(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の動物侵入防止柵やその施工方法の好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。
図1は、本発明の動物侵入防止柵10を施工した状態を示した図である。
図2は、
図1の動物侵入防止柵10のうち1組の第一パネル11と第二パネル12とを抜き出して示した図である。
図3は、
図1の動物侵入防止柵10を第一パネル11及び第二パネル12に垂直な平面で切断した状態を示した断面図である。
図4は、第一パネル11をそれに垂直な方向から見た状態を示した図である。
図5は、第二パネル12をそれに垂直な方向から見た状態を示した図である。
【0020】
図1〜3では、説明の便宜上、x軸とy軸とz軸とを示している。x軸、y軸及びz軸のそれぞれの向きは、
図1〜3で共通している。また、
図1等では、動物60の侵入を防止する区画50(動物侵入防止区画)として畑を図示しているが、動物侵入防止区画50は、畑に限定されず、庭や道路等とすることもできる。また、
図1等では、動物侵入防止区画50への侵入を防止する動物60として猪を図示しているが、動物60は、猪に限定されず、鹿や猿等の他の動物とすることもできる。
【0021】
本発明の動物侵入防止柵10は、
図1に示すように、互いに別体(別部材)からなる第一パネル11と第二パネル12とで構成される。第一パネル11は、動物侵入防止区画50の境界線51に沿った地面G上に立設される。第一パネル11は、開口部等を有さない連続面状を為す部材であってもよいが、本実施態様においては、網状の板材を第一パネル11として用いている。この第一パネル11は、動物60による動物侵入防止区画50への侵入を困難にする障壁としての機能を発揮する部分となっている。
【0022】
一方、第二パネル12は、第一パネル11における境界線51よりも手前側(
図1におけるy軸方向負側)で上り傾斜で配置される網状の板材となっている。第二パネル12は、その手前側の縁部が地面Gの付近となり、その奥側の奥側の縁部が地面Gから浮いた状態に傾斜配置される。この第二パネル12は、動物侵入防止区画50へ侵入しようと第一パネル11に近づいてきた動物60の足元に違和感を与える機能を発揮する部分となっている。
【0023】
すなわち、動物侵入防止区画50への侵入を試みる動物60は、第一パネル11を突破するため(第一パネル11を乗り越えたり、第一パネル11を破壊したり、第一パネル11の下側を掘り返したりするため)に、第一パネル11の手前側(y軸方向負側)から第一パネル11に近づいてくる。しかし、第一パネル11の手前側には、第二パネル12が傾斜配置されている。このため、第一パネル11に近づいてきた動物60は、第二パネル12を踏んで、その足元が第二パネル12の網の目に嵌まるか、又は、第二パネル12を形成する網線材が動物60の足裏に食い込むようになる。したがって、その動物60は、足元に違和感を覚える。
【0024】
猪等の動物60は、足元に違和感を生ずることを極端に嫌う習性を有している。この点、上記のように、第二パネル12によって、第一パネル11に近づいてきた動物60の足元に違和感を与えることで、その動物60が第一パネル11にそれ以上近づかないようにすることが可能になる。換言すると、第一パネル11に近づこうとする動物60のその意欲を喪失させ、その動物60の動物侵入防止区画50への侵入を防止することが可能となっている。
【0025】
第二パネル12の傾斜角度θ(
図3)は、特に限定されない。しかし、第二パネル12の傾斜角度θを小さくしすぎると、第二パネル12が地面Gに置かれたような状態となり、動物60(
図1)が第二パネル12を踏んでも足元に違和感を生じにくくなる虞がある。このため、第二パネル12の傾斜角度θは、通常、1°以上とされる。第二パネル12の傾斜角度θは、2°以上とすることが好ましく、3°以上とすることがより好ましい。
【0026】
一方、第二パネル12の傾斜角度θ(
図3)を大きくしすぎると、動物60(
図1)が第二パネル12を踏みにくくなる。加えて、動物60(
図1)が第一パネル11だけでなく第二パネル12も障壁として捉え、第二パネル12に体当たり等の攻撃を加えるようになる虞もある。このため、第二パネル12の傾斜角度θは、通常、30°以下とされる。第二パネル12の傾斜角度θは、20°以下とすることが好ましく、10°以下とすることがより好ましい。本実施態様において、第二パネル12の傾斜角度θは、約4〜5°となっている。
【0027】
