特許第6854246号(P6854246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6854246
(24)【登録日】2021年3月17日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】尿サンプルの分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/493 20060101AFI20210329BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20210329BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20210329BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20210329BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20210329BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20210329BHJP
【FI】
   G01N33/493 ZZNA
   G01N33/493 B
   G01N33/53 D
   G01N33/68
   G01N33/574 A
   C12Q1/04
   C12M1/34 B
【請求項の数】15
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2017-564356(P2017-564356)
(86)(22)【出願日】2016年6月1日
(65)【公表番号】特表2018-523110(P2018-523110A)
(43)【公表日】2018年8月16日
(86)【国際出願番号】GB2016051608
(87)【国際公開番号】WO2016198833
(87)【国際公開日】20161215
【審査請求日】2019年5月31日
(31)【優先権主張番号】1509909.6
(32)【優先日】2015年6月8日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1603559.4
(32)【優先日】2016年3月1日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517426786
【氏名又は名称】アーケア ダイアグノスティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミラー−ジョーンズ,デビッド ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ストックリー,ジャクリーン
(72)【発明者】
【氏名】ナイバーグ,シェリル
【審査官】 高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−527003(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0190046(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0070837(US,A1)
【文献】 国際公開第2015/036781(WO,A1)
【文献】 Kai Stoeber, Robert Swinn, et al.,Diagnosis of Genito-Urinary Tract Cancer by Detection of Minichromosome Maintenance 5 Protein Urine Sediments,Journal of the National Cancer Institute,英国,2002年 7月17日,Vol. 94, No. 14,1071-1079
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 −33/98
C12M 1/34
C12Q 1/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップ:
a. 尿サンプルを溶解バッファーに曝露するステップであって、該溶解バッファーは、該尿サンプル中の細胞からMcm5を放出させることが可能であり、かつ該溶解バッファーは、Triton X-100を含むかまたはこれからなる界面活性剤を含む、上記ステップ;および
b. 該尿サンプル中の該Mcm5の存在を検出するためのアッセイを行なうステップ
を含む、被験体由来の尿サンプルを分析するための方法。
【請求項2】
a. 前記溶解バッファーが、0.4%デオキシコール酸ナトリウムおよび0.02%アジ化ナトリウムを含有するPBSではなく;
b. 前記方法が、90℃を超える温度での45分間を超える前記尿サンプルのインキュベーションを含まず;
c. 前記方法が、21ゲージ針に該尿サンプルを通過させることにより、該尿サンプル中の核酸をせん断するステップを含まず;
d. 前記方法が、該尿サンプルをDNase IまたはRNase Aに曝露させることにより、核酸を消化するステップを含まず;かつ/または
e. 前記方法が、15,000gで10分間、該サンプルを遠心分離するステップを含まない、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
以下のステップ;
細胞を捕捉するためのフィルターに尿サンプルを通過させ、それにより該細胞を該フィルター中に捕捉するステップ;
該フィルターに尿サンプル中の細胞からMcm5を放出させることが可能である溶解バッファーを通過させ、それにより該捕捉された細胞を該溶解バッファーに曝露するステップ;
該フィルターを一定時間インキュベートし、それにより該溶解バッファーによって細胞からMcm5を放出させるステップであって、該溶解バッファーは、Triton X-100を含むかまたはこれからなる界面活性剤を含む、上記ステップ
を含む、尿サンプルから細胞を調製するための方法。
【請求項4】
(i)前記溶解バッファーが、Mcm5タンパク質を実質的に変性させない、
(ii)前記溶解バッファーが抗体を変性させない、
(iii)前記界面活性剤が、0.01%〜25%、0.01%〜10%、0.05%〜5%、0.05%〜1%、0.05%〜0.5%または約0.1%の濃度でTriton X-100を含む、
(iv)前記界面活性剤が、0.1%〜20%、0.5%〜10%、0.5%〜5%または約1%の濃度でデオキシコール酸ナトリウムまたはドデシル硫酸ナトリウムを含む、
(v)前記溶解バッファーが、0.01%〜0.15%、0.03%〜0.10%、0.05%〜0.09%または約0.08%の濃度でデオキシコール酸ナトリウムを含む、
(vi)前記溶解バッファーが緩衝剤成分を含む、
(vii)前記溶解バッファーが、5mM超、5mM〜350mM、200mM〜300mM、10mM〜25mM、約10mMもしくは約250mMの濃度のTris緩衝剤を含むかまたはこれからなる緩衝剤成分を含む、
(viii)前記溶解バッファーが、溶解バッファーのpHをpH4〜pH9、pH5〜pH8、pH6〜pH8または約pH7.6に維持する緩衝剤成分を含む、
(ix)前記溶解バッファーが、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムおよびリン酸マグネシウムからなる群より選択される塩を含む、
(x)前記溶解バッファーが、20mM〜300mM、150mM〜300mM、100mM〜200mMまたは約200mMの濃度の塩を含む、
(xi)前記溶解バッファーが、1mM〜500mM、50mM〜450mM、100mM〜250mM、または100mM〜175mMのイオン強度を有する、および/または
(xii)前記溶解バッファーがRIPAバッファーを含む、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
(i)尿サンプル中の細胞からMcm5を放出させ、細胞から放出されたMcm5の存在を検出するための方法である、
(ii)前記方法が、前記尿サンプルを溶解バッファーに曝露するステップに先立って尿サンプル中の細胞を濃縮し、溶解バッファー、またはサンプル由来のペレット化した細胞の溶解バッファー中の再懸濁液に濃縮した細胞を曝露するステップを含む、
(iii)前記方法が、被験体での泌尿器癌の存在を検出するための方法である、および/または
(iv)前記方法が、被験体での泌尿器癌の存在を検出するための方法であり、前記泌尿器癌が、前立腺癌および/または膀胱癌である、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
(i)前記方法が、高温での前記尿サンプルのインキュベーションを含まない、
(ii)前記方法が、50℃超、60℃超、70℃超、80℃超、50℃〜120℃、60℃〜110℃、70℃〜100℃、または80℃〜100℃の温度である高温での前記尿サンプルのインキュベーションを含まない、
(iii)前記方法が、30分間超、35分間超、40分間超、45分間超、30分間〜2時間、35分間〜2時間、または40分間〜2時間の高温での前記尿サンプルのインキュベーションを含まない、
(iv)前記方法が、機械的せん断による前記尿サンプル中の核酸のせん断を含まない、
(v)前記方法が、核酸を消化する酵素に前記尿サンプルを曝露するステップを含まない、および/または
(vi)前記方法が、15,000gで10分間、前記サンプルを遠心分離するステップを含まない、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
(i)Mcm5の濃度に関する異常値が、被験体での泌尿器癌の尤度の増大を示す、
(ii)Mcm5の存在を検出するための前記アッセイが、ELISAアッセイである、
(iii)Mcm5の存在を検出するための前記アッセイが、サンドイッチELISAアッセイである、および/または
(iv)Mcm5の存在を検出するための前記アッセイが、捕捉抗体を用いて前記サンプル中のMcm5を捕捉するステップ、および検出抗体を用いてMcm5の濃度を検出するステップを含むサンドイッチELISAアッセイであって、該捕捉抗体および該検出抗体はMcm5に特異的に結合し、場合によって該捕捉抗体がELISAプレート上に固定化され、および/または該検出抗体が西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲート化されている、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記界面活性剤が、デオキシコール酸ナトリウムまたはドデシル硫酸ナトリウムを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記溶解バッファーが、TrisまたはTrizma緩衝剤を含むかまたはこれらからなる緩衝剤成分を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記溶解バッファーが、20mM〜300mM、150mM〜300mM、100mM〜200mMまたは約200mMの濃度の塩化ナトリウムを含むかまたはこれからなる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記溶解バッファーが、溶解バッファーのpHをpH4〜pH9、pH5〜pH8、pH6〜pH8または約pH7.6に維持する緩衝剤成分を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記尿サンプルが、
(i)尿沈渣を含む、および/または
(ii)前立腺マッサージ後に採取された初尿から得られる尿沈査を含む、
請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
(i)前記フィルターに溶解バッファーを通過させるステップが、該フィルターを通る尿の流れに対して、上流方向で少なくとも1回該フィルターに該溶解バッファーを通過させるステップ、および下流方向で少なくとも1回該フィルターに該溶解バッファーを通過させるステップを含み、場合によって、前記溶解バッファーを、上流および下流へと前記フィルターに交互に通過させる、
(ii)前記尿サンプルの体積が、1〜100mL、好ましくは約50mLである、
(iii)前記溶解バッファーの体積が、250μL〜1,000μL、好ましくは約500μLである、
(iv)前記尿サンプルを、シリンジを用いて前記フィルターに通過させる、
(v)前記溶解バッファーを、シリンジを用いて前記フィルターに通過させる、
(vi)前記溶解バッファーを、2個のシリンジの間で前記フィルターを通過させ、該2個のシリンジおよび該フィルターが該溶解バッファーを通過させるステップのために閉鎖系を形成する、および/または
(vii)インキュベーション時間が、30秒間〜1時間、好ましくは約10分間である、
請求項3に記載の方法。
【請求項14】
前記尿サンプルを溶解バッファーに曝露するステップが、請求項3または13に記載の方法を用いて行なわれる、請求項1、2または4〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
尿サンプル中の細胞からMcm5を放出させるための、請求項1〜14のいずれか1項に記載の溶解バッファーの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿サンプルを分析するための方法、被験体での泌尿器癌の診断を補助するための方法、被験体での泌尿器癌を示すバイオマーカーの存在を検出するための方法、および尿サンプル由来の細胞を調製するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
泌尿器癌(場合によっては「泌尿器系癌」と称される)は、主要かつ深刻化する疫学上の問題である。経済的に最も重要な泌尿器癌のうちの2つは、膀胱癌および前立腺癌である。
【0003】
前立腺癌は、男性で非黒色腫皮膚癌に次ぐ2番目に一般的な癌であり、英国では毎年35,000件を超える新規症例が診断され;年間約10,200名の死亡が前立腺癌により引き起こされている。欧州では約300,000件、米国では約190,000件、全世界では約670,000件の新規症例が毎年生じる。英国王立癌研究基金(Cancer Research UK)は、英国の男性で診断されるすべての癌の新規症例のうちの4分の1は前立腺癌であり、新規診断のうちの60%が70歳超の男性でのものであると報告している。この疾患の最も一般的な形態は、腺癌である。5年生存率は、英国ではほぼ80%である。既知の環境的原因はないが、前立腺癌または乳癌を有する近親者を持つ者は、この疾患の発症リスクがより高い。西アフリカ人およびアフリカ系カリブ人男性は、比較的高い前立腺癌のリスクを有する。
【0004】
前立腺癌の症状は、良性の前立腺肥大により引き起こされる症状に類似しており、急な尿意、排尿困難または排尿痛、および稀には、尿または精液中の血液を含む。しかしながら、多数の男性では、骨でのものが主である、痛みを伴う転移が形成されるまで、この疾患は無症候性のままである。
【0005】
治療は、腫瘍のステージおよび悪性度ならびに患者の全身健康状態および年齢に依存する。選択肢としては、積極的サーベイランス(active surveillance)、前立腺部分切除術または前立腺全摘除術、精巣摘除術、ホルモン治療、および小線源療法などの放射線療法が挙げられる。精巣摘除術およびホルモン治療は、腫瘍増殖に必須であるテストステロンの産生を減らすかまたはなくす。
【0006】
前立腺癌の確定診断には、多角的アプローチが必要とされる。現在の代表的な前立腺癌診断試験は、生検材料の組織学的検査である。生検の決定は、年齢に関係する血清PSAレベルおよび/または直腸指診(DRE)での異常に基づく。異常な形態を調べるために経直腸的に前立腺を触診するDREは、非特異的でもある。前立腺の形態を変化させるには小さ過ぎる腫瘍は検出されないであろうし、かつ異常な形態または肥大は、非悪性状態でもまた引き起こされる。このことは、当技術分野の課題である。前立腺サンプルは、一般的には、TRUS(経直腸的超音波)下での穿刺生検を用いて取得される。採取される前立腺の領域を最大にするために、典型的には最大で12個の、多数の針コアが取得される。この手順は、看護師または医療助手の補助を伴って泌尿器科医により、局所麻酔下にて、外来で行なわれる。この処置は、患者にとって幾分かの痛みを伴うこと、および患者を敗血症および/または出血のリスクに曝すことをはじめとする欠点を被る。組織コアは、悪性細胞の存在に関して検査室で顕微鏡検査を受け、このことは、人手を要すること、および非常に熟練した細胞学者を必要とすること、ならびにヒューマンエラーを起こしやすいという問題を有している。
【0007】
生検が侵襲的でありかつコストがかかるものであることは理解できる。前立腺癌などの泌尿器癌の診断および/またはサーベイランスのための、よりコスト効果が高く、信頼性があり、かつ/または非侵襲的なツールに対する必要性が、当技術分野に存在する。前立腺癌に対する公知の代替的かつ/または侵襲性が低い診断手順は、特異的な生物学的マーカー(「バイオマーカー」)の分析を含む。
【0008】
