特許第6854556号(P6854556)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6854556
(24)【登録日】2021年3月18日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】冷凍庫および冷凍品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F25D 17/02 20060101AFI20210329BHJP
   F25D 9/00 20060101ALI20210329BHJP
【FI】
   F25D17/02 302
   F25D9/00 B
【請求項の数】15
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2021-2421(P2021-2421)
(22)【出願日】2021年1月8日
【審査請求日】2021年1月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520166095
【氏名又は名称】感動創出工場ジーンファクトリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129573
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 博正
(72)【発明者】
【氏名】仁居 弘一
(72)【発明者】
【氏名】田中 正彦
【審査官】 西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−506513(JP,A)
【文献】 特開2002−306144(JP,A)
【文献】 特開2006−143271(JP,A)
【文献】 特開2016−129492(JP,A)
【文献】 特公平7−79613(JP,B2)
【文献】 特開平10−183109(JP,A)
【文献】 特開平9−227859(JP,A)
【文献】 特開2008−202886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 9/00
F25D 17/02
A23B 4/06
A23L 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を浸けて冷凍するための冷却媒体であって、液状で用いられる冷却媒体を容器に溜めて冷却する冷凍庫において、
電線を介して供給される電気により駆動されて、前記容器の前記冷却媒体に接する側に接して前記容器を振動させる振動子と、
前記振動子の前記容器に接する部分を露出させるように、前記振動子および前記電線を格納し、前記振動子の長手方向の長さよりも長く、前記容器の深さよりも短い筒と、
前記筒の内部に充填されて、前記筒の内部で前記電線が前記冷却媒体に接触しないように封止して、前記筒の内面に接触しないように前記振動子および前記電線を保持するゴム弾性体の保持材と
を含む冷凍庫。
【請求項2】
請求項1に記載の冷凍庫において、
前記冷却媒体は、エタノール水溶液と、植物の種子を摂氏400度以上500度未満で熱分解した生成物を粉砕してなる粉体と、水溶性のケイ素化合物とを含む
冷凍庫。
【請求項3】
請求項2に記載の冷凍庫において、
前記粉体は、前記エタノール水溶液に対して0.5重量%乃至1.0重量%であり、
前記水溶性のケイ素化合物は、前記エタノール水溶液に対して0.5重量%乃至1.0重量%である
冷凍庫。
【請求項4】
請求項2に記載の冷凍庫において、
前記粉体は、前記エタノール水溶液に分散された場合、静置状態において24時間以上懸濁の状態を維持する
冷凍庫。
【請求項5】
請求項2に記載の冷凍庫において、
前記粉体は、粒子径の分布の中心を示す代表値が10μm以下である
冷凍庫。
【請求項6】
請求項2に記載の冷凍庫において、
前記粉体は、15重量%乃至19重量%のカリウムと1重量%乃至3重量%のリンとを含む
冷凍庫。
【請求項7】
請求項2に記載の冷凍庫において、
前記粉体は、pH7の溶液中においてマイナス0.5mVのゼータ電位を生じさせる
冷凍庫。
【請求項8】
請求項2に記載の冷凍庫において、
前記粉体は、豆類である前記種子を熱分解した前記生成物を粉砕してなる
冷凍庫。
【請求項9】
請求項2に記載の冷凍庫において、
前記エタノール水溶液は、60重量%未満のエタノールを含む
冷凍庫。
【請求項10】
請求項1に記載の冷凍庫において、
予め定められた時間、前記電線を介して前記振動子に電気を供給するタイマーをさらに含む
冷凍庫。
【請求項11】
請求項1に記載の冷凍庫において、
前記保持材は、充填されると硬化してゴム弾性体になる
冷凍庫。
【請求項12】
請求項11に記載の冷凍庫において、
前記保持材は、シリコーンシーラントである
冷凍庫。
【請求項13】
請求項1に記載の冷凍庫において、
前記振動子は、圧電素子により振動する
冷凍庫。
【請求項14】
エタノール水溶液に、植物の種子を摂氏400度乃至500度で熱分解した生成物を粉砕してなる粉体を混合し、
前記エタノール水溶液に水溶性のケイ素化合物を混合し、
前記粉体と前記ケイ素化合物とが混合された前記エタノール水溶液を冷却容器に入れて液状のまま摂氏0度より低い温度に冷却し、
物品を密封容器に入れ、
前記冷却容器を振動させ、
前記密封容器に入れられた物品を、振動している前記冷却容器に入れられた冷却された前記エタノール水溶液に浸けて冷凍させる
冷凍品の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の冷凍品の製造方法において、
前記エタノール水溶液に対して0.5重量%乃至1.0重量%の前記粉体を混合し、
前記エタノール水溶液に対して0.5重量%乃至1.0重量%の水溶性の前記ケイ素化合物を混合する
冷凍品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷凍庫および冷凍品の製造方法に関し、特に、食品、化粧品または医療用の物品など冷凍する冷凍庫および冷凍品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍庫には、氷点下まで冷却した液体に対象物を浸けて冷凍させるブライン式冷凍庫がある。
【0003】
従来、エチルアルコール、水、プロピレングリコールを含有して成る混合物を食品用のブラインとして使用することを特徴とするブライン組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、炭素数が1乃至3の脂肪族アルコールを含有する水溶液に対し、その凍結温度を降下させるために、芳香族カルボン酸塩および亜硝酸塩からなる群から選ばれてなる少なくとも1つの化合物を配合したことを特徴とする冷却液組成物も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−183109号公報
【特許文献2】特開平9−227859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のブライン組成物や特許文献2の冷却液組成物では、安全性は考慮されているものの、摂氏マイナス40度程度での使用が考えられている。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、より低い温度で、より速く物品を冷凍できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の側面の冷凍庫は、物品を浸けて冷凍するための冷却媒体であって、液状で用いられる冷却媒体を容器に溜めて冷却する冷凍庫であって、電線を介して供給される電気により駆動されて、容器の冷却媒体に接する側に接して容器を振動させる振動子と、振動子の容器に接する部分を露出させるように、振動子および電線を格納し、振動子の長手方向の長さよりも長く、容器の深さよりも短い筒と、筒の内部に充填されて、筒の内部で電線が冷却媒体に接触しないように封止して、筒の内面に接触しないように振動子および電線を保持するゴム弾性体の保持材と含む。
