【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成24年度〜平成27年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業(チーム型研究(CREST))、「生体恒常性維持・変容・破綻機構のネットワーク的理解に基づく最適医療実現のための技術創出」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【文献】
VASSILEV, Lyubomir T. et al.,In Vivo Activation of the p53Pathway by Small-MoleculeAntagonists of MDM2,SCIENCE,2004年,Vol.303,pp.844-848
【文献】
MIKAWA, Takumi et al.,Senescence-inducing stress promotes proteolysis of phosphoglycerate mutase via ubiquitin ligase Mdm2,Journal of Cell Biology,2014年,Vol.204, No.5,pp.729-745
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被検物質の存在下及び非存在下でPGAMとChk1との結合量を測定し、それぞれの場合における結合量の比から、上記被検物質の解糖系代謝制御活性の有無を判定することを特徴とする、請求項1に記載のスクリーニング方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のように、解糖系代謝は古くより癌での亢進が知られており、抗癌剤の標的の可能性が指摘されていた。実際、解糖系阻害剤は癌培養細胞の多くを増殖抑制できるが、現実的な治療応用はまだ道半ばである。その理由は、解糖系代謝は正常細胞でも生理的必須機能を担っており、単なる代謝阻害は重篤な副作用を引き起こす危険性があり、癌治療としての有効性の確立が難しいことにある。解糖系をターゲットとする癌治療では、この問題の克服が必須であり、例えば正常細胞での解糖系代謝はできる限り温存しつつ、癌での解糖系代謝を特異的に阻害できるような選択的阻害剤の発見が望まれる。
【0009】
そこで、本発明は、癌での解糖系代謝を特異的に制御できるような選択的制御物質や、老化を抑制したい細胞、組織の解糖系代謝を特異的に制御できるような選択的制御物質、即ち解糖系代謝制御物質を見出すことができる、新規なスクリーニング方法を提供することを目的とする。また、このスクリーニング方法によって、癌での解糖系代謝を特異的に阻害する物質や、細胞老化を抑制したい細胞、組織においては抗老化効果(アンチエイジング効果)を奏する物質等の、新規の解糖系代謝制御物質を見出すことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、細胞内でPGAMとChk1とが結合すること、そしてこれらの物理的な結合が解糖系代謝において重要な役割を果たすこと、これらの物理的結合を制御することで解糖系を制御することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、以下に示すとおりである。
[1]被検物質が、PGAMとChk1との結合を、阻害又は促進する場合に、上記被検物質が解糖系代謝を制御する物質であると評価する、解糖系代謝制御物質のスクリーニング方法。
[2]被検物質の存在下及び非存在下でPGAMとChk1との結合量を測定し、それぞれの場合における結合量の比から、上記被検物質の解糖系代謝制御活性の有無を判定することを特徴とする、[1]に記載のスクリーニング方法。
[3]以下の工程を含むことを特徴とする、[1]又は[2]に記載のスクリーニング方法;
1)PGAM及びChk1を含む試料に被検物質を加えた場合のPGAMとChk1との結合量を測定する工程、
2)上記被検物質を加えていない場合のPGAMとChk1との結合量を測定する工程及び
3)上記工程1)による測定値と、上記工程2)による測定値とを比較する工程。
[4]PGAM及びChk1が、互いに結合し得るタグで標識されていることを特徴とする、[1]から[3]のいずれかに記載のスクリーニング方法。
[5]上記解糖系代謝制御物質が、抗がん剤として用いられる、[1]から[4]のいずれかに記載のスクリーニング方法。
[6]上記解糖系制御物質が、抗老化用組成物に用いられる、[1]から[4]のいずれかに記載のスクリーニング方法。
[7]PGAMとChk1との結合を阻害又は促進する物質を含む、解糖系代謝制御剤。
[8]PGAMとChk1との結合を阻害又は促進する物質が、
i)PGAM遺伝子若しくはChk1遺伝子に対するアンチセンス核酸又はsiRNA、ii)PGAM又はChk1に特異的な抗体、及び
iii)ナトリン
からなる群より選択される少なくとも1種である、[7]に記載の解糖系代謝制御剤。
