(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のブレーキユニットは、各車輪を制動するために両操作レバーのいずれか一方を揺動させる際、両操作レバーのいずれか他方の第1ワイヤが連結具に固定された状態のままであるので、両操作レバーのいずれか他方の第1ワイヤが撓むとともに連結具に対して第1ワイヤの移動方向とは反対側の力を加えてしまう。したがって、両操作レバーのいずれか一方の揺動操作を必要以上の力で行わなければならず、ブレーキユニットの操作者に必要以上の負荷がかかってしまう。
【0005】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、制動機構を操作する操作部分を複数備えたブレーキユニットにおいて、操作者に負荷がかかり難く操作し易い構造にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、各第1ワイヤと各第2ワイヤとを連結する連結部分に対する各第1ワイヤの取り付け方に工夫を凝らしたことを特徴とする。
【0007】
具体的には、複数の車輪を有する走行体に取り付けられ、上記各車輪の少なくとも1つの制動を行うブレーキユニットを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0008】
すなわち、第1の発明では、引掛部を一端に有する一方、操作部が他端に取り付けられた第1ワイヤを有し、上記操作部を操作することにより上記第1ワイヤを移動させる複数の操作手段と、第2ワイヤの一端が接続され、当該第2ワイヤの一方側への移動動作で上記車輪の制動を解除する一方、上記第2ワイヤの他方側への移動動作で上記車輪を制動する制動機構と、所定の方向にスライド可能に設けられ、上記各第2ワイヤの他端部分がスライド方向に沿う姿勢となるように取り付けられたスライド体とを備え、該スライド体には、当該スライド体のスライド方向に貫通し、且つ、上記引掛部が通過不能な複数の貫通孔が形成され、上記各第1ワイヤは、上記第2ワイヤの一方側において上記各引掛部が第2ワイヤ側に向くように配設され、上記各第1ワイヤの引掛部を除く部分を上記各貫通孔にそれぞれ挿通させた状態になって
おり、上記スライド体は、スライド方向に延びるスライドフレーム、スライド方向に所定の間隔をあけて対向するように上記スライドフレームに突設された第1及び第2側壁、及び上記スライドフレームに対向するとともに上記第1及び第2側壁を橋絡する橋絡プレートを備え、上記第2ワイヤの他端には、当該第2ワイヤの本体部分よりも幅広な係合部が設けられ、上記第2側壁及び上記橋絡プレートには、上記第2ワイヤの上記係合部を除く部分が挿通可能なスリットが上記第2側壁及び橋絡プレートを跨ぐように形成され、上記スリットの上記橋絡プレート側の端部には、上記係合部が通過可能な幅広部が形成され、該幅広部に上記係合部を対応させて上記スリットに上記第2ワイヤを通過させるとともに、上記係合部を上記第2側壁に係合させることにより上記第2ワイヤを上記スライド体に取り付けるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
第2の発明では、第
1の発明において、上記第1側壁は、上記第2側壁の突出端よりも飛び出した突出壁部を有し、当該突出壁部に上記複数の貫通孔が形成されていることを特徴とする。
【0010】
第
3の発明では、第1
又は2の発明において、上記各操作手段のうちの少なくとも1つの操作部は、上記走行体に固定され、作業者が把持可能な把持フレームと、該把持フレームに並設され、当該把持フレームに一端側が揺動可能に軸支された操作レバーとを備え、該操作レバーの揺動動作によって上記第1ワイヤが移動するよう構成されていることを特徴とする。
【0011】
第
4の発明では、第1から第
3のいずれか1つの発明において、上記走行体は、牽引台車であり、上記各操作手段のうちの少なくとも1つの操作部は、上記牽引台車の本体部分にスライド可能か、或いは、回動可能に取り付けられ、且つ、牽引手段に連結可能な連結フレームであり、該連結フレームのスライド動作又は回動動作によって上記第1ワイヤが移動するよう構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明では、各操作手段のうちの1つの操作部を操作して第1ワイヤをスライド体から離れる方向に移動させると、第1ワイヤの引掛部がスライド体の貫通孔周縁に引っ掛かり、スライド体が第1ワイヤと共にスライドし始める。すると、スライド体に取り付けられた第2ワイヤが一方側に移動するので、制動機構による車輪の制動が解除される。このとき、操作していない各操作手段の第1ワイヤは、各貫通孔内をスライドするので、スライド体に対して力を加えない。したがって、操作者は、操作部の操作を必要以上の力で行う必要が無く、操作の行い易いブレーキユニットにすることができる。