前立腺癌の核酸バイオマーカーの一例は、PCA3(前立腺癌遺伝子3)検査である。この尿アッセイは、前立腺癌で過剰発現されるPCA3遺伝子由来の非コードmRNAを特定する(Hessels & Schalken, The use of PCA3 in the diagnosis of prostate cancer. Nat Rev Urol, 6, 255-61; 2009)。PCA3検査(Gen-Probe社)は、上皮細胞を含有する前立腺圧出液を尿道へと出させるために用いられる、所定の形式の前立腺マッサージ後に得られる初尿試料(first-catch urine specimen)の分析に依存する。前立腺癌に対する診断として、PCA3は0.68のROC値を有し(Chun et al, Prostate Cancer Gene 3 (PCA3): development and internal validation of a novel biopsy nomogram. Eur Urol; 2009 vol 56 p659-668)、これは下記で論じられるPSA検査におけるものと同様である。しかしながら、PCA3検査は、コストがかかり、かつ医療現場での使用に適するものではなく、これがこの先行技術についての課題である。
【0009】
前立腺癌の存在を示すために頻繁に用いられるタンパク質バイオマーカーの一例は、PSA(前立腺特異的抗原)である。プライマリーケアを受診する、症状を有する患者は、典型的には血清PSA検査およびDREを受ける。しかしながら、PSAは前立腺癌に特異的ではない。PSAは構成的に発現される組織特異的細胞内酵素である。低濃度のPSAが、健康な前立腺を有する男性の血清中に存在する。血清中のPSAレベルの上昇は、前立腺からの漏出に起因して生じ、前立腺の相対的サイズを示すものである。PSAの上昇は、良性の前立腺過形成および前立腺炎などの非悪性状態、ならびに前立腺癌でも生じ得る。男性が年齢を重ねるにつれ、前立腺の体積は増加し、悪性疾患の非存在下でのPSAレベルの上昇がもたらされる。近年の研究では、「陽性」のPSA検査(4ng/mLを超えるPSAの血清レベル)のうちの60〜70%が、癌を伴わないことが見出された(Kilpelainen et al., False-positive screening results in the Finnish prostate cancer screening trial, British Journal of Cancer. 102, 469-474; 2010)。高い割合での偽陽性結果は、多数の不必要な生検施術につながり、この検査を集団スクリーニングには不適切なものにしている。加えて、PSA検査は、特に比較的若い男性での前立腺癌の相当数の症例を検出できない。PSA検査の精度は、ROC(受信者動作特性)分析で測定された場合に0.678である(Thompson et al., Operating characteristics of a prostate-specific antigen in men with an initial PSA level of 3.0 ng/ml or lower. JAMA, 294, 66-70; 2005)。英国では、迅速な医療現場アッセイが利用可能ではあるものの、PSA検査が病院の検査室で通常行われている。
【0010】
膀胱癌は、男性では4番目に一般的な癌であり、女性では9番目に一般的な癌であり、かつ無視できない疾病率および死亡率をもたらす(Jemal et al. CA Cancer J Clin. 2007. 57:43-66.)。膀胱癌を有する大多数の患者は、肉眼的もしくは顕微鏡的血尿を示すか、または頻尿および排尿障害などの他の気がかりな排尿症状を示した後に診断を受ける。最初の診断では、患者のうちの約70%は、上皮または上皮下結合組織に限局した膀胱癌を有する。これらの癌は、内視鏡的切除および膀胱内療法により管理することができる。これらの腫瘍の再発率は50%〜70%であり、症例のうちの10%〜15%が5年間の間に筋層浸潤へと進行する(Shariat et al., 2008. Rev Urol. 10:120-135)。再発は、数年後でさえも、局所的かつより稀に上部尿路に見られる場合があり、これは生涯にわたるサーベイランスを余儀なくさせる。患者のうちの残りの30%は最初の診断の時点で筋層浸潤癌を有する。この集団のうちでは、50%が2年以内に遠隔転移を生じ、60%は治療にかかわらず5年以内に死亡する。
【0011】
膀胱癌の確定診断は、手順の組み合わせを必要とする。現在は、早期膀胱癌の存在を正確かつ容易に特定する方法はない。妥当な症状を有して泌尿器科外来を受診した患者での膀胱癌に関するスクリーニングは、現在、尿検査、膀胱鏡検査、および腹部超音波、静脈尿路造影、コンピューター断層撮影または磁気共鳴画像診断などのスキャン手段を用いて行なわれる。尿サンプル由来の細胞を顕微鏡検査する尿細胞診が、場合によって用いられる。膀胱癌の検出の主流である膀胱鏡検査は、尿道局所麻酔を用いて行なわれる、比較的短く、最小限の外傷を伴う処置であり、ほぼすべての乳頭状病変および無茎性病変を明らかにする。それにもかかわらず、膀胱鏡検査はまだ侵襲的であり、患者にとっては不快感および苦痛の原因になる。加えて、膀胱鏡検査は、特に留置カテーテルまたは活動性炎症を有する患者では、膀胱粘膜の著しく異常な外観を原因として、時には確定的でない場合があり、かつ尿管内の癌を検出することができない。膀胱鏡検査は、膀胱尿路上皮の直接的可視化および生検を可能にするので、膀胱癌の診断に対する代表的な方法であると考えられているが、施術者の過失によるか、または検出困難であり得る「上皮内癌」(carcinoma in situ)の領域の小ささに起因する相当な偽陰性率を有する(van der Poel & Debruyne. Curr Opin Urol. 2001; 11:503-509;Herr. BJU Int. 1999; 84:1102-1103.)。
【0012】
膀胱癌に関する尿細胞診では、剥離した細胞を、特異的細胞表面抗原の存在、核の形態、遺伝子発現または他の生物学的マーカーについて調べることができる。尿細胞診は、高悪性度の膀胱癌の検出に対しては高い感度および特異度を有するが、低悪性度の腫瘍を検出する感度はない(Wiener et al. Acta Cytol. 1993;37:163-169)。膀胱癌再発の予測での尿細胞診の精度は、結果の解釈に主観性の要素があることに部分的には起因して、大幅に変わり得る。それゆえ、細胞診は膀胱癌のスクリーニングおよびサーベイランスにおいて理想的ではない。
【0013】
Mcm5は癌に対するバイオマーカーである(国際公開第99/021014号)。膀胱癌の非侵襲的研究では、尿中NMP22(核マトリックスタンパク質22)のELISA検出の結果と組み合わせた、尿中のミニ染色体維持複合体成分5(Mcm5)の免疫蛍光検出の結果が、生命を脅かすほとんどすべての疾患の特定を可能にすることが実証された(Kelly et al., Bladder Cancer Diagnosis and Identification of Clinically Significant Disease by Combined Urinary Detection of Mcm5 and Nuclear Matrix Protein 22 PlosONE. 7, e40305; 2012)。
【0014】
尿沈渣中のMcm5などのMcmタンパク質レベルの上昇は、前立腺での悪性変化に関連する。それゆえ、これらのMcmタンパク質レベルの上昇は、前立腺癌を検出するために用いることができるであろう。二重抗体アッセイでDELFIA(登録商標)(解離強化型ランタニド蛍光免疫アッセイ(Dissociation-Enhanced Lanthanide Fluorometric Immunoassay))および抗Mcm5モノクローナル抗体を用いて、Dudderidgeら(BJC, 103, 701-707; 2010)は、前立腺癌検出のための尿中バイオマーカーとしてのMcm5の使用を検討し、これが、「前立腺癌を有する患者を特定するための簡潔、正確かつ非侵襲的な方法であるようである」と結論付けた。30%の特異度を有するPSA検査と比較して、Mcm5の特異度は73%〜93%であると見積もられた。重要なことには、良性の前立腺過形成は、PSA検査の欠点である偽陽性の結果を生じなかった。Mcm5および他のMcmタンパク質の評価は、現在、精緻な機器および非常に高いスキルを有する操作者を含む特別な検査室を必要とし、つまり、このアッセイは病理検査室または医療現場での用途には向いていない。
【0015】
この状況は、バイオマーカーの検出による分析のためのサンプルを調製するために用いられる複雑な方法により、さらに悪化する。Mcmタンパク質は細胞中に存在するので、Mcmタンパク質は、尿サンプルなどのサンプル中の細胞から放出させなければならない。そのようなサンプルを調製するための方法は、Dudderidgeらの文献(BJC, 103, 701-707; 2010)に開示されており、ここには、サンプルを、以下のステップを含む多数のステップを用いて処理しなければならないことが記載されている:(1) 4℃にて5分間、1,500gで遠心分離するステップ、(2) 上清を捨てるステップ、(3) 500μLのPBSを用いて細胞ペレットを3回洗浄するステップ、(3) 250μLまたは500μLの処理バッファー(PBS、0.4%ドデシル硫酸ナトリウムおよび0.02%アジ化ナトリウム(sodiumqzide))中に細胞ペレットを再懸濁するステップ、(4) 再懸濁されたサンプルを95℃で45分間インキュベートするステップ、(5) 溶解物を21ゲージ針に通すことによりサンプル中のDNAをせん断するステップ、(6) DNase IおよびRNase Aを用いて37℃で2時間、核酸を消化するステップ、および(7) 15,000gで10分間、遠心分離するステップ。この方法は、Stoeber et al 2002(Journal of the National Cancer Institute, 94, 1071-1079; 2002)などの他の文献中にも見られる。この尿サンプル調製法は、複数の試薬を用いる複数のステップを含み、極めて時間がかかるものである。典型的には、これらの方法は少なくとも2時間かかる。つまり、相当に負担が少ない、尿サンプルを調製するための方法および/または装置に対する必要性がある。そのような方法は、病理検査室または医療現場での用途に対して、より適しているであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第99/021014号パンフレット
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Hessels & Schalken, The use of PCA3 in the diagnosis of prostate cancer. Nat Rev Urol, 6, 255-61; 2009
【非特許文献2】Chun et al, Prostate Cancer Gene 3 (PCA3): development and internal validation of a novel biopsy nomogram. Eur Urol; 2009 vol 56 p659-668
【非特許文献3】Kilpelainen et al., False-positive screening results in the Finnish prostate cancer screening trial, British Journal of Cancer. 102, 469-474; 2010
【非特許文献4】Thompson et al., Operating characteristics of a prostate-specific antigen in men with an initial PSA level of 3.0 ng/ml or lower. JAMA, 294, 66-70; 2005
【非特許文献5】Jemal et al. CA Cancer J Clin. 2007. 57:43-66.
【非特許文献6】Shariat et al., 2008. Rev Urol. 10:120-135
【非特許文献7】van der Poel & Debruyne. Curr Opin Urol. 2001; 11:503-509;Herr. BJU Int. 1999; 84:1102-1103.
【非特許文献8】Wiener et al. Acta Cytol., 1993; 37:163-169
【非特許文献9】Kelly et al., Bladder Cancer Diagnosis and Identification of Clinically Significant Disease by Combined Urinary Detection of Mcm5 and Nuclear Matrix Protein 22 PlosONE. 7, e40305; 2012
【非特許文献10】Dudderidge et al., BJC, 103, 701-707; 2010
【非特許文献11】Stoeber et al., Journal of the National Cancer Institute, 94, 1071-1079; 2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
Mcmタンパク質、特にMcm5の検出のための現行のアッセイは、DELFIA技術の使用を必要とし、これは使用法が複雑で、かつ高価な設備および試薬を含む。つまり、DELFIAに基づくアッセイは、病理検査室または医療現場での用途には好適ではなく、そのような用途に好適なアッセイに対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、侵襲的な外科的処置を必要としない、前立腺癌などの泌尿器癌の早期検出のために有用な方法、組成物およびキットを提供する。本方法および組成物は、臨床検査室での使用および/または医療現場用途のために好適である。
【0020】
本発明者らは、先行技術に記載される複雑な尿サンプル調製法が、尿サンプルなどのサンプル中の細胞からMcm5などのバイオマーカーを放出させるために必要とされないことを実証した。むしろ、必要なのは、サンプル中の細胞からバイオマーカーを放出させることが可能な溶解バッファーにサンプルを曝露することだけである。これは、先行技術の方法よりもはるかに簡潔である。本発明に従えば、一部の実施形態では、サンプル(尿サンプルなど)中の細胞は、単一の溶解バッファーの添加により調製および溶解させることができる。同様に、本発明者らは、この溶解バッファーへの曝露を容易に行なうために用いることができる装置を設計した。
【0021】
本発明者らは、免疫蛍光を用いないMcmタンパク質アッセイが、被験体が泌尿器癌を有するか否かを正確に検出できることも実証している。このことは、ユーロピウム標識およびDELFIA検出を用いる先行技術よりも有益である。そのような方法は、費用がかかりかつ複雑であり、つまり病理検査室または医療現場用途での使用に対して好適でない。
【0022】
したがって、第1の態様では、被験体由来の尿サンプルを分析するための方法が提供され、該方法は、以下のステップ:
a. 該尿サンプルを溶解バッファーに曝露するステップであって、このとき、該溶解バッファーは尿サンプル中の細胞から少なくとも1種のバイオマーカーを放出させることが可能である、上記ステップ;および
b. 該尿サンプル中の該少なくとも1種のバイオマーカーの濃度を決定するためのアッセイを行なうステップ
を含む。
【0023】
第2の態様では、尿サンプルを溶解バッファーに曝露するステップを含む、被験体由来の尿サンプルを分析するための方法が提供され、このとき:
a. 溶解バッファーは、0.4%デオキシコール酸ナトリウムおよび0.02%アジ化ナトリウムを含有するPBSではなく;
b. 該方法は、90℃を超える温度での約45分間の尿サンプルのインキュベーションを含まず;
c. 該方法は、該尿サンプルを21ゲージ針に通して核酸をせん断するステップを含まず;
d. 該方法は、該尿サンプルをDNase IまたはRNase Aに曝露することにより核酸を消化させるステップを含まず;かつ/または
e. 該方法は、該サンプルを15,000gで10分間、遠心分離するステップを含まず;
かつこのとき、該方法は、該尿サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの濃度を決定するためのアッセイを行なうステップをさらに含む。
【0024】
第3の態様では、被験体由来の細胞を含む尿サンプルを分析するための方法が提供され、このとき、該尿サンプルは、以下のステップ:
a. 該尿サンプル中の細胞を濃縮するステップ;および
b. 該濃縮された細胞を溶解バッファーに曝露するステップ
からなるプロセスを用いて調製され;
かつこのとき、該方法は、該尿サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの濃度を決定するためのアッセイを行なうステップをさらに含む。
【0025】
第4の態様では、被験体由来の細胞を含む尿サンプルを分析するための方法が提供され、このとき、該尿サンプルは、以下のステップ:
a. サンプルペレットを生じさせるために該サンプルを遠心分離するステップ;および
b. 該サンプル由来の該ペレット化された細胞を溶解バッファー中に再懸濁するステップ
からなるプロセスを用いて調製され;
かつこのとき、該方法は、該尿サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの濃度を決定するためのアッセイを行なうステップをさらに含む。
【0026】
