特許第6854524号(P6854524)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6854524
(24)【登録日】2021年3月18日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】消泡剤
(51)【国際特許分類】
   B01D 19/04 20060101AFI20210329BHJP
   C08G 65/48 20060101ALI20210329BHJP
【FI】
   B01D19/04 B
   B01D19/04 A
   C08G65/48
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-93126(P2018-93126)
(22)【出願日】2018年5月14日
(65)【公開番号】特開2019-198807(P2019-198807A)
(43)【公開日】2019年11月21日
【審査請求日】2019年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106438
【氏名又は名称】サンノプコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112438
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 健一
(72)【発明者】
【氏名】澤熊 耕平
(72)【発明者】
【氏名】安藤 毅
【審査官】 宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−174002(JP,A)
【文献】 特開2016−016368(JP,A)
【文献】 特開2013−128887(JP,A)
【文献】 特開2011−101849(JP,A)
【文献】 米国特許第05425894(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 19/00−19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価アルコールのエチレンオキシド及びアルキルグリシジルエーテルの付加体(A)とポリオキシアルキレングリコール(B)とを含有してなり、

多価アルコールのエチレンオキシド及びアルキルグリシジルエーテルの付加体(A)において、エチレンオキシドの付加モル数が多価アルコール1モル当たり1〜4であり、
アルキルグリシジルエーテルの付加モル数が多価アルコールの水酸基の個数をnとしたとき多価アルコール1モル当たり(n−2)〜nであり、
アルキルグリシジルエーテルのアルキル基が炭素数3〜30の分岐鎖アルキル基であって、

ポリオキシアルキレングリコール(B)がポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレングリコールであって、

多価アルコールのエチレンオキシド及びアルキルグリシジルエーテルの付加体(A)とポリオキシアルキレングリコール(B)との重量に基づいて、多価アルコールのエチレンオキシド及びアルキルグリシジルエーテルの付加体(A)の含有量が5〜20重量%、ポリオキシアルキレングリコール(B)の含有量が80〜95重量%であることを特徴とする消泡剤。
【請求項2】
さらに、粘度100〜1000mm/s(25℃)、HLB0〜4の側鎖型ポリエーテル変性シリコーンオイル(C)を含む請求項に記載の消泡剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消泡剤に関する。
【背景技術】
【0002】