【0013】
また、第1の発明では、スライドフレーム、第1及び第2側壁、及び橋絡プレートで閉断面を形成するので、剛性の高いスライド体にすることができる。また、幅広部に係合部を通過させるだけで第2ワイヤがスライド体に取り付くので、ブレーキユニットにおける第2ワイヤの組付作業を簡単に行うことができる。
【0014】
第
2の発明では、スライド体に対する第1ワイヤの取付位置と第2ワイヤの取付位置とが第1及び第2側壁の突出方向にずれるようになる。したがって、スライド体における第1ワイヤの取付位置と第2ワイヤの取付位置とをスライド方向に接近させてもスライド体のスライド動作時における第1及び第2ワイヤの接触を確実に回避させることができるので、スライド体をスライド方向にコンパクトな形状にすることができる。
【0015】
第
3の発明では、作業者が把持フレームを把持して走行体を操作しながら操作レバーを操作できるようになるので、作業者が走行体を操作する手の位置を大きく移動させずに走行体の移動操作と移動規制操作とを行うことができるようになり、使い勝手の良い走行体にすることができる。
【0016】
第
4の発明では、本発明のブレーキユニットを牽引台車に適用する際、牽引に必要な連結フレームを利用して制動機構の操作を行うことができるようになるので、作業者が牽引作業時において牽引台車の移動許容状態と移動規制状態とを簡単に切り替えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る牽引台車1(走行体)を示す。該牽引台車1は、例えば、生産工場で使用するものであり、荷物B1を載置可能な台車本体2を備えている。
【0020】
該台車本体2は、矩形板状のベースプレート21と、該ベースプレート21の牽引方向前側縁部に立設された矩形格子状をなす前側格子フレーム22と、上記ベースプレート21の牽引方向後側縁部に立設された矩形格子状をなす後側格子フレーム23と、上記前側格子フレーム22の中途部と上記後側格子フレーム23の中途部とを橋絡する矩形板状の上棚板24とを備え、上記ベースプレート21及び上記上棚板24にそれぞれ上記荷物B1を載置可能になっている。
【0021】
上記ベースプレート21下面における牽引方向前側の各隅部には、車輪30aを有する第1キャスター3aが鉛直方向に延びる鉛直軸心周りに回動自在に一対取り付けられている。
【0022】
一方、上記ベースプレート21下面における牽引方向後側の各隅部寄りの位置には、第2キャスター3bが一対取り付けられ、各第2キャスター3bの車輪30bは、牽引方向に転動可能となっている。
【0023】
台車本体2には、当該台車本体2の制動操作を行うブレーキユニット10が取り付けられている。
【0024】
該ブレーキユニット10は、
図2及び
図3に示すように、各第2キャスター3bに取り付けられた一対の制動機構4を備えている。
【0025】
該制動機構4は、内拡式ドラムブレーキ41を備え、該ドラムブレーキ41は、円盤状をなすブレーキ本体部41aと、該ブレーキ本体部41aから牽引方向前側の斜め上方に延出する延出部41bとを有している。
【0026】
該延出部41bの延出端には、取付ブラケット42が固定され、該取付ブラケット42には、コイルバネ43の一端が接続されている。
【0027】
上記ブレーキ本体部41aの延出部41b寄りの位置には、当該延出部41bの延出方向と直交する方向に延びる姿勢の揺動レバー44が車幅方向に延びる揺動軸44a周りに揺動可能に取り付けられ、上記ドラムブレーキ41は、揺動レバー44の上端側が牽引方向後側に揺動することで車輪30bを制動するようになっている。
【0028】
揺動レバー44の下端には、上記コイルバネ43の他端が接続され、該コイルバネ43は、揺動レバー44の上端側が牽引方向後側に揺動するように揺動レバー44の下端側を牽引方向前側に常時付勢している。
【0029】
上記揺動レバー44の上端には、ブレーキ側ワイヤ45(第2ワイヤ)の一端が接続され、該ブレーキ側ワイヤ45を牽引方向前側(一方側)に移動させると、
