特許第6854301号(P6854301)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6854301
(24)【登録日】2021年3月17日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】バンパリインフォースメント
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/04 20060101AFI20210329BHJP
【FI】
   B60R19/04 M
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-1672(P2019-1672)
(22)【出願日】2019年1月9日
(65)【公開番号】特開2020-111102(P2020-111102A)
(43)【公開日】2020年7月27日
【審査請求日】2020年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000100791
【氏名又は名称】アイシン軽金属株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 詩穂
(72)【発明者】
【氏名】北 恭一
(72)【発明者】
【氏名】正保 順
(72)【発明者】
【氏名】高柳 旬一
(72)【発明者】
【氏名】林 良一
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 尚裕
【審査官】 米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2018/173759(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0159300(US,A1)
【文献】 国際公開第2018/207668(WO,A1)
【文献】 特開2014−54909(JP,A)
【文献】 特開2004−262300(JP,A)
【文献】 特開2015−147437(JP,A)
【文献】 特開平10−76889(JP,A)
【文献】 特開2018−30542(JP,A)
【文献】 特開2018−95006(JP,A)
【文献】 特開2003−252134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延在し、該車幅方向の一方側および他方側の各々にて車体前端部に接合された本体部と、
前記本体部に沿って接合された補強部材とを備え、
前記本体部は、前記車幅方向において隣り合って順に並ぶ、第1基準剛性領域、高剛性領域および第2基準剛性領域を含み、
前記高剛性領域は、前記第1基準剛性領域および前記第2基準剛性領域の各々より高い剛性を有しつつ、前記本体部の前記車幅方向における中央に位置しており、
前記第1基準剛性領域は、前記高剛性領域に対して前記車幅方向の前記一方側に位置しており、
前記第2基準剛性領域は、前記高剛性領域に対して前記車幅方向の前記他方側に位置しており、
前記補強部材は、前記車幅方向における前記高剛性領域と前記第1基準剛性領域との第1境界位置を横断するように、前記第1境界位置を挟んで前記高剛性領域および前記第1基準剛性領域の各々の少なくとも一部と重なっており、
前記車幅方向における前記高剛性領域と前記第2基準剛性領域との第2境界位置では、前記第1境界位置より剛性が低くなっている、バンパリインフォースメント。
【請求項2】
前記車幅方向において、前記補強部材の前記他方側の縁の位置は、前記第2境界位置と略一致しており、
前記補強部材は、前記第1基準剛性領域の前記一方側の端から前記第2境界位置まで全長に渡って前記本体部と重なっている、請求項1に記載のバンパリインフォースメント。
【請求項3】
前記補強部材は、前記本体部の車体側に接合されている、請求項1または請求項2に記載のバンパリインフォースメント。
【請求項4】
前記補強部材は、炭素繊維強化プラスチックから構成されている、請求項1から請求項のいずれか1項に記載のバンパリインフォースメント。
【請求項5】
前記炭素繊維強化プラスチックに含まれる炭素繊維が、前記車幅方向に沿って延在する、請求項に記載のバンパリインフォースメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンパリインフォースメントに関する。
【背景技術】
【0002】
