特許第6854555号(P6854555)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6854555
(24)【登録日】2021年3月18日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】パージ剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/72 20060101AFI20210329BHJP
   B29C 45/17 20060101ALI20210329BHJP
   B29C 48/27 20190101ALI20210329BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20210329BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20210329BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20210329BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20210329BHJP
【FI】
   B29C33/72
   B29C45/17
   B29C48/27
   C08L23/04
   C08L23/10
   C08L101/00
   C08K3/013
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-554927(P2020-554927)
(86)(22)【出願日】2020年2月3日
(86)【国際出願番号】JP2020003953
【審査請求日】2020年10月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592069562
【氏名又は名称】日東化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100192603
【弁理士】
【氏名又は名称】網盛 俊
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正章
【審査官】 ▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−219398(JP,A)
【文献】 特開2008−201975(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/116920(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/057787(WO,A1)
【文献】 特開平02−308838(JP,A)
【文献】 特開2017−080928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00− 33/76
B29C 45/00− 45/84
B29C 48/00− 48/96
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成型加工機の洗浄に用いられるパージ剤であって、
溶融温度が異なる非極性樹脂と極性樹脂の混合物からなり、
前記非極性樹脂と前記極性樹脂の溶融温度の差の絶対値が20〜50℃であり、
前記混合物は、前記パージ剤100質量%に対して25〜50質量%の前記非極性樹脂と、前記パージ剤100質量%に対して50〜75質量%の前記極性樹脂と、が非溶融状態で混合されたものであり、
前記極性樹脂と前記非極性樹脂の少なくともいずれか一方の樹脂は、溶融温度が異なる2種類以上の該樹脂からなり、
溶融温度が異なる2種類以上の該樹脂からなるものの前記溶融温度には、前記種類ごとの溶融温度と質量割合から算出される溶融温度の加重平均値が用いられる、ことを特徴とするパージ剤。
【請求項2】
前記非極性樹脂が、ポリプロピレン及び/又はポリエチレンであることを特徴とする請求項1に記載のパージ剤。
【請求項3】
