特許第6854225号(P6854225)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オイレス工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6854225-制震壁 図000002
  • 特許6854225-制震壁 図000003
  • 特許6854225-制震壁 図000004
  • 特許6854225-制震壁 図000005
  • 特許6854225-制震壁 図000006
  • 特許6854225-制震壁 図000007
  • 特許6854225-制震壁 図000008
  • 特許6854225-制震壁 図000009
  • 特許6854225-制震壁 図000010
  • 特許6854225-制震壁 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6854225
(24)【登録日】2021年3月17日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】制震壁
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20210329BHJP
【FI】
   E04H9/02 321B
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-182374(P2017-182374)
(22)【出願日】2017年9月22日
(65)【公開番号】特開2019-56275(P2019-56275A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2020年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 和彦
【審査官】 土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−027485(JP,A)
【文献】 特開2002−021369(JP,A)
【文献】 特開2001−065193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/02
E04B 2/56
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物壁における下支持手段及び上支持手段と、一対の狭幅側壁板、一対の狭幅側壁板よりも幅広の一対の幅広側壁板及び底壁板を有すると共に当該底壁板及び当該底壁板よりも下方に位置した一対の狭幅側壁板の下部で下支持手段に下部固定手段を介して固定された箱体と、この箱体に対して隙間をもって当該箱体内に配されていると共に上支持手段に上部固定手段を介して固定された抵抗板と、該隙間に充填された粘性体とを具備しており、下部固定手段は、箱体の底壁板の下面及び一対の狭幅側壁板の下部の側面に固着された第一のガセットプレートと、この第一のガセットプレートに対して同一鉛直面内に配されると共に下支持手段に固着された第二のガセットプレートと、第一及び第二のガセットプレートの夫々に対面して配された少なくとも一対のスプライスプレートと、この少なくとも一対のスプライスプレートを第一及び第二のガセットプレートの夫々に共締めするボルトとを具備した制震壁。
【請求項2】
建物壁における下支持手段及び上支持手段と、一対の狭幅側壁板、一対の狭幅側壁板よりも幅広の一対の幅広側壁板及び底壁板を有すると共に当該底壁板及び当該底壁板よりも下方に位置した一対の狭幅側壁板の下部で下支持手段に下部固定手段を介して固定された箱体と、この箱体に対して隙間をもって当該箱体内に配されていると共に上支持手段に上部固定手段を介して固定された抵抗板と、該隙間に充填された粘性体とを具備しており、下部固定手段は、箱体の底壁板の下面及び一対の狭幅側壁板の下部の一方の側面に固着された第一のガセットプレートと、この第一のガセットプレートに対して同一鉛直面内に配されると共に下支持手段に固着された第二のガセットプレートと、第一及び第二のガセットプレートの夫々に対面して配された少なくとも一対のスプライスプレートと、この少なくとも一対のスプライスプレートを第一及び第二のガセットプレートの夫々に共締めするボルトと、下支持手段及び第二のガセットプレートの一方の側端に固着された一方の側板と、下支持手段及び第二のガセットプレートの他方の側端に固着された他方の側板と、一対の狭幅側壁板のうちの一方の狭幅側壁板の下部を一方の側板に連結する第一のスプライスプレート機構と、一対の狭幅側壁板のうちの他方の狭幅側壁板の下部を他方の側板に連結する第二のスプライスプレート機構とを具備した制震壁。