第5の態様では、尿サンプル中の細胞から少なくとも1種のバイオマーカーを放出させることが可能である溶解バッファー、捕捉抗体および検出抗体を含むキットが提供され、このとき、該捕捉抗体および該検出抗体はMcm5に結合する。
【0027】
第6の態様では、尿サンプルから細胞を調製するための装置が提供され、該装置は、以下の構成要素:
注入口;
該注入口の下流に位置し、かつ該注入口と流体連通している、第1のバルブ配列;
該第1のバルブ配列の下流に配置され、かつ該第1のバルブ配列と流体連通している、尿由来の細胞を捕捉するためのフィルター;
該フィルターの下流に位置し、該フィルターと流体連通している、第2のバルブ配列;
該第2のバルブ配列の下流に配置され、かつ該第2のバルブ配列と流体連通している、流出口;
該第1のバルブ配列と流体連通している、溶解バッファーを保持するための第1のバッファー貯留部;
該第2のバルブ配列と流体連通している、溶解バッファーを保持するための第2のバッファー貯留部
を含み;
ここで、第1および第2のバルブ配列は:
該第1および第2のバルブ配列の第1の構成では、該第1のバッファー貯留部と該フィルターとの間の流体連通が遮断され、該第2のバッファー貯留部と該フィルターとの間の流体連通が遮断され、かつ該注入口、該フィルターおよび該流出口の間の流体連通が開放され、それにより該フィルターを介して該注入口から該流出口へと尿が流れることができ;かつ
該第1および第2のバルブ配列の第2の構成では、該第1のバッファー貯留部と該フィルターとの間の流体連通が開放され、該第2のバッファー貯留部と該フィルターとの間の流体連通が開放され、かつ該注入口を通って該流出口から出る流れが遮断され、それにより溶解バッファーが該フィルターを介して該第1のバッファー貯留部と該第2のバッファー貯留部との間を流れることができる
ように構成することができる。
【0028】
第7の態様では、尿サンプルから細胞を調製するための方法が提供され、該方法は、以下のステップ:
細胞を捕捉するためのフィルターを通して該尿サンプルを通過させ、それにより細胞を該フィルターに捕捉するステップ;
該フィルターを通して溶解バッファーを通過させ、それにより該捕捉された細胞を該溶解バッファーに曝露するステップ;
該フィルターを一定時間インキュベートし、それにより該溶解バッファーによって細胞から少なくとも1種のバイオマーカーを放出させるステップ
を含む。
【0029】
第8の態様では、被験体での泌尿器癌を示すバイオマーカーの存在を検出するための方法が提供され、該方法は以下のステップ:
a. Mcmタンパク質の濃度を決定するために被験体由来のサンプルに対してアッセイを行なうステップ;
b. ステップa.で決定されるMcmタンパク質の濃度を参照値と比較するステップ
を含み;
このとき、該アッセイは免疫蛍光アッセイではない。
【0030】
第9の態様では、本発明の方法を行なうために好適なキットが提供される。
【0031】
第10の態様では、捕捉抗体および検出抗体を含む、泌尿器癌の診断での使用のためのキットが提供され、このとき、(a) 該捕捉抗体および該検出抗体はMcm5に特異的に結合し、(b) 該捕捉抗体は固相支持体に結合し、かつ(c) 該検出抗体は西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲート化されている。
【0032】
第11の態様では、被験体由来の尿サンプルを分析するためのデバイスが提供され、該デバイスは、以下の構成要素:
本発明の装置;および
該尿サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの濃度を決定することが可能なアッセイデバイス
を含む。
【0033】
第12の態様では、尿サンプル中の細胞から少なくとも1種のバイオマーカーを放出させるための本発明の溶解バッファーの使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1-1】配列表を示す図である。
図1-2】配列表を示す図である。
図1-3】配列表を示す図である。
図1-4】配列表を示す図である。
図2】様々な濃度のMcm5の450nmでの吸光度を説明するグラフである。
図3】ストック較正溶液をどのように希釈するかを説明する図である。
図4】4種類の異なる溶解バッファー:Uro LB(0.08%デオキシコール酸ナトリウム、0.08%CHAPS、2mM EDTA、150mM Trizma pH7.6)、Cytobuster TM、Glolysis TM、および0.1%SDS 50mM Trizma pH7.6、150mM NaC、1mM EDTAへの曝露後の尿路上皮癌細胞からのMcm5放出量を比較するグラフである。
図5】改変前のCytoBuster、RIPAバッファーおよびTBS-Tバッファーを比較するグラフである。
図6】溶解物凍結融解前および後での、TBSTバッファーに基づき、かつRIPAバッファー由来の要素を含むバッファーを比較するグラフである。
図7】溶解物凍結融解前および後での、RIPAバッファーに基づくが、一部のRIPAバッファー要素が除去されたバッファーを比較するグラフである。
図8】新鮮溶解物を用いた、種々の濃度のTrisおよびTriton X-100を有するバッファーを比較するグラフである。
図9】新鮮溶解物を用いた、種々のバッファー基剤処方(TBS、PBS、重炭酸塩、MOPSおよびHEPES)を比較するグラフである。
図10】新鮮溶解物を用いた、種々の濃度のTris(100mM〜350mM)を有するバッファーを比較するグラフである。
図11】凍結融解溶解物を用いた、TBS-TバッファーおよびRIPAバッファーに基づくが、イオン強度が変更されたバッファーを比較するグラフである。
図12】凍結融解溶解物を用いた、NaCl強度が変更されたTBS-Tバッファーを比較するグラフである。
図13】様々な安定化剤をさらに含むTBS-Tバッファーを比較するグラフである。
図14】6日間の保存後の、様々な濃度の安定化剤を含むTBSTバッファーを比較するグラフである。
図15A】種々の細胞株でのTBSTバッファー±2.5%BSAの有効性を評価するグラフである。
図15B】種々の細胞株でのTBSTバッファー±2.5%BSAの有効性を評価するグラフである。
図15C】種々の細胞株でのTBSTバッファー±2.5%BSAの有効性を評価するグラフである。
図16】ProClin950含有または不含のTBST+2.5%BSAバッファーを比較するグラフである。
図17】アジ化ナトリウム(NaN3)含有または不含のTBST+2.5%BSAバッファーを比較するグラフである。
図18】尿サンプルから細胞を調製するための装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
定義
用語「含む」(含む、含んでいる)は、当技術分野でのその通常の意味、すなわち、記載される特徴または特徴の群が含まれるという意味を有すること、しかし、この用語はいずれかの他の記載される特徴または特徴の群がこれもまた存在することを排除するものではないことが理解されるべきである。
【0036】
用語「からなる」もまた、当技術分野でのその通常の意味、すなわち、さらなる特徴を排除して、記載される特徴または特徴の群が含められるという意味を有することが理解されるべきである。例えば、界面活性剤からなる溶解バッファーは、界面活性剤を含有し、かつ他の構成成分を含有しない。一方で、ポリソルベート80からなる界面活性剤を含む溶解バッファーは、界面活性剤以外の構成成分を含み得るが、溶解バッファー中の界面活性剤はポリソルベート80のみである。
【0037】
「含む」または「含んでいる」が用いられるすべての実施形態に関して、本発明者らは、「からなる」または「からなっている」が用いられるさらなる実施形態を予期する。つまり、「含む」のすべての開示は、「からなる」の開示であると考えられるべきである。
【0038】
尿サンプル調製法
本発明は、尿サンプルを溶解バッファーに曝露するステップを含む、尿サンプルを分析するための方法に関する。これらの方法は、先行技術の方法よりも、明らかに簡潔であり、かつコスト効率が高い。
【0039】
用語「尿サンプルを溶解バッファーに曝露する」は、尿サンプル中の細胞(またはこれらの細胞のうちの相当な割合)が溶解バッファーと接触するように尿サンプルを扱うことを意味すると考えることができる。好適には、尿サンプルは、遠心分離されてサンプルペレットを生じ、上清が廃棄されて、サンプルペレットが溶解バッファー中に再懸濁される。あるいは、例えば、濃縮されたバッファー構成成分が液体尿サンプルに添加されて、溶解バッファーに曝露された尿サンプルを含む溶液が形成される。
【0040】
一実施形態では、尿サンプルは、以下のステップ:
a. 該尿サンプル中の細胞を濃縮するステップ;および
b. 該濃縮された細胞を溶解バッファーに曝露するステップ
からなるプロセスを用いて調製される。
【0041】
好適には、尿サンプル中の細胞を濃縮するステップa.は、細胞を捕捉するために尿サンプルをろ過することにより行なわれる。好適には、溶解バッファー中の細胞を濃縮するステップa.および該濃縮された細胞を溶解バッファーに曝露するステップb.は、本発明のデバイスもしくは装置を用いて、または本発明の尿サンプルから細胞を調製するための方法を用いて行なわれる。
【0042】
さらなる好ましい実施形態では、方法は、尿サンプルを溶解バッファーに曝露するステップ、濃縮された細胞を溶解バッファーに曝露するステップ、またはサンプル由来のペレット化された細胞の溶解バッファー中への再懸濁に先立って、尿サンプル中の細胞を濃縮するステップを含む。
【0043】
一実施形態では、細胞を含む尿サンプルは、以下のステップ:a. サンプルペレットを生じさせるためのサンプルの遠心分離;およびb. サンプル由来のペレット化された細胞の溶解バッファー中への再懸濁、からなるプロセスを用いて調製される。
【0044】
好適には、サンプルは、500g〜5,000gで1分間〜30分間、750g〜2,500gで1分間〜20分間、750g〜2,000gで3分間〜10分間、または1,500gで約5分間遠心分離される。
好適には、ペレットは、使い捨てチップを取り付けた調節可能ピペットを用いて再懸濁される。
【0045】
一実施形態では、方法は、90℃を超える温度での約45分間の尿サンプルのインキュベーションを含まない。任意により、方法は、高温での尿サンプルのインキュベーションを含まない。一実施形態では、高温は、50℃超、60℃超、70℃超、80℃超、90℃超、50℃〜120℃、60℃〜110℃、70℃〜100℃、または80℃〜100℃の温度である。任意により、方法は、30分間超、35分間超、40分間超、45分間超、30分間〜2時間、35分間〜2時間、または40分間〜2時間にわたる高温での尿サンプルのインキュベーションを含まない。
【0046】
さらなる実施形態では、方法は、21ゲージ針に尿サンプルを通過させることにより核酸をせん断するステップを含まない。さらなる実施形態では、方法は、尿サンプルを機械的せん断に曝露するステップを含まない。
さらなる実施形態では、方法は、尿サンプルをDNase IまたはRNase Aに曝露することにより核酸を消化するステップを含まない。
【0047】
任意により、方法は、90℃超の温度での45分間超にわたる尿サンプルのインキュベーション、21ゲージ針に尿サンプルを通過させることにより尿サンプル中の核酸をせん断するステップ、尿サンプルをDNase IまたはRNase Aに曝露することにより核酸を消化するステップ、サンプルを15,000gで10分間遠心分離するステップを含まず、このとき、溶解バッファーは0.4%デオキシコール酸ナトリウムおよび0.02%アジ化ナトリウムを含有するPBSではない。
【0048】
語句「尿サンプルをDNase IまたはRNase Aに曝露することにより核酸を消化するステップを含まない」とは、サンプル中の核酸の顕著な消化を引き起こすために有効な濃度のDNase IまたはRNase Aにサンプルを曝露するべきではないことを意味する。好ましくは、サンプルは、20U/mL超のDNase Iまたは1μg/mL超のRNase Aには曝露されない。好適には、サンプルは、1U/mL超、5U/mL超、10U/mL超、15U/mL超、1U/mL〜500U/mL、5U/mL〜250U/mL、10U/mL〜100U/mLまたは15U/mL〜100U/mLのDNase Iには曝露されない。好適には、サンプルは、0.1μg/mL超、0.2μg/mL超、0.5μg/mL超、0.7μg/mL超、0.1μg/mL〜100μg/mL、0.5μg/mL〜50μg/mLまたは0.5μg/mL〜25μg/mLのRNase Aには曝露されない。
【0049】
さらなる実施形態では、方法は、15,000gで10分間、サンプルを遠心分離するステップを含まない。さらなる実施形態では、方法は、サンプルを遠心分離するステップを含まない。さらなる実施形態では、方法は、10,000g超、12,000g超、14,000g超または14,500g超でサンプルを遠心分離するステップを含まない。さらなる実施形態では、方法は、2分間超、5分間超、7分間超または8分間超、サンプルを遠心分離するステップを含まない。
【0050】
好ましい実施形態では、方法は、尿サンプル中の細胞からMcm5などの少なくとも1種のバイオマーカーを放出させ、該細胞から放出される該少なくとも1種のバイオマーカーの濃度を決定するための方法である。
一実施形態では、本発明の尿サンプルを分析するための方法は、被験体での泌尿器癌の診断を補助するための、より大きな方法の一部分である。
【0051】
本発明の溶解バッファー
溶解バッファーは、一般的に、細胞を溶解する目的のために用いられるバッファーである。細胞から1種以上のバイオマーカーを放出させることに加えて、溶解バッファーは、引き続く分析のために用いられる方法と適合する必要がある。例えば、分析法が二重抗体サンドイッチELISAである場合、溶解バッファーは、マイクロタイタープレートの表面に結合した捕捉抗体を分解してはならない。溶解バッファーは、一般的には、しかし排他的ではなく、1種以上の界面活性剤(detergent)(surfactantとしても知られる)、1種以上の塩および緩衝剤を含む。これらの構成成分の濃度は、溶解バッファーの有効性に影響を与える。
【0052】
本発明の好ましい実施形態では、溶解バッファーは、サンプル中の細胞からMcm5などのバイオマーカーを放出させることが可能である。溶解バッファーは、放出されるバイオマーカー(Mcm5など)の量が、0.08%デオキシコール酸ナトリウム、0.08%CHAPS、2mM EDTA、150mM Trizma、pH7.6を含有するバッファーを用いる場合に放出される量の、40%、50%、60%、70%、または80%を超える場合、「サンプル中の細胞からMcm5などのバイオマーカーを放出させることが可能である」と考えられるであろう。一実施形態では、溶解バッファーは、放出されるMcm5などのバイオマーカーの量が、10mM Tris(pH7.6)、200mM NaCl、2.5%BSA、0.1%Triton X100および0.09%アジ化ナトリウムを含有するバッファーを用いる場合に放出される量の、40%、50%、60%、70%、または80%を超える場合、「サンプル中の細胞からMcm5などのバイオマーカーを放出させることが可能である」と考えられるであろう。溶解バッファーを用いて放出されるMcm5などのバイオマーカーの量は、溶解バッファーへの曝露後に存在する量をアッセイするステップ、およびそれを、0.08%デオキシコール酸ナトリウム、0.08%CHAPS、2mM EDTA、150mM Trizma、pH7.6を含有するバッファーに曝露された参照サンプル(好ましくは第1のサンプルと実質的に同じであるかまたは同一であるサンプル)と比較するステップにより決定することができる。一実施形態では、溶解バッファーを用いて放出されるMcm5などのバイオマーカーの量は、溶解バッファーへの曝露後に存在する量をアッセイするステップ、およびそれを、10mM Tris(pH7.6)、200mM NaCl、2.5%BSA、0.1%Triton X100および0.09%アジ化ナトリウムを含有するバッファーに曝露された参照サンプル(好ましくは第1のサンプルと実質的に同じであるかまたは同一であるサンプル)と比較するステップにより決定することができる。放出されるMcm5などのバイオマーカーの量は、実施例1に記載されるアッセイなどのサンドイッチELISAアッセイを用いて測定することができる。サンドイッチアッセイで用いられる抗体は、Mcm5などのバイオマーカーに結合する抗体、例えば、本発明に従う第1のモノクローナル抗体または第2のモノクローナル抗体であるべきである。好ましくは、12A7抗体および4B4抗体が用いられる。
【0053】
本発明のまたさらに好ましい実施形態では、溶解バッファーは、尿サンプル中の細胞からMcm5を放出させることが可能であり、かつMcm5タンパク質を実質的に分解しない。溶解バッファーへのサンプルの曝露後に存在する無傷のMcm5の量が、0.08%デオキシコール酸ナトリウム、0.08%CHAPS、2mM EDTA、150mM Trizma、pH7.6を含有するバッファーへの曝露後の無傷のMcm5の量の、40%、50%、60%、70%、または80%を超える場合、バッファーは、Mcm5タンパク質を実質的に分解しないと考えることができる。配列番号1および配列番号2に結合する抗体(第1のモノクローナル抗体および第2のモノクローナル抗体または12A7抗体および4B4抗体など)に対する結合部位が存在する場合、Mcm5タンパク質は無傷であると考えることができる。サンプル中のMcm5がどれだけ分解されているかを測定することは、当業者の能力の範囲内である。サンプル中のMcm5が本発明に従う第1のモノクローナル抗体および第2のモノクローナル抗体に結合できるか否かを知るために、サンプルを試験するべきである。これは、実施例1に記載されるものなどのサンドイッチELISAアッセイを用いて測定することができる。サンドイッチアッセイで用いられる抗体は、Mcm5に結合する抗体、例えば、本発明の第1のモノクローナル抗体または第2のモノクローナル抗体であるべきである。好ましくは、12A7抗体および4B4抗体が用いられる。