既に述べたように、第二パネル12における手前側(y軸方向負側)の縁部の地面Gからの高さは、0〜5cmの範囲とし、第二パネル12における奥側(y軸方向正側)の縁部の地面Gからの高さは、10〜100cmの範囲とすることが好ましい。本実施態様において、第二パネル12の手前側の縁部は、地面Gに接触するようにしており、第二パネル12の手前側の縁部の地面Gからの高さは略0cmとなっている。このため、猪等の動物60(
図1)が第二パネル12の手前側の縁部と地面Gとの間に鼻先等を挿し込みにくくなっている。一方、第二パネル12の奥側の縁部の地面Gからの高さは約20cmとなっている。
【0028】
第一パネル11と第二パネル12は、別体からなるところ、本発明の動物侵入防止柵10は、主に、第一パネル11を地面Gに立設した後、その第一パネル11に第二パネル12を傾斜状態で支持させるという手順を経て施工することを想定したものとなっている。第二パネル12の奥側の縁部は、第一パネル11に対してボルト等で固定する構造を採用してもよい。しかし、この場合には、その作業に手間を要するだけでなく、第二パネル12が第一パネル11に一体化された状態となって、第二パネル12に加えられた力が第一パネル11に伝わりやすくなり、第一パネル11が第二パネル12ごとひっくり返されてしまうといった事態が生じる虞がある。このため、第二パネル12の奥側の縁部は、第一パネル11に対して着脱可能な状態で支持することが好ましい。
【0029】
本実施態様においては、
図4に示すように、第一パネル11を、複数本の縦方向の網線材11aと、複数本の横方向の網線材11bとからなる網状の板材によって形成したところ、
図5に示すように、第二パネル12の奥側の縁部に掛止部12cを設けるとともに、
図3に示すように、第二パネル12の掛止部12cを第一パネル11の横方向の網線材11bに掛止することで、第二パネル12の奥側の縁部を第一パネル11に支持させるようにしている。このため、掛止部12cを網線材11bに掛止させるという簡単な作業で、第二パネル12を傾斜配置することが可能となっている。また、掛止部12cを掛止させる第一パネル11の網の目(横方向の網線材11b)を切り替えることによって、第二パネル12の傾斜角度θを調節することも可能となっている。さらに、第二パネル12に加えられた力を掛止部12cの周辺で逃し、第一パネル11に伝わりにくくすることも可能となっている。
【0030】
第一パネル11は、既に述べたように、地面Gに対して立設される。本実施態様においては、
図4に示すように、第一パネル11の下縁部に、突出部11dを設けており、この突出部11dを地中に埋め込むことで、第一パネル11の下側に隙間ができない状態で第一パネル11を立設することができるようにしている。本発明の動物侵入防止柵10において、第一パネル11は、障壁としての機能を有する部分であるところ、実際には、第二パネル12によって動物60(
図1)は第一パネル11に近づくことができないため、第一パネル11には、従来の動物侵入防止柵ほどの耐久性は要求されない。このため、第一パネル11は、突出部11dを地中に埋め込む等、それ自体で地面Gに立設するようにしてもよいが、第一パネル11の設置安定性が悪くなる等の問題が生ずる虞がある。
【0031】
このため、本実施態様においては、
図1及び
図2に示すように、第一パネル11を支えるための支持フレーム20を所定間隔で設け、第一パネル11の設置安定性を高めている。左右に隣り合う第一パネル11は、図示省略の連結手段(結束バンド等)で互いに連結された構造とすると、隣り合う第一パネル11の一体性を高めて、第一パネル11の設置安定性や耐久性を高めることができる。さらに、本実施態様においては、
図2に示すように、第一パネル11の下縁部にアンカー30aを所定間隔ごとに打ち込み、第一パネル11の下縁部を地面Gに固定している。このため、第一パネル11が地面Gから浮き上がらないようにすることが可能となっている。
【0032】
第一パネル11を固定するアンカー30aは、特に限定されず、単純な形態のもの(例えば、テントの設置に用いられるペグであって、直線状の棒材の上端部を「C」字状に折り曲げたもの等)であってもよい。しかし、アンカー30aを単純な形態のものとすると、アンカー30aが地面Gから抜ける虞がある。このため、本実施態様においては、アンカー30aとして、
図6に示すような、地面Gに打ち込むと簡単には抜けない構造を有する特殊なアンカー30を使用している。
図6は、第一パネル11等の固定に用いるアンカー30の一例を示した図である。
【0033】