【請求項3】
第一のスプライスプレート機構は、第一及び第二のガセットプレートを間にして一方の狭幅側壁板の下部及び一方の側板の夫々の一方の側面に対面して配された一対の第一の側端スプライスプレートと、一方の狭幅側壁板の下部及び一方の側板の夫々の他方の側面に対面して配された第二の側端スプライスプレートと、一対の第一の側端スプライスプレート及び第二の側端スプライスプレートを一方の狭幅側壁板の下部及び一方の側板に共締めする他のボルトとを具備しており、第二のスプライスプレート機構は、第一及び第二のガセットプレートを間にして他方の狭幅側壁板の下部及び他方の側板の夫々の一方の側面に対面して配された一対の第三の側端スプライスプレートと、他方の狭幅側壁板の下部及び他方の側板の夫々の他方の側面に対面して配された第四の側端スプライスプレートと、一対の第三の側端スプライスプレート及び第四の側端スプライスプレートを他方の狭幅側壁板の下部及び他方の側板に共締めする他のボルトとを具備した請求項2に記載の制震壁。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、事務所用のビル、集合住宅、戸建住宅等の建物に加わる地震や風、交通振動等の振動を減衰させる制震壁に関する。
【背景技術】
【0002】
上部に開口を有していると共に下部で下梁に固定される箱体と、この箱体に対して隙間をもって当該箱体内に配されていると共に上部で上梁に固定される抵抗板と、該隙間に充填された粘性体とを具備し、地震や風、交通振動等の振動に際して、下梁に対する上梁の相対的水平変位に基づく箱体と抵抗板との間の同じく相対的水平変位において箱体内に収容された粘性体に粘性剪断変形を生じさせて、この粘性剪断変形による減衰力により地震や風、交通振動等の振動を減衰させる制震壁は、従来知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−73607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
斯かる制震壁においては、箱体及び抵抗板を夫々下梁及び上梁の夫々に固定しているが、地震等に起因する下梁及び上梁を介する箱体と抵抗板との間の相対的水平変位に際しては、抵抗板には大きな水平力と曲げモーメントとが加わり、この水平力と曲げモーメントとに基づく剪断力と引っ張り力とに耐え得るために、通常、多数のボルトと固定用の鋼板とを用いて下梁及び上梁の夫々に箱体及び抵抗板の夫々を固定するようになっているが、特許文献1に記載の制震壁では、箱体と下大梁とを連結する連結機構において曲げモーメントによる偶力のもっとも加わる箱体の側端の部位には、箱体に対して別体となる別部材が用いられている結果、抵抗板に加わる大きな曲げモーメントに対しての箱体の側端の部位での連結機構における引張耐力には限界があり、特許文献1に記載の技術は、大きな曲げモーメントが生じることが予測される制震壁への適用には問題がある。
【0005】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、抵抗板での大きな曲げモーメントに起因して生じる引張力に対して十分な耐力をもって下大梁等の下支持手段に箱体の側端の部位が強固に固定されており、加えて、製造に当たっては、超音波探傷試験等の非破壊検査を省き得て、組み立て工数を削減し得る制震壁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の制震壁は、建物壁における下支持手段及び上支持手段と、一対の狭幅側壁板、一対の狭幅側壁板よりも幅広の一対の幅広側壁板及び底壁板を有すると共に当該底壁板及び当該底壁板よりも下方に位置した一対の狭幅側壁板の下部で下支持手段に下部固定手段を介して固定された箱体と、この箱体に対して隙間をもって当該箱体内に配されていると共に上支持手段に上部固定手段を介して固定された抵抗板と、該隙間に充填された粘性体とを具備しており、下部固定手段は、箱体の底壁板の下面及び一対の狭幅側壁板の下部の側面に固着された第一のガセットプレートと、この第一のガセットプレートに対して同一鉛直面内に配されると共に下支持手段に固着された第二のガセットプレートと、第一及び第二のガセットプレートの夫々に対面して配された少なくとも一対のスプライスプレートと、この少なくとも一対のスプライスプレートを第一及び第二のガセットプレートの夫々に共締めするボルトとを具備している。
