(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6854350
(24)【登録日】2021年3月17日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】楽曲解析装置および楽曲解析プログラム
(51)【国際特許分類】
G10L 25/51 20130101AFI20210329BHJP
G10G 3/04 20060101ALI20210329BHJP
【FI】
G10L25/51 300
G10G3/04
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-533822(P2019-533822)
(86)(22)【出願日】2017年8月3日
(86)【国際出願番号】JP2017028243
(87)【国際公開番号】WO2019026236
(87)【国際公開日】20190207
【審査請求日】2020年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】315017409
【氏名又は名称】AlphaTheta株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉野 肇
【審査官】
中村 天真
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−079110(JP,A)
【文献】
特開2010−054802(JP,A)
【文献】
特開2007−163586(JP,A)
【文献】
特表2007−536586(JP,A)
【文献】
D.P.W. Ellis, J. Arroyo,Eigenrhythms: Drum pattern basis sets for classification and generation,International Conference on Music Information Retrieval,2004年 9月,p.1-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10L 25/00−25/93
G10G 1/00− 3/04
G10H 1/00− 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽曲データから、少なくとも2以上の楽器のリズムパターンを検出、または外部機器で検出したリズムパターンの情報を取得するリズムパターン検出部と、
予め前記2以上の楽器の発音タイミングのパターンを、楽曲のジャンル別に記憶したパターン記憶部と、
前記リズムパターン検出部で検出されたリズムパターンと、前記パターン記憶部に記憶された、前記2以上の楽器の発音タイミングのパターンとを照合し、前記楽曲データのジャンルを判定するジャンル判定部と、
を備えていることを特徴とする楽曲解析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の楽曲解析装置において、
前記リズムパターン検出部は、前記楽曲データ中のバスドラム音およびスネアドラム音を検出することを特徴とする楽曲解析装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の楽曲解析装置において、
前記リズムパターン検出部は、前記楽曲データの曲頭からリズムパターンを検出し、
前記ジャンル判定部は、8小節単位を1ブロックとして、8小節中の2小節目、3小節目、6小節目、および7小節目のリズムパターンと、前記パターン記憶部に記憶された発音タイミングとの照合を行って、前記楽曲データのジャンルを判定することを特徴とする楽曲解析装置。
【請求項4】
コンピュータを、
楽曲データから、少なくとも2以上の楽器のリズムパターンを検出、または外部機器で検出したリズムパターンの情報を取得するリズムパターン検出部と、
予め前記2以上の楽器の発音タイミングのパターンを、楽曲のジャンル別に記憶したパターン記憶部と、
前記リズムパターン検出部で検出されたリズムパターンと、前記パターン記憶部に記憶された、前記2以上の楽器の発音タイミングのパターンとを照合し、前記楽曲データのジャンルを判定するジャンル判定部と、
して機能させることを特徴とする楽曲解析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽曲解析装置および楽曲解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、再生するデジタル楽曲データの楽曲ジャンルに応じて、ホールシミュレーションモードでのサラウンド音場補正を行う技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の技術では、ロック系、ジャズバラード系、室内楽系に応じた周波数スペクトルパターンを予め記憶しておき、再生される楽曲データとの照合を行うことにより、楽曲ジャンルの判定を行い、ホールシミュレーションモードを自動設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−37700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載の技術では、楽曲ジャンルに応じた周波数スペクトルパターンにより楽曲データとの照合を行っているため、再生される楽曲データの音楽ジャンルを正確に判定するということができないという課題がある。
【0005】
本発明の目的は、再生される楽曲データに対して、正確に楽曲ジャンルを判定することのできる楽曲解析装置および楽曲解析プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の楽曲解析装置は、