前記極性樹脂が、アクリロニトリルスチレン樹脂及び/又はポリスチレン樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載のパージ剤。
【請求項4】
前記混合物が、さらに界面活性剤及び/又は無機フィラーを含有していることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のパージ剤。
【請求項5】
樹脂成型加工機の洗浄に用いられるパージ剤の製造方法であって、
溶融温度が異なる非極性樹脂と極性樹脂を非溶融状態で混合する混合工程を含み、
前記非極性樹脂と前記極性樹脂の溶融温度の差の絶対値が、20〜50℃であり、
前記非極性樹脂の含有量が、前記パージ剤100質量%に対して25〜50質量%であり、
前記極性樹脂の含有量が、前記パージ剤100質量%に対して50〜75質量%であり、
前記極性樹脂と前記非極性樹脂の少なくともいずれか一方の樹脂は、溶融温度が異なる2種類以上の該樹脂からなり、
溶融温度が異なる2種類以上の該樹脂からなるものの前記溶融温度には、前記種類ごとの溶融温度と質量割合から算出される溶融温度の加重平均値が用いられる
ことを特徴とするパージ剤の製造方法。
【請求項6】
前記非極性樹脂が、ポリプロピレン及び/又はポリエチレンであることを特徴とする請求項5に記載のパージ剤の製造方法。
【請求項7】
前記極性樹脂が、アクリロニトリルスチレン樹脂及び/又はポリスチレン樹脂であることを特徴とする請求項5又は6に記載のパージ剤の製造方法。
【請求項8】
前記混合工程の前に、前記非極性樹脂と前記極性樹脂の少なくともいずれか一方に界面活性剤及び/又は無機フィラーを混合する予備混合工程を含むことを特徴とする請求項5から7のいずれか一つに記載のパージ剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成型加工機の洗浄に用いられるパージ剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂の成型加工において、樹脂の色や材料を変更するとき、成型機を洗浄するためのパージ剤を成型機に供給している。例えば、特許文献1では、成型加工機を洗浄するためのパージ剤として、(A)オレフィン系樹脂、(B)AS樹脂、MS樹脂及びPMMA樹脂から選ばれる1種以上の熱可塑性樹脂、(C)(A)成分のオレフィン系樹脂と(B)成分の熱可塑性樹脂とを相溶化させるための熱可塑性樹脂、(D)脂肪酸のアルカリ金属塩、及び(E)縮合リン酸ナトリウム塩を溶融混練した樹脂組成物を使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−077049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂の成型加工では、樹脂替えや、色替えが行われるが、加工成型後の成型機内には、加工成型で使用した原料などが残留することがある。具体的な成型機内の残留物質(以下、「成型機内残留物」ともいう)としては、例えば、加工成型で使用される樹脂や着色剤、成型時に発生した熱によって炭化した焼け樹脂がある。このような成型機内残留物が存在する状態で樹脂替えや色替えを行うと、次の成型で使用される樹脂(以下、「次樹脂」ともいう)に、成型機内残留物が混入してしまうという問題がある。
【0005】
また、パージ剤によって成型機内残留物を成型機から除去した後は、通常、次の成型に入る前に、成型機内に残留するパージ剤を次の成型で使用する次樹脂に置換するが、パージ剤が残留し続けて次樹脂によって置換されにくいという問題もある。
【0006】
本発明は、樹脂替えや色替えなどを容易するためになされた発明であり、成型機内残留物を除去しやすいことに加え、次樹脂によって置換されやすいパージ剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)樹脂成型加工機の洗浄に用いられるパージ剤であって、溶融温度が異なる非極性樹脂と極性樹脂の混合物からなり、前記非極性樹脂と前記極性樹脂の溶融温度の差の絶対値が20〜50℃であり、前記混合物は、前記パージ剤100質量%に対して25〜50質量%の前記非極性樹脂と、前記パージ剤100質量%に対して50〜75質量%の前記極性樹脂と、が非溶融状態で混合されたものである、ことを特徴とするパージ剤。