図3に示すように、上記コイルバネ43の付勢力に抗して揺動レバー44の上端側が牽引方向前側に揺動して車輪30bの制動状態が解除されるようになっている。
【0030】
一方、コイルバネ43の付勢力によって揺動レバー44の上端側が牽引方向後側に揺動すると、ブレーキ側ワイヤ45が牽引方向後側(他方側)に移動するとともに制動機構4が車輪30bを制動した状態で維持するようになっている。
【0031】
つまり、本発明の制動機構4は、通常時において常に車輪30bを動かない状態にする安全装置の役割を担っている。
【0032】
ベースプレート21の牽引方向中途部下面には、
図4及び
図5に示すように、スライドユニット5が固定され、該スライドユニット5は、平面視で略U字状をなす取付フレーム51を備えている。
【0033】
該取付フレーム51は、牽引方向に延びる長方形板状の第1プレート51aと、該第1プレート51aの牽引方向前側縁部及び後側縁部からそれぞれ第1プレート51aと直交する水平方向に延びる第2プレート51b及び第3プレート51cとを備え、第2プレート51bは、第3プレート51cの延出端よりも飛び出した延出壁部51dを有している。
【0034】
該延出壁部51dには、牽引方向に貫通する3つのガイド孔51eが上下方向に等間隔に形成され、上記延出壁部51dにおける牽引方向前側の面には、3つの第1ガイド筒51fが上記各ガイド孔51eにそれぞれ対応するように取り付けられている。
【0035】
一方、第3プレート51cの延出端側には、一対の切欠溝51gが上下方向に並設され、上記第3プレート51cにおける牽引方向後側の面には、一対の第2ガイド筒51hが上記各切欠溝51gに対応するように取り付けられている。
【0036】
そして、各第2キャスター3bに取り付けられたブレーキ側ワイヤ45の他端側は、第2ガイド筒51h及び切欠溝51gにスライド可能に挿通されていて、各ブレーキ側ワイヤ45の他端には、当該各ブレーキ側ワイヤ45の本体部分よりも幅広な短柱状の係合部45aが設けられている。
【0037】
上記第1プレート51aの表面には、牽引方向に延びるスライドレール52が固定され、該スライドレール52には、スライド体53が牽引方向にスライド可能に取り付けられている。
【0038】
該スライド体53は、スライドレール52にスライド可能に嵌合する断面U字状のスライドフレーム54と、該スライドフレーム54における牽引方向前側縁部と後側縁部とにそれぞれ突設された前側壁55(第1側壁)及び後側壁56(第2側壁)とを備え、前側壁55と後側壁56とは、スライドフレーム54のスライド方向に対向している。
【0039】
前側壁55は、後側壁56よりも飛び出した突出壁部55aを有しており、該突出壁部55aには、スライド体53のスライド方向に貫通する3つの貫通孔55bが上記各ガイド孔51eに対応する位置にそれぞれ形成されている。
【0040】
前側壁55と後側壁56との間には、当該前側壁55の中途部と後側壁56の突出端とを橋絡する矩形板状の橋絡プレート57が設けられ、該橋絡プレート57は、上記スライドフレーム54に対向している。
【0041】
後側壁56及び橋絡プレート57には、上記ブレーキ側ワイヤ45の係合部45aを除く部分が挿通可能なスリット58が後側壁56及び橋絡プレート57を跨ぐように形成されている。
【0042】
上記スリット58は、各切欠溝51gに対応する位置に一対形成され、各スリット58の橋絡プレート57側の端部には、各ブレーキ側ワイヤ45の係合部45aが通過可能な幅広部58aが形成されている。
【0043】
そして、各幅広部58aに各ブレーキ側ワイヤ45の係合部45aをそれぞれ対応させて上記各スリット58に各ブレーキ側ワイヤ45を通過させるとともに各係合部45aをそれぞれ後側壁56に係合させることにより、各ブレーキ側ワイヤ45をスライド体53に取り付けるようになっている。
【0044】
互いに対応するガイド孔51e、第1ガイド筒51f及び貫通孔55bには、操作側ワイヤ59(第1ワイヤ)の一端側が挿通されている。
【0045】
各操作側ワイヤ59の一端には、当該各操作側ワイヤ59の本体部分よりも幅広な短柱状の引掛部59aが設けられている。引掛部59aは、貫通孔55bを通過不能な大きさになっていて、操作側ワイヤ59を一方側に移動させると、引掛部59aが貫通孔55b周縁に引っ掛かるようになっている。
【0046】
