【課題を解決するための手段】
【0005】
而して請求項1のものは、リング状素材を所定温度にまで加熱する加熱処理と、主ロールとマンドレルとで前記リング状素材の一部をそれぞれ外周側と内周側から挟んで該リング状素材を周方向に回転移動させながら肉厚方向に圧下するとともに、一対のアキシャルロールにて前記リング状素材の一部を上側と下側から挟んで高さ方向に圧下して、熱間状態の該リング状素材を圧延する圧延処理と、を交互に繰り返し、Ni基超合金から成る該リング状素材を薄肉化しつつ拡径する圧延方法であって、最初の前記圧延処理が開始される前の前記リング状素材の、肉厚/高さで表される扁平率を2.1未満とし
、前記圧延処理における、下記式(1)で表される前記リング状素材の内周の歪み量sを0.33未満、下記式(2)で表される肉厚方向の加工率pを0.45%以下とし、
s=ln((圧延処理後の内径×π)/(圧延処理前の内径×π))・・・式(1)
p=(肉厚方向の加工速度)/(圧延処理前の肉厚)×100・・・式(2)
更に圧延加工中における前記リング状素材の外周中央部の温度を、グリーブル試験において40%以上の絞り値を示す温度としたことを特徴とする。
【0009】
ここで前記リング状素材
は、質量%で、C:0.001%を超え0.100%未満、Cr:11%以上19%未満、Co:5%を超え25%未満、Fe:0.1%以上4.0%未満、Mo:2.0%を超え5.0%未満、W:1.0%を超え5.0%未満、Nb:0.3%以上4.0%未満、Al:3.0%を超え5.0%未満、Ti:1.0%を超え2.5%未満、を含有し、残部Ni及び不可避的不純物の組成を有する
。
【0010】
請求項
2のものは、請求項
1において、前記リング状素材が、質量%で、Ta:0.01%以上2.0%未満、を更に含有することを特徴とする。
【0011】
以上のように、本発明のリング状素材の圧延方法は、最初の圧延処理が開始される前のリング状素材の、肉厚/高さで表される扁平率を2.1未満としたことを特徴としたものである。Ni基超合金から成るリング状素材を圧延する際、バーニング発生による大割れの問題があった。本発明者らは、リング状素材の形状とバーニングの発生との関係を調査したところ、肉厚/高さで表されるリング状素材の扁平率が高い場合にバーニングが発生することが認められた。詳しくは、
図2(A)で示すリング状素材の断面形状が、肉厚方向(図中横方向)に長い横長形状であると、リング状素材は、肉厚方向に圧下された際に、
図2(B)に示すような内周面及び外周面近傍の部位が上下方向の外側に延び出した略鼓形状となり、上下方向に突き出したコーナ部が、肉厚方向の圧下と高さ方向の圧下の繰り返しにより、過度に変形せしめられ、その際に生じる加工発熱によりバーニングが発生していることを見出した。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。本発明では、最初の圧延処理が開始される前のリング状素材における肉厚/高さで表される扁平率を2.1未満とすることで、リング状素材が略鼓形状に変形するのを防止し、バーニング発生による大割れを抑制することができる。
【0012】
本発明の圧延方法では、圧延処理における、上記式(2)で示すリング状素材の内周の歪み量sを0.33未満とすることができる。リング状素材を薄肉化しつつ拡径する圧延方法では、
図3に示すようにリング状素材の内周面に軸方向に延びる割れ(内周割れ)が生じる場合がある。このような内周割れは、歪み量sを0.33未満とすることで抑制することができる。
【0013】
また本発明の圧延方法によれば、圧延加工中、特にリング状素材のコーナ部において冷却が進み易く、コーナ部において割れ(エッジ割れ)が生じる場合がある。本発明者らが調査した結果によれば、エッジ割れの発生を抑制するためには、(肉厚方向の加工速度)/(圧延処理前の肉厚)×100で表される肉厚方向の加工率pを0.45%以下とすること、及び、加工中におけるリング状素材の外周中央部の温度をグリーブル試験の絞り値で40%以上となる温度とすることが有効である。
【0014】
本発明の圧延方法は、リング圧延加工時における割れの発生が特に顕著となる以下の組成、即ち、質量%で、C:0.001%を超え0.100%未満、Cr:11%を超え19%未満、Co:5%を超え19%未満、Fe:0.1%以上4.0%未満、Mo:2.0%を超え5.0%未満、W:1.0%を超え5.0%未満、Nb:0.3%以上4.0%未満、Al:3.0%を超え5.0%未満、Ti:1.0%を超え2.5%未満、を含有し、残部Ni及び不可避的不純物の組成を有するリング状素材に適用して特に好適である。