図6に示すアンカー30は、アンカー本体31と、アンカー別体32とで構成されている。アンカー本体31は、アンカー別体32を挿入するための別体挿入部31aと、アンカー本体31の下部における左右両側から回動により突出可能に設けられた可動片部31bと、第一パネル11等の固定対象物を保持するための対象物保持部31cとを備えている。一方、アンカー別体32は、その下部の左右にラチェット部32aが設けられている。アンカー本体31の内部には、このラチェット部32aに噛み合うための左右一対の歯車部(図示省略)が設けられている。この歯車部は、可動片部31bに連結されており、この歯車部が回転すると、可動片部31bが矢印Aの向きに回動して突出するようになっている。
【0034】
このアンカー30は、以下の手順1,2で第一パネル11等の固定対象物を地面Gに固定するものとなっている。
[手順1]
可動片部31bが閉じられた状態(アンカー本体31の左右両側から突出していない状態)のアンカー本体31を地中に打ち込む。アンカー本体31の打ち込み作業は、アンカー本体31の上端部に設けられた平板部をハンマー等で叩くことにより行う。このとき、アンカー本体31の対象物保持部31cに第一パネル11の横方向の網線材11bが収まるようにする。
[手順2]
地中に打ち込まれたアンカー本体31の別体挿入部31aに対し、アンカー別体32を挿入する。このとき、ラチェット部32aは、上記の歯車部に噛み合って、歯車部が回転し、可動片部31bが矢印Aの向きに回動して地中で左右に突出した状態となる。アンカー別体32を挿入する際の抵抗が大きい場合には、アンカー別体32の上端部に設けられた平板部をハンマー等で叩くとよい。
【0035】
上記の手順1,2によって地中に打ち込まれたアンカー30は、可動片部31bが地中で左右に広がった状態となっているため、上側に引き抜こうとしても、可動片部31bの抵抗によって容易には引き抜くことができない構造となっている。本実施態様においては、既に述べたように、第二パネル12の手前側の縁部も地面Gに接触した状態に施工するところ、
図2に示すように、この第二パネル12の手前側の縁部もアンカー30bで地面に固定している。第二パネル12を固定するこのアンカー30bにも、
図6に示すアンカー30を用いれば、第二パネル12の手前側の縁部を地面Gに対して強固に固定することが可能になる。第一パネル11の下縁部に設けた突出部11d(
図4)と同様、第二パネル12の手前側の縁部にも、
図5に示すように、突出部12dを設けており、この突出部12を地中に埋め込むことができるようにしている。
【0036】
第一パネル11や第二パネル12の素材は、必要な強度を有するものであれば特に限定されないが、通常、ステンレス鋼等の金属とされる。金属の表面には、亜鉛メッキ加工等の防錆加工を施すことが好ましい。また、第一パネル11の網線材11a,11b(
図4)や、第二パネル12の網線材12a,12bは、螺旋状に捩じられた構造のものを用いることもできる。これにより、第一パネル11や第二パネル12の強度を高め、動物侵入防止柵10の耐久性をさらに高めることが可能になる。
【0037】
第一パネル11及び第二パネル12は、その形態を特に限定されないが、通常、矩形状とされる。第一パネル11は、動物60(
図1)に、そこに障壁があると認識させることができるのであれば、その目開きを特に限定されないが、通常、20〜25cmとされる。一方、第二パネル12は、動物60の足元に違和感を与える部分であるため、侵入を防止しようとする動物60の種類(特に、その動物60の足裏のサイズ)等に応じて適宜決定される。例えば、猪の侵入を防止したい場合には、第二パネル12の目開きは、通常、8〜15cmとされる。本実施態様において、第二パネル12の目開きは、約10cmとなっている。
【0038】
また、第一パネル11や第二パネル12の寸法も、侵入を防止しようとする動物60の種類等によって異なり、特に限定されない。例えば、猪等の侵入を防止することを想定した場合には、第一パネル11の高さは、100〜150cmの範囲とすることが好ましく、第二パネル12の長さ(縦方向の網線材12aに沿った方向の長さ)は、100〜150cmの範囲とすることが好ましい。第一パネル11や第二パネル12の横幅(横方向の網線材11b,12bに沿った方向の長さ)も特に限定されないが、狭くしすぎると、多数枚の第一パネル11や第二パネル12を施工する必要が生じ、広くしすぎると、第一パネル11や第二パネル12の1枚毎の寸法が大きくなり、運搬や施工がしにくいものとなる虞がある。このため、第一パネル11や第二パネル12の横幅は、通常、100〜300cmの範囲とされ、好ましくは、150〜250cmの範囲とされる。
【0039】
