(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6854586
(24)【登録日】2021年3月18日
(45)【発行日】2021年4月7日
(54)【発明の名称】ステンレス鋼のスケール除去方法
(51)【国際特許分類】
C23G 3/00 20060101AFI20210329BHJP
B24C 3/14 20060101ALI20210329BHJP
B24C 3/32 20060101ALI20210329BHJP
B24C 5/02 20060101ALI20210329BHJP
B24C 5/06 20060101ALI20210329BHJP
B24C 9/00 20060101ALI20210329BHJP
【FI】
C23G3/00 Z
B24C3/14
B24C3/32 A
B24C5/02 B
B24C5/06 C
B24C9/00 C
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-216480(P2015-216480)
(22)【出願日】2015年11月4日
(65)【公開番号】特開2016-108661(P2016-108661A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2018年10月31日
(31)【優先権主張番号】14/562,040
(32)【優先日】2014年12月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505309969
【氏名又は名称】ザ マテリアル ワークス,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ヴォージス,ケヴィン シー.
(72)【発明者】
【氏名】クリスレー,スチュアート エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ミュース,アラン アール.
【審査官】
西田 彩乃
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−503544(JP,A)
【文献】
特開2005−125334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23G 3/00
B24C 3/14
B24C 3/32
B24C 5/02
B24C 5/06
B24C 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレス鋼のスケールを除去する方法であって、
所定長のステンレス鋼板金が前進方向にスケール除去装置を通過する際に、所定長の前記ステンレス鋼板金の少なくとも1つの表面に対して、スケール除去媒体を押し流す様に構成される第1動翼輪及び第2動翼輪を有するスケール除去装置を設け、
前記第1動翼輪及び第2動翼輪は、前記スケール除去装置と連通するスケール除去媒体の供給源から前記スケール除去媒体を受けるために、前記スケール除去装置上に配置され、
前記第2動翼輪は、前記第2動翼輪により押し流される前記スケール除去媒体が、前記第1動翼輪により押し流される前記スケール除去媒体を妨げない様に、前記前進方向に沿って前記第1動翼輪から距離を置いて配置され、
前記第1動翼輪及び第2動翼輪を反対方向に回転させて、前記第1動翼輪が受け取った前記スケール除去媒体が、前記スケール除去装置を通過する所定長の前記ステンレス鋼板金の全幅を横切る様に、前記ステンレス鋼板金の少なくとも1つの表面に対して、前記第1動翼輪により押し流され、かつ、前記第2動翼輪が受け取った前記スケール除去媒体が、前記スケール除去装置を通過する所定長の前記ステンレス鋼板金の全幅を横切る様に、前記ステンレス鋼板金の少なくとも1つの表面に対して、前記第2動翼輪により押し流される様な方法により、前記第1動翼輪及び第2動翼輪は、少なくとも1つの動力源と、動作可能な様に接続され、
前記第1動翼輪及び第2動翼輪は、前記ステンレス鋼板金が前記第1動翼輪及び前記第2動翼輪間に配置される際、前記ステンレス鋼板金の両側端部に隣接して配置可能であり;
ステンレス鋼板金を押すまたは引くために構成された他の装置を有する前記プッシュプル板金処理ライン内に、少なくとも1つの前記スケール除去装置を設ける工程;及び
前記少なくとも1つのスケール除去装置を用いて、前記ステンレス鋼板金の少なくとも1つの表面から全てのスケールを除去するために、前記プッシュプル板金処理ラインにおいて、前記ステンレス鋼板金を処理する工程;
