(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ハニカム構造体の外周側面の全面積に対する、前記スペーサによって間接的に周回被覆される前記ハニカム構造体の外周側面の部分の面積の割合が80%以上である請求項1又は2に記載の熱交換器。
前記スペーサの外周側面の全面積に対する、前記外側筒状部材によって直接的に周回被覆される前記スペーサの外周側面の部分の面積の割合が80%以上である請求項1〜4の何れか一項に記載の熱交換器。
前記内側筒状部材の外周側面には前記スペーサ及び前記外側筒状部材が前記内側筒状部材の軸方向へ移動するのを妨げる段差又は突起が少なくとも一箇所に設けられている請求項1〜10の何れか一項に記載の熱交換器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の熱交換器においては、第2循環通路、冷媒タンク等が必要であるため、熱交換器の構造が複雑になり、且つ、熱交換器の大きさが大きくなるという問題があった。また、第1媒体と第2媒体とを必要とし、両者が混合しないように構成されているため、2種類の媒体の流れをそれぞれ独立に制御する必要があった。また、冷媒タンクに追い出された第2媒体を、再び第2媒体通路に戻すためには、冷媒タンクのコックを開け、ポンプを作動させる必要があり、この操作を行うために、余分なエネルギーが消費されるという問題があった。例えば、上記の特許文献2に開示された熱交換器においては、第2媒体が気化し、第2媒体通路が第2媒体の気体によって満たされると、残余の液体の第2媒体は第2循環通路、及び冷媒タンクへと追い出されるように構成されている。また、第2循環通路へ追い出された第2媒体が、第2媒体通路へと戻ることがないように逆止弁が設けられている。したがって、特許文献2に記載の熱交換器は、その構成が非常に煩雑であるとともに、装置の制御も複雑なものであるため、簡素な構成であるとともに、制御が容易な熱交換器の開発が要望されていた。
【0008】
本発明は、このような問題を鑑みてなされたものであり、簡素な構成で製造性に優れ、外部から制御することなく、2種類の流体間における、熱交換の促進と抑制の切り替えが可能なパッシブ型の熱交換器を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、本発明は、以下の熱交換器を提供する。
【0010】
本発明は一側面において、
セラミックスを主成分とする隔壁により区画形成され、第一の端面から第二の端面に貫通して第一の流体の流路を形成するセルを複数有する柱状のハニカム構造体と、
該ハニカム構造体の外周側面に嵌合して該ハニカム構造体の外周側面を周回被覆する内側筒状部材と、
内側筒状部材の外周側面を直接的に周回被覆すると共に該ハニカム構造体の外周側面を間接的に周回被覆するスペーサと、
該スペーサを直接的に周回被覆する外側筒状部材と、
を備えた熱交換器であり、
該スペーサは、第二の流体が流通可能な、且つ、第二の流体の気泡の移動を抑制可能な三次元構造を有し、
該内側筒状部材と該外側筒状部材の間の開口部が第二の流体のための該スペーサの出入口を形成する、
熱交換器である。
【0011】
本発明に係る熱交換器は一実施形態において、前記スペーサがメッシュ構造を有する。
【0012】
本発明に係る熱交換器は別の一実施形態において、前記ハニカム構造体の外周側面の全面積に対する、前記スペーサによって間接的に周回被覆される前記ハニカム構造体の外周側面の部分の面積の割合が80%以上である。
【0013】
本発明に係る熱交換器は更に別の一実施形態において、前記スペーサが金属製である。
【0014】
本発明に係る熱交換器は更に別の一実施形態において、前記スペーサの外周側面の全面積に対する、前記外側筒状部材によって直接的に周回被覆される前記スペーサの外周側面の部分の面積の割合が80%以上である。
【0015】
本発明に係る熱交換器は更に別の一実施形態において、前記ハニカム構造体の外周側面全部が前記内側筒状部材によって周回被覆される。
【0016】
本発明に係る熱交換器は更に別の一実施形態において、前記スペーサと前記内側筒状部材は一つの部品として提供される。
【0017】
本発明に係る熱交換器は更に別の一実施形態において、前記スペーサと前記内側筒状部材はそれぞれ別の部品として提供される。
【0018】
本発明に係る熱交換器は更に別の一実施形態において、前記スペーサの厚みは0.001〜10mmである。
【0019】
本発明に係る熱交換器は更に別の一実施形態において、前記内側筒状部材と前記外側筒状部材は異種の金属で構成されている。
【0020】
本発明に係る熱交換器は更に別の一実施形態において、前記内側筒状部材の外周側面には前記スペーサ及び前記外側筒状部材が前記内側筒状部材の軸方向へ移動するのを妨げる段差又は突起が少なくとも一箇所に設けられている。
【0021】
本発明に係る熱交換器は更に別の一実施形態において、前記外側筒状部材を周回被覆するケーシングを更に備え、
該ケーシングは第二の流体の入口及び出口を有し、
該ケーシングと前記外側筒状部材の間には、前記スペーサと連通する第二の流体の流路が形成されている。
【0022】
本発明に係る熱交換器は更に別の一実施形態において、前記内側筒状部材と前記外側筒状部材の間の前記開口部は前記外側筒状部材の軸方向両端部に環状に設けられている。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、外部から制御することなく、2種類の流体間における、熱交換の促進と抑制の切り替えを行うことができるパッシブ型の熱交換器を提供することが可能となる。例えば、本発明に係る熱交換器を使用することにより、エンジンの排ガスから排熱を回収する熱交換器の一部として使用する際に、外部から制御することなく、第一の流体と第二の流体の熱交換の促進と抑制の切り替えを行うことが可能となる。
