(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
燻煙剤は、発熱性基剤(燃焼剤、発泡剤等)と有効成分(有害生物駆除用薬剤等)を主成分とするもので、使用時に発熱性基剤を燃焼または分解させ、このとき発生するガス及び煙粒子の働きにより、有効成分を短時間のうちに空気中に噴出、拡散させ、有害生物の防除等を行うことのできる優れた製剤であり、従来より汎用されている。
【0003】
近年では、カビ等の微生物を対象とした燻煙剤が提案されており、燻煙発生体(発熱体)を発熱体収容容器に装着して燻煙を発生させる。これは、有効成分を水和反応させることで発生するガス及び煙粒子の働きにより、有効成分を短時間のうちに空中に噴出、拡散させ、カビ等を防ぐ効能が得られるというものである。
【0004】
燻煙を発生させる際には、浴室等の床面に、所定量の水を入れた発熱体収容容器を置き、その容器内に、燻煙剤が入った燻煙発生体(発熱体)を入れる。すると、燻煙発生体内の燻煙剤と水との水和反応熱によって、加熱された燻煙剤から燻煙が放出され、浴室内に充満した燻煙によって防カビ効果が得られる。
【0005】
このような燻煙発生体などの発熱体を収容する容器として、使用中に容器が転倒した際に容器内から発熱体が転出しないように、容器の底部側に発熱体を挟み付ける複数の凸部を設けた構成が知られている(特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1のような構成の場合、容器の底部側に設けられた凸部間に発熱体を固定させる際に手で発熱体を押し込まなければならず、発熱体を容器の所定の位置に固定させる作業において、発熱体の固定状態の確認を要する。容器内の所定の位置に発熱体がきちんと収まっていないときは、発熱体を持って再度収容状態を調整しなければならないが、このとき既に発熱が始まっていた場合には、発熱体の温度が高まっており、触れることでやけどするおそれがある。
【0008】
また、生産段階において、カップ形状の容器を多数、保管及び整列させるためには、容器同士を積み重ねることが必要であるが、現状では、容器同士を高さ方向で重ね合せて積み重ねる形状にはなっていない。このため、容器のスタッキング性に関して改善が望まれている。
【0009】
本発明の一つの態様は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、容器が転倒した場合であっても発熱体が容器から転出しにくく、生産段階で容器の保管効率を向上させることのできる、発熱体を収容する容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様における発熱体を収容する容器は、上端開口の有底筒状を呈し、内部空間に発熱体を収容する容器であって、前記上端開口に対向する底部と、前記底部の外周縁に立設され前記上端開口を形成する周壁部と、前記周壁部及び前記底部の境界部分に前記内部空間に向けて膨出形成され、前記底部に対する前記発熱体の位置決めを行う位置決め部と、前記底部の内面に設けられ当該底部から前記発熱体を浮かせて支持するリブと、前記底部の外面に設けられ設置面から前記底部を浮かせて支持する台座と、を有しており、前記周壁部には、前記底部の前記外周縁から前記上端開口に向けて延出する第1の周壁部と、前記第1の周壁部の上端側に設けられ、前記上端開口側から見て前記第1の周壁部よりも外側に位置する第2の周壁部と、前記第1の周壁部と前記第2の周壁部とを接続する段部が設けられて
おり、前記底部の法線方向における前記段部の位置は、前記発熱体の高さの50%以上である。
【0011】
本発明の一態様における発熱体を収容する容器において、前記位置決め部を複数有し、前記複数の位置決め部のそれぞれが前記発熱体の外周面に接する構成としてもよい。
【0012】
本発明の一態様における発熱体を収容する容器において、前記位置決め部は、前記発熱体の前記外周面に接する部分が平面とされている構成としてもよい。
【0013】
本発明の一態様における発熱体を収容する容器において、前記位置決め部は、前記上端開口側に向けて凸状に湾曲する湾曲面を有している構成としてもよい。
【0014】
本発明の一態様における発熱体を収容する容器において、鉛直方向から見て前記発熱体の外形と前記上端開口の形状とが異なっており、前記上端開口は、前記発熱体が収容された状態で前記第2の周壁部との間に指が入る隙間が形成される大きさを有している構成としてもよい。