ところで、上述した動物侵入防止柵10において、支持フレーム20は、動物侵入防止柵10とは別体に設けられたものを事後的に設置するものとなっていた。また、上述した動物侵入防止柵10は、その設置時には、第二パネル12の掛止部12cを、第一パネル11の横方向の網線材11bに掛止させ、その撤去時や運搬時等には、第二パネル12の掛止部12cを、第一パネル11の横方向の網線材11bから取り外し、第一パネル11と第二パネル12とを分離することを想定したものとなっていた。この点、動物侵入防止柵10に対する支持フレーム20の取り付け方に以下のような工夫を施すことによって、動物侵入防止柵10を、掛止部12cを網線材11bに掛止して第一パネル11と第二パネル12とを連結した状態のまま、動物侵入防止柵10を折り畳んで運搬等できるようにすることが可能になる。
【0040】
図8は、他の実施態様の動物侵入防止柵10を施工している様子を示した図である。
図8の動物侵入防止柵10において、支持フレーム20は、第一リング21と第二リング22とを介して第一パネル11に連結されている。このように、支持フレーム20を2つのリング(第一リング21及び第二リング22)を介して第一パネル11に取り付けることにより、支持フレーム20は、第一パネル12に対して、高い自由度で回動できる(例えば
図8における矢印Bや矢印Cの方向に回動できる)ようになる。このため、支持フレーム20の先端部に第三リング23を設けておくと、動物侵入防止パネル10の施工時(支持フレーム20の使用時)には、支持フレーム20を
図8の矢印Bの向きに回動させて第三リング23を第二パネル12における横方向の網線材12bの端部に嵌め込んで、支持フレーム20を突っ張った状態とする一方、動物侵入防止パネル10の運搬時等には、第一パネル11に対して第二パネル12を
図8における矢印Dの向きに折り畳むとともに、支持フレーム20を
図8の矢印Cの向きに回動させて第三リング23を第一パネル11に設けた被固定部11eに嵌め込んで固定することができるようになる。
【0041】
また、本発明の動物侵入防止柵10では、
図1に示すように、複数枚の動物侵入防止柵10を並べて施工するところ、隣り合う動物侵入防止柵10の連結構造にも工夫を施すことができる。すなわち、
図8に示すパネル連結具40を用いると、隣り合う動物侵入防止柵10を容易且つ強固に連結することが可能になる。このパネル連結具40は、一本の金属線材を「U」字状に折り曲げて構成した一対のバネアーム41,42を有するものとなっている。それぞれのバネアーム41,42の下端部には、互いに係止可能なフック部が設けられており、また、それぞれのバネアーム41,42の中途部分には、第一パネル11の横方向の網線材11bに宛がうことが可能なように屈曲部が設けられている。このパネル連結具40は、
図8の矢印Fに示すように、その中間部分が隣り合う動物侵入防止柵10における隣接する第一パネル11dの後側に位置し、上記の屈曲部がそれぞれの動物侵入防止柵10における横方向の網線材11bの前側に位置する状態で、上記のフックを後側で互いに係合することにより、隣り合う動物侵入防止柵10の境界部分に取り付けるものとなっている。これにより、ボルト等を用いることなく容易な方法で、パネル連結具40の弾性により、隣り合う動物侵入防止柵10を強固に取り付けることが可能になる。
【0042】
ところで、上述した
図1〜5の動物侵入防止柵10では、猪の侵入を防止できたとしても、鹿のように跳躍力がある動物や、猿のように身軽な動物は、動物侵入防止柵10を飛び越えたり、よじ登って越えたりする可能性がある。この点、以下の構成を採用することによって、動物侵入防止柵10で鹿や猿の侵入をより確実に防止することが可能になる。
【0043】
図9は、また別の実施態様の動物侵入防止柵10を施工した状態を示した図である。
図10は、
図9の動物侵入防止柵10を施工している途中の状態であって、第一パネル11の上端部に継ぎ足しロッド13aを挿入している状態を示した図である。
図11は、
図9の動物侵入防止柵10を施工している途中の状態であって、第一パネル11の上端部に継ぎ足しロッド13aを挿入した後の状態を示した図である。
【0044】
図9〜11及び後掲する
図12,13でも、
図1〜5等と同様、x軸とy軸とz軸とを示している。x軸、y軸及びz軸のそれぞれの向きは、
図9〜13で共通している。以下においては、説明の便宜上、
図1〜5に示した動物侵入防止柵10を「第一実施態様の動物侵入防止柵10」と呼び、
図9〜13に示す動物侵入防止柵10を「第二実施態様の動物侵入防止柵10」と呼ぶことがある。第二実施態様の動物侵入防止柵10については、第一実施態様の動物侵入防止10と異なる部分についてのみ説明し、第一実施態様の動物侵入防止柵10と共通する部分の説明を割愛する。第二実施態様の動物侵入防止柵10で言及しない構成は、第一実施態様の動物侵入防止柵10と同様の構成を採用することができる。
【0045】
第一実施態様の動物侵入防止柵10では、