楽曲データから、少なくとも2以上の楽器のリズムパターンを検出、または外部機器で検出したリズムパターンの情報を取得するリズムパターン検出部と、
予め前記2以上の発音タイミングのパターンを、楽曲のジャンル別に記憶したパターン記憶部と、
前記リズムパターン検出部で検出されたリズムパターンと、前記パターン記憶部に記憶された、前記2以上の楽器の発音タイミングのパターンとを照合し、前記楽曲データのジャンルを判定するジャンル判定部と、
を備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明の楽曲解析プログラムは、
コンピュータを、
楽曲データから、少なくとも2以上の楽器のリズムパターンを検出、または外部機器で検出したリズムパターンの情報を取得するリズムパターン検出部と、
予め前記2以上の楽器の発音タイミングのパターンを、楽曲のジャンル別に記憶したパターン記憶部と、
前記リズムパターン検出部で検出されたリズムパターンと、前記パターン記憶部に記憶された、前記2以上の楽器の発音タイミングのパターンとを照合し、前記楽曲データのジャンルを判定するジャンル判定部と、
して機能させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る楽曲解析装置の構造を示すブロック図。
【
図2】前記実施形態におけるパターン記憶部の構造を示す模式図。
【
図3】前記実施形態の作用を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1には、本発明の実施形態に係る楽曲解析装置1が示されている。楽曲解析装置1は、CPU2およびハードディスク等の記憶装置3を備えたコンピュータとして構成される。
楽曲解析装置1は、入力される楽曲データSDのリズムパターンを解析して、照明制御部4に解析した楽曲データSDの楽曲ジャンルに基づいて、照明モードを出力する。照明制御部4では、楽曲解析装置1から出力された照明モードに基づいて、照明機器5の照明制御を行い、楽曲ジャンルに応じた照明演出を実行する。
【0010】
楽曲データSDは、WAV、MP3等のデジタルデータから構成され、FFT解析等により楽曲の拍位置および小節位置が解析されている。楽曲データSDは、CDプレーヤ、DVDプレーヤ等の楽曲再生装置で再生された楽曲データを、USBケーブル等により、楽曲解析装置1に取り込んだものでもよいし、記憶装置3に保存されたデジタル楽曲データを再生したものでもよい。
【0011】
楽曲解析装置1は、CPU2上で実行されるコンピュータプログラムとしてのリズムパターン検出部21、ジャンル判定部22、および照明モード設定部23と、記憶装置3に記憶されたパターン記憶部31とを備える。
リズムパターン検出部21は、バスドラム検出部21Aおよびスネアドラム検出部21Bを備える。
なお、本実施形態では、後述するように、リズムパターン検出部21は、バスドラムのアタック音、スネアドラムのアタック音を検出することにより、楽曲データSDのリズムパターンを検出しているが、本発明はこれに限られない。たとえば、スネアドラムの代わりにクラップのアタック音を検出してもよいし、バスドラムの代わりにベースのスラップのアタック音を検出して、リズムパターンを検出してもよい。
【0012】
バスドラム検出部21Aは、楽曲データSD中のバスドラム音のリズムパターンを検出する。具体的には、バスドラム検出部21Aは、入力される楽曲データSDのダウンサンプリングを行う。次に、バスドラム検出部21Aは、カットオフ周波数240Hzにより、LPF(Low Pass Filter)処理を行い、所定の周波数以下の低音域のアタック音(キック音)を検出する。
バスドラム検出部21Aは、検出データを微分して、変化の大きなデータをバスドラムのアタック音とし、何小節の何拍目にアタック音があったかを判定してバスドラムのリズムパターンを検出する。
【0013】
スネアドラム検出部21Bは、楽曲データSD中のスネアドラム音のリズムパターンを検出する。具体的には、スネアドラム検出部21Bは、カットオフ周波数300HzでHPF(High Pass Filter)処理を行い、低音域のバスドラム帯域を除去して、中音域のスネアドラムのアタック音を検出する。
スネアドラム検出部21Bは、検出データを微分して、変化の大きなデータをスネアドラムのアタック音とし、何小節の何拍目にアタック音があったかを判定してスネアドラムのリズムパターンを検出する。
リズムパターン検出部21は、検出されたバスドラムのアタック音の1小節中の拍位置、および検出されたスネアドラムの1小節中の拍位置を、ジャンル判定部22に出力する。なお、リズムパターン検出部21は、外部機器で検出したリズムパターンの情報を取得して、スネアドラムのアタック音、バスドラムのアタック音を取得してもよい。
【0014】
ジャンル判定部22は、リズムパターン検出部21により検出されたスネアドラムのアタック音、およびバスドラムのアタック音から構成されるリズムパターンと、パターン記憶部31に記憶されたスネアドラムおよびバスドラムの発音タイミングとを照合して、楽曲データSDのジャンルを判定する。
なお、リズムパターン検出部21は、スネアドラムを使わずにバスドラムのリズムパターン情報のみにより楽曲データSDのジャンルを判定してもよい。この場合は、スネアドラムの検出は不要となる。
【0015】
パターン記憶部31には、
図2に示すように、楽曲ジャンル、スネアドラムおよびバスドラムの発音タイミングのパターン、およびBPM(Beat Per Minute)値が記憶されている。