[9]抗がん剤として用いられる、[7]又は[8]に記載の解糖系代謝制御剤。
[10]抗老化用組成物に用いられる、[7]又は[8]に記載の解糖系代謝制御剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明の解糖系代謝制御物質のスクリーニング方法は、本発明者らが、細胞内でPGAMとChk1とが結合すること、そしてこれらの結合が解糖系代謝において重要な役割を果たすことを最初に見出したことによって、可能となったものである。このPGAMとChk1による協調的解糖系制御機構には、PGAMの酵素活性は関与せず、物理的な結合が重要である。本発明においては、このような解糖系酵素活性とは別のPGAMの機能を標的とすることで、本来のPGAM活性は温存でき、PGAM−Chk1結合制御のみの効果により、解糖系を特異的に阻害できる物質をスクリーニングすることが可能となる。また、この方法によると、解糖系代謝の制御により予防、治療、処置が可能である症状や疾患に有効な物質を見出すことができる。例えば、本発明のスクリーニング方法により見出される解糖系代謝制御物質は、新規の抗がん剤、抗老化用組成物に有効に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の解糖系代謝制御物質のスクリーニング方法及び解糖系代謝制御剤について詳細に説明する。
【0014】
<解糖系代謝制御物質のスクリーニング方法>
本発明の解糖系代謝制御物質のスクリーニング方法は、被検物質が、PGAMとChk1との結合を、阻害又は促進する場合に、上記被検物質が解糖系代謝を制御する物質であると評価することを特徴とする。本発明は、細胞内でPGAMとChk1とが結合すること、そしてこれらの結合が解糖系代謝において重要な役割を果たすことを本発明者らが最初に見出したことによって、可能となったものである。
【0015】
本発明においてPGAMとは、ホスホグリセリン酸ムターゼという、解糖系代謝経路における10個の解糖系酵素の順次反応のうち、その8番目の反応を担う酵素であり、3−Phosphoglycerate(3PG)から2−Phosphoglycerate(2PG)への変換反応を触媒する酵素のことをいう。PGAMは、細胞の老化と癌化の接点を担う。PGAMにはPGAM1とPGAM2の二つのアイソフォームが存在する。PGAM1とPGAM2は組織発現パターンに違いが見られるものの、アミノ酸配列上高い相同性を有しており、機能や酵素活性は同等であると考えられる。ヒトPGAM1、PGAM2のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号1、配列番号2として、cDNA配列はそれぞれ配列番号3、配列番号4として配列表に示した。
【0016】
本発明においてChk1とは、セリンスレオニンタンパク質キナーゼであり、細胞周期のG2期でDNA損傷チェックポイントの活性化において役割を担うチェックポイントキナーゼである。Chk1は、本発明者らによって解糖系代謝においても重要な役割を担っていることが見出された。ヒトChk1のアミノ酸配列は配列番号5として、cDNA配列は配列番号6として配列表に示した。
【0017】
本発明における解糖系代謝とは、細胞が取り込んだグルコースを分解することにより、ATPを合成する代謝過程の総称である。解糖系代謝には、グルコースをその中間産物であるピルビン酸に分解し、乳酸を合成する経路と、ミトコンドリアでの酸化的リン酸化へと進む経路の、二通りの経路が存在する。前者は、酸素呼吸を必要しないので嫌気的解糖系代謝と呼ばれ、後者はミトコンドリア酸素呼吸によりATPを合成するので好気的解糖系代謝と呼ばれる。この解糖系代謝は、ほとんどの通常細胞においてエネルギー代謝の重要な役割を担っており、個体が生きていく上で不可欠である。
【0018】
本発明における解糖系代謝制御物質とは、解糖系代謝を抑制又は亢進する物質のことをいう。解糖系代謝の過程でPGAMとChk1との結合が重要な役割を担っていることが、本発明者らの研究によって見出されたが、本発明における解糖系代謝制御物質は、特にこのPGAMとChk1との結合に影響を与える物質をいう。本発明における解糖系代謝制御物質は、PGAMとChk1との結合を抑制・阻害するものであってもよいし、亢進するものであってもよい。本発明における解糖系代謝制御物質は、PGAM及び/又はChk1自体に結合してPGAMとChk1との結合に影響を与える物質であってもよいし、PGAM及び/又はChk1の発現に影響を与えることによってPGAMとChk1との結合を制御する物質であってもよい。
【0019】
本発明のスクリーニング方法は、具体的には、被検物質の存在下及び非存在下でPGAMとChk1との結合量を測定し、両結合量の比から、上記被検物質の解糖系代謝制御活性の有無を判定することを特徴とする。このような本発明のスクリーニング方法は、以下の工程1)〜3)を含むことが好ましい。
【0020】
1)PGAM及びChk1を含む試料に被検物質を加えた場合のPGAMとChk1との結合量を測定する工程
