【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一定値以上の品質を備えた古紙パルプの製造には、漂白工程での漂白処理、及び古紙パルプ製造工程におけるpH管理が必要であるが、漂白処理及びpH管理において使用される薬品等の添加量及び効果を最適化することは困難であり、その解決が望まれている。
【0007】
本発明は、過酸化水素漂白の効果を向上させ、さらにpH管理のために添加する苛性ソーダ及び珪酸ソーダ等のpH調整剤等の添加剤の添加量及びその効果を最適化することができる白水改質方法及び古紙パルプ製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
本発明者らは、主原料である古紙から古紙パルプを製造する古紙パルプ製造工程全体の調査を実施した。そして、同一工程であっても測定日によりpHが大きく変動しているケースがあること、また、DIP系内における熟成タワー及びストックタワー等でpHが大きく低下しているケースがあることを見出した。
【0009】
ところで、古紙パルプの製造工程では、回収パルプ及び回収水の循環使用の高度化が進み、DIP系内の温度が一般的に40〜60℃となり細菌が繁殖しやすい条件となっている。
本発明者らは、実際にDIP系内の菌数を測定し、菌数が10
6〜7CFU/mlと高く、ほぼ飽和状態であることを確認した。さらに、熟成タワー及びストックタワー等のようにDIP系内において白水の滞留時間が長い工程では細菌が増殖し、古紙パルプ製造工程内で代謝物である有機酸が生成され、pHの低下が生じるケースがあることを見出した。
【0010】
本発明者らは、このような条件下においては、古紙パルプ製造工程内のpHの適正化を目的として添加される苛性ソーダ及び珪酸ソーダ等は、添加と同時に細菌等による消費が始まっており、本来の目的であるpHの適正化を達成するために多くの添加量が必要となっていると考えた。
さらに、本発明者らは、残留過酸化水素濃度の測定を行い、従来技術では、過酸化水素等はDIP系内に添加されると同時に分解が始まり、過酸化水素等による漂白を促進させる晒しタワーにおける過酸化水素等の残留濃度はごく低い値となっていることを見出した。
【0011】
このような知見に基づき、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、従来、古紙パルプ製造工程において局所的に行ってきた漂白剤、pH調整剤及び殺菌剤等の添加剤の使用量及び効果を最適化するためには、これら添加剤の投入対象の1主成分である白水による影響を低減させることが重要であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明は、主原料である古紙から古紙パルプを製造する工程における白水改質方法であって、古紙パルプ製造工程の少なくとも一箇所でモノクロラミン及び/又はモノブロラミンを白水に連続添加
し、前記連続添加は、添加の供給と停止の間隔が30分以内である持続的な供給であり、古紙パルプ製造工程全体にわたって存在する白水の菌数を103CFU/ml以下にすることを特徴とする白水改質方法である。
また、本発明は、主原料である古紙から古紙パルプを製造する古紙パルプ製造方法であって、古紙パルプ製造工程の少なくとも一箇所でモノクロラミン及び/又はモノブロラミンを白水に連続添加
し、前記連続添加は、添加の供給と停止の間隔が30分以内である持続的な供給であり、古紙パルプ製造工程全体にわたって存在する白水の菌数を103CFU/ml以下にすることを特徴とする古紙パルプ製造方法でもある。
上記モノクロラミン及び/又はモノブロラミンの濃度は、残留塩素量として0.5〜30mg/Lであることが好ましい。
また、本発明は、白水のパルプ濃度が0.03〜30%である箇所の少なくとも一箇所でモノクロラミン及び/又はモノブロラミンを白水に連続添加することが好ましい。
本発明における古紙パルプ製造工程において、白水供給ライン、白水ピット及び白水回収ラインの少なくとも1カ所でモノクロラミン及び/又はモノブロラミンを白水に連続添加することが好ましい。
また、本発明における古紙パルプ製造工程において
、少なくとも一箇所の白水供給ラインでモノクロラミン及び/又はモノブロラミンを白水に連続添加することが好ましい。