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記方法は、液体及び粒を有する懸濁液としての前記スケール除去媒体を供給する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
プッシュプル板金処理ライン内に少なくとも1つの前記スケール除去装置を設ける工程は、縫合装置を有するプッシュプル板金処理ラインを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記スケール除去装置は更に以下を含み;
前記ステンレス鋼板金からスケールを除去する様に構成された前記スケール除去セルを設け、
前記スケール除去セルは、中空の内部、筐体入口開口部、及び筐体出口開口部を有する筐体を有し、
前記スケール除去セルは、前記筐体入口開口部を介して前記ステンレス鋼板金を受け、前記筐体を通して前記筐体出口開口部から外へ前記ステンレス鋼板金を前進させる様に構成され、
前記筐体入口開口部及び前記筐体出口開口部は、前記ステンレス鋼板金の厚さ及び前記ステンレス鋼板金の幅を収容可能な大きさを有し;
前記方法は更に以下の工程を含み;
前記スケール除去セルを通してステンレス鋼板金の帯を前進させる工程;
前記ステンレス鋼板金を前記スケール除去セルを通して前進させる際に前記ステンレス鋼板金の幅を横切る様に、前記ステンレス鋼板金の上面及び下面の少なくとも一方の面に対して、スケール除去媒体を押し流す工程;及び
前記スケール除去媒体の衝突のみにより、前記ステンレス鋼板金の表面から全ての前記スケールを除去する様に、前記ステンレス鋼板金の上面及び下面の少なくとも一方の面に対する前記スケール除去媒体の衝突の速度を制御する工程;
を含む方法。
【請求項5】
回転羽根車を用いて、前記ステンレス鋼板金の上面及び下面の少なくとも一方の面に対して、前記スケール除去媒体を推し流す工程を更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法であって、
前記ステンレス鋼板金の第1表面の隣に第1回転軸を有する第1動翼輪を配置し、前記第1表面は、前記ステンレス鋼板金の上面及び下面の少なくとも一方の面を含む工程;
前記ステンレス鋼板金の前記第1表面の隣に第2回転軸を有する第2動翼輪を配置する工程;
前記スケール除去媒体を、前記第1動翼輪及び前記第2動翼輪に供給する工程;
前記ステンレス鋼板金の前記第1表面の全幅を横切る様に延在する第1領域に対して、前記第1動翼輪を回転させることにより、前記第1動翼輪に供給される前記スケール除去媒体が押し流される様に、前記第1回転軸を軸として前記第1動翼輪を回転させる工程;
前記ステンレス鋼板金の前記第1表面の全幅を横切る様に延在する第2領域に対して、前記第2動翼輪を回転させることにより、前記第2動翼輪に供給される前記スケール除去媒体が押し流される様に、前記第2回転軸を軸として前記第2動翼輪を回転させる工程;
前記第1動翼輪及び前記第2動翼輪を反対方向に回転させる工程;及び
所定長の前記ステンレス鋼板金に沿って第1領域が第2領域から離間している前記ステンレス鋼板金の前記第1表面に対して、前記第1動翼輪及び第2動翼輪を配置する工程、
を更に含む、方法。
【請求項7】
前記第1動翼輪及び第2動翼輪を、前記ステンレス鋼板金が前記第1動翼輪及び第2動翼輪間に配置される際、前記ステンレス鋼板金の両側端部に隣接して配置する工程を更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法であって、
前記ステンレス鋼板金の第1表面の反対側に位置する前記ステンレス鋼板金の第2表面の隣に第3回転軸を有する第3動翼輪を配置する工程;
前記ステンレス鋼板金の第2表面の隣に第4回転軸を有する第4動翼輪を配置する工程;
前記スケール除去媒体を、前記第3動翼輪及び前記第4動翼輪に供給する工程;
前記ステンレス鋼板金の前記第2表面の全幅を横切る様に延在する第3領域に対して、前記第3動翼輪を回転させることにより、前記第3動翼輪に供給される前記スケール除去媒体が押し流される様に、前記第3回転軸を軸として前記第3動翼輪を回転させる工程;
前記ステンレス鋼板金の前記第2表面の全幅を横切る様に延在する第4領域に対して、前記第4動翼輪を回転させることにより、前記第4動翼輪に供給される前記スケール除去媒体が押し流される様に、前記第4回転軸を軸として前記第4動翼輪を回転させる工程;
前記第3動翼輪及び前記第4動翼輪を反対方向に回転させる工程;及び