一方、操作側ワイヤ59を他方側に移動させると、引掛部59aが突出壁部55aから離れるように操作側ワイヤ59の引掛部59aを除く部分が貫通孔55b内をスライドするようになっている。
【0047】
つまり、各操作側ワイヤ59は、当該各操作側ワイヤ59の一方側において各引掛部59aがブレーキ側ワイヤ45側に向くように配設され、各操作側ワイヤ59の引掛部59aを除く部分を各貫通孔55bにそれぞれ挿通させた状態になっていて、各ブレーキ側ワイヤ45及び各操作側ワイヤ59は、スライド体53から互いに離間する方向に延びている。
【0048】
台車本体2の牽引方向前側下部には、
図10に示すように、牽引車T(牽引手段)に連結可能な連結機構6が配設され、スライド体53の中央部分に接続された操作側ワイヤ59と上記連結機構6とで操作手段8を構成している。
【0049】
上記連結機構6は、操作側ワイヤ59を案内するガイドフレーム61と、略二等辺三角形状をなす連結フレーム62(操作部)と、該連結フレーム62を支持する支持フレーム63とを備えている。
【0050】
ガイドフレーム61は、ベースプレート21の牽引方向前側部分から下方に延びるように取り付けられた矩形プレート61aを備え、該矩形プレート61aにおける牽引方向前側縁部には、断面L字状をなすL字ブラケット61bが固定されている。
【0051】
矩形プレート61aとL字ブラケット61bとの間には、側面視でL字状に延びる第3ガイド筒61cが矩形プレート61aの延出端からL字ブラケット61bの下面にまで延びるように設けられ、第3ガイド筒61cには、スライド体53の中央部分に繋がる操作側ワイヤ59の他端側が挿通されている。
【0052】
連結フレーム62の一端には、牽引車Tの牽引フックT1を連結可能な湾曲状に延びる連結部62aが設けられる一方、連結フレーム62の他端には、車幅方向に延びる丸棒状の軸部62bが設けられ、該軸部62bの一端側外周面には、
図7に示すように、連結フレーム62の長手方向と直交する方向で、且つ、軸部62bと直交する方向に並設された一対の平坦部62cが形成されている。
【0053】
上記軸部62bの一端には、
図6に示すように、当該軸部62bの軸心周りに回転可能な回転部材64が取り付けられ、該回転部材64には、第3ガイド筒61cに挿通された操作側ワイヤ59の他端が固定されている。
【0054】
支持フレーム63は、ベースプレート21の牽引方向前側部分に設けられ、車幅方向に対向する第1支持プレート65及び第2支持プレート66(支持部)を備えている。
【0055】
上記第1支持プレート65には、連結フレーム62における軸部62bの他端側が遊嵌する第1支持孔67が形成され、連結フレーム62は、軸部62bの他端部分を支点に回動可能になっている。
【0056】
一方、第2支持プレート66には、連結フレームにおける軸部62bの一端側を支持する第2支持孔68が形成されている。
【0057】
該第2支持孔68は、
図7に示すように、略鍵穴形状をなしており、第2支持孔68の上半部分に形成された断面略円形状の回動可能部68aと、第2支持孔68の下半部分に形成された上下に延びるスリット状の嵌合規制部68bとを備えている。
【0058】
回動可能部68aの径は、上記軸部62bの径よりも大きく設定されていて、上記軸部62bの一端側が回動可能部68aに位置する際、
図8乃至
図11に示すように、連結フレーム62は、軸部62bを中心に回動可能になっている。
【0059】
一方、嵌合規制部68bにおける牽引方向の寸法は、上記軸部62bの径よりも小さい寸法で、且つ、両平坦部62c間の寸法に対応する寸法になっていて、上記軸部62bの一端側が回動可能部68aに位置する際、連結フレーム62を上下方向に延びる姿勢にし、且つ、軸部62bの他端部分を支点に連結フレーム62を下方に移動させると、
図6及び
図7に示すように、軸部62bの一端部分が嵌合規制部68bに嵌合するようになっている。
【0060】
すなわち、連結フレーム62は、上下方向に延びる姿勢の際、軸部62bの他端部分を支点として台車本体2に対して上下方向にスライド可能になっていて、嵌合規制部68bに軸部62bの一端側が嵌合した状態から外れるように連結フレーム62を上方に移動させると、
図12及び
図13に示すように、スライド体53の中央部分に繋がる操作側ワイヤ59がスライド体53から離れる方向(一方側)に移動して引掛部59aが貫通孔55bに引っ掛かり、それに伴ってスライド体53が牽引方向前側にスライドするようになっている。このとき、残りの2つの操作側ワイヤ59は、当該各操作側ワイヤ59の引掛部59aが突出壁部55aから離れるように各貫通孔55b内をスライドするようになっている。