2)上記被検物質を加えていない場合のPGAMとChk1との結合量を測定する工程
3)上記工程1)による測定値と、上記工程2)による測定値とを比較する工程
【0021】
本発明のスクリーニング方法の工程1)においては、まずPGAM及びChk1を含む試料に被験物質を加えることにより、PGAM及び/又はChk1に被験物質を接触させる。
【0022】
本発明のスクリーニング方法に使用されるPGAM及びChk1は上述の通りである。本発明のスクリーニング方法に使用されるPGAM及びChk1には、上記の公知のPGAM及びChk1と機能的に同等なタンパク質も含まれる。このようなタンパク質には、例えば、PGAM及びChk1の変異体、アレル、バリアント、ホモログ、PGAM及びChk1の部分ペプチド、他のタンパク質との融合タンパク質、タグによって標識されたものなどが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0023】
本発明におけるPGAM及びChk1の変異体としては、上述のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加したアミノ酸配列からなる天然由来のタンパク質であって、既述のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質を挙げることができる。また、上述の塩基配列からなるDNAとストリジェントな条件下でハイブリダイズする天然由来のDNAよりコードされるタンパク質であって、既述のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等なタンパク質も、PGAM及びChk1のそれぞれの変異体として挙げることができる。
【0024】
本発明において、変異するアミノ酸数は特に制限されないが、通常、30アミノ酸以内であり、好ましくは15アミノ酸以内であり、さらに好ましくは5アミノ酸以内(例えば、3アミノ酸以内)であると考えられる。変異するアミノ酸残基においては、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に変異されることが望ましい。例えば、アミノ酸側鎖の性質としては、疎水性アミノ酸(A,I,L,M,F,P,W,Y,V)、親水性アミノ酸(R,D,N,C,E,Q,G,H,K,S,T)、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(G,A,V,L,I,P)、水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(S,T,Y)、硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(C,M)、カルボン酸及びアミド含有側鎖を有するアミノ酸(D,N,E,Q)、塩基含有側鎖を有するアミノ酸(R,K,H)、芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(H,F,Y,W)を挙げることができる(括弧内はいずれもアミノ酸の一文字標記を表す)。あるアミノ酸配列に対する1又は複数個のアミノ酸残基の欠失、付加及び/又は他のアミノ酸配列による置換により修飾されたアミノ酸配列を有するポリペプチドがその生物学的活性を維持することは既に知られている。
【0025】
本発明において機能的に同等とは、対象となるタンパク質が、PGAM又はChk1と同等の生物学的機能や生化学的機能を有することを指す。PGAMの生物学的機能や生化学的機能としては、解糖系酵素としての機能であり、具体的には、3−Phosphoglycerate(3PG)から2−Phosphoglycerate(2PG)への変換反応を触媒する機能を挙げることができる。また、Chk1の生物学的機能や生化学的機能としては、セリンスレオニンタンパク質キナーゼとしての機能を挙げることができる。
【0026】
目的のタンパク質と機能的に同等なタンパク質をコードするDNAを調製するために、当業者に良く知られた方法としては、ハイブリダイゼーション技術やポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を利用する方法が挙げられる。即ち、当業者にとっては、PGAM又はChk1の塩基配列もしくはその一部をプローブとして、またPGAM又はChk1に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプライマーとして、PGAM又はChk1と高い相同性を有するDNAを単離することは通常行いうることである。このようにハイブリダイズ技術やPCR技術により単離しうるPGAM又はChk1と同等の機能を有するタンパク質をコードするDNAもまた本発明のDNAに含まれる。
【0027】
本発明のスクリーニング方法に使用されるタグ標識されたPGAM及びChk1としては、それらに対する抗体や、特異的に結合できるレジン等が存在する物であることが好ましく、例えば、FLAGタグ、HAタグ、Mycタグ、Hisタグ、GSTタグ等が挙げられる。