【0009】
冷却媒体には、エタノール水溶液と、植物の種子を摂氏400度以上500度未満で熱分解した生成物を粉砕してなる粉体と、水溶性のケイ素化合物とを含ませることができる。
【0010】
粉体は、エタノール水溶液に対して0.5重量%乃至1.0重量%とし、水溶性のケイ素化合物は、エタノール水溶液に対して0.5重量%乃至1.0重量%とすることができる。
【0011】
粉体は、エタノール水溶液に分散された場合、静置状態において24時間以上懸濁の状態を維持するものとすることができる。
【0012】
粉体は、粒子径の分布の中心を示す代表値が10μm以下であるものとすることができる。
【0013】
粉体は、15重量%乃至19重量%のカリウムと1重量%乃至3重量%のリンとを含むものとすることができる。
【0014】
粉体は、pH7の溶液中においてマイナス0.5mVのゼータ電位を生じさせるものとすることができる。
【0015】
粉体は、豆類である種子を熱分解した生成物を粉砕してなるものとすることができる。
【0016】
エタノール水溶液は、60重量%未満のエタノールを含むものとすることができる。
【0017】
予め定められた時間、電線を介して振動子に電気を供給するタイマーをさらに設けることができる。
【0018】
保持材を、充填されると硬化してゴム弾性体になるものとすることができる。
【0019】
保持材を、シリコーンシーラントとすることができる。
【0020】
振動子を、圧電素子により振動するものとすることができる。
【0021】
本発明の第2の側面の冷凍品の製造方法は、エタノール水溶液に、植物の種子を摂氏400度乃至500度で熱分解した生成物を粉砕してなる粉体を混合し、エタノール水溶液に水溶性のケイ素化合物を混合し、粉体とケイ素化合物とが混合されたエタノール水溶液を冷却容器に入れて液状のまま摂氏0度より低い温度に冷却し、物品を密封容器に入れ、冷却容器を振動させ、密封容器に入れられた物品を、振動している冷却容器に入れられた冷却されたエタノール水溶液に浸けて冷凍させる。
【0022】
エタノール水溶液に対して0.5重量%乃至1.0重量%の粉体を混合し、エタノール水溶液に対して0.5重量%乃至1.0重量%の水溶性のケイ素化合物を混合することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、より低い温度で、より速く物品を冷凍できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施の形態の冷凍庫の外観を説明する図である。
図2】冷凍庫1の断面図である。
図3】振動部51の構成の例を示す図である。
図4】粒径が5μm程度の粉体を示す図である。
図5】粉体の成分分析の結果の例を示す図である。
図6】粉体の粒度分布を示す図である。
図7】植物の種子を熱分解した生成物を粉砕してなる粉体をエタノール水溶液に混合したときの状態を示す図である。
図8】静置状態で24時間経過した場合の粉体が混合されたエタノール水溶液の状態を示す図である。
図9】冷凍品の製造の手順を示すフローチャートである。
図10】牛肩ロースブロック肉を冷凍する場合の時間に対する中心温度の変化を示す図である。
図11】ブリ切り身を冷凍する場合の時間に対する中心温度の変化を示す図である。
図12】鶏もも肉を冷凍する場合の時間に対する中心温度の変化を示す図である。
図13】一般家庭用冷凍庫で冷凍した生サバを解凍したときのドリップを示す図である。
図14】冷凍庫1で冷凍した生サバを解凍したときのドリップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図1乃至図14を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施の形態の冷凍庫の外観を説明する図である。冷凍庫1は、冷凍庫の一例であり、外形が概ね直方体状に形成されている一体型冷凍庫である。冷凍庫1は、圧縮機、凝縮器、膨張弁および蒸発器などを内蔵し、後述する冷凍室の内壁に冷却器が埋設され、摂氏零度より低い温度まで冷凍室を冷却する。冷凍庫1は、圧縮機、凝縮器、膨張弁および蒸発器などを内蔵し、内部に冷凍室が設けられている本体11と、本体11に対してヒンジ(図示せず)を介して開閉自在に設けられている扉12と、冷凍室内の温度を調節するための温度調節器13とを含み構成されている。また、冷凍庫1には、加振部36が設けられている。加振部36の詳細は後述する。
【0027】
なお、図1において、3次元空間(直交座標空間)を表すX軸、Y軸およびZ軸からなる座標軸で示される方向のうち、図1中の右上と左下とを結ぶ方向はX軸方向を示し、図1中の右下と左上とを結ぶ方向はY軸方向を示し、図1中の上下方向はZ軸方向を示す。また、以下、X軸方向のうち、図1中の左下側を単に左側と称し、X軸方向のうち、図1中の右上側を単に右側と称する。さらに、以下、Y軸方向のうち、図1中の右下側を単に前側と称し、Y軸方向のうち、図1中の左上側を単に後側と称する。さらにまた、以下、Z軸方向のうち、図1中の上側を単に上側と称し、Z軸方向のうち、図1中の下側を単に下側と称する。なお、右上側がX軸の正の方向であり、左上側がY軸の正の方向であり、上側がZ軸の正の方向である。また、Z軸方向を、単に上下方向とも称し、X軸およびY軸に平行な面に沿う方向を単に水平方向または横方向とも称する。なお、下方向は重力が加わる方向である。図2においても同様である。
【0028】
図2は、X軸およびZ軸で規定される平面であって、図1のA-A’線で示される位置に沿った平面での断面を示す冷凍庫1の断面図である。冷凍庫1の内側には、冷却される空間である冷凍室31が形成されている。冷凍室31の下側、すなわち、本体11側は、冷却器32で囲われている。冷却器32は、ステンレススチールやガルバナイズ鋼板などの鋼板または銅板など伝熱性の高い材料であって、エタノールに対して耐食性に優れる材料で形成されている。冷却器32は、容器としても形成されている。冷却器32は、容器または冷却容器の一例である。冷却器32には、内部に液状の冷却媒体37が溜められている。例えば、冷却器32は、槽状に形成されている。冷却器32の面のうち、冷凍室31側の面に対向する面には、圧縮機、凝縮器および膨張弁などからなるコンデンシングユニット33に配管で接続されている熱交換器が設けられている。熱交換器は、冷却器32から吸熱して、コンデンシングユニット33の凝縮器は、排熱する。これにより、冷凍室31が冷却される。
【0029】
冷却器32の外側は、発泡ポリウレタン樹脂または真空パネルなどからなる断熱材34で覆われている。また、扉12には、発泡ポリウレタン樹脂または真空パネルなどからなる断熱材35が詰められている。すなわち、冷凍室31の全体は、断熱材34および断熱材35で囲われている。
【0030】
なお、冷却器32は、容器として液状の冷却媒体37を溜めることが出来ればよく、形状が限定されることはなく、半球状のボール状としても、さらに蓋を設けたりしても良い。
【0031】
加振部36は、電気により物理的な振動を発生し、冷却器32に物理的な振動を加える。例えば、加振部36は、外部から供給されるか、コンデンシングユニット33から供給される商用電源、すなわち、100Vまたは200Vなどの電圧の交流電源が供給されると、物理的な振動を発生させる。加振部36は、振動部51、電線52およびタイマー53を含み構成されている。振動部51は、冷凍室31の中、すなわち、容器である冷却器32の内側、言い換えれば、冷却器32の冷却媒体37を溜める側に設けられている。振動部51は、電線52を介してタイマー53から所定の電圧の直流電源が供給されると、物理的な振動を発生し、冷却器32に物理的な振動を加える。冷却器32に加えられた物理的な振動により、冷却媒体37が振動させられる。振動部51は、円柱状に形成されている。振動部51は、冷却器32の縦方向の角の部分に、冷却器32の側面(縦面)に沿って設けられている。振動部51の側面は、冷却器32の側面(縦面)に、ネジ止め、接着剤、またはクリップなどにより留められている。振動部51の底面は、冷却器32の底面に接している。すなわち、振動部51の底面は、冷却器32の冷却媒体37に接する側に接している。