「水系コーティング材に添加されて使用される消泡剤であって、水系コーティング材の優れた消泡性を有し、水系コーティング材を塗装して形成された被膜が晴雨に曝されても雨筋跡防汚性と光沢性とを損なわない消泡剤を提供すること」を目的として、「ポリアルキレン変性オルガノポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、ジメチル変性オルガノポリシロキサン、フルオロ変性オルガノポリシロキサンから選ばれる少なくとも一種類のオルガノポリシロキサン化合物と、カオリナイト、ハロサイト、モンモリロナイトから選ばれる少なくとも一種類の粘土鉱物とが含まれていることを特徴とする水系コーティング材用消泡剤」が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−170005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載された消泡剤を塗膜にグロスを求める水系塗料に適用すると、塗膜外観(グロス、雨筋跡)を大きく損なう場合があるという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、消泡性及び塗膜外観(グロス、雨筋跡)に優れた消泡剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明に達した。すなわち、本発明の消泡剤の特徴は、多価アルコールのエチレンオキシド及びアルキルグリシジルエーテルの付加体(A)とポリオキシアルキレングリコール(B)とを含有してなり、
多価アルコールのエチレンオキシド及びアルキルグリシジルエーテルの付加体(A)において、エチレンオキシドの付加モル数が多価アルコール1モル当たり1〜4であり、
アルキルグリシジルエーテルの付加モル数が多価アルコールの水酸基の個数をnとしたとき多価アルコール1モル当たり(n−2)〜nであり、
アルキルグリシジルエーテルのアルキル基が炭素数3〜30の分岐鎖アルキル基であって、
ポリオキシアルキレングリコール(B)がポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレングリコールであって、
多価アルコールのエチレンオキシド及びアルキルグリシジルエーテルの付加体(A)とポリオキシアルキレングリコール(B)との重量に基づいて、多価アルコールのエチレンオキシド及びアルキルグリシジルエーテルの付加体(A)の含有量が5〜20重量%、ポリオキシアルキレングリコール(B)の含有量が80〜95重量%であることを特徴とする消泡剤である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の消泡剤は、優れた消泡性を発揮し、優れた塗膜外観(グロス、雨筋跡)を容易に形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<多価アルコールのエチレンオキシド及びアルキルグリシジルエーテルの付加体(A)>
多価アルコールとしては、炭素数3〜10の多価アルコール(2〜6価アルコールが好ましく、さらに好ましくは3〜4価アルコール)が含まれ、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリストール、ジグリセリン、ジペンタエリストール及びソルビトール等が挙げられる。これらのうち、消泡性及び塗膜外観(グロス、雨筋跡)の観点から、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリストール及びジペンタエリストールが好ましく、さらに好ましくはグリセリン、トリメチロールエタン及びトリメチロールプロパンである。
【0009】
アルキルグリシジルエーテルのアルキル基としては、炭素数1〜30の直鎖アルキル及び炭素数3〜30の分岐鎖アルキルが含まれる。
【0010】
直鎖アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル、ヘニコシル、ドコシル、トリコシル、テトラコシル、ヘプタコシル、ヘキサキシル、ヘプタコシル、オクタコシル、ノナコシル及びトリアコンシル等が挙げられる。
【0011】
分岐鎖アルキル基としては、イソプロピル、イソブチル、t−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、イソヘキシル、2−エチルヘキシル、イソトリデシル、イソテトラデシル、イソオクタデシル、イソトリアコンシル、2−エチルヘキシル、2−プロピルヘプチル、2−ブチルオクチル、2−ヘキシルデシル、2−オクチルドデシル、2−デシルテトラデシル、2−ドデシルヘキシル、2−ドデシルヘキサデシル、3,5,5−トリメチルヘキシル及び3,7,11−トリメチルドデシル等が挙げられる。
【0012】