【0028】
本発明のスクリーニング方法に使用されるPGAM及びChk1の由来となる生物種としては、特定の生物種に限定されるものではない。例えば、ヒト、サル、マウス、ラット、モルモット、ブタ、ウシ、酵母、昆虫等が挙げられる。
【0029】
本発明のスクリーニング方法に使用されるPGAM及びChk1の状態としては、特に制限はなく、例えば精製された状態、細胞内に発現した状態、細胞抽出液内に発現した状態等であってもよい。
【0030】
本発明における被験物質は、特に限定されるものではなく、例えば天然化合物、有機化合物、無機化合物、核酸、タンパク質(抗体を含む)、ペプチド等の単一物質;化合物ライブラリー、核酸ライブラリー、ペプチドライブラリー、遺伝子ライブラリーの発現産物;細胞抽出物、細胞培養上清、発酵微生物産生物、海洋生物抽出物、植物抽出物、原核細胞抽出物、真核単細胞抽出物又は動物細胞抽出物の抽出物等を挙げることができる。また、本発明における被験物質としては、これらの混合物であってもよい。また、これらの被験物質は必要に応じて標識して用いることができる。標識としては、例えば、放射標識、蛍光標識等を挙げることができる。
【0031】
また、本発明において接触は、PGAM及びChk1の状態に応じて行う。例えば、PGAM及びChk1が精製された状態であれば、精製標品に被験物質を添加することにより行うことができる。また、細胞内に発現した状態又は細胞抽出液内に発現した状態であれば、それぞれ、細胞の培養液若しくは該細胞抽出液に被験物質を添加することにより、又は実験動物に直接投与することにより行うことができる。被験物質がタンパク質の場合には、例えば、該タンパク質をコードするDNAを含むベクターをPGAM及びChk1が発現している細胞へ導入する、又は該ベクターをPGAM及びChk1が発現している細胞抽出液に添加することで行うことも可能である。また、例えば、酵母又は動物細胞等を用いた2ハイブリッド法を利用することも可能である。
【0032】
本発明においては、PGAM及びChk1を含む試料に被験物質を加えることにより、PGAM及び/又はChk1と被験物質とを接触させてもよい。また、PGAM又はChk1のどちらか一方を含む試料に被験物質を加えた後、含んでいなかったもう一方を加えてそれぞれと被験物質とを接触させてもよい。
【0033】
本発明においては、次に、PGAMとChk1との結合量を測定する。なお、本発明のスクリーニング方法の工程2)においては、PGAM及びChk1を含む試料に被験物質を加えなかった場合のPGAMとChk1との結合量を測定することとなる。具体的には、被験物質を加えた場合(接触させた場合)と、被験物質を加えなかった場合(接触させなかった場合)のPGAMとChk1との結合量を測定し、本発明のスクリーニング方法の工程3)において、それらの値を比較する。被験物質を加えた場合に、被験物質を加えなかった場合と比較して、PGAMとChk1との結合量が増加又は減少していれば、この被験物質はPGAMとChk1との結合を制御する効果があると判断できる。そして、PGAMとChk1との結合量を増加させる効果がある被験物質は、解糖系代謝を亢進させる効果があると判定できる。一方、PGAMとChk1との結合量を減少させる効果がある被験物質は、解糖系代謝を抑制・阻害する効果があると判定できる。
【0034】
PGAMとChk1との結合量を測定する方法としては、例えば、具体的に以下のような方法が挙げられる。PGAM2−FLAG及びChk1−myc−His発現ベクターを共発現させた細胞の蛋白質抽出液から、プロテインGアガロースにコンジュゲートされたFLAGタグ抗体により、PGAM2−FLAG蛋白を免疫沈降させる。この時PGAM2−FLAG蛋白に結合して共沈降してくるChk1−myc−His蛋白をウエスタンブロットにより検出し、定量する。あるいは、同様の蛋白質抽出液からNi−NTAアガローズビーズにより、Chk1−myc−His蛋白を沈降させる。この時Chk1−myc−His蛋白に結合して共沈降してくるPGAM2−FLAG蛋白をウエスタンブロットにより検出し、定量する。
【0035】
PGAMとChk1との結合量を測定する方法としては、上記以外にも例えば、Nanobitのシステムを利用した以下のような方法が挙げられる。NanobitではPGAMとChk1にそれぞれルシフェラーゼをベースに作成された発光蛋白質の大サブユニットと小サブユニットをそれぞれタグとして取り付ける。これらのタグは互いに結合し得る構造となっている。それぞれのサブユニットはそれ自体発光しないが、PGAMとChk1の結合により大サブユニットと小サブユニットが会合し完全な発光蛋白となることで発光シグナルを発する。このときの発光シグナルの強度を測定することで高感度かつ高い定量性をもって結合量を測定することができる。
【0036】
<解糖系代謝制御剤>
本発明における解糖系代謝制御剤は、有効成分として、上述の本発明のスクリーニング方法により見出される解糖系代謝制御物質を含む。