【0061】
スライド体53が牽引方向前側にスライドすると、両ブレーキ側ワイヤ45が牽引方向前側(一方側)に移動するとともに各揺動レバー44の上端側が各コイルバネ43の付勢力に抗して牽引方向前側に揺動して各車輪30bの制動状態が解除されるようになっている。
【0062】
一方、嵌合規制部68bに軸部62bの一端側が嵌合するように上下方向に延びる姿勢の連結フレーム62を下方に移動させると、各コイルバネ43の付勢力によって各揺動レバー44の上端側が牽引方向後側に揺動して各車輪30bが制動状態になるとともに、両ブレーキ側ワイヤ45が牽引方向後側(他方側)に移動するようになっている。
【0063】
両ブレーキ側ワイヤ45が牽引方向後側に移動すると、スライド体53が牽引方向後側にスライドするとともにそれに伴って操作側ワイヤ59がスライド体53と共に移動するようになっている。
【0064】
つまり、連結フレーム62は、上下方向のスライド動作によって各車輪30bの制動を操作できるようになっている。
【0065】
また、軸部62bの一端側を回動可能部68aに位置させた状態で連結フレーム62が牽引方向に延びる姿勢となるように牽引方向前側に回動させると、
図10及び
図11に示すように、軸部62bの一端側が嵌合規制部68bに嵌合できなくなるので、連結フレーム62の下方への移動が規制されるようになっている。
【0066】
台車本体2の牽引方向前側中途部には、
図14に示すように、作業者が牽引台車1を操作するための操作ハンドル7(操作部)が設けられ、スライド体53の上部及び下部に接続された2つの操作側ワイヤ59と上記操作ハンドル7とで操作手段9を構成している。
【0067】
上記操作ハンドル7は、作業者が把持可能な平面視で略U字状をなす把持フレーム71を備え、該把持フレーム71の各端部は、上記前側格子フレーム22に固定されている。
【0068】
把持フレーム71の水平に延びる部分には、一対の棒状をなす操作レバー72(操作部)が牽引台車1の前側から見て車幅方向に対称となるように設けられ、該各操作レバー72の一端には、スライド体53の上部及び下部に繋がる操作側ワイヤ59の他端がそれぞれ接続されている。
【0069】
また、各操作レバー72の一端側は、上記把持フレーム71に揺動可能に軸支されていて、作業者が一方の操作レバー72を把持フレーム71に接近するように揺動させると、
図15及び
図16に示すように、スライド体53の上部に繋がる操作側ワイヤ59がスライド体53から離れる方向(一方側)に移動して引掛部59aが貫通孔55bに引っ掛かり、スライド体53が牽引方向前側にスライドするようになっている。このとき、残りの2つの操作側ワイヤ59は、当該各操作側ワイヤ59の引掛部59aが突出壁部55aから離れるように各貫通孔55b内をスライドするようになっている。
【0070】
スライド体53が牽引方向前側にスライドすると、両ブレーキ側ワイヤ45が牽引方向前側に移動するとともに各揺動レバー44の上端側が各コイルバネ43の付勢力に抗して牽引方向前側に揺動して各車輪30bの制動状態が解除されるようになっている。
【0071】
一方、作業者が一方の操作レバー72から手を離すと、各コイルバネ43の付勢力によって各揺動レバー44の上端側が牽引方向後側に揺動して各車輪30bが制動状態になるとともに、両ブレーキ側ワイヤ45が牽引方向後側(他方側)に移動するようになっている。
【0072】
両ブレーキ側ワイヤ45が牽引方向後側に移動すると、スライド体53が牽引方向後側にスライドするとともにそれに伴って操作側ワイヤ59が移動して一方の操作レバー72が把持フレーム71から離間する方向に揺動するようになっている。
【0073】
尚、他方の操作レバー72を揺動させたときのブレーキユニット10の動作は、スライド体53の下部に繋がる操作側ワイヤ59によってスライド体53をスライドさせる以外は一方の操作レバー72を揺動させたときのブレーキユニット10の動作と同じであるので詳細な説明は省略する。
【0074】