これらのアルキル基のうち、消泡性及び塗膜外観(グロス、雨筋跡)の観点から、分岐鎖アルキル基が好ましく、さらに好ましくはt−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、イソヘキシル、2−エチルヘキシル及びイソトリデシルである。
【0013】
アルキルグリシジルエーテルは複数種類付加されていてもよい。
【0014】
アルキルグリシジルエーテルの付加モル数は、多価アルコールの水酸基の個数をnとしたとき、消泡性及び塗膜外観(グロス、雨筋跡)の観点から、多価アルコール1モル当たり、(n−2)〜nが好ましく、さらに好ましくは(n−1)〜nである。すなわち、たとえば多価アルコールがグリセリンの場合、アルキルグリシジルエーテルの付加モル数は、グリセリン1モル当たり、1〜3が好ましく、さらに好ましくは2〜3である。
【0015】
エチレンオキシドの付加モル数は、消泡性及び塗膜外観(グロス、雨筋跡)の観点から、多価アルコール1モル当たり、1〜4が好ましく、さらに好ましくは2〜3である。
【0016】
エチレンオキシド及びアルキルグリシジルエーテルの付加形態は、ブロック状、ランダム状のいずれでもよい。ブロック状の場合、いずれが多価アルコールに結合していてもよいが、エチレンオキシドが多価アルコールに結合していることが好ましい。
【0017】
多価アルコールのエチレンオキシド及びアルキルグリシジルエーテルの付加体(A)は、公知の化学反応により容易に調製できる。
【0018】
ポリオキシアルキレングリコール(B)としては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロレングリコール(オキシエチレン基及びオキシプロレン基の全モル数に対してオキシエチレン基の含有割合は5〜20モル%が好ましい。また、ブロック状が好ましい。)等が挙げられる。これらのうち、消泡性及び塗膜外観(グロス、雨筋跡)の観点から、ポリオキシプロピレングリコール及びポリオキシエチレン・ポリオキシプロレングリコールが好ましく、さらに好ましくはポリオキシプロピレングリコールである。
【0019】
ポリオキシアルキレングリコール(B)の水酸基価(mgKOH/g)は、20〜135が好ましく、さらに好ましくは37〜119である。この範囲であると、消泡性及び塗膜外観(グロス、雨筋跡)がさらに良好となる。
【0020】
なお、水酸基価は、JIS K0070−1992の「7.1中和滴定法」(要旨:試料にアセチル化試薬を加え、グリセリン浴中で加熱し、放冷後、指示薬として、フェノールフタレイン溶液を加え、水酸化カリウムエタノール溶液で滴定して水酸基価を求める。)に準拠して測定される。
【0021】
ポリオキシアルキレングリコール(B)は、公知のアルキレンオキシド付加反応により容易に調製でき、市場からも容易に入手できる。商品名としては、サンニックスPPシリーズ(PP−1200、PP−2000及びPP−3000等、三洋化成工業株式会社、「サンニックス」は同社の登録商標である。)、ニューポールPEシリーズ(PE−61及びPE−62等、三洋化成工業株式会社、「ニューポール」は同社の登録商標である。)及びユニオールDシリーズ(D−1200及びD−2000等、日油株式会社、「ユニオール」は同社の登録商標である。)等が挙げられる。
【0022】
多価アルコールのエチレンオキシド及びアルキルグリシジルエーテルの付加体(A)の含有量(重量%)は、多価アルコールのエチレンオキシド及びアルキルグリシジルエーテルの付加体(A)とポリオキシアルキレングリコール(B)との重量に基づいて、5〜20が好ましく、さらに好ましくは10〜15である。この範囲であると、消泡性及び塗膜外観(グロス、雨筋跡)がさらに良好となる。
【0023】
ポリオキシアルキレングリコール(B)の含有量(重量%)は、多価アルコールのエチレンオキシド及びアルキルグリシジルエーテルの付加体(A)とポリオキシアルキレングリコール(B)との重量に基づいて、80〜95が好ましく、さらに好ましくは85〜90である。この範囲であると、消泡性及び塗膜外観(グロス、雨筋跡)がさらに良好となる。
【0024】
本発明の消泡剤には、側鎖型ポリエーテル変性シリコーンオイル(C)を含むことが好ましい。
側鎖型ポリエーテル変性シリコーンオイル(C)としては、粘度100〜1000mm/s(25℃)、HLB0〜4が使用できる。
【0025】