【0037】
本発明のスクリーニング方法により見出される解糖系代謝制御物質としては、例えば、
i)PGAM遺伝子若しくはChk1遺伝子に対するアンチセンス核酸又はsiRNA、ii)PGAM又はChk1に特異的な抗体、及び
iii)ナトリン等の化合物
が挙げられる。
【0038】
(PGAM遺伝子若しくはChk1遺伝子に対するアンチセンス核酸又はsiRNA)
本発明におけるアンチセンス核酸は、PGAM又はChk1をコードするDNAの転写産物と相補的なアンチセンス核酸である。アンチセンス核酸が、転写、スプライシング又は翻訳の過程を阻害して、標的遺伝子の発現を抑制するアンチセンス核酸であることが好ましい。
【0039】
本発明で用いられるアンチセンス配列の態様としては、PGAM又はChk1のmRNAの5’端近傍の非翻訳領域に相補的なアンチセンス配列を設計すれば、遺伝子の翻訳阻害に効果的であるものと考えられる。しかし、コード領域もしくは3’側の非翻訳領域に相補的な配列も使用し得る。このように遺伝子の翻訳領域だけでなく非翻訳領域に相補的な配列も使用しうる。このように、遺伝子の翻訳領域だけでなく、非翻訳領域の配列のアンチセンス配列を含む核酸も、本発明で利用されるアンチセンス核酸に含まれる。アンチセンス核酸は標的とする遺伝子の転写産物に対して好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の相補性を有する。アンチセンス配列を用いて、効果的に標的遺伝子の発現を阻害するアンチセンスRNAの長さは、特に制限されない。
【0040】
本発明におけるsiRNAは、細胞で毒性を示さない範囲の短鎖からなる二重鎖RNAを意味し、例えば15〜49塩基対と、好適には15〜35塩基対と、さらに好適には21〜30塩基対とすることが出来る。また、shRNAは、一本鎖のRNAがヘアピン構造を介して二重鎖を構成しているRNAである。
【0041】
siRNAは、標的遺伝子と完全に同一である必要はないが、少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の配列の相同性を有する。
【0042】
siRNAにおけるRNA同士が対合した二重鎖RNAの部分は、完全に対合しているものに限らず、ミスマッチ(対応する塩基が相補的でない)、バルジ(一方の鎖に対応する塩基がない)などにより不対合部分が含まれていてもよい。本発明においてはdsRNAにおけるRNA同士が対合する二重鎖RNA領域中に、バルジ及びミスマッチの両方が含まれていてもよい。
【0043】
(PGAM又はChk1に特異的な抗体)
本発明におけるPGAM又はChk1に特異的な抗体は、公知の手段を用いてポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体として得ることができる。本発明で使用される抗体の由来は特に限定されるものではないが、好ましくは哺乳動物由来であり、より好ましくはヒト由来の抗体を挙げることが出来る。哺乳動物由来のモノクローナル抗体としては、ハイブリドーマに産生されるもの、及び遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主に産生されるものがある。この抗体はPGAM又はChk1と結合することにより、PGAMとChk1との結合を阻害する。
【0044】
抗体産生ハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用して作製できる。すなわち、PGAM又はChk1を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング方法により、モノクローナルな抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。
【0045】
当該ハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得する方法としては、当該ハイブリドーマを通常の方法にしたがい培養し、その培養上清として得る方法、あるいはハイブリドーマをこれと適合性がある哺乳動物に投与して増殖させ、その腹水として得る方法などが採用される。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに適しており、一方、後者の方法は、抗体の大量生産に適している。また、モノクローナル抗体として、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型抗体を用いることができる。
【0046】
本発明では、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ(Chimeric)抗体、ヒト化(Humanized)抗体、ヒト(Human)抗体等を使用できる。これらの改変抗体は、当業者に公知の方法を用いて製造することができる。
【0047】
(ナトリン等の化合物)