【0024】
また、本発明に係る熱交換器は簡素な構成で構築することができ、小型化しやすい。また、製造工程も複雑ではないため、低コストでの製造が可能となる。このように、本発明によれば、例えば自動車の燃費改善を低コストで図ることができるようになるため、環境対応が喫緊の課題となっている自動車業界に大きく貢献することが期待される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0027】
<1 熱交換器>
図1には、本発明の一実施形態に係る熱交換器100について、柱状ハニカム構造体の軸方向(セルの延びる方向)に直交する断面の構造が示されている。また、
図2には、本発明の一実施形態に係る熱交換器100について、柱状ハニカム構造体の軸方向(セルの延びる方向)に平行な断面の構造が示されている。
図2において、熱交換器100の上下中央付近を左右に横断する二点鎖線よりも下側は熱交換器100の外部構造を表し、当該二点鎖線よりも上側は熱交換器100の内部構造を表す。また、
図2におけるその他の二点鎖線及び点線で表されている箇所は後方に隠れている構成要素の輪郭を示す。
図3には、本発明の一実施形態に係る熱交換器について、柱状ハニカム構造体の軸方向(セルの延びる方向)に平行な断面の構造を説明するための部分拡大図が示されている。
図1〜3は本発明に係る熱交換器の構造を説明するための模式図にすぎず、寸法や縮尺は互いに異なる。
【0028】
(1−1 コア部品)
本発明に係る熱交換器100は一実施形態において、セラミックスを主成分とする隔壁により区画形成され、第一の端面114から第二の端面116に貫通して第一の流体の流路を形成するセルを複数有する柱状のハニカム構造体101と、
該ハニカム構造体101の外周側面に嵌合して該ハニカム構造体101の外周側面を周回被覆する内側筒状部材102と、
内側筒状部材102の外周側面を直接的に周回被覆すると共に該ハニカム構造体101の外周側面を間接的に周回被覆するスペーサ103と、
該スペーサ103を直接的に周回被覆する外側筒状部材104と、
を備える。
ハニカム構造体101、内側筒状部材102、スペーサ103及び外側筒状部材104を組み立てることにより本発明に係る熱交換器100のコア部品を形成することができる。
【0029】
(1−1−1 ハニカム構造体)
ハニカム構造体101は、セラミックスを主成分とする隔壁により区画形成され、第一の端面114から第二の端面116に貫通して第一の流体の流路を形成するセルを複数有する。このように構成されていることにより、ハニカム構造体101のセルを流通する第一の流体の熱を効率よく集熱し、外部に伝達することができる。第一の流体は、
図1では紙面の表裏方向に、
図2では紙面の左右方向に流れることができる。第一の流体には、特に制限はなく、種々の液体及び気体が利用できるが、例えば、熱交換器が自動車に搭載される熱交換器の一部として用いられる場合には、第一の流体は排ガスであることが好ましい。
【0030】
ハニカム構造体101の形状は柱状であり、第一の流体が第一の端面114から第二の端面116までセル内を流れることができる限り、特に制限はない。例えば、円柱、楕円柱、四角柱、又はその他の多角柱等とすることができる。従って、ハニカム構造体101の軸方向(セルの延びる方向)に直交する断面におけるハニカム構造体101の外形は、円形、楕円形、四角形、又はその他の多角形とすることができる。
図1に示す実施形態においては、ハニカム構造体101は円柱状であり、その断面形状は円形である。
【0031】
また、ハニカム構造体101の軸方向(セルの延びる方向)に直交する断面におけるセル形状も、特に制限はない。円形、楕円形、三角形、四角形、六角形、又はその他の多角形等の中から所望の形状を適宜選択すればよい。
図1に示す実施形態においては、セルの断面形状は四角形である。
【0032】
ハニカム構造体101の隔壁は、セラミックスを主成分とするものである。「セラミックスを主成分とする」とは、隔壁の全質量に占めるセラミックスの質量比率が50質量%以上であることをいう。
【0033】
隔壁の気孔率は、10%以下であることが好ましく、5%以下であることが更に好ましく、3%以下であることが特に好ましい。隔壁の気孔率は0%とすることもできる。隔壁の気孔率を10%以下とすることにより、熱伝導率を向上させることができる。
【0034】
隔壁は、熱伝導性が高いSiC(炭化珪素)を主成分として含むことが好ましい。「SiC(炭化珪素)を主成分として含む」とは、隔壁の全質量に占めるSiC(炭化珪素)の質量比率が50質量%以上であることを意味する。
【0035】
さらに具体的には、ハニカム構造体101の材料としては、Si含浸SiC、(Si+Al)含浸SiC、金属複合SiC、再結晶SiC、Si
3N
4、及びSiC等を採用することができる。
【0036】
ハニカム構造体101の軸方向(セルの延びる方向)に直交する断面におけるセル密度(即ち、単位面積当たりのセルの数)については特に制限はない。セル密度は、適宜設計すればよいが、4〜320セル/cm
2の範囲であることが好ましい。セル密度を4セル/cm
2以上とすることにより、隔壁の強度、ひいてはハニカム構造体101自体の強度及び有効GSA(幾何学的表面積)を十分なものとすることができる。また、セル密度を320セル/cm
