(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エアロゾル源を霧化する霧化ユニットの一部を構成する発熱体がヒータ形状に加工された状態で、前記発熱体に電力を供給することによって、前記発熱体の表面に酸化皮膜を形成するステップAと、
前記エアロゾル源を保持する部材である液保持部材を前記発熱体に接触又は近接させるステップBと、を備え、
前記ステップAは、前記発熱体が前記エアロゾル源と接触又は近接しない状態で行われ、且つ前記液保持部材を前記発熱体に接触又は近接させた状態で行われることを特徴とする霧化ユニットの製造方法。
前記条件は、前記霧化ユニットが組み込まれる非燃焼型香味吸引器に搭載される電源と同じ電圧を1.5〜3.0秒に亘って前記発熱体に印加する処理をm(mは1以上の整数)回行う条件であることを特徴とする請求項9に記載の霧化ユニットの製造方法。
【発明の概要】
【0004】
第1の特徴は、霧化ユニットの製造方法であって、エアロゾル源を霧化する霧化ユニットの一部を構成する発熱体がヒータ形状に加工された状態で、前記発熱体に電力を供給することによって、前記発熱体の表面に酸化皮膜を形成するステップAを備えることを要旨とする。
【0005】
第2の特徴は、第1の特徴において、前記ステップAは、前記発熱体が前記エアロゾル源と接触又は近接しない状態で行われることを要旨とする。
【0006】
第3の特徴は、第1の特徴又は第2の特徴において、前記霧化ユニットの製造方法は、前記エアロゾル源を保持する部材である液保持部材を前記発熱体に接触又は近接させるステップBを備え、前記ステップAは、前記液保持部材を前記発熱体に接触又は近接させた状態で行われることを要旨とする。
【0007】
第4の特徴は、第3の特徴において、前記ステップAは、前記エアロゾル源を貯留する部材であるリザーバに前記液保持部材を接触させた状態で行われることを要旨とする。
【0008】
第5の特徴は、第4の特徴において、前記ステップAは、前記リザーバに前記エアロゾル源を充填する前に行われることを要旨とする。
【0009】
第6の特徴は、第3の特徴乃至第5の特徴のいずれかにおいて、前記液保持部材は、100W/(m・K)以下の熱伝導率を有することを要旨とする。
【0010】
第7の特徴は、第3の特徴乃至第6の特徴のいずれかにおいて、前記液保持部材は、可撓性を有する素材によって構成されており、前記ヒータ形状は、前記液保持部材に巻き回された前記発熱体の形状であり、コイル形状であることを要旨とする。
【0011】
第8の特徴は、第3の特徴乃至第7の特徴のいずれかにおいて、前記ステップAは、前記霧化ユニットから発生するエアロゾルの流路を含む空気流路を前記液保持部材が横断した状態で行われることを要旨とする。
【0012】
第9の特徴は、第8の特徴において、前記ステップAは、前記液保持部材の少なくとも一端が前記空気流路を形成する筒状部材の外側に取り出された状態で行われることを要旨とする。
【0013】
第10の特徴は、第1の特徴乃至第9の特徴のいずれかにおいて、前記ステップAは、前記発熱体が酸化性物質と接触した状態で行われることを要旨とする。
【0014】
第11の特徴は、第1の特徴乃至第10の特徴のいずれかにおいて、前記ステップAは、前記霧化ユニットの動作確認を行う条件に従って前記発熱体に電力を供給するステップを含むことを要旨とする。
【0015】
第12の特徴は、第11の特徴において、前記条件は、前記霧化ユニットが組み込まれる非燃焼型香味吸引器に搭載される電源と同じ電圧を1.5〜3.0秒に亘って前記発熱体に印加する処理をm(mは1以上の整数)回行う条件であることを要旨とする。
【0016】
第13の特徴は、第1の特徴乃至第12の特徴のいずれかにおいて、前記ステップAは、前記発熱体に電力を間欠的に供給するステップを含むことを要旨とする。
【0017】
第14の特徴は、霧化ユニットであって、ヒータ形状を有する発熱体と、前記発熱体と接触又は近接するエアロゾル源とを備え、前記発熱体の表面に酸化皮膜が形成されていることを要旨とする。