【0015】
更に、Taを1.0%を超え2.5%未満、含有するNi基超合金から成るリング状素材にも好適に適用することができる。
【0016】
次に本発明におけるNi基超合金の化学成分の限定理由を以下に説明する。
C:0.001%超〜0.100%未満
Cは、Cr,Nb,Ti,W及びMo等と結合し、種々の炭化物を生成する。炭化物のうち固溶温度の高い種類のもの、ここでは主にNb系及びTi系の炭化物では、ピンニング効果によって高温下での結晶粒の粗大成長を抑制させ、主として靭性の低下を抑制し、熱間加工性の改善に寄与する。また、主にCr系、Mo系、W系の炭化物を粒界に析出させて粒界強化することで、機械特性の改善に寄与する。但し、Cは過剰に添加すると炭化物量が過剰となることで、炭化物の偏析等による組織の不均一化、粒界炭化物の過剰析出等によって熱間加工性及び機械特性の低下を招く。そこで本発明ではC含有量を上記範囲内とする。好ましくは0.001%超〜0.06%の範囲である。
【0017】
Cr:11%〜19%未満
CrはCr
2O
3の保護酸化皮膜を形成し、耐食性・耐酸化牲に不可欠な元素である。またCと結合して炭化物を生成することで強度特性の向上に寄与する。しかし、Crはフェライト安定化元素であり、過剰の添加はオーステナイトの不安定化により脆化相であるシグマ相やラーベス相の生成を促進し、熱間加工性及び強度特性、衝撃特性等の機械特性の低下をもたらすため添加量を上記範囲に制限する。好ましくは13%〜19%未満の範囲である。
【0018】
Co:5%超〜25%未満
Coは、Ni基超含金の母相であるオーステナイト基地に固溶して加工性を改善するとともに、γ′相の析出を促し引張特性等の高温強度を向上させる。但しCoは高価であり、コスト的に不利であるため、上限を定める。好ましくは11%超〜25%未満、より好ましくは15%超〜25%未満である。
【0019】
Fe:0.1%〜4.0%未満
Feは、合金製造時の原料選択によって混入する成分であり、Feの含有量の多い原料を選択すれば原料コストを抑制できる。しかし過剰に含有すると強度が低下を招く。好ましくは0.1%〜3.0%未満の範囲である。
【0020】
Mo:2.0%超〜5.0%未満
W:1.0%超〜5.0%未満
Mo及びWは固溶強化元素であり、Ni基超合金の母相であるオーステナイト相に固溶して合金を強化する。またMo,Wともに、Cと結合して炭化物を生成し粒界を強化する。しかし、過剰の添加は有害相であるシグマ相やラーベス相の生成を促進し、熱間加工性及び機械特性の低下要因となる。そのためMoは2.0%超〜5.0%未満、Wは1.0%超〜5.0%未満とする。
【0021】
Nb:0.3%〜4.0%未満
Ti:1.0%超〜2.5%未満
NbおよびTiはCと結合して比較的固溶温度の高いMC型炭化物を生成させることで、固溶化熱処理後の結晶粒組大化を抑制するピンニング効果を高め、高温強度特性の改善に有効である。またNb,Tiとも、強化相であるγ′(ガンマプライム)相−Ni
3AlのA1サイトに置換し、Ni
3(Al,Ti,Nb)となってγ′の固溶強化に働く。これによって高温強度特性の改善に有効に働く。しかし、過剰の添加はγ′の固溶温度上昇による熱間加工性の低下、高温強度の低下を招くため、添加量を上記範囲に制限する。尚、好ましい範囲はNbで2.1%〜4.0%未満である。
【0022】
Al:3.0%超〜5.0%未満
Alは、強化相であるγ′相−Ni
3Alの生成元素として働き、高温強度特性の改善に特に重要な元素である。γ′相の固溶温度を低下させて熱間加工性を向上させる。更にAlはOと結合してA1
2O
3の保護酸化被膜を形成し、耐食性・耐酸化性の改善にも有効である。
一方、過剰の添加はγ′相の固溶温度を上昇させ、γ′相を過剰に析出させるため熱間加工性を低下させる。
【0023】
Ta:0.01%〜2.0%未満
Taは、NbおよびTiと同様に、Cと結合して比較的固溶温度の高いMC型炭化物を生成させることで、固溶化熱処理後の結晶粒組大化を抑制するピンニング効果を高め、高温強度特性の改善に有効である。強化相であるγ′(ガンマプライム)相−Ni
3AlのA1サイトに置換し、Ni
3(Al,Ti,Nb,Ta)となってγ′の固溶強化に働く。これによって高温強度特性の改善に有効に働く。一方、過剰な添加はγ′の固溶温度上昇による熱間加工性の低下、高温強度の低下を招く。