【0032】
電線52は、2芯の絶縁電線であり、例えば、シースケーブルまたはキャブタイヤケーブルなどの絶縁電線をさらに保護被覆で覆ったケーブルである。電線52は、冷凍庫1の外側の側面に設けられているタイマー53と冷凍室31に設けられている振動部51とを接続する。例えば、電線52は、本体11と扉12との間を通される。電線52は、タイマー53から所定の電圧の直流電源が供給されると、その直流電源を振動部51に供給する。
【0033】
タイマー53は、電線および差込プラグを介して、外部の商用電源を供給するための配線用差込接続器のプラグ受け(いわゆる、コンセント)に接続されるか、またはコンデンシングユニット33に設けられているプラグ受け(いわゆる、コンセント)に接続される。すなわち、例えば、タイマー53には、100Vまたは200Vなどの電圧の交流電源である商用電源が供給される。タイマー53は、商用の交流の電圧の電源を直流の電圧の電源に変換する整流器、所定の時間が経過すると電源を遮断する電子式のオフタイマーおよび振動部51への電源の供給を開始させるためのスイッチ54を含む。スイッチ54は、開閉器であり、押しボタンスイッチ、メンブレンスイッチまたはトグルスイッチなどで構成されている。タイマー53は、使用者によってスイッチ54が操作されると、商用の交流の電圧の電源を直流の電圧の電源に変換して、電線52を介して、振動部51に直流の電圧の電源を供給する。タイマー53は、スイッチ54が操作された時点から電子的に経過する時間を計時して、スイッチ54が操作されてから所定の時間が経過すると、振動部51に供給する電源を遮断する。すなわち、タイマー53は、予め定められた時間、電線52を介して振動部51に電気を供給する。
【0034】
次に、振動部51の構成の詳細について説明する。図3は、振動部51の構成の例を示す図である。図3(A)、図3(B)および図3(C)は、それぞれ、振動部51の正面図、上面図および底面図である。図3(D)は、図3(B)のB-B’線で示される位置に沿った平面での断面を示す振動部51の断面図である。なお、図3(B)および図3(C)は、後述する保持材73を除いた、振動子71、筒72および電線52の構成を示す。振動部51は、振動子71、筒72および保持材73を含み構成されている。振動子71は、電線52を介して供給される電気により駆動されて、冷却器32の冷却媒体37に接する側に接して、冷却器32を物理的に振動させる。例えば、振動子71は、圧電素子により物理的に振動する。例えば、振動子71は、円盤状の圧電素子であって、円形の両面に電圧が印加されると厚み方向に振動する圧電素子を、圧電素子の径とほぼ同じ径の鋼製の2つの円柱で挟んで構成されている。例えば、この場合、振動子71は、冷却器32の底面を押圧する方向に振動する。例えば、振動子71は、50KHzの周波数で振動する。例えば、2芯の絶縁電線である電線52の導体である芯は、それぞれ、振動子71の圧電素子の両面に通じる電極に接続されている。振動子71によって冷却器32が振動させられると、冷却媒体37が振動する。
【0035】
筒72は、エタノール水溶液に侵されにくく、所定の剛性を有する素材で、両側の端部が開いている中空の筒状に形成されている。筒72は、振動子71の冷却器32に接する部分を露出させるように、振動子71および電線52を格納する。
【0036】
例えば、筒72は、一定の径で、一定の厚さで、側面がZ軸方向に直線状の円筒状に形成されている。例えば、筒72は、ステンレススチールやガルバナイズ鋼などの鋼、ニッケル合金、すず合金、銅合金、またはチタニウム合金などの金属で形成されている。例えば、筒72には、エタノール水溶液による腐食を防止するためのコーティングがされている。筒72の長さは、冷凍室31に納めるために、冷却器32の深さ、すなわち、冷却器32の冷却媒体37を溜める側のZ軸方向の長さより短くされる。また、筒72の長さは、振動子71を納めるために、振動子71の長手方向(Z軸方向)の長さよりも長くされる。より好ましくは、筒72の長さは、冷却器32に溜められる冷却媒体37の深さよりも長くされる。
【0037】
筒72の外側の側面には、プレート81−1−1、81−1−2、81−2−1および81−2−2が固定されている。プレート81−1−1、81−1−2、81−2−1および81−2−2は、それぞれ板状に形成されている。例えば、プレート81−1−1および81−1−2は、筒72の外側の側面の上側に、互いに90度の角度で固定されている。また、例えば、プレート81−2−1および81−2−2は、筒72の外側の側面の下側に、互いに90度の角度で固定されている。筒72は、プレート81−1−1、81−1−2、81−2−1および81−2−2によって、冷却器32の縦面に、ネジ止め、接着剤、またはクリップなどにより留められる。
【0038】
保持材73は、ゴム弾性体の素材からなり、筒72の内部に充填される。例えば、保持材73は、筒72の一方の端部から他方の端部まで、筒72の内部に充填される。保持材73は、筒72内に振動子71および電線52を保持する。保持材73は、振動子71と筒72の内面とが接触しないように、筒72の内部に振動子71を保持する。また、保持材73は、電線52と筒72の内面とが接触しないように、筒72の内部に電線52を保持する。保持材73は、電線52と冷却媒体37とが接触しないように筒72の内部に電線52を封止する。すなわち、保持材73は、筒72の内部に充填されて、筒72の内部で電線52が冷却媒体37に接触しないように封止して、筒72の内面に接触しないように振動子71および電線52を保持する。
【0039】
例えば、保持材73は、充填前は比較的粘度が高く、筒72の内部に充填されると硬化してゴム弾性体になる素材からなる。例えば、保持材73は、シリコーンシーラントである。例えば、保持材73は、変成シリコーンシーラントまたはウレタンシーラントとすることができる。なお、保持材73は、充填剤、シーリング材、シーラント、シール材またはコーキング材などとも称される。
【0040】
保持材73は、弾性を有し、筒72の内面に接触しないように振動子71および電線52を保持するので、振動子71の振動を妨げず、振動子71の振動が減衰しにくく、振動子71の振動が冷却器32により効率的に伝達される。また、保持材73は、筒72の内部で電線52が冷却媒体37に接触しないように封止するので、後述するようにエタノールを含む冷却媒体37に接触することによる電線52の劣化、より正確には電線52の被覆の劣化を防止することができる。
【0041】
なお、筒72は、四角または六角などの角筒状で会っても良く、部位により径が異なるものであっても、部位により厚さの異なるものであっても、曲がっていてもよい。例えば、筒72の両側の端部は、筒72の中央部分に比較して、径が絞られているものであってもよく、また、筒72の両側の端部の厚さが、筒72の中央部分の厚さに比較して厚くするようにしてもよい。さらに、例えば、筒72の両側の端部のいずれか一方を内フランジ状または外フランジ状に形成するようにしてもよい。
【0042】
また、振動部51は、冷却器32に対して斜めに配置するようにしてもよい。すなわち、振動部51の長手方向が冷却器32の底面に対して交差にするように振動部51を配置するようにしてもよい。
【0043】
なお、冷凍庫1は、一体型冷凍庫に限らず、所望の温度まで冷却できるものであればよく、定置式冷凍ユニット、コンデンシングユニットと別置型ショーケース若しくは冷凍倉庫とからなるものであっても、縦型または横型の業界用冷凍庫であってもよい。また、冷凍庫1は、いずれの冷却方式でもよく、往復動式(レシプロ式)若しくは回転式の容量圧縮式、遠心式(ターボ式)、吸収式、空気冷凍サイクルを利用したターボ型、ペルチェ効果を利用した電子冷凍機または磁気冷凍機とすることができる。