図2に示すように、第一パネル11の上側には、何も配されていなかった。これに対し、第二実施態様の動物侵入防止柵10では、
図9に示すように、第一パネル11の上側に延長パネル13が取り付けられている。第二実施態様の動物侵入防止柵10では、この延長パネル13によって動物侵入防止柵10の高さを増大させ、鹿のように跳躍力のある動物や、猿のように身軽な動物の侵入もより確実に防止することが可能となっている。第二実施態様の動物侵入防止柵10において、延長パネル13は、以下のように設けている。
【0046】
すなわち、第一実施態様の動物侵入防止柵10では、
図2に示すように、第一パネル11の最上縁部に横方向の網線材11bが配されており、縦方向の網線材11aの上端部が突き出ていない状態となっていた。これに対し、第二実施態様の動物侵入防止柵10では、
図10に示すように、第一パネル11の最上縁部に横方向の網線材11bを配しておらず、縦方向の網線材11bの上端部が上方に突き出るようにしている。この縦方向の網線材11bの上端部に、
図10及び
図11に示すように、継ぎ足しロッド13aを所定間隔で取り付けた後、継ぎ足しロッド13a間に横線材13bを張設するようにしている。これにより、動物侵入防止柵10を上側に延長することができる。
【0047】
延長パネル13の高さ(継ぎ足しロッド13aの長さ)は、特に限定されないが、低すぎると、延長パネル13を設ける意義が低下する。このため、延長パネル13の高さは、通常、30cm以上とされる。延長パネル13の高さは、50cm以上であることが好ましく、70cm以上であることがより好ましい。延長パネル13の高さに特に上限はないが、延長パネル13の取り付けのバランス等を考慮すると、通常、1〜2mまでである。
【0048】
継ぎ足しロッド13aは、第一パネル11における全ての縦方向の網線材11aに取り付ける必要はない。
図9〜
図11の例では、10本おきに縦方向の網線材11aに継ぎ足しロッド13aを取り付けている。また、延長パネル13を構成する横線材13bは、1本のみ(1段のみ)に設けてもよいが、複数本(複数段で)設けることが好ましい。これにより、動物侵入防止柵10の延長高さを増大することができる。横線材13bとしては、ワイヤーロープや紐等の線状のもののほか、テープ状のものを使用することもできる。横線材13bを導電性のものとし、横線材13bに電流を流すことも可能である。これにより、動物の侵入をさらに確実に防止することが可能になる。横線材13bに電流を流す構成は、猿に対して特に絶大な効果を発揮する。横線材13bに電流を流す場合、全ての横線材13bに電流を流してもよいが、最も上側の横線材13bのみに流すようにすれば足りる。
【0049】
継ぎ足しロッド13aは、第一パネル11の上側に取り付けることができ、且つ、横線材13bを調節できるものであれば、特に限定されないが、第二実施態様の動物侵入防止柵10では、
図12及び
図13に示す態様の継ぎ足しロッド13aを用いている。
図12は、
図9〜11の継ぎ足しロッド13aを拡大して示した斜視図である。
図13は、
図12の継ぎ足しロッド13aをその中心線を含む平面で切断した状態を示した断面図である。
【0050】
図12及び
図13に示す継ぎ足しロッド13aは、上下方向(z軸方向)に延びる棒状のものとなっている。継ぎ足しロッド13aの断面形状では、
図12に示すように、矩形状となっているが、円形状や、楕円形状や、多角形状等、他の断面形状を採用することもできる。また、継ぎ足しロッド13aは、太さを一定としてもよいが、第二実施態様の動物侵入防止柵10では、
図12及び
図13に示すように、上細りのテーパー状に形成している。
【0051】
継ぎ足しロッド13aには、
図13に示すように、その下端面から上向きに第一パネル取付孔13a
1が設けられている。この第一パネル取付孔13a
1は、上側パネル11における縦方向の網線材11aの上端部を挿入するための部分となっており、網線材11aの上端部における上方に突き出た部分の高さと同じかそれ以上の深さに形成される。第二実施態様の動物侵入防止柵10では、縦方向の網線材11aの上端部における上方に突き出た部分の高さを約10cmとしており、継ぎ足しロッド13aの第一パネル取付孔13a
1の深さを約11cmとしている。継ぎ足しロッド13aの下端部における第一パネル取付孔13a
1の開口部の脇には、下向き凸部13a
7を設けている。この下向き凸部13a
7は、継ぎ足しロッド13aの第一パネル取付孔13aに縦方向の網線材11a(
図10)の上端部を挿入した際に、横方向の網線材11bの外周部に当接する部分となっている。これにより、第一パネル11に取り付けられた継ぎ足しロッド13aの安定性を高めることができるようになっている。