【0007】
斯かる本発明の制震壁によれば、下部固定手段の第一のガセットプレートが箱体の底壁板の下面及び当該底壁板よりも下方に位置した一対の狭幅側壁板の下部の側面に夫々固着されている一方、少なくとも一対のスプライスプレートがボルトにより第一及び第二のガセットプレートの夫々に共締めされているために、抵抗板での大きな曲げモーメントに起因して箱体の側端の部位で生じる引張力に対して十分な引張耐力をもって下大梁等の下支持手段に箱体の側端の部位が強固に固定されており、加えて、その製造に当たっては、超音波探傷試験等の非破壊検査を省き得て、組み立て工数を削減し得る。
【0008】
本発明の他の制震壁は、建物壁における下支持手段及び上支持手段と、一対の狭幅側壁板、一対の狭幅側壁板よりも幅広の一対の幅広側壁板及び底壁板を有すると共に当該底壁板及び当該底壁板よりも下方に位置した一対の狭幅側壁板の下部で下支持手段に下部固定手段を介して固定された箱体と、この箱体に対して隙間をもって当該箱体内に配されていると共に上支持手段に上部固定手段を介して固定された抵抗板と、該隙間に充填された粘性体とを具備しており、下部固定手段は、箱体の底壁板の下面及び一対の狭幅側壁板の下部の側面に固着された第一のガセットプレートと、この第一のガセットプレートに対して同一鉛直面内に配されると共に下支持手段に固着された第二のガセットプレートと、第一及び第二のガセットプレートの夫々に対面して配された少なくとも一対のスプライスプレートと、少なくとも一対のスプライスプレートを第一及び第二のガセットプレートの夫々に共締めするボルトと、下支持手段及び第二のガセットプレートの一方の側端に固着された一方の側板と、下支持手段及び第二のガセットプレートの他方の側端に固着された他方の側板と、一対の狭幅側壁板のうちの一方の狭幅側壁板の下部を一方の側板に連結する第一のスプライスプレート機構と、一対の狭幅側壁板のうちの他方の狭幅側壁板の下部を他方の側板に連結する第二のスプライスプレート機構とを具備している。
【0009】
斯かる本発明の他の制震壁でも、下部固定手段の第一のガセットプレートが箱体の底壁板の下面及び一対の狭幅側壁板の下部の一方の側面に固着されている一方、少なくとも一対のスプライスプレートがボルトにより第一及び第二のガセットプレートの夫々に共締めされている上に、一対の狭幅側壁板のうちの一方の狭幅側壁板の下部が下支持手段及び第二のガセットプレートの一方の側端に固着された一方の側板に第一のスプライスプレート機構により連結されており、そして、一対の狭幅側壁板のうちの他方の狭幅側壁板の下部が下支持手段及び第二のガセットプレートの他方の側端に固着された他方の側板に第二のスプライスプレート機構により連結されているために、更に十分な耐力をもって下大梁等の下支持手段により強固に箱体が固定されており、加えて、超音波探傷試験等の非破壊検査を省き得て、組み立て工数を削減し得る。
【0010】
本発明の他の制震壁において、第一のスプライスプレート機構は、好ましい例では、第一及び第二のガセットプレートを間にして一方の狭幅側壁板の下部及び一方の側板の夫々の一方の側面に対面して配された一対の第一の側端スプライスプレートと、一方の狭幅側壁板の下部及び一方の側板の夫々の他方の側面に対面して配された第二の側端スプライスプレートと、一対の第一の側端スプライスプレート及び第二の側端スプライスプレートを一方の狭幅側壁板の下部及び一方の側板に共締めする他のボルトとを具備しており、第二のスプライスプレート機構は、好ましい例では、第一及び第二のガセットプレートを間にして他方の狭幅側壁板の下部及び他方の側板の夫々の一方の側面に対面して配された一対の第三の側端スプライスプレートと、他方の狭幅側壁板の下部及び他方の側板の夫々の他方の側面に対面して