上記一つ以上の白水供給ラインは古紙パルプ製造工程におけるパルパー工程に白水を供給する白水供給ラインを含み、パルパー工程に白水を供給する白水供給ラインでモノクロラミン及び/又はモノブロラミンを白水に連続添加することが好ましい。
また、残留塩素量が0.5mg/L以上である白水をパルパーに添加することが好ましい。
また、本発明の白水改質方法又は古紙パルプ製造方法では、白水の残留塩素量が0.5〜10mg/Lとなるようにモノクロラミン及び/又はモノブロラミンを連続添加することが好ましい。
また、本発明の白水の改質方法又は古紙パルプ製造方法では、古紙パルプ製造工程の少なくとも一箇所で白水の残留塩素量を測定し、上記残留塩素量が
0.5〜10.0mg/Lになった後、上記残留塩素量
を維持するように、モノクロラミン及び/又はモノブロラミンを白水に連続添加又は間欠添加することが好ましい。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明は、古紙パルプ製造工程の少なくとも一箇所でモノクロラミン及び/又はモノブロラミンを白水に連続添加する白水改質方法又は古紙パルプ製造方法である。
本発明における「白水」とは、古紙パルプ製造工程全体において使用される水のことをいい、例えば、古紙パルプ製造工程において、原料となる古紙を水と混合しながら機械力でパルプスラリーとする離解(パルパー)工程、古紙に含まれる異物を除去する粗選(除塵)工程、脱墨剤を加えてインキ成分を除去する脱墨工程、古紙に含まれる異物とパルプ分とをスクリーンで分離する精選工程、脱墨されたパルプスラリーを水洗する洗浄工程、及びパルプの脱水を行う脱水工程、漂白剤を加えてパルプの漂白を行う漂白工程等の各工程で用いられる水、及び排水される水を白水という。また、上記パルパー工程において原料である古紙と白水とが混合されたパルプスラリーが形成されるが、このパルプスラリーについてもパルプ成分を含有する白水であるため、本明細書においては白水と表現し、以下説明をする。さらに、抄紙工程等の別工程から再利用水として送水される水についても古紙パルプ製造工程で使用される水は全て白水という。
【0014】
本発明の白水改質方法及び古紙パルプ製造方法において、モノクロラミン及び/又はモノブロラミンを白水に添加するとは、一又は複数の実施形態において、モノクロラミン及び/又はモノブロラミンを生成する薬品、モノクロラミン及び/又はモノブロラミンを含む薬品を使用することにより行うことができる。このような薬品としては、一又は複数の実施形態として、次亜塩素酸ナトリウムと、硫酸アンモニウム及び/又は臭化アンモニウムとを含む薬品等が挙げられる。モノクロラミンは、一又は複数の実施形態において、次亜塩素酸ナトリウムと、アンモニウム化合物とを混合することにより生成できる。モノブロラミンは、一又は複数の実施形態において、次亜臭素酸ナトリウムと、アンモニウム化合物とを混合することにより生成できる。アンモニウム化合物としては、一又は複数の実施形態において、硫酸アンモニウム、臭化アンモニウム、塩化アンモニウム、スルファミン酸アンモニウム、及びこれらの少なくとも2種以上の混合物等が挙げられる。次亜塩素酸ナトリウムとアンモニウム化合物とのモル比は、一又は複数の実施形態において、残留塩素と窒素とのモル比として1:1〜1:2、1:1.1〜1:2、1:1.2〜1:2、又は1:1.2〜1:1.6である。
【0015】
ここで、上記モノクロラミンは結合塩素の一種であり、上記モノブロラミンは結合臭素の一種である。よって、OCl
−(Br
−)+NH
4+→NH
2Cl(Br)+H
2Oのような反応で生成される穏やかな酸化剤である。古紙パルプ製造工程内(DIP系内)のpHは通常9〜11であるが、モノクロラミン(モノブロラミン)はこのpH領域において安定な化合物である。
一方、多くの有機系スライムコントロール剤はアルカリ側で不安定であり、このような環境下での使用は適さない。また同じ酸化剤である次亜塩素酸ナトリウムもアルカリ側で安定だが、強い酸化力を有する遊離塩素が白水中の様々な夾雑物及び不純物等と容易に且つ瞬時に反応するため、多量に添加しなければ白水改質効果を発揮することができない。モノクロラミン及び/又はモノブロラミンは適度な酸化力、殺菌力、アルカリ側での安定性を有していることから古紙パルプ製造工程(DIP工程)における白水の改質に適した化合物といえる。
【0016】