【0052】
第一パネル取付孔13a
1は、その内径を一定としてもよいが、第二実施態様の動物侵入防止柵10では、
図13に示すように、第一パネル取付孔13a
1をテーパー状に形成しており、上側になればなるほど、第一パネル取付孔13a
1の内径が小さくなるようにしている。このため、第一パネル取付孔13a
1に網線材11aを挿入しやすくする一方、第一パネル取付孔13a
1に網線材11aを一旦挿入した後は、第一パネル取付孔13a
1から網線材11aが抜けにくくすることができるようになっている。さらに、第二実施態様の動物侵入防止柵10では、継ぎ足しロッド13aの第一パネル取付孔13a
1に第一パネル11における網線材11aの上端部を挿入した後、継ぎ足しロッド13aの外周部からボルト等の挿入固定具(図示省略)を内方に挿入することで、当該挿入固定具の先端部で網線材11aの外周面を押圧し、第一パネル取付孔13a
1内で網線材11aを固定できるようにしている。
【0053】
また、継ぎ足しロッド13aには、
図12及び
図13に示すように、横線材取付溝13a
2,13a
3,13a
4,13a
5,13a
6が設けられている。この横線材取付溝13a
2,13a
3,13a
4,13a
5,13a
6には、
図9に示すように、横線材13bが挿入される。これにより、それぞれの横線材13bを張った状態で着いたしロッド13aに支持させることができるようになっている。継ぎ足しロッド13aの上端部に設けられた横線材取付溝13a
2は、一番上(最上段)に配される横線材13bを取り付けるための部分となっており、継ぎ足しロッド13aの外周部に設けられた横線材取付溝13a
3,13a
4,13a
5,13a
6は、上から2段目に配される横線材13bから一番下(最下段)に配される横線材13bをそれぞれ取り付けるための部分となっている。
【0054】
横線材取付溝13a
2,13a
3,13a
4,13a
5,13a
6のうち、継ぎ足しロッド13aの上端部の横線材取付溝13a
3は、継ぎ足しロッド13aの上端面から下向きに切り込みを設けることによって形成されている。一方、継ぎ足しロッド13aの外周部の横線材取付溝13a
3,13a
4,13a
5,13a
6は、継ぎ足しロッド13aの外周部に板状片部を上向きに形成することで設けられている。このような形態を有する継ぎ足しロッド13aは、例えば、樹脂を射出成型することによって形成することができる。横線材取付溝13a
2,13a
3,13a
4,13a
5,13a
6は、単純な棒状に形成された継ぎ足しロッド13に後から切り込みを入れることによっても形成することができる。
【0055】
横線材取付溝13a
2,13a
3,13a
4,13a
5,13a
6の配置や個数は、特に限定されない。しかし、横線材取付溝13a
2,13a
3,13a
4,13a
5,13a
6の個数(横線材13bの本数)が少ないと、延長パネル13の高さを確保できなくなり、延長パネル13を設ける意義が低下する。このため、横線材取付溝13a
2,13a
3,13a
4,13a
5,13a
6の個数は、2個以上とすることが好ましい。横線材取付溝13a
2,13a
3,13a
4,13a
5,13a
6の個数は、3個以上であることがより好ましく、4個以上であることがさらに好ましい。横線材取付溝13a
2,13a
3,13a
4,13a
5,13a
6は、上下方向に10〜20cm間隔となるように設けることが好ましい。横線材取付溝13a
2,13a
3,13a
4,13a
5,13a
6の個数に特に上限はないが、通常、10個程度までである。
【0056】
続いて、継ぎ足しロッド13aの変形例について説明する。以下においては、継ぎ足しロッド13aの変形例として、2つの例(第一変形例及び第二変形例)を説明する。
【0057】
まず、第一変形例の継ぎ足しロッド13aについて説明する。
図14は、継ぎ足しロッド13aの第一変形例を拡大して示した斜視図である。
図15は、第一変形例の継ぎ足しロッド13aをその中心線を含む平面で切断した状態を示した断面図である。第一変形例の継ぎ足しロッド13aについては、
図12及び
図13に示した継ぎ足しロッド13a(以下において、「基本形の継ぎ足しロッド13a」と呼ぶことがある。)と異なる部分についてのみ説明し、基本形の継ぎ足しロッド13aと共通する部分の説明を割愛する。第一変形例の継ぎ足しロッド13aで言及しない構成は、基本形の継ぎ足しロッド13aと同様の構成を採用することができる。
【0058】
図12及び
図13に示した基本形の継ぎ足しロッド13aでは、第一パネル11における横方向の網線材11b(