【0054】
溶解バッファーへの曝露後の抗体の活性が、溶解バッファーへの曝露前の抗体の活性の40%、50%、60%、70%、または80%である場合、溶解バッファーは抗体を変性させないと考えることができる。抗体の活性は、実施例1に記載されるものなどのELISAアッセイを用いて試験することができる。
【0055】
一実施形態では、溶解バッファーは、新鮮サンプル中の細胞からMcm5を放出させることが可能である。用語「新鮮サンプル」とは、凍結されたことがないサンプルを意味する。好ましくは、「新鮮サンプル」は、本発明の方法でのその使用よりも、10日間未満、5日間未満、2日間未満または1日間未満先立って、患者から取得されている。一実施形態では、細胞は、溶解バッファーに曝露され、続いてさらなる処理前に凍結される。例えば、尿サンプルを遠心分離により濃縮し、それから上清を廃棄することができ、続いて、濃縮された細胞に溶解バッファーを添加することができる。好ましくは、凍結されたサンプルは、尿サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの濃度を決定するためのアッセイを行なうステップの前に解凍される。好ましくは、サンプルは、尿サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの濃度を決定するためのアッセイを行なうステップの前に、少なくとも1時間、少なくとも1日間、少なくとも5日間または少なくとも10日間、凍結される。好ましくは、サンプルは、尿サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの濃度を決定するためのアッセイを行なうステップの前に、1時間〜1年間、1時間〜6ヵ月間、1日間〜3ヵ月間または約1週間、凍結される。
【0056】
本発明の一実施形態では、溶解バッファーは、CytobusterTMタンパク質抽出試薬である。
一実施形態では、溶解バッファーは、0.4%デオキシコール酸ナトリウムおよび0.02%アジ化ナトリウムを含有するPBSではない。
【0057】
一実施形態では、溶解バッファーは、界面活性剤(detergent)(surfactantとも呼ばれる)を含む。一般的には、界面活性剤は、細胞壁を破壊することが知られている化合物である。界面活性剤は、疎水性領域と親水性領域との両方を有する両親媒性である。好適な界面活性剤は当業者に周知である。好適には、界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤または双性イオン性界面活性剤である。好適には、界面活性剤は、デオキシコール酸ナトリウム、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート(CHAPS)、アルキルベンゼンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、Tween界面活性剤(ポリオキシエチレン(2b)ソルビタンモノオレエートまたはTween-20など)、およびTriton界面活性剤(ポリエチレングリコールp-(1,1,3,3,-テトラメチルブチル)-フェニルエーテルまたはTriton X-100など)からなる群より選択される。好適には、界面活性剤はデオキシコール酸ナトリウム(sodium deoxychlolate)を含む。好適には、界面活性剤はCHAPSを含む。好適には、界面活性剤はデオキシコール酸ナトリウムおよびCHAPSを含む。好適には、溶解バッファーは、0.01%〜0.15%、0.03%〜0.10%、0.05%〜0.09%、または約0.08%の濃度で、デオキシコール酸ナトリウムを含む。好適には、溶解バッファーは、0.01%〜0.15%、0.03%〜0.10%、0.05%〜0.09%、または約0.08%の濃度で、CHAPSを含む。好適には、界面活性剤はTriton X-100を含む。好ましくは、界面活性剤は、0.01%〜25%、0.01%〜10%、0.05%〜5%、0.05%〜1%、0.05%〜0.5%、0.075%〜0.125%または約0.1%の濃度で、Triton X-100を含む。好適には、界面活性剤はTriton X-100からなる。好ましくは、界面活性剤は、0.01%〜25%、0.01%〜10%、0.05%〜5%、0.05%〜1%、0.05%〜0.5%、0.075%〜0.125%または約0.1%の濃度の、Triton X-100からなる。好適には、界面活性剤は、ポリソルベート、好ましくはポリソルベート20(Tween 20としても知られる)を含む。好適には、界面活性剤は、0.01%〜5%、0.02%〜1%、0.03%〜0.07%または約0.05%の濃度で、ポリソルベートを含む。好適には、界面活性剤は、デオキシコール酸ナトリウムまたはドデシル硫酸ナトリウムを含む。例えば、界面活性剤は、0.1%〜20%、0.5%〜10%、0.5%〜5%、0.75%〜1.25%または約1%の濃度で、デオキシコール酸ナトリウムまたはドデシル硫酸ナトリウムを含むことができる。
【0058】
さらなる実施形態では、溶解バッファーはキレート剤を含む。さらなる実施形態では、溶解バッファーはキレート剤を含まない。キレート剤は、金属イオンと配位結合することができる多座配位子である。好適には、キレート剤はEDTA(エチレンジアミン四酢酸)である。任意により、溶解バッファーは、0.5mM〜10mM、1mM〜5mM、1.5mM〜3mM、または約2mMの濃度で、EDTAを含む。
【0059】
さらなる実施形態では、溶解バッファーは、緩衝剤成分を含む。緩衝剤成分は、2.0のpH単位、1.5のpH単位または1.0のpH単位未満の範囲のpHに溶解バッファーのpHを維持するいずれかの構成成分であると考えることができる。この目的のために好適な緩衝剤の例は、当業者に周知である。一実施形態では、緩衝剤成分は、TAPS(3-{[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}プロパンスルホン酸)、ビシン(Bicine)(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン)、Tris(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン)、Tricine(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン)、TAPSO(3-[N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、HEPES(4-2-ヒドロキシエチル-1-ピペラジンエタンスルホン酸)およびMOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)からなる群より選択される緩衝剤である。好適には、緩衝剤成分は、Tris、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)、MOPS、重炭酸塩またはHEPES緩衝剤を含む。好適には、緩衝剤成分は、Tris、PBS、MOPSまたは重炭酸塩緩衝剤を含む。好適には、緩衝剤成分は、Tris、PBSまたは重炭酸塩緩衝剤を含む。一実施形態では、緩衝剤成分は、TrisまたはTrizma緩衝剤である。一実施形態では、緩衝剤成分は、TrisもしくはTrizma緩衝剤を含むか、またはそれからなる。Trizmaは、Trizma(登録商標)プリセット結晶pH7.6'(Sigma-Aldrich社、カタログ番号T7943)と称される場合がある。さらなる実施形態では、緩衝剤成分は、pH4〜pH9、pH5〜pH8、pH6〜pH8、または約pH7.6のpHでバッファーのpHを維持する。任意により、緩衝剤成分はTrisまたはTrizma緩衝剤であり、かつ、緩衝剤成分は、pH4〜pH9、pH5〜pH8、pH6〜pH8、または約pH7.6に、溶解バッファーのpHを維持する。任意により、緩衝剤成分はTrisもしくはTrizma緩衝剤を含むかまたはそれからなり、かつ、緩衝剤成分は、pH4〜pH9、pH5〜pH8、pH6〜pH8、または約pH7.6に、溶解バッファーのpHを維持する。
【0060】
好ましくは、緩衝剤成分は、例えば、5mM超、5mM〜350mM、200mM〜300mM、225mM〜275mM、10mM〜25mM、8mM〜12mM、約10mMまたは約250mMの濃度の、Tris緩衝剤を含む。好ましくは、緩衝剤成分は、例えば、5mM超、5mM〜350mM、200mM〜300mM、225mM〜275mM、10mM〜25mM、8mM〜12mM、約10mMまたは約250mMの濃度の、Tris緩衝剤からなる。好適には、緩衝剤成分は、例えば、5mM〜250mM、50mM〜250mMまたは約100mMの濃度の、リン酸緩衝生理食塩水を含む。
【0061】
一実施形態では、溶解バッファーは、0.01%〜0.15%の濃度のデオキシコール酸ナトリウム、0.01%〜0.15%の濃度のCHAPS、0.5mM〜10mMの濃度のEDTA、およびTrisまたはTrizma緩衝剤を含み、このとき、TrisまたはTrizma緩衝剤はpH4〜pH9に溶解バッファーのpHを維持する。さらなる実施形態では、溶解バッファーは、0.05%〜0.09%の濃度のデオキシコール酸ナトリウム、0.05%〜0.09%の濃度のCHAPS、1.5mM〜3mMの濃度のEDTA、およびTrisまたはTrizma緩衝剤を含み、このとき、TrisまたはTrizma緩衝剤はpH6〜pH8に溶解バッファーのpHを維持する。さらなる実施形態では、溶解バッファーは、約0.08%の濃度のデオキシコール酸ナトリウム、約0.08%の濃度のCHAPS、約2mMの濃度のEDTA、およびTrisまたはTrizma緩衝剤を含み、このとき、TrisまたはTrizma緩衝剤は約pH7.6に溶解バッファーのpHを維持する。
【0062】
一実施形態では、溶解バッファーは、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムまたはリン酸マグネシウムからなる群より選択される塩を含む。好ましくは、塩は、ナトリウム塩またはカリウム塩である。好適には、塩は、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムである。好適には、塩は、20mM〜300mM、150mM〜300mM、100mM〜200mM、150mM〜250mM、175mM〜275mMまたは約200mMの濃度である。好適には、塩は、塩化ナトリウムもしくは塩化カリウムを含むかまたはそれからなる。好適には、塩は、20mM〜300mM、150mM〜300mM、100mM〜200mM、150mM〜250mM、175mM〜275mMまたは約200mMの濃度である。好ましくは、塩は、例えば20mM〜300mM、150mM〜300mM、100mM〜200mMまたは約200mMの濃度の、塩化ナトリウムである。好ましくは、塩は、例えば、20mM〜300mM、150mM〜300mM、100mM〜200mMもしくは約200mMの濃度の、塩化ナトリウムを含むかまたは塩化ナトリウムからなる。
【0063】
一実施形態では、溶解バッファーは、1mM〜500mM、50mM〜450mM、100mM〜250mM、100mM〜175mM、または125mM〜175mMのイオン強度を有する。バッファーの種々の構成成分が、このイオン強度に寄与し得る。例えば、溶解バッファーは、緩衝剤成分(Trisなど)および追加の塩成分(塩化ナトリウムなど)を含むことができ、これらの構成成分の両方が溶解バッファーのイオン強度に寄与し得る。
【0064】
一実施形態では、溶解バッファーは安定化剤を含む。「安定化剤」は、タンパク質の分解を減少させる構成成分である。例えば、安定化剤は、Mcm5の分解を減少させる。緩衝剤成分がMcm5を安定化させるか否かは、実施例1に記載されるアッセイなどのサンドイッチELISAアッセイを用いて試験することができる。例えば、サンプルを、潜在的安定化剤を含む溶解バッファーに曝露させることができ、対照サンプルを、潜在的安定化剤を含まない溶解バッファーに曝露させることができる。曝露後に検出することができるMcm5のレベルは、サンドイッチELISAを用いて測定される。潜在的安定化剤を含むバッファーを有するサンプル中のMcm5のレベルが、潜在的安定化剤を含まないバッファーを有するサンプル中のMcm5のレベルよりも高い場合、該潜在的安定化剤は本発明に従う安定化剤である。本発明の安定化剤は、Mcm5の分解を防止することができ、それにより、安定化剤を含むバッファー中での1日間、3日間、5日間、1週間または2週間の保存後に、1%、2%、5%、10%、20%または25%多くのMcm5が存在する(安定化剤を含まないバッファーと比較して)。
【0065】
安定化剤は、ウシ血清アルブミン(BSA)、胎児ウシ血清(FBS)およびプロテアーゼ阻害剤からなる群より選択される安定化剤であり得る。例えば、プロテアーゼ阻害剤としては、フッ化4-(2-アミノエチル)ベンゼンスルホニル塩酸塩(Petrabloc SCまたはAEBSF)、AEBSFを含有するプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma P8340など)、アプロチニン、ベスタチン塩酸塩、N-(トランス-エポキシスクシニル)-L-ロイシン4-グアニジノブチルアミド(E-64)、ロイペプチンヘミ硫酸塩およびペプスタチンA、ならびにRoche completeプロテアーゼ阻害剤が挙げられる。好ましくは、安定化剤は、例えば、0.1%〜20%、0.1%〜10%、0.1%〜5%、1%〜3%、2.2%〜2.7%または約2.5%の濃度のBSAである。好ましくは、安定化剤は、例えば、0.1%〜20%、0.1%〜10%、0.1%〜5%、1%〜3%、2.2%〜2.7%もしくは約2.5%の濃度のBSAを含むかまたはこれからなる。
【0066】
溶解バッファーは、抗微生物剤を含むことができる。構成成分は、それが、微生物、例えば細菌、ウイルスまたは真菌の複製を減少させる場合、「抗微生物剤」である。一実施形態では、抗微生物剤は、アジ化ナトリウムまたはイソチアゾロンである。一実施形態では、抗微生物剤は、アジ化ナトリウムもしくはイソチアゾロンを含むか、またはそれからなる。イソチアゾロンは、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンおよび/または5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンであり得る。好ましくは、抗微生物剤は、例えば、0.01%〜5%、0.02%〜1.5%、0.07%〜0.12%または約0.09%の濃度で、アジ化ナトリウムを含む。好ましくは、抗微生物剤は、例えば、0.01%〜5%、0.02%〜1.5%、0.07%〜0.12%または約0.09%の濃度で、アジ化ナトリウムからなる。
【0067】
溶解バッファーは、以下の構成成分を含むことができる:
(i) 1mM〜500mM Tris;
(ii) 5mM〜500mM塩化ナトリウム;
(iii) 0.1%〜20%BSA;
(iv) 0.001%〜10%Triton X-100;および
(v) 0.001%〜1%アジ化ナトリウム。
【0068】
溶解バッファーは、以下の構成成分からなることができる:
(i) 1mM〜500mM Tris;
(ii) 5mM〜500mM塩化ナトリウム;
(iii) 0.1%〜20%BSA;
(iv) 0.001%〜10%Triton X-100;および
(v) 0.001%〜1%アジ化ナトリウム。
【0069】
あるいは、溶解バッファーは、以下の構成成分を含むことができる:
(i) 1mM〜150mM Tris;
(ii) 50mM〜400mM塩化ナトリウム;
(iii) 0.5%〜10%BSA;
(iv) 0.01%〜5%Triton X-100;および
(v) 0.01%〜0.5%アジ化ナトリウム。
【0070】
あるいは、溶解バッファーは、以下の構成成分からなることができる:
(i) 1mM〜150mM Tris;
(ii) 50mM〜400mM塩化ナトリウム;
(iii) 0.5%〜10%BSA;
(iv) 0.01%〜5%Triton X-100;および
(v) 0.01%〜0.5%アジ化ナトリウム。
【0071】
あるいは、溶解バッファーは、以下の構成成分を含むことができる:
(i) 1mM〜100mM Tris;
(ii) 100mM〜300mM塩化ナトリウム;
(iii) 1%〜5%BSA;
(iv) 0.01%〜1%Triton X-100;および
(v) 0.01%〜0.1%アジ化ナトリウム。
【0072】
あるいは、溶解バッファーは、以下の構成成分からなることができる:
(i) 1mM〜100mM Tris;
(ii) 100mM〜300mM塩化ナトリウム;
(iii) 1%〜5%BSA;
(iv) 0.01%〜1%Triton X-100;および
(v) 0.01%〜0.1%アジ化ナトリウム。