所定長の前記ステンレス鋼板金に沿って第3領域が第4領域から離間している前記ステンレス鋼板金に対して、前記第3動翼輪及び第4動翼輪を配置する工程
を更に含む、方法。
【請求項9】
前記第3動翼輪及び第4動翼輪を、前記ステンレス鋼板金が前記第3動翼輪及び第4動翼輪間に配置される際、前記ステンレス鋼板金の両側端部に隣接して沿う様に配置する工程を更に含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステンレス鋼のスケール除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる開示は、本明細書において参照により組み込まれた特許文献1に開示されたスケール除去装置を用いたステンレス鋼のスケール除去方法を対象とする。特に、かかる開示は、処理ラインを用いてステンレス鋼帯を押すまたは引くために構成された他の装置を有する処理ライン内の上述したスケール除去装置の使用を対象とする。
【0003】
一般的には、熱延炭素鋼(HRCS)は、処理ラインを用いて熱延炭素鋼帯を押すまたは引くために構成された装置を有する処理ライン内において処理されるものとしてもよい。これらのタイプのラインでは、帯の長さを有する上記熱延炭素鋼帯は一般的に、端の無い帯を形成するために一緒に溶接または縫合されることはないが、上記処理ラインを用いて帯毎に押されるまたは引かれる。これにより、処理量を少なくすると共に、生産計画において、ある程度の柔軟性を確保する。
【0004】
熱延炭素鋼(HRCS)を処理するための代表的なプッシュプル酸洗ライン(PPPL)を
図1及び
図2に示す。処理された板金は、解きリール10により解かれ、プロセッサ12及び分断ばさみ14へ向かう。その後、該板金は、スケールを除去するために板金が酸洗溶液内に沈められる酸洗槽16の中へ向かう。板金は、酸洗槽16から出た後、該板金からピクリング酸を除去するすすぎ器18へ向かう。その後、上記板金は、検査台22及び分断ばさみ24に向かう前に、ドライヤ20において乾燥させられる。輪状穴(ループピット)26は、上記板金が様々な処理装置を通過する際に、ライン速度を変化させるために提供されるものとしてもよい。上記板金は、輪状穴26を出た後、ステアリングピンチロール及び帯センタリング装置28を通過するものとしてもよい。その後、上記板金は、張りリール36において巻かれる前に、側部トリマ30、制動台32、及び給油機34を通過するものとしてもよい。
【0005】
各生産工程毎に、熱延炭素鋼(HRCS)帯は、解き器10により解かれ、上記ライン内の各機械及び位置を通って、巻き装置及び張りリール36に到達するものとしてもよい。特に、上記熱延炭素鋼帯は、塩酸酸洗溶液に浸される様に、該溶液の入った酸洗槽16を通されるものとしてもよい。一般的に、槽16は、各コイル生産工程において上記熱延炭素鋼帯が上記ラインを通る工程の間に、塩酸酸洗溶液の反応だけでなく、上記鋼帯の先端により引き起こされる摩耗にも耐え得る花こう岩を原料として生成される。
【0006】
また、熱延炭素鋼(HRCS)は、
図3〜
図5に示す様な半連続酸洗ライン(SCPL)において処理されるものとしてもよい。半連続酸洗ライン(SCPL)は、上述したプッシュプル処理ラインとして、幾つかの同じ工程及び装置を有する。しかしながら、半連続ラインは、上記ラインの前部及び上記ラインの後部において処理速度を可変とする装置及び追加された輪状穴、並びに、上記ラインを通って一連の帯を連続的に解いて引っ張ることにより、各コイル生産工程毎に発生し得る、プッシュプル処理ラインでの通板処理を回避することのできる溶接機または縫合機を有する。
【0007】
図3に示す様に、上記熱延炭素鋼(HRCS)帯は、巻き戻し機(アンコイラ)40から解かれ、プロセッサ42及び分断ばさみ44へ向かう。その後、縫合機46は、剥がされた上記コイルの先端を、その時に生産工程内にある帯の後端に接合させる。解かれている上記帯及びその時に生産工程内にある帯の処理速度に違いをもたせるために、入口に輪状穴48を設けるものとしてもよい。ローラ50もまた、縫合機46及び/または輪状穴48の近傍に設けられ、縫合中のライン速度に所要の変化を与えるものとしてもよい。
図4に示す様に、上記帯が入口の輪状穴48を出ると直ぐに、上記帯は、酸洗槽52、洗浄処理部54、ドライヤ56及び検査台58へ向かう。上記ラインの前部及び上記ラインの後部における処理速度に違いをもたせるために、出口に、輪状穴60を設けるものとしてもよい。
図5に示す様に、出口の輪状穴60から出た上記帯は、張りリール72により巻かれる前に、ステアリングピンチロール及び帯センタリング装置62、側部トリマ64、制動台66、分断ばさみ68並びに給油機70へ向かうものとしてもよい。