配された第四の側端スプライスプレートと、一対の第三の側端スプライスプレート及び第四の側端スプライスプレートを他方の狭幅側壁板の下部及び他方の側板に共締めする他のボルトとを具備しており、これらの好ましい例において、第二の側端スプライスプレート及び第四の側端スプライスプレートの夫々は、第一の側端スプライスプレート及び第三の側端スプライスプレートに対応して、一対からなっていてもよいが、これに代えて、一枚でもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、抵抗板での大きな曲げモーメントに起因して生じる引張力に対して十分な耐力をもって下大梁等の下支持手段に箱体が強固に固定されており、加えて、製造に当たっては、超音波探傷試験等の非破壊検査を省き得て、組み立て工数を削減し得る制震壁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施の形態の好ましい具体例の正面説明図である。
図2図2は、図1に示すII−II線矢視断面説明図である。
図3図3は、図1に示すIII−III線矢視断面説明図である。
図4図4は、図1に示すIV−IV線矢視断面説明図である。
図5図5は、図1に示すV−V線矢視断面説明図である。
図6図6は、本発明の実施の形態の好ましい他の具体例の正面説明図である。
図7図7は、図6に示すVII−VII線矢視断面説明図である。
図8図8は、図6に示すVIII−VIII線矢視断面説明図である。
図9図9は、図6に示すIX−IX線矢視断面説明図である。
図10図10は、図6に示すX−X線矢視断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態の好ましい具体例を図面を参照して詳細に説明する。本発明は、これら具体例に何等限定されないのである。
【0014】
図1から図5において、建物の一対の柱間に形成されている本例の制震壁1は、建物壁における下支持手段2及び上支持手段3と、一対の狭幅側壁板4及び5、一対の狭幅側壁板4及び5よりも幅広であって当該一対の狭幅側壁板4及び5に溶接により固着(溶接固着)された一対の幅広側壁板6及び7並びに一対の狭幅側壁板4及び5並びに一対の幅広側壁板6及び7に溶接により固着された底壁板8を有すると共に当該底壁板8及び当該底壁板8よりも下方に位置した一対の狭幅側壁板4及び5の下部9及び10で下支持手段2に下部固定手段11を介して固定された箱体12と、上端に開口13を有する箱体12に対して隙間14をもって当該箱体12内に配されていると共に上支持手段3に上部固定手段15を介して固定された抵抗板16と、箱体12内の該隙間14に充填された瀝青等の粘性体17とを具備している。
【0015】
下支持手段2は、建物の所定階の床側の下大梁21からなっており、建物の一対の柱を橋絡して当該建物の一対の柱に支持される下大梁21は、上フランジプレート22、下フランジプレート23及びウエブプレート24を一体に有したH型鋼25と、上フランジプレート22、下フランジプレート23及びウエブプレート24に溶接固着された複数の補強リブプレート26とを具備している。
【0016】
上支持手段3は、建物の所定階の天井側の上大梁31からなっており、建物の一対の柱を橋絡して当該建物の一対の柱に支持されると共に鉛直方向(上下方向)Aにおいて下大梁21に対して上方に配される上大梁31は、上フランジプレート32、下フランジプレート33及びウエブプレート34を一体に有したH型鋼35と、上フランジプレート32、下フランジプレート33及びウエブプレート34に溶接固着された複数の補強リブプレート36とを具備している。
【0017】
下部固定手段11は、箱体12の底壁板8の下面41から鉛直方向Aにおいて垂下されていると共に当該下面41並びに下部9及び10の一方の側面42に夫々溶接固着された下梁側のガセットプレート43と、鉛直方向Aにおいて下部9及び10に対応して配されていると共に当該下部9及び10の下方において上フランジプレート22の上面44に固着された一対の側板45及び46と、ガセットプレート43に対して同一鉛直面内に配されると共に上フランジプレート22の上面44並びに一対の側板45及び46の夫々の側面47に溶接固着された下梁側のガセットプレート48と、ガセットプレート43及び48の夫々に対面接触してガセットプレート43及び48の夫々を面外方向Bにおいて挟持していると共に面内方向(横方向)Cにおいて並んで配された二対のスプライスプレート49及び50並びに51及び52と、二対のスプライスプレート49及び50並びに51及び52をガセットプレート43及び48の夫々に摩擦接合させて共締めするべく、ナット53の夫々に夫々螺合した複数個のボルト54及び55とを具備している。