【0073】
溶解バッファーは、以下の構成成分を含むことができる:
(i) 約10mM Tris;
(ii) 約200mM塩化ナトリウム;
(iii) 約2.5%BSA;
(iv) 約0.1%Triton X-100;および
(v) 約0.09%アジ化ナトリウム。
【0074】
溶解バッファーは、以下の構成成分からなることができる:
(i) 約10mM Tris;
(ii) 約200mM塩化ナトリウム;
(iii) 約2.5%BSA;
(iv) 約0.1%Triton X-100;および
(v) 約0.09%アジ化ナトリウム。
【0075】
溶解バッファーは、RIPAバッファーであり得る。
【0076】
一実施形態では、本発明の溶解バッファーは、尿サンプル中の細胞から少なくとも1種のバイオマーカーを放出させるために用いられる。任意により、該少なくとも1種のバイオマーカーは、Mcmタンパク質、好ましくはMcm5である。
【0077】
キット
本発明の一態様では、本発明の溶解バッファー、捕捉抗体および検出抗体を含むキットが提供され、このとき、捕捉抗体および検出抗体はMcm5に結合する。キットは、サンプル中のMcm5の濃度を決定するためのアッセイ(例えば、ELISAアッセイ)の一部分として用いることができる。溶解バッファーは、サンプル中の細胞からMcm5を放出させることができる。捕捉抗体および検出抗体は、サンプル中のMcm5の濃度を定量するために用いることができる。
【0078】
捕捉抗体および検出抗体
「捕捉抗体」は、固相支持体、例えば、マイクロタイタープレートとしても知られるELISAプレートの表面に結合している抗体である。「捕捉抗体」は、Mcm5に結合することができ、したがってMcm5を固相支持体に結合させることができる。一実施形態では、「捕捉抗体」は、ELISAプレート上に固定化される。
【0079】
「検出抗体」は、Mcm5などの標的に結合し、かつ標的の濃度を検出するために用いることができる抗体である。例えば、抗体は、検出可能な標識により直接的または間接的に標識することができる。あるいは、「検出抗体」は、「検出抗体」のFc領域に特異的な第3の抗体と検出抗体を接触させることにより標識することができ、この場合、第3の抗体は標識を担持しているはずである。好適な標識の例としては、酵素(西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、またはグルコースオキシダーゼなど)、放射性同位体(ユーロピウム2+など)、DNAリポーター、蛍光性リポーター、または電気化学発光性タグが挙げられる。好ましい実施形態では、「検出抗体」は、西洋ワサビペルオキシダーゼに対するコンジュゲート化により標識される。
【0080】
抗体
用語「抗体」とは、天然に存在する形態、または単鎖抗体、キメラ抗体もしくはヒト化抗体などの組み換え抗体を意味することができる。用語「抗体」(単数および複数)はまた、Mcm5のようなMcmタンパク質などの標的タンパク質に結合できる抗体の断片を包含すると考え得る。そのような断片としては、Fab'2、F'(ab)2、Fv、単鎖抗体またはダイアボディが挙げられる。好ましい実施形態では、本発明の抗体は、(断片よりもむしろ)天然に存在する全長抗体である。さらなる好ましい実施形態では、抗体はヒト化抗体ではない。
【0081】
一般的に、抗体は、2本の重鎖および2本の軽鎖から形成される。各重鎖は、重鎖定常領域(CH)および重鎖可変領域(VH)から構成される。同様に、各軽鎖は、軽鎖定常領域(CL)および軽鎖可変領域(VL)から構成される。VHおよびVL領域は相補性決定領域(CDR)を含む。CDRは、標的タンパク質への特異的結合性を主に担う。
【0082】
さらに、本発明の抗体は、Mcm5のエピトープ(断片)に結合するであろう。つまり、用語「Mcm5に結合する抗体」とは、Mcm5の1個のエピトープのみに結合する抗体を意味する。任意により、Mcm5に結合する抗体は、Mcm5に「特異的に結合する」抗体である。「特異的に結合する」との用語は、非標的分子に対するその結合親和性の少なくとも2倍、10倍、50倍または100倍大きな結合親和性を有して、Mcm5などの標的に結合する抗体を意味する。
【0083】
検出抗体は、標識(例えば、ユーロピウム2+または西洋ワサビペルオキシダーゼ)にコンジュゲート化することができる。標識は、直接的に連結することができ、またはリンカー(アジピン酸ジヒドラジド(Adipic Acid Dihyrazide)またはADHなど)を介して連結することができる。
【0084】
標識は、化学的コンジュゲーションにより連結させることができる。抗体に標識をコンジュゲートする方法は当技術分野で公知である。例えば、カルボジイミドコンジュゲーション(Bauminger & Wilchek (1980) Methods Enzymol. 70, 151-159)を用いて、抗体に標識をコンジュゲートすることができる。抗体に標識をコンジュゲートするための他の方法もまた、用いることができる。例えば、適切な反応物質の過ヨウ素酸ナトリウム酸化およびそれに続く還元的アルキル化または還元的アミド化を用いることができ、例えばグルタルアルデヒド架橋であり得る。しかしながら、いかなる本発明のコンジュゲートの作製方法が選択されるかにかかわらず、コンジュゲート化された抗体がその標的化能力を維持し、かつコンジュゲート化された標識がその機能を維持するように測定を行わなければならないことが認識される。
【0085】
好ましい実施形態では、検出抗体は、ユーロピウムへのコンジュゲート化により標識される。これは、EG&G Wallac DELFIA(R) Eu標識化キットを製造業者のプロトコールに従って用いて、達成することができる。
【0086】
Mcm5に結合する抗体を開発することは十分に当業者の能力の範囲内である。これは、マウス、ウサギまたはモルモットなどの哺乳動物を、Mcm5を用いて免疫化することにより行なうことができる。フロイント完全アジュバントなどのアジュバントを含めることが有益である場合がある。免疫化された哺乳動物の脾臓細胞を取り出し、骨髄腫細胞と融合させて、所定の適切な条件下では不死であり、かつ抗体を分泌するハイブリドーマ株を形成させる。ハイブリドーマを単一クローンに分離し、各クローンから分泌される抗体を、Mcm5タンパク質に対するそれらの結合能に関して評価する。
【0087】
さらなるキット構成要素
一実施形態では、キットはキャリブレーターを含む。「キャリブレーター」は、1種以上の既知濃度のMcm5の調製物である。
一実施形態では、キットは基質試薬を含む。基質試薬は、検出抗体を検出するために用いることができる。例えば、「検出抗体」が西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲート化される場合、基質試薬は、TMB(3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン)、DAB(3,3'-ジアミノベンジジン)またはABTS(2,2'-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸))を含むことができる。好ましい実施形態では、基質試薬はTMBを含む。さらなる好ましい実施形態では、基質試薬は過酸化物およびTMBである。
一実施形態では、キットは、洗浄溶液および/または停止溶液をさらに含む。
一実施形態では、キットは、サンドイッチELISAを行なうために好適である。
【0088】
被験体での泌尿器癌の存在を検出するための方法
本発明はまた、被験体での泌尿器癌の存在を検出するための方法も提供する。そのような方法は、好ましくはin vitro法である。そのような方法は、少なくとも1種のバイオマーカーの「濃度を決定するためのアッセイを行なう」ステップを含む。
【0089】
バイオマーカー(Mcmタンパク質など)の濃度を決定するためのアッセイを行なうステップ
本発明の一実施形態では、「バイオマーカーの存在を検出するステップ」との用語は、バイオマーカーの「濃度を決定するためのアッセイを行なうステップ」との用語と置換可能であると考えることができる。そのような実施形態では、バイオマーカーの存在は、その濃度が所定のカットオフレベルよりも高い場合に、検出されると考えることができる。
【0090】
生物学的マーカー、またはバイオマーカーは、生物学的状態、プロセス、イベント、状態または疾患を示す助けとなる、血液もしくは他の体液または組織中に見出される分子である。バイオマーカーは、限定するものではないが、DNA、RNA、染色体異常、タンパク質およびそれらの誘導体、または代謝産物からなることができることが、当業者には明らかであろう。一般的な意味で、バイオマーカーは、プロセス、イベントまたは状態の特徴的な生物学的指示物質または生物学的に誘導された指示物質であると考えることができる。言い換えれば、バイオマーカーは、癌性組織の存在などの特定の生物学的状態を示すものである。一部の場合には、様々な形態のバイオマーカーが、特定の疾患状態を示すことができる。あるいは、単に血液および/または尿などの体液中の上昇した(または低下した)レベルの本発明のバイオマーカーの存在が、泌尿器癌を示すものである。一部の実施形態では、バイオマーカーは、尿(尿沈渣を含む)、血液、唾液または精液などの体液中のその存在、過剰発現または発現低下が、前立腺癌などの泌尿器癌の存在、進行、治療に対する応答または重症度を反映し得る、特異的タンパク質またはペプチドであり得る。
【0091】
つまり、用語「バイオマーカー」は、翻訳後修飾されたポリペプチドをはじめとする、特定されたタンパク質または核酸のすべての生物学的に関連する形態を含む。例えば、バイオマーカーがポリペプチドである場合、マーカータンパク質は、グリコシル化型、リン酸化型、多量体化型または前駆体型としてサンプル中に存在することができる。
【0092】
例えば、全長ポリペプチド(または核酸)の濃度が記録されるという特定の要件はない。実際に、存在する対象ポリペプチドの特定の断片をアッセイし、サンプル中のバイオマーカーポリペプチド全体の存在を示すと理解することにより、検出を行なうことが可能である。これは、サンプルが、例えば質量分析により分析される場合に、特に真実である。したがって、本発明は、ポリペプチド(または核酸)バイオマーカーの断片の検出を包含する。さらに、本発明のキットおよびペプチドは、ポリペプチドの断片を含むことができ、本明細書中に例示される全長配列を含む必要はない。好適には、断片は、免疫学的方法または質量分析法によるその一意的特定を可能にするために十分に長い。
【0093】
つまり、ポリペプチドに関して、断片は、好適には少なくとも6アミノ酸長、好適には少なくとも7アミノ酸長、好適には少なくとも8アミノ酸長、好適には少なくとも9アミノ酸長、好適には少なくとも10アミノ酸長、好適には少なくとも15アミノ酸長、好適には少なくとも25アミノ酸長、好適には少なくとも50アミノ酸長、好適には少なくとも100アミノ酸長、または好適には対象バイオマーカーポリペプチドの大部分である。好適には、断片は、対象バイオマーカーポリペプチドの小断片を含むが、特定可能なアミノ酸配列または質量を保持するためには十分に長い。
【0094】
同じ考察が、核酸ヌクレオチド配列に適用される。核酸配列に関して、断片は、好適には少なくとも15ヌクレオチド長、好適には少なくとも30ヌクレオチド長、好適には少なくとも50ヌクレオチド長、好適には少なくとも80ヌクレオチド長、好適には少なくとも100ヌクレオチド長、好適には少なくとも200ヌクレオチド長、または好適には対象配列の大部分である。
【0095】
配列相同性/同一性
配列相同性は機能的類似性(すなわち、類似の化学的特性/機能を有するアミノ酸残基)に関して検討することもできるが、本明細書の文脈では、配列同一性に関して相同性を表わすことが好ましい。
【0096】
配列比較は、目視により、または、より通常は、容易に利用可能な配列比較プログラムを用いて、行なうことができる。これらの公開されたコンピュータープログラムおよび市販のコンピュータープログラムは、2種類以上の配列の相同性パーセント(同一性パーセントなど)を算出することができる。
【0097】
同一性パーセントは、連続した配列にわたって算出することができ、すなわち、一方の配列を他方の配列とアライメントし、一方の配列中の各アミノ酸を他方の配列中の対応するアミノ酸と、一度に1残基ずつ直接的に比較する。これは、「ギャップなし」アライメントと称される。典型的には、そのようなギャップなしアライメントは、比較的短い残基数(例えば、50個未満の連続するアミノ酸)にわたってのみ行われる。より長い配列にわたる比較のためには、互いに挿入または欠失を有する関連配列中の同一性レベルを正確に反映する最適なアライメントを作成するために、ギャップスコア付けが用いられる。そのようなアライメントを行なうために好適なコンピュータープログラムは、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(米国ウィスコンシン大学;Devereux et al., 1984, Nucleic Acids Research 12:387)である。配列比較を行なうことができる他のソフトウェアの例としては、限定するものではないが、BLASTパッケージ、FASTA(Altschul et al., 1990, J. Mol. Biol. 215:403-410)およびGENEWORKSスイートの比較ツールが挙げられる。
【0098】
本明細書の文脈では、相同なアミノ酸配列は、少なくとも40%、50%、60%、70%、80%または90%同一であるアミノ酸配列を含むものと理解される。最も好適には、対象となるバイオマーカーに対して少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチドが、そのバイオマーカーの存在を示すものとして理解され;より好適には、アミノ酸レベルで95%同一またはより好適には98%同一であるポリペプチドが、そのバイオマーカーの存在を示すと理解されるであろう。好適には、該比較は、少なくとも、対象となるバイオマーカーの存在または非存在を決定するためにアッセイされるポリペプチドまたは断片の長さにわたって行なわれる。最も好ましくは、比較は、対象となるポリペプチドの全長にわたって行なわれる。
【0099】
特異的バイオマーカーは、リガンド(単数または複数)との相互作用、1-Dもしくは2-Dゲル分析システム、液体クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィーおよびいずれかの質量分析技術の組み合わせ(MSMS、ICAT(R)またはiTRAQ(R)を含む)、凝集試験、薄層クロマトグラフィー、NMR分光分析、サンドイッチ免疫測定、酵素免疫吸着測定法(ELISA)、放射免疫測定(RAI)、酵素免疫測定(EIA)、ラテラルフロー/免疫クロマトグラフィー試験片検査、ウエスタンブロッティング、免疫沈降、粒子を用いる免疫測定(金粒子、銀粒子もしくはラテックス粒子および磁性粒子またはQ-ドットを用いるものを含む)または当技術分野で公知のいずれかの他の好適な技術により、検出および/または定量化することができる。
【0100】
Mcm5などのバイオマーカーの濃度は、リガンド(単数または複数)との相互作用、1-Dもしくは2-Dゲル分析システム、液体クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィーおよびいずれかの質量分析技術の組み合わせ(MSMS、ICAT(R)またはiTRAQ(R)を含む)、凝集試験、薄層クロマトグラフィー、NMR分光分析、サンドイッチ免疫測定、酵素免疫吸着測定法(ELISA)、放射免疫測定(RAI)、酵素免疫測定(EIA)、ラテラルフロー/免疫クロマトグラフィー試験片検査、ウエスタンブロッティング、免疫沈降、粒子を用いる免疫測定(金粒子、銀粒子もしくはラテックス粒子および磁性粒子またはQ-ドットを用いるものを含む)または当技術分野で公知のいずれかの他の好適な技術により、検出および/または定量化することができる。
【0101】
本発明の特定の態様または実施形態では、バイオマーカーの濃度を決定するためのアッセイは、免疫蛍光アッセイではない。そのような実施形態では、アッセイは、好ましくはELISAアッセイである。さらなる実施形態では、ELISAアッセイはサンドイッチELISAアッセイである。サンドイッチELISAアッセイは、プレートに既に結合している「捕捉抗体」を用いて、アッセイ対象のバイオマーカー(Mcmタンパク質など)を捕捉するステップ、および「検出抗体」を用いて、どれだけの抗原が捕捉されたかを検出するステップを含む。検出抗体は、酵素HRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)などの標識に予めコンジュゲート化されている。続いて、標識された検出抗体を有するELISAプレートを洗浄して、過剰な未結合検出抗体を除去する。次に、洗浄されたプレートを、測定可能な様式で標識によりその特性が変化する薬剤に曝露する。続いて、検出抗体の濃度を決定することができる。例えば、検出抗体が西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲート化される(西洋ワサビペルオキシダーゼを用いて標識される)場合、ELISAプレートを、TMB基質に曝露することができる。次に、検出抗体の濃度、およびしたがって元のサンプル中のMcm5の濃度を、着色生成物へのTMBの変換に対応する色の変化の定量化により、決定することができる。
【0102】