なお、本発明において白水の改質とは、古紙パルプ製造工程における各工程(パルパー工程、除塵工程、脱墨工程、精選工程、洗浄・脱水工程及び漂白工程等)での機械処理及び薬品処理において、白水成分に起因する機械処理及び薬品処理の無駄な消費が生じない程度に白水の性質を向上及び改質させるものであり、所定箇所における白水のpH値、酸化還元電位(ORP)、菌数及び残留塩素量等の測定値を指標として判断することができる。
各指標における判断基準は、例えば、古紙パルプを原料に抄紙を行う抄紙工程で求められる古紙パルプの品質や、抄紙工程の最終生成物である紙に求められる品質を考慮したうえで適宜設定することができるが、例えば、過酸化水素晒タワーにおける薬品添加直後のpHであれば、好ましくは10.0以上、より好ましくは10.5以上、さらに好ましくは11.0以上;古紙パルプ製造工程の少なくとも一箇所における酸化還元電位であれば、好ましくは、100mV以上、より好ましくは200mV以上、さらに好ましくは250mV以上;古紙パルプ製造工程の少なくとも一箇所における菌数であれば、好ましくは10
3CFU/ml以下、より好ましくは10
2CFU/ml以下、さらに好ましくは10
1CFU/ml以下;古紙パルプ製造工程の少なくとも一箇所における残留塩素量であれば、好ましくは0.5mg/L以上、より好ましくは1.5mg/L以上、さらに好ましくは3.0mg/L以上となっている場合、白水が改質されたと判断することができる。
【0017】
上記指標の測定箇所としては、例えば、漂白工程前、フローテーション工程、洗浄工程前等が挙げられる。製造される古紙パルプの品質に重要な影響を与える工程のためである。
また、上記指標のうち、残留塩素量及び/又は菌数は、古紙パルプ製造工程の白水ループ毎に少なくとも一箇所で測定されることがより好ましい。ここで、白水ループとは、古紙パルプ製造工程から抽出及び/又は排水される白水が白水ピットに貯蔵され、白水ピットに貯蔵された白水が上記古紙パルプ製造工程に供給されることで形成される白水の再循環系のことをいい、一つの白水ピットに対し一つの白水ループが形成される。なお、一つの白水ピットから複数の白水供給ラインを有する場合は、白水ピットから古紙パルプ製造工程の最上流側に白水を供給する最上流側白水供給ラインで形成される白水の再循環系を白水ループといい、上記最上流側白水供給ラインから分岐する白水供給ラインも上記白水ループの一部に含まれる。
【0018】
モノクロラミン及び/又はモノブロラミンの濃度は、残留塩素量として(モノブロラミンの場合は残留塩素量換算値として)、0.5〜30mg/Lであることが好ましく、1〜30mg/Lがより好ましく、経済性の点から、1〜10mg/L又は1〜5mg/Lが更に好ましい。
なお、本発明における「残留塩素量」の記載は、モノブロラミンである場合には「残留塩素量換算値」を意味する。
前記モノクロラミン及び/又はモノブロラミンの濃度は、一又は複数の実施形態において、DIP系内における少なくとも一箇所における白水のpH、酸化還元電位(ORP)、菌数及び残留塩素量等の少なくとも一つの指標によって適宜決定できる。
【0019】
本発明におけるモノクロラミン及び/又はモノブロラミンの白水への添加総量は、対パルプ量換算で、例えば、上限が2.0kg/tであることが好ましく、経済性の点から上限が1.5kg/tであることがより好ましい。
一方、古紙パルプ製造工程の複数箇所でモノクロラミン及び/又はモノブロラミンを白水に連続添加する場合、各箇所における添加量は、対パルプ量換算で0.5〜1.0kg/tであることが好ましい。
【0020】
本発明において、パルプ濃度が、0.03〜30%である箇所の少なくとも一箇所でモノクロラミン及び/又はモノブロラミンを白水に添加することが好ましく、パルプ濃度が0.5〜2.0%である箇所であることが更に好ましい。
【0021】
また、本発明における古紙パルプ製造工程は、白水を回収する白水回収ラインを一つ以上備えており、白水回収ラインは白水ピットに繋がれている。さらに、本発明における古紙パルプ製造工程は、白水を供給する白水供給ラインを一つ以上備えており、上記白水ピットから供給される白水及び/又は抄紙工程から再利用水として供給される白水が古紙パルプ製造工程の少なくとも一箇所に供給され、白水が循環使用されている。
ここで、古紙パルプ製造工程は、離解(パルパー)工程、粗選(除塵)工程、脱墨工程、精選工程、洗浄工程、脱水工程及び漂白工程等の各工程含み、各工程及びその前後の少なくとも一箇所において白水回収ライン及び/又は白水供給ラインを備えていることが好ましい。