【0044】
次に、冷却媒体37の詳細について説明する。冷却媒体37は、冷凍庫1内の冷却器32に溜められて冷却され、物品を浸けることにより物品を冷凍するために液状で用いられる。冷却媒体37は、エタノール水溶液と、植物の種子を熱分解した生成物を粉砕してなる粉体と、水溶性のケイ素化合物とを含む。
【0045】
エタノール水溶液は、エタノール(エチルアルコール)と水とを所定の割合で混合したものである。エタノールは、様々な有機物質を溶解でき、1価アルコール類の中では比較的毒性が低い。また、エタノールは、水と自由な割合で混和することができる。エタノール水溶液において、エタノールの濃度は、任意の値とすることができ、例えば、10重量%乃至90重量%とすることができる。
【0046】
例えば、エタノールの濃度が60重量%の場合、エタノール水溶液単独の凝固点は、摂氏マイナス45.4度である。
【0047】
また、エタノールの濃度が60重量%未満の場合、エタノール水溶は、消防法において、非危険物として扱われる。
【0048】
次に、冷却媒体37に含まれる粉体の詳細について説明する。
【0049】
エタノール水溶液に混合される粉体は、植物の種子を熱分解した生成物を粉砕してなる。例えば、植物の種子は、小豆、大豆、エンドウ豆、ひよこ豆または落花生の種子などの豆類である。植物の種子は、半密閉の電気炉で摂氏400度以上500度未満の温度で熱分解される。植物の種子が熱分解されて得られた生成物は、ボールミルなどの粉砕機で、粒子径の分布の中心を示す代表値が10μm以下である粉体に粉砕される。
【0050】
ここで、半密閉とは、大気雰囲気よりも酸素分圧が減じられている状態をいう。例えば、半密閉は、炭焼き窯のように、焼成空間内の雰囲気と外気との置換が抑制されるように、焼成空間と外部とを隙間や小孔で連通するようにした状態をいう。このようにすることで、植物の種子は、酸化または燃焼が抑制された状態で加熱され、熱分解される。例えば、植物の種子をアルミナ容器に収容して、電気炉で加熱することで、植物の種子を熱分解した生成物を得ることができる。
【0051】
植物の種子を摂氏400度以上500度未満の温度で熱分解した生成物は、中低温での熱分解処理のため、柔らかく、極めて容易に粉砕できる。これに対して、備長炭は、摂氏1,000度近くの高温で焼成処理が行われるので、金属並みの硬度を有する。
【0052】
例えば、植物の種子を摂氏400度以上500度未満の温度で熱分解した生成物を、アルミナボールと共にボールミルポットに入れて、ボールミルポットを回転させることで粉砕する。例えば、粉砕して得られた粉体は、所定のメッシュのふるいにかけられる。
【0053】
図4は、走査型電子顕微鏡を用いて10,000倍で撮影した、粒径が5μm程度の粉体を示す図である。粉体の外形には角がなく、容易に粉砕されることがわかる。また、粉体には、微細孔が生じていない。
【0054】
図5は、粉体の成分分析の結果の例を示す図である。図5に示される粉体に含まれる元素の割合は、CHN元素分析(Elemental Analysis(Carbon, Hydrogen, Nitrogen))および蛍光X線分析により求められたものである。図5に示される例において、小豆である植物の種子を熱分解した生成物を粉砕してなる粉体には、66.5重量%の炭素、17.1重量%のカリウム、6.1重量%の窒素、4.2重量%の水素、2.78重量%のリン、1.4重量%のカルシウム、0.8重量%のマグネシウム、0.5重量%の硫黄、0.26重量%の鉄、0.07重量%の亜鉛、0.05重量%のマンガン、0.03重量%のケイ素、0.02重量%のアルミニウムおよび0.01重量%の銅が含まれている。
【0055】
植物の種子を摂氏400度以上500度未満の温度で熱分解した生成物には、カリウムおよびリンが含まれ、これにより親水性が生じる。ここで、カリウムは、アルカリ金属である。また、植物の種子を摂氏400度以上500度未満の温度で熱分解した生成物には、マグネシウムが含まれている。マグネシウムは、アルカリ水を生成させる。
【0056】
小豆、大豆、エンドウ豆、ひよこ豆または落花生の種子などの豆類である植物の種子を熱分解した生成物を粉砕してなる粉体には、15重量%乃至19重量%のカリウムと1重量%乃至3重量%のリンとが含まれる。また、豆類を熱分解した生成物は、比較的容易に粉砕することができ、粒子径の分布の中心の値が10μm以下である粉体を容易に得ることができる。
【0057】
これに対して、摂氏500度以上で熱分解した場合、炭素以外の元素の含有比率が下がり、摂氏800度以上で熱分解した場合、炭素の含有比率は、95重量%を超える。熱分解の温度が高く、炭化が進みすぎると、焼成物は水溶性を失う。
【0058】
また、一般的に、電気性を帯びた粒子(微粒子)が溶液の中で移動する場合、微弱な電流が発生する。植物の種子を熱分解した生成物を粉砕してなる粉体は、pH7の溶液中においてマイナス0.5mVのゼータ電位を生じさせる。従って、植物の種子を熱分解した生成物を粉砕してなる粉体は、タンパク質などのプラス電位を持つ物質と結合するなどの独特の化学反応を生じさせる。また、植物の種子を熱分解した生成物を粉砕してなる粉体は、pH7の溶液中においてマイナス0.5mVのゼータ電位を生じさせるので、互いに反発しあい、分散しやすくなる。
【0059】
さらに、小豆である植物の種子を摂氏400度以上500度未満の温度で熱分解した生成物を、ボールミルなどの粉砕機で粉砕して得られた粉体の粒度分布を測定した。なお、粉体の粒度分布の測定は、粒子群にレーザ光を照射し、そこから発せられる回折・散乱光の強度分布パターンから計算によって粒度分布を求めるレーザ回折式粒子径分布測定装置を用いた。この場合、レーザ回折式粒子径分布測定装置の測定範囲は、0.05μmから3,000μmまでである。測定回数は4回である。
【0060】
図6は、体積相対粒度分布および個数相対粒度分布により、測定された粉体の粒度分布を示す図である。図6の横軸は、粒子径(μm)を対数で示し、縦軸は、相対粒子量(%)を示す。平均粒径(平均値)は、7.4μmであり、最頻値(モード)は、8.5μmである。中央値(メディアン)は、8.491μmである。平均偏差は、0.373である。平均値、最頻値および中央値は、それぞれ、粒子径の分布の中心を示す代表値の一例である。
【0061】
このように、植物の種子を熱分解した生成物を粉砕してなる粉体は、粒子径の分布の中心を示す代表値が10μm以下となるまで粉砕される。
【0062】
次に、植物の種子を熱分解した生成物を粉砕してなる粉体の親水性について説明する。図7は、植物の種子を熱分解した生成物を粉砕してなる粉体をエタノール水溶液に混合したときの状態を示す図である。植物の種子を熱分解した生成物を粉砕してなる粉体は、高い濡れ性を有し、速やかにエタノール水溶液に沈降する。
【0063】
エタノール水溶液に対して、植物の種子を熱分解した生成物を粉砕してなる粉体を1重量%混合すると懸濁液となり、墨汁状の液体となる。
【0064】
これに対して、広葉樹木を材料に摂氏800度以上の高温で焼成される一般的な炭を粉砕して生成された粒子は、強い疎水性を示し、濡れ性も低いため、エタノール水溶液に混合すると、表面にしばらく浮遊してから沈降する。なお、一般的な炭を粉砕して粒子を生成しても、微粒化が困難であり、その粒径はおおむね20μmとなる。
【0065】
エタノール水溶液に対して、一般的な炭を粉砕してなる粉体を1重量%混合すると直後は懸濁液となり、墨汁状の液体となる。
【0066】
植物の種子を熱分解した生成物を粉砕してなる粉体をエタノール水溶液に混合して分散させ、静置状態で24時間以上経過しても懸濁の状態が維持される。図8は、静置状態で24時間経過した場合の粉体が混合されたエタノール水溶液の状態を示す図である。図8中の左側は、植物の種子を熱分解した生成物を粉砕してなる粉体をエタノール水溶液に分散させて静置状態で24時間経過した状態を示す。図8中の右側は、一般的な炭を粉砕してなる粉体をエタノール水溶液に分散させて静置状態で24時間経過した状態を示す。