2以下とすることにより、第一の流体が流れる際の圧力損失が大きくなることを防止することができる。
【0037】
ハニカム構造体101のアイソスタティック強度は、1MPa以上が好ましく、5MPa以上が更に好ましい。ハニカム構造体101のアイソスタティック強度が、1MPa以上であると、ハニカム構造体101の耐久性を十分なものとすることができる。なお、ハニカム構造体101のアイソスタティック強度の上限値は、100MPa程度である。ハニカム構造体101のアイソスタティック強度は、社団法人自動車技術会発行の自動車規格であるJASO規格M505−87に規定されているアイソスタティック破壊強度の測定方法に準じて測定することができる。
【0038】
セルの延びる方向に直交する断面におけるハニカム構造体101の直径は、20〜200mmであることが好ましく、30〜100mmであることが
更に好ましい。このような直径とすることにより、熱回収効率を向上させることができる。セルの延びる方向に直交する断面におけるハニカム構造体101の形状が円形でない場合には、ハニカム構造体101の断面の形状に内接する最大内接円の直径を、セルの延びる方向に直交する断面におけるハニカム構造体101の直径とする。
【0039】
ハニカム構造体101のセルの隔壁の厚さについても、目的に応じて適宜設計すればよく、特に制限はない。隔壁の厚さは、0.1〜1mmとすることが好ましく、0.2〜0.6mmとすることが更に好ましい。隔壁の厚さを0.1mm以上とすることにより、機械的強度を十分なものとし、衝撃や熱応力によって破損することを防止することができる。また、隔壁の厚さを1mm以下とすることにより、第一の流体の圧力損失が大きくなったり、熱媒体が透過する熱回収効率が低下したりするといった不具合を防止することができる。
【0040】
隔壁の密度は、0.5〜5g/cm
3であることが好ましい。隔壁の密度を0.5g/cm
3以上とすることにより、隔壁を十分な強度とし、第一の流体が流路内(セル内)を通り抜ける際の抵抗により隔壁が破損することを防止することができる。また、隔壁の密度を5g/cm
3以下とすることにより、ハニカム構造体101を軽量化することができる。上記の範囲の密度とすることにより、ハニカム構造体を強固なものとすることができ、熱伝導率を向上させる効果も得られる。なお、隔壁の密度は、アルキメデス法により測定した値である。
【0041】
ハニカム構造体101の熱伝導率は、25℃において、50W/(m・K)以上であることが好ましく、100〜300W/(m・K)であることが更に好ましく、120〜300W/(m・K)であることが特に好ましい。ハニカム構造体101の熱伝導率を、このような範囲とすることにより、熱伝導性が良好となり、効率よくハニカム構造体内の熱を、内側筒状部材102に伝達することができる。なお、熱伝導率の値は、レーザーフラッシュ法(JIS R1611−1997)により測定した値である。
【0042】
ハニカム構造体101のセルに、第一の流体として排ガスを流す場合、ハニカム構造体の隔壁に触媒を担持させることが好ましい。隔壁に触媒を担持させると、排ガス中のCOやNOxやHCなどを触媒反応によって無害な物質にすることが可能になり、これに加えて、触媒反応の際に生じる反応熱を熱交換に用いることが可能になる。触媒としては、貴金属(白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、インジウム、銀、及び金)、アルミニウム、ニッケル、ジルコニウム、チタン、セリウム、コバルト、マンガン、亜鉛、銅、スズ、鉄、ニオブ、マグネシウム、ランタン、サマリウム、ビスマス、及びバリウムからなる群から選択された元素を少なくとも一種を含有するものであることが好ましい。上記元素は、金属単体、金属酸化物、およびそれ以外の金属化合物として含有されていてもよい。
【0043】
触媒(触媒金属+担持体)の担持量としては、10〜400g/Lであることが好ましい。また、貴金属を含む触媒であれば、担持量が0.1〜5g/Lであることが好ましい。触媒(触媒金属+担持体)の担持量を10g/L以上とすると、触媒作用が発現しやすい。一方、400g/L以下とすると、圧力損失を抑え、製造コストの上昇を抑えることができる。担持体とは、触媒金属が担持される担体のことである。担持体としては、アルミナ、セリア、及びジルコニアからなる群より選択される少なくとも一種を含有するものであることが好ましい。
【0044】
(1−1−2 内側筒状部材)
内側筒状部材102は、ハニカム構造体101の外周側面に嵌合してハニカム構造体101の外周側面を周回被覆する。本明細書において、「嵌合」とは、ハニカム構造体101と内側筒状部材102とが、相互に嵌まり合った状態で固定されていることをいう。このため、ハニカム構造体101と内側筒状部材102との嵌合においては、すきま嵌め、締まり嵌め、焼き嵌め等の嵌め合いによる固定方法の他、ろう付け、溶接、拡散接合等により、ハニカム構造体101と内側筒状部材102とが相互に固定されている場合なども含まれる。
【0045】
内側筒状部材102はハニカム構造体101の外周側面に対応した内側面形状を有することができる。内側筒状部材102の内周側面がハニカム構造体101の外周側面に直接することで、熱伝導性が良好となり、ハニカム構造体101内の熱を、内側筒状部材102に効率よく伝達することができる。
【0046】