【0018】
第15の特徴は、第14の特徴において、前記発熱体を形成する導電部材のうち、互いに隣接する導電部材の間隔は、0.5mm以下であることを要旨とする。
【0019】
第16の特徴は、第14の特徴又は第15の特徴において、前記ヒータ形状は、コイル形状であることを要旨とする。
【0020】
第17の特徴は、非燃焼型香味吸引器であって、第14の特徴乃至第16の特徴に係る霧化ユニットと、前記霧化ユニットから発生するエアロゾルの流路上において、前記発熱体よりも吸口側に設けられるフィルタとを備えることを要旨とする。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下において、実施形態について説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合があることに留意すべきである。
【0023】
従って、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0024】
[実施形態の概要]
上述した背景技術で記載した霧化ユニットでは、ヒータ形状に加工された発熱体が用いられる。発熱体に対する電源出力(例えば、電圧)が一定であると仮定すると、単位電源出力あたりのエアロゾル量を増大する観点では、ヒータ形状に加工された発熱体を形成する導電部材のうち、互いに隣接する導電部材の間隔を小さくすることが好ましい。しかしながら、互いに隣接する導電部材の間隔を小さくすると、発熱体の製造工程において発熱体を形成する導電部材の短絡が生じやすい。
【0025】
実施形態に係る霧化ユニットの製造方法は、エアロゾル源を霧化する霧化ユニットの一部を構成する発熱体がヒータ形状に加工された状態で、前記発熱体に電力を供給することによって、前記発熱体の表面に酸化皮膜を形成するステップAを備える。
【0026】
実施形態では、発熱体がヒータ形状に加工された状態で、発熱体に電力を供給することによって、発熱体の表面に酸化皮膜を形成する。従って、発熱体を形成する導電部材のうち、互いに隣接する導電部材の間隔を小さくしながらも、発熱体の表面に形成された酸化皮膜によって、発熱体を形成する導電部材の短絡を抑制することができる。さらに、発熱体の表面に酸化皮膜を形成した後に発熱体をヒータ形状に加工するケースと比べて、発熱体の表面に形成された酸化皮膜の剥離を抑制しやすい。
【0027】
[実施形態]
(非燃焼型香味吸引器)
以下において、実施形態に係る非燃焼型香味吸引器について説明する。
図1は、実施形態に係る非燃焼型香味吸引器100を示す図である。非燃焼型香味吸引器100は、燃焼を伴わずに香喫味成分を吸引するための器具であり、非吸口端から吸口端に向かう方向である所定方向Aに沿って延びる形状を有する。
図2は、実施形態に係る霧化ユニット111を示す図である。なお、以下においては、非燃焼型香味吸引器100を単に香味吸引器100と称することに留意すべきである。
【0028】
図1に示すように、香味吸引器100は、吸引器本体110と、カートリッジ130とを有する。
【0029】
吸引器本体110は、香味吸引器100の本体を構成しており、カートリッジ130を接続可能な形状を有する。具体的には、吸引器本体110は、吸引器ハウジング110Xを有しており、カートリッジ130は、吸引器ハウジング110Xの吸口側端に接続される。吸引器本体110は、エアロゾル源の燃焼を伴わずにエアロゾル源を霧化する霧化ユニット111と、電装ユニット112とを有する。霧化ユニット111及び電装ユニット112は、吸引器ハウジング110Xに収容される。
【0030】
実施形態では、霧化ユニット111は、吸引器ハウジング110Xの一部を構成する第1筒体111Xを有する。霧化ユニット111は、