【0067】
一般的な炭を粉砕してなる粉体をエタノール水溶液に分散させて静置状態で24時間経過すると、粒子が沈殿してしまい、上澄みは透明になる。これに対して、植物の種子を熱分解した生成物を粉砕してなる粉体をエタノール水溶液に分散させると、静置状態で24時間経過しても、墨汁状を維持し、懸濁の状態が維持される。植物の種子を熱分解した生成物を粉砕してなる粉体をエタノール水溶液に分散させると、1週間程度経過しても、容器の底に若干の凝集沈殿物が発生するが、懸濁の状態が維持される。
【0068】
冷却媒体37において、エタノール水溶液に対して0.5重量%乃至1.0重量%の粉体が混合させられる。
【0069】
また、植物の種子を摂氏400度以上500度未満の温度で熱分解した生成物は、人体に無害であることが確認できた。
【0070】
次に、冷却媒体37に含まれる水溶性のケイ素化合物について説明する。水溶性のケイ素化合物は、ややとろみを有する透明な液体である。例えば、水溶性のケイ素化合物は、ケイ酸塩である。
【0071】
例えば、水溶性のケイ素化合物は、次のような手順で生成される。ケイ素の純度の高い鉱石が、摂氏1,600度程度の高温で焼成されてガス化させられ、ガス化したケイ素成分が回収される。この回収されたケイ素は、常温では、細かいビーズ状の結晶となる。このケイ素の結晶が、強アルカリまたは強酸で加熱融解処理され、液化させられる。例えば、アルカリ(例えば、炭酸ナトリウムまたは水酸化ナトリウム)で処理されたケイ素は、ケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)(メタケイ酸ナトリウム)すなわち塩となり、水溶性(水に可溶性)となる。
【0072】
また、稲の籾殻を燃焼させて、その灰を強アルカリ処理し、液化したケイ素化合物を抽出することにより水溶性のケイ素化合物を得ることもできる。
【0073】
メタケイ酸ナトリウムは、温泉の主要成分としても知られている。メタケイ酸ナトリウムは、塩であるため水溶化する。液化親水性ケイ素化合物も水に可溶性である。
【0074】
一般的なケイ酸塩(ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシュウムまたはケイ酸マグネシウムなどが含まれる)は、洗剤や石鹸に配合される。洗剤や石鹸に配合されるケイ酸塩は、汚れ粒子を分散させ、衣類への再付着を抑制する。ケイ酸塩は、液体中をまんべんなく浮遊し運動することが広く知られている。
【0075】
シリカ(SiO2)は、イオン交換物質として多用されており、親水性ケイ素化合物も電気的な特性を有する。親水性ケイ素化合物の溶液中の運動性も電気的刺激により惹起される。
【0076】
なお、冷却媒体37に含まれる水溶性のケイ素化合物としては、電気的な特性が明らかなので、無機ケイ素化合物が、好ましい。
【0077】
冷却媒体37において、エタノール水溶液に対して0.5重量%乃至1.0重量%の水溶性のケイ素化合物が混合させられる。例えば、冷却媒体37において、エタノール水溶液に対して0.5重量%乃至1.0重量%のケイ酸塩が混合させられる。
【0078】
冷却媒体37に含まれる水溶性のケイ素化合物は、植物の種子を熱分解した生成物を粉砕してなる粉体をエタノール水溶液中に分散させる。これにより、水溶性のケイ素化合物は、冷却媒体37の凍結を抑制する。
【0079】
言い換えれば、エタノール水溶液に、植物の種子を摂氏400度以上500度未満で熱分解した生成物を粉砕してなる粉体と、水溶性のケイ素化合物とを混合すると、凝固点が下がる。
【0080】
エタノールの濃度が60重量%のエタノール水溶液の凝固点は、摂氏マイナス45.4度である。例えば、エタノールの濃度が60重量%のエタノール水溶液に、植物の種子を摂氏400度以上500度未満で熱分解した生成物を粉砕してなる粉体であって、エタノール水溶液に対して0.5重量%乃至1.0重量%の粉体と、エタノール水溶液に対して0.5重量%乃至1.0重量%の水溶性のケイ素化合物とを混合すると、摂氏マイナス60度で液相を維持し、液状の冷却媒体37として摂氏マイナス60度で実用できる。
【0081】
また、水溶性のケイ素化合物による電気的刺激に加えて、加振部36の振動子71により物理的な振動を加えることで親水性の粉体がエタノール水溶液に分散する。さらに、冷却媒体37が振動して流れが生じる。これにより、冷却媒体37の凍結が抑制される。エタノール水溶液単独の場合に比較して、より低い温度まで凝固しなくなり、より低い温度で使用することができるようになる。これにより、より速く物品を冷凍できる。
【0082】
図9は、冷凍品の製造の手順を示すフローチャートである。ここで、冷凍する物品は、不動産以外の有体物であればよい。冷凍する物品は、植物または動物の生物由来の物とすることができる。例えば、冷凍する物品は、食品、化粧品または医療用の物とすることができる。例えば、化粧品は、プラセンタ(胎盤から抽出した成分)、コラーゲンまたはアミノ酸を含んだものとすることができる。例えば、医療用の物は、ヒト幹細胞などの細胞、臓器、歯、血液、細胞若しくは組織を加工した医薬品若しくは医療機器、または生物由来製品などである。
【0083】
ステップS11において、エタノール水溶液が容器に入れられる。ここで、エタノール水溶液のエタノールの濃度は、任意とすることができる。例えば、エタノール水溶液のエタノールの濃度は、60重量%未満とすることができる。さらに、例えば、エタノール水溶液のエタノールの濃度は、10重量%乃至90重量%のいずれかとすることができる。摂氏マイナス60度より低い温度まで冷却する場合、エタノール水溶液のエタノールの濃度は、60重量%以上と、より高くされ、摂氏マイナス60度より高い温度まで冷却する場合、エタノール水溶液のエタノールの濃度は、60重量%未満と、より低くされる。
【0084】
ステップS12において、種子を摂氏400度乃至500度で熱分解し、粉砕して生成した粉体が、容器に入れられたエタノール水溶液に混合される。この場合、例えば、エタノール水溶液に、植物の種子を摂氏400度乃至500度で熱分解した生成物を粉砕してなる粉体であって、エタノール水溶液に対して0.5重量%乃至1.0重量%の粉体が混合される。
【0085】
ステップS13において、水溶性のケイ素化合物が、容器に入れられたエタノール水溶液に混合される。この場合、例えば、エタノール水溶液に、エタノール水溶液に対して0.5重量%乃至1.0重量%の水溶性のケイ素化合物が混合される。
【0086】
ステップS14において、粉体と水溶性のケイ素化合物とが混合されたエタノール水溶液を冷凍庫1の冷凍室31内の冷却器32に入れる。
【0087】
ステップS15において、冷凍庫1により、粉体と水溶性のケイ素化合物とが混合されたエタノール水溶液が摂氏零度より低い温度まで冷却される。例えば、エタノール水溶液のエタノールの濃度が60重量%である場合、冷凍庫1により、粉体と水溶性のケイ素化合物とが混合されたエタノール水溶液が摂氏マイナス60度まで冷却される。
【0088】
ステップS16において、冷凍しようとする物品を密封容器に入れる。例えば、冷凍しようとする物品が、食品、化粧品または医療用の物品である場合、プラスチックフィルム若しくは金属箔またはこれらを多層に合わせたものを袋状その他の形に成形した容器であって、熱溶融により密封される容器である密封容器(いわゆるパウチ容器)に冷凍しようとする物品が入れられる。なお、密封容器は、樹脂、金属若しくはガラスまたはこれらの組合せからなる容器で、冷凍する物品がエタノール水溶液に直接触れないように密閉でき、冷凍庫1の冷凍室31の温度までの冷却に耐えられるものであればよい。また、冷凍しようとする物品は、固体状であっても、液体状であってもよく、また、ゾル状またはゲル状であってもよい。
【0089】