図9を参照)は、継ぎ足しロッド13の下端部に設けた下向き凸部13a
7で支持されるようになっていた。また、基本形の継ぎ足しロッド13aは、第一パネル11における横方向の網線材11bのうち、最上段の網線材11bのみに支持される構造となっていた。このため、基本形の継ぎ足しロッド13aは、第一パネル11の上側に取り付けたとき(継ぎ足しロッド13aの第一パネル取付孔13a
1に第一パネル11の縦方向の網線材11aを挿入したとき)に、継ぎ足しロッド13aの下端部近傍のみで支持されるようになるため、継ぎ足しロッド13aがぐらつく虞がある等、継ぎ足しロッド13aの安定性を保つことが必ずしも容易ではなかった。
【0059】
これに対し、
図14及び
図15に示した第一変形例の継ぎ足しロッド13aでは、第一パネル取付孔13a
1を深く形成しており、継ぎ足しロッド13aの第一パネル取付孔13a
1に第一パネル11における縦方向の網線材11aを挿入したときに、継ぎ足しロッド13aの下端が、第一パネル11における横方向の網線材11bのうち上から2段目のものに達するようにしている。このため、第一変形例の継ぎ足しロッド13aでは、横方向の網線材11bを継ぎ足しロッド13aの下端から導き入れるためのスリット13a
8を第一パネル取付孔13a
1と略平行に設けている。
【0060】
スリット13a
8における所定箇所(継ぎ足しロッド13aを第一パネル11に取り付けたときに最上段の横方向の網線材11bと、上から2段目の横方向の網線材11bとが位置する箇所)には、第一パネル11の横方向の網線材11bを係止するための係止凹部13a
9を設けている。この係止凹部13a
9に横方向の網線材11bを係止させることによって、横方向の網線材11bに対して継ぎ足しロッド13aの上下位置を位置決めすることができるようになっている。第一変形例の継ぎ足しロッド13aのように、第一パネル取付孔13a
1を深く形成するとともに、スリット13a
8と係止凹部13a
9とを設けることによって、継ぎ足しロッド13aを第一パネル11の上側に取り付けたときに、継ぎ足しロッド13aを安定させ、継ぎ足しロッド13aをぐらつきにくくすることが可能となる。
【0061】
また、
図12及び
図13に示した基本形の継ぎ足しロッド13aでは、延長パネル13の横線材13bを取り付ける横線材取付溝13a
2,13a
3,13a
4,13a
5,13a
6のうち、横線材取付溝13a
3,13a
4,13a
5,13a
6は、継ぎ足しロッド13aの外周部に板状片部を上向きに形成することで設けており、継ぎ足しロッド13aに対する横線材13bの取り付けは、横線材取付溝13a
3,13a
4,13a
5,13a
6に対して上側から下側に横線材13bを挿入することで行っていた。このため、横線材取付溝13a
3,13a
4,13a
5,13a
6に横線材13bを取り付けたとしても、横線材13bが弛む虞があった。
【0062】
これに対し、
図14及び
図15に示す第一変形例の継ぎ足しロッド13aでは、継ぎ足しロッド13aの外周部における複数個所に円盤状の突起を設けており、それぞれの円盤状の突起の内面(継ぎ足しロッド13aを向く側の面)と継ぎ足しロッド13aの外面との隙間に形成された環状溝が、横線材取付溝13a
2,13a
3,13a
4,13a
5,13a
6となるようにしている。横線材取付溝13a
2,13a
3,13a
4,13a
5,13a
6は、それぞれの円盤状の突起の全周部に亘って環状に設けられている。このため、
図14の拡大部分に示すように、横線材13bを、円盤状の突起の内側の環状溝(横線材取付溝13a
2,13a
3,13a
4,13a
5,13a
6)に挿入して巻き付けることができるようになっている。したがって、横線材取付溝13a
2,13a
3,13a
4,13a
5,13a
6に取り付けた横線材13bが長さ方向に動かないようにし、横線材13bが弛まないようにすることが可能となっている。
【0063】
横線材取付溝13a
2,13a
3,13a
4,13a
5,13a
6を形成する円盤状の突起は、継ぎ足しロッド13aの本体部分とは別個に作製したものを後から継ぎ足しロッド13aの本体部分に固定したものであってもよいが、継ぎ足しロッド13aの本体部分と一体的に成形することが好ましい。この点、継ぎ足しロッド13aの成形型を、左右に分割した構造(x軸方向に分割した構造)とすれば、上記のような形態を有する継ぎ足しロッド13aを射出成形することが可能である。
【0064】
続いて、第二変形例の継ぎ足しロッド13aについて説明する。
図16は、第二変形例の継ぎ足しロッド13aの正面側を示した斜視図である。
図17は、第二変形例の継ぎ足しロッド13aの背面側を示した斜視図である。
