜注入部32を介して次亜が注入され、安全な飲料水として供給水ライン18から給水される。
【0095】
本発明における可搬型浄水処理装置1では、一定の時間間隔により、膜モジュール13の逆洗洗浄を行うように制御部22により制御されている。本実施例では、30分に1回逆洗を行うように制御部22で制御され、自動運転を行っている。従って、所定の時間が経過すると、逆洗のための逆洗水を逆洗水槽15に貯留する逆洗水貯留工程に移行する。なお、本例では、逆洗水槽15に逆洗水を貯留するのに要する時間は2分程度である。
【0096】
逆洗水貯留工程では、
図11に示すように、逆洗水ライン14に設けた電動バルブ40を開状態とするとともに、供給水ライン18に設けた電動バルブ39を閉状態とする。この結果、膜モジュール13で濾過処理された後、次亜注入部32で次亜が注入された濾過水は、濾過水ライン12からの逆流を逆洗ポンプ16の流出側に設けた逆止弁41が遮断して、逆洗水槽15に貯留される。
【0097】
逆洗水槽15が満水となったことを逆洗水槽15の上部に設けた水位計が検知すると逆洗水貯留工程は終了し、膜モジュール13に収納されたMF又はUFのフィルタを逆洗する逆洗工程へと移行する。
【0098】
逆洗工程では、取水ポンプ23の運転が停止されるとともに、
図12に示すように、取水ライン11に設けた電動バルブ38、並びに逆洗水ライン14に設けた電動バルブ40を閉状態とする。また、供給水ライン18に設けた電動バルブ39を閉状態、逆洗水排水ライン28に設けた電動バルブ42を開状態とするとともに、逆洗ポンプ16を作動させる。
【0099】
これにより、逆洗水槽15に貯留された次亜を含む逆洗水は、逆止弁41を介して膜モジュール13内に2次側から供給され、収納されたMF又はUFのフィルタを逆洗した後、逆洗水排水ライン28を介して膜ユニット2の外部に排水される。上記のように、このときの逆洗水には次亜が含まれているので、単に清浄水を用いた水圧を利用した逆洗とは異なり、逆洗水に含まれる残留塩素の酸化力により、膜表面や膜細孔内に付着したフミン質や微生物由来のタンパク質等の有機物を分解、除去することができる。また、逆洗水槽15に次亜を含んだ水を貯留することにより、逆洗水槽15内のカビ、藻類の発生を効果的に抑制することができる。
【0100】
逆洗工程が終了すると給水工程が再開され、
図10に示すように、逆洗ポンプ16を停止させ、その後、取水ライン11に設けた電動バルブ38及び供給水ライン18に設けた電動バルブ39を開状態、逆洗水排水ライン28に設けた電動バルブ42を閉状態とし、取水ポンプ23を作動させて給水を開始する。
【0101】
以上説明したように、膜ユニット2は、原水の水質により、膜モジュール13の濾過処理のみで十分である場合には、単独で運転して安全な飲料を給水することができる。
【0102】
次に、膜ユニット2にRO膜ユニット3を接続して使用する場合の作用及び効果を説明する。膜ユニット2にRO膜ユニット3を接続して使用する場合の運転においては、給水準備工程、給水工程、逆洗水貯留工程(次亜注入あり)、逆洗工程(次亜注入あり)、逆洗水貯留工程(次亜注入なし)、逆洗工程(次亜注入なし)の各工程がある。以下、図面により各工程を説明するが、膜ユニット2を単独で運転する場合と共通する部分については説明を省略する。
【0103】
給水準備工程は、RO膜モジュール53の逆浸透膜処理が安定するまでの間、RO膜モジュール53が処理した透過水の外部への給水を停止する工程である。
図13に示すように、膜ユニット2では、膜モジュール13で濾過処理後、次亜を注入しない濾過水を逆洗水槽15に貯留する。逆洗水槽15が満水になると、電動バルブ43が開状態となり、逆洗水槽15に貯留された逆洗水が高圧ポンプ54へ自然流下により供給される。
【0104】
逆洗水槽15に濾過水を貯留するに際して次亜を注入しないのは、RO膜ユニット3内のRO膜モジュール53に収納されている逆浸透膜は芳香族ポリアミド系複合逆浸透膜であり、残留塩素を含む水を逆洗処理させると分離機能層が劣化してしまうためである。また、逆洗水槽15を膜ユニット2の上部位置に配置しているため、貯留した逆洗水を自然流下により高圧ポンプ54へ供給することができるので、逆洗水槽15を高圧ポンプ54用のバッファタンクとして兼用することができる。
【0105】
この後、高圧ポンプ54を作動させ、膜ユニット2から供給される濾過水をRO膜モジュール53に圧送すると、RO膜モジュール53において透過水と濃縮水に分離され、膜ユニット2のMF又はUFのフィルタでは除去することができない細菌、ウイルス、有害な有機物等が除去された透過水は処理水ライン52へ、濃縮水は濃縮水排水ライン57へと流出する。
【0106】
RO膜モジュール53で逆浸透膜処理を開始した直後は、処理が安定していないので、電動バルブ59を開状態にするとともに、電動バルブ60を閉状態として透過水を濃縮水排水ライン57へ排水し、給水を行わない。処理水ライン52に設けた導電率計55の計測値が設定値以下になった段階で逆浸透膜処理が安定したと判断し、給水準備工程を終了して給水工程に移行する。
【0107】
給水工程では、