バンパリインフォースメントの構成を開示した先行文献として、特開2015−147437号公報(特許文献1)がある。特許文献1に記載されたバンパリインフォースメントは、バンパリインフォースメント本体と、センタ補強部とを備えている。バンパリインフォースメント本体は、車両前後方向に延在する左右の車体骨格部材の前端部に取り付けられ、車両の前端部に車幅方向を長手として配置される。センタ補強部は、バンパリインフォースメント本体の車幅方向中央部の後部に固定または一体に成形されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−147437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の前方側において、バンパリインフォースメントに対して車両前後方向の後方の位置に、車幅方向に隣り合って互いに締結されている第1機構部および第2機構部を有するエンジンユニットが配置される場合がある。エンジンユニットは、車体骨格部材に連結されて支持されている。車幅方向において、第1機構部の幅は、第2機構部の幅より広い。第1機構部の車両前後方向の後方側は、車両のボディと面している。第2機構部の車両前後方向の後方側には、車両のボディに固定された後方支持部が設けられている。
【0005】
センターポール衝突が生じた際、バンパリインフォースメントが第1機構部の車両前後方向の前方の位置にて折れ曲がった場合、バンパリインフォースメントの折れ曲がり部から第1機構部に作用した剪断力によって第1機構部と第2機構部との締結面を境にエンジンユニットが割れ、分断された第1機構部が、車両のボディを局所的に押圧する可能性がある。
【0006】
一方、センターポール衝突が生じた際、バンパリインフォースメントが第2機構部の車両前後方向の前方の位置にて折れ曲がった場合、バンパリインフォースメントの折れ曲がり部から第2機構部に作用した剪断力の一部を後方支持部が受けることにより、エンジンユニットが割れずに、バンパリインフォースメントが第1機構部の車両前後方向の前方の位置にてさらに折れ曲がることになる。この場合、2箇所の折れ曲がり部に挟まれた部分のバンパリインフォースメントとエンジンユニットとが面接触することになり、衝突時の荷重がエンジンユニットに分散して作用する。その結果、車両のボディが局所的に押圧されることが抑制される。
【0007】
よって、センターポール衝突が生じた際にバンパリインフォースメントが最初に折れ曲がる箇所の車幅方向における位置を制御することが必要である。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、センターポール衝突が生じた際のバンパリインフォースメントが最初に折れ曲がる箇所の車幅方向における位置を制御することにより、車両のボディが局所的に押圧されることを抑制することができる、バンパリインフォースメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に基づくバンパリインフォースメントは、本体部と、補強部材とを備えている。本体部は、車幅方向に延在し、車幅方向の一方側および他方側の各々にて車体前端部に接合されている。補強部材は、前記本体部に沿って接合されている。本体部は、車幅方向において隣り合って順に並ぶ、第1基準剛性領域、高剛性領域および第2基準剛性領域を含んでいる。高剛性領域は、第1基準剛性領域および第2基準剛性領域の各々より高い剛性を有しつつ、本体部の車幅方向における中央に位置している。第1基準剛性領域は、高剛性領域に対して車幅方向の一方側に位置している。第2基準剛性領域は、高剛性領域に対して車幅方向の他方側に位置している。補強部材は、車幅方向における高剛性領域と第1基準剛性領域との第1境界位置を横断するように、第1境界位置を挟んで高剛性領域および第1基準剛性領域の各々の少なくとも一部と重なっている。
【0010】
本発明の一形態においては、車幅方向において、補強部材の他方側の縁の位置は、高剛性領域と第2基準剛性領域との第2境界位置と略一致している。
【0011】
本発明の一形態においては、補強部材は、車幅方向において、第1基準剛性領域の一方側の端から他方側の端まで全長に渡って重なっている。
【0012】
本発明の一形態においては、補強部材は、本体部の車体側に接合されている。
本発明の一形態においては、補強部材は、炭素繊維強化プラスチックから構成されている。
【0013】
本発明の一形態においては、炭素繊維強化プラスチックに含まれる炭素繊維が、車幅方向に沿って延在している。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、センターポール衝突が生じた際のバンパリインフォースメントが最初に折れ曲がる箇所の車幅方向における位置を制御することにより、車両のボディが局所的に押圧されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】比較例に係るバンパリインフォースメントが車体前端部に接合されている状態を、車両上方側から見た図である。
図2】比較例に係るバンパリインフォースメントが取り付けられた車体において、センターポール衝突が生じた直後の状態の一例を、車両上方側から見た図である。