本発明は、尿サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの濃度を決定するためのアッセイを行なうステップを含む。好ましい実施形態では、少なくとも1種のバイオマーカーは、Mcmタンパク質、任意によりMcm5を含む。さらなる実施形態では、Mcm5の濃度に関する異常値が、被験体での泌尿器癌の尤度の増大を示す。
【0103】
泌尿器癌
本発明はまた、泌尿器癌を検出するための方法も提供する。そのような方法は、アッセイされる患者の泌尿器系(すなわち、腎臓、尿管、膀胱および尿道)での尿流または尿と密接に接触するいずれかの腫瘍を検出するであろうという顕著な利点を提示する。
【0104】
泌尿器癌は、泌尿器系で生じ得るであろう移行上皮癌のすべてのタイプを含む。移行上皮癌の一例は、膀胱癌である。しかしながら、移行細胞は、腎盂の内層、尿を腎臓から膀胱および尿道へと導く尿管、ならびに膀胱自体の壁をはじめとして、泌尿器系全体に存在する。移行上皮癌は、これらの部位のいずれでも生じ得る。
【0105】
膀胱癌には一定範囲の様々なサブタイプがあること、すなわち、移行上皮癌が膀胱癌のうちで最も一般的なタイプであるが、移行上皮癌以外のタイプの膀胱癌があることに留意すべきである。
例えば、尿道は陰茎を通過するので、尿道に影響を及ぼす場合には、陰茎癌などの他の原発癌も検出できることが、本発明の利点である。
【0106】
加えて、特定の泌尿器腫瘍は、それらが尿流と直接的に接触していなくても、検出される場合がある。一例は、典型的には尿流とは接触しないが、その細胞が剥離して尿道へと放出される、前立腺腫瘍である。
【0107】
本発明はまた、転移癌、例えば、その転移が泌尿器系へと着地している異なる原発癌の転移を検出することが可能であるという利点も提示する。この実施形態では、本発明は、泌尿器系へと拡大したいずれかの癌(例えば、局所的に浸潤してきた可能性がある結腸癌)または転移を介して浸潤してきたいずれかの癌(例えば、被験体の泌尿器系内で1箇所以上の転移腫瘍を生じた遠隔原発癌)を検出することが可能である。
一実施形態では、本発明は、有利には、前立腺癌の検出に応用される。
一実施形態では、本発明は、有利には、膀胱癌の検出に応用される。
一実施形態では、本発明は、前立腺癌および膀胱癌の両方の検出に応用される。
【0108】
ミニ染色体維持タンパク質(Mcm)
ミニ染色体維持(MCM)タンパク質は、子宮頸癌に対する診断用バイオマーカーとして既に用いられてきている。好適には、本発明に従う好ましいバイオマーカーは、Mcmタンパク質である。最も好適には、Mcmタンパク質はMcm5である。
【0109】
核タンパク質Mcm5などのミニ染色体維持複合体(MCM)ファミリータンパク質のレベルの上昇は、尿沈渣中の膀胱癌細胞ならびに前立腺癌を検出するために用いることができる。Mcm5の評価は、しばしば、精緻な機器および非常に高いスキルを有する操作者を含む特別な検査室で行なわれ(Stoeber et al. JNCI. 2002: 94: 1071-1079)、この分析スタイルは、病理検査室または医療現場用途で行なうためには費用がかかるか、または実用的ではない可能性がある。しかしながら、本出願の発明者らが、尿沈渣中でのMcm5レベルを正確に測定するための、病理検査室および医療現場用途に適した特異的モノクローナル抗体のペアを用いる改変型二重抗体サンドイッチELISA形式の開発に成功したことは、有益である。しかしながら、この好ましいアッセイタイプは、本発明に従うこの様式へとMcm5の分析を制限せず、Mcm5は、当技術分野で公知のいずれかの好適な方法に従ってアッセイすることができる。
【0110】
MCMタンパク質2〜7は、クロマチン上に形成され、かつその後のDNA複製に対する必須要件、またはライセンス因子である前複製複合体の一部分を含む。MCMタンパク質複合体は、複製型ヘリカーゼとして機能し、つまり、DNA複製機構のコア構成要素である。MCMは、細胞周期のG0期からG1/S期への移行中にアップレギュレーションされ、細胞周期調節に活発に関与する。MCMタンパク質は、クロマチン周囲に環状構造を形成する。
【0111】
ヒトMcm5遺伝子は、22q13.1にマッピングされ、成熟型Mcm5タンパク質は、734アミノ酸からなる(配列番号1;図1:UNIPROT P33992:ヒトDNA複製ライセンス因子MCM5)。用語「Mcm5」とは、配列番号1のポリペプチド、配列番号1に対して85%、90%、95%、98%または100%同一なポリペプチドを意味する。
本発明は、有用なことに、一般的な臨床検査室での使用および医療現場用途に適したMcm5に関する新規アッセイ法を提供する。
【0112】
Mcm5は、尿中濃度として記録される。濃度がカット点を超過する場合には、泌尿器癌の尤度が増大している。カット点は、多数の様々な方法により設定することができる。例えば、カット点は、健康な患者の尿由来の値の平均に、健康集団での値の標準偏差の倍数、通常は2〜3倍の倍数を加えて設定することができる。あるいは、カット点は、Mcm5を発現する分裂細胞の既知濃度により生成される値として設定することができ、これはStoeberら(2002)により例示され、筆者らは、プレートウェル当たり1,500個の複製細胞を含有するサンプルから生成されるDELFIAでのカウント数をカット点として採用した。
【0113】
従って、本発明に従えば、健康な患者の尿中での濃度の平均+2標準偏差を超えるMcm5の存在、またはプレートウェル当たり1,500個の複製細胞を含有するサンプルから生成されるDELFIAでのカウント数を超えるカウントでのMcm5の存在が、泌尿器癌の尤度の増大を示す。
【0114】
一実施形態では、Mcmタンパク質の存在に関する異常値は、被験体での泌尿器癌の尤度の増大を示す。さらなる実施形態では、本発明の方法は、アッセイを行なうことにより決定されるMcmタンパク質の濃度が、健康な患者由来の平均値+健康な被験体から誘導される値により示される標準偏差の倍数より高い場合に、患者が泌尿器癌を有すると診断するステップを含む。
【0115】
抗体
本発明での使用に好適な多数の抗Mcm5抗体が市販されている。例は、以下に示される:
【0116】
サンプル
本発明の方法は、「被験体由来のサンプルを提供する」ステップを含むことができる。好ましくは、このステップは非侵襲的(非外科的)であり、例えば、採尿である。
サンプルは、血液、血清、唾液、精液、尿もしくは尿沈渣などのいずれかの体液、またはそのような体液のうちの1種から調製される抽出物を含むことができる。
好適には、サンプルは尿である。
【0117】
Mcm5は、典型的には、尿中に存在する細胞の核に見出される。つまり、好適には、サンプルは、尿中の細胞を含む。より好適には、それらの細胞は、ろ過、またはより好適には尿からの細胞の遠心分離による採取などの、当技術分野で一般的ないずれかの公知の技術により濃縮することができる。尿からの細胞の富化は、シグナルを増大させることができ、検出を促進することができる。
前立腺癌について試験する場合、最も好適には、サンプルは、前立腺のマッサージ後に取得できるもの(被験体が男性の場合)などの、初尿である。
さらにより好適には、サンプルは、初尿の最初の数ミリリットルを含むことができる。
【0118】
言い換えれば、好適には、サンプルは、初回通過尿(first pass urine)、好適には前立腺のマッサージ後に生成される初回通過尿を含むことができる。
さらにより好適には、サンプルは、尿から(全尿から、または上記の通りの初尿からなど)採取された沈殿細胞などの尿沈渣を含むことができる。
【0119】
アッセイ形式
本発明の一態様では、サンドイッチELISA、または二部位ELISA(two-site ELISA)でのバイオマーカーと特異的抗体との間の結合を検出することにより、バイオマーカーの存在および/または濃度を決定するためのアッセイシステムが提供される。バイオマーカーは、別々に(例えば、好適には同じサンプルの一部分に対して行なわれる、物理的に別個のアッセイで)測定することができる。この実施形態では、各アッセイ中に、サンプルを、それに関して試験される対象であるバイオマーカーに対して特異的な抗体などの1種類のリガンドと接触させる。例えば、サンプルを、各ウェルに異なる抗体が入っているマイクロタイタープレートの異なるウェルへと添加することができる。
【0120】
好適には、測定は水溶液中で行なわれる。サンプルおよび/またはリガンド(例えば、抗体)が、溶液中に存在し得る。一部の実施形態では、抗体またはサンプルは、固相支持体上に固定化することができる。典型的には、そのような支持体は、マイクロタイタープレートのウェルの表面などの、測定が行われている容器の表面を含むことができる。他の実施形態では、支持体は、メンブレン(例えば、ニトロセルロースメンブレンまたはナイロンメンブレン)もしくはビーズ(例えば、ラテックスまたは金)またはアレイの表面であり得る。
【0121】
抗体がサンプル中のバイオマーカーに結合する(バイオマーカーを検出する)か否かを決定するステップは、2つの部分の間の結合を検出するための当技術分野で公知のいずれかの方法により行なうことができる。結合は、分光学的変化などの、結合が生じる場合に変化する抗体またはバイオマーカー(タンパク質など)の特性の測定により決定することができる。
【0122】
好ましい実施形態では、決定は、リガンドとして抗体を用いて行なわれ、その抗体は固相支持体に固定化されている。サンプルを抗体に接触させると、サンプル中のバイオマーカー分子(タンパク質分子など)が抗体に結合する。
【0123】
任意により、続いて、抗体に結合していないサンプル由来のバイオマーカー(タンパク質など)を除去するために、固相支持体表面を洗浄する。次に、(抗体との結合を通じて)固相支持体に結合しているバイオマーカーの存在を決定することができ、これが、タンパク質が抗体に結合していることを示す。これは、例えば、タンパク質と特異的に結合する薬剤と、固相支持体(バイオマーカーがそれに結合していてもしていなくてもよい)を接触させることにより行なうことができる。この薬剤は、検出可能な標識により、直接的または間接的に標識することができる。典型的には、薬剤は、バイオマーカーが第1の固定化された抗体に結合するのに対して、特異的な様式でバイオマーカーに結合することが可能な第2の抗体である。この第2の抗体は、第2の抗体のFc領域に対して特異的な第3の抗体と接触させることにより間接的に標識することができ、このとき、第3の抗体は検出可能な標識を担持する。
【0124】
バイオマーカータンパク質と抗体との間の結合を決定するために用いることができる別のシステムは、競合的結合システムである。そのようなシステムの一実施形態は、サンプル中のバイオマーカーが、抗体に結合することが可能な参照化合物への抗体の結合を阻害できるか否かを決定する。サンプル中のバイオマーカータンパク質が抗体と参照化合物との間の結合を阻害できる場合、このことは、そのようなサンプルが抗体により認識されるバイオマーカーを含有することを示す。
【0125】
参照標準
参照標準とは、典型的には、健康な個体、すなわち、泌尿器癌に罹患していない個体由来のサンプルを意味する。
参照標準は、並行して分析される実際のサンプルであり得る。あるいは、参照標準は、同等のサンプル、例えば、健康な被験体由来のサンプルから以前に誘導された1つ以上の値であり得る。そのような実施形態では、以前に分析された参照サンプルの数値に対して、被験体由来のサンプルについて決定される値を比較することにより、単なる数値比較を行なうことができる。このことの利点は、被験体由来のサンプルを分析するたびに、並行して個々の参照サンプル中の濃度を決定することによる分析を二重に行なう必要がないことである。
【0126】
好適には、参照標準は、例えば性別に関して、例えば年齢に関して、例えば人種的背景または当技術分野で周知のそのような他の基準に関して、分析対象の被験体と合致している。参照標準は、1つ以上の先行研究により決定された絶対濃度などの数であり得る。
参照標準は、好適には、具体的な患者サブグループ、例えば、高齢被験体、または泌尿器癌に対する素因などの関連の既往歴を有する被験体と合致させることができる。
【0127】
好適には、参照標準は、分析対象であるサンプルタイプに適合している。例えば、アッセイ対象であるバイオマーカーポリペプチドの濃度は、サンプルのタイプまたは性質に応じて変わり得る(例えば、慣用的な尿サンプルと前立腺マッサージ後の初尿サンプル)。参照標準に関する濃度値が、本発明の方法で試験されるものと同じかまたは同等のサンプルに関するものであるべきであることは、当業者には直ちに理解されるであろう。例えば、アッセイ対象のサンプルが初尿である場合、意味のある相互比較が可能であることを確実にするために、参照標準値は初尿に対するものであるべきである。特に、対象となる被験体に対して決定される濃度と参照標準に対して決定される濃度との間の比較により推定が試みられ、その2種類の間でサンプルの性質が同一でない場合には、極端な注意が必要である。好適には、参照標準に関するサンプルタイプと、対象となる被験体に関するサンプルタイプは、同じである。
【0128】
本発明の一部の実施形態に関して、決定されるタンパク質濃度を、同じ被験体由来の以前のサンプルと比較することができることに留意すべきである。このことは、被験体での再発の可能性をモニタリングする上で有益であり得る。このことは、被験体の治療の経過および/または有効性をモニタリングする上で有益であり得る。この実施形態では、方法は、対象となるサンプルに関して決定される値を、同じ被験体について異なる時点で取得されたサンプルなどの異なるサンプルから同じバイオマーカーに関して決定された1以上の値と比較するさらなるステップを含むことができる。そのような比較を行なうことにより、特定のマーカーが、特定の被験体で増加または減少しているか否かに関して情報を収集することができる。この情報は、経時的変化、または特定の治療もしくは療法レジメンにより阻害もしくは刺激される変化、またはいずれかの他の対象となる変数を診断または予測する上で有用であり得る。
【0129】
このようにして、本発明は、例えば、薬物もしくは候補薬物を用いるか、または腫瘍切除による患者の治療後に、疾患が進行しているか否か、または疾患進行の速度が変化しているか否かを決定するために用いることができる。結果は、さらなる治療の経路を知らせることができる。
【0130】
リガンド/抗体
本明細書中で考察されるバイオマーカーの存在および/または濃度を決定する好ましい様式は、選択されたバイオマーカーに特異的に結合する好適な抗原結合性分子またはリガンドを用いる。好適には、リガンドは、抗体、またはscFvもしくはFabなどの抗体誘導体であり得る。
【0131】
尿サンプルから細胞を調製するための方法
本発明は、尿サンプルから細胞を調製するための方法を提供する。
一実施形態では、尿サンプル由来の尿を、細胞を捕捉するためのフィルターに通し、それにより、尿サンプル中の細胞がフィルターに捕捉される。フィルターに通される尿の体積は、好ましくは1mL〜100mL、より好ましくは30mL〜70mL、さらにより好ましくは約50mLである。
【0132】
溶解バッファー(任意により本発明の溶解バッファー)を、続いてフィルターに通し、それにより細胞を溶解バッファーに曝露させる。溶解バッファーは、細胞から少なくとも1種のバイオマーカーを放出させることが可能であり得る。溶解バッファーを、細胞を溶解バッファーに曝露するために、フィルターに少なくとも1回通過させ、それにより少なくとも1種のバイオマーカーが細胞から放出される。他の実施形態では、複数回、例えば、少なくとも2回、少なくとも3回または少なくとも4回、溶解バッファーをフィルターに通す必要がある場合がある。このことは、フィルターを溶解バッファーで完全に飽和させることを助け、それにより、少なくとも1種のバイオマーカーが、捕捉された細胞からより効率的に放出される。溶解バッファーをフィルターに複数回通す場合、溶解バッファーでフィルターを完全に飽和させることを助けるために、溶解バッファーを、好ましくは、上流および下流から(すなわち、反対方向に)フィルターに交互に通す。溶解バッファーの体積(すなわち、1回の通過でフィルターを通して流される溶解バッファーの体積)は、好ましくは250μL〜1,000μL、より好ましくは300μL〜500μL、さらにより好ましくは約500μLである。
【0133】
捕捉された細胞を溶解バッファーに曝露した後に、続いて、フィルターを一定時間インキュベートし、それにより、溶解バッファーが細胞から少なくとも1種のバイオマーカーを放出させて、細胞から放出される少なくとも1種のバイオマーカーを含む溶解バッファー(溶解物)を生じさせる。フィルターのインキュベーション時間は、好ましくは5分間〜1時間、より好ましくは20分間〜30分間、さらにより好ましくは約10分間である。好適には、「フィルターをインキュベートするステップ」は、一定時間、溶解バッファーをフィルターと接触させたまま維持することを含む。好適には、フィルターは、ほぼ一定の温度(インキュベーション時間中に5℃未満しか変化しない)でインキュベートされる。任意により、温度は、15℃〜30℃、好ましくは室温付近である。任意により、フィルターをインキュベートした後、溶解バッファーを、少なくとももう1回フィルターに通過させる。
【0134】
尿サンプルから細胞を調製するための装置