(2)前記非極性樹脂が、ポリプロピレン及び/又はポリエチレンであることを特徴とする(1)に記載のパージ剤。
(3)前記極性樹脂が、アクリロニトリルスチレン樹脂及び/又はポリスチレン樹脂であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のパージ剤。
(4)前記混合物が、さらに界面活性剤及び/又は無機フィラーを含有していることを特徴とする(1)から(3)のいずれか一つに記載のパージ剤。
(5)樹脂成型加工機の洗浄に用いられるパージ剤の製造方法であって、溶融温度が異なる非極性樹脂と極性樹脂を非溶融状態で混合する混合工程を含み、前記非極性樹脂と前記極性樹脂の溶融温度の差の絶対値が、20〜50℃であり、前記非極性樹脂の含有量が、前記パージ剤100質量%に対して25〜50質量%であり、前記極性樹脂の含有量が、前記パージ剤100質量%に対して50〜75質量%である、ことを特徴とするパージ剤の製造方法。
(6)前記非極性樹脂が、ポリプロピレン及び/又はポリエチレンであることを特徴とする(5)に記載のパージ剤の製造方法。
(7)前記極性樹脂が、アクリロニトリルスチレン樹脂及び/又はポリスチレン樹脂であることを特徴とする(5)又は(6)に記載のパージ剤の製造方法。
(8)前記混合工程の前に、前記非極性樹脂と前記極性樹脂の少なくともいずれか一方に界面活性剤及び/又は無機フィラーを混合する予備混合工程を含むことを特徴とする(5)から(7)のいずれか一つに記載のパージ剤の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、成型機内残留物を除去しやすいことに加え、次樹脂によって置換されやすいパージ剤を提供することができる。本発明のパージ剤を使用すれば、樹脂替え、色替えを容易に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
【0010】
本実施形態は、成型機の洗浄に用いられるパージ剤に関する。本実施形態のパージ剤は、成型機に供給されて使用される。本実施形態のパージ剤が供給される成型機は、樹脂を成型加工する樹脂成型加工機である。
【0011】
本実施形態のパージ剤は、非極性樹脂と極性樹脂の混合物からなる。
【0012】
非極性樹脂は、極性を有してない樹脂であり、より具体的には、分子内で電子的な分極が発生していない樹脂である。非極性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP樹脂)、ポリエチレン樹脂(PE樹脂)、エチレン−プロピレン共重合体(EPR樹脂)、ポリプロピレン共重合体(PPCO樹脂)ポリイソプレン樹脂、ポリブテン樹脂、ポリイソブチレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、が挙げられ、2種以上を組み合わせて用いてもよい。成型機内残留物の除去性能や次樹脂による置換性能を向上し、樹脂替えや色替えを容易にする観点から、非極性樹脂としては、ポリプロピレン樹脂及び/又はポリエチレン樹脂を用いることが好ましい。
【0013】
極性樹脂は、極性を有している樹脂であり、より具体的には、分子内で電子的な分極が発生している樹脂である。極性樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂(PS樹脂)、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS樹脂)、ポリカーホネイト樹脂(PC樹脂)、ポリメタクリ酸樹脂(PMMA樹脂)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ乳酸樹脂(PLA樹脂)、ポリオキシメチレン樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリウレタン樹脂(PU樹脂)、ポリ塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、が挙げられ、2種以上を組み合わせて用いてもよい。成型機内残留物の除去性能や次樹脂による置換性能を向上し、樹脂替えや色替えを容易にする観点からは、極性樹脂としては、ポリスチレン樹脂及び/又はアクリロニトリルスチレン樹脂を用いることが好ましい。