図2に示すように、リザーバ111Pと、ウィック111Qと、霧化部111Rと、筒状部材111Sとを有する。リザーバ111P、ウィック111Q及び霧化部111Rは、第1筒体111Xに収容される。第1筒体111Xは、所定方向Aに沿って延びる筒状形状(例えば、円筒形状)を有する。
【0031】
リザーバ111Pは、エアロゾル源を貯留する部材であるリザーバの一例である。リザーバ111Pは、複数回のパフ動作で用いるエアロゾル源の貯留に適した構成(サイズ、材料、構造など)を有する。例えば、リザーバ111Pは、樹脂ウェブ等材料によって構成される孔質体であってもよく、エアロゾル源を貯留するための空洞であってもよい。リザーバ111Pは、単位体積当たりにより多くのエアロゾル源を貯留できることが好ましい。
【0032】
ウィック111Qは、リザーバ111Pから供給されるエアロゾル源を保持する部材である液保持部材の一例である。ウィック111Qは、リザーバ111Pに貯留可能なエアロゾル源の一部(例えば、1回のパフ動作で用いるエアロゾル源)をリザーバ111Pから霧化部111Rに接触又は近接する位置に移動させて保持するのに適した構成(サイズ、材料、構造など)を有する。ウィック111Qは、リザーバ111Pから毛細管現象によってエアロゾル源をウィック111Qに移動させる部材であってもよい。なお、ウィック111Qは、リザーバ111Pと接触することによってエアロゾル源をウィック111Qに移動させる。リザーバ111Pが空洞である場合には、ウィック111Qとリザーバ111Pとの接触とは、ウィック111Qが空洞(リザーバ111P)に露出することを意味する。但し、エアロゾル源がリザーバ111Pに充填された後において、空洞(リザーバ111P)に充填されたエアロゾル源と接触するようにウィック111Qが配置されることに留意すべきである。例えば、ウィック111Qは、ガラス繊維や多孔質セラミックによって構成される。ウィック111Qは、霧化部111Rの加熱に耐え得る耐熱性を有することが好ましい。
【0033】
ウィック111Qは、100W/(m・K)以下の熱伝導率を有する。ウィック111Qの熱伝導率は、50W/(m・K)以下であることが好ましく、10W/(m・K)以下であることがさらに好ましい。これによって、発熱体からウィック111Qを介してリザーバ111Pに過剰な熱が伝達されることが抑制される。ウィック111Qは、可撓性を有する素材によって構成されてもよい。ウィック111Qは、300℃以上の耐熱性を有することが好ましく、500℃以上の耐熱性を有することがさらに好ましい。
【0034】
霧化部111Rは、ウィック111Qによって保持されるエアロゾル源を霧化する。霧化部111Rは、例えば、ヒータ形状に加工された発熱体である。ヒータ形状に加工された発熱体は、エアロゾル源を保持するウィック111Qと接触又は近接するように配置される。発熱体の表面には酸化皮膜が形成されている。ここで、発熱体がウィック111Qと近接するとは、ウィック111Qがエアロゾル源を保持した際に発熱体によってエアロゾル源を霧化可能な程度に発熱体とエアロゾル源との距離が維持されるように、発熱体とウィック111Qとの距離が維持されることを意味する。発熱体とウィック111Qとの距離は、エアロゾル源やウィック111Qの種類、発熱体の温度などにもよるが、例えば3mm以下の距離、好ましくは1mm以下の距離が考えられる。
【0035】
エアロゾル源は、グリセリン又はプロピレングリコールなどの液体である。エアロゾル源は、例えば、上述したように、樹脂ウェブ等の材料によって構成される孔質体によって保持される。孔質体は、非たばこ材料によって構成されていてもよく、たばこ材料によって構成されていてもよい。なお、エアロゾル源は、香喫味成分(例えば、ニコチン成分等)を含んでいてもよい。或いは、エアロゾル源は、香喫味成分を含まなくてもよい。
【0036】
筒状部材111Sは、霧化部111Rから発生するエアロゾルの流路を含む空気流路111Tを形成する筒状部材の一例である。空気流路111Tは、インレット112Aから流入する空気の流路である。ここで、上述したウィック111Qは、空気流路111Tを横断するように配置される。ウィック111Qの少なくとも一端(