図3】比較例に係るバンパリインフォースメントが取り付けられた車体において、センターポール衝突によって折れ曲がったバンパリインフォースメントの折れ曲がり部から車両後方へ向かう荷重が第1機構部に作用している状態を、車両上方側から見た図である。
図4】本発明の一実施形態に係るバンパリインフォースメントが、車体前端部に接合されている状態を、車両上方側から見た図である。
図5図4のバンパリインフォースメントを、車両前方側から見た図である。
図6】本発明の一実施形態に係るバンパリインフォースメントが取り付けられた車体において、センターポール衝突が生じた直後の状態を、車両上方側から見た図である。
図7】本発明の一実施形態に係るバンパリインフォースメントが取り付けられた車体において、センターポール衝突によって折れ曲がったバンパリインフォースメントの折れ曲がり部から車両後方へ向かう荷重が第2機構部に作用している状態を、車両上方側から見た図である。
図8】本発明の一実施形態に係るバンパリインフォースメントが取り付けられた車体において、センターポール衝突によってバンパリインフォースメントが第1境界位置に続いて第2境界位置にて折れ曲がった状態を、車両上方側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係るバンパリインフォースメントについて図面を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0017】
なお、図面においては、車両の内部からみて車両右方および車両左方をそれぞれ矢印X1および矢印X2で示し、車両前方および車両後方をそれぞれ矢印Y1および矢印Y2で示し、車両上方および車両下方をそれぞれ矢印Z1および矢印Z2で示している。車体に取り付けられる前の状態のバンパリインフォースメントに対して、また、車体に取付けられた後の状態のバンパリインフォースメントに対して、これらの方向を適用することができる。車両右方X1は、車幅方向の一方であり、車両左方X2は、車幅方向の他方である。
【0018】
まず、比較例に係るバンパリインフォースメントについて図を参照して説明する。図1は、比較例に係るバンパリインフォースメントが車体前端部に接合されている状態を、車両上方側から見た図である。
【0019】
図1に示すように、比較例に係るバンパリインフォースメント900は、後述する補強部材を備えておらず、本体部910のみから構成されている。本体部910は、車幅方向において隣り合って順に並ぶ、第1基準剛性領域911a、高剛性領域912および第2基準剛性領域911bを含んでいる。また、当該比較例に係るバンパリインフォースメント900は、第1基準剛性領域911aおよび第2基準剛性領域911bの各々の車幅方向外側において、第1基準剛性領域911aおよび第2基準剛性領域911bの各々より剛性の高い側方高剛性領域915をさらに含んでいる。
【0020】
次に、バンパリインフォースメントが車体に取りつけられた際の、バンパリインフォースメントと車体の構成部材との位置関係について説明する。
【0021】
図1に示すように、バンパリインフォースメント900は、車幅方向の一方端および他方端の各々にて、車体前端部11を介して、車両前後方向に延在する車体骨格部材13に取り付けられている。車体前端部11は、たとえばクラッシュボックスであり、車体骨格部材13は、たとえばフロントサイドメンバである。2つの車体骨格部材13の各々は、車体の一部を構成する仕切部12に接合されている。仕切部12は、たとえば、車幅方向に延在するダッシュボードである。
【0022】
バンパリインフォースメント900に対して車両前後方向の後方において、エンジンユニット15が配置されている。すなわち、エンジンユニット15は、車幅方向において、2つの車体骨格部材13の間に配置される。エンジンユニット15は、車幅方向の端部において、連結部14を介して車体骨格部材13に連結されて支持されている。連結部14は、たとえばエンジンマウントである。
【0023】
エンジンユニット15は、車幅方向に隣り合って互いに締結されている第1機構部15aおよび第2機構部15bを有する。車幅方向において、第1機構部15aの幅は、第2機構部15bの幅より広い。ここで、本体部910の第1境界位置913aは、第1機構部15aの前方に位置するように配置される。本体部910の第2境界位置913bは、第2機構部15bの前方に位置するように配置される。
【0024】
また、エンジンユニット15は、車両前後方向において、バンパリインフォースメント900と仕切部12との間に配置される。第1機構部15aの車両前後方向の後方側は、車体10の仕切部12と面している。第2機構部15bの車両前後方向の後方側には、車体10の仕切部12に固定された後方支持部17が設けられている。
【0025】
第1機構部15aは、たとえばエンジンであり、第2機構部15bは、たとえばトランスアクスルである。後方支持部17は、たとえばギアボックスである。
【0026】