【0014】
本実施形態のパージ剤を構成する混合物において、非極性樹脂と極性樹脂の溶融温度は互いに異なっている。
【0015】
ここで、混合物に含有する非極性樹脂として、2種類以上の樹脂(非極性樹脂)を用いる場合、樹脂の種類毎の溶融温度と質量割合から算出される溶融温度の加重平均値を、非極性樹脂の溶融温度として用いることができる。同様に、混合物に含有する極性樹脂として、2種類以上の樹脂(極性樹脂)を用いる場合、樹脂の種類毎の溶融温度と質量割合から算出される溶融温度の加重平均値を、極性樹脂の溶融温度として用いることができる。なお、各樹脂の溶解温度は、樹脂を昇温させて示差走査熱量計等の熱分析により吸熱温度を測定した時の吸熱ピークのピークトップの温度とすることができる。
【0016】
混合物に含有される非極性樹脂と極性樹脂は、後述する温度範囲の溶融温度の差があればよく、それらの組み合わせについては特に限定されるものでは無い。成型機内残留物の除去性能や次樹脂による置換性能を向上し、樹脂替えや色替えを容易にする観点からは、極性樹脂としてのポリスチレン樹脂及び/又はアクリロニトリルスチレン樹脂と、非極性樹脂としてのポリプロピレン樹脂及び/又はポリエチレン樹脂を組み合わせて用いることが好ましい。
【0017】
本実施形態のパージ剤において、非極性樹脂と極性樹脂の溶融温度の差(以下、単に「溶融温度差」ともいう)の絶対値は、20〜50℃である。溶融温度差の絶対値が20〜50℃にあることで、成型機内残留物を除去しやすくなるとともに、次樹脂によって置換されやすくなる。
【0018】
本実施形態のパージ剤では、非極性樹脂と極性樹脂の間に上述した温度範囲の溶融温度差があればよく、非極性樹脂と極性樹脂のいずれの溶融温度が高くてもよい。成型機内残留物の洗浄性能を向上する観点からは、極性樹脂よりも非極性樹脂の方が、溶融温度が高いことが好ましい。
【0019】
本実施形態のパージ剤において、非極性樹脂の含有量は、パージ剤100質量%に対して25〜50質量%である。
【0020】
非極性樹脂の含有量は、パージ剤100質量%に対して25〜50質量%であればよいが、25〜35質量%であることが好ましい。非極性樹脂の含有量が25〜35質量%以上である場合、当該範囲外である場合と比較して、成型機内残留物の洗浄性能がより向上する。
【0021】
本実施形態のパージ剤において、極性樹脂の含有量は、パージ剤100質量%に対して50〜75質量%である。
【0022】
極性樹脂の含有量は、パージ剤100質量%に対して50〜75質量%であればよいが、65〜75質量%であることが好ましい。極性樹脂の含有量が50〜75質量%である場合、当該範囲外である場合と比較して、成型機内残留物の洗浄性能がより向上する。
【0023】
本実施形態のパージ剤を構成する混合物は、前述した含有量及び溶融温度差の非極性樹脂と極性樹脂が、非溶融状態で混合されたものである。言い換えれば、本実施形態のパージ剤を構成する混合物は、前述した含有量及び溶融温度差の非極性樹脂と極性樹脂を、非溶融状態で混合して取得したものであり、非極性樹脂と極性樹脂を溶融状態で混合して取得した混合物とは異なる。
【0024】
本実施形態のパージ剤を構成する混合物は、上述した含有量の非極性樹脂と極性樹脂のみが混合された混合物であってもよいが、これらの非極性樹脂と極性樹脂に加えて、非極性樹脂と極性樹脂以外の他の物質(以下、単に「他の物質」ともいう)がさらに混合された混合物であってもよい。このような他の成分としては、例えば、界面活性剤、無機フィラー(例えば、ガラスフィラー)、相溶化剤を挙げることができる。これらの他の成分の中でも、洗浄性能を向上する観点から、界面活性剤及び/又は無機フィラーが混合されていることが好ましい。
【0025】
本実施形態のパージ剤の外観は、特に限定されるものではないが、成型機の洗浄が完了したか否かを確認しやすくなる観点から、無着色であることが好ましい。