図2では、両端)は、筒状部材111Sの外側に取り出されており、ウィック111Qは、筒状部材111Sの外側に取り出された部分でリザーバ111Pと接触する。
【0037】
電装ユニット112は、吸引器ハウジング110Xの一部を構成する第2筒体112Xを有する。実施形態において、電装ユニット112は、インレット112Aを有する。インレット112Aから流入する空気は、
図2に示すように、霧化ユニット111(霧化部111R)に導かれる。電装ユニット112は、香味吸引器100を駆動する電源、香味吸引器100を制御する制御回路を有する。電源や制御回路は、第2筒体112Xに収容される。第2筒体112Xは、所定方向Aに沿って延びる筒状形状(例えば、円筒形状)を有する。電源は、例えば、リチウムイオン電池又はニッケル水素電池である。制御回路は、例えば、CPU及びメモリによって構成される。
【0038】
カートリッジ130は、香味吸引器100を構成する吸引器本体110に接続可能に構成される。カートリッジ130は、空気流路111T上において霧化ユニット111よりも吸口側に設けられる。言い換えると、カートリッジ130は、必ずしも物理空間的に霧化ユニット111よりも吸口側に設けられている必要はなく、空気流路111T上において霧化ユニット111よりも吸口側に設けられていればよい。すなわち、実施形態において、「吸口側」は、インレット112Aから流入する空気の流れの「下流」と同義であると考えてもよく、「非吸口側」は、インレット112Aから流入する空気の流れの「上流」と同義であると考えてもよい。
【0039】
具体的には、カートリッジ130は、カートリッジ本体131と、香味源132と、網目133Aと、フィルタ133Bとを有する。
【0040】
カートリッジ本体131は、所定方向Aに沿って延びる筒状形状を有する。カートリッジ本体131は、香味源132を収容する。
【0041】
香味源132は、空気流路111T上において霧化ユニット111よりも吸口側に設けられる。香味源132は、エアロゾル源から発生するエアロゾルに香喫味成分を付与する。言い換えると、香味源132によってエアロゾルに付与される香味は、吸口に運ばれる。
【0042】
実施形態において、香味源132は、霧化ユニット111から発生するエアロゾルに香喫味成分を付与する原料片によって構成される。原料片のサイズは、0.2mm以上1.2mm以下であることが好ましい。さらには、原料片のサイズは、0.2mm以上0.7mm以下であることが好ましい。香味源132を構成する原料片のサイズが小さいほど、比表面積が増大するため、香味源132を構成する原料片から香喫味成分がリリースされやすい。従って、所望量の香喫味成分をエアロゾルに付与するにあたって、原料片の量を抑制できる。香味源132を構成する原料片としては、刻みたばこ、たばこ原料を粒状に成形した成形体を用いることができる。但し、香味源132は、たばこ原料をシート状に成形した成形体であってもよい。また、香味源132を構成する原料片は、たばこ以外の植物(例えば、ミント、ハーブ等)によって構成されてもよい。香味源132には、メントールなどの香料が付与されていてもよい。
【0043】
ここで、香味源132を構成する原料片は、例えば、JIS Z 8801に準拠したステンレス篩を用いて、JIS Z 8815に準拠する篩分けによって得られる。例えば、0.71mmの目開きを有するステンレス篩を用いて、乾燥式かつ機械式振とう法によって20分間に亘って原料片を篩分けによって、0.71mmの目開きを有するステンレス篩を通過する原料片を得る。続いて、0.212mmの目開きを有するステンレス篩を用いて、乾燥式かつ機械式振とう法によって20分間に亘って原料片を篩分けによって、0.212mmの目開きを有するステンレス篩を通過する原料片を取り除く。すなわち、香味源132を構成する原料片は、上限を規定するステンレス篩(目開き=0.71mm)を通過し、下限を規定するステンレス篩(目開き=0.212mm)を通過しない原料片である。従って、実施形態では、香味源132を構成する原料片のサイズの下限は、下限を規定するステンレス篩の目開きによって定義される。なお、香味源132を構成する原料片のサイズの上限は、上限を規定するステンレス篩の目開きによって定義される。