【0015】
本発明の一態様における発熱体を収容する容器において、前記底部の法線方向における前記段部の位置は、前記発熱体の高さの50%以上である、上記の発熱体を収容する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、容器が転倒した場合であっても発熱体が容器から転出しにくく、生産段階で容器の保管効率を向上させることのできる、発熱体を収容する容器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施形態では、発熱体を収容する容器の一つの実施形態として、浴室用の防カビ燻煙装置に用いられる発熱体収容容器100について述べる。
なお、以下の各図面においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。
【0019】
図1は、本実施形態における発熱体収容容器100の全体構成を示す斜視図である。
図2は、本実施形態における発熱体収容容器100の上端開口11側から見た図である。
図3は、燻煙発生体20が装着された状態で発熱体収容容器100の底部12側から見た図である。
図4は、本実施形態における発熱体収容容器100の全体構成を示す断面図である。
図5は、発熱体収容容器100を複数積み重ねた状態を示す図である。
【0020】
本実施形態の発熱体収容容器(容器)100は、
図1に示すように、上端開口11の有底筒状を呈し、内部空間K1に燻煙発生体(発熱体)20を収容する容器である。発熱体収容容器100の大きさは、燻煙発生体20の大きさによって決定され、燻煙発生体20の全体が内部空間K1内に収まる大きさとされる。
【0021】
発熱体収容容器100は、
図1及び
図2に示すように、上端開口11に対向する底部12と、底部12の外周縁に立設され且つ上端開口11を形成する周壁部13と、により主に構成された多角筒状体であり、上端開口11側から見た輪郭が丸みを帯びた矩形状をなす。発熱体収容容器100は、さらに、複数のリブ15と、複数の台座16と、複数の位置決め部17と、フランジ部19と、を有している。
【0022】
周壁部13は、底部12の外周縁から上端開口11に向けて延出する第1の周壁部13Aと、第1の周壁部13Aの上端側に設けられ、上端開口11から見て第1の周壁部13Aよりも外側に位置する第2の周壁部13Bと、第1の周壁部13Aと第2の周壁部13Bとを接続する段部13Cと、を有している。これにより、底部12の面積よりも上端開口11の面積の方が大きい。第1の周壁部13A及び第2の周壁部13Bは、鉛直方向に沿う面であってもよいし、テーパー状とされていてもよい。
【0023】
フランジ部19は、第2の周壁部13Bの上端側から外側へ張り出した部分である。フランジ部19の上面19aには、発熱体収容容器100内に燻煙発生体20を配置した後にフィルム蓋が貼り付けられ、燻煙発生体20が発熱体収容容器100内に封止された状態で販売される。
【0024】
複数の位置決め部17は、
図1に示すように、第1の周壁部13Aを構成している4つの側壁103aの底部12側にそれぞれ設けられている。各位置決め部17は、
図2及び
図3に示すように、周壁部13及び底部12の境界部分に内部空間K1に向けて膨出形成され、各々が燻煙発生体20の外周面20aに接することで、内部空間K1に載置される燻煙発生体20の位置決めを行う。
【0025】
位置決め部17は、内部空間K1へ向けて互いに等しい突出量で形成された凸部である。ここで、発熱体収容容器100を外側から見ると、位置決め部17が形成された部分の裏面側は凹状となっている。ここでは、位置決め部17に対応する凹状部分を凹部21とする。
【0026】
位置決め部17は、燻煙発生体20の外周面20aに接する部分、つまり、外周面20aに対向する面が平面17aとされている。そのため、燻煙発生体20に接触可能な範囲をなるべく広く確保できるとともに、燻煙発生体20の外周面20aに点で接することになり、燻煙発生体20を固定するほど挟み付けることにはならない。複数の位置決め部17による内接円形は、燻煙発生体20の外径に応じて決定され、燻煙発生体20の外径よりも僅かに大きい程度に設定される。
【0027】