【0026】
次に、本実施形態のパージ剤の製造方法について説明する。
【0027】
本実施形態のパージ剤の製造方法は、溶融温度が異なる非極性樹脂と極性樹脂を非溶融状態で混合する混合工程を含む。混合工程で使用される非極性樹脂と極性樹脂は、溶融温度差の絶対値が20〜50℃である。また、混合工程において、非極性樹脂は、パージ剤100質量%に対して25〜50質量%となる量で混合され、極性樹脂は、パージ剤100質量%に対して50〜75質量%となる量で混合される。
【0028】
ここで、非極性樹脂と極性樹脂を非溶融状態で混合するとは、非極性樹脂と極性樹脂を構成する各樹脂のうち、溶融温度が最も低い樹脂の溶融温度未満の温度で混合することを指す。この溶融温度未満であれば、混合される非極性樹脂と極性樹脂は非溶融状態となる。
【0029】
混合工程は、非極性樹脂と極性樹脂が互いに混ざり合うような条件で行えばよく、非極性樹脂と極性樹脂が偏在しないような条件で行うことが好ましい。非極性樹脂と極性樹脂が混ざり合えば、混合手段や混合時間などの具体的な混合条件は、特に限定されるものではない。
【0030】
上述した混合工程を経て得られる混合物は、本実施形態のパージ剤として用いることができる。
【0031】
なお、本実施形態のパージ剤を構成する混合物に、非極性樹脂と極性樹脂に加えて他の物質を含有する場合、前述した混合工程の前に、非極性樹脂と極性樹脂の少なくともいずれか一方に予め他の物質を混合する予備混合工程を行うことができる。なお、他予備混合工程において、非極性樹脂に対する他の物質の混合や、極性樹脂に対する他の物質の混合は、必ずしも非溶融状態で行う必要はなく、溶融混合であってもよい。
【0032】
以上説明した本実施形態のパージ剤を用いて成型機の洗浄を行うことにより、成型機の中に付着している樹脂や着色剤、成型時に発生した熱によって炭化してスクリュー表面に付着した焼け樹脂などの成型機内残留物が除去されやすくなる。また、洗浄後に成型機に残留する本実施形態のパージ剤は、次の成型で使用する樹脂(次樹脂)によって置換されやすい。このため、本実施形態のパージ剤を使用すれば、樹脂替えや色替えを容易に行うことができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0034】
(実施例1)
パージ剤に含有する極性樹脂として、溶融温度が115℃のアクリロニトリルスチレン樹脂(AS樹脂)と溶融温度が100℃のポリスチレン樹脂(PS樹脂)を用意した。また、パージ剤に含有する非極性樹脂として、溶融温度が160℃のポリプロピレン樹脂(PP樹脂)と溶融温度が125℃のポリエチレン樹脂(PE樹脂)を用意した。
【0035】
用意した極性樹脂(AS樹脂及びPS樹脂)と非極性樹脂(PP樹脂及びPE樹脂)を、下記表1に示す含有量でタンブラーミキサーを用いて非加熱混合(30℃以下で混合)し、極性樹脂と非極性樹脂の混合物を得た。この混合物を実施例1のパージ剤とした。
【0036】
なお、実施例1において、極性樹脂の溶融温度(各樹脂の溶融温度と質量割合から算出される溶融温度の加重平均値)は107.5℃であり、非極性樹脂の溶融温度(各樹脂の溶融温度と質量割合から算出される溶融温度の加重平均値)は142.5℃であった。
【0037】
(実施例2)
極性樹脂と非極性樹脂の含有比率を変更したこと以外は実施例1と同様の条件で実施例2のパージ剤を製造した。なお、実施例2において、各樹脂は、表1に示す含有量とした。
【0038】
(実施例3)
極性樹脂と非極性樹脂の含有比率を変更したこと以外は実施例1と同様の条件で実施例3のパージ剤を製造した。なお、実施例3において、各樹脂は、表1に示す含有量とした。
【0039】
(実施例4)
極性樹脂として含有するAS樹脂とPS樹脂の含有比率を変更するとともに、非極性樹脂として含有するPP樹脂とPE樹脂の含有比率を変更したこと以外は実施例2と同様の条件で実施例4のパージ剤を製造した。
【0040】