HLBとは、分子中の親水基と疎水基とのバランスを表す概念であり、ポリエーテル変性ポリシロキサンのHLBの値は「界面活性剤の性質と応用」(著者 刈米孝夫、発行所 株式会社幸書房、昭和55年9月1日発行)の第89頁〜第90頁に記載された「乳化試験によるHLBの測定法」を用いて、以下の様に算出できる。
【0026】
<ポリエーテル変性シリコーンオイルの乳化試験によるHLBの測定法>
HLBが未知のポリエーテル変性シリコーンオイル(X)とHLBが既知の乳化剤(Y)とを異なった比率で混合し、HLBが既知の油剤(Z)の乳化を行う。乳化層の厚みが最大となったときの混合比率から下記式を用いてポリエーテル変性ポリシロキサン(X)のHLBを算出する。
【0027】

HLB={(HLB)×(W+W)−(W×HLB)}÷W
【0028】
はポリエーテル変性シリコーンオイル(X)と乳化剤(Y)の合計重量に基づく乳化剤(Y)の重量分率、Wはポリエーテル変性シリコーンオイル(X)と乳化剤(Y)の合計重量に基づくポリエーテル変性シリコーンオイル(X)の重量分率、HLBは乳化剤(Y)のHLB、HLBは油剤(Z)のHLB、HLBはポリエーテル変性シリコーンオイル(X)のHLBである。
【0029】
側鎖型ポリエーテル変性シリコーンオイルとして、市場から入手できる商品名としては、SILFOAM SCシリーズ(SC−370、SC−385等、旭化成ワッカーシリコーン株式会社)、KFシリーズ(KF−945、KF−6020等、信越化学工業株式会社)及びFSアンチフォームシリーズ(FSアンチフォーム83、FSアンチフォームCF−1122等、東レ・ダウコーニング株式会社)等が挙げられる。
【0030】
側鎖型ポリエーテル変性シリコーンオイル(C)を含有する場合、側鎖型ポリエーテル変性シリコーンオイル(C)(重量%)は、多価アルコールのエチレンオキシド及びアルキルグリシジルエーテルの付加体(A)とポリオキシアルキレングリコール(B)との重量に基づいて、4〜22が好ましく、さらに好ましくは6〜20、特に好ましくは8〜18である。この範囲であると、消泡性及び塗膜外観(グロス、雨筋跡)がさらに良好となる。
【0031】
本発明の消泡剤は、多価アルコールのエチレンオキシド及びアルキルグリシジルエーテルの付加体(A)とポリオキシアルキレングリコール(B)と必要により側鎖型ポリエーテル変性シリコーンオイル(C)を含有していれば、製造方法に制限はなく、公知の混合方法等が適用できる。
【0032】
本発明の消泡剤は、各種発泡液体に適用できるが、水性発泡液に対して効果的である。さらに、化学工業用消泡剤、石油工業用消泡剤、土木建築用消泡剤、インキ用消泡剤、塗料(水性塗料等)用消泡剤及び各種製造工程(水溶性高分子溶解工程、顔料分散工程、抄紙工程、紙塗料塗布工程、発酵工程、培養工程、排水処理工程、モノマーストリッピング工程及びポリマー重合工程等)用消泡剤等として好ましく使用できる。これらのうち、インキ用消泡剤及び塗料(水性塗料等)用消泡剤として好適である。
【0033】
消泡剤の添加量(重量%)は、発泡状態、温度、粘度等に応じて適宜設定されるが、発泡液体の重量に基づいて、0.001〜10が好ましく、さらに好ましくは0.005〜3である。
【実施例】
【0034】
以下、特記しない限り、「部」は重量部を意味する。
<実施例1>
グリセリンのエチレンオキシド3モル付加体{ブラウノンGL−3、青木油脂株式会社}227部(1モル部)、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル{エピオールEH−N、日油株式会社、「エピオール」は同社の登録商標である。}373部(2モル部)及び三フッ化ホウ素{高千穂化学株式会社}2.3部を均一混合してから、70℃でエポキシ残量が0.2モル%以下になるまで反応させて、多価アルコールのエチレンオキシド及びアルキルグリシジルエーテルの付加体(A1)を得た。
【0035】
エポキシ残量(モル%)は、JIS K7236:2001「エポキシ樹脂のエポキシ当量の求め方」に準拠して、反応開始前の反応液のエポキシ当量(a1:g/eq.)と、反応モニター中の反応液のエポキシ当量(a2:g/eq.)とを測定し、次式から算出した。
(エポキシ残量)={1/(a1)−1/(a2)}×100/{1/(a1)}
【0036】