本発明のスクリーニング方法を用いて、化合物ライブラリーについて試験を行ったところ、ナトリンがPGAMとChk1との結合を有意に阻害することが見出された。このナトリンが解糖系代謝に影響を与えるか否かを確認するために、H1299細胞に添加したところ、解糖系酵素発現が顕著に低下し、解糖系代謝に対して抑制的に機能することが明らかとなった。即ち、ナトリンは解糖系代謝制御物質であり、これを含む組成物は、解糖系代謝制御剤として有効に使用することができる。
【0048】
同様にして、天然化合物、有機化合物、無機化合物、核酸、タンパク質、ペプチド等の単一物質;化合物ライブラリー、核酸ライブラリー、ペプチドライブラリー、遺伝子ライブラリーの発現産物;細胞抽出物、細胞培養上清、発酵微生物産生物、海洋生物抽出物、植物抽出物、原核細胞抽出物、真核単細胞抽出物又は動物細胞抽出物の抽出物等を本発明のスクリーニング方法にかけることで、PGAMとChk1との結合に影響を与える化合物、即ち解糖系代謝に影響を与える化合物を見出すことが可能である。
【0049】
本発明の解糖系代謝制御剤は、上記有効成分に加えて、他の任意成分として、製剤上、薬理学的又は生理学的に許容される一種又は二種以上の担体、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、分散剤、界面活性化剤、可塑剤、懸濁剤、乳化剤、希釈剤、緩衝剤、抗酸化剤、細菌抑制剤等を含有していてもよい。また、その他低分子量のポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチンや免疫グロブリン等の蛋白質、アミノ酸、多糖及び単糖等の糖類や炭水化物、糖アルコールを含んでいてもよい。さらに必要に応じて他の有効成分を含有していてもよい。
【0050】
本発明の解糖系代謝制御剤は、医薬品、医薬部外品、食品等の分野において従来公知の任意の方法により製造することができる。その製造過程において、上記有効成分、その他の任意成分を公知のいかなる方法で添加・混合してもよい。
【0051】
注射用の水溶液とする場合には、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えば、D−ソルビトール、D−マンノース、D−マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール(エタノール等)、ポリアルコール(プロピレングリコール、PEG等)、非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80、HCO−50)等と併用してもよい。必要に応じてさらに希釈剤、溶解補助剤、pH調整剤、無痛化剤、含硫還元剤、酸化防止剤等を含有してもよい。
【0052】
また、マイクロカプセル(ヒドロキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリ[メチルメタクリル酸]等のマイクロカプセル)に封入したり、コロイドドラッグデリバリーシステム(リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル等)としたりすることもできる。さらに、薬剤を徐放性の薬剤とする方法も公知であり、本発明に適用し得る。
【0053】
本発明の解糖系代謝制御剤をヒトや他の動物の医薬として使用する場合には、これらの物質自体を直接患者に投与する以外に、公知の製剤学的方法により製剤化して投与を行うことも可能である。製剤化する場合には、上記に記載の製剤上許容される成分を添加してもよい。
【0054】
本発明におけるすべての薬剤は、医薬品の形態で投与することが可能であり、経口的又は非経口的に全身あるいは局所的に投与することができる。例えば、点滴などの静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射、坐薬、注腸、経口性腸溶剤などを選択することができ、患者の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。有効投与量は、一回につき体重1kgあたり0.001mgから100mgの範囲で選ばれる。あるいは、患者あたり0.1〜1000mg、好ましくは0.1〜50mgの投与量を選ぶことができる。具体的な例としては、体重1kgあたり1ヶ月(4週間)に0.1mgから40mg、好ましくは1mgから20mgを1回から数回に分けて、例えば2回/週、1回/週、1回/2週、1回/4週などの投与スケジュールで点滴などの静脈内注射、皮下注射、経口投与等の方法で、投与する。投与スケジュールは、投与後の状態の観察及び血液検査値の動向を観察しながら2回/週あるいは1回/週から1回/2週、1回/3週、1回/4週のように投与間隔を延ばしていくなど調整することも可能である。
【実施例】
【0055】
以下の実施例にて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【0056】
1.PGAMモデルマウスの解析(腹腔内グルコース負荷試験)