なお、実施例4において、極性樹脂の溶融温度(各樹脂の溶融温度と質量割合から算出される溶融温度の加重平均値)は102.5℃であり、非極性樹脂の溶融温度(各樹脂の溶融温度と質量割合から算出される溶融温度の加重平均値)は151.3℃であった。また、各樹脂は、表1に示す含有量とした。
【0041】
(実施例5)
極性樹脂として含有するAS樹脂とPS樹脂の含有比率を変更するとともに、非極性樹脂として含有するPP樹脂とPE樹脂の含有比率を変更したこと以外は実施例2と同様の条件で実施例5のパージ剤を製造した。
【0042】
なお、実施例5において、極性樹脂の溶融温度(各樹脂の溶融温度と質量割合から算出される溶融温度の加重平均値)は112.5℃であり、非極性樹脂の溶融温度(各樹脂の溶融温度と質量割合から算出される溶融温度の加重平均値)は133.8℃であった。また、各樹脂は、表1に示す含有量とした。
【0043】
(実施例6)
極性樹脂として、溶融温度が160℃のポリメタクリ酸樹脂(PMMA樹脂)及び溶融温度が250℃のポリカーホネイト樹脂(PC樹脂)を用意した。また、非極性樹脂として、溶融温度が165℃のポリプロピレン共重合体(PPCO樹脂)及び溶融温度が116℃のエチレン−プロピレン共重合体(EPR樹脂)を用意した。用意した極性樹脂(PMMA樹脂及びPC樹脂)と非極性樹脂(PPCO樹脂及びEPR樹脂)を下記表1に示す含有量で用いたこと以外は実施例2と同様の条件で実施例6のパージ剤を製造した。
【0044】
なお、実施例6において、極性樹脂の溶融温度(各樹脂の溶融温度と質量割合から算出される溶融温度の加重平均値)は175℃であり、非極性樹脂の溶融温度(各樹脂の溶融温度と質量割合から算出される溶融温度の加重平均値)は140.5℃であった。
【0045】
(比較例1)
溶融温度が115℃のアクリロニトリルスチレン樹脂(極性樹脂)を比較例1のパージ剤とした。
【0046】
(比較例2)
極性樹脂と非極性樹脂の含有比率を変更したこと以外は実施例1と同様の条件で比較例2のパージ剤を製造した。なお、比較例2において、各樹脂は、表1に示す含有量とした。
【0047】
(比較例3)
極性樹脂と非極性樹脂の含有比率を変更したこと以外は実施例1と同様の条件で比較例3のパージ剤を製造した。なお、比較例3において、各樹脂は、表1に示す含有量とした。
【0048】
(比較例4)
極性樹脂(AS樹脂及びPS樹脂)と非極性樹脂(PP樹脂及びPE樹脂)を、一軸混練機(製品名:ラボプラストミル、東洋精機製作所社製)を用いて200℃で溶融混合したこと以外は、実施例2と同様の条件で比較例4のパージ剤を製造した。
【0049】
(比較例5)
極性樹脂として含有するAS樹脂とPS樹脂の含有比率を変更するとともに、非極性樹脂として含有するPP樹脂とPE樹脂の含有比率を変更したこと以外は実施例2と同様の条件で比較例5のパージ剤を製造した。
【0050】
なお、比較例5において、極性樹脂の溶融温度(各樹脂の溶融温度と質量割合から算出される溶融温度の加重平均値)は114.8℃であり、非極性樹脂の溶融温度(各樹脂の溶融温度と質量割合から算出される溶融温度の加重平均値)は125.9℃であった。また、各樹脂は、表1に示す含有量とした。
【0051】
(比較例6)
極性樹脂として含有するAS樹脂とPS樹脂の含有比率を変更するとともに、非極性樹脂として含有するPP樹脂とPE樹脂の含有比率を変更したこと以外は実施例2と同様の条件で比較例6のパージ剤を製造した。
【0052】
なお、比較例6において、極性樹脂の溶融温度(各樹脂の溶融温度と質量割合から算出される溶融温度の加重平均値)は101.3℃であり、非極性樹脂の溶融温度(各樹脂の溶融温度と質量割合から算出される溶融温度の加重平均値)は155.6℃であった。また、各樹脂は、表1に示す含有量とした。
【0053】
(比較例7)
極性樹脂として含有するAS樹脂とPS樹脂の含有比率を変更するとともに、非極性樹脂として含有するPP樹脂とPE樹脂の含有比率を変更したこと以外は実施例2と同様の条件で比較例7のパージ剤を製造した。
【0054】
なお、比較例7において、極性樹脂の溶融温度(各樹脂の溶融温度と質量割合から算出される溶融温度の加重平均値)は113.8℃であり、非極性樹脂の溶融温度(各樹脂の溶融温度と質量割合から算出される溶融温度の加重平均値)は129.4℃であった。また、各樹脂は、表1に示す含有量とした。