図18は、第二変形例の継ぎ足しロッド13aを上下に継ぎ足した状態を背面側から示した斜視図である。
図18の拡大部分については、説明の便宜上、上側に継ぎ足された継ぎ足しロッド13aを網掛けハッチングで示している。
【0065】
第二変形例の継ぎ足しロッド13aについては、
図14及び
図15に示した第一変形例の継ぎ足しロッド13aと異なる部分についてのみ説明し、第二変形例の継ぎ足しロッド13aと共通する部分の説明を割愛する。第二変形例の継ぎ足しロッド13aで言及しない構成は、第一変形例の継ぎ足しロッド13aや基本形の継ぎ足しロッド13aと同様の構成を採用することができる。
【0066】
図14及び
図15に示した第一変形例の継ぎ足しロッド13aでは、継ぎ足しロッド13aの下端面から上向きに設けたスリット13a
8における、継ぎ足しロッド13aを第一パネル11(
図11)に取り付けたときに最上段の横方向の網線材11bが位置する箇所と、上から2段目の横方向の網線材11bが位置する箇所とに、それぞれ係止凹部13a
9を設けており、これら2つの係止凹部13a
9に横方向の網線材11bを係止させるようになっていた。
【0067】
これに対し、第二変形例の継ぎ足しロッド13aでは、
図17に示すように、継ぎ足しロッド13aの下部に、左右一対のフック13a
10を2段に設けており、それぞれのフック13a
10の内側部分に、係止凹部13a
9を設けている。このフック13a
10は、継ぎ足しロッド13aを第一パネル11(
図11)に取り付ける際に使用するだけでなく、
図18に示すように、ある継ぎ足しロッド13aの上部に他の継ぎ足しロッド13aを継ぎ足すことも可能にするものとなっている。
【0068】
すなわち、第二変形例の継ぎ足しロッド13aは、
図17に示すように、その上部側面を切り欠いた左右一対の切欠部13a
11を有するところ、
図18に示すように、下側の継ぎ足しロッド13aの上部における片面側(y軸方向負側)に、上側の継ぎ足しロッド13aの下部を宛がい、上側の継ぎ足しロッド13aにおける下段のフック13a
10を、下側の継ぎ足しロッド13aにおける左右の切欠部13a
11にそれぞれ挿し込んで係止させるとともに、上側の継ぎ足しロッド13aにおける上段のフック13a
10を、下側の継ぎ足しロッド13aにおける上端部に係止させることにより、ある継ぎ足しロッド13aの上側に他の継ぎ足しロッド13aを継ぎ足していくことができるようにしている。
【0069】
これにより、動物侵入防止柵10を継ぎ足しロッド13aの1段分延長しただけでは、目的の動物が動物侵入防止柵10を飛び越えてしまう虞がある場合でも、継ぎ足しロッド13aを2段以上に配することで、動物侵入防止柵10をさらに上側に延長し、動物の侵入をより確実に防止することができるようになっている。第二変形例の継ぎ足しロッド13aを上下に連結する本数は、特に限定されないが、あまり多数本を連結すると、延長パネル13の設置安定性が低下する虞がある。このため、第二変形例の継ぎ足しロッド13aを上下に連結する本数は、通常、5本まで、好ましくは、3本までとされる。
【0070】
このように、複数本の継ぎ足しロッド13aを上下に連結すると、継ぎ足しロッド13aの剛性が問題となり得るところ、第二変形例の継ぎ足しロッド13aでは、
図16及び
図17に示すように、その正面側と背面側とに複数本のリブ13a
12を設けている。これにより、継ぎ足しロッド13aの剛性を高めることができる。
【0071】
また、第二変形例の継ぎ足しロッド13aを上下に連結していく際には、既に述べたように、下側の継ぎ足しロッド13aの上部における片面側(y軸方向負側)に、上側の継ぎ足しロッド13aの下部を宛がった状態としていく。このため、第二変形例の継ぎ足しロッド13aにおいて、最上段の横線材挟持溝13a
2を形成する円盤状の突起を、第一変形例の継ぎ足しロッド13aと同様に水平方向(y軸方向負側に突出す向き)に設けていると、継ぎ足しロッド13aを上下に連結していく際に、その突起が干渉する虞がある。
【0072】
したがって、第二変形例の継ぎ足しロッド13aでは、最上段の横線材挟持溝13a
2を形成する突起を、
図16に示すように、上向きに設けており、その突起が上側に連結される継ぎ足しロッド13aに干渉しないようにしている。このほか、横線材挟持溝13a
2を形成する突起が干渉しないようにする方法としては、継ぎ足しロッドにおける、その突起が当たり得る箇所に、切り欠き部や凹部を形成する方法や、その突起を取り外し可能な状態で設ける方法等が例示される。これは、最上段の横線材挟持溝13a
2を形成する突起だけでなく、上から2段目の横線材挟持溝13a
3を形成する突起等、他の突起においても同様である。