以下、比較例に係るバンパリインフォースメント900が設けられた車体10に対してセンターポール衝突が生じた際の動作について、図面を参照して説明する。
【0027】
図2は、比較例に係るバンパリインフォースメントが取り付けられた車体において、センターポール衝突が生じた直後の状態の一例を、車両上方側から見た図である。
【0028】
図2に示すように、センターポール衝突時には、ポール1が、バンパリインフォースメント900の車幅方向略中央の位置に、車両前側から白抜きの矢印で示す車両後方に向けて衝突する。
【0029】
比較例に係るバンパリインフォースメント900においては、センターポール衝突時に、高剛性領域912の車幅方向の両端の位置である第1境界位置913aおよび第2境界位置913bの各々に、高い荷重が作用する。そのため、バンパリインフォースメント900においては、第1境界位置913aおよび第2境界位置913bのいずれか一方において最初に折れ曲がる。すなわち、比較例に係るバンパリインフォースメント900においては、第1境界位置913aおよび第2境界位置913bのいずれにおいて先に折れ曲がるかについては、制御されていない。
【0030】
図2においては、第2境界位置913bより先に第1境界位置913aで、バンパリインフォースメント900が車両後方に向かって凸状に折れ曲がった状態を図示している。図2に示す状態からバンパリインフォースメント900がさらに折れ曲がることにより、バンパリインフォースメント900の折れ曲がり部が、エンジンユニット15に衝突する。
【0031】
バンパリインフォースメント900の折れ曲がり部がエンジンユニット15に衝突することにより、第1機構部15aの前面に車両後方側へ向かう荷重が作用する。その結果、第1機構部15aは、第2機構部15bと接合された状態のまま車両後方に変位する。
【0032】
図3は、比較例に係るバンパリインフォースメントが取り付けられた車体において、センターポール衝突によって折れ曲がったバンパリインフォースメントの折れ曲がり部から車両後方へ向かう荷重が第1機構部に作用している状態を、車両上方側から見た図である。
【0033】
バンパリインフォースメント900の折れ曲がり部から車両後方へ向かう荷重が作用して、第1機構部15aと接合された状態のまま車両後方へ変位した第2機構部15bは、後方支持部17と接触する。これにより、第2機構部15bには、後方支持部17から車両前方に向かう荷重が作用する。一方、第1機構部15aには、バンパリインフォースメント900の折れ曲がり部から車両後方へ向かう荷重が作用している。その結果、第1機構部15aと第2機構部15bとの締結面16に剪断力が作用する。
【0034】
締結面16に剪断力が作用することにより、図3に示すように、締結面16を境にエンジンユニット15が割れて、第1機構部15aと第2機構部15bとが分断される。分断された第1機構部15aが、車体10の仕切部12を局所的に押圧する。
【0035】
このように車体10の仕切部12が局所的に押圧されることを抑制するためには、センターポール衝突が生じた際にバンパリインフィースメントが最初に折れ曲がる箇所の車幅方向における位置を制御することが必要である。
【0036】
次に、本発明の一実施形態に係るバンパリインフォースメントについて図を参照して説明する。なお、車体10の構成については、比較例において説明した構成と同様であるため、説明を繰り返さない。
【0037】
図4は、本発明の一実施形態に係るバンパリインフォースメントが、車体前端部に接合されている状態を、車両上方側から見た図である。図5は、図4のバンパリインフォースメントを、車両前方側から見た図である。
【0038】
図4および図5に示すように、本発明の一実施形態に係るバンパリインフォースメント100は、本体部110と、補強部材120とを備えている。本体部110は、車幅方向に延在し、車幅方向の一方側および他方側の各々にて車体前端部11に接合されている。
【0039】
図4および図5に示すように、本実施形態において、本体部110は、基材110Aと、基材110Aより剛性の高い高剛性部材110Bとを含んでいる。
【0040】
図4に示すように、基材110Aは、車幅方向に延在し、車幅方向の一方側および他方側の各々の端部にて車体前端部11に直接接合されている。基材110Aにおいては、車幅方向の一方端および他方端の各々が車両後方に向かって屈曲していることにより、車幅方向における中央部が、車幅方向の一方端および他方端の部分と比較して車両前方側に位置している。なお、基材110Aは、車幅方向に延在しつつ、車両前方に向かって凸状に湾曲する形状を有していてもよい。
【0041】
図4に示すように、本実施形態において、基材110Aは、車両前後方向における厚みが略均一な状態で延在している。図5に示すように、本実施形態において、基材110Aは、上下方向における長さが略均一な状態で延在している。
【0042】