ステップS17において、加振部36により、冷却容器である冷却器32を振動させる。
【0090】
ステップS18において、密封容器に入れられた物品を、振動している冷却器32に入れられた冷却された、粉体と水溶性のケイ素化合物とが混合されたエタノール水溶液に浸けて冷凍させる。
【0091】
ステップS19において、タイマー53により、所定の時間が経過したか否かを判定する。例えば、ステップS19において、タイマー53により、冷却器32を振動させて10分間が経過したか否かを判定する。ステップS19において、所定の時間が経過していないと判定された場合、手続きはステップS19に戻り、判定の処理が繰り返される。
【0092】
ステップS19において、所定の時間が経過したと判定された場合、手続きはステップS20に進み、タイマー53の電源の遮断により、冷却器32への加振を停止して、冷凍品の製造の手順は終了する。
【0093】
次に、冷却器32への物理的な振動による、冷凍時間の短縮について説明する。発明者は、各種の食材により、冷却器32への物理的な振動が無い場合の冷凍時間と、冷却器32への物理的な振動が有る場合の冷凍時間とを実験により比較した。この実験においては、冷却媒体37の温度は、摂氏−60度とした。冷凍する食材として、牛肩ロースブロック肉、ブリ切り身または鶏もも肉をそれぞれ用いた。牛肩ロースブロック肉、ブリ切り身または鶏もも肉のいずれかである食材の中心部まで温度センサーを穿刺し固定して、温度を測定した。
【0094】
図10は、牛肩ロースブロック肉を冷凍する場合の冷凍を開始してからの経過時間に対する中心温度の変化を示す図である。冷却器32への物理的な振動が無い場合の冷凍時間の測定に用いた牛肩ロースブロック肉の重量は、201gであった。一方、冷却器32への物理的な振動が有る場合の冷凍時間の測定に用いた牛肩ロースブロック肉の重量は、204gであった。
【0095】
図10において、横軸は、牛肩ロースブロック肉を冷却媒体37に浸けてからの経過時間を示す。図10において、縦軸は、牛肩ロースブロック肉の中心の温度を示す。
【0096】
図10において、点線は、冷却器32への物理的な振動が無い場合の、牛肩ロースブロック肉を冷却媒体37に浸けてからの経過時間に対する牛肩ロースブロック肉の中心の温度を示す。図10において、実線は、冷却器32への物理的な振動が有る場合の、牛肩ロースブロック肉を冷却媒体37に浸けてからの経過時間に対する牛肩ロースブロック肉の中心の温度を示す。冷却媒体37に浸けるときの牛肩ロースブロック肉の中心の温度は摂氏+13度であった。
【0097】
冷却器32への物理的な振動が有る場合、冷却媒体37に浸けてから6分間の時間が経過したとき、牛肩ロースブロック肉の中心の温度が摂氏+1度まで下がり、冷却媒体37に浸けてから7.5分間の時間が経過したとき、牛肩ロースブロック肉の中心の温度が摂氏−1度まで下がった。また、冷却器32への物理的な振動が有る場合、冷却媒体37に浸けてから10分間の時間が経過したとき、牛肩ロースブロック肉の中心の温度が摂氏−8度に到達し、冷却媒体37に浸けてから14分間の時間が経過したとき、牛肩ロースブロック肉の中心の温度が摂氏−20度に到達した。冷却器32への物理的な振動が有る場合、牛肩ロースブロック肉の中心の温度が摂氏−41度に到達するには、冷却媒体37に浸けてから19分間の時間がかかった。
【0098】
冷却器32への物理的な振動が有る場合、牛肩ロースブロック肉を冷却媒体37に浸けた直後から急速に温度が低下し、温度の停滞もなく、摂氏−50度に至った。
【0099】
一方、冷却器32への物理的な振動が無い場合、牛肩ロースブロック肉の中心の温度が摂氏+1度に到達するには、冷却媒体37に浸けてから10.5分間の時間がかかり、牛肩ロースブロック肉の中心の温度が摂氏−1度に到達するには、冷却媒体37に浸けてから12分間の時間がかかった。また、冷却器32への物理的な振動が無い場合、牛肩ロースブロック肉の中心の温度が摂氏−8度に到達するには、冷却媒体37に浸けてから14分間の時間がかかり、牛肩ロースブロック肉の中心の温度が摂氏−20度に到達するには、冷却媒体37に浸けてから17分間の時間がかかった。冷却器32への物理的な振動が無い場合、牛肩ロースブロック肉の中心の温度が摂氏−41度に到達するには、冷却媒体37に浸けてから21.5分間の時間がかかった。
【0100】
冷却器32への物理的な振動が有る場合と、冷却器32への物理的な振動が無い場合とでは、牛肩ロースブロック肉を冷却媒体37に浸けてから10分経過したとき、中心の温度には、摂氏10度の差が生じた。
【0101】
図11は、ブリ切り身を冷凍する場合の冷凍を開始してからの経過時間に対する中心温度の変化を示す図である。冷却器32への物理的な振動が無い場合の冷凍時間の測定に用いたブリ切り身の重量は、126gであった。一方、冷却器32への物理的な振動が有る場合の冷凍時間の測定に用いたブリ切り身の重量は、128gであった。
【0102】
図11において、横軸は、ブリ切り身を冷却媒体37に浸けてからの経過時間を示す。図11において、縦軸は、ブリ切り身の中心の温度を示す。
【0103】
図11において、点線は、冷却器32への物理的な振動が無い場合の、ブリ切り身を冷却媒体37に浸けてからの経過時間に対するブリ切り身の中心の温度を示す。図11において、実線は、冷却器32への物理的な振動が有る場合の、ブリ切り身を冷却媒体37に浸けてからの経過時間に対するブリ切り身の中心の温度を示す。冷却媒体37に浸けるときのブリ切り身の中心の温度は摂氏+21度であった。
【0104】
冷却器32への物理的な振動が有る場合、冷却媒体37に浸けてから3分間の時間が経過したとき、ブリ切り身の中心の温度は摂氏−1度まで下がり、冷却媒体37に浸けてから4分間の時間が経過したとき、ブリ切り身の中心の温度が摂氏−8度に到達した。また、冷却器32への物理的な振動が有る場合、冷却媒体37に浸けてから6分間の時間が経過したとき、ブリ切り身の中心の温度が摂氏−20度まで下がり、冷却媒体37に浸けてから11分間の時間が経過したとき、ブリ切り身の中心の温度が摂氏−40度に到達した。
【0105】
一方、冷却器32への物理的な振動が無い場合、ブリ切り身の中心の温度が摂氏0度に到達するには、冷却媒体37に浸けてから5分間の時間がかかり、ブリ切り身の中心の温度が摂氏−7度に到達するには、冷却媒体37に浸けてから7分間の時間がかかった。また、冷却器32への物理的な振動が無い場合、ブリ切り身の中心の温度が摂氏−18度に到達するには、冷却媒体37に浸けてから9分間の時間がかかり、ブリ切り身の中心の温度が摂氏−39度に到達するには、冷却媒体37に浸けてから12分間の時間がかかった。
【0106】
冷却器32への物理的な振動が有る場合と、冷却器32への物理的な振動が無い場合とでは、ブリ切り身を冷却媒体37に浸けてから10分経過したとき、中心の温度には、摂氏11度の差が生じた。
【0107】
図12は、鶏もも肉を冷凍する場合の冷凍を開始してからの経過時間に対する中心温度の変化を示す図である。冷却器32への物理的な振動が無い場合の冷凍時間の測定に用いた鶏もも肉の重量は、319gであった。一方、冷却器32への物理的な振動が有る場合の冷凍時間の測定に用いた鶏もも肉の重量は、326gであった。
【0108】
図12において、横軸は、鶏もも肉を冷却媒体37に浸けてからの経過時間を示す。図12において、縦軸は、鶏もも肉の中心の温度を示す。
【0109】
図12において、点線は、冷却器32への物理的な振動が無い場合の、鶏もも肉を冷却媒体37に浸けてからの経過時間に対する鶏もも肉の中心の温度を示す。図12において、実線は、冷却器32への物理的な振動が有る場合の、鶏もも肉を冷却媒体37に浸けてからの経過時間に対する鶏もも肉の中心の温度を示す。冷却媒体37に浸けるときの鶏もも肉の中心の温度は摂氏+25度であった。
【0110】