【0008】
熱延炭素鋼(HRCS)は、鋼種、要求される生産量及び帯製品のサイズに応じて、プッシュプル酸洗ライン(PPPL)または半連続酸洗ライン(SCPL)において処理可能であるが、ステンレス鋼帯の処理は、処理ラインの配置が異なる結果となり、かつ、プッシュプル構成のラインを従来から用いない、異なる手順及び処理を含む。
【0009】
ステンレス鋼からスケールを除去するために、熱延炭素鋼のために使用される酸洗溶液よりも反応性の高い酸性の酸洗溶液が、使用される。例えば、ステンレス鋼を酸洗いするためには、通常、フッ化水素酸が用いられる。しかしながら、熱延炭素鋼帯の処理においてフッ化水素酸を使用すると、塩酸を使用するラインとは異なった処理ラインの設計検討が必要となる。一般的にフッ化水素酸は花こう岩を分解するため、熱延炭素鋼を処理するラインにおいて従来から使用される花こう岩槽は、例えば、プラスチック製の槽といった他の素材に代えられなければならない。プラスチック製の槽は、ステンレス鋼を処理するラインにおいて使用される酸洗溶液の高い反応性に耐え得るが、その様なプラスチック製の槽は、生産工程の最初の段階において通板処理中に上記帯の先端により引き起こされる摩耗に耐えることはできない。従って、ステンレス鋼を処理するラインにおいて、通板処理は、酸洗槽に予期された寿命の早過ぎる減少を回避するため、しばしば最小化または省略される。ステンレス鋼を処理するラインにおいて通板処理が最小化されるため、ステンレス鋼は、従来から、プッシュプル処理ラインでは処理されない。プッシュプル処理ラインにおいてステンレス鋼を処理すると、各コイルの生産工程毎に通板処理が必要となるであろうし、過度の通板処理は、プラスチック製の酸洗槽の予期された寿命を急速に減少させるであろう。通板処理に関する問題を回避するために、ステンレス鋼は、従来から、半連続または連続の処理ラインにおいて処理される。ステンレス鋼を酸洗いするために従来から使用されるフッ化水素酸は、プラスチック製の槽の中に入れられるものとしてもよい。そして、通板工程は繰り返し行われないため、プラスチック製の酸洗槽を損傷するリスクは減少する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第7601226号明細書
【特許文献2】米国特許第8062095号明細書
【特許文献3】米国特許第8066549号明細書
【特許文献4】米国特許第8074331号明細書
【特許文献5】米国特許第8128460号明細書
【特許文献6】米国特許第8707529号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
特許文献1は、板金からスケールを取り除くと共に、板金の表面からスケールを除去するために使用される酸洗い工程を省略するスケール除去装置を開示する。特許文献1は概して、熱延炭素鋼及びステンレス鋼の双方のスケール除去を可能とするスケール除去装置を開示するが、特許文献1は一方で、処理ラインにおける酸洗槽をその様なスケール除去装置に取り換えることにより、上述の様なスケール除去を行うことを教示する。例えば、特許文献1並びにその子出願特許(その開示内容の全てが本明細書において参照により組み込まれている特許文献2、特許文献3、特許文献4、及び特許文献5を含む)は、熱延炭素鋼からスケールを除去すること、及び上述の処理ラインにおいて事前に使用される酸洗槽をスケール除去装置に取り換えることを教示する。半連続または連続の処理ラインにおけるステンレス鋼処理の数十年に渡る実践を考慮すると、特許文献1及びその子出願特許は、半連続または連続の処理ラインにおける開示のスケール除去装置を用いること、例えば、半連続または連続の処理ラインを改良して、その様な開示のスケール除去装置を設けることを単に示唆するものである。ステンレス鋼が、プッシュプルのステンレス鋼処理ラインにおいて、その様なスケール除去装置を用いて処理可能であることは、これまで正しく評価されていなかった。本明細書における開示は、従来の半連続または連続のステンレス鋼処理ラインにおいて、酸洗槽をスケール除去装置に取り換えることよりもむしろ、スケール除去装置を用いたプッシュプルのステンレス鋼処理ラインを対象とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図6】ステンレス鋼のためのプッシュプル処理ラインを示す。
【
図7】ステンレス鋼のためのプッシュプル処理ラインを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図6及び