本実施形態において、基材110Aは鉄で構成されているが、基材110Aの材料は鉄に限られず、アルミニウムなどの他の金属であってもよい。
【0043】
図4に示すように、本実施形態においては、高剛性部材110Bが、基材110Aの車両前方側に接合されている。なお、高剛性部材110Bは、基材110Aの車両後方側に接合されてもよい。本実施形態においては、高剛性部材110Bは、溶接により基材110Aと接合されている。なお、高剛性部材110Bが、接合剤によって基材110Aと接合されていてもよい。
【0044】
図4に示すように、本実施形態において、高剛性部材110Bは、本体部110の車幅方向における略中央の位置に配置されている。高剛性部材110Bは、車両前後方向における厚みが略均一な状態で延在している。図5に示すように、本実施形態において、高剛性部材110Bは、上下方向における長さが略均一な状態で延在している。
【0045】
本実施形態において、高剛性部材110Bは、アルミニウムで構成されている。なお、高剛性部材110Bの材料はアルミニウムに限られない、高剛性部材110Bは、基材110Aより剛性が高くなるように構成されていれば、アルミニウム以外の金属で構成されていてもよい。
【0046】
図4に示すように、本実施形態においては、基材110Aのうち高剛性部材110Bが接合されている部分と、高剛性部材110Bとから、高剛性領域112が構成されている。
【0047】
さらに、本実施形態においては、基材110Aのうち高剛性部材110Bが接合されていない部分によって、車幅方向において高剛性領域112の一方端に隣接する第1基準剛性領域111a、および、車幅方向において高剛性領域112の他方端に隣接する第2基準剛性領域111bの、各々が構成されている。
【0048】
このように、本実施形態において、本体部110は、車幅方向において隣り合って順に並ぶ、第1基準剛性領域111a、高剛性領域112および第2基準剛性領域111bを含む。高剛性領域112は、第1基準剛性領域111aおよび第2基準剛性領域111bの各々より高い剛性を有しつつ、本体部110の車幅方向における中央に位置している。第1基準剛性領域111aは、高剛性領域112に対して車幅方向の一方側に位置している。第2基準剛性領域は111b、高剛性領域112に対して車幅方向の他方側に位置している。
【0049】
本実施形態において、基材110Aのうち高剛性部材110Bが接合されていない部分は、剛性が略均一な状態で延在している。なお、基材110Aのうち高剛性部材110Bが接合されていない部分は、剛性が不均一な状態で延在していてもよい。たとえば、基材110Aのうち、高剛性部材110Bが接合されていない部分において、高剛性領域112と隣り合う第1基準剛性領域111aおよび第2基準剛性領域111b以外の領域が、高剛性領域112の剛性と同等または高剛性領域112の剛性より大きい剛性を有していてもよい。
【0050】
なお、第1基準剛性領域111a、第2基準剛性領域111bおよび高剛性領域112の各々は、必ずしも上記のような基材110Aおよび高剛性部材110Bによって構成されるものに限定されない。
【0051】
たとえば、基材110Aの内部に空隙が形成されており、高剛性領域112を構成する部分の基材110Aの空隙部に高剛性材料が充填されることにより、高剛性領域112が、第1基準剛性領域111aおよび第2基準剛性領域111bの各々より高い剛性を有していてもよい。
【0052】
若しくは、基材110Aの車両前後方向における厚みが、高剛性領域112を構成する部分において、第1基準剛性領域111aおよび第2基準剛性領域111bの各々を構成する部分より厚いことによって、高剛性領域112が、第1基準剛性領域111aおよび第2基準剛性領域111bの各々より高い剛性を有していてもよい。
【0053】
図4に示すように、補強部材120は、本体部110に沿って接合されている。本実施形態においては、補強部材120は、本体部110の車体10側に接合されている。また、図5に示すように、上下方向において、補強部材120の長さは、本体部110の長さと略同一である。
【0054】
図4に示すように、補強部材120は、車幅方向における高剛性領域112と第1基準剛性領域111aとの第1境界位置113aを横断するように、第1境界位置113aを挟んで高剛性領域112および第1基準剛性領域111aの各々の少なくとも一部と重なっている。
【0055】
本実施形態においては、補強部材120は、車幅方向において高剛性領域112側の他方側の端部から車両内側の一方側の端部近傍まで、基材110Aと重なっている。すなわち、車幅方向における補強部材120の一方側の縁121aは、車幅方向の一方側の車体前端部11の近傍に位置している。なお、補強部材120は、車幅方向において、第1基準剛性領域111aの一方側の端から他方側の端まで全長に渡って重なっていてもよい。
【0056】
本実施形態においては、車幅方向において、補強部材120の他方側の縁121bの位置は、高剛性領域112と第2基準剛性領域111bとの第2境界位置113bと略一致している。