冷却器32への物理的な振動が有る場合、却媒体37に浸けてから3分間の時間が経過したとき、鶏もも肉の中心の温度が摂氏−3度に下がり、冷却媒体37に浸けてから5分間の時間が経過したとき、鶏もも肉の中心の温度が摂氏−8度に到達した。また、冷却器32への物理的な振動が有る場合、冷却媒体37に浸けてから12分間の時間が経過したとき、鶏もも肉の中心の温度が摂氏−19度まで下がり、冷却媒体37に浸けてから18分間の時間が経過したとき、鶏もも肉の中心の温度が摂氏−40度に到達した。
【0111】
一方、冷却器32への物理的な振動が無い場合、鶏もも肉の中心の温度が摂氏+1度に到達するには、冷却媒体37に浸けてから10分間の時間がかかり、鶏もも肉の中心の温度が摂氏−1度に到達するには、冷却媒体37に浸けてから12分間の時間がかかった。また、冷却器32への物理的な振動が無い場合、鶏もも肉の中心の温度が摂氏−15度に到達するには、冷却媒体37に浸けてから15分間の時間がかかり、鶏もも肉の中心の温度が摂氏−40度に到達するには、冷却媒体37に浸けてから19分間の時間がかかった。
【0112】
冷却器32への物理的な振動が有る場合と、冷却器32への物理的な振動が無い場合とでは、鶏もも肉を冷却媒体37に浸けてから10分経過したとき、中心の温度には、摂氏16度の差が生じた。温度の差が大きいのは、鶏もも肉の皮の断熱性によるものと考えられる。
【0113】
このように、冷却器32に物理的な振動を加えると、より低い温度で、より速く食材などの物品を冷凍できる。一般に、冷却した液状の冷却媒体に食材を入れて静置した場合、食材が有する熱により、食材の周辺の冷却媒体の温度が上昇してしまう。これに対して、冷却器32に物理的な振動を加えると、液状の冷却媒体37に流れを惹起し、より温度の低い冷却媒体37に食材などの物品が晒されることになり、より速く冷凍することができる。
【0114】
食材に含有される水分の氷結膨張は摂氏+1度から摂氏−7度において起こり、この温度帯が長時間に渡るほど細胞の破壊が起こることが知られている。いわば、徐々にゆっくりと水分が膨張する場合、細胞膜が耐え切れず破壊に至るが、瞬時の氷結であれば細胞破壊は起こらない。この違いは、解凍後のドリップ(細胞逸脱液体)で顕著となるが、冷凍庫1を用いると、当該温度帯を全く停滞なく高速で通過するため、細胞を破壊せず、食材本来の風味および食感を保持できる。
【0115】
詳細な効果やメカニズムは不明であるが、治療的超音波には,皮膚潰瘍、腱損傷、骨折の治癒促進効果があると報告されており、例えば、骨格筋への応用も期待されている。この点を考慮すると、振動によって、低温状態で細胞の壊死を抑制して、細胞を非破壊で冷凍するとも考えられる。
【0116】
冷却媒体37に含まれる粉体および水溶性のケイ素化合物は、振動により運動を惹起され、マイナス0.5mVのゼータ電位を生じさせ、微弱電流を発生する。微弱電流下では、冷凍時の細胞破壊が抑制されるとの報告例もある。
【0117】
冷却器32に溜められている冷却媒体37の液面付近と冷却器32の底付近とでは、扉12の開閉により、摂氏1度から摂氏3度程度の温度差が生じるが、冷却器32に物理的な振動を加えると、冷却媒体37が撹拌されるので、温度差が小さくなり、冷却器32に溜められている冷却媒体37の温度がより均一になる。
【0118】
また、振動子71を動作させると発熱するので、継続して動作させると冷却媒体37を加熱させることになる。図10乃至図12を参照して説明したように、冷凍する物品を冷却媒体37に浸けてから所定の時間だけ振動子71を動作させると、より効果的であり、例えば、タイマー53を用いて、冷凍する物品を冷却媒体37に浸けてから10分間振動子71を動作させることが好ましい。
【0119】
次に、ドリップの減少について説明する。冷却器32への物理的な振動により、冷凍時間が短縮されると、解凍したときのドリップが減少する。発明者は、血液や内蔵を抜いていない、いわゆる、丸ごとの生サバを用いて、冷凍庫1(冷凍する場合、冷却器32に物理的な振動を加えた)で冷凍した生サバを流水で解凍したときのドリップと、一般家庭用冷凍庫で冷凍した生サバを流水で解凍したときのドリップとを実験により比較した。
【0120】
同条件となるよう、冷凍庫1で冷凍する生サバおよび一般家庭用冷凍庫で冷凍する生サバを、それぞれに、別個のナイロン製の密封容器に入れて、脱気した(真空にした)のち冷凍した。それぞれの生サバは、一般的な解凍方法である水道水の流水にて解凍したのち、両試料から浸出し密封容器内に貯留したドリップの重量を測定して、比較した。また、解凍時には、両試料とも温度センサーを用いて内部温度を測定し、摂氏+1度になるまで、すなわち解凍完了までの時間を計測した。
【0121】
冷凍庫1で冷凍した生サバは、体長375mm、重量612.69gであった。解凍を開始したときの内部温度は摂氏−56度であった。一般家庭用冷凍庫で冷凍した生サバは、体長405mm、重量680.94gであった。解凍を開始したときの内部温度は摂氏−14度であった。
【0122】
図13は、一般家庭用冷凍庫で冷凍した生サバを解凍したときのドリップを示す図である。密封容器に流れ出たドリップの量は、56.03gであった。一般家庭用冷凍庫で冷凍した生サバの重量に対するドリップの重量の比は、8.22%である。解凍の開始から摂氏+1度になるまでの時間は、16分42秒であった。
【0123】
図14は、冷凍庫1で冷凍した生サバを解凍したときのドリップを示す図である。密封容器に流れ出たドリップの量は、6.95gであった。冷凍庫1で冷凍した生サバの重量に対するドリップの重量の比は、1.13%である。解凍の開始から摂氏+1度になるまでの時間は、17分55秒であった。
【0124】
このように、冷凍庫1で冷凍した生サバは、解凍したときのドリップが減少する。なお、冷凍庫1で冷凍した生サバの内部温度が摂氏−56度であり、一般家庭用冷凍庫で冷凍した生サバの内部温度が摂氏−14度であり、摂氏42度の差があったが、内部温度が摂氏+1度となり解凍が完了するまでの時間は、73秒の差に留まった。
【0125】
このように、冷凍品を製造することができる。エタノール水溶液に浸けることで、より短時間により多くの熱が奪われるので、より速く冷凍品を製造することができる。粉体と水溶性のケイ素化合物とが混合されたエタノール水溶液は、エタノール水溶液単独の場合に比較して、より低い温度まで凝固しないので、さらにより速く冷凍品を製造することができる。また、粉体と水溶性のケイ素化合物とが混合されたエタノール水溶液は、エタノール水溶液単独の場合に比較して、より低い温度まで凝固しないので、冷凍品の劣化をより少なくすることができ、より長い期間保存することができるようになる。
【0126】
エタノールの濃度が60重量%に近い、非危険物の60重量%未満のエタノール水溶液を用いた場合、非危険物であり、摂氏マイナス60度で凝集しないので、より安全に、無菌化することができる。
【0127】
振動を加えることにより、冷却媒体37が同じ温度であっても、より低い温度で、より速く食材などの物品を冷凍できる。
【0128】
なお、振動子71は、50KHzの周波数で振動すると説明したが、これに限らず、可聴領域であっても、20KHz乃至3MHzの周波数で振動させるようにしてもよい。また、振動子71は、圧電素子により振動すると説明したが、これに限らず、偏心振動モーターやリニアバイブレータなど他の方式であってもよい。また、振動子71は、縦方向(上下方向)の振動を加えると説明したが、これに限らず、横方向の振動を加えるものであってもよい。さらに、加振部36は、冷却器32の側面に振動を加えるようにしてもよい。なお、振動子71の形状は、円柱状に限らず、角柱状、円錐状、角錐状など、さらに、フランジが形成されているなどのいずれの形状であってもよい。
【0129】
また、タイマー53は、電子式のオフタイマーを含むと説明したが、これに限らず、経過時間を計時できればよく、機械的に回されるダイヤル式のタイマーであってもよい。さらに、タイマー53は、所望の時間で振動部51に供給する電源を遮断するように選択または設定できるようにしてもよい。
【0130】