以上より、本発明の実施形態によると、連結フレーム62又は操作レバー72を操作して操作側ワイヤ59をスライド体53から離れる方向に移動させると、操作側ワイヤ59の引掛部59aがスライド体53の貫通孔55b周縁に引っ掛かり、スライド体53が操作側ワイヤ59と共にスライドし始める。すると、スライド体53に取り付けられたブレーキ側ワイヤ45が一方側に移動するので、制動機構4による車輪30bの制動が解除される。このとき、操作していない連結フレーム62又は操作レバー72に繋がる操作側ワイヤ59は、各貫通孔55b内をスライドするので、スライド体53に対して力を加えない。したがって、操作者は、連結フレーム62又は操作レバー72の操作を必要以上の力で行う必要が無く、操作の行い易いブレーキユニット10にすることができる。
【0075】
また、スライドフレーム54、前側壁55、後側壁56、及び橋絡プレート57で閉断面を形成するので、剛性の高いスライド体53にすることができる。また、幅広部58aに係合部45aを通過させるだけでブレーキ側ワイヤ45がスライド体53に取り付くので、ブレーキユニット10におけるブレーキ側ワイヤ45の組付作業を簡単に行うことができる。
【0076】
また、スライド体53に対する操作側ワイヤ59の取付位置とブレーキ側ワイヤ45の取付位置とが前側壁55及び後側壁56の突出方向にずれるようになる。したがって、スライド体53における操作側ワイヤ59の取付位置とブレーキ側ワイヤ45の取付位置とをスライド方向に接近させてもスライド体53のスライド動作時における操作側ワイヤ59及びブレーキ側ワイヤ45の接触を確実に回避させることができるので、スライド体53をスライド方向にコンパクトな形状にすることができる。
【0077】
また、作業者が把持フレーム71を把持して牽引台車1を操作しながら操作レバー72を操作できるようになるので、作業者が牽引台車1を操作する手の位置を大きく移動させずに牽引台車1の移動操作と移動規制操作とを行うことができるようになり、使い勝手の良い牽引台車1にすることができる。
【0078】
また、牽引に必要な連結フレーム62を利用して制動機構4の操作を行うことができるようになるので、作業者が牽引作業時において簡単に牽引台車1の移動許容状態と移動規制状態とを切り替えることができる。
【0079】
尚、本発明の実施形態では、ブレーキ側ワイヤ45の牽引方向前側への移動動作によって第2キャスター3bの車輪30bの制動状態を解除する一方、ブレーキ側ワイヤ45の牽引方向後側への移動動作によって第2キャスター3bの車輪30bを制動するようになっているが、ブレーキ側ワイヤ45の牽引方向前側への移動動作によって第2キャスター3bの車輪30bを制動する一方、ブレーキ側ワイヤ45の牽引方向後側への移動動作によって第2キャスター3bの車輪30bの制動を解除するような構成にしてもよい。
【0080】
また、本発明の実施形態では、スライド体53に3つの操作側ワイヤ59が繋がっているが、操作側ワイヤ59は2つでもよく、4つ以上であってもよい。
【0081】
また、本発明の実施形態では、操作レバー72が一対設けられているが、1つであってもよいし、3つ以上設けられていてもよい。
【0082】
また、本発明の実施形態では、連結フレーム62の上下方向へのスライド動作によってブレーキ側ワイヤ45を移動させるようにしているが、これに限らず、例えば、連結フレーム62の回動動作によって軸部62bで操作側ワイヤ59を巻き上げるか、或いは、巻き下げることでブレーキ側ワイヤ45を移動させるようにしてもよい。
【0083】
また、本発明の実施形態では、4つの車輪(車輪30a及び車輪30b)からなる牽引台車1に本発明の構造を適用しているが、6つの車輪からなる牽引台車に本発明の構造を適用してもよい。
【0084】
また、本発明の実施形態では、鉛直軸心周りに回動しない第2キャスター3bに制動機構4を取り付けているが、鉛直軸心周りに回動自在な第1キャスター3aを回転不能な状態にして当該第1キャスター3aに制動機構4を取り付けてもよい。
【0085】
また、本発明の実施形態では、操作ハンドル7が1つ設けられているが、複数設けられていてもよい。
【0086】
また、本発明の実施形態では、操作ハンドル7の把持フレーム71が平面視で略U字状をなしているが、その他の形状であってもよい。
【0087】
また、本発明の実施形態では、操作レバー72が棒状をなしているが、その他の形状であってもよい。
【0088】
また、本発明の実施形態では、操作レバー72を揺動させることにより、スライド体53をスライドさせているが、これに限らず、その他の操作手段によりスライド体53をスライドさせる構成であってもよい。
【0089】
尚、本発明のブレーキユニット10は、自転車等のその他の走行体にも適用が可能である。