そして、熱回収効率を高めるという観点からは、ハニカム構造体101の外周側面の全面積に対する、内側筒状部材102によって周回被覆されるハニカム構造体101の外周側面の部分の面積の割合は高いほうが好ましい。具体的には当該面積割合は80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、100%(すなわち、ハニカム構造体101の外周側面の全部が内側筒状部材102によって周回被覆される。)であることが更により好ましい。なお、ここでいう「側面」というのはハニカム構造体の軸方向(セルの延びる方向)に平行な面を指し、ハニカム構造体の軸方向(セルの延びる方向)に直交する面は含まれない。
【0047】
内側筒状部材102の材質としては特に制限はないが、熱伝導性に優れた材質であることが望ましく、例えば、金属、セラミックス等が挙げられ、製造性(組み立てやすさ)の理由により金属が好ましい。金属としては、例えば、ステンレス、チタン合金、銅合金、アルミ合金、真鍮等を用いることができ、耐久信頼性が高いという理由により、ステンレスが好ましい。
【0048】
内側筒状部材102の厚みは、耐久信頼性の理由により0.1mm以上が好ましく、0.3mm以上がより好ましく、0.5mm以上が更により好ましい。内側筒状部材102の厚みは、熱抵抗低減の理由により10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、3mm以下が更により好ましい。
【0049】
内側筒状部材102の外周側面にはスペーサ103及び外側筒状部材104が内側筒状部材102の軸方向へ移動するのを妨げる段差又は突起108が少なくとも一箇所に設けられていることが好ましい。これにより、スペーサ103及び外側筒状部材104が内側筒状部材102から軸方向に抜け出してしまうのを防止できる。段差又は突起108は、内側筒状部材102の外周側面を周回するように設けることが移動防止効果を高める上でより好ましい。
図2に示す実施形態においては、スペーサ103及び外側筒状部材104が設置されている軸方向領域の両外側に上り段差が内側筒状部材102の外周側面に周回状に設けられている。
【0050】
(1−1−3 スペーサ)
スペーサ103は、内側筒状部材102の外周側面を直接的に周回被覆すると共にハニカム構造体101の外周側面を間接的に周回被覆する。また、スペーサ103は外側筒状部材104によって直接的に周回被覆される。よって、スペーサ103は内側筒状部材102の外周側面と外側筒状部材104の内周側面の間の空間に配置されることになるが、当該空間の広さはスペーサ103の厚みを変化させることで容易に調整可能である。内側筒状部材102と外側筒状部材104の間には開口部109が形成されており、ここが第二の流体のための該スペーサの出入口となる。開口部109は外側筒状部材104の軸方向両端部に環状に設けられていることが第二の流体がスペーサ103から流出したりスペーサ103へ流入したりするときの均一性を高める上で好ましい。
【0051】
スペーサ103は第二の流体を流通可能であり、且つ、第二の流体の気泡の移動を抑制可能な三次元構造を有する。スペーサ103内を第二の流体が流通することでハニカム構造体101を流れる第一の流体と熱交換することが可能である。また、当該構成は、外部から制御することなく、2種類の流体間における、熱交換の促進と抑制の切り替えを行うことができるパッシブ型の熱交換機能を得るのに有効である。第二の流体には特に制限はないが、熱交換器が、自動車に搭載される熱交換器として用いられる場合には、第二の流体は、水又は不凍液(JIS K2234:2006で規定されるLLC)であることが好ましい。
【0052】
例えば、第一の流体として「排ガス」、第二の流体として「冷媒」を使用した場合、以下のような現象が生じると考えられる。内側筒状部材102の外周側面の温度が冷媒の沸点未満である場合に、スペーサ103に液体状態の冷媒が流入すると、スペーサ103の三次元構造内はそのまま液体状態の冷媒で満たされるため、排ガスと冷媒の熱交換が促進される。一方、内側筒状部材102の外周側面の温度が、冷媒の沸点以上である場合に、スペーサ103に液体状態の冷媒が流入すると、スペーサ103の三次元構造内の冷媒の少なくとも一部が沸騰気化し、三次元構造内に、気体状態の冷媒が存在するようになるため、排ガスと冷媒の熱交換が抑制される。スペーサ103内の気体状態の冷媒は、単位体積当たりの熱容量が液体状態の冷媒よりも小さく、断熱材として機能する。このため、液体状態の冷媒が、内側筒状部材102の外周側面の接触していない状態を維持し易くなり、第一の流体(排ガス)と第二の流体(冷媒)の熱交換が抑制される。
【0053】
このように、熱交換を抑制させたい温度以下で、且つ、熱交換を促進させたい温度よりも高い沸点を持つ第二の流体を選択すると、内側筒状部材102の外周側面が熱交換を抑制させたい温度領域にある場合、スペーサ103の三次元構造内に沸騰気化により生じた気体状態の第二の流体が存在するため、第一の流体と第二の流体の熱交換が抑制される。これに対して、内側筒状部材の外周側面が熱交換を促進させたい温度領域にある場合、スペーサ103の三次元構造内が液体状態の第二の流体で満たされるため、熱交換が促進される。
【0054】
また、第二の流体はスペーサ103の三次元構造内で沸騰気化すると気泡が発生するが、本発明では気泡の移動をスペーサ103の三次元構造によって抑制することにより、スペーサ103内部に気体状態の第二の流体が保持されやすくなっており、これにより第一の流体と第二の流体の熱交換の抑制効果を高めている。第二の流体の気泡の移動を抑制可能な三次元構造には特段の制約はない。内側筒状部材102の外周側面と外側筒状部材104の内周側面の間の空間の一部に三次元構造が存在すれば、当該三次元構造を形成する物体に第二の流体の気泡が付着したり、又は、当該三次元構造を形成する物体(物理的構成要素)が第二の流体の気泡の移動の邪魔になったりして、気泡が当該三次元構造から流出することを抑制可能である。換言すれば、スペーサ103内が第二の流体の気体で満たされ易くなり、スペーサ103による熱遮断性を向上させることができる。