【0057】
本実施形態においては、補強部材120は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)から構成されている。炭素繊維強化プラスチックに含まれる炭素繊維は、車幅方向に沿って延在している。具体的には、炭素繊維強化プラスチックは、テープ状の一方向強化材(UD:Uni-Direction)で構成されている。テープ状の一方向強化材が本体部110に貼り付けられた後、一方向強化材の樹脂成分を硬化させることにより、補強部材120が本体部110に接合される。
【0058】
以下、本発明の一実施形態に係るバンパリインフォースメント100が設けられた車体10に対してセンターポール衝突が生じた際の動作について、図面を参照して説明する。
【0059】
図6は、本発明の一実施形態に係るバンパリインフォースメントが取り付けられた車体において、センターポール衝突が生じた直後の状態を、車両上方側から見た図である。
【0060】
図6に示すように、本実施形態に係るバンパリインフォースメント100においては、センターポール衝突時に、高剛性領域112の車幅方向の両端である第1境界位置113aおよび第2境界位置113bの各々に、高い荷重が作用する。本実施形態に係るバンパリインフォースメント100においては、補強部材120が配置されている第1境界位置113aより、補強部材120が配置されていない第2境界位置113bの方が、剛性が低くなっている。そのため、バンパリインフォースメント100においては、第2境界位置113bにおいて最初に折れ曲がる。すなわち、本実施形態に係るバンパリインフォースメント100においては、第1境界位置113aおよび第2境界位置113bのうち第2境界位置113bにおいて先に折れ曲がるように制御されている。
【0061】
図7は、本発明の一実施形態に係るバンパリインフォースメントが取り付けられた車体において、センターポール衝突によって折れ曲がったバンパリインフォースメントの折れ曲がり部から車両後方へ向かう荷重が第2機構部に作用している状態を、車両上方側から見た図である。
【0062】
バンパリインフォースメント100の折れ曲がり部から車両後方へ向かう荷重が作用して、第1機構部15aと接合された状態のまま車両後方へ変位した第2機構部15bは、後方支持部17と接触する。これにより、第2機構部15bには、後方支持部17から車両前方に向かう荷重が作用する。一方、第1機構部15aには、荷重は作用していない。そのため、第1機構部15aと第2機構部15bとの締結面16には剪断力は作用しない。
【0063】
図7に示すように、バンパリインフォースメント100の折れ曲がり部と第2機構部15bとが接した状態においては、ポール1から受ける車両後方へ向かう荷重は、第1境界位置113aに集中して作用する。そのため、バンパリインフォースメント100は、第2境界位置113bに続いて、第1境界位置113aにおいて折れ曲がる。
【0064】
図8は、本発明の一実施形態に係るバンパリインフォースメントが取り付けられた車体において、センターポール衝突によってバンパリインフォースメントが第1境界位置に続いて第2境界位置にて折れ曲がった状態を、車両上方側から見た図である。
【0065】
図8に示すように、センターポール衝突によってバンパリインフォースメント100が第1境界位置113aに続いて第2境界位置113bにて折れ曲がることにより、バンパリインフォースメント100の高剛性領域112に位置する部分が、エンジンユニット15と面接触する。
【0066】
図8に示すように、バンパリインフォースメント100の高剛性領域112に位置する部分は、エンジンユニット15の第1機構部15aおよび第2機構部15bの両方にわたって面接触する。これにより、衝突時の荷重を、エンジンユニット15の全体に分散して受けることができる。その結果、第1機構部15aと第2機構部15bとの締結面16に作用する剪断力を低減することができる。よって、車体10の仕切部12が局所的に押圧されることを抑制することができる。
【0067】
本発明の一実施形態に係るバンパリインフォースメントに100においては、補強部材120が、車幅方向における高剛性領域112と第1基準剛性領域111aとの第1境界位置113aを横断するように、第1境界位置113aを挟んで高剛性領域112および第1基準剛性領域111aの各々の少なくとも一部と重なっている。
【0068】
この構成により、本発明の一実施形態に係るバンパリインフォースメント100は、センターポール衝突が生じた際に、高剛性領域112と第2基準剛性領域111bとの第2境界位置113bが最初に折れ曲がるように制御される。このため、車体10の仕切部12が局所的に押圧されることを抑制できる。すなわち、車両のボディが局所的に押圧されることを抑制することができる。
【0069】