多価アルコールのエチレンオキシド及びアルキルグリシジルエーテルの付加体(A1)12部、ポリオキシアルキレングリコール(B1){ポリオキシプロピレングリコール、水酸基価56.1mgKOH/g、サンニックスPP−2000、三洋化成工業株式会社、「サンニックス」は同社の登録商標である。}88部及び側鎖型ポリエーテル変性シリコーンオイル(C1){SILFOAM SC−370、旭化成ワッカーシリコーン株式会社、「SILFOAM」はWacker Chemie AGの登録商標である。}18部を均一攪拌して、本発明の消泡剤(DF1)を得た。
【0037】
<実施例2>
トリメチロールプロパンのエチレンオキシド3モル付加体{ブラウノンTMP−3、青木油脂株式会社}269部(1モル部)、t−ブチルグリシジルエーテル{東京化成工業株式会社}390部(3モル部)及び三フッ化ホウ素{高千穂化学株式会社}3.5部を均一混合してから、70℃でエポキシ残量が0.2モル%以下になるまで反応させて、多価アルコールのエチレンオキシド及びアルキルグリシジルエーテルの付加体(A2)を得た。
【0038】
多価アルコールのエチレンオキシド及びアルキルグリシジルエーテルの付加体(A2)15部、ポリオキシアルキレングリコール(B2){ポリオキシプロピレングリコール、水酸基価37.4mgKOH/g、サンニックスPP−3000、三洋化成工業、「サンニックス」は同社の登録商標である。}85部及び側鎖型ポリエーテル変性シリコーンオイル(C1){SILFOAM SC−370、旭化成ワッカーシリコーン株式会社、「SILFOAM」はWacker Chemie AGの登録商標である。}18部を均一攪拌して、本発明の消泡剤(DF2)を得た。
【0039】
<実施例3>
加熱、攪拌、冷却、滴下、窒素による加圧及び真空ポンプによる減圧の可能な耐圧反応容器にトリメチロールエタン{三菱化学ガス株式会社}120部(1モル部)及び水酸化カリウム{試薬特級、和光純薬工業株式会社、使用量は水分を除いた純分換算量で表示した。}3部を加えて、120℃にて減圧下にて脱水した。次いで減圧のまま100℃にて、エチレンオキシド132部(3モル部)を2時間かけて滴下し、さらに120℃にて3時間攪拌を続けた。次いで80℃にて脱イオン水30部を加えた後、無機吸着材{キョーワード700、協和化学工業株式会社、「キョーワード」は同社の登録商標である。}60部を加え、同温度にて2時間攪拌した。次いで同温度にてNo.2濾紙{東洋濾紙株式会社、保留粒子径:5μm}を用いて濾過して無機吸着材を取り除き、さらに減圧下120℃にて1時間脱水し、トリメチロールエタン3モル付加体を得た。
【0040】
トリメチロールエタン3モル付加体252部(1モル部)、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル{エピオールEH−N、日油株式会社、「エピオール」は同社の登録商標である。}559部(3モル部)及び三フッ化ホウ素{高千穂化学株式会社}3.5部を均一混合してから、70℃でエポキシ残量が0.2モル%以下になるまで反応させて、多価アルコールのエチレンオキシド及びアルキルグリシジルエーテルの付加体(A3)を得た。
【0041】
多価アルコールのエチレンオキシド及びアルキルグリシジルエーテルの付加体(A3)10部、ポリオキシアルキレングリコール(B3){ポリオキシプロピレングリコール、水酸基価118.1mgKOH/g、サンニックスPP−950、三洋化成工業、「サンニックス」は同社の登録商標である。}90部及び側鎖型ポリエーテル変性シリコーンオイル(C2){FSアンチフォーム83、東レ・ダウコーニング株式会社}8部を均一攪拌して、本発明の消泡剤(DF3)を得た。
【0042】
<実施例4>
加熱、攪拌、冷却、滴下、窒素による加圧及び真空ポンプによる減圧の可能な耐圧反応容器にトリメチロールエタン{三菱化学ガス株式会社}120部(1モル部)及び水酸化カリウム{試薬特級、和光純薬工業株式会社、使用量は水分を除いた純分換算量で表示した。}3部を加えて、120℃にて減圧下にて脱水した。次いで減圧のまま100℃にて、エチレンオキシド88部(2モル部)を2時間かけて滴下し、さらに120℃にて3時間攪拌を続けた。次いで80℃にて脱イオン水30部を加えた後、無機吸着材{キョーワード700、協和化学工業株式会社、「キョーワード」は同社の登録商標である。}60部を加え、同温度にて2時間攪拌した。次いで同温度にてNo.2濾紙{東洋濾紙株式会社、保留粒子径:5μm}を用いて濾過して無機吸着材を取り除き、さらに減圧下120℃にて1時間脱水し、トリメチロールエタンのエチレンオキシド2モル付加体を得た。