【0055】
また、第二の流体が一気に沸騰気化すると、急激な体積膨張によって熱交換器内に振動が発生したり、大きな沸騰音が発生したりすることがある。スペーサ103が三次元構造を有することで第二の流体の移動抵抗が大きくなるため、液体状態の第二の流体は緩やかにスペーサ103に流れ込むようになる。これにより、振動や沸騰音の発生を有効に抑制するという効果も得られる。
【0056】
三次元構造の具体例としては、メッシュ構造(三次元網目構造)、スポンジ状構造が挙げられる。これらの中でも、熱遮断性能と第二の流体の流通性を両立しやすいという理由により、メッシュ構造が好ましい。
【0057】
スペーサ103は、熱遮断性の理由により、空隙率が20%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることが更により好ましい。また、スペーサ103は、気泡の保持力を高めるという理由により、空隙率が98%以下であることが好ましく、95%以下であることがより好ましく、90%以下であることが更により好ましい。本発明において、スペーサ103の空隙率は以下の手順により測定する。
(1)スペーサを構成する材料の真密度をアルキメデス法により求める。
(2)スペーサの外形寸法(厚み及び縦横の長さ)から計算したみかけの体積と、スペーサの重量から嵩密度を求める。
(3)空隙率=(1−嵩密度/真密度)×100%
【0058】
熱交換を促進させたい場合に熱回収効率を高め、熱交換を抑制させたい場合に熱回収効率を低くするという観点からは、ハニカム構造体101の外周側面の全面積に対する、スペーサ103によって間接的に周回被覆されるハニカム構造体101の外周側面の部分の面積の割合は高いほうが好ましい。具体的には、当該面積割合は80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、100%(すなわち、ハニカム構造体101の外周側面の全部がスペーサ103によって間接的に周回被覆される。)であることが更により好ましい。なお、ここでいう「側面」というのはハニカム構造体の軸方向(セルの延びる方向)に平行な面を指し、ハニカム構造体の軸方向(セルの延びる方向)に直交する面は含まれない。
【0059】
ここで、スペーサ103は第二の流体を流通可能な三次元構造を有しているため、スペーサ103の内部には第二の流体が流通するための空間が設けられている。そのような空間部分はハニカム構造体101を被覆する要素として考慮しないとすることも可能であるが、本明細書においては、そのような空間部分もハニカム構造体101を被覆する要素として捉えて、上記面積割合を計算することとする。従って、スペーサ103は内部が中実なものとしてハニカム構造体101が被覆される面積を計算すればよい。
【0060】
スペーサ103の材質としては特に制限はないが、熱伝導性に優れた材質であることが望ましく、例えば、金属、セラミックス等が挙げられ、製造性(組み立てやすさ)の理由により金属が好ましい。金属としては、例えば、ステンレス、チタン合金、銅合金、アルミ合金、真鍮等を用いることができ、耐久信頼性が高いという理由により、ステンレスが好ましい。
【0061】
スペーサ103の厚みは、熱交換を抑制させたい場合に熱遮断効果を高めるという観点から0.001mm以上が好ましく、0.01mm以上がより好ましく、0.1mm以上が更により好ましい。スペーサ103の厚みは、気泡を保持しやすくするという観点から10mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましく、0.5mm以下が更により好ましい。スペーサ103の厚みは、内側筒状部材102の外周側面と外側筒状部材104の内周側面の間の距離として定義される。
【0062】
スペーサ103は、内側筒状部材102と一体化した一つの部品として提供してもよく、内側筒状部材102とは別の部品として提供してもよい。一つの部品として提供する方法としては、内側筒状部材102の外周側面に切削、めっき、型押し、レーザー加工、化学エッチング、ブラスト加工等により表面加工を施すことでスペーサ103として機能する三次元構造を形成する方法が挙げられる。別の部品として提供する方法としては、スペーサ103をメッシュやスポンジ等の柔軟性のある構造物で形成し、内側筒状部材102の外側面に巻き締める方法が挙げられる。
【0063】
(1−1−4 外側筒状部材)
外側筒状部材104はスペーサ103を直接的に周回被覆する。外側筒状部材104はスペーサ103の外周側面に対応した内側面形状を有することができる。外側筒状部材104の内周側面がスペーサ103の外周側面に直接することで、熱伝導性が良好となり、熱交換を促進させたい場合には効率よくスペーサ103内の熱を、外側筒状部材104に伝達することができる。
【0064】
熱交換を促進させたい場合に熱回収効率を高め、熱交換を抑制させたい場合に熱回収効率を低くするという観点からは、スペーサ103の外周側面の全面積に対する、外側筒状部材104によって直接的に周回被覆されるスペーサ103の外周側面の部分の面積の割合は高い方が好ましい。具体的には当該面積割合は80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、100%(すなわち、スペーサ103の外周側面の全部が外側筒状部材104によって周回被覆される。)であることが更により好ましい。なお、ここでいう「側面」というのはハニカム構造体の軸方向(セルの延びる方向)に平行な面を指し、ハニカム構造体の軸方向(セルの延びる方向)に直交する面は含まれない。