本発明はまた、尿サンプルから細胞を調製するための装置も提供する。以下の装置の説明では、用語「上流」および「下流」は、装置を通る尿の流れの方向に対して相対的に定義され、すなわち、注入口から流出口への流れは下流方向の流れである。互いに「流体連通」していると記載される装置の構成要素は、流体がそれ以上は流れることができないかも知れない(例えば、閉鎖されたバルブの場合)が、これらの構成要素の間では流れることができることを意味する。そのような構成要素は、当技術分野で公知の手段(例えば、チューブまたはパイプ)を介して接続することができる。装置の各構成要素は、取り外し可能に他の構成要素に接続することができる。装置の構成要素の一部または全部が、一体的に形成されていても良い。
【0135】
図18は、装置100の実施形態を示す。装置100は、使用の際に、尿サンプル由来の尿がそれを通して装置へと入ることができる(図示される通り、左から)注入口101を備える。注入口101は、任意により、流体が逆流して装置から(すなわち、注入口の上流に)出ていくことを防ぐための一方向弁(図示していない)を含む。
【0136】
第1のバルブ102は注入口101の下流に配置され、注入口101と流体連通している。第1のバルブ102は、必要に応じて装置の異なる部分同士の流体連通を開放または遮断するように構成できる限り、特定のバルブタイプに限定されない。そのような構成は、以下でさらに詳細に説明されるであろう。第1のバルブ102は、任意により、ルアーバルブである。第1のバルブ102は、任意により、三方向弁または四方向弁である。
【0137】
フィルター103は第1のバルブ102の下流に配置され、第1のバルブ102と流体連通している。フィルター103は、尿がフィルターを通して流れる際に、尿から細胞を捕捉するために好適である。フィルター103は、好ましくは、15μm、10μmまたは5μmより大きな直径を有する球状粒子が通過することを妨げながら、より小さな粒子が通過することは可能にする。非球状粒子に関しては、フィルター103は、好ましくは、15μm、10μmまたは5μmより大きな直径を有する等積球状粒子が通過することを妨げ、等積球状粒子とは、非球状粒子と同じ体積を有する。そのような等積球状粒子の直径dvは、等式:
【0138】
【数1】
により与えられ、式中、Vは非球状粒子の体積である。フィルター103は、任意により、約15μm、約10μmまたは約5μmの孔サイズ(孔径)を有する孔構造を有する。フィルター103は、好ましくは、1〜6μm、より好ましくは4〜6μm、さらにより好ましくは約5μmの孔サイズ(孔径)を有する孔構造を有する。しかしながら、尿がフィルターを通して流れる際に尿から細胞を捕捉するために好適である限り、フィルターのタイプは限定されない。フィルター103は、任意により、例えば、孔構造ではなく、メッシュ構造を有することができるであろう。
【0139】
第2のバルブ104はフィルター103の下流に配置され、フィルター103と流体連通している。第2のバルブ104は、必要に応じて装置の異なる部分同士の流体連通を開放または遮断するように構成できる限り、特定のバルブタイプに限定されない。そのような構成は、以下でさらに詳細に説明されるであろう。第2のバルブ104は、任意により、ルアーバルブである。第2のバルブ104は、任意により、三方向弁または四方向弁である。
【0140】
装置の使用時にそれを通して尿が流れ出すことができる流出口105が第2のバルブ104の下流に配置され、第2のバルブ104と流体連通している。流出口105は、任意により、必要な場合に流体が流出口105を通して流れ出すのを遮断するためのバルブ(図示していない)を含む。
【0141】
溶解バッファーを保持するための第1のバッファー貯留部106が備えられる。第1のバッファー貯留部106は、第1のバルブ102と流体連通している。第1のバッファー貯留部106は、好ましくは、少なくとも500μLの溶解バッファー、より好ましくは少なくとも1mLの溶解バッファー、さらにより好ましくは少なくとも5mLの溶解バッファーを保持するための大きさである。第1のバッファー貯留部106は、任意により、最大で50mLの溶解バッファー、より好ましくは最大で25mLの溶解バッファー、さらにより好ましくは最大で10mLの溶解バッファーを保持するための大きさである。第1のバッファー貯留部106は、任意によりシリンジであるが、溶解バッファーを保持するために好適ないかなる容器でも、用いることができる。
【0142】
溶解バッファーを保持するための第2のバッファー貯留部107もまた備えられる。第2のバッファー貯留部107は、第2のバルブ104と流体連通している。第2のバッファー貯留部107は、好ましくは、少なくとも500μLの溶解バッファー、より好ましくは少なくとも1mLの溶解バッファー、さらにより好ましくは少なくとも5mLの溶解バッファーを保持するための大きさである。第2のバッファー貯留部107は、任意により、最大で50mLの溶解バッファー、より好ましくは最大で25mLの溶解バッファー、さらにより好ましくは最大で10mLの溶解バッファーを保持するための大きさである。第2のバッファー貯留部107は、任意によりシリンジであるが、溶解バッファーを保持するために好適ないかなる容器でも、用いることができる。
【0143】
第1および第2のバルブ102、104の構成について、ここで説明する。
第1および第2のバルブ102、104の第1の構成では、第1のバッファー貯留部106とフィルター103との間の流体連通が遮断され、第2のバッファー貯留部107とフィルター103との間の流体連通が遮断され、かつ注入口101、フィルター103および流出口105の間の流体連通は開放されている。この第1の構成では、装置の使用時に、尿はフィルター103を介して注入口101から流出口105へと流れることができる。第1の構成では、好ましくは、尿は、注入口101または流出口105から第1および/または第2のバッファー貯留部106、107へと流れることができない。第1の構成では、好ましくは、溶解バッファーは、第1のバッファー貯留部106から、注入口101または流出口105へと流れることができない。第1の構成では、好ましくは、溶解バッファーは、第2のバッファー貯留部107から、注入口101または流出口105へと流れることができない。
【0144】
第1および第2のバルブ102、104の第2の構成では、第1のバッファー貯留部106とフィルター103との間の流体連通が開放され、第2のバッファー貯留部107とフィルター103との間の流体連通が開放され、かつ注入口101を通って流出口105から出る流れは遮断されている。この第2の構成では、装置の使用時に、溶解バッファーはフィルター103を介して第1のバッファー貯留部106と第2のバッファー貯留部107との間を流れることができる。第2の構成では、好ましくは、溶解バッファーは、第1のバッファー貯留部106から、注入口101または流出口105へと流れることができない。第2の構成では、好ましくは、溶解バッファーは、第2のバッファー貯留部107から、流出口105または注入口101へと流れることができない。第2の構成では、好ましくは、尿は、注入口101と流出口105との間を流れることができない。
【0145】
第2の構成では、好ましくは、第1のバッファー貯留部106、フィルター103、および第2のバッファー貯留部107の間で閉鎖系が形成されている。従って、一定体積の溶解バッファーが第1のバッファー貯留部106から流れ出て、同体積の溶解バッファーが好ましくは第2のバッファー貯留部107へと流入し、逆もまた同じである。つまり、装置の使用中である所定の時点では、溶解バッファーが、第1および第2のバッファー貯留部106、107のうちの一方または両方に与えられる。言い換えれば、装置の使用中である所定の時点では、(i) 溶解バッファーが、第1のバッファー貯留部106には存在するが第2のバッファー貯留部107には存在しないか;(ii) 溶解バッファーが、第2のバッファー貯留部107には存在するが第1のバッファー貯留部106には存在しないか;または(iii) 溶解バッファーが、第1および第2のバッファー貯留部106、107の両方に存在する。
【0146】
装置100は、任意により、尿を保持するための尿貯留部108を備える。尿貯留部108は流出口105の下流に配置され、かつ流出口105と流体連通している。尿貯留部108は、好ましくは少なくとも10mLの尿、より好ましくは少なくとも25mLの尿、さらにより好ましくは少なくとも50mLの尿を保持するための大きさである。尿貯留部108は、任意により、最大で1,000mLの尿、より好ましくは最大で500mLの尿、さらにより好ましくは最大で250mLの尿を保持するための大きさである。第1および第2のバルブ102、104の第1の構成では、尿は、注入口101から、フィルター103および流出口105を介して、尿貯留部108へと流れることができる。つまり、尿貯留部108は、装置の使用中に、フィルター103を介してろ過された尿を保持するために構成されている。流出口105は、尿が尿貯留部108から流出口105を通って(すなわち、上流方向に)逆流することを防ぐためのバルブまたは密封手段(図示していない)を用いて、可逆的に遮断することができる。尿貯留部は、流出口105に取り外し可能に接続することができる。
【0147】
装置100は、任意により、尿の流れを提供するための手段110を備える。そのような手段は、例えば、ポンプまたはシリンジの一部分であり得る。シリンジを用いる場合、シリンジは、尿貯留部108と、尿の流れを提供するための手段110との両方を与えることができる。その場合、尿の流れは、尿貯留部108のシリンジを引いて、それにより尿貯留部108へと注入口101から尿を流れさせることにより、生じさせることができる。別の実施形態では、尿の流れは、例えば、注入口101と流体連通しているシリンジを用いて、注入口101から装置を通って尿サンプルを「押す」ことにより生じさせることができる。
【0148】
装置100は、任意により、溶解バッファーの流れを提供するための手段109を備える。そのような手段は、例えば、ポンプまたはシリンジの一部分であり得る。シリンジを用いる場合、シリンジは、第1のバッファー貯留部と、溶解バッファーの流れを提供するための手段109との両方を与えることができる。同様に、第2のバッファー貯留部107がシリンジの一部分である場合、第2のバッファー貯留部が、溶解バッファーの流れを提供するための手段109として機能することができる。第1および第2のバッファー貯留部106、107の両方がシリンジにより与えられる場合、その両方が、溶解バッファーの流れを提供するための手段109として機能することができる。
【0149】
本発明はまた、被験体由来の尿サンプルを分析するためのデバイスも提供する。デバイスは、上述の装置100および尿サンプル中の少なくとも1種のバイオマーカーの濃度を決定することが可能なアッセイデバイスを備える。アッセイデバイスは、好ましくは、固定化されている第1の抗体、および第2の検出抗体を備える。デバイスは、好ましくは、溶解物が、固定化された抗体を通過でき(例えば、ラテラルフローにより)、かつバイオマーカーが、固定化された抗体に結合できるように配置される。結合したバイオマーカーの量は、検出抗体を用いて検出することができる。アッセイデバイスは、別個の構成要素として、装置100とは接続されずに提供することができ、または装置100と流体連通するように装置100と一体的であるかもしくは接続可能であることができる。アッセイデバイスは、好ましくは、装置100から溶解物を受け取るために構成されている。アッセイデバイスが装置100と流体連通している場合、第1および第2のバルブが第3の構成で構成されて、それにより、溶解物が、第1のバッファー貯留部106または第2のバッファー貯留部107のいずれかから、アッセイデバイスへと流れることができる。
【0150】
例えば、一実施形態では、第1のバルブ102が、第1のバッファー貯留部106からアッセイデバイスへの流れを可能にするために構成される。この場合、好ましくは、第1のバッファー貯留部106と第2のバッファー貯留部107との間の流体連通は遮断されている。別の実施形態では、第2のバルブ104が、第2のバッファー貯留部107からアッセイデバイスへの流れを可能にするために構成される。この場合、好ましくは、第1のバッファー貯留部106と第2のバッファー貯留部107との間の流体連通は遮断されている。
【0151】
第1のバルブ102は第1のバルブ配列の一例であり、第2のバルブ104は第2のバルブ配列の一例であり、それらは、装置を通る流体の通過を、上述の第1および第2(および任意により第3)の構成に従って制御可能にする。しかしながら、第1のバルブ配列は、1個のバルブに限定されない。第1のバルブ配列は、複数のバルブを含み得る。例えば、第1のバルブ配列が2個のバルブを含む場合、一方のバルブは、注入口101とフィルター103との間の流体連通を開放および遮断するために配置することができ、他方のバルブは、第1のバッファー貯留部106とフィルター103との間の流体連通を開放および遮断するために配置することができるであろう。同様に、第2のバルブ配列は、1個のバルブに限定されない。第2のバルブ配列は、複数のバルブを含み得る。例えば、第2のバルブ配列が2個のバルブを含む場合、一方のバルブは、フィルター103と流出口105との間の流体連通を開放および遮断するために配置することができ、他方のバルブは、第2のバッファー貯留部107とフィルター103との間の流体連通を開放および遮断するために配置することができるであろう。
【0152】
装置の使用方法
本発明はまた、装置100の使用方法も提供する。上記の通り、用語「上流」および「下流」は、装置を通る尿の流れの方向に対して相対的に定義され、すなわち、注入口から流出口への流れは下流方向の流れである。
【0153】
第1のバルブ配列(例えば、第1のバルブ102)および第2のバルブ配列(例えば、第2のバルブ104)が第1の構成で構成されている場合、尿サンプル由来の尿は、フィルター103を介して注入口101を通って流出口105へと流れる。これにより、尿中の細胞がフィルター103で捕捉され、ろ過された尿は、流出口105を通過して流出し、任意により尿貯留部108へと入る。尿の流れは、任意により、尿の流れを提供するための手段110により与えられる。
【0154】
続いて、好ましくは、不活性ガス(例えば、空気)を、注入口101を通って流出口105へと流し、それにより、装置中の尿の残量を除去する。これは、例えば、注入口から流出口へと不活性ガスを流すことにより、尿の流れを提供するための手段108を用いて達成することができる。あるいは、不活性ガスの流れを提供するための別個の手段を設けても良い。
続いて、好ましくは、流出口を通って上流方向に尿が逆流することを防ぐために、流出口105が遮断または密封される。
【0155】
次に、第1および第2のバルブ102、104が第2の構成へと構成され、それにより、第1のバッファー貯留部106、フィルター103(細胞を含む)および第2のバッファー貯留部107の間に閉鎖系が形成される。続いて、第1のバッファー貯留部106に入っている溶解バッファーがフィルター103を介して第2のバッファー貯留部107へと通過するか、その逆に通過する。少なくとも1種のバイオマーカーが細胞から放出されるように、細胞を溶解バッファーに曝露するために、溶解バッファーを、フィルター103に少なくとも1回通過させる。他の実施形態では、複数回、例えば、少なくとも2回、少なくとも3回または少なくとも4回、溶解バッファーをフィルター103に通過させる必要がある場合がある。このことは、フィルターを溶解バッファーで完全に飽和させることを助け、それにより少なくとも1種のバイオマーカーがさらに効率的に捕捉細胞から放出される。溶解バッファーを複数回フィルターに通過させる場合、溶解バッファーでフィルターを完全に飽和させることを助けるために、溶解バッファーを、好ましくは、上流および下流から(すなわち、反対方向に)フィルターに交互に通す。
【0156】
次に、フィルター103を一定時間インキュベートし、それにより、溶解バッファーが細胞から少なくとも1種のバイオマーカーを放出させる。インキュベーションは、好ましくは、10秒間〜5時間、より好ましくは30秒間〜1時間、さらにより好ましくは約10分間、行なわれる。好適には、「フィルターをインキュベートするステップ」は、一定時間、溶解バッファーをフィルターと接触させたまま維持することを含む。好適には、フィルターは、ほぼ一定の温度(5℃未満しか変化しない)でインキュベートされる。任意により、温度は、15℃〜30℃、好ましくは室温付近である。続いて、任意により、細胞から放出された少なくとも1種のバイオマーカーを含有する溶解バッファー(溶解物)を、第1および第2のバッファー貯留部106、107のうちの一方へと戻す。
【0157】
被験体由来の尿サンプルを分析するためのデバイスが装置100およびアッセイデバイスを備える場合、次に、少なくとも1種のバイオマーカーを含有する溶解バッファーをアッセイデバイスに通過させることができる。アッセイデバイスが装置100と流体連通している場合、これは、第1および第2のバルブ102、104を第3の構成へと構成させ、続いて少なくとも1種のバイオマーカーを含有する溶解物をアッセイデバイスへと通過させることにより達成することができる。アッセイデバイスが装置100と流体連通していない場合、溶解物を、装置100からアッセイデバイスへと、外部から送ることができる。
ここで、本発明を実施例により説明し、この実施例は、限定的な性質のものではなく、むしろ例示的であることが意図される。
【実施例】
【0158】
すべての化学物質は、特に記載しない限り、Sigma-Aldrich社から購入した。
【0159】
[実施例1]
材料