本発明の一実施形態に係るバンパリインフォースメントに100においては、車幅方向において、補強部材120の他方側の縁121bの位置は、高剛性領域112と第2基準剛性領域111bとの第2境界位置113bと略一致している。
【0070】
この構成により、バンパリインフォースメント100における第2境界位置113bでの剛性差が顕著となる。このため、センターポール衝突が生じた際に、バンパリインフォースメント100が、安定して第2境界位置113bにおいて最初に折れ曲がるようにすることができる。
【0071】
なお、車幅方向において、補強部材120の他方側の縁121bの位置は、第2境界位置113bと一致していなくてもよい。たとえば、補強部材120の他方側の縁121bの位置は、第2境界位置113bより高剛性領域112側に位置していてもよい。また、補強部材120の他方側の縁121bの位置は、第2境界位置113bより第2基準剛性領域111b側に位置していてもよいが、この場合においては、第1境界位置113aより先に第2境界位置113bにてバンパリインフォースメント100が折れ曲がる構成を維持できる範囲内でなければならない。たとえば、補強部材120の第2境界位置113bと重なる位置にスリットが設けられるなどして、バンパリインフォースメント100の第2境界位置113bにおける剛性が他の部分に比較して小さくなるように構成されていてもよい。
【0072】
補強部材120は、車幅方向において、第1基準剛性領域111aの一方側の端から他方側の端まで全長に渡って重なっていてもよい。この場合は、補強部材120は、本体部110の車体10側とは反対側に接合されている。
【0073】
この構成により、バンパリインフォースメント100における第2境界位置113bでの剛性差がより顕著となる。このため、センターポール衝突が生じた際に、バンパリインフォースメント100が、さらに安定して第2境界位置113bにおいて最初に折れ曲がるようにすることができる。また、バンパリインフォースメント100が、第2境界位置113bにおいて折れ曲がった後、安定して第1境界位置113aにおいて折れ曲がるようにすることができる。なお、補強部材120は、車幅方向において、本体部110の第1基準剛性領域111aと部分的に重なっていてもよい。
【0074】
本発明の一実施形態においては、補強部材120は、本体部110の車体10側に接合されている。
【0075】
この構成により、センターポール衝突の際には、補強部材120に車幅方向の引張応力が生ずるため、本体部110に生ずる引張応力を低減することができ、バンパリインフォースメント100を効果的に補強することができる。
【0076】
なお、補強部材120は、本体部110の車体10側とは反対側に接合されていてもよい。この場合、補強部材120に圧縮応力が生ずるため、補強部材120が、アルミニウムなどの金属で構成され、溶接によって本体部110に接合されていることが好ましい。
【0077】
本発明の一実施形態においては、補強部材120は、炭素繊維強化プラスチックから構成されている。
【0078】
この構成により、補強部材120の軽量化を図りつつ、バンパリインフォースメント100を効果的に補強することができる。なお、補強部材120は、炭素繊維強化プラスチックから構成される場合に限られず、上記のように、アルミニウムなどの金属で構成されていてもよい。
【0079】
本発明の一実施形態においては、炭素繊維強化プラスチックに含まれる炭素繊維が、車幅方向に沿って延在している。
【0080】
この構成により、補強部材120に生ずる車幅方向の引張応力を炭素繊維で受け持つことができるため、バンパリインフォースメント100を効果的に補強することができる。なお、炭素繊維強化プラスチックに含まれる炭素繊維の延在方向は、車幅方向に限られず、また、炭素繊維の延在方向は、1方向に限られず、直交する2方向でもよい。さらに、炭素繊維強化プラスチックに含まれる炭素繊維は、長尺繊維が方向性を有するように配置されている構成に限られず、短尺繊維が方向性を有さないように配置されている構成でもよい。
【0081】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0082】
1 ポール、10 車体、11 車体前端部、12 仕切部、13 車体骨格部材、14 連結部、15 エンジンユニット、15a 第1機構部、15b 第2機構部、16 締結面、17 後方支持部、100,900 バンパリインフォースメント、110,910 本体部、110A 基材、110B 高剛性部材、111a,911a 第1基準剛性領域、111b,911b 第2基準剛性領域、112,912 高剛性領域、113a,913a 第1境界位置、113b,913b 第2境界位置、120 補強部材、121a,121b 縁、915 側方高剛性領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8