【0065】
「スペーサ103の外周側面の全面積」とは、スペーサ103を平面上に展開したときにスペーサ103の外周側面の輪郭が形成する図形の投影面積を指す。「外側筒状部材104によって直接的に周回被覆されるスペーサ103の外周側面の部分の面積」は、外側筒状部材104によって被覆されるスペーサ103の外周側面の部分を平面上に展開したときに当該部分の輪郭が形成する図形の投影面積を指す。
【0066】
外側筒状部材104の材質としては特に制限はないが、熱伝導性に優れた材質であることが望ましく、例えば、金属、セラミックス等が挙げられ、製造性(組み立てやすさ)の理由により金属が好ましい。金属としては、例えば、ステンレス、チタン合金、銅合金、アルミ合金、真鍮等を用いることができ、熱伝導性の理由により、銅合金が好ましい。外側筒状部材104の材質は内側筒状部材102の材質と同種でもよく、異種でもよい。外側筒状部材104はスペーサ103の外周側面に巻き締めるだけで実用的な強度で固定可能であり、固定のためにケーシング105と溶接する必要がない。よって、本発明に係る熱交換器100は材料選択の自由度が高いといえる。このため、内側筒状部材102と外側筒状部材104を異種の金属で構成することも容易である。例えば、内側筒状部材102をステンレスとし、外側筒状部材104を銅又は銅合金とすることができる。当該構成によれば、排ガスによる腐食を防止しつつ、第二の流体への熱回収効率を高められるという利点が得られる。
【0067】
外側筒状部材104の熱伝導率は、熱回収効率を高めるという観点から、25℃において、10W/(m・K)以上であることが好ましく、100W/(m・K)以上であることがより好ましく、200W/(m・K)以上であることが更により好ましい。熱伝導率の値は、レーザーフラッシュ法(JIS R1611:1997)により測定した値である。
【0068】
外側筒状部材104の厚みは、耐久信頼性の理由により0.01mm以上が好ましく、0.05mm以上がより好ましく、0.1mm以上が更により好ましい。外側筒状部材104の厚みは、熱回収性能の理由により10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、1mm以下が更により好ましい。
【0069】
(1−2 ケーシング)
本発明に係る熱交換器100は一実施形態において、コア部品に加えて、外側筒状部材104を周回被覆するケーシング105を備える。ケーシング105はコア部品全体を周回被覆する筒状部121を有することが好ましい。ケーシング105は第二の流体の入口106、入口106と筒状部121を連結する入口導管122、第二の流体の出口107、及び、出口107と筒状部121を連結する出口導管123を有する。ケーシング105と外側筒状部材104の間には、スペーサ103と連通する第二の流体の流路110が形成されている。第二の流体は、入口106から液体状態
でケーシング105内に流入する。次いで、第二の流体は流路110を通って少なくとも一部がスペーサ103内を流通する。第二の流体はスペーサ103内で促進された熱交換又は抑制された熱交換を受けた後、流路110を通って出口107から流出する。
【0070】
第二の流体が入口導管122を通って外側筒状部材104の外周側面に到達するときの第二の流体の流れ方向が外側筒状部材104の外周側面に対して垂直方向である場合、圧損を上昇させる原因となる。そこで、入口導管122の中心軸から入口導管122の長手方向に延ばした直線が、外側筒状部材104の外周側面と垂直に交わらないように、入口導管122を配置することが好ましい。具体的には、
図1を参照すると、入口導管122の中心軸から入口導管122の長手方向に延ばした直線Aと、外側筒状部材104の外周側面との交点における、直線Aと外周側面の法線Bの角度をθ(0°≦θ≦90°)としたとき、10°≦θ≦90°であることがより好ましく、30°≦θ≦90°であることが更により好ましい。
【0071】
第二の流体が外部に漏れないように、内側筒状部材102の軸方向(セルの延びる方向)の両端部118における外周側面がケーシング105の内側面と周回状に密接した構造を有することが好ましい。内側筒状部材102の外周側面とケーシング105の内側面を密接させる方法には特に制限はないが、溶接、拡散接合、ろう付け等が挙げられる。これらの中でも耐久信頼性が高いという理由により溶接が好ましい。
【0072】
ケーシング105の材質としては特に制限はないが、熱伝導性に優れた材質であることが望ましく、例えば、金属、セラミックス等が挙げられ、製造性(組み立てやすさ)の理由により金属が好ましい。金属としては、例えば、ステンレス、チタン合金、銅合金、アルミ合金、真鍮等を用いることができ、耐久信頼性が高いという理由により、ステンレスが好ましい。
【0073】
ケーシング105の厚みは、耐久信頼性の理由により0.1mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましく、1mm以上が更により好ましい。ケーシング105の厚みは、コスト、体積、重量などの観点から、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、3mm以下が更により好ましい。
【0074】