【0044】
実施形態において、香味源132は、塩基性物質が添加されたたばこ源である。たばこ源に重量比10倍の水を加えた水溶液のpHは、7よりも大きいことが好ましく、8以上であることがより好ましい。これによって、たばこ源から発生する香喫味成分をエアロゾルによって効率的に取り出すことができる。これにより、所望量の香喫味成分をエアロゾルに付与するにあたって、たばこ源の量を抑制できる。一方、たばこ源に重量比10倍の水を加えた水溶液のpHは、14以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。これによって、香味吸引器100(例えば、カートリッジ130又は吸引器本体110)に対するダメージ(腐食等)を抑制することができる。
【0045】
なお、香味源132から発生する香喫味成分はエアロゾルによって搬送されており、香味源132自体を加熱する必要はないことに留意すべきである。
【0046】
網目133Aは、香味源132に対して非吸口側においてカートリッジ本体131の開口を塞ぐように設けられており、フィルタ133Bは、香味源132に対して吸口側においてカートリッジ本体131の開口を塞ぐように設けられている。網目133Aは、香味源132を構成する原料片が通過しない程度の粗さを有する。網目133Aの粗さは、例えば、0.077mm以上0.198mm以下の目開きを有する。フィルタ133Bは、通気性を有する物質によって構成される。フィルタ133Bは、例えば、アセテートフィルタであることが好ましい。フィルタ133Bは、香味源132を構成する原料片が通過しない程度の粗さを有する。ここで、フィルタ133Bは、霧化ユニット111によって発生するエアロゾルの流路上において、霧化ユニット111よりも吸口側に設けられることに留意すべきである。
【0047】
(発熱体の構成)
以下において、実施形態に係る発熱体(霧化部111R)について説明する。
図3及び
図4は、実施形態に係る発熱体(霧化部111R)を示す図である。
図3及び
図4では、霧化部111Rのうち、ヒータ部分のみが示されていることに留意すべきである。
【0048】
図3及び
図4に示すように、霧化部111Rのヒータ部分は、発熱体を形成する導電部材が折り曲げられながら所定方向Bに沿って延びるヒータ形状を有する。所定方向Bは、例えば、発熱体に接触又は近接するウィック111Qが延びる方向である。上述したように、発熱体(導電部材)の表面には酸化皮膜が形成されている。
【0049】
ヒータ形状は、
図3に示すように、導電部材が螺旋形状に折り曲げられながら所定方向Bに沿って延びる形状(コイル形状)であってもよい。或いは、ヒータ形状は、
図4に示すように、導電部材が波形状(ここでは、矩形波形状)に折り曲げられながら所定方向Bに沿って延びる形状であってもよい。
【0050】
ここで、発熱体を形成する導電部材のうち、互いに隣接する導電部材の間隔Iは、0.5mm以下である。間隔Iは、0.4mm以下であることが好ましく、0.3mm以下であることがさらに好ましい。ここで、間隔Iとは、所定方向Bにおいて互いに隣接する導電部材の間隔であることに留意すべきである。また、「互いに隣接する」とは、酸化皮膜が形成された導電部材の間に他の部材(例えば、ウィック111Q)が存在しない状態で、酸化皮膜が形成された導電部材が隣り合っていることを意味する。
【0051】
実施形態において、発熱体は、金属などの抵抗発熱体を含むことが好ましい。発熱体を構成する金属は、例えば、ニッケル合金、クロム合金、ステンレス及び白金ロジウムの中から選択された1以上の金属である。