【0043】
トリメチロールエタンのエチレンオキシド2モル付加体208部(1モル部)、t−ブチルグリシジルエーテル{東京化成工業株式会社}390部(3モル部)及び三フッ化ホウ素{高千穂化学株式会社}3.5部を均一混合してから、70℃でエポキシ残量が0.2モル%以下になるまで反応させて、多価アルコールのエチレンオキシド及びアルキルグリシジルエーテルの付加体(A4)を得た。
【0044】
多価アルコールのエチレンオキシド及びアルキルグリシジルエーテルの付加体(A4)14部、ポリオキシアルキレングリコール(B1){ポリオキシプロピレングリコール、水酸基価56.1mgKOH/g、サンニックスPP−2000、三洋化成工業株式会社、「サンニックス」は同社の登録商標である。}86部及び側鎖型ポリエーテル変性シリコーンオイル(C2){FSアンチフォーム83、東レ・ダウコーニング株式会社}12部を均一攪拌して、本発明の消泡剤(DF4)を得た。
【0045】
<実施例5>
加熱、攪拌、冷却、滴下、窒素による加圧及び真空ポンプによる減圧の可能な耐圧反応容器にグリセリン{ミヨシ油脂株式会社}92部(1モル部)及び水酸化カリウム{試薬特級、和光純薬工業株式会社、使用量は水分を除いた純分換算量で表示した。}3部を加えて、120℃にて減圧下にて脱水した。次いで減圧のまま100℃にて、エチレンオキシド88部(2モル部)を2時間かけて滴下し、さらに120℃にて3時間攪拌を続けた。次いで80℃にて脱イオン水30部を加えた後、無機吸着材{キョーワード700、協和化学工業株式会社、「キョーワード」は同社の登録商標である。}60部を加え、同温度にて2時間攪拌した。次いで同温度にてNo.2濾紙{東洋濾紙株式会社、保留粒子径:5μm}を用いて濾過して無機吸着材を取り除き、さらに減圧下120℃にて1時間脱水し、グリセリンのエチレンオキシド2モル付加体を得た。
【0046】
グリセリンのエチレンオキシド2モル付加体180部(1モル部)、t−ブチルグリシジルエーテル{東京化成工業株式会社}260部(2モル部)及び三フッ化ホウ素{高千穂化学株式会社}3.2部を均一混合してから、70℃でエポキシ残量が0.2モル%以下になるまで反応させて、多価アルコールのエチレンオキシド及びアルキルグリシジルエーテルの付加体(A5)を得た。
【0047】
多価アルコールのエチレンオキシド及びアルキルグリシジルエーテルの付加体(A5)12.5部、ポリオキシアルキレングリコール(B4){ポリオキシプロピレングリコール、水酸基価93.5mgKOH/g、ユニオールD−1200、日油株式会社、「ユニオール」は同社の登録商標である。}87.5部及び側鎖型ポリエーテル変性シリコーンオイル(C1){SILFOAM SC−370、旭化成ワッカーシリコーン株式会社、「SILFOAM」はWacker Chemie AGの登録商標である。}16部を均一攪拌して、本発明の消泡剤(DF5)を得た。
【0048】
<実施例6>
多価アルコールのエチレンオキシド及びアルキルグリシジルエーテルの付加体(A3)10部及びポリオキシアルキレングリコール(B1){ポリオキシプロピレングリコール、水酸基価56.1mgKOH/g、サンニックスPP−2000三洋化成工業、「サンニックス」は同社の登録商標である。}90部を均一攪拌して、本発明の消泡剤(DF6)を得た。
【0049】
<実施例7>
多価アルコールのエチレンオキシド及びアルキルグリシジルエーテルの付加体(A1)15部及びポリオキシアルキレングリコール(B3){ポリオキシプロピレングリコール、水酸基価118.1mgKOH/g、サンニックスPP−950、三洋化成工業、「サンニックス」は同社の登録商標である。}85部を均一攪拌して、本発明の消泡剤(DF7)を得た。
【0050】
<比較例1>
特許文献1に記載された実施例3に準拠して比較用の消泡剤(HDF1)を調製した。
なお、「TSF410(東芝シリコーン社製の商品名)」はモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社(旧・GE東芝シリコーン株式会社)から入手した。
【0051】
<評価>
実施例1〜7及び比較例1で得た本発明の消泡剤(DF1)〜(DF7)及び比較用消泡剤(HDF1)を用いて、以下のようにしてエマルション塗料を調製し、消泡性及び塗膜外観(グロス、雨筋跡)を評価した。