本発明においては少なくとも一箇所の白水供給ラインでモノクロラミン及び/又はモノブロラミンを白水に連続添加することが好ましい。
この場合、洗浄工程、脱水工程及び漂白工程から回収された白水が貯蔵される白水ピットに繋がれる白水供給ラインの少なくとも一箇所でモノクロラミン及び/又はモノブロラミンを白水に連続添加することが好ましい。
また、本発明においては少なくとも一箇所の白水回収ラインでモノクロラミン及び/又はモノブロラミンを白水に連続添加することとしてもよい。
この場合、洗浄工程、脱水工程及び漂白工程に備えられた白水回収ラインの少なくとも一箇所でモノクロラミン及び/又はモノブロラミンを白水に連続添加することが好ましく、漂白工程に備えられた白水回収ラインでモノクロラミン及び/又はモノブロラミンを白水に連続添加することがより好ましい。
【0022】
また、本発明において、一つ以上の白水供給ラインは古紙パルプ製造工程におけるパルパー工程に白水を供給する白水供給ラインを含むことが好ましい。
パルパー工程に添加される白水としては、例えば、洗浄工程、脱水工程及び/又は漂白工程で回収された白水を用いることが好ましい。白水中の残留塩素を有効利用できるためである。また、漂白工程で回収された白水を用いることがより好ましく、漂白工程を経ることで、白水におけるpH値が向上し、パルパー工程においても白水改質効果を発揮するためである。
【0023】
また、本発明において、残留塩素量が0.5mg/L以上である白水をパルパーに添加することが好ましい。白水の残留塩素量は、1.5mg/L以上であることがより好ましく、3.0mg/L以上であることが更に好ましい。
こうすることにより、古紙パルプ製造工程の第一段階であるパルパー工程から、用いられる白水を改質することができ、古紙パルプ製造工程全体の白水の改質に効果的である。
【0024】
本発明の白水改質方法及び古紙パルプ製造方法では、例えば、漂白工程前、フローテーション工程、洗浄工程前において白水の残留塩素量を測定し、残留塩素量が0.5〜10.0mg/Lとなるようにモノクロラミン及び/又はモノブロラミンを連続添加することが好ましく、残留塩素量が0.5〜5.0mg/Lとなるように連続添加することがより好ましい。
白水の残留塩素量が1.0mg/L以上であると細菌類の繁殖がほぼ抑制され、0.5mg/L以下であると細菌類の繁殖が進むためである。
【0025】
本発明の白水改質方法及び古紙パルプ製造方法では、白水の残留塩素量が所定の値となるまでモノクロラミン及び/又はモノブロラミンを連続添加し、残留塩素量が前記所定の値となった後は、前記所定の値を維持するようにモノクロラミン及び/又はモノブロラミンを、白水に連続添加及び/又は間欠添加することが好ましい。
なお、上記所定の値は、例えば、古紙パルプを原料に抄紙を行う抄紙工程で求められる古紙パルプの品質や、抄紙工程の最終生成物である紙に求められる品質を考慮したうえで適宜設定することができるが、古紙パルプ製造工程の少なくとも一箇所における残留塩素量が、0.5〜10.0mg/Lであることが好ましく、1.5〜8.0mg/Lであることがより好ましく、3.0〜5.0mg/Lであることがさらに好ましい。
ここで、連続添加とは、古紙パルプ製造工程の少なくとも一箇所、言い換えると白水の流路のうち少なくとも一箇所で、一定量のモノクロラミン及び/又はモノブロラミンを持続的に供給して添加することや、熟成タワーやストックタワーのように一定量のパルプスラリーすなわち白水が貯蔵又は保管される系内における白水に、一定量のモノクロラミン及び/又はモノブロラミンを持続的に供給して添加することを意味する。なお、持続的に供給するとは、古紙パルプ製造工程の少なくとも一箇所においてモノクロラミン及び/又はモノブロラミンを白水に供給し続けること、及び、供給と停止を繰り返す場合であっても供給と停止の間隔が30分以内である場合は持続的に供給するという。
また、間欠添加(衝撃添加ともいう。)とは、古紙パルプ製造工程の少なくとも一箇所、言い換えると白水の流路のうち少なくとも一箇所で、一定量のモノクロラミン及び/又はモノブロラミンを30分
を超える間隔をあけて、所定時間毎に供給して添加することや、熟成タワーやストックタワーのように一定量のパルプスラリーが貯蔵又は保管される系内における白水に、一定量のモノクロラミン及び/又はモノブロラミンを30分を
超える間隔をあけて、所定時間毎に添加することを意味する。