PGAMのin vivoでの効果を検証するためPGAMモデルマウス(全身発現型トランスジェニックマウス(TG)及びノックアウトマウス(cKO)マウス)の解析を行った。
図1に、PGAMノックアウトマウスの遺伝子デザインの概略図を示す。CAG−CreトランスジェニックマウスとPgam1 flox/+マウスとの交配により、グローバルPgam1ヘテロ接合体KOマウスを作製し、Pgam1ヘテロ接合性KOマウスの交配後、ホモ接合型及びヘテロ接合型のKOマウスの生存可能な子孫を調べた。得られた155の子孫の中で、野生型の比率:ヘテロ接合体KO:同型接合KOは、52:103:0であった(表1)。したがって、Pgam1ホモ接合性KOマウスは胚性致死であり、胚胎日13.5(E13.5)では観察されない。Pgam1−/−マウスの初期致死率は、他の解糖酵素のホモ接合性KOマウスで観察されたものと類似している。なお、PGAMホモKOマウスは胎生致死であったため(表1)、以下の解析はヘテロKOマウスで行った。
【0057】
【表1】
【0058】
PGAMが解糖系酵素であることを考慮し、糖尿病や糖代謝異常の有無を検討するために、PGAM−TGマウス、PGAMヘテロKOマウス及び野生型マウスを用いて、腹腔内グルコース負荷試験(IPGTT)を行った。即ち、それぞれのマウスについて16時間絶食後、グルコースを1.5g/kg体重で腹腔内投与し、0、15、30、60、120分後に採血し、全血中のグルコースレベルを解析した。その結果、PGAM−TGマウス(
図2)もPGAMヘテロKOマウス(
図3)もin vivo糖代謝パラメーターはほぼ正常であった。
【0059】
2.PGAMモデルマウスの解析;解糖系代謝に関連する物質のmRNA(解糖系mRNA)の組織別解析
PGAMモデルマウス(全身発現型TG及びcKOマウス)を用いて、臓器別の解糖系mRNAプロファイルを解析した。PGAM−TGマウスでは、検証した組織・臓器(皮膚、肝臓、腎臓、筋肉、白色脂肪、肺、心臓)では、ほぼ正常であった。一方、PGAMヘテロノックアウトマウスでも多くの臓器(肝臓、腎臓、筋肉、白色脂肪、肺、脳、心臓)で、解糖系mRNAプロファイルは正常であったが、皮膚においては、Hk2、Gpi、Pfkm、Tpi、Aldoa、Gapdh、Pgk1、Pkm1の有意な低下、及びEno3の中程度の減少(p=0.08)が見られ、解糖系mRNA全般が大きく発現低下していることがわかった(
図4)。
【0060】
3.癌培養細胞におけるPGAMの解析;PGAMsiRNAによる解糖系mRNAの低下
HeLa、H1299、HSC1(癌培養細胞)で、PGAMsiRNAにより、PGAM不活性化を試みた。即ち、HeLa、H1299、HSC1のそれぞれに、PGAMsiRNAをトランスフェクトしたところ、PGAMのmRNAの発現が95%以上抑制された。これらの細胞においては、多くの解糖系酵素のmRNAプロファイルの減少が観察された(
図5)。
【0061】
4.PGAM−TGマウスの皮膚での炎症惹起試験
上述のとおりPGAM−TGマウスの皮膚では、通常状態での解糖系mRNA発現は正常であった。しかしながら、PGAM−TGマウスの皮膚は野生型マウスと比較して、TPA薬剤処理による炎症が起こりやすいことがわかった。即ち、PGAM−TGマウスの耳を10ngのTPA(12−O−テトラデカノイルホルボール−13−アセテート)で処理し、その後8時間に渡って耳の状態を観察したところ、より厚く、赤みを帯びた変化を示した(
図6)。また、耳部肥厚の程度を定圧厚み測定器により計測したところ、
図6に示すとおり、PGAM−TGマウスでは野生型マウスと比較して、耳部肥厚の程度が顕著であることがわかった。
【0062】
5.PGAM−TGマウスの皮膚での悪性腫瘍惹起試験
PGAM−TGマウス及び野生型マウスの皮膚に、次のような化学発癌実験を行った。即ち、各マウスの皮膚に100μgのDMBA(7,12−ジメチルベンズ(a)アントラセン)を塗布し、その後TPA12.5μgを週2回、合計20週間繰り返し塗布した。その結果、この処理によって出現した腫瘍の総数はPGAM−TGマウスが野生型マウスよりわずかに多い程度であったが、腫瘍のサイズは、PGAM−TGマウスの方が著しく大きかった(
図7)。また、野生型マウスでは形成された皮膚腫瘍はすべて良性の乳頭腫であったが、PGAM−TGマウスでは大きな腫瘍(6mm)が出現し、全体の約10%は病理的に悪性の診断を受けた(表2)。さらに形成した腫瘍において、解糖系mRNAを比較したところ、TGマウスでより優位な亢進が観察された。結論として、PGAM−TGマウスは皮膚がんになりやすく、そのとき解糖系mRNA亢進(ワールブルグ効果)が観察された(
図8)。
【0063】
【表2】
【0064】
6.PGAM−TGマウスにおける癌抑制遺伝子p53のリン酸化
PGAM−TGマウスでの発癌性の機構を検証するため、がん抑制遺伝子p53に注目した。p53は、ヒト癌で最も欠失の多い(約50%)がん抑制遺伝子であり、転写後修飾(リン酸化やユビキチン化)により制御されている。我々は、PGAM−TG MEF細胞では、恒常活性型変異Ras(Ras−G12V)発現による発癌ストレス存在下で、p53活性化リン酸化の一つであるserine23のリン酸化が低下していることを見出した(