【0052】
(エマルションベース塗料の調製)
表1に記載した原料組成にて、円盤型羽根を装着した卓上サンドミル(カンペ家庭塗料株式会社、カンペサンドミル)でグラインディングし、ついでアンカー型羽根を装着した撹拌機(東京理化器械株式会社、MAZELLA ZZ−1100)でレットダウンして、エマルションベース塗料を調製した。
【0053】
【表1】
【0054】
注1:分散剤(サンノプコ株式会社、「ノプコール」は同社の登録商標である。)
注2:増粘剤(ダイセルファインケム株式会社)
注3:湿潤剤(サンノプコ株式会社)
注4:湿潤剤(サンノプコ株式会社)
注5:硫酸バリウム(堺化学工業株式会社、「バリエース」は堺化学工業株式会社の登録商標である。)
注6:二酸化チタン(石原産業株式会社、「タイペーク」は同社の登録商標である。)
注7:アクリルエマルション(BASF社、「ACRONAL」は、ビ−エ−エスエフ ソシエタス・ヨーロピアの登録商標である。)
注8:造膜調整剤(イーストマンケミカル社、「テキサノール」は吉村油化学株式会社の登録商標である。)
【0055】
(エマルション塗料の調製)
エマルションベース塗料99.7部及び消泡剤(DF1)〜(DF7)及び比較用消泡剤(HDF1)のいずれかを0.3部をコーレス型羽根を装着したエクセルオートホモジナイザー(日本精器株式会社、モデルED)にて25℃、3000rpm、5分間攪拌混合してエマルション塗料を得た。
また、消泡剤を加えないこと以外、上記と同様にして、ブランク用エマルション塗料を得た。
【0056】
(消泡性)
エマルション塗料100部及び水10部を混合して、各評価用エマルション塗料を得た後、中毛ウールローラー(大塚刷毛製造株式会社)を用いてブリキ板上に30cm角でローラー塗装し、初期消泡性と消泡速度を評価し、その結果を表2に記載した。
初期消泡性は肉眼で確認できる塗布直後の泡の数で評価し、数が少ない方が初期消泡性が優れることを意味する。また、消泡速度は泡が観察出来なくなるまでの時間で評価し、その値が小さい方が消泡速度が速く、消泡性に優れることを意味する。
【0057】
(塗膜外観1)光沢性
JIS K5960:2003 家庭用屋内壁塗料の附属書2(規定)アプリケーター塗装に準じた隙間150μmのアプリケーターを用いて評価用エマルション塗料をガラス板に塗布し、屋内(25℃)で1日乾燥後の塗膜について60°グロス及び20°グロスをISO2813:1994に準拠した光沢計(株式会社村上色彩技術研究所、DM26D)にてそれぞれ3個所測定して平均値を算出した。ブランクの評価用エマルション塗料の平均光沢値に対する各評価用エマルション塗料の平均光沢値の割合(百分率:評価用エマルション塗料の平均光沢値/ブランクの評価用エマルション塗料の平均光沢値×100)を算出し、光沢性として表2に示した。光沢性が100に近い程、光沢の低下が小さく良好であることを意味する。
【0058】
(塗膜外観2)雨筋跡
JIS K5960:2003 家庭用屋内壁塗料の附属書2(規定)アプリケーター塗装に準じた隙間150μmのアプリケーターを用いて評価用エマルション塗料をステンレス鋼板(10×30cm)に塗装し、屋内(25℃)で一日乾燥して試験用塗装片とした。愛知県東海市の地上高3mの屋外暴露台に塗装面を水平面に対して45度になるようにし、かつ塗装面が真北を向くようにして試験用塗装片を設置し、平成29年12月上旬から平成30年3月下旬までの約4ケ月間暴露した。そして、試験用塗装片の表面から直線で30cmの距離から、塗装片表面の雨筋跡を目視で確認し、以下の基準で表2に示した。また付着したゴミ、汚れ等を湿した木綿ウエスにてかるくこすり落とした後、白色度(L2)を測定した。ついで、予め測定した暴露前の試験用塗装片の白色度(L1)から白色度(L2)を差し引いた値(ΔL)を表2に示した。ΔLは小さいほど耐汚染性(雨筋跡)が良好でがあることを示す。白色度の測定試験機は日本電色工業株式会社製のSPECTRO COLOR METERMODEL PF−10を用いた。
【0059】
<基準>
○:雨筋跡が確認できない
×:雨筋跡が確認できる
【0060】
【表2】
【0061】
表2の結果から明らかのように、本発明の消泡剤(DF1)〜(DF7)は比較用消泡剤(HDF1)に比較して消泡性、塗膜外観(光沢性、雨筋跡)に優れていた。