図14に示すように、電動バルブ59を閉状態とするとともに電動バルブ60を開状態とし、給水接続部36を介して膜ユニット2に透過水の返送を開始する。膜ユニット2への透過水の返送が開始されると、次亜注入設備19から次亜注入部33を介して次亜が注入され、安全な飲料水としてRO膜ユニット用給水ライン21から給水される。
【0108】
可搬型浄水処理装置1が所定時間運転されると、給水工程から逆洗水貯留工程(次亜注入あり)へと移行する。逆洗水貯留工程(次亜注入あり)では、
図15に示すように、濾過水に次亜注入設備19から次亜注入部32を介して次亜が注入され、濾過水ライン12からの逆流を逆洗ポンプ16の流出側に設けた逆止弁41が遮断して、逆洗水槽15内に次亜を注入された逆洗水が貯留される。また、逆止弁の代わりに、電動バルブで流路を操作してもよい。
【0109】
また、逆洗水貯留工程では、RO膜ユニット3に濾過水を供給することができないので、給水準備工程が再開されるまでの間、電動バルブ43を閉状態にするとともに高圧ポンプ54の作動を停止する。
【0110】
逆洗水槽15が満水となったことを逆洗水槽15の上部に設けた水位計が検知すると逆洗水貯留工程は終了し、膜モジュール13に収納されたMF又はUFのフィルタ(濾過膜)を逆洗する逆洗工程(次亜注入あり)へと移行する。
【0111】
逆洗工程(次亜注入あり)では、取水ポンプ23の運転が停止されるとともに、
図16に示すように、取水ライン11に設けた電動バルブ38、並びに逆洗水ライン14に設けた電動バルブ40を閉状態とする。また、供給水ライン18に設けた電動バルブ39を閉状態、逆洗水排水ライン28に設けた電動バルブ42を開状態とするとともに、逆洗ポンプ16を作動させ、逆洗水槽15から次亜を含む逆洗水を逆止弁41を介して膜モジュール13内に供給する。この逆洗工程で次亜が注入された逆洗水を使用することにより、膜モジュール13に収納されたMF又はUFのフィルタ(濾過膜)の膜表面や膜細孔内に付着したフミン質や微生物由来のタンパク質等の有機物を分解、除去することができる。
【0112】
膜ユニット2で最も電力を消費するのは逆洗ポンプ16であるため、膜ユニット2の運転時のピーク電流となるのは逆洗工程であるが、前述したように、逆洗貯留工程(次亜注入あり)が開始されると、給水準備工程が再開されるまでの間、RO膜ユニット3の高圧ポンプ54の作動を停止させ、RO膜ユニット3の電力消費を低減させているので、膜ユニット2とRO膜ユニット3の消費電流の合計をAC100V、15A以下とすることができる。この結果、電源として家庭用AC100Vコンセントが使用できるので、装置の設置に伴って新たに配線工事を最小限に抑えることができる。また、市販の小型発電機を使用すれことにより、電源がない場所でも使用することができる。
【0113】
前述したように、RO膜モジュール53に残留塩素を含む水を供給することができないが、逆洗工程(次亜注入あり)では次亜を含む逆洗水で逆洗を行ったため、膜モジュール13内には次亜を含む逆洗水が残留している。このため、次亜含まない清浄水で逆洗し、膜モジュール13内をすすぎ洗いして残留塩素を除去する必要がある。従って、逆洗工程(次亜注入あり)を行った後は、逆洗水貯留工程(次亜注入なし)に移行する。
【0114】
逆洗水貯留工程(次亜注入なし)は、
図17に示すように、濾過水に次亜注入設備19から次亜を注入せず、逆洗水槽15内に次亜を含まない逆洗水を貯留する。逆洗水槽15内に次亜を含まない逆洗水が満水となった後、
図16に示した逆洗工程(次亜注入あり)と同様の逆洗工程(次亜注入なし)を複数回実施し、膜モジュール13内をすすぎ洗いして残留塩素を除去する。
【0115】
逆洗工程(次亜注入なし)が完了した後、前述した給水準備工程へと戻るので、RO膜モジュール53に残留塩素を含む濾過水を供給することがなく、RO膜モジュール53に収納された逆浸透膜を劣化させるおそれがない。
【0116】
以上説明したように、本発明における可搬型浄水処理装置では、原水の水質状況に応じ、膜ユニットのみを使用する運転と、膜ユニットとRO膜ユニットを接続した運転とを選択可能に構成されているので、不必要な運転コストの発生を防止することができる。
【0117】
また、RO膜ユニットから膜ユニットに透過水を返送し、膜ユニットの次亜供給設備から次亜を供給する構成とすることによりRO膜ユニットの小型化を図るとともに、逆洗水槽の位置、逆洗水槽の流出部に設けた空気吸込み防止用の吸込み部構造による逆洗水槽の小型化等によって膜ユニットの小型、軽量化を図り、建屋に一般的に使用される幅700mmの片扉から人力による搬入を可能にし、さらには、電源として家庭用AC100Vコンセントの使用を可能な構成としている。
【0118】
これに加え、取水ポンプの全長よりも浅い取水源からも取水可能な取水ポンプを備えているので、災害発生時等の緊急時に取水源の制限を受けることがない。
【0119】
従って、本発明における可搬型浄水処理装置は、災害発生時の緊急浄水拠点として使用することができるだけでなく、いわゆる限界集落の水道設備が老朽化した場合の代替手段として既設の建屋内に設置し、特段の追加工事を実施することなく、中長期的に安定して給水を行うことができる。