熱交換器100を、エンジンの排ガスから排熱を回収する用途に使用する場合等には、ケーシング105はハニカム構造体101の軸方向(セルの延びる方向)に平行な方向の両端部分112が、エンジンの排ガスが通過する配管に対して接続可能に構成されていてもよい。排ガスが通過する配管の内径とケーシング105の両端部分の内径とが異なる場合には、配管とケーシング105との間に、配管の内径が漸増又は漸減するガス導入管を有していてもよいし、配管とケーシング105とが直接接続されていてもよい。
【0075】
(2 製造方法)
次に、本発明に係る熱交換器100の製造方法を例示的に説明する。
【0076】
(2−1 ハニカム構造体の作製)
まず、セラミックス粉末を含む坏土を所望の形状に押し出し、ハニカム成形体を作製する。ハニカム成形体の材料としては、前述のセラミックスを用いることができる。例えば、Si含浸SiC複合材料を主成分とするハニカム成形体を製造する場合、所定量のSiC粉末に、バインダーと、水又は有機溶媒とを加え、得られた混合物を混練し坏土とし、成形して所望形状のハニカム成形体を得ることができる。そして、得られたハニカム成形体を乾燥し、減圧の不活性ガス又は真空中で、ハニカム成形体中に金属Siを含浸焼成することによって、隔壁により区画形成された複数のセルを有するハニカム構造体101を得ることができる。
【0077】
(2−2 ハニカム構造体と内側筒状部材の嵌合)
次に、ハニカム構造体101を内側筒状部材102に挿入することにより、該ハニカム構造体101の外周側面を周回被覆する。この状態で、焼き嵌めすることで、内側筒状部材102の内周側面がハニカム構造体101の外周側面に嵌合する。なお、ハニカム構造体101と内側筒状部材102との嵌合は、先述したように、焼き嵌め以外に、すきま嵌め、締まり嵌めといった嵌め合いによる固定方法、更にはろう付け、溶接、拡散接合等により行うことができる。
【0078】
(2−3−1 スペーサの巻き付け)
スペーサ103と内側筒状部材102を別部品として供給する場合は、内側筒状部材102の外周側面を直接的に周回被覆すると共に該ハニカム構造体101の外周側面を間接的に周回被覆するように、スペーサ103を巻き付ける。スペーサ103の巻き付けは、内側筒状部材をハニカム構造体と嵌合する前後の何れに実施してもよい。
【0079】
(2−3−2 スペーサの形成)
スペーサ103と内側筒状部材102を一つの部品として供給する場合は、内側筒状部材102の外周側面に切削、めっき、型押し、レーザー加工、化学エッチング、ブラスト加工等により表面加工を施すことでスペーサ103として機能する三次元構造を形成する。スペーサ103の形成は、内側筒状部材102をハニカム構造体101と嵌合する前後の何れに実施してもよい。
【0080】
(2−4 外側筒状部材の巻き付け)
スペーサ103を巻き付けた後、スペーサ103を周回被覆するように外側筒状部材104を巻き付ける。外側筒状部材104はスペーサ103に巻き付ける前は平板状であってよく、巻き付けた後に筒状に変化させればよい。巻き付けた後は、外側筒状部材104がスペーサ103を巻き締めた状態を維持できるように、外側筒状部材104の巻き付け端部を溶接等によって自身に接合することが好ましい。外側筒状部材104の巻き付けは、内側筒状部材102をハニカム構造体101と嵌合する前後の何れに実施してもよい。
また、外側筒状部材104は当初から筒状であってもよく、その場合は外周側面にスペーサが形成された内側筒状部材102を外側筒状部材104に挿入し、締まり嵌め等により固定することができる。
【0081】
以上のようにして、ハニカム構造体101、内側筒状部材102、スペーサ103及び外側筒状部材104を組み立てることでコア部品が完成する。コア部品を外部から力を加えない限り分解しない組立品として構成することで、熱交換器のハンドリングが容易となる。
【0082】
(2−5 ケーシングの取付け)
上述した構成要素を有するケーシング105を金型成形、曲げ加工、切削加工等の方法により成形し、コア部品の外側筒状部材104を周回被覆するようにケーシング105をコア部品と接合する。典型的にはケーシング105の筒状部121にコア部品を挿入し、溶接、ろう付け等の方法により両者を接合することができる。この際、第二の流体が外部に漏れないように、内側筒状部材102の軸方向(セルの延びる方向)の両端部118における外周側面をケーシングの内側面と周回状に密接させることが好ましい。
【0083】
このような手順で、コア部品とケーシングが組み合わせられた熱交換器を製造することができる。但し、本発明の熱交換器を製造する方法は、これまでに説明した製造方法に限定されることはない。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0085】
(実施例1)
(ハニカム構造体の製造)
SiC粉末を含む坏土を所望の形状に押し出した後、乾燥させ、所定の外形寸法に加工後、Si含浸焼成することによって、円柱状のハニカム構造体101を製造した。ハニカム構造体101は、端面の直径(外形)が55.4mm、セルの延びる方向の長さが40mmのものであった。ハニカム構造体101の軸方向(セルの延びる方向)に直交する断面におけるセル形状は四角形とした。ハニカム構造体101のセル密度は23セル/cm
2、隔壁の厚さ(壁厚)は0.3mmであった。ハニカム構造体101の25℃における熱伝導率は150W/(m・K)であった。ハニカム構造体101のアイソスタティック強度は30MPaであった。
【0086】
(熱交換器の組み立て)