また、位置決め部17は、落下時の強度を改善するために、上端開口11に向けて凸状に湾曲する湾曲面17bを有している。この湾曲面17bは、
図4に示すように、側壁103a側から平面17aに向かって下方へ傾斜している。これにより、上端開口11から挿入された燻煙発生体20がこの湾曲面17bに沿って移動することで下方へ誘導されて、4方の位置決め部17の間に配置され、自ずと、底部12の中央に燻煙発生体20が位置決めされることとなる。このように、燻煙発生体20の面方向への移動は、これら4つの位置決め部17によって規制される。
【0028】
複数のリブ15は、底部12の内底面12aから上端開口11に向かって凸状に形成され、内底面12aの中央を除く領域に放射状に設けられている。複数のリブ15は、底部12の内底面12aから燻煙発生体20を浮かせて水平に支持する。各リブ15の高さは、互いに等しく、発熱体収容容器100内に注入された水が燻煙発生体20の底面20bから給水される所定の高さに設定されている。本実施形態では、内底面12aから5mm程度の高さに設定されているが、適宜変更が可能である。
【0029】
複数の台座16は、
図3、
図4に示すように、発熱体収容容器100における4つの角部18にそれぞれ設けられている。台座16は、底部12の外底面12bから発熱体収容容器100の設置面に向かって延出し、設置面から底部12を浮かせて支持する。これら台座16によって、底部12と設置面との間に空間K2が生じる。
図3に示すように、発熱体収容容器100を底部12側から見ると、隣り合う台座16の間に凹部21(位置決め部17)が存在している。
図4に示すように、凹部21とその両側に位置する台座16,16とによって形成される隙間22を通じて、底部12と設置面との間の空間K2が外部空間と連通しており、空気の流動が生じる構成となっている。
【0030】
発熱体収容容器100の材質としては、耐水性を有するとともに、燻煙発生体20において発生する熱による変形等が生じない耐熱性を有するものが好ましい。発熱体収容容器100の厚みは、強度等を勘案して決定される。
【0031】
以上述べた発熱体収容容器100に、所定の量の水を入れた後に燻煙発生体20を入れると、5秒から10秒ほどで発熱が始まり、発煙していなくても180℃程度の高温になる場合がある。煙が出ていないため高温になっていることに気が付かず、燻煙発生体20に触れてしまうとやけどするおそれがあった。
【0032】
本実施形態では、発熱体収容容器100における燻煙発生体20のセンタリングを容易に確保することができる。具体的には、燻煙発生体20が、位置決め部17の湾曲面17bに沿って底部12側へ自ずと誘導されて位置決めされる。また、本実施形態では、燻煙発生体20の外周面20aに対して位置決め部17の平面17aが点接触することで、発熱体収容容器100に対する燻煙発生体20の位置決めを行う構成ため、燻煙発生体20を手で押し込むことなく位置決め部17どうしの間に容易に配置することができる。
【0033】
また、仮に、燻煙発生体20が位置決め部17の湾曲面17b上に引っかかった状態で、斜めに傾いた姿勢で挿入されても、発熱体収容容器100を僅かに傾けるだけで燻煙発生体20が湾曲面17bから滑り落ちて、位置決め部17どうしの間に収まる。
【0034】
このように、本実施形態の構成によれば、複数の位置決め部17によって燻煙発生体20が誘導されるため、発熱体収容容器100の所定の位置に燻煙発生体20を位置決めすることが容易である。よって、燻煙発生体20を手で押し込んだり、燻煙発生体20を手で持って位置を調整したりする必要がなく、発熱した燻煙発生体20に触れてやけどするおそれがなくなり、使用しやすい。
【0035】
本実施形態では、複数の位置決め部17によって、発熱体収容容器100内における燻煙発生体20の横移動が規制されるので、位置決め部17がない場合に比べて、運搬時等における燻煙発生体20のがたつきが防止される。使用前の燻煙発生体20は、空気中の水分の吸湿を防ぐためにアルミピローで包装されているが、上記したような位置規制により、発熱体収容容器100との接触時の衝撃によってアルミピロー包装に穴あきが生じるのを防ぐことができ、使用時に十分に発煙させることができる。
【0036】