【0052】
(製造方法)
以下において、実施形態に係る霧化ユニットの製造方法について説明する。
図5は、実施形態に係る霧化ユニット111の製造方法を示すフロー図である。
【0053】
図5に示すように、ステップS11において、リザーバ111P、ウィック111Q及び霧化部111Rによって構成される霧化ユニット111を組み立てる。例えば、ステップS11は、ウィック111Qを霧化部111R(発熱体)に接触又は近接させるステップ(ステップB)を含むとともに、リザーバ111P、ウィック111Q及び霧化部111Rを第1筒体111X内に配置するステップを含む。ステップS11は、リザーバ111P、ウィック111Q及び霧化部111Rに加えて、筒状部材111Sを第1筒体111X内に配置する工程を含んでもよい。例えば、ステップS11は、リザーバ111Pにウィック111Qを接触させる工程を含んでもよい。ステップS11は、空気流路111Tを横断するようにウィック111Qを配置する工程を含んでもよい。ステップS11は、筒状部材111Sの外側にウィック111Qの一端(ここでは、両端)を取り出す工程を含んでもよい。
【0054】
ここで、霧化部111Rは、ヒータ形状に加工された発熱体によって構成される。ヒータ形状は、
図3に示すように、螺旋形状(コイル形状)であってもよく、
図4に示すように、波形状であってもよい。
【0055】
ステップS12において、発熱体がヒータ形状に加工された状態で、発熱体に電力を供給することによって、発熱体の表面に酸化皮膜を形成する(ステップA)。詳細には、ステップS12は、ウィック111Qを霧化部111R(発熱体)に接触又は近接させた状態で行われる。実施形態において、ステップS12は、大気雰囲気で行われることが好ましい。
【0056】
実施形態において、ステップS12は、霧化ユニット111の動作確認を行う工程である。霧化ユニット111の動作確認を行う条件とは、例えば、ユーザの吸引動作に応じて発熱体に電力を供給する態様を模した条件である。ステップS12において、ユーザの吸引動作を模して空気流路111Tに空気を流しながら、発熱体に電力を供給してもよい。
【0057】
霧化ユニット111の動作確認を行う条件は、例えば、香味吸引器100に搭載される電源と同じ電圧を1.5〜3.0秒に亘って発熱体に印加する処理をm(mは1以上の整数)回行う条件である。mは5以上であることが好ましく、10以上であることがさらに好ましい。香味吸引器100に搭載される電源と同じ電圧とは、電源を構成する電池の公称電圧である。例えば、電源がリチウムイオン電池である場合には、発熱体に印加される電圧は約3.7であり、電源がニッケル水素電池である場合には、電圧は、約1.2Vである。電池を複数個直列に接続する場合、発熱体に印可される電圧は公称電圧の整数倍となる。
【0058】
ここで、発熱体に印加する処理の間隔は、5秒以上であることが好ましく、15秒以上であることがさらに好ましく、30秒以上であることが最も好ましい。これによって、発熱体に電圧を印加する処理の間隔における発熱体の温度が低下するため、発熱体に電圧を印加する処理において発熱体が過剰な高温になることが抑制される。一方で、発熱体に印加する処理の間隔は、120秒以下であることが好ましく、60秒以下であることがさらに好ましい。これによって、発熱体の表面に酸化皮膜を形成する処理を短時間で行うことができる。
【0059】
ステップS13において、リザーバ111Pにエアロゾル源を充填する。ステップS13は、エアロゾル源の充填後において、エアロゾル源の漏れを抑制するためのキャップをリザーバ111Pに取り付けるステップを含んでもよい。すなわち、霧化ユニット111の組み立て後においてエアロゾル源が充填されるとともにキャップが取り付けられてもよい。なお、ステップS13において霧化ユニット111が完成した後において、香味吸引器100の組み立て工程が行われる。但し、香味吸引器100に組み込まれていない状態で霧化ユニット111が流通する場合には、香味吸引器100の組み立て工程は省略されてもよい。