図7は、ステンレス鋼のためのプッシュプル処理ライン(SSPPL)を例示的に示す。その様なライン(SSPPL)は、コイル台、及び巻き戻し機(アンコイラ)82を含む荷役(ローディング)システム80を有するクロッピング工程を有するものとしてもよい。剥がされていないコイルの自由端が帯の長さ方向の端部に垂直となり、その結果、上記帯が効果的に上記ラインを通ることができる様に、上記巻き戻し機から解かれた帯の自由端は、上記剥がされていないコイルの自由端をせん断するためのクロップせん断機84に向けられるものとしてもよい。その後、上記帯は、スケールブレーカ86及びひずみ取り機88へ向かうものとしてもよい。ピンチローラ90は、スケールブレーカ86を用いて上記帯を引き、ひずみ取り機88を用いて上記帯を押すものとしてもよい。プッシュプル処理ラインにおいて処理されるべき尺材に応じて、上記ラインは、連続する所定長の材料を繋げ合わせるための縫合装置92を設けるものとしてもよい。例えば、上記プッシュプルラインが、ステンレス鋼の非常に薄肉な帯を処理することを目的とする場合、連続するコイルから出る帯の自由端が、縫合装置92により縫合され、上記薄肉材料が処理ラインにより引っ張られることが可能となるものとしてもよい。該薄肉材料は、上記処理ラインにより押されている時に過度に逸れる可能性があり、上記処理ラインにより上記材料を引っ張るための張りリールの使用が必要となるかもしれない。上記縫合機は、溶接機を有するものとしてもよい。また、上記縫合装置は、省略されるものとしてもよい。縫合装置92に関し、上記ラインには、端部トリマ94が設けられ、連続するコイルの連続する端部が容易に接続可能となるものとしてもよい。
【0014】
スケール除去処理を完了するために、上記処理ラインには、米国特許第7601226号明細書、並びに、米国特許第8062095号明細書、米国特許第8066549号明細書、米国特許第8074331号明細書、及び米国特許第8128460号明細書を含むその子出願特許に開示されている様な1つ以上のスケール除去装置96が設けられるものとしてもよい。スケール除去装置96は、ステンレス板金に対してスケール除去媒体を
押し流して、上記板金から全てのスケールをしっかりと除去する様な方法で、動作するものとしてもよい。米国特許第7601226号明細書及びその子出願特許は、スケール除去処理に関して用いられることのある方法及びパラメータを記載する。上記スケール除去媒体は、粒及び液体を有する懸濁液(スラリー)を含むものとしてもよい。また、上記スケール除去媒体は、粒を有するものとしてもよい。
【0015】
上記ステンレス鋼帯がスケール除去装置を去った後に、上記材料は、乾燥テーブル98、クロップせん断機100を通過し、巻き取りリール102を通過するものとしてもよい。該巻き取りリールは、リコイラ、例えば、その開示内容が参照により本明細書内に組み込まれている特許文献6に記載されたリコイラを有するものとしてもよい。
【0016】
スケール除去装置96は、ステンレス鋼用のプッシュプル処理ラインに含まれるための分離した装置として、設計、販売促進、販売または流通されるものとしてもよい。プッシュプル処理ラインは、スケール除去装置を有する形態で、例えば、プッシュプル処理ラインの内部にスケール除去装置が統合された形態で、設計、販売促進、販売または流通されるものとしてもよい。スケール除去装置96の販売、販売促進、設計または流通に関連し、ユーザ、例えば、スケール除去装置の購入者は、該スケール除去装置の目的が、プッシュプル板金処理ラインにおけるステンレス鋼のスケール除去を可能とすることであることを知らされるものとしてもよい。ユーザは、プッシュプル板金処理ラインにスケール除去装置を設置し、プッシュプル板金処理ラインのステンレス鋼を処理する様に促される。該ユーザは、少なくとも1つのスケール除去装置を用いて、上記ステンレス鋼板金の少なくとも1つの表面から、全てのスケールをしっかりと除去する様に促されるかもしれない。その中にスケール除去装置96が含まれるプッシュプル処理ラインの販売、販売促進、設計または流通に関し、ユーザ、例えば、該プッシュプル処理ラインの購入者は、該プッシュプル処理ラインの目的が、ステンレス鋼のスケールを除去するためにスケール除去装置96を使用することであることを知らされるものとしてもよい。該ユーザは、上記プッシュプル板金処理ラインを購入し、上記スケール除去装置96を用いて、プッシュプル板金処理ラインのステンレス鋼を処理する様に促される。該ユーザは、少なくとも1つのスケール除去装置を用いて、上記ステンレス鋼板金の少なくとも1つの表面から、全てのスケールをしっかりと除去する様に促されるかもしれない。