次に、ステンレス製の内側筒状部材102を作製した。内側筒状部材102は、内径が55.2mmで、軸方向の長さが44mmの第一の円筒状部を有する。また、内側筒状部材102は、第一の円筒状部の両端部に、
図2に示すような上り段差108を介して、内径が56.5mmで、軸方向の長さが5mmの第二の円筒状部をそれぞれ有する。内側筒状部材102は肉厚が1.0mmであった。
【0087】
次に、作製した内側筒状部材102の内部中央までハニカム構造体101を挿入し、ハニカム構造体101の外周側面全部を内側筒状部材102によって周回被覆した(
図2参照)。次いで、焼き嵌めにより、内側筒状部材102の内周側面をハニカム構造体101の外周側面に嵌合させた。
【0088】
次に、内側筒状部材102の外周側面を直接的に周回被覆すると共に該ハニカム構造体101の外周側面を間接的に周回被覆するように、メッシュ構造(空隙率60%)を有するステンレス製のスペーサ103(外形寸法:42mm(軸方向長さ)×180mm(周方向長さ)×0.1mm(巻き付け前の厚み))を巻き付けた(
図2参照)。このとき、ハニカム構造体101の外周側面の全面積に対する、スペーサ103によって間接的に周回被覆されるハニカム構造体101の外周側面の部分の面積の割合は100%であった。
【0089】
次に、平板状(外形寸法:40mm(軸方向長さ)×180.5mm(周方向長さ)×0.5mm(厚み))の銅合金(25℃における熱伝導率380W/(m・K))製の外側筒状部材104を用意し、スペーサ103を周回被覆するように巻き付けた(
図2参照)。この結果、内側筒状部材102と外側筒状部材104の間の開口部109は外側筒状部材104の軸方向両端部に環状に形成された。スペーサ103の外周側面の全面積に対する、外側筒状部材104によって直接的に周回被覆されるスペーサ103の外周側面の部分の面積の割合は100%であった。外側筒状部材104をスペーサ103に巻き付けた後、外側筒状部材104の巻き付け端部を溶接によって自身(外側筒状部材104)に接合した。ここで、内側筒状部材102の外周側面と外側筒状部材104の内周側面の間の距離(スペーサの厚み)は巻き付け前と同じ0.1mmであった。
【0090】
以上の手順により、ハニカム構造体101、内側筒状部材102、スペーサ103及び外側筒状部材104を組み立てることでコア部品を作製した。
【0091】
次に、
図1及び
図2に示すような、筒状部121、入口106、入口106と筒状部121を連結する入口導管122、出口107、及び、出口107と筒状部121を連結する出口導管123を有するステンレス製の筒状のケーシング105を金型成形により成形し、ケーシング105内部にコア部品を挿入し、外側筒状部材104を含めてコア部品全体を周回被覆した。内側筒状部材102の軸方向(セルの延びる方向)の両端部における外周側面を溶接によりケーシング105の内側面と周回状に密接させた(
図2参照)。また、ケーシング105と外側筒状部材104の間には、スペーサ103と連通する第二の流体の流路が十分に形成されるように、ケーシング105の軸方向中央部は軸方向両端部よりも内径を大きく(軸方向に直交する断面積を大きく)した。ケーシング105は肉厚が1.5mmであった。入口導管122の中心軸から入口導管122の長手方向に延ばした直線Aと、外側筒状部材104の外周側面との交点における、直線Aと外周側面の法線Bの角度θは38°とした。
【0092】
以上の手順により、コア部品とケーシングが組み合わせられた発明例に係る熱交換器を製造した。
【0093】
(比較例1)
実施例1の熱交換器からスペーサ103及び外側筒状部材104を取り除いた他は、実施例1と同様の熱交換器を製造した。
【0094】
(熱交換試験)
作製した実施例1及び比較例1の熱交換器について、以下の方法で、熱交換試験を行った。ハニカム構造体101に、400℃(=Tg1)の空気(第一の流体)を表1及び表2に示す流量(Mg)で流した。一方、入口106から表1及び表2に記載の各温度の冷却水(第二の流体)を166.3g/sの流量(Mw)で供給し、出口107から熱交換後の冷却水(第二の流体)を回収した。
上記の各条件にて、熱交換器に対して空気及び冷却水の供給を開始してから5分間通過させた直後に、熱交換器の入口106における冷却水の温度(Tw1)及び出口107における冷却
水の温度(Tw2)を測定し、熱回収効率を求めた。
ここで、冷却水によって回収される熱量Qは次式で表される。
Q(kW)=ΔTw×Cpw×Mw
式中、ΔTw=Tw2−Tw1、Cpw(水の比熱)=4182J/(kg・K)とした。
また、熱交換器による熱回収効率ηは次式で表される。
η(%)=Q/{(Tg1−Tw1)×Cpg×Mg}×100
式中、Cpg(空気の比熱)=1050J/(kg・K)とした。
結果を表1〜2に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
表1〜2より、比較例1では水温の上昇に関わらず熱回収効率に変化が見られないため、冷却水の温度が上昇しても熱を回収し続けてしまう。一方、実施例1では水温が低く熱回収が必要なときは熱回収効率が高いが、水温が高く熱回収が不要のときは、熱回収効率が低下する。これは流入する冷却水の温度が高い場合、内側筒状部材の外周側面の温度も高くなってスペーサ内部で水が沸騰しやすくなり、スペーサ内部に水蒸気の気泡による断熱層が形成されたことによると推察される。なお、実施例1及び比較例1の何れも、空気流量の増大に伴い熱回収効率は低下した。
このように、本発明に係る熱交換器は簡素な構成で容易に組み立てることができ、外部から制御することなく、2種類の流体間における、熱交換の促進と抑制の切り替えを行うことができる。