【0060】
実施形態では、ステップS12は、霧化ユニット111の組み立て後においてリザーバ111Pにエアロゾル源を充填する前に行われることが好ましい。例えば、ステップS12は、発熱体がエアロゾル源と接触又は近接しない状態で行われてもよい。ステップS12は、リザーバ111Pにウィック111Qを接触させた状態で行われてもよい。ステップS12は、空気流路111Tをウィック111Qが横断した状態で行われてもよい。ステップS12は、筒状部材111Sの外側にウィック111Qの一端(ここでは、両端)が取り出された状態で行われてもよい。なお、発熱体が
図3に示す螺旋形状(コイル形状)を有する場合には、ステップS12は、ウィック111Qに発熱体が巻き回された状態で行われてもよい。
【0061】
なお、発熱体がエアロゾル源と接触又は近接しない状態とは、発熱体によってエアロゾル源を霧化可能な程度に発熱体とエアロゾル源との距離が維持されない状態を意味する。発熱体とエアロゾル源との距離は、エアロゾル源やウィック111Qの種類、発熱体の温度などにもよるが、例えば、1mmより大きい距離、好ましくは3mmより大きい距離が考えられる。さらに、発熱体がエアロゾル源と接触又は近接しない状態とは、発熱体がウィック111Qと接触又は近接しているが、ウィック111Qがエアロゾル源を保持していない状態であってもよい。
【0062】
(作用及び効果)
実施形態に係る霧化ユニット111の製造方法では、発熱体がヒータ形状に加工された状態で、発熱体に電力を供給することによって、発熱体の表面に酸化皮膜を形成する。従って、発熱体を形成する導電部材のうち、互いに隣接する導電部材の間隔を小さくしながらも、発熱体の表面に形成された酸化皮膜によって、発熱体を形成する導電部材の短絡を抑制することができる。さらに、発熱体の表面に酸化皮膜を形成した後に発熱体をヒータ形状に加工するケースと比べて、発熱体の表面に形成された酸化皮膜の剥離を抑制しやすい。
【0063】
実施形態では、ステップS12は、発熱体がエアロゾル源と接触又は近接しない状態で行われる。これによって、エアロゾル源の霧化に伴う熱損失がなく、発熱体の表面に酸化皮膜を均一に形成しやすい。
【0064】
実施形態では、ステップS12は、発熱体がウィック111Qと接触又は近接している状態で行われる。発熱体の表面に酸化皮膜を形成した後にウィック111Qに発熱体を接触又は近接させるケースと比べて、発熱体の表面に形成された酸化皮膜の剥離を抑制しやすい。
【0065】
実施形態では、ステップS12は、香味吸引器100の製造工程の一環である霧化ユニット111の動作確認を行う工程である。従って、香味吸引器100の製造工程に新たな工程を追加することなく、発熱体の表面に酸化皮膜を形成することができる。
【0066】
実施形態に係る霧化ユニット111では、発熱体の表面に酸化皮膜が形成されている。従って、発熱体を形成する導電部材のうち、互いに隣接する導電部材の間隔Iを小さくしながらも、発熱体の表面に形成された酸化皮膜によって、発熱体を形成する導電部材の短絡を抑制することができる。
【0067】
実施形態では、発熱体を形成する導電部材のうち、互いに隣接する導電部材の間隔Iは0.5mm以下である。発熱体に対する電源出力(例えば、電圧)が一定であると仮定した場合に、単位電源出力あたりのエアロゾル量が増大する。
【0068】
実施形態では、空気流路111T上において、霧化ユニット111よりも吸口側にフィルタ133Bが設けられる。従って、発熱体の表面に形成された酸化皮膜の剥離が仮に生じたとしても、発熱体の表面から剥離する酸化皮膜片がフィルタ133Bによって捕捉される。
【0069】
実施形態では、ステップS12は、霧化ユニット111の組み立て後に行われる。従って、発熱体の表面に酸化皮膜を形成した後に霧化ユニット111の組み立てが行われるケースと比べて、発熱体の表面に形成された酸化皮膜の剥離を抑制しやすい。