単回排尿試料(single voided urine specimen)を、ヘザーウッド病院(Heatherwood Hospital;Heatherwood and Wexham Park Hospitals NHS Foundation Trust)の血尿外来を受診した患者から取得した(地域研究倫理委員会からの倫理的承認を得ている)。Multistix 10 SGディップスティック(Siemens社)を用いる尿検査を新鮮サンプルに対して行ない、残りの尿を1mLまたは15mL Falconチューブに分け入れ、検査室までの輸送のためにドライアイス上に置いた。
【0160】
Mcm5
本発明の一実施形態はMcm5に対する簡潔なELISA試験であり、これは、特殊かつ複雑なMcm5 DELFIA(登録商標)テストを有用に代替し(Stoeber et al 2002(Journal of the National Cancer Institute, 94, 1071-1079; 2002)を参照されたい)、つまり、試験は典型的な臨床化学検査室で行なうことができるであろう。試験は直接的二重モノクローナル抗体サンドイッチ酵素結合免疫測定である。両方の抗体が、抗原Mcm5に対して高い親和性および特異性を有する。試験対象のサンプル中のMcm5は、マイクロタイタープレートウェルの表面に結合した特異的モノクローナル抗体により捕捉される。続いて、抗原の別の部位に結合するものであり、かつ酵素西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)に連結されている検出抗体(detector antibody)を添加する。プレートウェル中に保持されるHRPの存在および量は、HRPの発色性基質であるテトラメチルベンジジン(TMB)の添加後に発色する色の強度を測定することにより評価される。光学密度は、既定の限定範囲内で、サンプル中のMcm5の濃度に比例する。Mcm5の濃度範囲を試験することにより、用量応答曲線を作成することができ、ここから、未知サンプルの抗原濃度を確認することができる(図2および図3を参照されたい)。
【0161】
2種類のモノクローナル抗体(mAb)である12A7および4B4が、アッセイで用いられる。抗体は、本出願人との非排他的許諾契約の下に、Cancer Research Technology社(CRT社)から入手した。ELISA試験のために、mAb 12A7をプレートコーティングに用い、mAb 4B4を検出に用いた。
【0162】
試料採取および調製:試験は、ヒトの尿に対して行なうことができる。サンプルは、例えば、スクリューキャップ付きの150mLプラスチックボトルに採取するべきであり、このボトルは清浄であるべきであるが、無菌である必要はない。採取ボトルは、いかなる保存剤も入れてあるべきではなく、理想的には100mLを超える容量のものであるべきである。サンプルは、使用前に2〜8℃で最大4時間、保存することができる。アッセイ用の尿試料を調製するために、サンプルのうちの30mLを、スクリューキャップ付きの50mLプラスチック製遠心管に移す。1,500gにて5分間の遠心分離後、上清を注意深くデカントし、地域の衛生安全指針に従って廃棄物として処理する。試験管を吸収紙上に逆さに置いて、余計な水分を切る。250μLの溶解/サンプルバッファーをペレットに添加し;ペレットを、使い捨てチップを取り付けた調節可能ピペットを用いて再懸濁する。
【0163】
試薬:試験構成要素は、キットの形態で本明細書中に記載されている(表1を参照されたい)。各キットは、プレート全体を一度に用いる場合に、一枚の96ウェルマイクロプレート、または2回反復(duplicate)ウェルでの80回の測定に対して十分な材料を含む。
【0164】
【表1】
【0165】
表1に列挙される構成要素に加えて、以下の追加の材料が有用であり、本発明のキット中に任意により提供することができる。これらの材料は、別々に開示されているものと見なすべきであり、したがって、本発明のキットに個別に追加することができる。1.5%より良好な精度で50μL〜100μLの体積を運ぶことが可能なピペット;1.5%より良好な精度で100μL〜300μLの体積を繰り返し運ぶための分配器;マイクロプレート洗浄機またはスクイーズボトル(任意);450nmおよび620nm波長の吸光度での機能を有するマイクロプレートリーダー、マイクロプレートウェルの吸い取り用の吸収紙およびインキュベーションステップ用のプラスチックラップまたはマイクロプレートカバー、ならびにタイマー。
【0166】
試験手順:アッセイに進む前に、すべての試薬は、30分間、室温(20〜27℃)に置くべきである。未使用の試薬は、使用後は2〜8℃で保存される。十分なマイクロプレートウェルストリップを、2回反復でアッセイされる、試験予定の各サンプル(キャリブレーターの希釈系列および品質対照サンプルを含む)のために取り出す。100μLの適切なキャリブレーターまたは試料を、700rpmの回転式マイクロタイタープレート振盪機上で30分間、室温(20〜27℃)でインキュベートされている、指定のウェルへとピペットで入れる。内容物を廃棄し、300μLの洗浄バッファーを6回交換することによりウェルを洗浄する。続いて、100μLの抗Mcm5 HRP抗体試薬/コンジュゲートを各ウェルに加える。混合後、ウェルを、室温(20〜27℃)で30分間、静置してインキュベートする。次に、マイクロプレートの内容物をデカントまたは吸引により廃棄する。デカントの場合、プレートをたたいて吸収紙を用いて吸い取らせて水分をなくし、次に、ウェルを上記の通りに洗浄する。続いて、100μLの基質試薬をすべてのウェルに加え、30分間、室温(20〜27℃)でインキュベートする。各ウェルへの100μLの停止溶液の添加により、反応を停止させる。各ウェルの450nmでの吸光度を(ウェルの欠陥を最小限にするために、620〜630nmの参照波長を用いる)、マイクロプレートリーダーで読み取る。結果は、停止溶液の添加から30分間以内に読み取るべきである。
キャリブレーターサンプルが提供される。これらは、アッセイの時点で連続希釈を用いて調製され、使用後は廃棄される(図3を参照されたい)。
【0167】
結果を解釈するために、用量応答曲線を用いて未知試料中のMcm5の濃度を確認する。これは、手動で、またはコンピュータープログラムを用いて自動で構築することができる。手動での計算のためには、マイクロプレートリーダーの出力から得られる吸光度を記録する。2回反復の各希釈に対する吸光度を、直線グラフ用紙上の対応するMcm5濃度(ng/mL)に対してプロットし、続いて、プロットされた点を通る最良フィット曲線を描く。未知試料のMcm5濃度を決定するために、グラフの縦軸上で各未知試料に対する2回反復測定の平均吸光度を決め、曲線上の交差する点を見い出し、グラフの横軸から濃度(ng/mL)を読み取る。
表2は、典型的な実験からの結果を示す。
【0168】
【表2】
Mcm5手順は、7pg/mL未満の分析的検出限界を有する。
【0169】
[実施例2:膀胱癌について調べられている116名の被験体でのMcm5の臨床的研究]
116名の患者から尿試料を取得し、これらの患者の大部分は、引き続いて軟性膀胱鏡検査(flexible cystoscopy)およびCTまたは超音波によるスキャン法により検査された。異常な結果が得られた場合、患者に生検を勧めた。可能な場合には、これらの検査の結果を収集して、データセットに加えた。Mcm5のレベルを、上記のELISA技術(実施例1)を用いて各被験体で測定した。8症例の膀胱癌が臨床的に確認され、そのうちの5症例がMcm5アッセイで陽性であると記録された。
【0170】
悪性腫瘍の確定診断がなく、陽性のELISA結果が得られた4症例もまた存在した:患者13(膀胱内に乳頭状病変が見られ;生検結果は記録されなかった。前立腺閉塞);患者30(他の病変は記録されていない);患者65(腎摘出が記録されている);患者101(石灰化を伴う前立腺肥大)。結石の存在が、MCM+細胞の放出を引き起こす表皮基底層に対する物質の研磨作用に起因する偽陽性結果を引き起こし得ることが知られているが、そのようなケースの割合は、本発明のアッセイに影響を与えるには小さすぎる。
【0171】
アッセイ統計
標準的アッセイ統計を、Mcm5アッセイデータに対して算出した。真の臨床的エンドポイントは試験中のすべての患者に対しては入手可能でなかったが、当業者は、この適度なパネルが説得力のある結果を生んでいることを理解するであろう。特に、本研究は、96%(104/108)の特異度の現実的な推定をもたらした。
【0172】
[実施例3:種々のバッファーの比較]
既知数のT24尿路上皮癌細胞を各バッファー中で溶解させ、溶解物をMcm5に関してELISAで試験した。結果は、本アッセイでの溶解効率の明らかな差異を実証する。SDSを含有するバッファーは文献に記載される典型的なものであるが、Cytobusterまたは「Urosens LB」(0.08%デオキシコール酸ナトリウム、0.08%CHAPS、2mM EDTA、150mM Trizma pH7.6)よりも顕著に効率が低い。結果を図4に提示する。
【0173】
[実施例4]
CytoBuster中での細胞の溶解を、DMEM(細胞培養培地)中に再調製された細胞ペレットの対照を用いて、TBS Tritonバッファー(TBST)およびRIPAバッファー中の細胞と比較した。結果を図5に記載する。
【0174】
溶解サンプル中でのMcm5の効力を、細胞へのバッファーの添加後に試験した。一部のサンプルは、バッファーへの曝露後および試験前に凍結させた。理想的には、両方の計画で用いられる共通バッファーが有用であろう。
【0175】
対照の結果は、新鮮サンプルを試験した場合には、溶解剤を添加しないときには細胞は無傷のままであるが、凍結融解(FT)後には細胞は細胞膜の機械的破壊により破裂して、それによりMcm5が放出されることを明らかにした。この実験は、新鮮な溶解物を用いる場合には、TBSTバッファーはCytoBusterと大体同等であることを示した。しかしながら、サンプルを凍結させた後には、CytoBuster溶解物は劇的な効力の喪失に見舞われるが、TBSTは強くは影響されない。RIPA溶解物バッファーは、新鮮サンプルから誘導される場合には比較的低いが、FT後にすべての効力を保つ。
【0176】
[実施例5]
追加の構成要素を、TBST溶解物の安定性の改善を試みるためにTBTに添加した。溶解サンプル中のMcm5の効力を、新鮮細胞および凍結細胞の両方へのバッファーの添加後に試験した。この実験の結果を、図6に提示する。
【0177】
これらのデータ(図6に記載される)は、RIPAバッファーの安定化成分はデオキシコール酸ナトリウム(SDC)およびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)であるが、不運なことに、これらの要素を比較的単純なTBSTバッファーに組み込むと、シグナルの劇的な低下が引き起こされることを実証した。いずれかの要素の除去が、安定性を保持したままでTBSTと同じレベルまでRIPAシグナルを改善し得るか否かを知るために、RIPAバッファーの要素を1種類ずつ除去する補助的試験を行なった。結果を図7に記載する。
【0178】
[実施例6]
種々の濃度のTrisおよびTriton X-100を含む様々なバッファーを比較した。溶解サンプル中のMcm5の効力を、新鮮細胞および凍結細胞の両方へのバッファーの添加後に試験した。結果を図8に提示する。
【0179】
データは、Tris濃度の増加は細胞溶解物のMcm5レベルに対する改善を生じさせるが、Triton X-100濃度の増加は効果を有しないことを示した。
【0180】
さらに進める前に、溶解バッファーに対する最適な基剤を用いることを確実にするために、様々なpH範囲および緩衝剤タイプにわたって、数種類の化合物を試験した。これらの緩衝剤のうちのいくつかは良好な結果をもたらしたが、TBSが最も高いシグナルを有することが示された。これらのデータを、図9に記載する。
【0181】
[実施例7]
より高い緩衝剤濃度を用いた場合にシグナルが依然として増大するか否かを知るために、およびどの濃度で改善がプラトーに達するのかを知るために、Trisのさらなる滴定を行なった。結果を図10に提示する。
【0182】
Mcm5のレベルは、225mM Trisでプラトーに達し始め、250mM Trisのみで比較的高く、それから325mMまでシグナルは安定であり、その後は低下が見られる。製造および変動に伴う潜在的な問題を回避するためには、プラトーの安定な領域の濃度(300mMなど)が最適な選択であろう。
【0183】
[実施例8]
Tris濃度の変更は、イオン強度の増大に起因して有効であり得ることが仮説とされた。これはNaClの添加によって同様に達成できるので、NaClの様々な濃度を有する組成を試験した。結果を図11に提示する。
【0184】
データは、比較的低いTrisレベルを有するTBST(TBS+Tween 20)バッファー中のNaCl濃度の増加はシグナルを改善するが、Tris濃度に関わりなく、RIPAバッファー中では同じ効果は見られないことを示す。NaClレベルを代償的に低下させてもなお、Tris濃度の増加は標準的RIPAバッファー(25mM Trisおよび150mM NaCl)シグナルに対して実質的な改善を有しないようである。10mM Tris 150mM NaCl TBSTはデータセット中で得られた最も高いシグナルを有する(CytoBusterのシグナルのおおよそ2倍)ので、このバッファーがNaCl濃度に関しては最適とされ、安定化成分に関して別個に評価された。
【0185】
[実施例9]
実施例8で示されたデータは、約10mMのTrisを有するバッファーが最も有効であることを示唆するので、10mM Trisおよび様々なNaCl濃度を有するバッファーを調べた。結果を図12に提示する。
【0186】
NaClの滴定は、200mM NaClを含む10mM Trisが最良の候補であることを示す。データはまた、イオン強度が特定の点に達した場合に、精度が損なわれることも示しているようである。この点から選択されるバッファーの処方は、10mM Tris、200mM NaClおよび0.1%Triton X-100であり、続いて、好適な最終的な処方を見い出すために、ここに安定化成分を加えた。
【0187】
[実施例10]
様々な安定化剤を、TBS-Tと組み合わせた場合にMcm5サンプルを安定化させる上でのその有効性に関して試験した。
考えられる候補に関して、1%FBS(胎児ウシ血清)、2.5%BSA(ウシ血清アルブミン)、0.25mM Pefabloc SC、0.1mM Pefabloc SC、0.5% Sigma P8340プロテアーゼ阻害剤カクテルおよび0.25×Roche cOmpleteプロテアーゼ阻害剤カクテルのすべてが、安定性添加剤を含有しないバッファーと比較して、バックグラウンドシグナルまたは陽性サンプルシグナルを低下させることなく、有望なデータを有した。これらのデータを、図13Aおよび図13Bに提示する。
【0188】
添加剤不含TBSTおよびCytoBusterと比較してどのようであるかを知るために、種々の保存温度での6日間の後、これらの化合物を試験した。そのデータを図14に提示する。
【0189】
すべての安定化剤が、組成物を安定化する上で効果的であった。商業的に製造されているプロテアーゼ阻害剤カクテル(Pefabloc、Sigma P3840およびRoche cOmplete)は安定であるが、Mcm5シグナルを低下させた。2.5%BSAは、−20℃では1%FBSよりも性能がよかった。4℃および新鮮サンプルでの性能は、1%FBSおよび2.5%BSAに関しては同等であり、標準的TBSTバッファーと比較して、両方ともシグナルを増大させるように見える。BSAに関して−20℃では損失があったので、安定性に対する改善を確認するために、追加の細胞株を用いて反復実験を行なった。
【0190】
[実施例11]
TBSTr+2.5%BSA組成物を、TBSTrおよびCytoBusterと比較した。結果を、図15A図15Bおよび図15Cに提示する。
すべての細胞株について、TBST+2.5%BSAは安定(新鮮溶解物の10%以内の濃度)であり、かつCytoBusterおよびTBSTの両方よりも、1回のFTサイクル後に最も高いシグナルを有することが証明された。大まかに言って、CytoBusterは新鮮溶解物に関して非常に変動の大きな結果を生じることが明らかになっているが、凍結融解が行なわれる場合には常に明らかな効力の低下が見られる。
【0191】
[実施例12]
BSA含有バッファーは微生物が増殖し易いので、2種類の抗微生物剤であるProClin950およびアジ化ナトリウム(NaN3)を、TBST+2.5%BSA処方を用いて試験した。結果を図16および図17に提示する。
参照バッファーから10%未満の逸脱であるので、0.09%アジ化ナトリウムが抗微生物剤に関して最良の候補である。
【0192】
上記の明細書中で言及されたすべての刊行物は、参照により本明細書中に組み入れられる。本発明の記載された態様および実施形態の様々な改変および変形が、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。本発明を具体的な好ましい実施形態との関連で説明してきたが、特許請求される発明が、そのような具体的な実施形態に過度に限定されるべきではないことが理解されるはずである。実際に、当業者に明らかである本発明を実施するための記載された様式の様々な改変が、以下の特許請求の範囲の範囲内に入ることが意図される。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図16
図17
図18
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]