なお、冷却器32とは別に、冷却器32の中に、冷却媒体37を溜めるための固定式または取り外し可能な容器を設けるようにしてもよい。この場合、加振部36は、冷却器32に物理的な振動を加えるようにしても、冷却器32の中の冷却媒体37を溜める容器に物理的な振動を加えるようにしてもよい。
【0131】
以上のように、冷凍庫1は、物品を浸けて冷凍するための冷却媒体37であって、液状で用いられる冷却媒体37を容器である冷却器32に溜めて冷却する。振動子71は、電線52を介して供給される電気により駆動されて、冷却器32の冷却媒体37に接する側に接して冷却器32を振動させる。筒72は、振動子71の冷却器32に接する部分を露出させるように、振動子71および電線52を格納し、振動子71の長手方向の長さよりも長く、冷却器32の深さよりも短い。保持材73は、ゴム弾性体でなり、筒72の内部に充填されて、筒72の内部で電線52が冷却媒体37に接触しないように封止して、筒72の内面に接触しないように振動子71および電線52を保持する。
【0132】
振動子71が、冷却媒体37を溜めて冷却する容器である冷却器32に振動を加えることで、冷却媒体37が振動して流れが生じるので、より温度の低い冷却媒体に食材などの物品が晒されることになり、より温度の低い冷却媒体37に食材などの物品が晒されることになり、より低い温度で、より速く冷凍することができる。
【0133】
冷却媒体37には、エタノール水溶液と、植物の種子を摂氏400度以上500度未満で熱分解した生成物を粉砕してなる粉体と、水溶性のケイ素化合物とを含ませることができる。エタノール水溶液に、植物の種子を摂氏400度以上500度未満で熱分解した生成物を粉砕してなる粉体と水溶性のケイ素化合物とを混ぜることで、親水性の粉体がエタノール水溶液により長い時間分散し、また、水溶性のケイ素化合物が粉体の分散を促進させるので、粉体がエタノール水溶液の凝固を阻害して、エタノール水溶液単独の場合に比較して、より低い温度まで凝固しなくなり、より低い温度で使用することができるようになる。これにより、より速く物品を冷凍できる。水溶性のケイ素化合物による電気的刺激に加えて、加振部36の振動子71により物理的な振動を加えることで親水性の粉体がエタノール水溶液に分散する。振動子71が、冷却媒体37を溜めて冷却する容器である冷却器32に振動を加えることで、粉体が分散し、より低い温度まで凝固しなくなり、より低い温度で使用することができるようになる。
【0134】
また、使用する温度が同じであれば、植物の種子を摂氏400度以上500度未満で熱分解した生成物を粉砕してなる粉体と水溶性のケイ素化合物とを混ぜることで、エタノール水溶液におけるエタノールの割合をより少なくすることができ、より安全に使用することができる。植物の種子を摂氏400度以上500度未満で熱分解した生成物を粉砕してなる粉体および水溶性のケイ素化合物は、いずれも人体に無害なので、仮に、浸けられている物品に付着したとしても、より安全に取り扱うことができる。このように、より低い温度で凝固を抑制して、より安全に、より速く物品を冷凍できる。
【0135】
粉体は、エタノール水溶液に対して0.5重量%乃至1.0重量%とし、水溶性のケイ素化合物は、エタノール水溶液に対して0.5重量%乃至1.0重量%とすることができる。このようにすることで、親水性の粉体がエタノール水溶液により長い時間分散し、また、水溶性のケイ素化合物が粉体の分散を促進させることができる。
【0136】
粉体は、エタノール水溶液に分散された場合、静置状態において24時間以上懸濁の状態を維持するものとすることができる。このようにすることで、静置した場合でも、より長時間、粉体がエタノール水溶液の凝固を阻害できる。
【0137】
粉体は、粒子径の分布の中心を示す代表値が10μm以下であるものとすることができる。このようにすることで、粉体が分散しやすくなり、エタノール水溶液の凝固を阻害できる。
【0138】
粉体は、15重量%乃至19重量%のカリウムと1重量%乃至3重量%のリンとを含むものとすることができる。このようにすることで、粉体が親水性となり、エタノール水溶液により長い時間分散し、エタノール水溶液の凝固を阻害できる。
【0139】
粉体は、pH7の溶液中においてマイナス0.5mVのゼータ電位を生じさせるものとすることができる。このようにすることで、粉体が互いに反発しあい、分散しやすくなり、エタノール水溶液の凝固を阻害できる。振動子71が、冷却媒体37を溜めて冷却する容器である冷却器32に振動を加えることで、振動により粉体の運動が惹起され、微弱電流が発生して、冷凍時の細胞破壊が抑制される。
【0140】
粉体は、豆類である種子を熱分解した生成物を粉砕してなるものとすることができる。このようにすることで、より確実に所望の特性の粉体を得ることができ、より低い温度で凝固を抑制して、より安全に、より速く物品を冷凍できる。
【0141】
エタノール水溶液は、60重量%未満のエタノールを含むものとすることができる。このようにすることで、エタノール水溶が、消防法において、非危険物として扱われ、より多くの冷却媒体37をより簡単に扱うことができる。
【0142】
予め定められた時間、電線52を介して振動子71に電気を供給するタイマー53をさらに設けることができる。このようにすることで、冷却媒体37の温度が上がることなく、より低い温度で、より速く冷凍することができる。
【0143】
保持材73を、充填されると硬化してゴム弾性体になるものとすることができる。このようにすることで、振動子71の振動が抑えられることなく、より効率的に、振動子71による振動を冷却器32に伝達することができる。
【0144】
保持材73を、シリコーンシーラントとすることができる。
【0145】
振動子71を、圧電素子により振動するものとすることができる。
【0146】
エタノール水溶液に、植物の種子を摂氏400度乃至500度で熱分解した生成物を粉砕してなる粉体を混合し、エタノール水溶液に水溶性のケイ素化合物を混合し、粉体とケイ素化合物とが混合されたエタノール水溶液を冷却容器である冷却器32に入れて液状のまま摂氏0度より低い温度に冷却し、物品を密封容器に入れ、冷却容器である冷却器32を振動させ、密封容器に入れられた物品を、振動している冷却器32に入れられた冷却されたエタノール水溶液に浸けて冷凍させることで、冷凍品を製造することができる。
【0147】
エタノール水溶液に対して0.5重量%乃至1.0重量%の粉体を混合し、エタノール水溶液に対して0.5重量%乃至1.0重量%の水溶性のケイ素化合物を混合することができる。
【0148】
また、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0149】
1 冷凍庫, 11 本体, 12 扉, 13 温度調節器, 31 冷凍室, 32 冷却器, 33 コンデンシングユニット, 34および35 断熱材, 36 加振部, 37 冷却媒体, 51 振動部, 52 電線, 53 タイマー, 54 スイッチ, 71 振動子, 72 筒, 73 保持材, 81−1−1,81−1−2,81−2−1および81−2−2 プレート
【要約】
【課題】より低い温度で、より速く物品を冷凍できるようにする。
【解決手段】物品を浸けて冷凍するための冷却媒体であって、液状で用いられる冷却媒体を容器に溜めて冷却する冷凍庫において、電線を介して供給される電気により駆動されて、容器の冷却媒体に接する側に接して容器を振動させる振動子と、振動子の容器に接する部分を露出させるように、振動子および電線を格納し、振動子の長手方向の長さよりも長く、容器の深さよりも短い筒と、筒の内部に充填されて、筒の内部で電線が冷却媒体に接触しないように封止して、筒の内面に接触しないように振動子および電線を保持するゴム弾性体の保持材と含む。
【選択図】図2
図1
図2
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図10
図11
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図14