【0070】
[その他の実施形態]
本発明は上述した実施形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0071】
実施形態では、発熱体の表面に酸化皮膜を形成する工程(ステップA)が霧化ユニット111の動作確認を行う工程であるケースを例示した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。発熱体の表面に酸化皮膜を形成する工程(ステップA)は、リザーバ111P、ウィック111Q及び霧化部111Rによって構成される霧化ユニット111の組み立て前に行われてもよい。但し、発熱体の表面に酸化皮膜を形成する工程(ステップA)は、発熱体がエアロゾル源と接触又は近接しない状態で行われることが好ましい。
【0072】
発熱体の表面に酸化皮膜を形成する工程(ステップA)が霧化ユニット111の動作確認を行う工程であるケースを例示した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。発熱体の表面に酸化皮膜を形成する工程(ステップA)は、発熱体に電力を間欠的に供給するステップを含んでもよい。発熱体に電力を間欠的に供給する条件は、発熱体の表面に酸化皮膜を形成することができれば、霧化ユニット111の動作確認を行う条件と異なっていてもよい。これによって、発熱体に電力を供給する処理において発熱体が過剰な高温になることが抑制される。
【0073】
実施形態では、発熱体の表面に酸化皮膜を形成する工程(ステップA)が大気雰囲気で行われるケースを例示した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、発熱体の表面に酸化皮膜を形成する工程(ステップA)は、発熱体が酸化性物質と接触した状態で行われてもよい。酸化性物質は、発熱体の表面に酸化皮膜を形成可能な物質であればよい。酸化性物質は、発熱体に対する電力の供給によって上昇する発熱体の温度以上の沸点を有する液体であることが好ましい。酸化性物質は、例えば、濃硝酸、過酸化水素などである。例えば、発熱体が酸化性物質と接触した状態でステップS12を行うケースにおいては、発熱体に対する電力の供給によって上昇する発熱体の温度は40°以上酸化性物質の沸点未満である。これによって、発熱体の表面に酸化皮膜を形成する処理において、発熱体に供給する電力量を低減することができ、発熱体の温度が低くても発熱体の表面に酸化皮膜を形成することができる。
【0074】
実施形態では、カートリッジ130は霧化ユニット111を含まないが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、カートリッジ130は、霧化ユニット111とともに1つのユニットを構成してもよい。
【0075】
実施形態では特に触れていないが、霧化ユニット111は、吸引器本体110に対して接続可能に構成されていてもよい。
【0076】
実施形態では特に触れていないが、香味吸引器100は、カートリッジ130を有していなくてもよい。このようなケースにおいて、エアロゾル源は、香喫味成分を含むことが好ましい。
【0077】
実施形態では、霧化ユニット111の一構成例について説明したに過ぎない。従って、霧化ユニット111の構成は特に限定されるものではない。例えば、発熱体の表面に酸化皮膜を形成するステップS12は、リザーバ111P、ウィック111Q及び霧化部111Rを少なくとも含むユニットの組み立て後に行われてもよい。
【0078】
実施形態では、霧化部111Rのヒータ部分として、
図3及び
図4に示すように、ウィック111Qの外周に沿って配置された螺旋形状又は波形状の発熱体を例示した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、筒状形状を有するウィック111Qがコイル形状又は波形状の発熱体を覆うことによって、ウィック111Qを発熱体に接触又は近接させてもよい。