【0018】
箱体12は、水平方向であって面内方向Cにおいて互いに対向して配された一対の狭幅側壁板4及び5、狭幅側壁板4及び5を橋絡して当該狭幅側壁板4及び5に溶接固着されていると共に水平方向であって面外方向Bに互いに対向して配された一対の幅広側壁板6及び7並びに狭幅側壁板4及び5並びに幅広側壁板6及び7の下端に溶接固着された底壁板8に加えて、狭幅側壁板4及び5を橋絡して当該狭幅側壁板4及び5並びに幅広側壁板6及び7の上端に溶接固着されたL型鋼からなると共に開口13を規定する開口形成部材61及び62と、狭幅側壁板4及び5を橋絡して当該狭幅側壁板4及び5並びに底壁板8に溶接固着された複数枚である三枚の幅広内壁板63とを具備している。
【0019】
抵抗板16は、箱体12内において一対の狭幅側壁板4及び5、幅広側壁板6及び7、底壁板8並びに幅広内壁板63に対して隙間14をもって配された複数枚である四枚の抵抗板本体71と、四枚の抵抗板本体71の相互の面外方向Bの間隔を保持する三個の隙間保持部材72と、抵抗板本体71及び隙間保持部材72を共締めするべく、ナット73の夫々に夫々螺合した複数個のボルト74とを具備しており、四枚の抵抗板本体71のうちの面外方向Bにおいて中央側の二枚の抵抗板本体71及び三個の隙間保持部材72のうちの当該二枚の抵抗板本体71に面外方向Bにおいて挟持されて当該二枚の抵抗板本体71の面外方向Bの間隔を保持する一個の隙間保持部材72は、他の残りの二枚の抵抗板本体71及び二枚の隙間保持部材72の上端面75に対して鉛直方向Aにおいて上方に位置する上端面76を夫々有している。
【0020】
上部固定手段15は、下フランジプレート33の下面81に固着された一対の側板82及び83と、下面81並びに一対の側板82及び83の夫々の側面84に溶接固着されていると共に上端面76に鉛直方向Aにおいて隙間をもって対峙した下端面85を有し、しかも、上端面76を有している二枚の抵抗板本体71及び一個の隙間保持部材72と同一鉛直平面内に配されている上梁側のガセットプレート86と、ガセットプレート86及び上端面76を有した抵抗板本体71の夫々に対面接触してガセットプレート86及び上端面76を有した二枚の抵抗板本体71の夫々を面外方向Bにおいて挟持していると共に面内方向Cにおいて並んで配された二対のスプライスプレート87及び88並びに89及び90と、二対のスプライスプレート87及び88並びに89及び90の夫々をガセットプレート86及び上端面76を有した二枚の抵抗板本体71の夫々に摩擦接合させて共締めすべく、ナット91の夫々に夫々螺合した複数個のボルト92及び93とを具備している。
【0021】
以上の制震壁1は、地震や風、交通振動等の振動に際して、箱体12と抵抗板16との間の面内方向Cの相対的水平変位において箱体12内に収容された粘性体17に粘性剪断変形を生じさせて、この粘性剪断変形による減衰力により地震や風、交通振動等の振動を減衰させるようになっている。
【0022】
そして、制震壁1では、ガセットプレート43が鉛直方向Aのその上端面で下面41に、そして、面内方向Cのその側端面で底壁板8よりも更に下方に伸びた一対の狭幅側壁板の下部9及び10の側面42に夫々に溶接固着されている一方、二対のスプライスプレート49及び50並びに51及び52がボルト54及び55によりガセットプレート43及び48の夫々に共締めされているために、抵抗板16での大きな曲げモーメントに起因して箱体12の側端の部位である狭幅側壁板4及び5で生じる引張力に対して十分な耐力をもって下大梁21に箱体12が強固に固定されており、加えて、その製造に当たっては、ガセットプレート43の鉛直方向Aの上端面と下面41との溶接固着後の超音波探傷試験等の非破壊検査を省き得て、組み立て工数を削減し得る。なお、本発明は、斯かる溶接固着部等での溶接の確実性及び信頼性を確認するために、当該溶接固着部等に対して超音波探傷試験等の非破壊検査を行うことを否定するものではない。