本実施形態では、発熱体収容容器100の高さ方向中央付近に段部13Cが設けられている。例えば、鉛直方向(底部12の法線方向)における段部13Cの位置は、燻煙発生体20の高さの50%以上であることが好ましい。この段部13Cにより、
図5に示すように複数の発熱体収容容器100を高さ方向に積み上げた際に、上位側の発熱体収容容器100Aの台座16が、下位側の発熱体収容容器100Bの段部13Cに当接し、一方の容器100Aの半分程度の領域を他の容器100Bと重ねることができる。これにより、発熱体収容容器100のスタッキング性が向上し、運搬及び保管等において、上下に積み重ねた際に嵩張ることを防ぐことができる。本実施形態の構成であれば、従来の1.5倍程度の数の発熱体収容容器100を複数積み上げることが可能であり、運搬効率及び保管効率を高めることができる。
【0037】
また、発熱体収容容器100の周壁部13に段部13Cを設けることによって、重ね合わされた下位側の発熱体収容容器100Aの第1の周壁部13Aと、上位側の発熱体収容容器100Bの第2の周壁部13Bとの間に隙間23(
図5)が形成される。このため、第1の周壁部13Aに段部13Cがなく高さ方向全体が円柱形状あるいはテーパー形状とされた構成に比べて、容器100A,100Bの間で空気置換が生じやすく、容器100A,100B同士のブロッキングが防止されて、重ねた容器100A,100Bどうしの取り出しが容易になる。また、周壁部13のうち、上端開口11を拡大するように第2の周壁部13B側に傾斜を持たせてもよい。これにより、積み重ねた他の容器100Bの第1の周壁部13Aとの間の隙間が拡がることで空気置換性がさらに良くなり、重ねた容器100を一つずつ取り外しやすくなる。
【0038】
また、本実施形態では、フランジ部19及び段部13Cを設けたことにより、転倒時に上端開口11側を上位とした傾斜姿勢となり、燻煙発生体20が容器内から飛び出しにくい。このため、使用時に何らかの原因で発熱体収容容器100が転倒した場合であっても、燻煙発生体20に触れることなく発熱体収容容器100を起こして設置し直すことができる。従来は、発熱体収容容器からの転出を防止するために、上端開口側に樹脂製の環状蓋部材を備えていたが、本実施形態の構成であれば蓋部材が不要になり、コスト削減を図ることができる。また、燻煙発生体20から生じた燻煙が蓋部材の内側に当たって薬剤が蓋部材に付いてしまうことがなく、浴室内へ燻煙を効率よく充満させることができる。その結果、防カビ効果の効き目を低下させることなく使用できる。
【0039】
このように、本実施形態であれば、発熱体収容容器100が転倒した場合であっても燻煙発生体20が発熱体収容容器100から転出しにくく、生産段階で発熱体収容容器100の保管効率を向上させることのできる容器を提供することができる。
【0040】
また、本実施形態では、鉛直方向から見たとき、発熱体収容容器100の上端開口11は矩形状であり、円形をなす燻煙発生体20の外形と異なる。発熱体収容容器100は、
図1に示すように内部に燻煙発生体20が収容された状態で、燻煙発生体20と周壁部13(第2の周壁部13B)との間に指が入る隙間14が形成される大きさを有している。例えば、上端開口11の対角線に沿う長さが、燻煙発生体20の直径の1.5倍ほど長い大きさであることが好ましい。これにより、燻煙発生体20を指で持った状態で発熱体収容容器100内に挿入させて載置させることができる。また、燻煙処置終了後に、燻煙発生体20を発熱体収容容器100から取り出す際にも、燻煙発生体20を指で摘まんで取り出しやすい。
【0041】
また、本実施形態では、底部12の周縁に台座16が部分的に存在しているため、設置面と底部12との間の空間が、位置決め部17を形成している凹部21と隣り合う台座16,16とによって形成される隙間を介して外部空間と連通している。これにより、燻煙発生体20の水和反応熱によって発熱体収容容器100の底部12が高温になっても、底部12を外気に触れさせることができ、台座16間の隙間22を介して放熱させることが可能である。また、隙間22を介して空間K2に燻煙が流入できるため、発熱体収容容器100が置かれた設置領域に対しても防カビ効果が得られる。さらに、台座16を底部12の周縁に亘って設ける場合よりも、樹脂量を削減できるためコストを抑えられる。
【0042】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。