【0055】
【表1】
【0056】
(評価1:成型機内残留物の除去性能の評価)
射出成型機内に黒色の樹脂を残留させるとともに、スクリューの表面に焼け樹脂を予め付着させておいた。このスクリューを含む射出成型機に対してパージ剤を供給して射出成型機の洗浄を行った。射出成型機内に黒色の樹脂を残留させるとともに、スクリューの表面に焼け樹脂を付着させるために、射出成型機において、黒色に着色されたPC−ABS樹脂を用いて射出成型を行い、5時間放置した。この操作により、射出成型機内に黒色の樹脂を残留させ、スクリューの全面に焼け樹脂を付着させた。
【0057】
射出成型機にパージ剤を供給し、射出成型機からパージ剤を排出させた。ここで、射出成型機の温度は、すべての実施例及び比較例において同一温度とし、射出成型機から排出されたパージ剤の色が黒色から無着色に切り替わるまで、パージ剤を射出成型機に供給し続けた。すなわち、パージ剤の色が黒色から無着色に切り替わった時点で、パージ剤の供給を停止した。なお、実施例及び比較例のパージ剤は、製造後は全て無着色であった。
【0058】
射出成型機にパージ剤を供給し始めてから、パージ剤の色が黒色から無着色に切り替わるまでの間に、射出成型機に供給されたパージ剤の使用量Wsを測定した。そして、この使用量Wsに基づいてパージ量PA(%)を算出した。パージ量PAとは、比較例1のパージ剤を用いて射出成型機を洗浄したときのパージ剤の使用量Wrを基準(100%)とした、パージ剤の使用量Wsの割合を表す値であり、下記式(1)によって規定される。
【0059】
PA=(100×Ws)/Wr ・・・(1)
【0060】
実施例及び比較例の各パージ剤について、パージ量PAを後述する表2に示す。
【0061】
(評価2:次樹脂による置換性能の評価)
評価1で成型機内残留物を洗浄した後の各射出成型機について、内部に残留するパージ剤を次樹脂で置換して、各パージ剤の置換性能を評価した。具体的には、焼け樹脂を洗浄した後の射出成型機(パージ剤が残留する射出成型機)に、無色透明のPS樹脂(次樹脂)を投入し、射出成型機により射出成型を繰り返した。射出成型機から射出される成型物を目視で確認して、パージ剤の混入が認められなくなった時点で射出成型を停止し、それまでに射出成型機から排出された次樹脂の総量を測定した。
【0062】
実施例及び比較例のパージ剤について、次樹脂の総量を、後述する表2に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
表2に示す通り、実施例1〜6のパージ剤は、パージ量PAが30%以下であり、次樹脂の総量が700g以下であった。特に、非極性樹脂の含有量が25〜35質量%以上であり極性樹脂の含有量が65〜75質量%である実施例3は、パージ量PAが25%であり、次樹脂の総量が500gであり、その他の実施例と比較して、成型機内残留物の除去性能が高く、また、次樹脂の置換性能についても同等以上であった。
【0065】
一方、比較例1〜7のパージ剤は、パージ量PAが60%以上であり、実施例1〜6のパージ量PAの2倍以上もあった。また、比較例1〜7のパージ剤は、次樹脂の総量が1400g以上あり、実施例1〜6の次樹脂の総量の2倍以上もあった。
【0066】
以上の結果から、実施例1〜6のパージ剤は、成型機内残留物に対する優れた除去性能と、次樹脂による優れた置換性能の両方を有していることが理解できた。また、本発明のパージ剤を使用すれば、樹脂替えや色替えを容易に行うことができることも明らかとなった。
【要約】
【課題】 焼け樹脂を除去しやすいことに加え、次樹脂によって置換されやすいパージ剤を提供する。
【解決手段】 樹脂成型加工機の洗浄に用いられるパージ剤であって、溶融温度が異なる非極性樹脂と極性樹脂の混合物からなり、前記非極性樹脂と前記極性樹脂の溶融温度の差の絶対値が20〜50℃であり、前記混合物は、前記パージ剤100質量%に対して25〜50質量%の前記非極性樹脂と、前記パージ剤100質量%に対して50〜75質量%の前記極性樹脂と、が非溶融状態で混合されたものである、ことを特徴とするパージ剤。
【選択図】 なし