【0023】
図1から図5に示す制震壁1では、下部固定手段11を、ガセットプレート43及び48と、一対の側板45及び46と、二対のスプライスプレート49及び50並びに51及び52と、ボルト54及び55とを具備して構成したが、図6から図10に示す制震壁100のように、下部固定手段11を、図1から図5に示すガセットプレート43及び48、一対の側板45及び46、一対のスプライスプレート49及び50並びにナット53に螺合したボルト54に加えて、下部9を一方の側板45に連結するスプライスプレート機構101と、下部10を側板46に連結するスプライスプレート機構102とを更に具備して、その他については図1から図5に示す制震壁1と同様にして構成してもよい。
【0024】
図6から図10に示す制震壁100において、スプライスプレート機構101は、面外方向Bにおいてガセットプレート43及び48を間にして下部9及び側板45の夫々の一方の側面42及び47に対面接触して配された一対の側端スプライスプレート111及び112と、下部9及び側板45の夫々の他方の側面113及び114に対面接触して配されていると共に面外方向Bにおける下部9及び側板45の夫々の幅に等しい幅を有し、しかも、一対の側端スプライスプレート111及び112と協働して下部9及び側板45の夫々を挟持して配された側端スプライスプレート115と、一対の側端スプライスプレート111及び112並びに側端スプライスプレート115を下部9及び側板45の夫々に共締めするべく、ナット116の夫々に夫々螺合した複数個のボルト117とを具備しており、スプライスプレート機構102は、面外方向Bにおいてガセットプレート43及び48を間にして下部10及び側板46の夫々の一方の側面42及び47に対面接触して配された一対の側端スプライスプレート121及び122と、下部10及び側板46の夫々の他方の側面123及び124に対面接触して配されていると共に面外方向Bにおける下部10及び側板46の夫々の幅に等しい幅を有し、しかも、一対の側端スプライスプレート121及び122と協働して下部10及び側板46の夫々を挟持して配された側端スプライスプレート125と、一対の側端スプライスプレート121及び122並びに側端スプライスプレート125を下部10及び側板46の夫々に共締めするべく、ナット126の夫々に夫々螺合した複数個のボルト127とを具備している。
【0025】
図6から図10に示す制震壁100においても、ガセットプレート43が底壁板8の下面41及び下部9及び10の側面42の夫々に固着されている一方、スプライスプレート49及び50がボルト54によりガセットプレート43及び48の夫々に共締めされている上に、下部9が下支持手段2及びガセットプレート48の面内方向Cの一方の側端に固着された側板45にスプライスプレート機構101により連結されており、そして、下部10が下支持手段2及びガセットプレート48の面内方向Cの他方の側端に固着された側板46にスプライスプレート機構102により連結されているために、更に十分な耐力をもって下大梁21に箱体12を強固に固定でき、加えて、超音波探傷試験等の非破壊検査を省き得て、組み立て工数を削減し得る。
【0026】
なお、制震壁1及び100は、図1から図3及び図6から図8に示すように、幅広側壁板6及び7並びに底壁板8に溶接固着された複数の補強リブ131を具備していてもよく、また、図6から図8に示すように、底壁板8及びガセットプレート43に溶接固着された複数の補強リブ132を具備していてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1、100 制震壁
2 下支持手段
3 上支持手段
4、5 狭幅側壁板
6、7 幅広側壁板
8 底壁板
9、10 下部
11 下部固定手段
12 箱体
13 開口
14 隙間
15 上部固定手段
16 抵抗板
17 粘性体
42、47、113、114、123、124 側面
101、102 スプライスプレート機構
111、112、121、122 側端スプライスプレート
115、125 側端スプライスプレート
116、126 ナット
117、127 ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10