図9)。次にserine23のリン酸化は、Chk1キナーゼにより担われているので、Chk1キナーゼのプロファイルを検証した。その結果、PGAM−TG MEF細胞では、Chk1キナーゼの蛋白量や活性化リン酸化に変化はなかったが、PGAMとChk1が細胞内結合することを見出した(
図10)。
【0065】
7.PGAMとChk1の結合
PGAMとChk1が細胞内結合することの解糖系代謝への影響を検証した。Chk1不活性化(siRNAや阻害剤UCN01処理)により、PGAM不活性化同様、解糖系mRNAが低下することが確認された(
図11A)。一方Chk1活性化により、野生型細胞では解糖系mRNAは正常だったが、PGAM−TG細胞では解糖系mRNAの亢進を観察した(
図11B)。以上より、PGAMとChk1が協調的に解糖系を制御することがわかった。
【0066】
8.PGAMとChk1による協調的解糖系制御への酵素活性の寄与
PGAMとChk1による協調的解糖系制御の分子機構を解明するための実験を行った。まずPGAMがプロテインフォスファターゼとして機能する可能性を検証したところ、試験管内反応では否定的な結果となった(
図12)。
図12には、アッセイに利用したリン酸化ペプチドを示した。プロテインフォスファターゼの陽性対照としては、λPPaseを使用した。具体的には、上記リン酸化ペプチドをPGAMリコンビナント蛋白又はλPPaseと反応させ、リン酸化ペプチドから解離するリン酸を測定した。
図12に示すとおり、PGAMリコンビナント蛋白にはフォスファターゼ活性は認められなかった。
【0067】
次にPGAMの解糖系代謝酵素活性の関与を疑い、PGAM−R90W変異TGマウスを作成した。PGAM−R90W変異は、すでにヒト患者家系でPGAM活性失活の報告のある変異である(Tsujino et al. Muscle Nerve Suppl 1995)。予想に反し、PGAM−R90W変異MEF細胞でも、Chk1発現ベクターの導入によりChk1活性化することで、解糖系亢進が観察された(
図13)。
【0068】
9.PGAMとChk1による協調的解糖系制御への物理的結合の寄与
PGAMとChk1の物理的結合が、解糖系代謝亢進に重要である可能性を検証した。我々は、Chk1と結合するPGAMのN末端側に、ナトリン標的配列(Nicholson et al. Cell Signal 2014)があることに気づいた(
図14)。ナトリンは、p53とMdm2の結合を阻害する化学物質として開発された抗がん剤の一種である。PGAM−FLAGとChk1−myc−hisを発現するMEF細胞にナトリンを処理し、その蛋白質抽出液からNi−NTAビーズによりChk1−myc−hisを回収し、結合しているPGAM−FLAGの量を検討したところ、ナトリン処理により、PGAMとChk1の結合が阻害されることを観察した(
図15)。同時に、ナトリン処理により、癌細胞H1299において、解糖系mRNA発現が顕著に低下することが確認された(
図16)。以上より、PGAMとChk1による協調的解糖系亢進には、PGAMのフォスフォターゼ活性や解糖系代謝酵素活性は関与せず、物理的結合が重要という結論を得た。また、本発明のスクリーニング方法を用いることにより、解糖系代謝を特異的に制御できる解糖系代謝制御物質としてナトリンを見出すことができた。
【0069】
10.PGAMとChk1との結合を指標とする解糖系代謝制御物質のスクリーニング
PGAMとChk1との結合を指標とするスクリーニングを、Nanobitシステムを用いた以下の方法により行う。NanobitではPGAMとChk1にそれぞれルシフェラーゼをベースに作成された発光蛋白質の大サブユニットと小サブユニットをそれぞれタグとして取り付ける。それぞれのサブユニットはそれ自体発光しないが、PGAMとChk1の結合により大サブユニットと小サブユニットが会合し完全な発光蛋白となることで発光シグナルを発する。このときナトリンのようなPGAMとChk1の結合を阻害する物質の存在下では発光シグナルが低下する。よってこの発光シグナルの減少を指標として、薬剤ライブラリーの中からPGAMとChk1との結合を阻害する化合物のスクリーニングを行うことが可能である。また、この発光シグナルを増強する化合物、即ちPGAMとChk1との結合を促進する化合物のスクリーニングも可能である。
【0070】
また、PGAMとChk1との結合を指標とするスクリーニングを、PGAM−FLAGとChk1−myc−hisを発現する培養細胞の蛋白質抽出液からNi−NTAビーズによってChk1−myc−hisを回収し、結合しているPGAM−FLAGの量をウエスタンブロットで評価する方法により行う。培養中の細胞に対して候補化合物を処理することで、Chk1−myc−hisに結合するPGAM−FLAGの量の減少又は増加を指標とした結合制御化合物のスクリーニングが可能である。