たとえば、パターン記憶部31には、クラブDance系、POP1、POP2、Rock、クラブDance系(Slow)という楽曲ジャンルに応じて、スネアドラムの発音タイミング、バスドラムのキックの発音タイミング、BPM値が記憶されている。なお、パターン記憶部31に記憶される楽曲ジャンルに応じた発音タイミングのパターンは、適宜に追加が可能とされる。
【0016】
ジャンル判定部22は、リズムパターン検出部21により検出されたバスドラムのアタック音と、検出されたスネアドラムのアタック音を用いて、楽曲ジャンルを判定する。
ジャンル判定部22は、判定された楽曲データSDの楽曲ジャンルを、照明モード設定部23に出力する。
【0017】
照明モード設定部23は、照明制御部4による照明機器5の照明制御モードを設定する。照明制御部4は、複数の照明モードを備えている。たとえば、照明制御部4は、フラッシング等の派手な照明パターンを組み合わせた照明モードや、穏やかな照明パターンを組み合わせた照明モードを備えている。
照明モード設定部23は、ジャンル判定部22から出力された楽曲データSDの楽曲ジャンルに基づいて、派手な照明パターンを組み合わせた照明モード、穏やかな照明パターンを組み合わせた照明モードのいずれかを設定する。
照明モード設定部23は、設定された照明モードを照明制御部4に出力する。照明制御部4は、照明モード設定部23から出力された照明モードに基づいて、照明機器5の制御を行い、楽曲データSDの再生に応じた照明演出を実施する。
【0018】
次に、本実施形態の作用を
図3に示すフローチャートに基づいて説明する。
リズムパターン検出部21には、楽曲データSDが入力され(手順S1)、リズムパターン検出部21は、拍位置情報、小節位置情報を取得する(手順S2)。
リズムパターン検出部21のバスドラム検出部21Aは、バスドラムのアタック音を曲頭から検出し、スネアドラム検出部21Bは、スネアドラムのアタック音を曲頭から検出し、リズムパターンを検出する(手順S3)。
【0019】
ジャンル判定部22は、パターン記憶部31に記憶された楽曲ジャンルに応じて予め設定されたカウンタをクリアする(手順S4)。
ジャンル判定部22は、8小節単位を1ブロックとして、記憶装置3のパターン記憶部31に記憶された、バスドラムの発音タイミングのパターンと、スネアドラムの発音タイミングのパターンとの対比を行う(手順S5)。
【0020】
ジャンル判定部22は、パターン記憶部31に記憶された各楽曲ジャンルが、8小節中の2小節目、3小節目、6小節目、7小節目でマッチするか否かを判定する(手順S6)。
ここで、マッチする楽曲ジャンルの発音パターンの探索を、2小節目、3小節目、6小節目、7小節目としたのは、楽曲データSDの4小節目、8小節目は、フィルインが入ることが多く、パターンの探索に適当でないからであり、1小節目、5小節目は、フィルインの影響が残ることを考慮して、除外している。
各楽曲ジャンルにマッチしない場合、ジャンル判定部22は、次のブロックに移動して(手順S9)、手順S5からを繰り返す。
【0021】
いずれかのジャンルにマッチした場合、ジャンル判定部22は、マッチした楽曲ジャンルのカウンタをインクリメントする(手順S7)。
ジャンル判定部22は、楽曲データSDの曲頭から8ブロックの対比が終わったかどうかを判定する(手順S8)。
8ブロックが終了していない場合、ジャンル判定部22は、次のブロックに移動して(手順S9)、手順S5から繰り返す。
8ブロックが終了している場合、ジャンル判定部22は、ジャンル毎のカウンタのうち1つだけのカウンタが2ブロック以上マッチしているか否かを判定する(手順S10)。
【0022】
2ブロック以上マッチしていない場合、ジャンル判定部22は、楽曲データSDをクラブダンス系の楽曲ジャンルと判定する(手順S11)。
2ブロック以上マッチしている場合、ジャンル判定部22は、楽曲データSDを、マッチした発音パターンの楽曲ジャンルと判定する(手順S12)。
ジャンル判定部22は、判定結果を照明モード設定部23に出力する(手順S13)。
【0023】
照明モード設定部23は、判定結果に係る楽曲データSDのジャンルに応じた照明モードを設定し、照明制御部4に出力する。
照明制御部4は、照明モードに応じた照明制御指令を照明機器5に出力し、楽曲ジャンルに応じた照明演出が実行される。
【0024】
このような本実施形態によれば、リズムパターン検出部21が、バスドラムのアタック音、スネアドラムのアタック音に基づいて、リズムパターンの検出を行っているため、楽曲データSDのリズムパターンを正確に把握できる。そして、ジャンル判定部22は、リズムパターン検出部21により検出されたリズムパターンと、パターン記憶部31に記憶された楽曲ジャンルに応じた発音パターンとを対比して、楽曲ジャンルの判定を行っている。したがって、楽曲ジャンルの判定を正確に行うことができる。
【0025】
また、ジャンル判定部22が、8小節を1ブロックとして対比を行い、2小節目、3小節目、6小節目、7小節目におけるリズムパターンと、パターン記憶部31に記憶された発音パターンとの対比を行っている。したがって、フィルイン等の影響を受けずに判定を行うことができるため、一層正確に楽曲ジャンルの判定を行うことができる。
さらに、8ブロックの判定を行い、マッチしたブロックが2以上あることを条件として、判定を行っているため、正確かつ確実に楽曲ジャンルの判定を行うことができる。
【符号の説明】
【0026】
1…楽曲解析装置、2…CPU、3…記憶装置、4…照明制御部、5…照明機器、21…リズムパターン検出部、21A…バスドラム検出部、21B…スネアドラム検出部、22…ジャンル判定部、23…照明モード設定部、31…パターン記憶部、SD…楽曲データ。