【0017】
上述した工程の内、1つ以上の工程を実行する様に上記ユーザに促すことに関し、該ユーザは、上述した工程の1つ以上を実行する様に指示されるものとしてもよく、または、上述した工程の1つ以上を実行する様に向けられるものとしてもよい。上記スケール除去媒体の衝突と共に、上記ステンレス鋼板金の表面から全てのスケールがしっかりと除去される様に、上記ユーザは、上記ステンレス鋼帯の少なくとも1つの表面に対する上記スケール除去媒体の衝突の速度を制御するために、スケール除去装置96を操作する様に促されるものとしてもよい。米国特許第7601226号明細書及びその子出願特許は、上記ステンレス鋼板金の表面に対して上記スケール除去媒体を
押し流すための動翼輪を回転させることを開示するが、上記ステンレス鋼板金の表面に対して上記スケール除去媒体を
押し流すために、他の方法が用いられるものとしてもよい。上記ユーザは、上記板金に対して上記スケール除去媒体を
押し流して、上記ステンレス鋼板金から全てのスケールをしっかりと除去する様な方法により、第1及び第2の動翼輪を適切な位置に配置する様に促されるものとしてもよい。1組目の動翼輪は、上記板金の上面に対して上記スケール除去媒体を
押し流す様に設けられるものとしてもよく、2組目の動翼輪は、上記板金の下面に対して上記スケール除去媒体を
押し流す様に設けられるものとしてもよい。スケール除去装置の台数は、必要に応じて、所望の水準のスケール除去、表面仕上げ、及び所定時間内の板金処理量を実現可能な様に、選択されるものとしてもよい。
【0018】
本明細書に記載される様に、スケール除去装置を用いたステンレス鋼の薄板または帯用のプッシュプル処理ラインは、半連続または連続の酸洗処理ラインにより代用可能である。連続または半連続の酸洗処理ラインは、非常に広大な設置スペースを必要とする大規模な設備を有する。加えて、連続または半連続の酸洗処理ラインは、意義のある重大な投資であり、比較的に高価なかつ長期間に渡る運用コストが掛かる。これらの難点は、本明細書に記載した様な、スケール除去装置を有する、ステンレス鋼の薄板または帯用のプッシュプル処理ラインを用いて、回避することができる。
【0019】
更に、一般的に言えば、ステンレス鋼のための連続または半連続の酸洗処理ラインは、許容し難い表面の状態または仕上げがあることに起因して、15%〜30%程度の不良品発生率を有する。一般的には、不良品とされた如何なるコイルも、同一の連続または半連続の酸洗ラインを通って再処理される。これにより、不良品とされたコイルを再び酸洗いするための追加費用が発生することとなる。本明細書に記載した様な、スケール除去装置を有する、ステンレス鋼の薄板または帯用のプッシュプル処理ラインは、連続または半連続の酸洗処理ラインと同じ施設内において、使用されるものとしてもよい。不良品とされた如何なるコイルも、上記連続または半連続の酸洗処理ラインよりも運用コストのずっと安価な上記プッシュプルライン上で、処理されるものとしてもよい。
【0020】
本明細書に記載及び図示された構成及び方法において、本発明の範囲を逸脱することなく、様々な変形態様を採ることができるであろうことから、前述の説明に含まれる、または添付の図面に示される全ての事柄は、限定的ではなく、例示的な事柄として解釈されることを意図するものである。従って、本願発明の広さ及び範囲は、上述した例示的な実施形態の何れによっても限定されるべきものではなく、本明細書に添付された以下の特許請求の範囲及びそれらの均等物に従ってのみ、定められるべきものである。
【符号の説明】
【0021】
10 解きリール
12 プロセッサ
14 分断ばさみ
16 酸洗槽
18 すすぎ器
20 ドライヤ
22 検査台
24 分断ばさみ
26 輪状穴(ループピット)
28 帯センタリング装置
30 側部トリマ
32 制動台
34 給油機
36 張りリール
40 巻き戻し機(アンコイラ)
42 プロセッサ
44 分断ばさみ
46 縫合機
48 入口の輪状穴
50 ローラ
52 酸洗槽
54 洗浄処理部
56 ドライヤ
58 検査台
60 出口の輪状穴
62 帯センタリング装置
64 側部トリマ
66 制動台
68 分断ばさみ
70 給油機
72 張りリール
80 荷役(ローディング)システム
82 巻き戻し機(アンコイラ)
84 クロップせん断機
86 スケールブレーカ
88 ひずみ取り機
90 ピンチローラ
92 縫合装置
94 端部トリマ
96 スケール除去装置
98 乾燥テーブル
100 クロップせん断機
102 巻き取りリール